基板設計・実装・加工 - Shindengen

[3 お取扱い時の注意事項について]
3-2
基板設計
(1) ソルダリングパッドの設計
ソルダリングパッドを提示している製品がありますが、基板実装後のはんだ付け結果までを保証し
たものではありません。はんだ付けにはソルダリングパッド以外にも、使用はんだ、はんだ供給量(印
刷マスク厚、マスク開口径)、使用フラックス、製品周辺のソルダリングパッド、はんだ溶融温度プロ
ファイルなどが影響しますので、生産前に必ず実装試験による確認を実施して下さい。
(2) 挿入型パッケージの取り付け穴の設計
挿入型パッケージの取り付け穴は、製品のリード間ピッチ・距離と同一にして下さい。リード間ピッ
チや距離が異なった場合、製品実装時に過大なストレスを与える要因となります。設計時に考慮して
対応下さい。
(3) 放熱設計
パワーデバイスは製品で発生した熱を効率よく逃がさないと熱暴走を起こし、製品破壊を起こすこ
とがあります。熱は放熱板を設置する基板上に放熱パターンを設けるなどの対応により、放熱を助け
温度上昇を抑制することが可能となります。放熱板はその大きさ等が製品使用時の実効許容損失を決
定しますので、製品の使用環境を考慮し、適切な放熱板を選定して下さい。設計時に放熱について考
慮して対応下さい。
(4) 部品の配置について
半導体は使用する環境条件により製品特性、及び信頼性が左右されます。システム内における半導
体の取付位置は、高信頼性を維持するために十分吟味する必要があります。取付ける際の注意事項を
以下に示します。
① 半導体素子の近傍に大型抵抗器等の発熱源があり、半導体素子用の放熱板を加熱したり、直接半
導体素子を加熱するような配置の場合、異常な加熱により、信頼性が低下することがあります。
このような場合は通風等を考慮し、熱が逃げるような配置をするなどの設計を行って下さい。
② 高圧回路付近や装置下段の隅は塵埃がたまりやすい場所です。このような場所に設置された半導
体は塵埃付着により、絶縁劣化を起こしたり、誤動作することがあります。このような場合は、
プリント基板及び半導体素子を防水性のあるレジンで基板をコーティングするなどの方法が有効
です。レジンでコーティングする方法は、基板配線からの導電性異物(はんだくず等)による短絡が
原因の誤動作防止、結露による金属マイグレーションの防止など、高湿・結露・塵埃の蓄積があ
る厳しい環境下で、信頼性を確保しなければならない場合に有効な手段となります。
③ 高電圧または高周波用途のシステムにおいて、配線の束線や引き回し方法によっては、サージ電
圧が誘導されます。サージ電圧により、半導体が破壊する場合がありますので、サージ電圧が発
生しないように、束線や引き回しに注意して下さい。
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3-3
加工
(1) マガジン梱包品の製品取り出し時の注意
マガジンに収納された製品を取り出す際は、落下輸送による端子曲がりなどを予防するため、以下
の点についてご注意下さい。
① 製品を取り出す際にマガジンの傾きを 30°程度にし、導電性(静電)マットの上に製品が勢いよく
飛び出さないようにしながら製品を出すようにして下さい。
② 再び製品をマガジンに収納する際、マガジン内の製品が端数収納となる場合は、マガジン移動時
に製品に衝撃が加わらないように、マガジン内に適切な長さのスペーサなどを収納し、製品が動
かないようにして下さい。
図 42 マガジンからの取り出し方
図 43 マガジンへの端数製品収納方法
(2) リードフォーミング・リード切断の際の注意
製品のリード端子のフォーミング、切断を行う際には下記の点についてご注意下さい。
① リードフォーミング/切断時の応力が製品本体に加わらないようにするため、リード折り曲げや
切断の応力加点と製品本体の間に押さえ部を設けて下さい。
図 44 リード線の曲げ方
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図 45 金型使用によるリード線の曲げ方
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実装
(1) マウンティングの注意
機械的衝撃により製品にストレスが加わり、製品破壊を起こすことがあります。事前に使用条件の
検討を充分に行って下さい。
① 挿入型パッケージをプリント板の取り付け穴に差し込む際には、製品リードを無理に引っ張るこ
とのないようにして下さい。
図 49 プリント基板への挿入実装
② テーピングされた面実装パッケージ製品については、マウンティング時にトップテープを剥がし
ながら実装を行いますが、このトップテープの剥がしスピードが速くなると、帯電量が多くなる
のでご注意下さい。
(2) はんだ付けの注意
はんだ付けを行う際には、以下の点にも注意しながら作業を実施して下さい。
① フラックスはロジン系のものを使用し、強酸性のものは使用しないで下さい。
② 通常の環境で長期保存された場合や湿度の高い環境でデバイスが保存された場合、モールド樹脂
が吸湿し、はんだ付け時に加熱処理されることで、製品によってはモールド樹脂にクラックの発
生やチップ界面の剥離を生じる場合があるため、以下の点に注意して下さい。
・はんだ付けの際、急激な温度変化がないようにするため、予備加熱を実施し、ピーク温度をで
きるだけ低くする。
・規定の保管条件(吸湿管理条件)を超えた場合には、事前にベーク(脱湿・乾燥)処理を行う。
③ フロー実装の際に、基板に製品を仮止めする目的で接着剤を用いる場合、製品と接着剤の相性に
よって、接着性が弱くなる場合があります。実装中にデバイスが落下することが無いよう、事前
に接着剤とデバイスとの接着性について検討を行って下さい。
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(3) はんだ付け温度プロファイル
① はんだゴテによるはんだ付け
はんだゴテによりはんだ付けをする際には、コテ先の温度がコントロールできるタイプを使用し、
部品端子部に直接はんだゴテがあたらないようにして下さい。はんだ付け条件は、下表の範囲にてご
使用下さい。
対応可能パッケージ
コテ先温度
加熱時間
回数
M1F・G1F・CB
350±10℃
3±1s
1回
SMD 品・AX057・MCP
380±10℃
3±1s
1回
挿入型製品(AX057 を除く)
380±10℃
5±1s
1回
② 赤外線リフロー法
赤外線を利用し、高温にしてはんだ付けする方
法です。図 50 にリフロー法での推奨温度プロファ
イルを示します。
対応可能パッケージ:
面実装パッケージ(SMD)全般
工程
予備加熱
本加熱
加熱ピーク
図 50 リフロー温度プロファイル
温度
時間
150℃~180℃
90±30s
① 220℃
Max.60s
② 230℃
Max.40s
250℃
Max.10s
Max.255℃
2回
リフロー回数
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③ フロー法
基板に接着剤でデバイスを仮止めし、デバイス
面を下にして溶融したはんだ中を通過させ、はん
だ付けする方法です。図 51 にフロー法での温度
プロファイルを示します。
対応可能パッケージ:
挿入型パッケージ(SIP、DIP)全般
面実装パッケージ(SMD)※3
図 51 フロー温度プロファイル
工程
温度
時間・回数
予備加熱
80℃~140℃
30~60s
加熱ピーク
260℃±5℃
10±1s
1回
フロー回数
*3
面実装パッケージ
MCP・STO-220・FD パッケージなど面実装パッケージの一部はフロー対応していない製品もござい
ます。詳細につきましては、弊社営業担当にお問い合わせ下さい。
④ はんだディップ
はんだディップをご使用になる場合は、図 52 のグラフの温度を考慮の上使用して下さい。
図 52 はんだディップ使用条件
(4) フラックス洗浄
洗浄には超音波洗浄や浸漬洗浄などいくつか種類があります。それぞれの特徴や短所を考慮しなが
ら、製品に合った洗浄方法を実施して下さい。
フラックス洗浄の際の注意事項を以下に示します。
① フラックス除去の洗浄剤は腐食性ガスや反応性物質が発生しないものを使用して下さい。
② フラックス残渣や残留物質・イオンがあると、リード間リークやマイグレーション現象を発生さ
せる場合があります。残渣や残留物質、イオンが残らないように洗浄を行って下さい。
③ 超音波洗浄の際は共振現象で端子切れが発生する可能性があります。超音波振動源と基板・デバ
イスが直接接触しないようにした状態で、十分に条件の検討を行って下さい。
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超音波洗浄 参考条件
・超音波周波数:28kHz(デバイスが共振現象を起こしていないこと)
・超音波出力:最大 15W/リットル
・時間:30 秒以内
④ 製品によっては、長時間の洗浄により製品捺印が消える(インク捺印製品)場合があります。洗浄条
件の検討を事前に行って下さい。
(5) 二次モールド・プラスチック封入
基板実装後に樹脂で再モールドする時は、使用する樹脂によって製品が大きなストレスを受けるこ
とがあります。再モールドを実施する場合は、以下の点に注意して対応下さい。
① 収縮率が小さく、柔軟で硬化時の温度が保存温度を超えない樹脂を選定して下さい。
② 常温硬化の樹脂で、硬化時に自己発熱するものがあります。このような樹脂を使用される場合も
製品の保存温度を超えないようにして下さい。
③ 樹脂によっては、水分の吸着によりリーク電流の増加が起るものもあります。使用時には十分な
品質確認を行って下さい。
(6) 放熱板の取り付けについて
半導体素子単体のみで許容することができる損失は極めて小さいため、通常は放熱板を使用し、半
導体素子で発生する熱を効率よく周囲(外気)へ逃がします。その時の放熱板の大きさ等が実効許容損失
を決定しますので、適切な放熱板を選定して下さい。また放熱板取り付けの際には、下記の点にご注
意下さい。
① 放熱板に反りや凹凸があると、放熱効率が低下し、思わぬ温度上昇の原因となります。反りや凹
凸のないようにして下さい。
② 金属クズやバリが付着していると絶縁板を破損したり、機械的なストレスにより半導体素子を劣
化、あるいは破壊することがあります。プレスや穴加工時にバリを発生させない、面取り等の対
応を行うようにして下さい。
③ 放熱板を取り付ける際、製品リードに先にはんだ付けした後、放熱板を取り付ける場合、製品リー
ドに過剰なストレスを受け、リード抜けや断線、製品破壊の原因となる場合があります。必要に
応じて、放熱板に製品を取り付けた後にはんだ付けを行うなどの対応を実施して下さい。
④ 製品の放熱部リード製品に、加工変形を行うと、熱抵抗が増加する原因となりますので実施しな
いで下さい。
⑤ 1 つの放熱板に 2 つ以上の製品を取り付けると、1 つだけ放熱板に取り付けた場合に比べ、熱抵抗
が増加することがあります。使用する際には注意して下さい。
⑥ シリコングリス
半導体素子の取り付け面が推奨の平坦度以下でも、半導体素子本体部と絶縁板間、絶縁板と放熱
板間にはどうしても空洞が生じ、その接触熱抵抗 θcf で熱が効率良く周囲(外気)へ伝わりません。
この θcf を減少させる目的でシリコングリスを塗布する場合は、絶縁板の両面に均一にいきわたる
ように塗布して下さい。
また、シリコングリスの選定については、下記の点にご留意の上、選定・品質確認を実施して
下さい。
・均一に塗布することが困難なものがあります。均一に塗布できるものを選定下さい。
・グリス内のオイル成分と製品のモールド樹脂が混ざり、膨張するものがあります。
そのような現象が発生しないものを選定下さい。
・グリスの中には長期間の使用により、半導体素子の特性に影響を及ぼし、劣化に至らしめる
ものがあります。品質確認の際にご注意下さい。
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⑦ 締め付けトルク
放熱板に製品を取り付ける場合、そのネジの締め付けトルクも重要になってきます。
すなわち、締め付けトルクは
・接触熱抵抗を大幅に変化させます。
・半導体素子の外形により異なります。
・ネジや半導体素子の外形の機械的強度により制限されます。
以上の理由により、当社では各半導体素子の推奨締め付けトルクを定めています。
外形名称
推奨締め付けトルク
(N・m)
FTO-220G
0.3
MTO-3P
0.5
TSB
1.2
・ なおエアドライバーを使用する際には、製品本体に接触させないでください。
(7) 固定(ネジどめ)について
① 実装に際して
・サポートには廻り止めを設けるなどして、取り付け時のバラツキを見込み絶縁距離を確保してくだ
さい。
・一部のパッケージには、ネジ穴部付近に露出部がありますので、ご注意下さい。
ITO-220 パッケージ
図 53 実装例(ITO-220 パッケージ)
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FTO-220,ITO-3P パッケージ
放熱を効率良く行い、デバイスにストレスがか
からないようにするため、次の点にご注意くださ
い。(図を参照してください。)
・ネジ
M3 の丸小ネジ、なべ小ネジ、バインド小ネジ、
平小ネジのいずれかをご使用ください。さらネジ
類は使用しないでください。
・平座金
小型丸 3mm の平座金をご使用ください。特に、
3.5mm 以上の平座金や表側がみがき丸の平座金は
使用しないでください。
FTO-220G 外形の場合、平座金が 3mm 以上で使
用すると、絶縁不良が起こる可能性があります。
取り付けには十分に注意が必要です。
図 54 実装例(FTO-220、ITO-3P パッケージ)
・放熱板
放熱板は、凹凸、ねじれ、反り等のない平坦な
ものを使用し、デバイスに無理な応力が加わった
り、放熱効果を妨げたりしないようにしてくださ
い。また、取り付け穴に加工バリのないことを確
認して下さい。取り付け穴径はφ3.2~4mm にして
ください。穴径および面取りが大きすぎると、ネ
ジを締め付ける際にパッケージに無理なストレス
が加わります。
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② 締め付けトルクと接触熱抵抗
デバイスと放熱板との間にシリコングリスを薄く均一に塗布し、接触熱抵抗の低減を図ってご使用
いただくために「締め付けトルクと接触熱抵抗 θcf」の関係を下図に示します。
図から、非絶縁型パッケージ(TO-220、MTO-3P)に絶縁板を使用した場合より、絶縁型パッケージ
(ITO-220、ITO-3P)をじか付けした方が接触熱抵抗が小さく有利なことが分かります。
一般的に ITO-220、ITO-3P を放熱板に取り付ける場合、非絶縁型の TO-220、MTO-3P と違って絶縁
物を使用する必要がありません。
図 55
図 57
図 56
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③ 使用ネジ
さらネジ・リベットは製品に負荷応力を加える危険がありますので、使用しないで下さい。
使用するネジは丸ネジ、なべネジ、トラスネジ、バインドネジ、平ネジを使用下さい。
図 58 使用ネジ
④ ネジ穴
2 ヶ所以上のネジ穴で止める製品
の場合、取り付けネジ穴ピッチは製
品のネジ穴ピッチと同じ寸法にし
て下さい。寸法が異なると製品固定
時に製品に負荷応力がかかり、製品
が破壊することがあります。
図 59 取り付け例
(8) 実装後の製品保管について
基板実装が終了した製品についても製品実装前と同様に、製品保管の際には導電性・静電対策され
た収納ケースに入れる、収納ケースを置く場所にはアースをとるなどの静電対応が必要となります。
取扱いにご注意下さい。
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