PSD/技術資料

特性と使い方
1. 基本原理
このようにIX1, IX2の差または比を求めることにより、
(1-3), (1-4),
(1-7), (1-8) 式のように光強度およびその変化に無関係に、
光の入
射位置を求めることができます。なお、
ここで求められる光の入射
位置は、
光量の重心位置に当たります。
PSDの基本構造は、
高抵抗半導体基板の片面、
または両面
に均一な抵抗層が形成され、
抵抗層の両端に信号取り出し用
の一対の電極が設けられたものです。受光面は抵抗層である
と同時にPN接合をも形成しており、
光起電力効果により光電流
を生成します。
2. 1次元PSD
図1-1 PSDの断面構造図
図2-1 構造図, 等価回路 (1次元PSD)
XB
Rp
アノード (X1)
XA
出力 IX1
出力 IX2
P
入射光
電極 X1
電極 X2
P層
光電流
D
Cj Rsh
アノード (X2)
カソード (共通)
I層
P:
D:
Cj:
Rsh:
Rp:
N層
共通電極
電流源
理想的ダイオード
接合容量
並列抵抗
ポジショニング抵抗
KPSDC0006JA
抵抗長 LX
図2-2 受光面図 (1次元PSD)
LX
KPSDC0005JA
図1-1はPSDの動作原理を示す断面構造図です。N型高抵
抗シリコン基板の表面に、
受光面と抵抗層を兼ねたP型抵抗層
を形成しており、
その両端に1対の出力電極が形成されています。
また裏面はN層であり、
共通電極が形成されています。基本的な
構造は、
表面のP型抵抗層を除けばPINフォトダイオードと同様の
構造をしています。
PSDにスポット光が入射すると、
入射位置には光量に比例し
た電荷が発生します。
この電荷は光電流として抵抗層に到達し、
それぞれの電極までの距離に逆比例して分割され、
出力電極
X1, X2より取り出されます。
図1-1におけるスポット光の入射位置と出力電極 X1, X2の電
流の関係は以下のようになります。
X1
X2
x
受光面
KPSDC0010JA
●入射位置換算式 (図2-2参照)
2x
IX2 - IX1
=
........ (2-1)
LX
IX1 + IX2
上式におけるIX1, IX2は図2-2に示される各電極からの出力を表
します。
3. 2次元PSD
●PSD中心を原点とした場合
LX
LX
- XA
+ XA
2
2
.........
(1-1)
IX1 =
IX2 =
× Io
× Io ...... (1-2)
LX
LX
2XA
IX1 LX - 2XA
IX2 - IX1
=
.............. (1-4)
=
............ (1-3)
IX1 + IX2
LX
IX2 LX + 2XA
3-1 両面分割型PSD
●PSD端を原点とした場合
IX1 =
LX - XB .
XB .
Io ............. (1-5) IX2 =
Io ................. (1-6)
LX
LX
2XB - LX
IX2 - IX1
=
...... (1-7)
IX1 + IX2
LX
IX1 LX - XB
=
................ (1-8)
IX2
XB
Io : 全光電流 (IX1 + IX2)
IX1: 電極 X1の出力電流
IX2: 電極 X2の出力電流
LX : 抵抗長 (受光面の長さ)
XA: PSDの電気的中心から入射位置までの距離
XB: PSDの出力電極 X1から入射位置までの距離
1
2次元PSDは構造により両面分割型と表面分割型に分けられ
ます。さらに表面分割型には、
受光面、
電極に改良を加えた改
良表面分割型 (ピンクッション型)があります。それぞれの構造に
よって入射位置換算式が異なります。なお、
2次元PSDの場合、
各出力電極をX1, X2, Y1, Y2とします。
両面分割型PSDは図1-1の断面図に示すN層も抵抗層とし、
両面の抵抗層の取り付け方向を直交させた図3-1に示す構造
をしています。表面の電極からX軸方向の位置信号が、
裏面の
電極からY方向の位置信号が出力されます。図3-1に示すように
両面で極性の異なる電流が分割されるため、
表面分割型に比
べ見かけ上、
2倍の信号が得られるため、
優れた分解能を実現
しています。
また電極相互が隣接していないため、
表面分割型
に比べて位置検出特性に優れています。入射位置換算式は、
(3-1), (3-2) 式のようになります。
特性と使い方
図3-1 構造図, 等価回路 (両面分割型)
図3-4 受光面図 (表面分割型)
LX
カソード (Y2)
Rp
アノード (X1)
Y2
P
D Cj Rsh
アノード (X2)
Rp
カソード (Y1)
y
X2
LY
X1
P: 電流源
D: 理想的ダイオード
Cj: 接合容量
Rsh: 並列抵抗
Rp: ポジショニング抵抗
x
KPSDC0007JA
受光面
Y1
図3-2 受光面図 (両面分割型)
KPSDC0011JB
LX
●入射位置換算式 (図3-4参照)
Y2
2x
IX2 - IX1
=
........ (3-3)
LX
IX1 + IX2
y
LY
X1
2y
IY2 - IY1
=
........ (3-4)
LY
IY1 + IY2
X2
x
3-3 改良表面分割型 (ピンクッション型) PSD
受光面
Y1
KPSDC0011JA
●入射位置換算式 (図3-2参照)
IX2 - IX1
2x
=
........ (3-1)
LX
IX1 + IX2
改良表面分割型PSDは表面分割型の電極相互の干渉を抑
えるため、
受光面、
電極に改良を加えたものです。低暗電流、
高
速応答、
逆電圧の印加が容易などの表面分割型の特長に加え、
周辺部での歪みが大幅に改善されています。図3-6における位
置換算式は、両面分割型および表面分割型とは異なり、(3-5),
(3-6) 式のようになります。
図3-5 構造図, 等価回路 (改良表面分割型)
2y
IY2 - IY1
=
........ (3-2)
LY
IY1 + IY2
アノード (X1)
アノード (Y2)
Rp
3-2 表面分割型PSD
アノード (X2)
表面分割型2次元PSDは、
PSDの片面の抵抗層に4つの電極
を付けたものです。光電流は同一抵抗層で4分割され位置信号
として出力されます。両面分割型に比べ周辺部で電極相互の
干渉が生じやすく、
歪みが大きくなる傾向がありますが、
逆電圧
の印加が容易な上、
低暗電流、
高速応答などの特徴をもってい
ます。図3-4における入射位置換算式は、
(3-3), (3-4) 式のように
なります。
アノード (Y1)
カソード
D
P
P:
D:
Cj:
Rsh:
Rp:
Cj
Rsh
電流源
理想的ダイオード
接合容量
並列抵抗
ポジショニング抵抗
KPSDC0009JA
図3-6 受光面図 (改良表面分割型)
図3-3 構造図, 等価回路 (表面分割型)
LX
Rp
P
アノード (Y1)
Y2
アノード (Y2)
アノード (X2)
D
Cj
Rsh
LY
アノード (X1)
X1
X2
y
x
カソード
受光面 *
P: 電流源
D: 理想的ダイオード
Cj: 接合容量
Rsh: 並列抵抗
Rp: ポジショニング抵抗
Y1
* 受光面は内接する四角形で規定しています。
KPSDC0012JA
KPSDC0008JA
●入射位置換算式 (図3-6参照)
2x
(IX2 + IY1) - (IX1 + IY2)
=
........ (3-5)
IX1 + IX2 + IY1 + IY2
LX
2y
(IX2 + IY2) - (IX1 + IY1)
=
........ (3-6)
IX1 + IX2 + IY1 + IY2
LY
2
特性と使い方
PSDの最も重要な特性の一つが、
位置検出特性です。PSD
は、
スポット光を入射したときの各出力電極から取り出される光
電流から、
入射位置を演算することができます。
ここで求められ
る入射位置は光量の重心位置であり、
光束の大きさ、
形状、
光
量の影響を受けません。
しかし実際の入射位置と、
演算によって求められる位置 (演
算位置)の誤差はPSDによってバラツキがあります。ここではそ
の誤差、
すなわち位置検出誤差に関して以下に述べます。
PSDにスポット光を入射し、各出力電極から取り出される光
電流値が等しくなるPSD上のスポット光入射位置を、
電気的中
心位置と呼びます。
この電気的中心位置を原点として、
スポット
光の入射位置と得られた光電流より演算された入射位置との
差を位置検出誤差としています。
図4-2に、
抵抗長3 mmの1次元PSD (S4583-04など)を測定し
た際の、
光電流出力測定例とそのデータをもとに位置検出誤差
を求めた結果を示します。
図4-2 1次元PSDの光電流出力例 (S4583-04など)
IX2
IX1
1.0
相対光電流出力
4. 位置検出誤差
0.5
0
0
-1.5
図4-1 PSD の断面図
スポット
光
X1
+1.5
PSD上の位置 (mm)
X2
抵抗長 LX
Xi
電気的中心位置
1次元PSDの位置検出誤差例 (S4583-04など)
Xm
+50
P型抵抗層
N層
入射位置 Xi
演算位置 Xm
共通電極
KPSDC0071JB
位置検出誤差の計算方法は次の通りです。図4-1において電
気的中心位置を基準 (原点)として、
スポット光の実際の入射位
置をXi、
各出力電極からの光電流 (IX1およびIX2)より演算された
位置をXmとします。
ここでXiとXmの差を位置検出誤差と定めま
す。
位置検出誤差 (µm)
I層
0
-50
-1.5
-1.0
-0.5
0
+0.5
+1.0
+1.5
PSD上の位置 (mm)
KPSDB0005JA
位置検出誤差 E = Xi - Xm [µm] ........ (4-1)
Xi : 実際の位置 (µm)
Xm: 演算位置 (µm)
Xm =
IX2 - IX1 . LX ........ (4-2)
IX1 + IX2 2
なお、
位置検出誤差の測定条件は以下の通りです。
・光源
: l=890 nm
・スポット光サイズ: f200 µm
・全光電流値 : 10 µA
・逆電圧
: 所定の電圧
(データシート記載値)
位置検出誤差の規定範囲
PSDは受光面全域での位置検出が可能ですが、
図4-3のよう
にスポット光の一部が受光面からはみ出した場合、
スポット光の
光量重心と、
受光面上の光量重心に、
ズレが生じて正確な位置
検出ができなくなります。
したがってスポット光に合わせてPSDを
選択する必要があります。
図4-3 スポット光の光量重心位置
スポット光
出力電極 X1
受光部
受光面内のスポット光の
光量重心位置
スポット光全体の
光量重心位置
出力電極 X2
KPSDC0073JA
3
特性と使い方
位置検出誤差の測定条件は入射するスポット光を通常は
f200 µmとしており、図4-4∼4-6に示すような位置検出誤差の
規定範囲を設定しています。
図4-4 1次元PSD (抵抗長≦12 mm)の位置検出誤差
規定範囲
出力電極 X1
受光部
出力電極 X2
5. 位置分解能
位置分解能はPSDの受光面上で検出できるスポット光の最小
変位として定義し、
受光面上の距離で表します。
位置分解能はPSDの抵抗長と信号対雑音比によって決まりま
す。(1-6)の位置演算式を例にとると、
以下の式が成り立ちます。
XB + Dx .
Io ......... (5-1)
LX
IX2 + DI =
Dx: 微小変位
DI: 出力電流の変化
規定範囲
LX × 0.75
抵抗長 LX
KPSDC0074JA
図4-5 1次元PSD (抵抗長>12 mm)の位置検出誤差
規定範囲
出力電極 X1
受光部
出力電極 X2
したがって、
Dxは以下の式で表されます。
DI
Dx = LX .
Io
となり、
位置変化が無限小になったときを考えると、
出力電流
IX2に含まれる雑音成分が分解能を決定することがわかります。
一般にPSDの雑音電流をInとすると、
位置分解能DRは、
以下の
式で表されます。
In
.......................... (5-3)
Io
DR = LX .
規定範囲
LX × 0.90
抵抗長 LX
KPSDC0075JA
図4-6 2次元PSDの位置検出誤差規定範囲
........................... (5-2)
PSDを、
電流−電圧変換型オペアンプと結合して使用する場
合の、
基本的接続例を図5-1に示します。
また、
図5-2にその雑音
モデルを示します。
図5-1 1次元PSDと電流−電圧変換型オペアンプとの
基本接続例
ZONE A
ZONE B
Rf
受光部
Cf
Rf
PSD
Cf
-
-
+
+
A
KPSDC0063JA
A
周辺部は中心部に比べ、
位置検出誤差が大きいため、ZONE
A, Bに区別して規定しています。
VR
・ZONE A: 受光部の一片の長さに対し40 %の直径の円内
・ZONE B: 受光部の一片の長さに対し80 %の直径の円内
KPSDC0076EA
図5-2 雑音モデル
Rf
Cf
PSD
IO
ID
Rie
Cj
in
en
∼
A
Vo
+
KPSDC0077EA
Io : 光電流
ID : 暗電流
Rie: 電極間抵抗
Cj : 接合容量
Rf : フィードバック抵抗
Cf : フィードバック容量
en : オペアンプの入力換算雑音電圧
in : オペアンプの入力換算雑音電流
Vo : 出力電圧
4
特性と使い方
電流−電圧変換回路のフィードバック抵抗 Rfは、
PSDの電極
間抵抗 Rieと比較して十分大きな値であるとして、
入力換算で雑
音電流を計算します。
この場合1/Rfは1/Rieと比べ十分小さいと
みなせるため、無視できます。データシートではこの方法により
PSDの分解能を計算しています。
1) 光電流および暗電流に起因するショット雑音電流 Is
2q . (Io + ID) . B [A] ............ (5-4)
q : 電子の電荷 (1.60 × 10-19 C)
Io: 信号光電流 (A)
ID: 暗電流 (A)
B : 帯域幅 (Hz)
2) 電極間抵抗で発生する熱雑音電流 (ジョンソン雑音電流) Ij
(通常Rsh>>RieのためRshについては無視できます。)
Ij =
4 kTB [A] ............ (5-5)
Rie
なおデータシートでは、
光電流 1 µA、
回路系入力雑音 1 µV
(31.6 nV/Hz1/2)周波数帯域 1 kHzを規定条件として位置分解能を
計算しています。
k : ボルツマン定数 (1.38 × 10-23 J/K)
T : 絶対温度 (K)
Rie: 電極間抵抗 (W)
3) オペアンプの入力換算雑音電圧の雑音電流 Ien
10
B [A] ............ (5-6)
en: オペアンプの入力換算雑音電圧 (V/Hz1/2)
PSDの雑音電流は (5-4), (5-5), (5-6)式の和より実効値 (rms)
として、
以下の式で表されます。
In =
図5-3 ショット雑音−信号光電流
(Typ. Ta=25 ˚C)
en
Ien =
Rie
Is2 + Ij2 + Ien2 [A] ............ (5-7)
Rie
RfがRieに対して無視できない場合は、( Rf >0.1
程度のとき)
出力換算雑音電圧で考える必要があります。
この場合 (5-4), (55), (5-6) 式は出力電圧換算すると以下のようになります。
ショット雑音電流 (pA/Hz1/2)
Is =
Rf>> Rieのときのショット雑音電流を、
信号光電流をパラメータ
にして表したものが図5-3です。
また熱雑音および、
オペアンプの
入力換算雑音電圧による雑音電流を、
電極間抵抗をパラメータ
にして表したものが図5-4です。10 kW程度の電極間抵抗のPSD
では使用するオペアンプの選択が雑音電流を決める要因となる
ため、
さらに低雑音電流のオペアンプを使用する必要があります。
また100 kWを越える電極間抵抗のPSDでは、
PSD自身の電極間
抵抗による熱雑音が支配的になります。
このように、
PSDは電極間抵抗と受光量により位置分解能が
決まります。
この点が他の分割型検出器と最も異なる点です。
PSDの位置分解能を向上させるには、
次のような手法が有効
です。
・信号光電流 Io を増加させる。
・電極間抵抗 Rie を高くする。
・抵抗長 L を短くする。
・適切な雑音特性のオペアンプを使用する。
1
0.1
0.01
0.01
0.1
1
10
信号光電流 (µA)
Vs = Rf .
2q . (Io + ID) . B [V] ............ (5-8)
Vj = Rf .
4 kTB [V] .............................. (5-9)
Rie
Vin = Rf . in .
4 kTB [V] ............................ (5-11)
Rf
5
1
0.1
B [V] ............................ (5-12)
そのため、
オペアンプの入力換算雑音電圧は実効値 (rms)で、
以下の式で表されます。
Vn =
電極間抵抗で発生する熱雑音電流 Ij
オペアンプの入力換算雑音電圧による
雑音電流 (en=10 nV)
オペアンプの入力換算雑音電圧による
雑音電流 (en=30 nV)
B [V] .............. (5-10)
さらにフィードバック抵抗の熱雑音とオペアンプの入力換算雑
音電流が加わり、
以下のようになります。
VRf = Rf .
(Typ. Ta=25 ˚C)
10
雑音電流 (pA/Hz1/2)
Ven = 1 + Rf . en .
Rie
KPSDB0083JB
図5-4 雑音電流−電極間抵抗
Vs2 + Vj2 + Ven2 + VRf2 + Vin2
[V] ............ (5-13)
0.01
10
100
1000
電極間抵抗 (kΩ)
KPSDB0084JA
特性と使い方
PSDの応答速度は、
フォトダイオードと同様に生成したキャリ
アをどれだけ速く外部回路へ電流として取り出し得るかを示す
値です。応答速度は、通常上昇時間 trで表します。PSDの受
光面上のスポット光の位置が高速で移動する場合や、
信号光
源をパルス点灯させて背景光を除去して使用する場合などに、
PSDの応答速度が問題となります。上昇時間は出力信号が10
%から90 %に達する時間で規定され、
主に以下の2つの要素
で決まります。
1) 電極間抵抗、
負荷抵抗、
端子間容量の時定数 t1
PSDの電極間抵抗 Rieは基本的には負荷抵抗 RLとして働
くため、
電極間抵抗 Rieと端子間容量 Ctによって表される時定
数 t1は次のようになります。
t1 = 2.2 . Ct . (Rie + RL) ......... (6-1)
図6-2は上昇時間と逆電圧、
入射光の波長の関係を示した例
です。逆電圧を大きく、
入射光の波長を短かくすることが上昇時
間を速くするのに有効であることがわかります。
また、
電極間抵抗
Rieの小さいPSDを選択することも有効です。
図6-2 上昇時間−逆電圧 (S4583-06)
(Typ. Ta=25 ˚C)
10
8
上昇時間 (µs)
6. 応答速度
6
l=890 nm
4
2
PSDのRieは電極間に分布していますが、
データシートでは受
光面中心での応答速度を定義しているため、
おおよそ次のよう
になります。
l=650 nm
0
0.1
1
10
100
逆電圧 (V)
t1 = 0.5 . Ct . (Rie + RL) ......... (6-2)
KPSDB0110JA
2) 空乏層外生成キャリアの拡散時間 t2
空乏層外生成キャリアは、
入射光がPSDの受光面から外れ
たチップ周辺部や、
空乏層よりさらに深い基板内で吸収された
場合に発生します。
これらのキャリアは基板内を拡散し出力され
ますが、
拡散するのに要する時間 t2は数µs以上になることがあり
ます。
PSDの応答より短いパルスに対しては、
位置出力を積分する
ことによって検出する手法もあります。
PSDの上昇時間 trは次式で近似され、
応答波形は図6-1のよ
うになります。
tr ≒
t12 + t22 .................... (6-3)
図6-1 PSDの応答波形の例
光入力
出力波形
(t1>>t2)
出力波形
(t2>>t1)
KPSDC0078JA
6
特性と使い方
図7-3 飽和光電流−電極間抵抗 (受光面全面照射時)
7. 飽和光電流
(Typ. Ta=25 ˚C)
1 mA
VR = 5 V
VR = 2 V
100 µA
飽和電流
PSDを屋外など背景光の多い場所で使用する場合や、
信号
光量が極めて大きい場合、
光電流によるPSDの飽和を考慮す
る必要があります。図7-1は、PSDが飽和していない場合の出
力例です。受光面全域で直線性があり、PSDは正常に機能し
ます。
過多の背景光や信号光量が極めて大きい場合、PSDは飽
和してしまいます。図7-2は、
PSDが飽和した場合の出力例です。
出力の直線性が失われ、
PSDは正常に機能しなくなります。
PSDの飽和現象は電極間抵抗と逆電圧に依存しており、
図
7-3にこれらの関係を示します。
この飽和光電流は受光面全域
に光を入射させたときの全光電流値で規定しています。微小
スポット入射時は部分的に電流が集中しますので、
この値よりも
低い値になります。
VR = 1 V
10 µA
1 µA
10
VR = 0 V
100
1000
電極間抵抗 (kΩ)
PSDの飽和現象を避けるためには、
次のような手法が有効です。
・光学フィルタで背景光をカットする。
・受光面積の小さいPSDを使用する。
・逆電圧を上げる。
・電極間抵抗を下げる。
・スポット光の集中を避ける。
図7-1 正常動作時の光電流出力例 (S5629)
(Ta=25 ˚C)
120
IX1 + IX2
100
相対光電流 (%)
IX1
IX2
80
60
電気的中心
40
20
0
-4
-3
-2
-1
0
1
2
3
4
入射位置 (mm)
KPSDB0087JA
図7-2 飽和時の光電流出力例 (S5629)
(Ta=25 ˚C)
120
相対光電流 (%)
100
IX1
80
IX2
IX1 + IX2
60
40
電気的中心
20
0
-4
-3
-2
-1
0
1
2
3
4
入射位置 (mm)
KPSDB0086JB
7
KPSDB0003JA