STA7130MPR

2 相 SPM モータードライバ IC
STA7130MPR シリーズ
アプリケーションノート
2015 年 6 月 Ver.4.0
本 資 料 は 、 2 相 ス テ ッ ピ ン グ モ ー タ ー ・ ユ ニ ポ ー ラ 駆 動 用 ド ラ イ バ IC
STA7130MPR シリーズについてまとめたものです。
最新情報に関しては、弊社担当部門までお問合せ願います。
1.
はじめに ........................................................................................... 2
2.
特徴 .................................................................................................. 2
3.
製品名と電流定格について.............................................................. 2
4.
製品仕様 ........................................................................................... 3
5.
減定格図 ........................................................................................... 6
6.
外形図&捺印形状 ............................................................................ 6
7.
内部ブロック図&ピンアサイン ...................................................... 7
8.
応用回路例 ....................................................................................... 8
9.
真理値表 ........................................................................................... 9
10. ロジック入力端子に関して............................................................ 10
11. ロジック入力タイミングについて................................................. 11
12. 励磁シーケンス .............................................................................. 12
13. 回路構成 ......................................................................................... 16
14. 機能説明 ......................................................................................... 18
15. ご使用に際して .............................................................................. 25
16. 熱設計資料 ..................................................................................... 29
17. 代表特性例 ..................................................................................... 31
サンケン電気株式会社
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STA7130MPR シリーズ アプリケーションノート Ver.4.0
1. はじめに
長年ご愛顧頂いております、弊社 2 相ステッピングモーター・ユニポーラ駆動ドライバの各
シリーズですが、新たに「STA7130MPR シリーズ」をリリースすることになりました。
本資料は、
「STA7130MPR シリーズ」に関する情報をまとめたものです。
2. 特徴
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
(6)
(7)
主電源電圧 VBB=46V max(使用範囲 10V~44V)
出力電流 IO(max):1A、1.5A、2A をラインナップ
Clock 入力駆動に対応(2 相励磁~2W1-2 相励磁に対応)
モーター電流を検出する「検出抵抗」を内蔵
シリーズ品はピンコンパチブル
ZIP タイプ 18pin モールドパッケージを採用(STA パッケージ)
OFF 時間固定の自励式 PWM 電流制御を採用
→ 電流の設定比率により OFF 時間を 3 段階に自動切換え
(8) PWM OFF 時の損失を低減する回路(同期整流回路)を搭載
(9) モーターホールド時に発生する異音を防止する同期 PWM 機能を搭載
(10) 待機時のドライバ消費電流を低減する Sleep 機能を搭載
(11) モーターコイルオープン/ショート保護および過熱保護を内蔵
(12) 製品オプションとして以下の機能変更に対応が可能です。
○ブランキング時間
標準品:1.5µs(typ)、B タイプ品(オプション品)
:3.0µs(typ)
※製品オプションに関するお問合せは、弊社技術担当へお願いします。
3. 製品名と電流定格について
STA7130MPR シリーズの製品名と電流定格の対応を表 3-1 に記載します。
表 3-1 STA7130MPR シリーズ製品名と電流定格の対応一覧
電流定格(最大設定電流値)
製品名
1A
1.5A
2A
○
STA7130MPR
○
STA7131MPR
○
STA7132MPR
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4. 製品仕様
表 4-1 絶対最大定格
項目
モーター電源電圧
主電源電圧
特記なき場合、TA=+25℃
備考
記号
VM
VBB
規格値
単位
46
V
46
V
STA7130MPR
1.0
A
STA7131MPR 制御電流値
IO
1.5
A
出力電流
STA7132MPR
2.0
A
VLI
V
Logic 入力電圧
‐0.3 ~ 6
VLO
6
V
Logic 出力耐圧
Flag、Mo 端子
VREF
V
REF 入力電圧
‐0.3 ~ 6
VRS
V
検出電圧
±1
PD
3.5
W
No Fin
許容損失
TJ
150
°C
ジャンクション温度
°C
TA
動作周囲温度
‐20 ~ 80
°C
Tstg
保存温度
‐30 ~ 150
(※)出力電流値は、Duty 比、周囲温度、放熱条件によって制限される可能性があります。
いかなる使用条件下においても、決して指定された最大出力電流および最大接合部温度
(TJ)を超えないようにしてください。
表 4-2 推奨動作範囲
特記なき場合、TA=+25℃
項目
記号
モーター電源電圧
主電源電圧
Logic 入力電圧
VM
VBB
VIN(Logic)
規格値
Min
Max
44
10
44
0
5.5
単位
備考
V
V
V
10pin リード部温度
No Fin 時
注:VM が高いほど、OUT 端子の耐圧(100V min)に近づくためブレイクダウンを起こしや
すい状態に近づきます。
OUT 端子がブレイクダウン(サージノイズ含)すると、本シリーズでは異常(コイルオ
ープン)と認識し、保護が働く可能性が高くなるので十分な評価をお勧めします。
ケース温度
TC
85
°C
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表 4-3 電気的特性
特記なき場合、TA=+25℃、VBB=24V
項目
記号
出力 MOSFET 耐圧
IBB
IBBS
VDSS
出力 MOS FET ON 抵抗
RDS(on)
出力 MOS FET Di 順電圧
VF
最大応答周波数
fCLK
VLIL
VLIH
ILIL
ILIH
VLOL
ILOL
VREF
VREFS
IREF
Mode F
Mode E
Mode C
ModeA
Mode 8
Mode 6
Mode 4
Mode 2
主電源電流
Logic 入力電圧
Logic 入力電流
Logic 出力電圧
Logic 出力電流
REF 入力電圧
REF 入力電流
基準電圧分割比
※2
SENSE 検出電圧
VSENSE
定格
Min.
Typ.
Max.
10
3
100
0.7
0.25
0.18
0.85
0.95
0.95
0.85
0.4
0.24
1.1
1.2
2.1
250
0
2.3
0.7
5.5
±1
±1
0.8
5
0.9
5.5
0.1
2.0
±10
100
98.1
92.4
83.1
70.7
55.5
38.2
19.5
VREF×1/3
-0.03
VREF×1/3
VREF×1/3
+0.03
単位
条件
mA
mA
V
動作時
Sleep1 & Sleep2 時
VBB=44V、ID=1mA
Ω
V
STA7130MPR
STA7131MPR
STA7132MPR
STA7130MPR
STA7131MPR
STA7132MPR
kHz
V
V
µA
µA
V
mA
V
V
µA
Clock Duty=50%時
%
VREF/3≒
VSENSE=100%
V
Mode F 時
ILOL=5mA
VLOL=0.8V
Sleep1 ※1
VREF=0.1~5V
※特記なき場合、電流は製品から流れ出す方向を‘-’とします。
※1 Sleep1 の状態は、「IBBS」、「出力:OFF」、
「シーケンサー:Enable」となります。
※2 基準電圧分割比の表現は、SLA7070MPRT シリーズに準じています。
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表 4-3 電気的特性(続き)
特記なき場合、TA=+25℃、VBB=24V
項目
記号
検出抵抗 ※3
RS
PWM 最小オン時間
ton(min)
PWM オフ時間
Sleep‐Enable 復帰時間
Min.
0.296
0.199
0.150
toff1
toff2
toff3
tSE
tcon
tcoff
VOCP
定格
Typ.
0.305
0.205
0.155
1.5
3.0
11.5
8.5
7
100
過電流検知電流
VOCP÷RS
IOCP
負荷断線未検知時間
topp
1.4
0.7
0.7
2.3
3.5
4.6
2
過熱保護温度
Ttsd
125
スイッチング時間
過電流検知電圧 ※4
Max.
0.314
0.211
0.160
0.65
0.75
単位
条件
Ω
STA7130MPR
STA7131MPR
STA7132MPR
µs
µs
µs
µs
µs
µs
µs
µs
V
A
A
A
µs
°C
標準品
B タイプ品
Mode 8 ~ Mode F
Mode 4、Mode 6
Mode 2
Sleep1 & Sleep2
Clock → Out ON
Clock → Out OFF
モータコイル短絡時
STA7130MPR
STA7131MPR
STA7132MPR
PWM オフから開始
ケース裏面
'飽和温度時(
※特記なき場合、電流は製品から流れ出す方向を‘-’とします。
※3 上記の各検出抵抗には、内蔵しています抵抗単体の値に製品構成による抵抗値(約 5mΩ)が含
まれております。
※4 VSENSE>VOCP の条件で保護回路が働きます。
図 4-1 基準電圧 VREF の設定範囲
5.5V
Sleep1設定範囲
2.0V
禁止帯
0.9V
モーター電流設定範囲
0.1V
※「モーター電流設定範囲」⇔「Sleep1設定範囲」の切替えに十分注意してください。
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5. 減定格図
パッケージ許容損失 PD [W]
Allowable Package Power Dissipation
図 5-1 減定格図
4.0
3.5
θJ-A=35.7°C/W
3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
周囲温度 TA [°C]
Ambient Temperature
6. 外形図&捺印形状
b
a
LF № 434
12345 ・
・
・
・
・
a.品名標示
713xMPR※
b.ロット番号
第 1 文字
西暦年号下一桁
・ 18
第 2 文字
月
1~9 月 : アラビア数字
10 月 : O
11 月 : N
12 月 : D
第 3,4 文字
製造日
01~31 : アラビア数字
単位:mm
・端子材質:Cu
・端子処理:Ni メッキ+半田ディップ(鉛フリー)
※a 品名標示の「x」は、電流定格違いにより「0」~「2」
のいずれかの数字が標示されます。
またオプションに対応した製品の場合、
「713xM」
に続き「W」
、「B」、
「WB」が標示されます。
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7. 内部ブロック図&ピンアサイン
図 7-1 内部ブロック図
8 12
9
MIC
17
OutB
OutB
7 13
VBB
6
Clock
5
Reset
CW/CCW
Sleep2
4
M1
15
M2
11
Mo
Flag
OutA
2
Ref/Sleep1
OutA
1
18
Reg.
÷3
PreDriver
PreDriver
Sequencer
&
Standby Circuit
Protect
Protect
DAC
SenseA
+Comp
-
3
Rs
TSD
Synchro
Control
PWM
Control
+
-
Comp
PWM
Control
OSC
OSC
14
Sync
Pin 番号
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
DAC
記 号
Out A
Out A/
Sense A
Mo
M1
M2
Sleep2
Clock
VBB
Gnd
Ref/Sleep1
Reset
CW/CCW
Sync
Flag
Sense B
Out B/
Out B
16
SenseB
Rs
10
Gnd
機 能
A 相出力
A/相出力
A 相電流検出
2 相励磁状態モニター出力
励磁設定入力
Sleep2 設定入力
Step Clock 入力
主電源(モーター電源)
製品 Gnd
制御電流/Sleep1 設定入力
内部 Logic リセット入力
シーケンス正転/逆転切替入力
PWM 制御切替入力
異常検知出力
B 相電流検出
B/相出力
B 相出力
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8. 応用回路例
図 8-1 応用回路例
VM=10V~44V
VDD=3.0V~5.5V
+
Q1
Standby
r11
r1
C1
OutA
OutA
VBB
OutB
OutB
CA
r10
Reset
Clock
CW/CCW
M1
STA7130MPRシリーズ
M2
Sleep2
Sync
Mo
Flag
Ref/Sleep1
SenseA
SenseB
Gnd
+
CB
マイコン
等
r4~r9
r2
r3
C2
1点Gnd
ロジックGnd
パワーGnd
参考定数
r1=10KΩ
CA=100µF/50V
CB=10µF/10V
r2=1KΩ(VR)
r3=10 KΩ
C1=0.1µF
r4~9=1K~10KΩ(入力状態が不定に至らない場合は不要)
r10~11=5.1K~10KΩ
☆特にロジックラインや Gnd ラインのノイズに注意してください。
ノイズが 0.5V 以上になると製品が誤動作する場合がありますので Gnd パターンの引き回し
には十分に注意してください。
製品 Gnd(10pin)部から信号系 Gnd(ロジック Gnd)と VBB 系 Gnd(パワーGnd)を分
けるとノイズ低減の効果があります。
☆使用しない Logic 入力端子(CW/CCW、M1、M2、Sleep2、Reset、Sync)は、必ず VDD
側又は Gnd 側にプルアップ/プルダウンをしてください。
オープンで使用した場合には、製品が誤動作します。
☆Logic 出力(Mo,Flag)端子を使用しない場合は、必ずオープンにして下さい。
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9. 真理値表
(1)入力端子
表 9-1 入力端子論理
端子名
Reset
CW/CCW
M1
M2
Low Level
High Level
Clock
定常動作
ロジックリセット
-
正転(CW)
逆転(CCW)
励磁モード設定
※表 9-2 参照
Sleep2
Sleep2
出力 Enable
-
(プロテクト解除)
Enable
Sleep1
Ref/Sleep1
-
非同期 PWM 制御
同期 PWM 制御
Sync
-
・Ref/Sleep1 端子は、PWM 電流制御用の基準電圧入力と Sleep1 モード制御の 2 つの機能を
兼ねています(約 1.75V に閾値を設けています)
。
○VREF≦1.5V(Low レベル)のときは、基準電圧入力端子として機能します。
○VREF≧2.0V のときは、出力が全て OFF(Disable)となります(Sleep1 状態)
。
この Sleep1 の状態では、内部リニア回路を停止させて主電源電流 IBB を低減します。た
だし Logic 回路は動作状態のため、Clock 信号を入力すると内部シーケンサーは反応し
ます(ステップが進みます)。
・本製品の Reset 機能は、非同期リセットとなっています。
Reset 端子を High レベルにすると内部 Logic 回路がリセットされます。
ただし Reset 信号では出力 Disable の制御は出来ませんのでご注意願います。
Sleep 状態でなければ、出力は励磁原点にて通電されます。
・Sleep2 は、Sleep1 と同様に出力 OFF(Disable)および主電源電流が低減された状態とな
るとともに、内部 Logic 回路が停止(Hold)状態となります。つまり、Clock 信号を入力し
ても内部シーケンスは進みません。
なお、Sleep2 からの復帰後、100us 以上経過してから Clock 信号を入力して下さい。
また Sleep2 端子は、保護機能が働いた状態の解除(プロテクト解除)の機能を兼ねており、
Sleep2 端子が High レベルとなると、Sleep2 になると共にプロテクト解除を行います。
表 9-2 励磁モード設定端子論理
励磁モード
2 相励磁
1-2 相励磁
W1-2 相励磁
2W1-2 相励磁
端子名
M1
L
H
L
H
備考
M2
L
L
H
H
Mode F のみ
Mode F のみ
Mode 4,8,C,F
Mode 2,4,6,8,A,C,E,F
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(3)出力端子
表 9-3 モニター出力論理
端子名
High Level(Hi-Z)
Low Level
2 相励磁タイミング以外
2 相励磁タイミング
Mo
正常動作
保護回路動作
Flag
・「2 相励磁タイミング」とは、A 相と B 相の基準電圧分割比が共に Mode 8 または Mode F のポイント
です。
・各モニター出力構成は、オープンドレインとなっています。
ご使用の際はプルアップ抵抗(5.1K~10KΩ 程度)を取り付けて下さい。
・保護回路が働いた時点で出力が OFF 状態となります。
保護機能を解除するためには、VBB を再投入するか Sleep2 に設定して下さい。
10. ロジック入力端子に関して
ロジック系入力端子(Clock,Reset,CW/CCW,M1,M2,Sleep2,Sync 端子)には、ノイ
ズ耐量向上のためにローパスフィルター(LPF)を設けています。
また各入力端子構成は、MOS 入力となっているためハイインピーダンスの状態にあります。
ご使用の際は、必ず「Low レベル」または「High レベル」にてご使用願います。なおマイコ
ンからの信号がハイインピーダンスになることが想定される場合は、プルダウン抵抗、または
プルアップ抵抗を取り付けて下さい。特に出力の ON⇔OFF に関わる IN 端子がご使用中にハ
イインピーダンスになると出力が異常発振となる可能性があり、最悪の場合には MOSFET が
破壊する可能性があります。
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11. ロジック入力タイミングについて
(1)Clock 信号に関して
a.本製品のシーケンサーは、Clock 信号の POS(立上り)エッジにて動作します。
クロックパルスの幅は、ポジティブパルスおよびネガティブパルスそれぞれ 2µs 以上とし
て下さい。これにより Clock 応答周波数は、250kHz になります。
b.Clock エッジに対するタイミング
CW/CCW,M1,M2,M3 端子の入力論理は、Clock の POS エッジの前後 1µs は論理を
保持し、論理を確定しておくようにして下さい(図 11-1 参照)。これは、セットアップお
よびホールドタイムに相当します。
この前後 1µs の期間で論理を切り替えた場合、論理の切り替わりを認識しないなど、
Sequencer Logic 回路が予期せぬ動作をする可能性があります。
図 11-1 入力信号のタイミング
Reset
2µs(min)
5µs(min)
4µs(min)
2µs(min)
Clock
2µs(min)
CW/CCW
M1
M2
M3
1µs(min)
1µs(min)
1µs(min)
1µs(min)
※Sleep1&2 からの復帰後に Clock を入力するまでの時間として、100µs 以上の時間を設け
る必要があります。
(2)Reset 信号に関して
a.Reset 信号のパルス幅について
Reset パルス幅(ハイレベル保持時間)は、Clock 信号のパルス幅の規定と同じく 2µs 以
上として下さい。
b.Reset 解除と Clock 信号のタイミング
Reset 解除(立下りエッジ)と Clock エッジの変化のタイミングが同時となった場合、内部
ロジックが予期せぬ動作をする可能性があります。このため Reset 解除後、図 11-1 に示
すように 5µs 以上の時間を設けて Clock 信号を入力するようにして下さい。
(3)回転方向、励磁モード切替えに関して
本製品では、CW/CCW、M1、M2、M3 による回転方向や励磁モードの設定は、いずれの Mode
状態で切り替えても次の Clock エッジから対応します。ただし、切替え時のモーターの状態に
よっては、モーター側の動作が追従できず、脱調などの異常動作を起こす可能性があります。
このため、切替えのシーケンスに関しては十分な評価を行なってください。
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12. 励磁シーケンス
図 12-1 2 相励磁
M1=L / M2=L
RESET
…
CLOCK
0
1
2
B
CW
A
A
0
10
0
0
CCW
B
図 12-2 1-2 相励磁
M1=H / M2=L
RESET
…
CLOCK
0
1
2
3
4
B
CW
A
0
0
0
CCW
10
A
B
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図 12-3 W1-2 相励磁
M1=L / M2=H
RESET
…
CLOCK
0
1
2
3
4
5
6
7
8
B
CW
A
0
38.2
70.7
CCW
0
38.2
70.7
92.4
0
92.4
10
A
B
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図 12-4 2W1-2 相励磁
M1=H / M2=H
RESET
…
CLOCK
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
B
CW
A
0
19.5
38.2
55.5
70.7
83.1
CCW
0
19.5
38.2
55.5
70.7
83.1
92.4
92.4
98.1
10
0
98.1
A
B
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励磁切替えについて
励磁の切替え位置は、励磁切替え前の位置から励磁切替え後の一番近い位置へ移行します。
表 12-1 励磁モード状態に各励磁駆動方式の位置を示しています。
表 12-1 励磁モード状態
回転
方向
CCW
CW
内部シーケンス状態※1
A 相側
PWM
Mode
A
8
A
6
A
4
A
2
/A
2
/A
4
/A
6
/A
8
/A
A
/A
C
/A
E
/A
F
/A
E
/A
C
/A
A
/A
8
/A
6
/A
4
/A
2
A
2
A
4
A
6
A
8
A
A
A
C
A
E
A
F
A
E
A
C
A
A
B 相側
PWM
Mode
B
8
B
A
B
C
B
E
B
F
B
E
B
C
B
A
B
8
B
6
B
4
B
2
/B
2
/B
4
/B
6
/B
8
/B
A
/B
C
/B
E
/B
F
/B
E
/B
C
/B
A
/B
8
/B
6
/B
4
/B
2
B
2
B
4
B
6
励磁駆動方式※2
2相
1-2 相
W1-2 相
2W1-2 相
●
●
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
●
●
○
○
○
○
○
●
●
○
○
○
○
○
●
●
○
○
○
○
○
※1 Mode の表現は、SLA7070MPRT シリーズに準じています。
※2 「●」のポイントについては、実際の電流制御は Mode F の条件となります。
Mode F:基準電圧分割比 100%,PWM オフ時間 11.5µs
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13. 回路構成
(1)制御用モノリシック IC(MIC)
・Sequencer Logic
1Clock 入力方式を採用し、正逆転制御は CW/CCW 入力にて行います。
励磁モードは M1、M2 の論理の組合せで設定します。
各端子の論理やタイミング規定は別項の真理値表やロジック入力タイミングを参照願います。
・PWM Control
OFF 時間固定の自励 PWM 電流制御を行ないます。
内蔵発振器(OSC)にて PWM オフ時間やブランキング時間を決定しています。
なお動作メカニズムは、現行の SLA7070MPRT シリーズと同一になります。
(詳細な動作は、次節を参照して下さい)
・Synchro Control
モーターホールド時に発生することがある異音を防止する、チョッピング同期回路になります。
Sync 端子を High レベルにすると、A 相と B 相のチョッピング OFF を同期させる信号を発
生させます。
なお動作メカニズムは SLA7070MPRT シリーズと同一になりますので、チョッピング同期
機能をモーター回転時に動作させた場合、モーター電流が正常に制御されずトルクの低下や
振動の増加を招く場合があります。このため、回転時に本機能を使用することは推奨してい
ません。
また停止時においても、本機能は 2 相励磁のタイミングのみのご使用を推奨しております。
これは、2 相励磁以外のタイミングでは A 相と B 相の電流制御値や PWM オフ時間が異なっ
ているため、同期しない場合や制御電流値が大きく崩れる可能性があるためです。
・DAC
制御電流の基準電圧を生成する D/A コンバータ回路になります。
マイクロステップ駆動を行なう場合、Sequencer Logic 回路からの信号を受けて、REF 電圧
を所定の分割値(基準電圧分割比)に変換します。
※内部基準電圧:Ref 電圧÷3×基準電圧分割比
基準電圧分割比に関しては電気的特性を参照ください。
・Reg 回路
出力 MOS FET のゲートドライブ回路(Pre-Drive)やリニア回路の動作に必要な電源を生成
する内部レギュレータになります。
・Protect 回路
モーターコイルのショート/オープン保護回路となります。
保護はすべて検出抵抗 Rs に生じた電圧を検知することで働きます。
このため、OUT 端子や電流検出端子が Gnd にショートした際の過電流は検知できません。
またオープン保護回路は PWM 動作しているときにのみ働きますので、モーターを高速回転
させているなど定電圧駆動の状態となっているときは働きません。
保護回路が働くと出力 Disable となります。なおこの状態からは下記の方法で復帰できます。
①主電源 VBB の再投入。
②Sleep2 を High として、プロテクト解除をする。
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・TSD 回路
製品(制御 IC)の温度が上昇し、閾値以上の温度となった場合に出力を Disable にしてドラ
イバを保護する回路になります。
復帰方法に関しては、Protect 回路と同等となります。
(2)出力 MOS FET チップ
電流定格(3 種類)の違いにより、それぞれ搭載する MOS FET チップが異なります。
仕様に関しては、表 4-3 を参照してください。
(3)検出抵抗
本シリーズ品にはモーター電流を検出するための抵抗を搭載しております。
電流定格の違いにより、搭載する抵抗値は異なります。
仕様に関しては、表 4-3 を参照してください。
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14. 機能説明
(1)PWM 制御に関して
①ブランキング期間について
モーターを駆動させた際の Sense 端子に発生する動作波形の観測例を図 14-1 に示します。
図 14-1 PWM チョッピング時 Sense 端子波形例
Itrip
時間軸拡大
Out
0
Out
5µs/div
500ns/div
PWM がオン→オフの直後に数 µs の期間、Sense 端子にはスパイク状のノイズ(リンギン
グノイズ)の発生が確認できます。このリンギングノイズは「モーターコイルの線間容量」、
「モーター配線の引き回し」等により発生の仕方がさまざまです。
本シリーズでは、検出電圧 VRS と DAC 出力電圧 Vtrip をコンパレータで比較することで
電流制御(PWM オン→オフ)しています。このため、PWM オンの直後に Sense 端子に発生
するリンギングノイズが Vtirp を超えるような場合、コンパレータが反応し PWM オフして
しまいます(ハンチング状態)
。
この現象を防止するため、PWM オンしてから一定期間はコンパレータからの電流検出信
号を無視する「ブランキング期間」を設けています(図 14-2)。
図 14-2 PWM 制御時 SENSE 端子波形模式図
PWMチョッピング1周期
ON
OFF
(内部固定)
Itrip
A相
0
A相
ブランキング期間
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※図はA相ON時
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②ブランキング時間とハンチング現象について
ブランキング時間を短くする事で下限域の電流
制御(追従)性を向上させる事が出来る反面、リン
ギングノイズに対する余裕度が減少します。このた
め、実際にモーターを駆動した場合、ハンチング現
象が発生する場合があります(図 14-3 に発生時の
波形例を示します)
。
この対策として、ブランキング時間を長くした、
「B タイプ品」をご用意しました。
このハンチング現象が観測され、トルク低下やモ
ーターからの騒音が大きいといった場合に、ブラン
キング時間の長い「B タイプ品」を使用することに
より、これら問題を改善できる場合があります。
図 14-3 ハンチング現象発生時
の Sense 端子波形例
Itrip
0
20μs/div
③ブランキング時間の違いに関して
ブランキング時間の違いに着目して特性を比較した場合、表 14-1 のようになります。た
だし両者の比較は、モーター、モーター電源電圧や REF 入力電圧などといった駆動条件、
回路定数が同じ場合を考えます(つまり、製品だけを変えて比較するという意味です)。
表 14-1 ブランキング時間の違いによる特性比較
比較項目
特性比較
内部ブランキング設定時間
短
長
PWM 最小オン時間
小
対リンギングノイズ耐量
大
最小コイル電流
小
高速回転時のコイル電流
大
波形ひずみ(主にμステップ)
次に、各項目について簡単に説明します。
・PWM 最小 ON 時間 ton(min)
本製品の PWM 制御ではブランキング時間が設けてあるため、電流を絞るために ON 時
間を短くしようとしてもブランキング時間より短くすることが出来ず、この分だけ必ず
ON となります。
PWM 最小 ON 時間とは、このブランキング時間により必ず出力が ON 状態となる時間
を指し、ブランキング時間の短い方が「小」となります。
・最小コイル電流
PWM 最小 ON 時間状態で制御されている時のコイル電流を指します。ブランキング時
間の短い方が電流を絞ることが出来るということになります。
・高速回転時コイル電流波形ひずみ
マイクロステップ駆動時は、入力クロックにより Itrip 値が所定の値に変化し、この Itrip
値(内部の基準電圧分割比)は正弦波状になるよう設定されています。モーターコイル電
流は Itrip 値となるよう PWM 制御されていますので、コイル電流(のエンベロープ)は
正弦波状となるよう制御されることになります。
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実際はコイルのインダクタンス成分により、目的値(Itrip)へコイル電流が収束するま
でには時間が必要となります。大まかにはコイル電流が Itrip 値まで収束する時間(tconv)
と入力クロックの周期(tclk)との関係が、全 MODE において常に、
t CONV  t clk
であれば、コイル電流のエンベロープは Itrip に追従する形となります。
ここで tconv の限界値は、電流が増加する方向のときは電源電圧とモーターコイルの時定
数、
減衰方向では電源電圧とモーターコイルの時定数と最小 ON 時間によって決まります。
また tclk は入力クロックの周波数により決まり、周波数を上げるに従い小さくなっていき
ます。
1クロック期間内でコイル電流が Itrip へ収束する前に次のクロックが入力されるとい
う状況が発生すると、コイル電流のエンベロープは正弦波から崩れます。弊社では、この
エンベロープが正弦波から崩れた状態を「波形ひずみ」と呼んでいます。
電源電圧、電流設定値、モーターなどの動作条件は同一として、ブランキング時間の違
う製品の波形ひずみについて比較をした例を、図 14-4 に示します。図中○で囲んだ部分
のように、ブランキング時間が 1.5µs の条件では Sense 端子波形(電流波形と同じと考え
てください)のエンベロープが正弦波状になっているのに対し、ブランキング時間が 3.0µs
の条件では、正弦波から崩れていることが確認できます。
表 14-1 の「大」とは、同じ駆動条件の下で考えた場合に、ブランキング時間の長い方
がより低いクロック周波数で波形ひずみを発生し、クロック周波数が同じであれば、波形
のひずみ具合はブランキング時間が長い方が大きくなることを意味します。
なお、このような波形ひずみが確認された場合に、必ずしもモーター特性に影響が出る
とはいえませんので、十分評価した上で最終的な判断を行ってください。
図 14-4 高速回転時の SENSE 端子波形の比較例
ブランキング時間:1.5μs(typ) (標準品)
ブランキング時間:3.0μs(typ)(B タイプ品)
Clock
SenseA
SenseB
500μs/div
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500μs/div
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④PWM オフ期間について
本シリーズは、PWM オフ時間は内部発振器より生成した固定時間で制御され、基準電圧
分割比により 3 段階切替ります(詳細は表 4-3 の仕様を参照下さい)
。
またこの PWM オフ時間に発生する損失を低減するため、PWM オン時と同様に MOS FET
をオン状態としてモーターコイルに蓄えられた逆起電力を解消する機能が内蔵されていま
す(同期整流動作)
。
図 14-5 に逆起電力回生方法の違いを示しますが、
本シリーズは PWM オフ側の MOS FET
も OFF⇔ON します。なお同期整流動作の切替りの際は MOSFET が同時に ON することを
防止するためのデッドタイム
(約 0.5µs)
が設けられており、この期間は回生電流が MOS FET
のボディダイオードに流れます。
図 14-5 同期整流動作
Vcc
【通常回生動作】
Ion
【同期整流回生動作】
Vcc
Ioff
Ion
Ioff
SPM
Vg
SPM
Vg
Vrs
PWMオン
Rs
PWMオフ
Vg
Vg
Vrs
PWMオン
PWMオン
Rs
PWMオフ
デッドタイム時の回生電流
PWMオン
デッドタイム
FET Gate信号
Vg
0
FET Gate信号
Vg
Vref
検出電圧
Vrs
0
FET Gate信号
Vg
0
FET Gate信号
Vg
Vref
検出電圧
0
Vrs
デッドタイムの期間は、回生電流がFETボディダイオードに流れます。
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(2)保護機能
本シリーズには、
「モーターコイルショート保護回路」、
「モーターコイルオープン保護回路」
および「過熱保護回路」が搭載されております。
以下に各保護回路の説明を示します。
①モーターコイルショート保護(負荷ショート)について
本シリーズに内蔵したモーターコイル保護回路は、電流制御と同様に検出抵抗に発生する
電圧 VRS を検知することで動作し、保護動作の電圧 VSOC は約 0.45V に設定しております。
なお保護回路が働いた時点で、出力が Disable の状態となります。
モーターコイルショート保護動作条件:VRS>VSOC
図 14-6 モーターコイルショート保護回路動作
VM
コイルショート
SPM
VOCP
コイルショート
通常動作時
VREF
Vg
VRS
VRS
Rs
0
⇒出力Disable
※検出抵抗を通らずに流れる過電流は検知できません。
②モーターコイルオープン保護について(特許取得済)
ユニポーラ駆動において、動作時に 1 つの出力端子(モーターコイル)が断線することは、
ドライバ破壊の原因になります。これは断線後に接続されている MOS FET に、PWM オフ
時に逆起電力により非常に高いエネルギーが加わる「アバランシェ状態」となるためです。
「アバランシェ状態」では、出力が MOS FET のドレイン‐ソース間の耐圧に達した状態
(ブレイクダウンした状態)でモーターコイルに蓄えられたエネルギーを解消します。本シ
リーズでは、ある程度のアバランシェエネルギー耐量を持った MOS FET を使用しています
が、アバランシェエネルギー耐量は温度に依存し、高温になるにつれて低下します。
断線状態では PWM 動作を繰り返すたびに高いエネルギーが加わるため、MOS FET の温
度は上昇、「印加エネルギー>耐量」となった時点でドライバが破壊します。そこで本シリ
ーズには、この「アバランシェ状態」を検知してドライバを保護する回路を搭載しました。
以下にその動作を示します。
モーターコイルが断線すると先に説明しましたように、PWM オフ期間中は接続されてい
る MOS FET が耐圧に達した状態で回生電流が流れます。正常時は検出電圧 VRS が PWM オ
フ期間は負電位になるのに対して、モーターコイルが断線した状態では正電位が発生するこ
とになります。つまり、PWM オフ期間に VRS が正電位であることを検知することにより、
モーターコイルが断線していることを検知できることになります。
本シリーズでは、検知誤動作を回避するためモーター断線の状態を連続して 3 回検知した
時点で保護が働く様に設計されています。図 14-7 に動作図を示します。
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図 14-7 負荷オープン保護動作
通常動作時PWM動作図
モーター断線時PWM動作図
VM
VM
SPM
SPM
Ion
Ioff
断線
Vg
Vg
Vout
Vout
Vrs
Rs
Vrs
Rs
モーター断線時
FET Gate信号
Vg
0
FET Gate信号
Vg
0
VDSS
Vout
2VM
VM
Vout
0
0
VREF
ブレイクダウン(アバランシェ状態)
VREF
VRS
VRS
0
0
モータ断線検知
※注意
PWM オフした後に発生するサージノイズにより出力のブレイクダウンが確認された場
合、ブレイクダウン発生期間が負荷断線未検知時間(topp)を過ぎても継続しますと、実
際に負荷が断線していなくても保護機能が働く場合があります。モーター及び配線の引き
回し等の見直しをしてブレイクダウン時間を負荷断線未検知時間(topp)内で収まるよう
に改善を行って下さい(セットバラツキの考慮も必要です)
。
なおブレイクダウンが確認されていない場合には、動作に問題ありません。
また改善方法の 1 つとして、Out-Gnd 間にサージノイズ吸収用のコンデンサを取り付け
ることで正常動作となる場合があります。
サージがVdssに達していない
Vdss
Vout
【問題なし】
ブレイク期間がtopp以下
Vdss
Vout
【問題なし】
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ブレイク期間がtopp以上
Vdss
Vout
【改善要】
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③過熱保護について
製品温度が上昇し、Ttsd を超えたところで保護回路が働き、全出力が Disable になります。
注)本製品の内部構成はマルチチップ構成(制御用 IC×1,MOSFET×4,チップ抵抗×
2)となっています。主な発熱源は MOSFET とチップ抵抗となりますが、実際に温
度を検知する場所は制御用 IC です。このように発熱源と熱の検知場所(制御用 IC)
とに距離があるため、熱の伝達に遅れが生じます。このため急激な温度変化には追従
できません。従いまして、設計段階でアブノーマル評価を十分に行い、ジャンクショ
ン温度が保証値(150℃)を超えないようにして下さい。
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15. ご使用に際して
(1)モーター電流の設定について
本シリーズにおけるモーター電流 Io は、図 8-1 の応用回路例の場合、r1,r2 と製品内蔵の
検出抵抗 Rs により決まります。以下に Io を求める計算式を示します。
Io 
r2
1
 VDD   Rs
r1  r 2
3
・・・・・式①
ここで 2 重下線の項は、基準電圧 VREF になります。
VREF を 0.1V 以下に設定すると製品のバラツキや配線パターンのインピーダンス等の影響を
受け電流精度が低下する可能性が高くなります。
なお実際に制御する電流 Itrip は、DAC により基準電圧を所定の比率(基準電圧分割比)で
分圧して決まります。
I trip 
VREF 1
  ( 基準電圧分割比 )
RS
3
・・・式②
(2)制御電流の下限値について
本シリーズは、OFF 時間固定の自励式 PWM 電流制御方式を採用しています。固定されて
いる PWM オフ時間内にモーターコイルに蓄えられたエネルギーが解消してしまうと、コイル
電流は図 15-1 に示すような断続した電流として流れます。つまり、PWM による平均電流が低
下し、モータートルクも低下します。このコイルに電流が断続的に流れ始める状態を制御電流
の下限値と弊社では考えています。
制御電流の下限値は、ご使用されるモーター等の条件により異なりますが、以下の式にて概
算できます。
I O min 



V M 
1

 1
R 
t
 
 exp  OFF t  
C 



VM
RDS(on)
toff
:
:
:
モーター電源電圧
MOS FET オン抵抗
PWM オフ時間
Lm
R
R  Rm  RDS ( on)  RS
tC 
Rm
Lm
RS
:
:
:
・・・・・・式③
モーター巻き線抵抗
モーター巻き線インダクタンス
電流検出抵抗
制御電流値をこの下限値以下に設定しても製品が破壊することはありませんが、設定電流に
対し制御電流が悪化します。
図 15-1 制御電流下限モデル波形
Itrip大
A相
Itrip小
0
A相
コイル電流が0になる
タイミングが発生する
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(3)アバランシェエネルギーの確認
本シリーズのユニポーラ駆動方式は、出力の MOS FET の耐圧を越えるサージ電圧(リンギ
ングノイズ)が製品に印加される場合があります。本製品は、このサージ電圧を想定して十分
なアバランシェ耐量を持つ MOS FET を使用しておりますので、
VM
通常はサージ電圧が発生しても問題なく使用いただけます。
ただし、モーターのハーネスの引き回しが長い場合や定格電流
および定格電圧付近で使用される場合は、弊社の想定を越えるア
SPM
バランシェエネルギーが製品に印加されることがありますので
ID
実機評価において必ず製品に印加されているアバランシェエネ
ルギーを確認してください。
VDS(AV)
アバランシェエネルギーの確認方法を以下にまとめます。
図 15-2 に観測ポイント,図 15-3 に波形図を示します。
Rs
【計算例】
図 15-3 の波形観測の結果より
VDS(AV)=140V
ID=1A
t=0.5µs
のデータが得られた場合、アバランシェエネルギーEAV は下
記より求められます。
EAV≒VDS(AV)×1/2×ID×t ・・・・・式④
=140V×1/2×1A×0.5×10-6
=0.035[mJ]
例のように計算した EAV を、
図 15-4 に示すグラフと比較し、
MOS FET のアバランシェエネルギー耐量範囲内であるか
を確認して安全性を判断します。
図 15-2 観測ポイント
VDS(AV)
ID
t
図 15-3 ブレイクダウン時
波形図
図 15-4 繰返しアバランシェエネルギー耐量 EAV
12
STA7132MPR
STA7131MPR
Eav [mJ]
8
STA7130MPR
4
0
0
25
50
75
100
125
150
製品温度 Tc[℃]
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(4)モーター電源電圧(VM)と主電源電圧(VBB)について
本製品は図 7-1 の内部ブロック図に記載したように、制御用 IC(MIC)と出力段パワー
MOSFET マルチチップ構造となっているため、モーター電源と主電源とは電気的に分離され
ております。したがいまして、モーター電源と主電源とで異なった電源を使用して駆動するこ
とも可能です。ただし両電源は電源電圧範囲が異なりますので、注意願います。
(5)内部ロジック回路に関して
a)内部シーケンサーのリセットに関して
本製品のシーケンサー回路は、主電源電源(VBB)投入時に製品内部にてパワーON リセ
ット機能が働いて初期化されます。このため電源投入直後の出力は、励磁原点にて通電され
る状態となります。
また、モーター動作後にシーケンサーのリセットを施す必要がある場合は、Reset 端子に
リセット信号を入力して下さい。外部よりリセットを施す必要性がない場合には、Reset 端
子は使用しませんので、回路上で Reset 端子をロウレベル固定としてください。
b)クロック入力に関して
本シリーズは、クロックの POS エッジにて1Step 進む設計となっています。
クロック入力信号を停止すると励磁はモーターHold 状態になります。この時クロック入
力信号はロウレベルであってもハイレベルであっても問題はありません。
c)チョッピング同期回路について
モーターHold 時に発生することがある、モーター異音を防止するための機能となり、Sync
端子をハイレベルに設定すると有効となります。
ただしこの機能をモーター回転時に使用すると、制御電流が安定せず、モータートルクの
低下や振動の増加が起きる場合があるため、回転時に使用することはお勧めできません。
また、この同期回路を 2 相励磁状態または 1 相励磁状態での Hold 状態以外で使用した場
合は、モーター電流が正常制御されなくなりますので御注意願います。
通常、本機能を使用する場合はマイコン等より信号を入力して切り換えを行う方法が一般
的ですが、ポートの制限等の問題により信号を入力できない場合には、次のような方法で本
機能を使用することが出来ます。
図 15-5 に示した回路案は、クロック信号を利用した Sync 信号発生回路になります。ハイ
レベルのクロック信号が入力されるとコンデンサに充電され、Sync 信号はロウレベルになり
ます。クロック信号をロウレベルで停止させた場合、コンデンサが抵抗により放電され、Sync
信号がハイレベルとなり、同期モードへ移行します。なお、使用される最低クロック周波数に
より回路中の RC 時定数を決定して下さい。
また、クロック入力信号をハイレベルで停止させ
図 15-5 クロック停止検知回路
るシーケンスを検討される場合にはインバータ回
Vcc
路を1つ追加して下さい。
停止時のクロック信号が不明な場合は、図 15-5
Clock
Sync
の回路の前に図 15-6 に示すエッジ検出回路を追加
74HC14
することで対処できます。
R
C
図 15-6 エッジ検出回路
Step
Clock
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a
エッジ
Clock
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d)出力 Disable(Sleep1,2)回路について
モーターフリー状態(出力 Disable)にする方法として、REF 端子を 2V 以上にする方法
(Sleep1)と、励磁モード設定端子(M1、M2、M3)の全てを”High”にする方法(Sleep2)
の 2 種類あります。どちらの方法においても主電源系の回路を停止させて回路電流を低減す
る Sleep モードになります。
違いは、Sleep1 は内部シーケンサーが Enable 状態のままですが、Sleep2 は内部シーケ
ンサーが HOLD 状態となります。つまり Sleep2 の状態では、Clock 信号を入力しても励磁
シーケンスは変化せず、Sleep 直前のシーケンス状態を保持します。
また Sleep2 は、保護機能が働いた状態から復帰する機能を兼ねています。
なお出力 Disable(Sleep1、Sleep2)状態からモーターを回転させるモードに移行する場
合、製品の立ち上がりだけではなく、モーター励磁電流の立ち上がり時間を考慮した上で、
Disable 解除からクロックエッジ入力までの時間を設定するようにしてください(図 15-7)
。
図 15-7 Disable 解除と Clock 入力のタイミング
Ref電圧
励磁信号
100µs (min)
Clock信号
e)Ref/Sleep1 端子について
本製品の REF 端子は表 9-1 の真理値表や前項 d などに説明がありますが、
①出力制御電流の基準電圧設定
…Low レベル
(VREF≦0.9V)
②出力 Enable/Disable 制御入力…High レベル
(VREF≧2.0V)
の 2 つの機能を兼ねております。なお出力 Enable/Disable の切り替わりのしきい値電圧は、
約 1.75V に設定しています。
REF 電圧制御の際は、下記に注意してください。
・①の領域だけでなく、①~閾値電圧(1.75V typ)の範囲も、REF 電圧にしたがい制御
電流値も変わります。このため損失には注意が必要となります。また基準電圧分割比の
選択状態によっては OCP 動作となる場合もあります。
・特に閾値電圧付近に REF 電圧が設定された場合、出力が Enable と Disable を繰り返し
てしまう可能性があります。
f)ロジック入力端子(Clock,Reset,CW/CCW,M1,M2,M3,Sync 端子)について
使用しない端子がある場合には、VDD または GND へ接続をしてください。
オープンで使用した場合、製品が予期せぬ動作をする可能性があります。
g)モニター出力端子(Mo、Flag 端子)について
製品内部は図 15-8 の等価回路のように、オープンドレイン出力となっていますので、ご
使用の際はプルアップ抵抗(5.1K~10KΩ 程度)を取り付けて
図 15-8 モニター出力端子内
ください。
部等価回路
なお Mo 端子および Flag 端子を使用しない場合は、必ず
静電気
出力
オープンとしてください。
保護回路
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16. 熱設計資料
本シリーズでの損失を正確に算出するには、モーターの実動作時の時定数や励磁モード、入力
周波数及びそのシーケンス等、変動するパラメータが必要になり現実的ではありません。
そこで、まずワースト条件にて、近似計算にて算出します。最小限のパラメータのみを抽出し
た損失の計算式は以下の通りです。
P  I 2  (R DS(on)+Rs)  2
P
I
RDS(on)
Rs
:
:
:
:
製品損失
動作電流≒Io
搭載 MOSFET のオン抵抗
搭載検出抵抗
上記にて算出した製品損失を元に、下に示した図 16-1 の温度上昇曲線を用いて製品のジャン
クション温度を推定します。この時、最悪条件(動作周囲温度の最大値)にて、シャンクション
温度が 150℃を超えなければ問題はありませんが、
最終判断は実動作における製品発熱を測定し、
図 16-1 より損失およびジャンクション温度を確認してください。
図 16-1 製品温度上昇特性
150
ΔTJ-A=35.7×PD
上昇温度 ΔT [°C]
125
100
75
ΔTC-A=22.9×PD
50
25
0
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
3.5
4.0
パッケージ許容損失 PD [W]
製品に放熱板を付けて使用される場合、ΔTJ-A を算出するパラメータの中で製品の熱抵抗 θJ-A
が変化します。この値は放熱板の熱抵抗を θFIN とすると
θJ-A≒θJ-C+θFIN=(θJ-A-θC-A)+θFIN
となり、この式で算出した θJ-A の値を代わりに使用して計算します。
また実動作にて製品温度を測定しジャンクション温度を推定する場合は、次のように考えます。
まず、製品の樹脂裏面中央部の温度上昇を測定します(ΔTC-A)。この温度上昇から図 16-1 の製
品温度上昇グラフを見て、損失 P とジャンクション温度 Tj を推定します。この際、製品の温度
上昇 ΔTC-A とジャンクション上昇温度 ΔTJ の関係は、以下の計算式で近似できます。
ΔTJ≒ΔTC-A+P×θJ-C
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☆注意事項
・本製品の内部構成はマルチチップ構成(制御用 IC×1,MOSFET×4,チップ抵抗×2)とな
っています。主な発熱源は MOSFET とチップ抵抗となりますが、実際に温度を検知する場所
は制御用 IC です。このように発熱源と熱の検知場所(制御用 IC)とに距離があるため、熱の
伝達に遅れが生じます。このため急激な温度変化には追従できません。従いまして、設計段階
でアブノーマル評価を十分に行い、ジャンクション温度が保証値(150℃)を超えないように
して下さい。
・この熱設計資料は、実際に製品を動作させる前にどの程度まで使用できるかを検討するための
資料です。最終的には実機にて製品発熱(12Pin の温度)を確認して判断して下さい。
なお製品発熱の最大推奨値は以下の様になります。
No Fin 時:85℃
Fin 接続時:75℃
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17. 代表特性例
(1)出力 MOS FET オン電圧 VDS(on)特性
STA7130MPR
STA7131MPR
1.4
1.4
1.2
1.2
1.0
1.0
VDS(on) [V]
VDS(on) [V]
Io=1.0A
0.8
0.6
Io=1.5A
0.8
0.6
Io=1.0A
Io=0.5A
0.4
0.4
0.2
0.2
0.0
0.0
-25
0
25
50
75
100
125
製品温度 Tc[℃]
-25
0
25
50
75
100
125
製品温度 Tc[℃]
STA7132MPR
1.4
1.2
Io=2.0A
VDS(on) [V]
1.0
0.8
0.6
0.4
Io=1.0A
0.2
0.0
-25
0
25
50
75
100
125
製品温度 Tc[℃]
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(2)出力 MOS FET ボディダイオード順方向電圧 VF 特性
STA7130MPR
STA7131MPR
1.0
1.0
0.9
0.9
Io=1.0A
0.8
VSD [V]
1.1
VSD [V]
1.1
Io=1.5A
0.8
Io=1.0A
Io=0.5A
0.7
0.7
0.6
0.6
-25
0
25
50
75
100
125
製品温度 Tc[℃]
-25
0
25
50
75
100
125
製品温度 Tc[℃]
STA7132MPR
1.1
1.0
0.9
VSD [V]
Io=2.0A
0.8
Io=1.0A
0.7
0.6
-25
0
25
50
75
100
125
製品温度 Tc[℃]
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