フォトICダイオードの特性と使い方

技術資料
フォトICダイオードの特性と使い方
1
[図1]分光感度特性
概要
(a) 赤外タイプ (①)
フォトICダイオードは、
フォトダイオードから発生する光
(Typ. Ta=25 ˚C, VR=5 V)
1.0
電流を約1300倍 (または約30000倍)に増幅して出力する
0.8
フォトICです。
出力は電流出力であり、
逆バイアスをかけた
相対感度
フォトダイオードと同等に使用することができます。
フォトICダイオードは、
各種光量の検出に用いられます。
一例としては、
視感度に近い分光感度特性のタイプはテレ
ビなどの輝度調整用の省エネセンサに使用されます。
0.6
0.4
0.2
特長
0
200
フォトICダイオードは、2端子デバイスでフォトダイオード
400
600
800
1000
1200
波長 (nm)
と同じような使いやすさでありながら、
フォトトランジス並み
KPICB0036JA
の大きな電流出力をします。
また、良好なリニアリティ特性
(b) 視感度補正タイプ (②)
をもっています。
表1に、
フォトICダイオードのラインアップを示します。分
(Typ. Ta=25 °C, VR=5 V)
1.0
0.9
2タイプを用意しています。
視感度補正タイプは、
視感度補
0.8
正フィルタなしで視感度に近い分光感度特性を実現して
0.7
います。
0.6
相対感度
光感度特性については、
赤外タイプと視感度補正タイプの
視感度
0.5
S9648-200SB
0.4
0.3
0.2
0.1
0
200
400
600
800
1000
1200
波長 (nm)
KPICB0085JD
[表1]フォトICダイオードのラインアップ
製品
S7183
S7184
タイプ
①
赤外タイプ
S9066-211SB
パッケージ
(プラスチック)
レンズ付SIP
表面実装型
最大感度波長
(nm)
650
SIP
光電流
2856 K, 100 lx
(mA)
1.0
0.18
0.19∼0.35
S9067-201CT
表面実装型
0.18∼0.34
S9648-200SB
ヘッドオンタイプ (CdSセル5Rタイプと同じ形状)
0.18∼0.34
②
S10604-200CT
S11153-01MT
S11154-201CT
視感度補正タイプ
560
表面実装型
0.21∼0.39
表面実装型
③
表面実装型
0.325∼0.495
580
0.07∼0.15
1
[図3]応用回路例 (②③)
(c) 視感度補正タイプ (③)
(Typ. Ta=25 ˚C, VR=5 V)
1.0
信号用
フォトダイオード
補正用
フォトダイオード
0.9
カソード
0.8
内部保護抵抗
(約150 Ω)
相対感度
0.7
0.6
0.5
0.4
破線内は
フォトICダイオードの
概念図を示す
S11154-201CT
逆バイアス電源
電流アンプ
(約30000倍)
0.3
アノード
比視感度
0.2
CL
0.1
0
200
400
600
800
1000
Vout
KPICC0091JC
1200
[図4]光電流−照度 (S9648-200SB)
波長 (nm)
(Typ. Ta=25 °C, VR=5 V, 2856 K)
10 mA
KPICB0129JB
2
RL
1 mA
構成
イオードは、
フォトダイオードにて発生する光電流を電流
光電流
100 μA
図2は、
フォトICダイオードの応用回路例です。
フォトICダ
10 μA
増幅します。
1 μA
[図2]応用回路例 (①)
100 nA
0.1
カソード
破線内は
フォトICダイオード
の概念図を示す
内部保護
抵抗
(約150 Ω)
逆
バ
イ
ア
ス
電
源
1
10
100
1000
照度 (lx)
KPICB0083JD
[図5]暗電流−周囲温度 (S9648-200SB)
(Typ. VR=5 V)
10 μA
電流
アンプ
(約1300倍)
1 μA
アノード
CL
Vout
100 nA
RL
KPICC0018JC
暗電流
信号用
フォトダイオード
10000
10 nA
1 nA
3
特性
フォトICダイオードの代表例S9648-200SBの特性につい
て示します。
図3は視感度補正タイプの応用回路例です。
チップ上には2つの受光部があり、1つは信号検出用受
光部、
もう1つは近赤外域にのみ感度をもつ補正用受光部
になっています。各フォトダイオードで発生した光電流を
ICチップ内部の演算回路で差し引くことにより近赤外域が
カットされ、
ほぼ可視光域にのみ感度もった分光感度特性
が得られます。
この信号を電流アンプで増幅して出力しま
す。
図4は光電流の直線性を示します。
照度が500 lxを超え
ると、
直線性が低下する傾向があります。
2
100 pA
10 pA
-50
-25
0
25
50
75
100
周囲温度 (˚C)
KPICB0157JB
[図6]光電流−周囲温度 (S9648-200SB)
[図9]指向特性 (S9648-200SB)
(Typ. Ta=25 °C, タングステンランプ)
(Typ. VR=5 V, 2856 K, 100 lx, * 25 ˚C時を1とする)
1.8
1.6
30°
20°
30°
40°
50°
60°
60°
70°
70°
1.0
80°
0.8
80°
90°
100 80
0.6
60
40
20
0
20
40
60
90°
80 100
相対感度 (%)
0.4
KPICB0174JA
0.2
[図10]外形寸法図 (S9648-200SB, 単位: mm)
-25
0
25
50
75
受光部中心
受光部 0.46 × 0.32
100
ϕ5.0 ± 0.2
周囲温度 (˚C)
KPICB0158JB
[図7]暗電流−逆電圧 (S9648-200SB)
0.13
0
-50
(Typ. Ta=25 ˚C)
0.75 ± 0.25
受光面
(4.3)
3.0
3.5 ± 0.3
1.5 max.
4.0
2.0
1.0
0
2
4
6
8
10
12
14
2.54 ± 0.5
(リード根元で規定)
逆電圧 (V)
フィレット
タイバー切断面 (バリ含む、メッキなし)
アノード
カソード
リード表面処理: Snメッキ
梱包: ポリエチレン袋[帯電防止袋]
500個/袋
KPICB0159JA
[図8]上昇/下降時間−負荷抵抗 (S9648-200SB)
100
(2 ×) 1.0 max.
1.0 min.
(2 ×) 0.5
(1.0)
(2 ×) 1.0 max.
25.4 min.
5.0
0
10°
50°
1.2
光電流 (相対値*)
10° 0°
40°
1.4
暗電流 (nA)
20°
(Typ. Ta=25 ˚C, VR=7.5 V, λ=560 nm, Vo=2.5 V)
KPICA0057JD
tr
上昇/下降時間 (ms)
10
1
tf
0.1
0.01
100
1k
10 k
100 k
1M
負荷抵抗 (Ω)
KPICB0077JA
[表2]S9648-200SBの絶対最大定格 (Ta=25 °
C)
記号
定格値
単位
逆電圧
項目
VR
-0.5 ∼ 12
V
光電流
IL
5
mA
順電流
IR
5
mA
動作温度
Topr
-30 ∼ +80
°
C
保存温度
Tstg
-40 ∼ +85
°
C
3
[表3]S9648-200SBの電気的および光学的特性 (Ta=25 °
C)
項目
記号
条件
Min.
感度波長範囲
λ
最大感度波長
λp
暗電流
ID
VR=5 V
光電流
IL
VR=5 V, 2856 K, 100 lx
上昇時間*
tr
下降時間*
tf
Typ.
Max.
単位
320 ∼ 820
nm
-
560
-
nm
-
1.0
50
nA
0.18
-
0.34
mA
10%∼90%, VR =7.5 V
RL=10 kΩ, λ=560 nm
-
6.0
-
ms
90%∼10%, VR =7.5 V
RL=10 kΩ, λ=560 nm
-
2.5
-
ms
* 上昇/下降時間測定方法
λ=560 nm
LEDを
パルス駆動
2.5 V
90%
VO
10%
フォトICダイオード
0.1 μF
Vout
tr
7.5 V
tf
負荷抵抗 RL
KPICC0229JB
[図11]比視感度における積分値が同一となる色温度分布
[図12]光源の色温度−出力
(Typ. Ta=25 ˚C)
1.0
(Typ. Ta=25 ˚C, 黒体放射束光源)
1.2
S11154-201CT
比視感度
光出力 (参考値)
0.8
相対感度 (2856 K時を1とする)
2856 K
0.6
0.4
5500 K
0.2
0
200
400
600
800
1000
1
0.6
0.4
0.2
0
2000
1200
S9648-200SB
0.8
3000
4000
5000
6000
7000
色温度 (K)
波長 (nm)
KPICB0106JC
2856 Kにおいて人が見える照度
5500 Kにおいて人が見える照度
KPICB0105JA
4
使い方
図11は、
比視感度曲線 (人の目が光を感じる特性)と色
温度のスペクトルを示しています。
各色温度において人が
フォトICダイオードは光電流を増幅して電流出力するた
見える照度が同一になるようにプロットしています。
センサ
め、負荷抵抗を接続することで大きな出力電圧が得られ
の分光感度特性は、比視感度曲線と一致していることが
ます。
カソードには+電位が加わるように接続してください
望ましいわけですが、
実際にはズレがあります。
このズレが
[図2, 図3]。高周波成分を除去することが必要な場合は、
色温度誤差出力を発生させます。赤外域の光出力を含む
負荷抵抗 (RL)と並列にローパスフィルタ用負荷容量 (CL)
白熱灯と、
ほとんど含まない蛍光灯が仮に同一の照度の
を挿入することを推奨します。
この場合の遮断周波数(fc)
場合、赤外域に感度をもつセンサが検出した白熱灯と蛍
は式 (1)で表されます。
光灯の出力値は異なります。
S11154-201CTなどの視感度
補正タイプのフォトICダイオードは、外付けの視感度補正
フィルタを使用していませんが、
分光感度特性を比視感度
特性に近づけて色温度誤差出力を低減しています (図12
参照)。
4
fc =
1
............ (1)
2πCLRL
図13の測定回路例における光電流−逆電圧特性 (光
源: LED)を図14に示します。
A光源換算の照度ごとに出力
曲線を表示しています。
出力曲線は、逆電圧 (立ち上がり
電圧)約0.7 Vから立ち上がります。
フォトICダイオードには、絶対最大定格を超えた電流
[図14]光電流−逆電圧 (代表例)
が流れた場合に内部回路を保護するために約150 Ω (±
(Typ. Ta=25 °C)
5
1600 lx
20%)の保護抵抗が入っています。
フォトICダイオードの飽
和時の逆電圧 (VR)は、
Vbe(ON)と保護抵抗 (Rin)の電圧
4
光電流 (mA)
降下の和になります。
VR = Vbe(ON) + IL × Rin ............ (2)
[図13]測定回路例
IL
RL
(外部抵抗)
1380 lx
内部保護抵抗
Rin: 約150 Ω
飽和域
約1260 lx
1150 lx
3
880 lx
2
負荷線
Vcc=5 V, RL=1 kΩ
飽和域
約650 lx
600 lx
負荷線
Vcc=3 V, RL=1 kΩ
300 lx
1
0
Rin=150 Ω
(保護抵抗)
Vcc
フォトIC
ダイオード
0
1
2
3
4
5
逆電圧 (V)
立ち上がり電圧
Vbe(ON)≒0.7 V
KPICB0107JC
KPICC0128JC
外部抵抗の電圧降下により、
フォトICダイオードの逆電
圧 (V R)は式 (3)で表され、図14では負荷線として示され
ています。
VR = Vcc - IL × RL ............ (3)
図14において、
出力曲線と負荷線の交点が飽和域であ
り、
この点から検出可能な最大光量を指定することができ
ます。電源電圧 (Vcc)、
負荷抵抗 (R L)により、最大光量が
決まりますので、使用条件に合わせて変更してください。
注) Vbe(ON)は約-2 mV/̊C、保護抵抗は約0.1%/̊Cの温度
特性をもっています。
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TEL
TEL
TEL
TEL
TEL
TEL
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(029) 848-5080
(03) 3436-0491
(053) 459-1112
(06) 6271-0441
(092) 482-0390
FAX (022) 267-0135
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Cat. No. KPIC9007J05 Aug. 2015 DN
5