ロジスティクス分野における環境負荷低減

ロジスティクス分野における
環境負荷低減
山上 利光
近年、原油価格が乱高下する中で、エネルギー供給の
モーダルシフトの効果を適切に把握するには、経路の
大部分を海外に依存する我が国としては、経済的リスク
変更や末端輸送が追加されるため、単に輸送機関を選択
と限られたエネルギー資源の有効活用が重要視されている。
するだけでなく、出荷地から荷受地までの全行程を対象
特に、1970年代の第1次石油危機以降、民生部門と同様
とすることが重要である。具体的には、図1に示すとおり、
にエネルギー消費量の伸びが著しい運輸部門について、こ
末端のトラック輸送、港湾/空港における積替え(荷役)
れまでの省エネルギー法では自動車単体の燃費改善のみ
のプロセスも含めて比較検討することが必要である。
を措置してきたが、2006年(平成18年)4月から施行さ
れた「改正省エネルギー法」では、輸送活動に関わる荷
主にも義務を課すことになった。
OKIの事業活動における主力輸送手段は、トラック便に
出
荷
地
ト
ラ
ッ
ク
おいて配送便(2t∼4t*)が全体の40%、輸送便(10t*)
が50%、鉄道便が4%であり、2007年度のCO2排出量は
区分
輸送量(t)
最大積載量(kg)
軽
油
1,000∼3,999
10,000∼11,999
小計
その他(車種不明)
貨物自動車合計
鉄道
総合計
06年度
23,625
25,452
49,077
−
49,077
1,680
50,757
06年度
1,687
626
2,313
1,416
3,728
56
3,784
船舶
駅
・
港
湾
・
空
港
荷
受
地
ト
ラ
ッ
ク
また、表3に示すように鉄道・海運の場合、トラック輸
CO2排出量(t-CO2)
07年度
24,348
33,991
58,338
8,074
66,413
2,513
68,926
鉄道
図1 輸送機関別物流フローの概要 2)
約3,900t-CO2であった(表1)
(*:tは車両の積載重量を表す)
。
表1 ロジスティクス分野のCO2排出量実績
駅
・
港
湾
・
空
港
07年度
1,855
861
2,716
1,102
3,818
84
3,901
送と比べると①「末端輸送が生じるため立地に依存する」
②「ダイヤや入港時間等が限定される」③「事故時の代
替輸送や気象・海条件の影響を受ける」等の制約がある。
このため、輸送条件(納期、ロットサイズ等)や経済的
合理性等を十分に考慮し、モーダルシフト適用の可否を
検討する必要がある。
表3 モーダルシフト適用可否判断における特徴比較
モーダルシフトの推進
モーダルシフトとは、トラック輸送を、鉄道および船
舶輸送に移行にすることにより、貨物の輸送に係るエネ
ルギーの使用量を削減することをいう。表2に示すとおり、
比較項目
トラック
車両の大きさ別に、時間制、距離制コストが設定される。 輸送距離が長い場合にコスト競争力が高い。
ロット
車両の大きさによりさまざまなロットを選択可能。
混載による小口貨物への対応も可能。
キャリアの設定する輸送ロットに依存する
(鉄道・船舶
は5
トン以上のロットが必要な場合が多い)小口貨物の
混載システムがないため、小ロットでの利用は難しい。
立地
立地による制約なく、
ドアツ−ドアでの対応可能。
駅、港湾、空港などのインフラが近隣に必要となる。
(インフラがない場合は、
トラック輸送の距離が長くなる
ため、
CO2削減、
コスト増となる)
時間
輸送ルートごとの輸送時間を平均走行距離
(高速道路利用等)等により設定しやすい。
環境負荷
輸送量当りのエネルギー使用量が大きい。
1程度であり、エネルギー効率の高い運輸手段である。
区分
10
tディーゼルトラック
(積載率100%の場合)
鉄道
内航船舶
航空
1
トンの荷物を1km運ぶのに必要な
エネルギー使用量(MJ/トンキロ)
OKIテクニカルレビュー
2009年4月/第214号Vol.76 No.1
リスク
連結点等での接続により、所要時間が長くなる。
発着ダイヤにより、時間帯の制約がある港湾荷役につ
いては、
日曜祭日、夜間荷役がされないことがある。
輸送量当りのエネルギー使用量が小さい。
CO2排出量はトラック輸送の7分の1である。
トラック輸送よりも低いが、発生し
交通事故発生のリスクは、鉄道・船舶よりも高いが、 交通事故のリスクは、
た場合の影響は甚大である。災害、天候により遅延へ
代替輸送の手配が容易である。
の対応や代替輸送が必要である。
港湾荷役については、
ストライキ等により作業されない
可能性がある。
1.
39
(1)OKIにおけるモーダルシフト取り組み状況
0.
491
0.
555
22.
2
現在、OKIにおけるモーダルシフトの取り組み状況は、
MJ:メガジュール
46
鉄道・船舶
コスト
10tトラックに対し、鉄道での使用エネルギーは、3分の
表2 輸送機関別の輸送量(輸送トンキロ)当りのエネルギー使用量1)
2)
表4に示すとおり、群馬県 伊勢崎を発地として500kmを
基準にOKI支社がある拠点を網羅している。
環境特集 ∼低炭素社会に向けて∼ ●
ための取り組みを進めるよう促すことを目的とした企業/
表4 OKIのモーダルシフト網
拠点
トラック輸送
着地
札幌
仙台
名古屋
大阪
広島
高松
福岡
発地
伊勢崎
伊勢崎
伊勢崎
伊勢崎
伊勢崎
伊勢崎
伊勢崎
北海道(札幌)
東北(仙台)
中部(名古屋)
関西(大阪)
中国(広島)
四国(高松)
九州(福岡)
距離キロ
1,081
378
500
520
915
719
1,199
起点
倉賀野
熊谷
倉賀野
倉賀野
倉賀野
倉賀野
倉賀野
JRコンテナ輸送
終点
札幌
仙台
名古屋
大阪
広島
高松
福岡
距離キロ
1,175
404
549
549
887
745
1,225
商品の認定マークである。このマークを商品、カタログ
等消費者の目に触れやすい媒体への表示を行うことによ
り、顧客の理解を促すことで地球温暖化防止と商品の差
別化に貢献することが期待できる。
このマークの認定企業数は、2008年度12月時点で、わ
ずか47社であるが、今後、増加することが予想される。
OKIのモーダルシフトにおける主力コンテナは、JR5t
コンテナで、輸送トンキロの内訳は表5のとおりである。
OKIグループのロジスティクス部門は、2009年度にエコ
レールマークを取得する取り組みを実践中である。
また、北海道(札幌)
、中国(広島)
、四国(高松)
、九州
(福岡)の長距離定期便を中心にモーダルシフトを推進し
た結果、2007年度の輸送トンキロの実績は、全年度比1.5
バイオ燃料には、バイオエタノールとバイオディーゼル
倍に増加した。
表5 OKIの年間鉄道輸送トンキロ実績
品目
拠点
北海道
東北
中部
関西
中国
四国
九州
札幌
仙台
名古屋
大阪
広島
高松
福岡
バイオディーゼル燃料(BDF)の利用
情報通信機器
情報通信機器
情報通信機器
情報通信機器
情報通信機器
情報通信機器
情報通信機器
計
JR5tコンテナ輸送
起点
終点
倉賀野
札幌
熊谷
仙台
倉賀野
名古屋
倉賀野
大阪
倉賀野
広島
倉賀野
高松
倉賀野
福岡
06年度
07年度
トンキロ
669,465
728,190
4,037
2,019
3,547
0
10,984
13,730
993,328
492,230
245,685
227,073
1,873,944
1,090,072
3,800,990
2,553,314
の2系統があり、OKIの取り組みは、図2に示すバイオ
ディーゼル系の「廃食用油」を利用した取り組みである。
バイオ燃料
バイオエタノール
糖質原料
でんぷん質原料
コメ
トウモロコシ
麦他
セルロース系原料
バイオディーゼル
(2)OKIのモーダルシフト化率
さとうきび他
廃食用油
植物由来
廃木材
稲わら他
パーム
菜種
モーダルシフト化率とは、輸送距離500km以上の輸送
ひまわり
量のうち、鉄道または海運により運ばれている輸送量の
大豆
割合をいう。
ヤトロファ
OKIモーダルシフト化率の実績は、表6に示すとおり、
図2 バイオ燃料分類
50%程度で推移している。
なお、2006年度∼2007年度かけてモーダルシフト化
OKIは、①軽油価格の高騰、②CO2排出量削減の取り組
率が58%から47%に悪化した要因は、お客様が要求する
み③産業廃棄物削減の取り組みを背景に、2008年度より、
納期の関係で、リードタイムの長い鉄道便からトラック
東京都八王子市と埼玉県蕨市にある社員食堂の使用済天
による長距離定期便に大きくシフトしたためである。
ぷら油を、バイオディーゼル燃料に精製し、トラック燃
次の目標としては、環境負荷低減効果が高く全体の半
料として再利用している。バイオディーゼル燃料は、今
数を占める10tトラックの長距離定期便輸送を中心にモー
まで廃棄物して処理されていた植物性の廃食油を原料と
ダルシフトを推進し、さらなるCO2削減と経済的効果を
した、バイオマスエネルギーとして注目されており、表7
(次ページ)に示す複数の利点がある。
創出したい。
表6 2006∼2007年度のOKIモーダル
車種
10tトラック
4
tトラック
JR5
tコンテナ
長距離定期便合計
モーダルシフト化率
輸送トンキロ
2006年度
2007年度
1,799,476
4,101,29
78,139
221,356
2,551,294
3,793,40
4,428,909
8,116,06
58%
47%
(3)エコレールマークの取得に向けた取り組み
エコレールマークは、国土交通省が主催する、消費者、
企業が一体となって鉄道貨物輸送による環境負荷低減の
(1)バイオディーゼル燃料の精製結果
植物性廃食油の約90%はバイオディーゼル燃料として
精製され、残りの約10%は副産物として再生可能なグリ
セリンが精製され、廃棄物が発生しないリサイクルを実
現することができる(写真1:次ページ)
。
(2)バイオディーゼル燃料使用によるCO2削減効果
軽油に代えてバイオディーゼル燃料を使用することに
より、CO2排出量削減効果を得ることができる。
OKIテクニカルレビュー
2009年4月/第214号Vol.76 No.1
47
表7 主要なバイオディーゼル燃料環境メリット
エコドライブの展開
◎CO2排出量を大幅に削減
バイオディーゼル燃料の原料である植物性油は、菜種や大豆などの植物
が、成長過程においてCO2を吸収し光合成により得られた養分から作られ
たものであり、
ライフサイクル全体でみると多くのCO2を削減しているこ
とになる。
◎黒煙の排出量が3分の1以下
軽油に比べ引火点が高く、
また燃焼中に酸素を含むため完全燃焼が促進
され、黒煙の排出量は軽油の3分の1になる。
OKIでは、2007年度より主力輸送パートナーのドライ
バーに対し、静岡県にあるOKIカスタマアドテック東海研
修センターで、実車を使用したエコドライブ研修会を開
催している。
目的は、
「エコドライブの理論を学び、体験運転による
◎硫黄酸化物を大幅減少
ノウハウを身につける」ことであり、表8に示す効果が期
アトピーや酸性雨の原因となる硫黄酸化物(SOx)
は排ガス中にほとんど
含まれない。
待できる。
◎車両改造なしで使用可能
燃料を軽油からバイオディーゼル燃料にかえる場合には、車両そのものの
改造の必要はない。
表8 エコドライブに期待される効果
◎軽油取引税は課税対象外
・会社の収益向上。
ドライバー自身の収益も向上。
バイオディ−ゼル燃料は、炭化水素系油でないため、純度100%であれば
課税対象外である。
1.燃料費の節約!
◎グリセリンを有効活用
2.安全運転に貢献!
バイオディーゼル燃料精製中に副産物として作られるグリセリンは、洗剤、
たい肥等に有効活用できる。
・燃料費は、人件費ついで第2位の経費ですが、
自助努力で節約。
・省燃費運転は、
「急発進・急加速・急停止」をしない
運転でもあり、安全運転につながり事故を抑制。
3.地球環境にやさしい!
4.車両にやさしい!
・地球温暖化の原因であるCO2の削減。
・改正省エネ法を順守する重要な取り組み。
・省燃費運転は、
「急発進・急加速・急停止」をしない
ため、車両故障に関わるメンテナス費用を削減。
(1)エコドライブ10のすすめ
自動車から排出されるCO2排出量を、できる限り抑制
させるために、図3にある10項目を念頭に運転することが
必要である。これらは、安全運転の面においても極めて
重要であり、企業の経済的/品質的効果にも大きな影響
を及ぼす。
写真1 バイオディーゼル燃料精製工程
財布にやさしい
地球にやさしい
燃費がよくなる!
CO2の排出が減る
油は、菜種や大豆などの植物が、成長過程においてCO2
1条
アクセル「eスタート」
2条
加減速の少ない運転
を吸収し光合成により得られた養分から作られたもので
3条
早めのアクセルオフ
4条
エアコンの使用を控える
5条
アイドリングストップ
6条
暖機運転は適切に
を使用したトラック便を活用し、精製過程においても家
7条
道路交通情報の活用
8条
タイヤの空気圧をチェック
庭用洗濯機程度の消費電力であることから、ライフサイ
9条
不要な荷物は積まずに
10条
駐車場所に注意
理由として、バイオディーゼル燃料の原料である植物性
ある。
また、廃食油の回収の際にも、バイオディーゼル燃料
クル全体でみると多くのCO2を削減していることになる。
図3 エコドライブ10ケ条
(3)今後の展開とその他の効果
今後、OKI関東エリアにあるすべての社員食堂から植物
このような、エコドライブの研修は、輸送パートナー
性の廃油の回収を実現したいと考えている。また、バイ
(輸送事業者)が自らのドライバーに実施すべきものであ
オディーゼル燃料精製の際、副産物として精製されるグ
るが、輸送パートナーに研修を実施するだけの十分な体
リセリンが油汚れ洗剤として有用であり、八王子の社員
制がない場合が多い。そのため、荷主として、輸送パー
食堂では、化学洗剤からの代替に取り組み、新たな側面
トナーの従業員教育・研修等を企画・支援している。
から企業の環境負荷低減活動に貢献している。
しかし、効果的なドライバー教育・研修を実施するた
めには、トラックメーカーの専門知識が必要である。
48
OKIテクニカルレビュー
2009年4月/第214号Vol.76 No.1
環境特集 ∼低炭素社会に向けて∼ ●
OKIでは、大手トラックメーカーの協力を得て、国土交
通省が認定する交通エコロジー・モビリティ財団の教育
プログラムに基づき、エコドライブ研修を実施している。
また、研修受講者には、写真2の修了証を授与し、意識向
上を図っている。
■参考文献
1)貨物輸送事業者に行わせる貨物の輸送に係るエネルギーの使
用量の算定の方法,平成18年経済産業省告示第66号
2)荷主のための省エネルギーガイドブック,資源エネルギー庁
省エネルギー対策課
3)エコドライブ推進マニュアル,社団法人全日本トラック協会
●筆者紹介
山上利光:Toshimitsu Yamagami. 株式会社沖ロジスティクス
業務企画部 事業推進担当 グリーンロジスティクス管理士
写真2 国土交通省認定 交通エコロジー・モビリティ財団発行の修了証
(2)エコドライブ走行による効果
エコドライブ走行による効果を確認するため、燃費計
等のエコドライブ支援機器を車に装着し、データの収集・
分析を実施した。その結果、表9に示すとおり、平均で
16%程度の燃費向上が見られた。
表9 車両(8t)実走行による検証結果 3)
燃費
km/L
指導前
指導後
改善効果
4.4
5.11
+0.71
アイドリング 急発進・急
時間割合 加速割合
%
%
急減速
割合
%
平均速度
km/h
一般道
高速道
18.1
18
0
44
91
14.9
12
0
44
79
−3.2
−6.0
0
0
−12
燃費向上 4.
40km/L → 5.
11km/L(16%向上)
エンジン過回転
割合 %
一般道
0.6
0
+0.6
高速道
70.8
17.1
−53.7
あ と が き
資源枯渇と地球温暖化は世界的問題であり、1人ひとり
が、意識し小さなことでも積重ねていくことが重要であ
る。環境対策は、
「ムダ・ムラ・ムリ」を無くし、経済的
も有効な取り組みだと考える。今後も、グリーン物流に
積極的に取り組み、
「エコロジー&エコノミー」の実現に
向け、努力したい。
◆◆
OKIテクニカルレビュー
2009年4月/第214号Vol.76 No.1
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