第04章 フォトIC

フォトIC
1 照度センサ
1-1
1-2
フォトICダイオード
照度ー周波数変換フォトIC
2 光リンク用送信/受信フォトIC
汎用タイプ
MOSTネットワーク用 (150 Mbps)
7 応用例
7-1
7-2
簡易照度計
高速デジタル伝送
(光リンク用フォトICの応用例)
7-3 LEDバックライト液晶ディスプレイの色調整
(デジタルカラーセンサの応用例)
7-4 スマートフォン向け多機能センサ
(カラー/近接センサの応用例)
7-5 デジタルコピー機・レーザプリンタの
印字開始タイミング信号の出力
(レーザビーム同期検出用フォトICの応用例)
章
2-1
2-2
第 章
4
4
フォト
I
C
3 エンコーダモジュール (移動量/回転角センサ)
4 カラーセンサ
4-1
4-2
4-3
デジタルカラーセンサ
I2C対応カラーセンサ
カラー/近接センサ
5 光変調型フォトIC (光電スイッチ用)
6 レーザビーム同期検出用フォトIC
73
フォトIC
フォトICは、受光部と信号処理回路を1つのパッケージに組み込んだ光デバイスです。製品ごとに用途に合ったさまざまな機
能をもっています。
ディスクリートで構成した場合と比較すると、
フォトICは以下の特長をもっています。
小型、軽量
電磁誘導ノイズに強い
量産性に優れている
高いコストパフォーマンス
信頼性が高い
章
4
フォト
フォトICは、
構造によりモノリシックタイプとハイブリッドタイプに大別されます。
モノリシックタイプは、
受光部と信号処理回路が
同一チップ上に形成されています。受光部と信号処理回路の間のリード配線がないため、電磁誘導ノイズに非常に強いという
特長をもっています。一方のハイブリッドタイプは、別チップで形成された受光部と信号処理ICを接続し、1つのパッケージに内
I
C
蔵したものです。
ハイブリッドタイプは、
受光部の形状や分光感度特性などの変更を容易に行うことができるという利点をもって
います。
カスタム仕様のフォトICを設計する場合には、性能とコストのバランスを考慮して、
フォトICのタイプを選択することが重
要です。
当社は、
明るさ・色の検知や、
POF (Plastic Optical Fiber)による光リンクネットワーク、
レーザビームプリンタの同期検知などの
用途に適したフォトICを取りそろえています。
さまざまな仕様に対応するために、各種光半導体プロセスや独自のICプロセスの
技術開発に取り組んできました。
フォトICの設計からウエハ処理・組立・検査工程まで一貫した製造体制を確立しており、
信頼
性を含めた各種解析・評価体制も充実しています。
また、
カスタム仕様のフォトICについても相談を承っています。
モノリシックタイプの例
ハイブリッドタイプの例
浜松ホトニクスのフォトIC
用途
製品名
モノリシック/ハイブリッド
出力
フォトICダイオード
モノリシック
アナログ
照度−周波数変換フォトIC
ハイブリッド
デジタル
照度検知
光通信 (POF)
光リンク用送信/受信フォトIC
(汎用タイプ、MOSTネットワーク用)
モノリシック
またはハイブリッド
移動量/回転角検知
エンコーダモジュール
モノリシック
色検知
デジタルカラーセンサ、I2C対応カラーセンサ
モノリシック
色/照度/物体検知
カラー/近接センサ
ハイブリッド
光電スイッチ
光変調型フォトIC、光電スイッチ用フォトIC
モノリシック
レーザビームプリンタなどの
印字開始タイミング検出
レーザビーム同期検出用フォトIC
ハイブリッド
デジタル
74
1. 照度センサ
1.
照度センサ
1-1
フォトICダイオード
[図1-1] ブロック図 (視感度補正タイプ)
KPICC0163JA
[図1-2] 分光感度特性
章
4
フォトICダイオードは、光を受けて電流を発生するフォ
フォト
トダイオードと、
その電流を数万倍に増幅する回路部か
ら成るモノリシックフォトICです。
出力は電流出力であり、
逆電圧を印加したフォトダイオードと同じように使用するこ
I
C
とができます。
フォトICダイオードには、視感度補正タイプ
と近赤外まで感度をもつタイプがあります。パッケージは、
SIP (Single Inline Package)/DIP (Dual Inline Package)
/COB (Chip on Board)/ヘッドオンタイプを用意していま
す。
なお、民生用から車載用まで、顧客のニーズに合わせ
たICおよびパッケージのカスタム対応が可能です。
特長
・フォトダイオードと同じ使いやすさ
KPICB0084JB
[図1-3] 直線性 (視感度補正タイプ)
・フォトトランジスタ並みの大きな出力
・優れた直線性
動作原理、特性
視感度補正タイプのフォトICダイオードの動作原理につ
いて説明します。視感度補正タイプの受光部は、
メインの
信号用フォトダイオードとサブの補正用フォトダイオードか
ら構成されています。信号用フォトダイオードで発生した
光電流から補正用フォトダイオードで発生した光電流を内
蔵の演算回路で差し引くことにより、赤外域がカットされた
分光感度特性が得られます。
この信号を電流アンプで増
KPICB0083JD
幅して出力します。
75
[表1-1] 電気的および光学的特性 (視感度補正タイプ S9648‐100)
項目
記号
感度波長範囲
λ
最大感度波長
λp
条件
Min.
Typ.
Max.
単位
-
300 ∼ 820
-
nm
-
560
-
nm
-
1
50
nA
0.18
0.26
0.34
mA
暗電流
ID
VR=5 V
光電流
IL
VR=5 V, 2856 K, 100 lx
上昇時間
tr
10∼90%, VR=7.5 V
RL=10 kΩ, λ=560 nm
-
6.0
-
ms
下降時間
tf
90∼10%, VR=7.5 V
RL=10 kΩ, λ=560 nm
-
2.5
-
ms
使い方
・視感度に近い分光感度特性
照度−周波数変換フォトICに内蔵したフォトダイオード
章
4
カソードに+電位が加わるように電圧を印加します。
高周
の分光感度特性は、人間の視感度に近づけてあります。
波成分を除去したい場合には、
負荷抵抗 (RL)と並列にロー
色温度誤差が少ないため、
出力は人間の感覚にほぼ一致
パスフィルタ用負荷容量 (CL)を挿入して使用してください。
します。
遮断周波数 (fc)は式 (1)で表されます。
フォト
1
.......... (1)
fc =
2π CL RL
I
C
・高感度
照度−周波数変換フォトICのフォトダイオードは、
アノー
ド・カソード間のバイアス電圧が、
ほぼゼロとなる条件で駆
1-2
照度ー周波数変換フォトIC
動されます。
これにより暗電流を小さくでき、
高感度化を実
現しています。
・デジタル出力
出力はデジタルパルスです。面倒なアナログ処理は一
切必要ありません。
動作原理、特性
照度−周波数変換フォトICは、
フォトダイオードと電流−
周波数変換回路によって構成され、照度に比例したパル
ス周波数が出力されます。
出力はResetがHighの期間に開
放されます。
また、ResetをHighからLowにしたときには出
照度−周波数変換フォトICは、
フォトダイオードと電流−
力パルスの位相が初期化されます。
周波数変換回路を組み合わせたCMOSフォトICです。
出
力はCMOSロジック対応のデジタルパルスで、
その周波数
[図1-4] ブロック図
は入射光量に比例します。照度−周波数変換フォトICは、
各種光量センサに使用することができます。
特長
・広いダイナミックレンジ
一般的な電流−電圧変換回路は、
ノイズや電源電圧に
よってダイナミックレンジが制限されます。照度−周波数変
換フォトICは、電流をパルス周波数に直接変換する回路
方式を採用しています。
このため、
フォトダイオードの光電
流がもつ広いダイナミックレンジ特性は失われることなく、
周波数に変換されます。
その結果、5桁以上のダイナミック
レンジを実現しています。
76
KPICC0133JB
1. 照度センサ
[図1-5] 分光感度特性
[図1-8] 接続例
KPICC0134JB
KPICB0126JA
章
[図1-6] 出力周波数ー照度
4
フォト
I
C
KPICB0091JC
[図1-7] 出力波形例
使い方
照度−周波数変換フォトICを使って照度を検出する場
合、
特定の期間 (Tg)のパルス数をカウントして、
出力周波
数を求めます。
この他、
出力の半周期の時間を求めること
によっても照度を検出できます。
この方法は、
低照度を検出
する場合、
すなわち低周波数を出力するときに有効です。
77
2.
・広いダイナミックレンジ
光リンク用送信/
受信フォトIC
DCから100 Mbpsまでの幅広い伝送速度に対応したラ
インアップを用意しています。
受信フォトICは広いダイナミッ
クレンジを実現しています (例: 準高速通信用受信フォト
プラスチック光ファイバ (POF: Plastic Optical Fiber)を
ICのダイナミックレンジ=-5∼-30 dBm)。
用いた光ファイバ通信は、
外来ノイズの影響を受けない、
高
速データ通信が可能などの特長があり、車載・FA・民生な
構造
どの分野の光ネットワークに使用されています。
当社はさま
ざまな伝送速度に対応した汎用タイプや、
欧州で普及して
送信フォトICのブロック図を図2-1に示します。
信号が入
いるMOST (Media Oriented Systems Transport)ネットワー
力されるとLEDを発光させます。
また、
抵抗・容量によって、
ク用の高速・高信頼性を実現したタイプを用意しています。
光出力波形の上昇時間を調整します。
受信フォトICのブロック図を図2-2に示します。
フォトダ
2-1
イオードに光信号が入射すると、
アンプで電流−電圧変
汎用タイプ
換し、
さらに信号を増幅します。その後、
コンパレータで
CMOSレベルのデジタル出力に変換して出力します。
章
4
[図2-1] ブロック図(送信フォトIC)
フォト
I
C
送信フォトIC 受信フォトIC KPICC0200JA
汎用タイプの光リンク用受信フォトICとして、DC∼100
Mbpsの伝送速度に対応した製品を用意しています。
[図2-2] ブロック図(受信フォトIC)
送信フォトIC (LED駆動回路を内蔵)には、DC∼10
MbpsとDC∼100 Mbpsの2タイプがあります。
受信フォトIC
には表2-1のタイプがあります。
[表2-1] 汎用タイプ光リンク用受信フォトIC
タイプ
電源電圧
低速、高感度
(長距離通信用)
低速、
超低消費電流
準高速通信用
高速通信用
伝送速度
出力
レベル
KPICC0201JA
DC∼1 Mbps
CMOS
レベル
3.3 V
± 5%
DC∼10 Mbps
DC∼100 Mbps
特長
・モノリシック構造 (受信フォトIC)
外部からの電磁ノイズの影響を低減するため、
受信フォ
トICはフォトダイオードと信号処理回路が一体のモノリシッ
ク構造を採用しています。
当社は、モノリシック構造を実現
するため、独自のPINバイポーラプロセスで製造を行って
います。PINバイポーラプロセスでは、最大250 Mbpsまで
の高速フォトICが実現可能です。
78
2. 光リンク用送信/受信フォトIC
特性
特長
・高速LEDを採用 (送信フォトIC)
[図2-3] 出力波形
(a) 送信フォトIC (DC∼10 Mbps)の光出力波形
送信フォトICは、
ピーク発光波長 650 nmの高速・高出
力LEDを採用しています。駆動ICは温度補償回路を内蔵
しており、周囲温度が変化した場合の光出力変動を軽減
します。
・広いダイナミックレンジ、待機モード機能 (受信フォトIC)
受信フォトICは、PINフォトダイオードとCMOS ICのハ
イブリッド構成で、高速動作を実現しています。
‐2∼‐22
dBmの広いダイナミックレンジで、光入力がない場合に低
消費電力となる待機モードを備えています。
横軸: 40 ns/div.
PN=27 -1, 10 Mbps
・完全差動構成 (受信フォトIC)
電源ノイズや、
外部からの電磁ノイズの影響を低減するた
章
(b) 準高速通信用受信フォトICのデジタル出力波形
4
め、受信フォトICは、
ダミーフォトダイオードを用いた完全差
フォト
動構成の信号処理回路を採用しています。
ノイズの影響を
低減することによって、
高いS/Nを実現することができます。
I
C
構造
送信フォトICのブロック図を図2-4に示します。
入力端子
に所定の電気信号が入力されると、
RC (Resonant Cavity)
横軸: 40 ns/div., 縦軸: 1 V/div.
PN=27 -1, 10 Mbps
型LEDが発光します。
また、周囲温度を温度モニタ回路に
より検出し、
LED駆動電流を調整します。
2-2
MOSTネットワーク用
(150 Mbps)
受信フォトICのブロック図を図2-5に示します。
一定以上
の光量がフォトダイオードに入射すると、待機モードから
動作モードに変わり、
アンプとLVDS出力回路が動作して
LVDS信号を出力します。
[図2-4] ブロック図 (送信フォトIC)
送信フォトIC
L11354-01
受信フォトIC
S11355-01
送/受信フォトIC
P11379-04AT
MOST150規格に対応した伝送速度 150 Mbpsの光リン
ク用フォトICです。
プラスチックパッケージのSidelookerタイ
プと、送信/受信チップを1つのパッケージに収め、光ファ
KPICC0177JA
イバ用のコネクタ部を一体化した表面実装型を用意して
います。
高信頼性を特長とし、
リフローはんだ付けに対応し
ています。
なお、伝送速度 25 Mbpsのタイプも用意してい
ます。
79
[図2-5] ブロック図 (受信フォトIC)
[図2-8] 接続例 (受信フォトIC: S11355-01)
KPICC0180JC
KPICC0178JB
特性
章
4
[図2-6] 出力波形 (アイパターン)
フォト
(a) 送信フォトICの光出力波形
I
C
MOSTストリーム, 300 Mbps
(b) 受信フォトICのデジタル出力波形
MOSTストリーム, 300 Mbps, Pin=-21.5 dBm
[図2-7] 接続例 (送信フォトIC: L11354-01)
KPICC0179JB
80
記号
R1
L1
部品
抵抗
インダクタンス
定数
100 Ω
0.1 µH
備考
LVDS用終端抵抗
フィルタ用
C1
コンデンサ
0.1 µF
ノイズ対策用
バイパスコンデンサ
C2
C3
コンデンサ
コンデンサ
10 µF
10 µF
フィルタ用
フィルタ用
記号
R1
L1
部品
抵抗
インダクタンス
定数
100 Ω
0.1 µH
備考
LVDS用終端抵抗
フィルタ用
C1
コンデンサ
0.1 µF
ノイズ対策用
バイパスコンデンサ
C2
C3
コンデンサ
コンデンサ
10 µF
10 µF
フィルタ用
フィルタ用
2. 光リンク用送信/受信フォトIC 3. エンコーダモジュール (移動量/回転角センサ)
3.
エンコーダモジュール
(移動量/回転角センサ)
PD2、PD3、PD4とします。
エンコーダ用フォトICの出力はA
相、B相の2相デジタル出力 (TTL対応)で、A相 (V OA)は
PD1−PD3間の受光量の大小を、B相 (V OB)はPD2−PD4
間の受光量の大小を示します。
図3-4は、
スリットによる明暗パターンが入射して移動し
た場合のPD1∼PD4への入射信号量の変化と、
それによ
り得られた電流がプリアンプ/コンパレータ/出力回路を
通して2相のデジタル信号に変換された結果を示します。
[図3-1] ブロック図、真理値表
エンコーダモジュールは赤色LEDとエンコーダ用フォト
章
4
ICを内蔵したモジュールで、
検出対象の移動量・回転角を
リットの光学パターンが移動するとき、4素子フォトダイオー
ドを内蔵したエンコーダ用フォトICがスリットの光学パター
ンを読み取り、
パターン信号 (A相、
B相)を出力します。
受光量
PD1
PD1
PD1
PD1
<
<
>
>
PD3
PD3
PD3
PD3
PD2
PD2
PD2
PD2
>
<
>
<
PD4
PD4
PD4
PD4
VOA
Low
Low
High
High
フォト
検出します。投/受光間において検出対象に付随したス
VOB
Low
High
Low
High
I
C
KPCC0011JD
特長
[図3-2] 外形寸法図 (単位: mm)
・高分解能、高精度
検出対象の位置と移動方向を検出するために、
インクリ
メンタルタイプの光学式エンコーダには2組のLED−フォト
ダイオード対が必要です。
複数のディスクリートのLED−フォ
トダイオード対を用いた場合は素子間の特性バラツキがあ
りますが、
本エンコーダモジュールは1つのLEDと1チップの
4素子フォトダイオードを内蔵しているため、
素子間の特性
バラツキを考慮する必要がありません。
さらに、
素子の位置
精度が高いため、
高分解能・高精度を実現しています。
・低消費電流
当社のエンコーダモジュールは、
1組の赤色LEDとフォト
ICを内蔵しています。
これらを1つのモジュールで構成して
いるため、
低消費電流を実現しています。
・小型
エンコーダモジュールは、位置決めピン付きの小型パッ
ケージを採用しています。
動作原理、使い方
KPCA0010JB
エンコーダモジュールのブロック図を図3-1に示します。
LEDからのスポット光は、
スリットにより明暗パターンに
変換され受光部上に投影されます。図3-3に推奨スリット
板の穴のサイズを示します。
4素子のフォトダイオードを並び順にそれぞれP D1、
81
[図3-3] 推奨スリット板 (単位: mm, t=0.1) スリット板中心位置は図3-2参照
[図3-5] 応用回路例 (CW/CCWパルス信号発生回路)
KPCC0013JA
[図3-4] タイミングチャート
章
KPICC0032JA
4
フォト
図3-5の回路は、移動量・回転角をカウントするための
アップカウント信号/ダウンカウント信号をそれぞれ発生
KPCC0031JE
I
C
するCW (正方向)/CCW (逆方向)パルス信号発生回路
エンコーダモジュールは、
スリットの光学パターンの移動
です。
この回路は、
サンプリング信号であるOSC信号のタイ
方向・移動量を検出しますが、
スリット中の光学パターンの
ミングでV OAとV OBの状態変化の順序を検出し、正方向の
絶対位置を検出することはできません。
スリット中の光学パ
状態変化に対してはCWnD端子に、
逆方向の状態変化に
ターンの絶対位置を検出するためには、
スリットの原点位
対してはCCWnD端子にパルス信号を発生します (CWnD/
置を定めて、原点位置からの移動量を検出する必要があ
CCWnD端子は逓倍率 × nの出力端子)。
CWnD/CCWnD
ります。
そのためには、原点からエンコーダモジュールの出
端子では、
V OA・V OBの状態変化 1周期につきn回のパルス
力変化回数を計算する装置が必要です。
を発生します。
このパルス幅は、
サンプリング信号の1周期
出力変化回数が加算される場合は原点から離れ、
減算
分です。
OSC・VOA・VOBの状態変化に対して出力端子に現
される場合は原点に近くなっていると判断します。
この判
れるパルス信号を図3-6に示します。
断は、
2相デジタル出力 (V OA, V OB)が以下の変化のどちら
サンプリング信号の周波数は、
VOAとVOBの状態変化 1周
であるかによって行います。
期の最大周波数に対して40倍以上が適当です(図3-6で
(L, L)
→
(L, H)
→
(H, H)
→
(H, L)
→
(L, L)
は、簡略化して16倍となっています)。各端子に現れるパ
(L, L)
→
(H, L)
→
(H, H)
→
(L, H)
→
(L, L)
ルスは、規定の状態変化の瞬間から若干遅れて発生しま
す [理論最大遅延時間 = 1 /{2 × OSC周波数 (単位: 周
期)}]。
この各信号を、
アップダウンカウンタのアップカウン
ト端子およびダウンカウント端子に入力し、
原点位置でアッ
[図3-6] デコーダ出力のタイミングチャート (図3-5の応用回路例の場合)
KPICC0034JA
82
3. エンコーダモジュール (移動量/回転角センサ) 4. カラーセンサ
プダウンカウンタをクリアする回路を備えれば、
原点位置か
らの移動量が検出されます。
4.
カラーセンサ
4-1
デジタルカラーセンサ
章
4
デジタルカラーセンサは、
光のRGB成分を12ビットデジタ
フォト
ル信号に変換してシリアル出力するセンサです。
デジタル
出力のため、
データの取り扱いが非常に簡単です。
デジタルカラーセンサの代表的な用途は、
RGB-LEDバッ
I
C
クライト液晶ディスプレイのバックライト調光です。LEDの
経年劣化の対策のため、
デジタルカラーセンサはLEDの
明るさをモニタし、
その情報をLED駆動回路にフィードバッ
クして液晶ディスプレイの明るさと色合いを安定化します。
デジタルカラーセンサは、
この他にもさまざまな色合いの測
定に広く使用できます。
特長
・9 × 9素子フォトダイオード
デジタルカラーセンサはフォトダイオードとアナログ/デ
ジタル回路をモノリシックに集積化したフォトICです。
フォ
トダイオードは、
9 × 9素子のモザイク形状に配置されてい
ます。各素子は、
オンチップフィルタによってRed (λp=610
nm)、
Green (λp=540 nm)、
Blue (λp=465 nm)の3色のう
ち1色に感度をもちます。
9 × 9素子のモザイク形状の採用
によって、
明るさのムラによる影響を低減します。
・2段階の感度設定
広範囲の照度の測光を可能にするため、2段階の感度
設定 (高感度モード、
低感度モード)から選択することがで
きます。高感度モードと低感度モードでは、使用する受光
部が異なります (高感度モード: 9 × 9素子、
低感度モード:
中央部 3 × 3素子)。
・12ビットデジタル出力
フォトダイオードで測光した信号は増幅されて12ビット
のデジタル信号に変換されます。
モザイク形状に配置されたRGBフォトダイオードのそれ
ぞれにアンプが内蔵されています。
そのため入射光のRGB
83
成分について、
同時に高精度な測定を行うことができます。
構造、動作原理
特性
[図4-3] 分光感度特性
デジタルカラーセンサのアンプには光−周波数変換回
路を用いています。光−周波数変換回路の出力は矩形波
(デジタル信号)で、
その周波数は入射光量に比例します。
光−周波数変換回路の出力はGate端子がHighの期間
にカウントされ、
レジスタにカウント値が保持されます。
その
カウント値は、
CK端子にパルスを入力することによって、
パ
ルスに同期して色別にDout端子からシリアル出力されま
す。
出力される色の順番はRed→Green→Blueで、
それぞ
れの色の出力は12ビットです。
[図4-1] ブロック図
章
4
KPICB0089JA
フォト
[図4-4] 出力ー照度
(a) Lowゲイン
I
C
KPICC0110JC
[図4-2] 受光部拡大図 (単位: µm)
KPICB0099JA
(b) Highゲイン
KPICC0124JA
[表4-1] 感度設定
84
KPICB0100JA
ゲイン
モード
有効受光部
High
高感度
9 × 9素子
Low
低感度
3 × 3素子
4. カラーセンサ
[図4-5] タイミングチャート (デジタルカラーセンサ)
KPICC0115JB
章
4
特長
デジタルカラーセンサに必要な入力信号は、感度を設
・I2C対応
定するRange信号、光の積分時間を設定するGate信号、
・RGBと赤外の連続測光
測光した12ビットデジタルデータを取り出すCK信号のみで
す [図4-5]。
デジタルカラーセンサは入力・出力ともにデジ
・2段階の感度切り替え機能 (感度比 1 : 10)
タル信号のためマイコンに直結でき、簡単に使うことがで
・積分時間の設定による感度調節が可能
きます。必要な外付け部品は、電源−グランド間に挿入す
るバイパスコンデンサ (0.1 µF)のみです。
I
C
(1∼65535倍)
デジタルカラーセンサには、
赤外光を除去するために赤
・低電圧 (2.5 V, 3.3 V)動作
外カットフィルタがパッケージの上面に貼られていますが、
・低消費電流 (75 µA typ.)
パッケージの横からの光は赤外カットフィルタを通過しませ
・小型パッケージ
ん。
アパーチャなどを使って赤外カットフィルタを通らない
フォト
使い方
(表面実装型ウエハレベルパッケージ)
方向からの光の対策を行う必要があります。
4-2
I2C対応カラーセンサ
構造、動作原理
I2C対応カラーセンサは、視感度補正フィルタ、
フォトダ
イオード、
電流−周波数変換回路、
カウンタ、
タイマー回路、
レジスタ、I2Cインターフェースなどから成っています [図
4-6]。
フォトダイオードは4 × 10素子のモザイク形状で [図
4-7]、1素子の大きさは110 × 135 µmです。通常のカラー
センサにリモコン光などの強い赤外線が入射すると誤った
色検出をする場合がありますが、本素子の赤外線検出機
能により誤動作を防止できます。
測定する色はスイッチで自動的に切り替わり、R e d、
Green、
Blue、
赤外の順に連続して測定します。
また、
感度
や積分時間を設定することができます。
レジスタに保存さ
I2Cインターフェースが内蔵されたカラーセンサです。
Red
れた各色の16ビットデータは、
I2Cインターフェースを通して
(λp=615 nm)、
Green (λp=530 nm)、
Blue (λp=460 nm)と赤
読み出しが可能です。
外 (λp=855 nm)のそれぞれに感度をもち、
検出結果は各色
16ビットのデジタル値で出力されます。
4つの16ビットレジスタ
を内蔵しており、RGBと赤外を連続して測定します。感度
と積分時間の設定が可能で、
広範囲の測光が可能です。
85
[図4-6] ブロック図
4-3
カラー/近接センサ
KPICC0152JB
[図4-7] 受光部拡大図 (単位: µm)
カラー/近接センサは、
カラーセンサ、近接センサおよ
び3色LEDを小型パッケージ (5.5 × 1.7 × 1.0 mm)に一体
化した多機能センサです。
スマートフォンなどにおいて、
章
4
ディスプレイの画質調整、
タッチパネル機能のオン/オフ
フォト
の制御、
着信表示などを行うことができます。
カラーセンサ
は、周囲光のRGB比を検出する上、照度センサとしても使
用でき、
きめ細かな画質調整が可能になります。近接セン
I
C
サは、
スマートフォンにおいては顔が近づいた場合に検知
KPICC0153JA
して、
タッチパネル機能をオフにして、
その上、
液晶バックラ
イトを消灯します。
3色LEDは、
着信表示用であるとともに、
3色のうちの赤色LEDは近接センサの投光用としても機能
特性
します。
Lowゲインモードでは下段中央部の各色1素子ずつの
フォトダイオードを用い、Highゲインモードでは各色10素
特長
子ずつのフォトダイオードを用いて測定します。
したがっ
て、
ゲイン切り替えの感度比は1:10です。
積分時間 (Tint)
はあらかじめ設定されている4種類 (184 µs, 2.88 ms, 46
・I2C インターフェース: 400 kHz, Fast mode
ms, 368 ms)から選択可能です。
さらに感度を上げたい場
・低電圧 (2.5 V, 3.3 V)動作
合には、
この4種類の積分時間の定数倍 [1∼65535 (16
・I2Cバス電圧 1.8 V対応
ビット以下)]の設定が可能です。
・低消費電流
初期設定ではLowゲインモード、積分時間 546 ms/ch
(175 µsの3120倍)で設定されています。
・小型パッケージ: 5.5 × 1.7 × 1.0 mm
[図4-8] カウント値ー照度 (代表例)
・リフローはんだ付けに対応
・出荷時に距離バラツキを校正するためキャリブレー
ションが不要 (30 mm ± 20%)
・I2Cのレジスタによって近接距離・LED駆動電流・
測定間隔時間を設定可能
・外乱光の影響の少ない光同期検出が可能
構造
(1) カラーセンサ
カラーセンサはRGBの3 chで、
色温度を高精度・高感度
KPICB0130JC
(1 mlx∼)に測定します。
16ビットA/D変換器を内蔵し、
Red
(615 nm)、
Green (530 nm)、
Blue (460 nm)の3色の比を
86
4. カラーセンサ
連続して計測します。太陽光や室内照明 (蛍光灯や白熱
特性
灯など)を識別して、液晶画面の色温度や明るさを再現よ
く自動調整します。
カラーセンサは、液晶画面を見やすい明るさにするため
[図4-11] 分光感度特性
に照度センサとしても機能します。周囲の明るさを比視感
度に近い波長域で検出し、明るさに応じて液晶バックライ
トの輝度をコントロールすることで、
液晶画面を見やすくす
るとともに省電力化にも貢献します。
(2) 近接センサ
近接センサは、3色LEDの赤色光が対象物 (顔など)に
当たり反射した光を受光することで、
対象物の接近を検知
します。
たとえばスマートフォンにおいては顔との距離を検
知して、通話中にタッチパネル操作を無効にし液晶バック
ライトを消灯して誤動作を防止するとともに省電力化に寄
章
与します。
4
KPICB0179JA
3色LEDでは、
RGBの3色を混色することでフルカラーを
フォト
(3) 3色LED
[図4-12] 近接距離−LED電流 (代表例)
表示することができます。I2Cインターフェースによりさまざ
I
C
まな表示色の設定が可能で、
スマートフォンでは電話着
信時、
メール受信時、
SMS受信時などのそれぞれで異なる
色を設定することが可能です。
[図4-9] 構成図
KPICB0180JA
[図4-10] ブロック図
KPICC0206JA
87
5.
光変調型フォトIC
(光電スイッチ用)
[図5-1] ブロック図、真理値表
光変調型フォトICは、光による物体検出用として開発さ
章
4
れたフォトICです。光による物体検出には、通常フォトイン
フォト
タラプタやフォトリフレクタのように1対の受光/発光素子
が用いられ、物体による光の遮断あるいは反射を利用しま
す。受光素子に室内光などの外乱光が入射した場合、受
I
C
KPICC0002JB
光素子は外乱光を検知し誤動作するかもしれません。
こ
のような場合、信号光と外乱光の波長の違いを利用し、光
[図5-2] チップ拡大写真とブロック配置
学フィルタなどを用いて誤動作を防止する方法があります
が、
外乱光が強い場合には十分な対策にはなりません。
光
変調型フォトICは、
同期検出方式を採用し、
外乱光の入射
に対して誤動作が少なく、安定した出力を得ることができ
ます。
同期検出方式は、
信号光をパルス変調し、
そのタイミ
ングに同期して信号検出を行う方式であり、
非同期に入力
されるノイズ光の影響を低減することができます。
特長
・外乱光の入射に対して誤動作の少ない検出
光変調型フォトICには、発振器、
タイミング信号発生回
路、LED駆動回路、
フォトダイオード、
プリアンプ、
コンパ
レータ、信号処理回路、
出力回路などがモノリシックに形成
構造
されています。
外部にLEDを接続することにより、
同期検出
を行います。
・外乱光許容照度が高いタイプ、高感度タイプなどを用意
外乱光許容照度が高いタイプ (10000 lx typ.)、
高感度
ます。
(1) 発振器、
タイミング信号発生回路
タイプ (最低検出レベル: 0.2 µW/mm2 typ.)、
発光素子と
発振器において内蔵コンデンサへの定電流による充放電
の結線が不要な非同期タイプを用意しています。
また、各
を行うことにより、
基準発振出力を生成します。
発振出力は、
種形状のパッケージ (DIP, SIP, 表面実装型)を取りそろえ
タイミング信号発生回路に入力され、
LED駆動用パルス、
デ
ています。
ジタル信号処理用の各種タイミングパルスを生成します。
外乱光許容照度が高いタイプ (S4282-51, S6986,
S10053)のプリアンプには、
直流光入射に対して特別な対策
88
光変調型フォトICの回路ブロックの構成について説明し
(2) LED駆動回路
が追加されており、
高照度の直流外乱光の入射下でも信号
タイミング信号発生回路で生成されたLED駆動用パル
光の検出が可能です。一方、高感度タイプ (S6809, S6846,
スによって外付けのLEDを駆動するための回路です。駆
S7136-10)では、
検出距離を長くすることができます。
動デューティ比は1/16で、S4282-51、S6986、S10053は定
5. 光変調型フォトIC (光電スイッチ用)
電流ドライブ、
S6809、
S6846、
S7136-10はオープンコレクタ
特性
ドライブです。
(3) フォトダイオード、
プリアンプ
[図5-4] 分光感度特性 (代表例)
フォトダイオードの光電流は、
プリアンプを通して電圧に
(a) S4282-51, S6986, S10053
変換されます。外乱光許容照度が高いタイプ (S4282-51,
S6986, S10053)のプリアンプでは、
図5-3に示すAC増幅回路
を使用しており、信号検出感度を落とさずに直流および低
周波の外乱光に対するダイナミックレンジを拡大しています。
[図5-3] プリアンプ部のブロック図
(S4282-51, S6986, S10053)
章
4
フォト
KPICB0001JB
(b) S6809, S6846, S7136-10
I
C
KPICC0025JC
(4) C結合、
バッファアンプ、
基準電圧発生回路
C結合によって低周波外乱光を除去し、
同時にプリアン
プ部のDCオフセットを除去します。バッファアンプでは、
コ
ンパレートレベルまで増幅します。基準電圧発生回路は、
コンパレートレベル信号を発生します。
(5) コンパレータ
コンパレータには、
ヒステリシス機能が付加してあり、入
射光の微少変動によるチャタリングを防止します。
(6) 信号処理回路
KPICB0002JA
信号処理回路は、
ゲート回路とデジタル積分回路で構
成されています。
ゲート回路は、
コンパレータ出力を弁別す
る回路であり、非同期外乱光による誤動作を防止します。
[図5-5] 感度の温度特性 (代表例)
(a) 当社LED (λp=890 nm)と組み合わせた場合
同期外乱光は、
ゲート回路で除去できないため、
後段のデ
ジタル積分回路で除去します。
(7) 出力回路
出力回路は、信号処理回路の出力をバッファし、外部に
出力する回路です。
KPICB0018JB
89
(b) 光変調型フォトICのみの場合
[図5-6] LED駆動電流の増強方法
(a) 全タイプ
(b) S4282-51, S6986, S10053
KPICB0019JA
章
4
使い方
フォト
光変調型フォトICを用いると、外部に赤外LEDを接続
することによって、外乱光の影響の少ない光同期検出型
I
C
のフォトリフレクタやフォトインタラプタを簡単に構成できま
す。
赤外LEDの光が物体に当たり反射した光を検出し、
物
体の有無や接近を検出する反射型センサや、
赤外LEDの
(c) S6809, S6846, S7136-10
光が物体に遮蔽されたかどうかをとらえて物体の有無や
通過を検出する透過型センサに応用できます。
同期検出方式を行うために、光変調型フォトICと赤外
LEDを結線する必要がありますが、
用途によっては結線で
きない場合があります。
この場合は、
非同期タイプを使用し
ます。非同期タイプは外乱光除去能力は同期タイプに比
べてやや劣りますが、赤外LEDと結線しないで使用するこ
とができます。
(1) LED駆動電流の増強方法
検知距離を長くする場合には、LED駆動電流を増強す
KPICC0028JB
(2) 感度の調整方法
る必要があります。
この場合、外部に駆動回路を追加しま
す。外部回路の簡単な例としては、図5-6のようにPNPトラ
光変調型フォトICの感度を調整する端子はありません。
ンジスタを用いる方法があります。
この他に、LED端子に
感度調整が必要な場合は、LED駆動電流を調整します。
プルアップ抵抗を接続して、
いったんLED駆動パルスをロ
S4282-51、
S6986、
S10053はLEDと並列に可変抵抗を挿入
ジック信号にしてから外部のLED駆動回路に入力する方
し、S6809、S6846、S7136-10はLEDと直列に可変抵抗を挿
法もあります。
フォトICとLED駆動電流の電源ラインが共
入してLED駆動電流を調整します。
なお、LED駆動を外部
通の場合は、
LED駆動電流により電源電圧の変動が誘発
回路で行う場合には、
外部回路の定数を調整してください。
され、
これが誤動作の原因となることがあります。
この場
合、
フォトICの電源端子の安定化を図ってください。
90
5. 光変調型フォトIC (光電スイッチ用) 6. レーザビーム同期検出用フォトIC
[図5-7] LED駆動電流の調整方法
6.
(a) S4282-51, S6986, S10053
レーザビーム同期
検出用フォトIC
(b) S6809, S6846, S7136-10
レーザビームプリンタなどにおける印字開始タイミング検
章
4
出用のフォトICです。
高速PINフォトダイオードと高速信号
フォト
処理回路を内蔵しており、
レーザビームがフォトダイオード
を通過するときに、
その通過タイミングを示すデジタル信号
を出力します。
KPICC0030JB
I
C
特長
・高精度タイプ (2素子フォトダイオード)と汎用タイプ
(1素子フォトダイオード)を用意
・広範囲の入射レーザパワーに対応
内蔵する電流アンプが6倍のタイプと20倍のタイプ、お
よび電源電圧が3.3 Vのタイプと5 Vのタイプを用意してい
ます。2素子フォトダイオードタイプは、2素子の出力を比較
することによって入射レーザパワーの変動や温度変動に
対して安定した出力が得られます。1素子フォトダイオード
タイプは、
IC内部で設定したコンパレータ電圧よりも大きな
振幅になった場合に出力が反転するように動作します。
・ハイブリッド構成
レーザビーム同期検出用フォトICは、
フォトダイオードと
アンプのそれぞれの特長を生かすため、
ハイブリッド構成
を採用しています [図6-1]。
91
[図6-1] 拡大写真 (2素子フォトダイオードタイプ S9684)
[図6-3] 端子波形 (S9684)
KPICC0131JB
[図6-4] 伝搬遅延時間変動ー入射パワー (S9684)
動作原理
章
4
2素子フォトダイオードタイプ S9684のブロック図を図6-2
フォト
に示します。PD1・PD2にレーザビームが照射されると、
そ
れぞれ光電流 Ipd1・Ipd2が流れます。
これらを電流アン
プで増幅し、
Ro1・Ro2端子にSource電流 Io1・Io2が流れ
I
C
ます。Ro1・Ro2端子とGND端子間には外部にゲイン抵抗
R1・R2が接続されていて、Source電流が流れるとR1・R2
の電位が上昇します。Ro1・Ro2端子間の電圧差をコンパ
レータによって検出して信号を出力します [図6-3]。
PD1とPD2にともにレーザビームが照射されていない場
合、Ro1・Ro2端子の電圧を比較するだけでは、
コンパレー
タの出力が確定されません。
このため、
PD1とPD2にビーム
KPICB0120JB
が照射されていない場合、
コンパレータの出力をHighに固
定する必要があります。
回路的にオフセットを与えて強制
的にRo1・Ro2端子間の電圧差を設定すると、入射パワー
が変動したときに出力発生タイミングのズレが発生してし
まいます。
そこでバイアス回路とダイオード Dによるリミット
回路によって、Ro1端子電圧の下限をクランプする手法を
用いています。
伝搬遅延時間変動は、
レーザパワーの変動に対してど
れだけ安定した出力タイミングが得られるかを示します。
2素子フォトダイオードタイプはこの特性が優れています。
使い方
Ro1・Ro2端子には外付けゲイン抵抗 (10 kΩ max.)を
GND (製品によってはVcc)との間に接続します [図6-2]。
スキャンされたレーザビームの入射時はRo1・Ro2端子に
は図6-5のようなアナログ波形が観測されます。
スキャンはPD1からPD2の向きで行います。
これにより、
急峻な立ち下がり側エッジを出力信号のタイミングにする
ことができます。
なお安定した出力タイミングを得るためには、Ro1・Ro2
[図6-2] ブロック図 (S9684)
のアナログ波形振幅が2∼3 Vとなるように入射レーザパ
ワーとゲイン抵抗を設定する必要があります。
KPICC0108JB
92
6. レーザビーム同期検出用フォトIC
[図6-5] 波形例 (S9684)
章
4
フォト
I
C
93
7.
応用例
浜松ホトニクスのフォトICは、
さまざまなところで使用されています。
章
4
フォト
I
C
94
7. 応用例
章
4
フォト
I
C
95
7-1
[図7-3] プログラム例
簡易照度計
フォトICダイオードの応用例
フォトICダイオードとコンパレータを用いた簡易照度計
を紹介します。
フォトICダイオードの特長 (良好な直線性、
出力電流のバラツキの少なさ)を生かし、簡易照度計を作
成することができます。図7-1の接続例のように、
負荷抵抗
R Lに発生する電圧をコンパレータ (LM111など)の比較端
子に入力することにより、指定する任意の照度においてオ
ン状態にすることができます。
視感度に近い分光感度特性をもつタイプのフォトICダイ
オードは、
以下のような用途に用いられます。
・テレビなどの省エネセンサ
章
4
・携帯電話のバックライトの調光
フォト
・液晶パネルの調光
・車載用自動防眩ミラーの周囲光量検知
・オートライトセンサ
I
C
KPICC0102EA
[図7-1] 接続例 (フォトICダイオード)
7-2
高速デジタル伝送
(光リンク用フォトICの応用例)
近年のデジタル化したメディアでは、高速デジタル伝送
は機器を利用する上で重要な要素となっています。
メタル
ケーブルを用いる場合は、高品質な伝送を行うために外
KPICC0100JB
来ノイズの影響を考慮する必要がありますが、
プラスチッ
ク光ファイバ (POF)ではこの影響が皆無となるため、
特に
ノイズの多い環境で使用する場合にメリットを発揮します。
照度−周波数変換フォトICの応用例
当社は、
デジタルオーディオ用から6.25 Gbpsの通信用まで、
照 度−周 波 数 変 換フォトI Cとワンチップ マイコン
PIC12F675 (Microchip社製)を用いた簡易照度計です。
PIC12F675内蔵の16ビットタイマーを使用します。
ICとマイ
コンは同一電源に接続し、ICの出力はマイコンのタイマー
幅広いラインアップの光リンク用フォトICを製品化してい
ます。光リンク用フォトICは、民生・FA・OA機器・車載ネット
ワーク・ホームネットワークなどに利用することができます。
[図7-4] 車載ネットワーク (MOST)
入力ピン (2番)に接続します。
照度はLEDの点灯で表示さ
れます。図7-3にプログラム例を示します。
出力は2進数で
表示され、
1つ数字が大きくなると明るさが2倍になり、
人間
の目の感覚に近い対数表示になります。
[図7-2] 接続例 (照度−周波数変換フォトIC)
KPICC0107JA
KPICC0101JA
96
7. 応用例
7-3
LEDバックライト
液晶ディスプレイの色調整
(デジタルカラーセンサの応用例)
[図7-6] スマートフォンに用いられるカラー/近接センサ
RGB-LEDバックライト液晶ディスプレイのバックライト
光量は、一般的にマイコンで制御されます。バックライトは
経年劣化するためカラーセンサでバックライト光をモニタ
して、
マイコンに光量情報をフィードバックし、バックライト
の光量を調整して安定化する必要があります。
デジタルカ
ラーセンサは入/出力信号がデジタル信号のため、簡単
にマイコンに直結することができます。
KPICC0221JA
[図7-5] 接続例 (デジタルカラーセンサ)
7-5
章
デジタルコピー機・レーザプリンタの
印字開始タイミング信号の出力
(レーザビーム同期検出用フォトICの応用例)
4
フォト
I
C
デジタルコピー機やレーザプリンタは、強度変調された
レーザビームのスキャンによって感光体上に電位潜像を
記録します。
このようなラスター走査では、走査信号の同
期が重要になります。
そこで主走査を始める位置に光セン
KPICC0148JA
サを配置して、光センサの受光信号を用いて同期信号を
生成する手法が用いられています。
7-4
スマートフォン向け多機能センサ
(カラー/近接センサの応用例)
スマートフォンには、液晶ディスプレイの画質調整、
タッ
チパネル機能のオン/オフの制御のためのセンサや着信
表示用LEDが搭載されています。
スマートフォン内に実装
できるスペースは限られているため、
実装部品には小型化
が要求されます。
当社のカラー/近接センサは、
それらの
機能を1つの小型パッケージに一体化することで、実装部
品の省スペース化を実現します。
また、
低電圧 (2.5 V, 3.3
レーザビーム同期検出用フォトICは、
印刷開始のタイミン
グ信号を出力します。
レーザビーム同期検出用フォトICの
置かれた位置でレーザビームが通過したタイミング信号を
生成し、位相制御回路に送ります。位相制御回路は、
この
タイミング信号からレーザ強度変調回路のラスター情報
の書き出しタイミングを決定します。
当社は、
高精度タイプ (2素子フォトダイオード)と汎用タ
イプ (1素子フォトダイオード)のレーザビーム同期検出用
フォトICを用意しています。
[図7-7] レーザプリンタの模式図
V)動作に加え、待機モード機能も搭載しているため、消費
電力を最小限に抑えた設計となっています。
カラー/近接センサは、
スマートフォン用に開発された
製品ですが、
物体検知や、
明るさや色の調整が必要とされ
るさまざまな機器にも応用が可能です。
KPICC0150JC
97