FSK 復調器-NJM2211アプリケーションマニュアル

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NJM2211
FSK 復調器 - NJM2211
(FSK Demodulator)
アプリケーションマニュアル
(Application manual)
1. 目次 (Contents)
1. 目次 (Contents) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - P.1
2. 概要 (General) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - P.2
3. 特長 (Features) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - P.2
4. 用途 (Applications) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - P.2
5. 外形 (Package Outline) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - P.2
6. ブロック図 (Block Diagram) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - P.2
7. 絶対最大定格 (Absolute Maximum Ratings) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - P.3
8. 電気的特性 (Electrical Characteristics) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - P.3
9. 測定回路図 (Test Circuit) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - P.4
10. 各端子説明 (Terminal Explanation) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - P.5
11. 代表的特性例 (Typical Characteristics) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - P.6
12. アプリケーション情報 (Applications Information) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - P.7 – 14
新日本無線株式会社
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NJM2211
2. 概要
NJM2211は、データ通信に適したPLL IC です。
動作周波数範囲は、0.01Hzから300kHzと広帯域で検出入力信号レベルは2mVから3Vと広い
ダイナミックレンジを持ちます。通常のDTL、TTL及びECLと直結して用いることができます。
回路は外部定数によって設定された周波数帯域内の入力信号にトラッキングする基本的な
PLL 回路、キャリア検出用のクオドラチャ位相検出回路及び FSK 復調用のコンパレータから構成されています。
中心周波数、トラッキング帯域幅、出力遅延時間は外付け部品で個別に設定できます。
3. 特徴
・動作電源電圧
:4.5V ∼ 20V
・周波数範囲が広い。
:0.01Hz ∼ 300kHz
・DTL / TTL / ECL と直結可能。
・キャリア検出機能付き FSK 復調器
・ダイナミックレンジが広い。 :2mVrms ∼ 3Vrms
・トラッキングが可変できます。 :±1% ∼ ±50%
・中心周波数の温度特性がよい。 :20ppm / ℃ typ.
・バイポーラ構造
・外形
:DIP14,DMP14
4. 用途
FSK モデム 他
5. 外形
NJM2211D
NJM2211M
6. ブロック図
Timing
Capacitor
14
13
Timing
Resistor
Loop
φDet.
Output
Ref.
Voltage
Output
NC
FSk
Comp.
Input
12
11
10
9
8
Internal
Reference
VCO
Loop
φDet.
Quad
φDet.
Signal
Preamp
Lock
Detector
Comparator
_
_
+
+
FSK
Comparator
1
2
3
4
5
6
V+
Input
Lock
Detector
Filter
GND
Q
Q
Lock
Detector
Output
7
Data
Output
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NJM2211
7. 絶対最大定格(Ta = 25℃)
項 目
記号
+
定格
単位
電源電圧
入力電圧
V
VIN
6
3
V
Vrms
消費電力
PD
700 (D typ)
300 (M typ)
mW
動作温度
保存温度
Topr
Tstg
−20∼+85
−40∼+125
℃
℃
8. 電気的特性(V+ = 12V、Ta = 25°C)
項 目
動作電源電圧範囲
消費電流
・オシレータ部
周波数確度
周波数安定度
電源電圧除去比
最大中心周波数
最小中心周波数
タイミング抵抗(R0)
条 件
R0 ≧ 10 kΩ
2Pinと10PinをShortし、
3Pin出力で測定。
(R0 = 30 kΩ, C0 = 33nF)
R1 = ∞
V+ = 12±1 V
V+ = 5±0.5 V
R0 = 8.2 kΩ, C0 = 400pF
R0 = 2 MΩ, C0 = 50uF
動作範囲
推奨範囲
記号
最小値
標準値
最大値
単位
4.5
20
11
V
mA
Icc
−
−
5
Δf0
−
±1.0
−
%
Δf0 /ΔT
−
−
f0 MAX
f0 MIN
−
−
5
15
−
±1.5
−
−
−
2000
100
ppm/℃
PSRR
±20
±0.05
±0.2
300
0.01
−
−
I0
±100
±200
±300
μA
IOS
−
±2.0
−
μA
Z0
−
1.0
−
MΩ
VOM
±4.0
±5.0
−
V
I0
−
150
−
μA
−
−
1.0
11
−
−
MΩ
VP-P
RIN
−
20
−
kΩ
VIN
−
2
−
mVrms
RIN
IB
GV
VSAT
ILEAK
−
−
−
−
−
2
100
70
0.3
0.01
−
−
−
1.0
11
MΩ
nA
dB
V
μA
VREF
Z0
4.75
−
5.30
100
5.85
−
V
Ω
%/V
kHz
Hz
kΩ
kΩ
・ループフェーズディテクタ部
出力ピーク電流
出力オフセット電流
2Pinと10PinをShortし、
11 Pin で測定。
R0 = 30 kΩ, C0 = 33nF,
R1 = 150 kΩ
出力インピーダンス
VREF (10Pin) を基準
最大出力振幅
(R0 = 30 kΩ)
・クオドラチャフェーズディテクタ部
出力ピーク電流
出力インピーダンス
最大出力振幅
・入力アンプ部
入力インピーダンス
最小検出入力レベル
・ボルテージコンパレータ部
入力インピーダンス
入力バイアス電流
電圧利得
出力飽和電圧
出力リーク電流
・内部電源基準部
出力電圧
出力インピーダンス
3 Pin で測定
(R0 = 30 kΩ)
2 Pin で測定
5Pin出力が”L”になるとき
の入力レベル
3 Pin と8 Pinで測定
RL = 5.1 kΩ
5,6,7 Pin、Ic = 3mA
V0 = 12 V
10 Pin で測定。
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9. 測定回路図
V+
14
1
0.1u
V+
Signal
Preamp
0.1u
Input
Signal
Timing
Capacitor
VCO
13
2
CD
Input
(0.47u)
L.D.F.
Quad
φDet.
4
Loop
φDet.
(5.1k)
FSK
Output
5
_
Q
(5.1k)
6
11
C1
(33n)
10
Internal
Reference
0.1u
9
Lock
Detector
Comparator
Q
(30k)
R1
(150k)
φDet.
Output
+
RL
Timing
Resistor
Loop
GND
RL
R0
12
3
RD
(470k)
RL
(5.1k)
C0
(33n)
RF
(100k)
NC
_
7
8
+
FSk
Comp.
Input
Data
FSK
Output Comparator
CF
(4.7n)
RB
(510k)
※設計式
(1).VCO 中心周波数 f 0: f0 =
(2).内部基準電圧 VREF: VREF
1
(Hz)
R0C0
V+ _
=(
) 650 mV
2
(3).ループローパスフィルタ時定数 T: T = R1C1
(4).ループダンピング ζ: ζ =
(
C0
C1
) ×(
(5).ループトラッキング帯域幅 ± ∆ f / f 0:
1
4
f0 =
f0' _ f0
× 100
f0
(%)
f 0 ’:測定周波数
(V)
Tracking
Bandwidth
(μsec)
)
f / f0 = R0 / R1 (Hz)
fLL
(μsec)
_
( 2 ) ( VREF )
(7).ループフェーズディテクタ変換利得 KΦ: Kφ =
(V / rad)
π
(KΦ は 10 – 11Pin 間の差動直流電圧で
フェーズディテクタ入力での単位フェーズ誤差に対するもの)
_1
=
K
(8).VCO 変換利得 K 0: 0 C
(Hz / V)
V
(6).FSK データフィルタ時定数 TF:TF = RF CF
0 R 1 REF
11Pin での直流電圧変動の単位当たりに対する VCO 周波数変動の総計
(9).トータルループゲイン K T: KT = 2π Kφ K0 =
4
C0 R1
(rad / sec / V)
VREF
(10). ピークフェーズディテクタ電流 I A: IA =
(mA)
25
_
V V2
(11).出力オフセット電流 IOS: Ios = 1
(μA) V1:11Pin 電圧、V2:12Pin 電圧
R1
f0
f1
f0
f0
f2
fLH
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10. 各端子説明
端子
番号
端子名称
端子説明
1
V+
電源電圧入力
2
Input
信号入力
入力信号はこの端子へ AC 結合で入れてください。入力インピーダンスはおよそ
20kΩ、推奨入力信号レベルは 10 mVrms∼3 Vrms
3
Lock
Detector
Filter
クォドラクチャ
フェーズ
ディテクタ出力
この端子はクォドラチャ位相検出器の出力端で高出力インピーダンスです。
IC 内部でロックディテクトボルテージコンパレータの入力につながっています。
トーン検出応用回路では RD、CD 並列部を通して接地させることによって
ロックディテクト出力のチャタリングを消す効果が現れます。
トーン検出を使用しない場合、3 Pin は OPEN のままです。
4
GND
GND端子
5
Q
ロックディテクト
出力
6
Q
ロックディテクト
コンプリメント
電源電圧入力端子です。
GND 端子です。
PLL にロックがかかってない場合は 5 Pin の出力は “High” の状態にあります。
PLL がロックの状態では ”Low” あるいは導通状態になります。
出力はオープンコレクタなので、プルアップ抵抗 RL をつけ、V + に繋げな
ければなりません。”Low” の状態では 5 mA までの負荷電流を吸入できます。
6 Pin は 5 Pin のロジックコンプリメントです。この出力もまたオープンコレクタ
で ”Low” あるいは ”ON” 状態で 5mA までの負荷電流を引くことができます。
この出力もオープンコレクタなのでプルアップ抵抗 RL を付ける必要があります。
吸入電流は 5mA まで可能です。FSK 入力信号周波数が低い値のとき、FSK データ
出力は “High” あるいは ”OFF” 状態であり、高い周波数になると ”Low” あるいは
導通状態になります。もし、入力信号がない場合は、7 Pin の状態は決まりません。
7
Data
Output
FSK
データ出力
8
FSK
Comp
Input
FSK
コンパレータ入力
9
NC
NC端子
NC 端子です。
10
Ref
Voltage
Output
基準電圧
この端子の DC 電圧が 3,8,11,12 Pin の電圧レベルに対し、内部基準電圧としての
働きをします。10 Pin は 0.1μF のキャパシタでバイパスする必要があります。
11
Loop
φDet
Output
ループフェーズ
ディテクタ出力
出力インピーダンスは大。PLL ループフィルタは 11 Pin に繋がれている R1 と C1 に
よって形成されます。入力信号がない場合、あるいは PLL のフェーズエラーがない
場合は 11 Pin の DC レベルはほぼ VREF に近い値となります。フェーズディテクタの
最大振幅電圧は、ほぼ±VREF です。
Timing
Resistor
VCO
コントロール
入力
VCO の自走発振周波数は、この端子から GND に繋がれる外部タイミング抵抗 R0 に
よって決まります。C0 は 13-14 Pin 間に付けられるタイミング容量。温度特性をよく
する為には R0 は 10kΩ∼100kΩの範囲内になければなりません。
この端子は低インピーダンスで内部的に VR に等しい DC レベルバイアスされて
います。12 Pin から引ける最大電流は < 3mA にして下さい。
VCO の微調整は 12 Pin に付ける R0 と直列にポテンションメータをつけることで
おこなって下さい。
Timing
Capacitor
VCOタイミング
キャパシタ
12
13
14
FSK ボルテージコンパレータの高入力抵抗に対する端子です。
通常、この端子と 11 Pin との間に FSK ポストディテクションあるいはデータフィルタ
といわれるものが繋がれます。データフィルタは RF、CF とで形成される回路です。
コンパレータのスレッシホールド電圧は IC 内部基準電圧 VREF によって決まります。
VCO 周波数はこの両 Pin 間に接続される外部タイミング容量 C0 に反比例します。
C0 は無極性のもので 200pF∼10μF の間にして下さい。
※この IC は VCO 外部取り出し端子がありません。VCO 出力は IC 内部でフェーズディテクタ部につながって
いますので、調整等の目的で VCO 自走発振周波数を測る場合は、入力信号を入れずに 2 Pin を 10 Pin に接続し、
CD 、RF あるいは RB を取り付けずに 3 Pin で測定します。
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NJM2211
11. 代表的特性例
消費電流 対 電源電圧
中心周波数ドリフト 対 電源電圧
(Ta=25℃)
20
中心周波数ドリフト ⊿f0 [%]
15
消費電流 ICC [mA]
(f0=1kHz,R≧10R0,Ta=25℃)
2
R0=5kΩ
10
R0=10kΩ
5
R0>100kΩ
6
8
10
12
14
R0=100kΩ
0
R0=30kΩ
-1
R0=10kΩ
-2
R0=5kΩ
0
4
R0=300kΩ
1
16
18
-3
20
4
+
電源電圧 V [V]
6
8
10
12
14
16
18
20
+
電源電圧 V [V]
中心周波数温度ドリフト
+
(V =12V,R1=10R0,f=1kHz)
中心周波数ドリフト ⊿f0 [%]
1
R0=10kΩ
0.5
R0=50kΩ
0
R0=500kΩ
-0.5
R0=1MΩ
-1
-50
-25
0
25
50
75
周囲温度 Ta [℃]
100
タイミング抵抗 対 中心周波数
タイミング容量 対 中心周波数
1
(V+ = 12V,Ta = 25℃)
(V+ = 12V,Ta = 25℃)
1000
C0=1nF
R0=10kΩ
R0=20kΩ
タイミング抵抗 R 0 (kΩ)
タイミング容量 C 0 (μF)
R0=5kΩ
R0=40kΩ
R0=80kΩ
R0=160kΩ
0.1
C0=3.3nF
C0=10nF
100
C0=33nF
C0=0.1μF
C0=0.33μF
0.01
100
1k
中心周波数 f0 (Hz)
10k
10
100
1k
中心周波数 f0 (Hz)
10k
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NJM2211
12. アプリケーション情報
1). FSK復調回路
一般的FSKボーに対する推奨値
下図は、FSK復調回路の基本的応用回路図です。
V+
FSK Boud
Componennt Values
300 Baud
C0 = 39 nF CF = 4.7 nF
C1 = 10 nF R0 = 18 kΩ
R1 = 100 kΩ
f1 = 1070 Hz
f2 = 1270 Hz
NJM2211
0.1uF
FSK
Input
300 Baud
14
1
Signal
Preamp
VCO
13
2
1200 Baud
0.1uF
Quad
φDet.
4
11
Q
_
+
6
FSK
Output
Q
RL
(5.1k)
VCO
Fine Tune
Lock
Detector
Comparator
10
Internal
Reference
9
NC
+
0.1uF
RF
(100k)
_
7
CF = 2.2 nF
R0 = 18 kΩ
C1
GND
5
RX
R1
Loop
φDet.
C0 = 27 nF
C1 = 10 nF
R1 = 30 kΩ
f1 = 1200 Hz
f2 = 2200 Hz
R0
12
3
C0 = 22 nF CF = 4.7 nF
C1 = 4.7 nF R0 = 18 kΩ
R1 = 200 kΩ
f1 = 2025 Hz
f2 = 2225 Hz
C0
8
FSK
Comparator
CF
RB
(510k)
R 0 , C 0 :PLL 中心周波数の設定。
R 1:帯域幅の設定。
C 1:ループフィルタ時定数及びループダンピングファクタの決定。
C F , R F :FSK データ出力に対するフィルタの形成。
R B:7-8Pin 間抵抗(FSK コンパレータに対して正帰還の働きをし、出力ロジック値ができるだけ早く信号に応じ変化)
R 0, C 0, R 1, C 1, C F の値を各場合に応じて最適になるように選べばあらゆる FSK 復調回路に対応できます。
FSK 通信の”マーク”と”スペース”にあたる周波数 f 1,f 2 が決まっている場合、各パラメータの計算は以下になります。
f f
(1). PLL 周波数 f 0: f0 = 1 + 2 (Hz)
2
(2). タイミング抵抗 R 0:推奨値 20 kΩ、R 0 は 10 kΩ∼100 kΩの範囲で任意に選んでかまいません。 通常は R 0 と
直列につける R X で最適値になるようにします。
1
(3). タイミング容量 C 0:VCO 中心周波数式より、C0 = R f
0 0
(4). PLL ループフィルタ R 1:マーク・スペース周波数間隔⊿f から決まります。 R1 = R0 (
1
(5). PLL ループフィルタ C 1:ループダンピングから決まります。通常、ζ = 2
C0
1
( ζ=
)
C1 =
2
4
(6). データフィルタ容量 C F:R F = 100kΩ,R B = 510kΩとして、CF (uF) =
f0
f1 _ f2
)
が最適なので、
3
Baudrate
例). 75 Baud FSK 復調器でマーク・スペース周波数が 1110/1170 Hz の場合
f 0 = (1110 + 1170) × (1 / 2) = 1140Hz、R 0 は 20 kΩを選定し、18 kΩ(固定抵抗)と 5 kΩのポテンシャルメータで構成、
C 0 は VCO 中心周波数式より C 0 = 0.044μF(≒47nF)、R 1 = R 0 × (1140 / 60) = 380kΩ(≒390kΩ)
C 1 = C 0 / 4 =0.011μF(≒10nF)。
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NJM2211
※. FSK 伝送レートについて
【 100kbps 】
FSK として 100kbps そして 1Mbps まで考えると搬送波は数 MHz が必要と考えられます。
よって、NJM2211 においては対応が難しいことが考えらます。
理由については、以下の通りです。
①.中心周波数 300kHz までなので 100kbps 対応は厳しい。
②.中心周波数 300kHz までなので音声との分離フィルタが簡単ではない。
【 9600bps 】
この場合、f 0 = 60∼70kHz とし、Δf = 10∼20kHz と仮定し、FSK 復調回路の基本的応用回路図をもとに、
定数設定方法の一例として記載します。(注:本内容にて NJM2211 の製品試験は行っておりません。)
①.伝送信号の設定
9600bps で伝送路の条件として、f = 30kHz∼100kHz なので、今回は f 0 = 70kHz、f 1 = 60kHz、f 2 = 80kHz と
しています。f 1 のとき、出力は Hi、f 2 のとき Lo です。f LL から f LH までの周波数範囲において、f LL の 2 倍
または f LH の 1/2 の周波数が含まれないようにして下さい。
・ 周辺定数の設定
測定回路図の設計式により設定します。
①. f 1、f 2 は上記の通りです。
②.R 0 は、R 0 と R X の合算で考えてください。但し、C 0 を先に設定したほうが部品上、都合が良いので、
ここでは C 0 =1000pF とし C0 =
R 0(後で微調)は、R0 =
1
R0 f0
1
C0 f0
=
より
1
= 14.3kΩ
100pF . 70kHz
f
.
R 1 は、 R1 = R0 ( S ) = 14.3kΩ . 70kHz = 50kΩ =. 51kΩ
20kHz
f
C0
1000pF
.
=
= 250pF =. 240pF
C 1 は、C1 =
4
4
C F は、CF (uF) =
3
Baudrate
=
. ..
f = f2 _ f1
.
3
= 312pF =. 300pF
9600
・ VCO の調整
一般に計算値より VCO の発振周波数は若干低くなります。VCO の f 0 が 70kHz になるように R 0 のトリマ抵抗
を調整します。VCO の周波数確認方法は、入力信号を入れずに 2 ピンを 10 ピンに接続し、3 ピンを R D に
つなげれば f 0 を測定が出来ます。他に、FSK 復調回路の 2 ピンから信号をいれて周波数掃引をし、7 ピンの
FSK Output を観察し、出力状態の反転周波数から調整することも出来ます。この際、FSK コンパレータの外部
定数で正帰還が掛かっているので、周波数に対してヒステリシス特性を持つので、周波数を上げる・下げるの
双方で確認願います。3/5/6ピンなど使用しない端子はオープンでも構いません。
・ 設定の補足
①.電源電圧は常温でも 5±0.5V でも十分動作すると考えられますが、低温時にトラッキング幅の下側の周波数が
狭くなる場合があります。6V 以上であれば、低温でも十分動作するものと判断します。
②.R L の電源は 1 番ピンの電源電圧と無関係の電圧が使用出来ます。FSK 信号を受ける機器にあわせて設定
出来ます。7 ピンの許容電流 5mA 以内で R L を設定願います。
③.抵抗 R B が小さいと正帰還が増す為、周波数ヒステリシスが大きくなります。
【 4800bps 】
設計上の留意点は上記と同じです。
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NJM2211
【 NJM2211 は PLL 復調型です。 】
データレートを 9600bps とすると最大で約 5KHz の信号(データの Low と Hi が交互に来た場合)となります。
ユーザの条件である伝送路 30KHz から 100KHz とした場合、中心周波数 f 0 は 50KHz より高い方が良いと考えられます。
NJM2211 は位相比較器による PLL で復調しますので、入力周波数 50KHz の場合、例えば 5KHz 矩形波の Low のときに
5 回位相比較が行われます。一般的に比較回数が多いほど安定した出力が期待できますので、f 0 の設定は高めの方が
望ましいと考えられます。ただし、周波数が高いほど計算の設定に対して、VCO 発振周波数の誤差が大きくなりますので
注意が必要です。
【 NJM2211 の位相比較器はアナログの位相比較です。】
NJM2211 は VCO と位相比較器による PLL ループにより成り立っております。FSK の復調は、この PLL ループの位相
比較器から出力される VCO の制御電圧を内部のコンパレータにより IC 内部の基準電源と比較した結果を出力します。
この PLL ループがロックしている状態では、入力周波数に VCO が追随していますので、位相比較器は常にその位相
比較範囲内にあり、逆にその範囲内にあるからこそ PLL ループのロックが成立することになります。
この NJM2211 の位相比較器はいわゆるギルバートセルと呼ばれるアナログ式の位相比較器であり、その位相比較が
正しく行われる範囲は二つの信号の位相差が 90°±90°に限られており、また、周波数自体を比較する機能はありません。
このため、本来位相の比較とはなりえない二つの信号の周波数が大きく異なった場合であっても、あたかも 90°±90°
内に信号があるかのような出力信号が出る場合があります。これが VCO や FSK コンパレータに入力されることで、
FSK 出力にばたつきなどが生じます。設定では、トラッキング周波数範囲内で 1/N や N 倍(N は 2 より大きい整数)
の関係の周波数がないようにする必要があります。また、トラッキング周波数範囲外の信号が入力されても同様に出力
に誤信号が出力されますので、考慮が必要です。
*概略の動作は次のようになります。
信号が入力される。→ 2211 の VCO と、入力信号が、位相比較器で比較する。→ 位相比較の結果で、入力信号と
同期を取るように VCO の調整を行う。→ 2211 の VCO と、入力信号が、位相比較器で比較する。 の繰り返しです。
このときの VCO 制御電圧の変化を基準電圧と比較して、FSK デコーダの出力として取り出します。 このため、VCO
は位相、周波数とも PLL の中で変化できなければなりません。
したがって、外部からのクロックなどを使ってしまうと、そのクロック自体の周波数や位相は変えることが出来ない
ので、PLL が安定することはありません。そのため、回路上、対応していないのはもちろんですが、構成としても外部
クロックを使用することが出来ません。 また、NJM2211 は CR のマルチバイブレータ型の発振器であり、電圧を
電流に変換しその電流で周波数を変えていますので、X’tal を VCO に使用できる回路構造になっていません。
【 電源電圧について 】
カタログ上は 4.5V からの動作となっていますが、8V 程度の方が計算との誤差が少なくなります。5V でも調整が行える
範囲を広くしておけば対応可能とも考えられます。
電源電圧が低い場合には、
IC 内部の VCO 回路の構成により周波数の低い側のトラッキング幅の制限が目立つようになり、
周波数の高い側と低い側のトラッキング幅が対称にはならなくなります。
したがって、基本的にはデータシートにあるトラッキング幅で良いのですが、トラッキングの限界までを使用した
検波をお考えの場合、アプリケーションでの温度特性等もご評価の上、ご使用ください。
※バンドパスフィルタについて
キャリアが常に出力されていれば、NJM2211 はロックしているので前段にバンドパスフィルタ等は不要ですが、無信号
時にキャリアが無いときにはフィルタ等必要です。
NJM2211 の回路特性上で 2 つポイントがあります。
ひとつは、周波数的な点で、設定の周波数レンジ以外の信号が入力されても FSK 復調出力から信号が出ることがあると
いうことです。設定周波数範囲外の信号が伝送路にのると FSK 復調出力から誤信号が出力されることがあるということ
になります。例えば、中心周波数が異なった FSK 信号や他のデータ信号などです。
もうひとつは、入力信号レベルの点で、NJM2211 の信号入力部は 2mV 程度しかない入力でも、NJM2211 の回路が
動作するということです。データ伝送時は、データ信号が大きいため、ノイズなどの微小信号は抑圧されて影響はあり
ません。しかし、送信側がキャリア信号などを出力していないときには、NJM2211 が伝送路にのったノイズを増幅する
ため、FSK 復調出力として何らかの信号を出力してしまう場合があります。あくまでシステム上の問題かと思いますが、
システムが、伝送路には設定外の信号は伝送しないこと、送信側がデータを伝送していないときには NJM2211 の復調
出力信号は無効と出来るような場合には、入力部にフィルタ等は必ずしも必要ではないと考えます。
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NJM2211
2400bps ということは、2400 bits per second のことなので、1 秒間に 2400bit のデータを送れることを示します。
MSK 2400/4800Hz (mark/space) data signal
(MSKとはデジタル周波数変調(FSK)のうち、変調指数が0.5である変調方式のこと。)
マーク(データの1)が2400Hz、スペース(データの0)が4800Hzを示しています。
とすれば、例えばデータが“0101”であるとすれば、復調しなければならない信号は下の図のようになります。
(横軸は時間軸、縦軸は振幅)
0
1
0
1
NJM2211はPLL検波を行うICです。PLL検波とは、VCO、位相比較器、LPF(ローパスフィルタ)を用いて、位相比較器
に検波したい信号とVCOの両信号を入れてPLLループを作り、検波したい信号に合わせて追従するVCOの制御電圧の変化
を検波出力とする方式です。
このためVCOが入力信号に追従するには数回以上の位相比較が望ましいところです。
・カスタマーの条件(2400bps)では上記の図のように0101連続パターンだと、例えば、1のところは位相比較が1回しか
行わないので、安定して検波できない可能性があります。
・マーク/スペースが同一条件で 4800bps は上記の理由により正しく検波できません。
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NJM2211
2). キャリア検出機能付き FSK 復調回路
V+
NJM2211
14
1
0.1uF
FSK
Input
Signal
Preamp
VCO
C0
2
13
3
12
0.1uF CD
RD
(470k)
Quad
φDet.
4
R0
RX
(5k)
R1
Loop
φDet.
11
C1
GND
5
10
_
Q
Internal
Reference
+
6
9
Lock
Detector
Comparator
Q
RL
(5.1k)
Data
Output
VCO
Fine Tune
0.1uF
NC
RF
(100k)
_
7
8
+
CF
FSK
Comparator
RB (510k)
(無信号時、Data出力はLow)
キャリア検出機能付きFSK復調
本 IC のロックディテクト部は FSK 復調時において、キャリア信号検出用として使用できます。6 Pin のオープン
コレクタロックディテクト出力部を 7 Pin データ出力部に直結すると、PLL 検出帯域に信号がない場合に 6 Pin は
低い値であるのでデータ出力は低い値のままとなります。PLL 検出帯域内に信号があると、6 Pin は高い値となり
データ出力が可能となります。
ロックディテクタ容量 CD の最小値はキャプチャーレンジ±⊿f C に、反比例します。キャプチャーレンジとは PLL
ループにロックをかけることができる入力周波数範囲のことで通常 C1 によっても制約されます。一般的な応用に
おいては、⊿f C < ⊿f / 2 です。RD = 470kΩとすると、C D の最小値は
C D (μF) ≧ 16 / キャプチャーレンジ (Hz)
となります。C D が小さすぎると入力信号周波数がキャプチャ帯域に近づいたとき、チャタリングがロックディテクト
出力端にあらわれます。C D が大きすぎるとロックディテクト出力の応答時間が遅くなります。
3). トーン検出回路
下図は、トーン検出回路の一般な回路図です。
V+
NJM2211
14
1
0.1u
Tone
Input
V+
0.1u
Signal
Preamp
VCO
C0
2
13
3
12
CD
R0
RD
(470k)
Quad
φDet.
4
R1
Loop
φDet.
11
C1
GND
RL1 (5.1k)
5
Logic
Output
Q
_
+
RL2 (5.1k)
6
Q
Logic
Output
Lock
Detector
Comparator
10
Internal
Reference
9
NC
_
7
RX
(5k)
+
FSK
Comparator
トーン検出回路
8
0.1u
VCO
Fine Tune
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NJM2211
5 Pin、6Pin のロジック出力 Q、 Q はそれぞれ ”高” 、“低” の論理状態です。PLL の検出帯域内のトーン信号が入ると
これらの出力の論理状態はトーン信号が入っている期間は反転します。各々のロジック出力端は 5mA の負荷電流を
吸い込むことができます。5 Pin、6Pin のロジック出力は共にオープンコレクタなので、プルアップ抵抗 R L1 , R L2 が必要
です。
R 0 , C 0:VCO 中心周波数の設定。
R 1:検出帯域幅の設定。
C 1:ローパスループフィルタ時定数及びループダンピングファクタの決定。
R L1 , R L2 :論理出力 Q、Q のプルアップ抵抗。
R 0, C 0, R 1, C 1, C D の値を選べば、あらゆるトーン検出に応用できます。入力トーン信号 f S に対してこれらの定数は
以下のように計算します。
(1). R 0:15 kΩ∼100 kΩの範囲で任意の値でかまいません。
1
(2). C 0:中心周波数 f 0 (f S と同一) により、決まります。 C0 = R f
0 S
f
(3). R 1:帯域幅±⊿f から決まります。 R1 = R0 ( S )
f
これにより、全検出帯域幅は f 0 ±⊿f の周波数範囲をカバーできます。
C0
(4). C 1:ループダンピングから決まります。 C1 =
2
16 ζ
1
通常の場合、トーン検出では ζ = 2 が C 1 = 0.25 C 0 。C 1 を大きくすると帯域外信号の 除去がよく
なりますが、PLL キャプチャ時間の増加をまねきます。
(5). C D:論理出力のチャタリングを避けるため、R D = 470kΩとすると、
C D (μF) ≧ 16 / キャプチャーレンジ (Hz)
C D を増加させすぎると論理出力応答時間が長くなります。
例). 検出帯域 1kHz ± 20Hz のトーン検出の場合
R 0 は 20 kΩを選定し、18 kΩ(固定抵抗)と直列 5 kΩのポテンシャルメータで構成、
1
ζ=
C 0 は f 0 = 1kHz とすると C 0 = 0.05μF(≒47nF)、R 1 = R 0 × (1000 / 20) = 1MΩ、
2
C 1 = 0.011μF (≒10nF )。
、C 0 = 47nF の場合
4). リニア FM 検出
V+
NJM2211
14
1
0.1uF
FM
Input
Signal
Preamp
VCO
C0
2
13
3
12
0.1uF CD
Quad
φDet.
4
R1
Loop
φDet.
11
C1
GND
5
Q
_
+
6
Q
10
Internal
Reference
Lock
Detector
Comparator
9
NC
_
7
R0
+
FSK
Comparator
リニアFM検出回路
8
0.1u
RF (100k)
CF
Demod
Output
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NJM2211
NJM2211 は広範囲なアナログ通信やテレメータの応用を目的とするリニア FM 検出器として使用できます。
出力復調波はループフェーズ出力端 (11 Pin) から R F と C F による検出フィルタを通り、外部のバッファアンプを
経由して取り出せます。11 Pin の出力インピーダンスが高いのでバッファアンプが必要になります。図のように
通常、非反転ユニティゲイン(G = 1)のオペアンプを使用します。FM 検出のゲインすなわち、変移の単位当たりの
出力電圧変化は、
V OUT = R 1・V REF / 100 R 0 ボルト / % デビエイション
V REF は内部基準電圧。また、外付け部品 R 0 ,R 1 ,C D ,C 1 ,の選定は設計式参照。
リニア FM 検波回路で NJM2211 を使用時に、2 ピン-10 ピン短絡して自走周波数調整後、2 ピンに自走周波数を入力すると出力電
圧が 1.85V 見当のはずが、1.1V 出力となります。なぜ、ずれるのか?調整はどうすれば良いですか。(NJM2211 を使って設計され
たお客様より)
回路変更が必要です。
2 ピン-10 ピン短絡して自走周波数調整する場合に、6 ピンが FM 検波出力信号線に接続されていますが。この調整方法の時
は 6 ピン出力が FM 検波信号線に接続しないようにしてください。
改善理由は次のとおりです。
2 ピン-10 ピン短絡しての自走周波数調整をするとき、3ピンの信号は内部で Lock Detect Comparator に接続されているため、
6 ピンの出力も動作しています。
リニア FM 検波の出力は高インピーダンスで取り出す必要があります。これは、自走周波数調整時も同じです。対象となる回
路構成は、ロック検出回路の出力で信号ロック時は検波出力しロックしていないときはミュートする構成になっています。この
ミュート回路が自走周波数調整時も生きていますので、誤調整となってしまう原因です。自走周波数調整時は、3ピンは自走
周波数が出力されているので AC の状態です。このため、3ピンの状態は測定条件等で一定していないことも多く不安定です。
このため、6ピンの状態も不安定です。6 ピンの出力が電流を引き込むと、自走周波数を決定している11ピン12ピンの回路
電流に影響を与えて、ずれた動作点で周波数調整をしてしまいます。このため、この回路でこの調整法を行うと、自走周波数
をずれて設定してしまうため、調整後に設定したはずの自走周波数を入力すると検波出力の DC 電圧は大きくずれてしまうと
考えられます。
※2 ピン-10 ピン短絡しての自走周波数の調整時に 6 ピンを回路から切り離すか、リニア FM 検出の場合は信号を2ピンより
入力し、検波の出力の DC 電圧が10ピン電圧に等しいとき自走周波数として調整するなどの方法があります。この場合、FSK
コンパレータをモニタリングしておき自走周波数を合わせる事も可能です。
リニア FM 検波の調整を2−10pin間をショートし、そのとき6 pin を回路上切り離さないでの調整したいのですが。
お勧めできません。
1.1
理由は以下の通りです。
1.1.1 調整時 6pin が「L」レベルとは限りません。2-10pin 間短絡しての調整時は、上述のように 3pin で周波数を測定し
ていますのでロックディテクトコンパレータはその信号に応答して動こうとしています。今、6pin が「L」と見えるの
はロックディテクトコンパレータの動作周波数が追いつかないためです。コンパレータの動作周波数はICの規格
としていませんので、調整周波数範囲に応答できる製品が御社に収められた場合、6pin 出力は「L」の状態とは
限らないので、+3KHz オフセットの調整方法の前提が成り立たなくなります。
1.1.2 6pin 出力の「L」レベル電圧も多少変動する場合があります。上記の問題より影響は小さいですが、6pin 出力の
「L」レベル電圧も規格上は 0.3Vtyp、1.0Vmax(3mA 時)ですので振れがあり得ます。
以上の理由によりお勧めできません。セット上、スイッチを設けられないのではと思いますが、次の方法は採れないでしょうか。
セット外部より無変調の周波数 116.5KHz を IC の 2pin に入れて、NJM2211 後の OPAMP(IC10A)の出力端子の電圧と、NJM2211
の 10pin の電圧を比較して、同じ電圧になるように、調整する。この方法であれば、NJM2211 はロックするはずなので 6pin はハイイ
ンピーダンス状態となり VCO に影響を与えません
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NJM2211
<注意事項>
この資料の掲載内容の正確さには万全を期しておりますが、掲載内容について何らかの法的な保証
を行うものではありません。とくに応用回路については、製品の代表的な応用例を説明するためのもの
です。
また、工業所有権・その他権利の実施権の許諾を伴うものではなく、第三者の権利を侵害しないことを
保証するものでもありません。