「フルスペクトル型フローサイトメーターを用いた免疫学研究」が

フルスペクトル型フローサイトメーターを用いた
免疫学研究
Investigation of Immunological Research by Using Spectral Flow Cytometer
戸村道夫
Michio Tomura
フローサイトメーターは免疫細胞の表面分子の解析など血球細胞の性状解析に必須のツールであるが,検出に用いる蛍光プローブ
間のシグナルの漏れ込みにより,波長が近いプローブ同士や多数の蛍光色素の同時分離検出は困難である.本稿では,一般に市販
されている従来機とはまったく異なる原理による蛍光検出により,従来のフローサイトメーターではほぼ不可能であった近接波長
蛍光プローブの分離を可能にしたソニーのスペクトル解析型セルアナライザーSP6800 を用いた免疫学研究への展開を紹介する.
フローサイトメーター,スペクトル,蛍光,免疫学
◉はじめに
フローサイトメトリーは免疫学の発展と共に進んできたが,最近では免疫細胞に留まら
ず,iPS 細胞,植物細胞の高速・マルチパラメーター解析などに必須の解析装置となってい
る.図 1A に示すように,従来市販されているフローサイトメーターでは,蛍光標識した抗
体を反応させた白血球などの単細胞浮遊液を高速で流路内に流し,レーザーで励起し蛍光
を発生させる.そして,特定の波長より長波長の光は通過し短波長の光は反射するミラーと,
特定の波長領域の光だけ通過するバンドパスフィルターを複数段階組み合わせて,発生し
た蛍光シグナルを分光した後,光センサーである光電子増倍管(PMT)で検出する.した
がって,検出できる蛍光色素の最大チャネル数は PMT 数と同一になる.しかし,それぞれ
の蛍光色素の波長には幅があるため複数の蛍光色素を同時に用いた場合,他のチャネルに
互いにシグナルが漏れ込む.そのため,データ解析時には漏れ込みを補正するためのコン
.8∼10 色程度のマルチカラー解析になっ
ペンセーションという操作が必要である(図 1B)
てくると補正が困難で最大チャネル数の蛍光色素を使用できないことも多く,どのチャネ
ルにどの蛍光標識のどの分子に対する抗体を使用するか,など抗体染色パネルの設定およ
びその解析には専門的な知識と経験が要求されるのが現状である.
一方最近は,蛍光タンパク質を転写因子やケモカインレセプターのプロモーター誘導性
に発現させるマウスや,筆者らの用いている細胞周期や細胞死,また紫色光で緑から赤に色
変換するカエデマウスなど,蛍光タンパク質によって細胞系列,細胞機能や免疫細胞動態な
どの解析が可能になっている.そのため,蛍光タンパク質と蛍光色素を組み合わせて同時
に検出する機会も増えている.この同時検出において問題になるのが,①従来のフローサ
イトメトリーのフィルターセットの設定は,一般的に用いられる蛍光色素の検出に合わせ
てされていること,②蛍光タンパク質の蛍光波長は,蛍光色素に比べ一般的にブロードであ
ること,③イメージング解析にも共用できるよう,フローサイトメトリーの通常設定では測
定レンジをオーバーするような蛍光タンパク質を強発現するマウスが実験に用いられてい
ることも多いことである.そのため,複数の検出チャネルに強い蛍光シグナルが漏れ込み,
蛍光タンパク質と蛍光色素の同時検出が困難になっている.
1072
細胞工学 Vol.33 No.10 2014
A
蛍光
レーザー光
PMT-4
PMT-3
流路
PMT-2
:細胞
PMT-1
:蛍光色素標識抗体
B
測定情報
蛍光強度
従来の方法
(フィルター方式)
−
PMT 1
C
解析情報
2
3
=
4
スペクトル・デコンボリューション(スペクトル方式)
各色素のリファレンス
・スペクトル
蛍光色素B
蛍光色素C
蛍光色素D
解析情報
デコンボリューションにより
各色素の量を推定
蛍光強度
蛍光色素A
測定情報
PMT 1 2 3 4
蛍光色素A
蛍光色素B
蛍光色素C
蛍光色素D
32
■図 1 従来のフローサイトメトリーによる細胞の蛍光の検出と,スペクトル解析型セルアナライザーにおける蛍光分離の原理
A,B:従来のフローサイトメトリーによる細胞の蛍光の検出とデータ処理.C:フルスペクトル型フローサイトメーターにおける蛍光分離と検出の原理.
本稿では,一般に市販されている従来機とはまったく異なる原理による蛍光検出により,
これらの課題を解決し,さらに従来機ではほぼ不可能であった近接波長蛍光プローブ間,例
えば FITC と GFP の同時検出や,自家蛍光の強い細胞の除去を可能にしたソニーのスペクト
ル解析型セルアナライザーSP6800 の特徴と当機を用いた免疫学研究への展開を紹介する.
細胞工学 Vol.33 No.10 2014
1073
A
異軸レーザー光源
488nm/638nm
特注32チャネルPMT
B
1 5
500
10
PMTチャネル
20
25
15
550
600
650
波長[nm]
30
700
750
マイクロレンズアレイ
プリズムアレイ
32
800
■図 2 スペクトル解析型セルアナライザーSP6800 の基本仕様
A:SP6800 の基本構造.B:32 チャネル PMT で各々のチャネルに取り込まれる蛍光の領域.
Ⅰ.スペクトル解析型セルアナライザーSP6800 の装置原理と特徴
励起レーザーは 488nm と 638nm の 2 本を搭載し異軸に配置している.細胞からの蛍光
シグナルは,円弧状に配置したプリズムを通して帯状に拡げた後,500∼800nm の波長範
囲の蛍光すべてを 32 分割して並列配置した 32 個の PMT 検出器により取得する(図 2A).
赤領域よりも青∼緑領域で,波長が隣接した多数の蛍光色素が用いられているため,青∼緑
領域でより高い波長分解能が得られる分光を独自のプリズム光学系によって実現している
.以上のように SP6800 は,従来の市販機で用いられてきた光学フィルターは一切
(図 2B)
使用していない 1) .
SP6800 における各蛍光色素の分離は,各蛍光色素の単染色のサンプルの測定,あるいは,
既登録された蛍光色素の波長情報をリファレンススペクトルとして用い,取得したサンプ
ルの蛍光スペクトル情報を最小二乗法をベースとしたデコンボリューション(分離)計算に
よって解析して全色素の量を定量的に算出する(図 1C).計算方法は複数準備しており,用
いる蛍光色素数,および分離の難易度により選ぶことができる.
デコンボリューション後のデータは,表示方法および解析方法も従来のフローサイトメー
ターと同様に行うことができる.すなわち,データ取り込み時に,取り込んでいる細胞の蛍
光情報を従来のフローサイトメトリー同様,ヒストグラム,あるいはドットプロットにより
リアルタイム表示し,デコンボリューション後のデータは .fcs 形式のファイルでエクスポー
トして Flow Jo で解析することができる.
Ⅱ.免疫系解析への展開
免疫系は個体全体に展開する高次複雑系であり 10 12 個もの多種多様の免疫細胞が臓器間
を移行しながら的確な場所でシグナルを受け機能発現することで動的平衡状態を保つ 1 つ
1074
細胞工学 Vol.33 No.10 2014
0
1
照射時間(秒)
70
120
B
シグナルの強さ(×107)
A
C
15
240
960
30
KikGR-Red
(Area)
5
2
1
0
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32
検出チャネル
1×10
7
1×106
1×105
■図 3 光変換蛍光タンパク質 KikGR
発現細胞の光照射時間依存的な
緑色から赤色への蛍光色変化
1×104
1×103
A:KikGR 発現細胞株に,図に示す時間,紫色
1×102
1×101
1×101
の光を照射した後,共焦点顕微鏡により観察し
1×104
1×107
KikGR-Green(Area)
た.B,C:図 3A と同条件で光照射した細胞を
SP6800 で解析した.B:スペクトルの変化,C:
ドットプロット.
の統合されたシステムである.そこで筆者らは,従来の in vitro 解析に全身レベルでの生体
内(in vivo)における免疫細胞の時間・空間・数量的なダイナミックな制御情報を加えるこ
とで免疫システムの理解を目指す「免疫細胞の時間・空間・数量的な制御情報の解明に基
づく免疫システムの理解」という新しいアプローチ法を発信している.当アプローチでは,
紫色光で緑から赤に変色する色変換蛍光タンパク質“カエデ”
(Kaede)を発現するカエデ
マウスを用いて,全身レベルで免疫細胞の臓器間移動追跡が可能な in vivo 細胞動態評価系
を確立し用いている 2),3) .定常状態および免疫応答時の任意のタイミングでカエデマウス
のリンパ節や皮膚など任意の臓器の免疫細胞を赤色にマークし追跡することで,正確に細
胞移動解析ができ,この評価系を用いて免疫細胞動態と免疫応答についての新規概念を提
唱してきた 4)∼7) .さらに細胞周期を可視化できる Fucci-Tg マウス 8),細胞死を可視化でき
る SCAT3.1 マウス 9),全身の細胞移動を可視化できるカエデマウスを組み合わせ,免疫細
胞の生体内での生・移動・死をまさに目で見ているように把握できる解析システムを独自
に確立し「in vivo で免疫応答を細胞レベルで見る」研究を遂行している.本研究の遂行には
複数の蛍光タンパク質および隣接蛍光色素の信頼性の高い同時検出が必須である.そこで,
筆者らの使用している蛍光プローブをベースに用いて SP6800 の性能,および今後の免疫学
研究への可能性を検討した.
Ⅲ.色変換蛍光タンパク質 KikGR の蛍光スペクトル変化
Kaede 同様紫色光で緑から赤に変色する KikGR を発現させた細胞への光照射時間を連
続的に変化させ,スペクトル検出の分解能を解析した.その結果,照射時間の延長に伴い,
共焦点顕微鏡画像に示すように KikGR 発現細胞は緑から赤色に変化した(図 3A).これら
と同条件で照射したサンプルを SP6800 によって検出したところ,緑色の蛍光波長の減弱と
細胞工学 Vol.33 No.10 2014
1075
A
B
GFP
FITC
Both
GFP
Venus
Both
KikGR-Green
mAzami-Green
Both
KikGR-Red
Both
GFP
FITC
GFP
シグナルの強さ
Venus
KikGR-Green
mAzami-Green
GFP
(Area)
KikGR-Red
PE
PE
検出チャネル
GFP
(Area)
GFP
(Area)
■図 4 蛍光波長隣接プローブのスペクトル解析型セルアナライザーSP6800 による分離
A:蛍光分離を行った各組み合わせと蛍光波長を示す.B:各々,蛍光タンパク質を発現するマウスのリンパ球,蛍光タンパク質を発現していない野生型マウ
スのリンパ球に蛍光標識抗体を反応させた後,あるいは,蛍光タンパク質を発現するマウスのリンパ球に蛍光標識抗体を反応させた後,SP6800 で解析した.
KikGR-Green は光照射していない KikGR を,KikGR-Red は光照射により完全に赤色に色変換した KikGR を示す.
赤色蛍光波長の増強の連続変化,およびドットプロットにおいても照射時間依存的なシグ
ナル変化を正確に検出できた(図 3B,C).以上の結果は,SP6800 による詳細で正確な蛍光
波長変化の検出が可能であることを示している.
Ⅳ.隣接蛍光プローブの分離解析
SP6800 における各蛍光プローブのデコンボリューション処理は,ピーク波長のみを検出し
て行われているのではなく,各蛍光プローブの“波長の形”を認識して抽出していると考えら
れる.そこで筆者らは,蛍光波長のピークがほぼ同等でも波長形が異なれば分けられると考
え,従来のフローサイトメトリー検出ではほぼ不可能であった FITC と GFP の分離検出を試
みた.GFP 発現細胞と非発現細胞を含むサンプルを,FITC 標識抗体ありなしで解析した.
その結果,FITC 標識後も,GFP − FITC +と GFP + FITC +に分離することが可能であった.フ
1076
細胞工学 Vol.33 No.10 2014
鼠径リンパ節
光変換後 0時間
KikGRマウス
KikGR-Red
A
紫色光
鼠径リンパ節
KikGR-Red
72%
CD62L
CD8
Total CD4+
1.7%
CD44
hCD2/Foxp3− Total CD4+
87%
93%
CD25
CD62L
PI
B220
67%
セントラル
ペリフェラル
メモリーフェノタイプ メモリーフェノタイプ
ナイーブ
CD62LHiCD44Int CD62LHiCD44Hi CD62LLowCD44Hi
12%
3.7%
CD44
28%
72% 22%
CD4
KikGR-Red
B220+
0%
1つのリンパ節の
中のすべての細胞を
赤色にラベリング
Total CD8+
58%
13%
B220
Total cells PI−
100%
B220−
29%
Total cells PI−
100%
KikGR-Green
光変換後 24時間
79%
紫色光
0%
hCD2/
Foxp3
ナイーブ メモリーフェノタイプ 制御性
CD62LHiCD44Int CD62LlowCD44Hi hCD2/Foxp3+
10.2%
Total CD8+
20%
40.4%
CD69
56%
29%
22%
81%
50%
32%
27%
42%
74%
44%
71%
78%
19%
50%
68%
73%
58%
26%
KikGR-Green
留まっている細胞 入れ替わった細胞
B
蛍光色素およびタンパク質
分子
KikGR-Green
PE
CD25
biotinylated-mAb+
AlexaFluor532-streptavidin
B220
KikGR-Red
PE/Cy5
PerCP/Cy5.5
PE/Cy7
CD69
CD4
CD62L
APC
hCD2
AF700
CD8
APC/eFluor780
PI
細胞工学 Vol.33 No.10 2014
CD44
■図 5 蛍光色素 11-color 解析による,KikGR マウスを用い
た B 細胞,T 細胞サブセットの細胞動態の同時解析
A:KikGR マウスの鼠径リンパ節をそのまま,あるいは紫光を照射後,リ
ンパ節を摘出してフローサイトメトリーで解析した.非照射では KikGRRed のシグナルは検出されないが,照射後ではすべての細胞で KikGRRed のシグナルが検出されリンパ節内のすべての細胞をマーキングするこ
とができた.B:鼠径リンパ節を光照射してマウスを 24 時間生かしておい
た後に鼠径リンパ節の細胞を B に示す抗体にて染色後解析した.光照射し
た鼠径リンパ節の前リンパ球では,28%(光変換により KikGR-Red にラ
ベルされた細胞)の細胞が残っており,72%の細胞(ラベルされていない細
胞)が入れ替わっていた.B 細胞および T 細胞サブセットに分画した後,残っ
ている細胞および入れ替わった細胞の頻度をそれぞれ解析すると,リンパ
節内での各細胞サブセットの入れ替わり速度がわかる.それぞれ,異なる
速度で入れ替わっており,入れ替わり速度は,各細胞サブセットの全身の
循環速度に反映されている.
1077
ローサイトメトリー検出で GFP と FITC を x,y 軸としたドットプロットを描けることなど
は,以前は夢にも思わなかったことである.さらに,GFP と YFP 誘導体である Venus,
KikGR と,細胞周期の S/G2 /M 期を可視化できる FucciS/G2 /M-#474 に用いられている蛍光
色素 mAzami-Green10),光照射して赤色に色変換後の KikGR-Red と赤色蛍光色素の PE も,
.
互いへのシグナルの漏れ込みもなく分離可能であった(図 4)
Ⅴ.蛍光タンパク質を含む 11-color マルチカラー解析
筆者らはカエデマウスに加え,Kaede よりも容易に色変換が可能な KikGR を発現するマ
ウス(KikGR マウス)を用いて免疫細胞の全身動態を解析している.そこで,KikGR マウ
スを用い,B 細胞および,T 細胞サブセットの一括解析による,蛍光タンパク質を含む 11 色
のマルチカラー解析を試みた.KikGR マウスの 1 つのリンパ節に光照射すると,図 5A の
上図に示すように,リンパ節内の全細胞に赤色のマーキングをすることができる.そこで,
鼠径リンパ節を光照射したマウスを 24 時間生かした後,光照射したリンパ節を摘出し解析
すると,24 時間でのリンパ球の入れ替わりを解析することができる.図 5B に示す抗体パネ
ルで染色して調べてみると,PI 陽性の死細胞を gate out した後,B 細胞,CD4 + T,CD8 + T
細胞,T 細胞は,ナイーブ T 細胞,メモリーフェノタイプ T 細胞,さらに CD4 + T 細胞では
制御性 T 細胞を分離することが可能であり,各 T 細胞サブセットの CD69 発現も確実に検
出することができた.詳細になるが,定常状態における T 細胞の CD69 発現は,リンパ節内
の限られたニッチから生存と機能維持のためのシグナルを受け取っている指標となる.ま
た,CD69 発現細胞はリンパ節に留まる.そのため,CD69 発現細胞の頻度が高い制御性 T
細胞やメモリーフェノタイプ T 細胞の細胞集団のリンパ節での入れ替わり速度は,CD69
発現細胞の頻度が低いナイーブ T 細胞に比べると遅く,結果的に全身循環速度は遅い.こ
れらの知見の詳細については,原著および日本語雑誌による紹介を参照していただければ
幸いである 5),6) .
検出パターンとして特筆すべきことは,T 細胞のサブセット gating のドットパターンな
ど,細胞集団 gating のパターンは従来機での検出パターンとほぼ変わらないことと,さらに
KikGR-Green およびマーキングした KikGR-Red の細胞集団が,ほぼ同一位置にドットプ
ロット上で検出できていることであり,これらの結果は,デコンボリューションの信頼性を
示す 1 つの証拠であると考えられる.
本稿では誌面の都合上割愛したが,15 色の蛍光色素を用いたマルチカラー解析による
HLA タイピングにも他の研究室にて成功している.上述のような多数の蛍光プローブの同
時検出を行う場合は,異なる蛍光色素で標識された同様の分子を検出する抗体で同一サン
プルを染色した後,BD Fortessa や Aria などで解析する.従来機と SP6800 で相同の検出
パターンが得られることを確認した後,SP6800 による解析を行っている.
◉おわりに
現在,新しい蛍光色素の開発も相まって,フローサイトメトリー各社とも搭載レーザー数
を増やしてマルチカラー解析に対応をしており,色数を増やすマルチカラー解析のみであ
れば従来機でも可能であると考えられる.しかし,ソニーのスペクトル解析型セルアナラ
イザーはマルチカラー解析に加え,今回紹介したように,蛍光波長のブロードな蛍光タンパ
ク質の検出,隣接蛍光分離,細胞の自家蛍光検出による分離や除去など,従来ではほぼ不可
能であった検出・解析を実現する革新的な蛍光検出のストラテジーである.今後のさらな
1078
細胞工学 Vol.33 No.10 2014
る発展を期待したい.現在,violet レーザーを搭載した 3 レーザー機を共同で開発中である.
3 レーザー搭載機では,最近,色数の増加が著しい violet レーザー励起の蛍光色素の同時使
用も可能になるだけでなく,細胞死や細胞内シグナル検出に用いる CFP-YFP の FRET 検
出も同時に可能になると考えている.以上のように,フルスペクトル型フローサイトメー
ターの発展によって,従来では不可能であった解析法を確立することで,生物学的解析法の
新しい世界を拓くことができると考えている.
なお,当研究成果は,ソニー(株)メディカル事業ユニット 二村孝治氏,古木基裕氏らと
の共同研究に基づくものである.
戸村道夫
■京都大学大学院医学研究科 次世代免疫制御を目指す創薬医学融合拠点
■ E-mail:[email protected]
1989 年東北大学大学院薬学系研究科修士課程修了,1989 年∼東レ基礎研究所薬理研究室研究員,1996 年
∼大阪大学大学院医学系研究科腫瘍発生学教室博士課程,同教室助手,2002 年∼理化学研究所免疫・アレル
ギー科学総合研究センター研究員,上級研究員,2010 年∼理化学研究所脳科学総合研究センター細胞機能探
索技術開発チーム,東京大学大学院医学系研究科分子予防医学教室を経て,2011 年∼現職.「全身のin vivo
免疫細胞動態,機能可視化プロジェクト」を遂行.カエデマウスによる免疫細胞の全身動態評価系を中心に,
生体内二光子レーザー顕微鏡観察を組み合わせ,最終的に single cell level での全身細胞動態と機能発現を解
明することで免疫系の理解を目指している.
文献
1) http://www.sony.co.jp/Products/fcm/index.html
2) Tomura M, et al: Proc Natl Acad Sci USA (2008) 105: 10871-10876
3) 戸村道夫 : 感染・炎症・免疫 (2008) 38: 308-316
4) Tomura M, et al: J Clin Invest (2010) 120: 883-893
5) Tomura M, et al: J Immunol (2010) 184: 4646-4653
細胞工学 Vol.33 No.10 2014
6) 戸村道夫 : 実験医学 別冊 (2011) 29: 143-150
7) 戸村道夫 : 感染・炎症・免疫 (2011) 41: 34-43
8) Tomura M, et al: PLoS One (2013) 8: e73801
9) Tomura M, et al: Int Immunol (2009) 21: 1145-1150
1 0)Tomura M, et al: J Immunol (2013) 190: 135.8
1079