NJM2626アプリケーションノート

3-Phase DC Brushless Motor Pre-Drivers
Technical Information
NJM2626
1.概要
NJM2626 は、3相ブラシレスモータの制御用 IC です。基本動作としてはホール IC などのロータ磁極検
出信号を受けて、最適な3相の励磁パターン(120度通電)を生成します。
3相ブリッジ回路を外付けにすることによりモータを制御します。
外付け3相ブリッジ素子へのローサイドがプシュプル回路、アッパーサイドがシンクトランジスタ回路で
構成されており、ディスクリート素子(PNP トランジスタ、NPN トランジスタ、PchMOSFET、NchMOSFET)
の選択により目的の電流容量を持ったモータ駆動回路が実現します。
その他に、PWM 制御回路、正逆転回路、過電流保護回路、ゲート出力電圧クランプ回路などが内蔵され、
大変使いやすく信頼性を実現できるICです。
特に、DC24V 系、および DC12V 系の3相ブラシレスモータの可変速制御に最適です。
2.アプリケーション回路例
DC12V 系のアプリケーションとして、3相ブリッジ回路に Pch-MOSFET、Nch-MOSFET を使用する場
合を例に説明します。
MOSFET 駆動(上アーム素子:Pch,下アーム素子:Nch),下アーム PWM
電源電圧 Vcc:12V、モータ電圧 VM:12V
12V
Rg1
1:FR
Rg2
NJM2626
3:H1
15:UH
Rotor
Position
Decode
4:H2
14:VH
5:H3
13:WH
VCC
16:VCC
2:Vref
Vref
Motor
UVLO
1u
12:UL
6:OSC
Rg3
Saw
Osillator
Hall IC
Logic
11:VL
1000p
Hi
10k
+
7:Verr
+
Low
8:GND
-
-
10:WL
+
-
9:ILimit
Rf
Cf
Rs
050204
1
Ver.1.0
3-Phase DC Brushless Motor Pre-Drivers
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NJM2626
3.端子説明
(3-1) UH、VH、WH 端子(120度通電出力)
3相ブリッジパワー回路の上アーム素子を制御する出力端子で、シンクトランジスタ回路構成になってい
ます。抵抗回路で Pch-MOSFET のゲート用バイアスを生成します。Pch-MOSFET のゲートバイアス電圧
を Vgs=10V,Isink=20mA で設計すると
Rg1 + Rg 2 =
12V
12
=
= 600Ω
Isink 0.02
Vgs = Rg1 × Isink = 500 × 0.02 = 10V となり、
参考抵抗値として、Rg1:500Ω、Rg2:100Ω
となります。
(3-2) UL、VL、WL 端子(120度通電+PWM 出力)
3相ブリッジパワー回路の下アーム素子を制御する出力端子です。
PWM 出力により、モータ印加電圧のデューティ制御でモータの可変速を実現します。
出力抵抗 Rg3 は下アーム素子の dV/dt が大きい場合に上アーム素子が誤動作して貫通電流が流れること
を防止するために挿入します。但し、Power 素子のスイッチングロスを増加させる方向になりますので状
況に応じて選定してください。
(3-3)H1、H2、H3 端子
モータのロータ磁極位置センサであるホール IC の信号入力端子です。
この3個の磁極位置信号を内部回路により、120度通電ロジックにデコードします。
ホール入力 H1∼H3 と3相ブリッジの出力素子の ON-OFF を制御する出力 UH∼WH、UL∼WL の関係は、
下記を参照願います。
ホール入力 H1∼H3 が同時 H、或いは L を受け付けた場合は、Invalid Code と判定して UH∼WH は Hi-Z(オ
ープン)、UL∼WL は L となります。
ホール入力
ホール入力
FR=L
FR=H
H1
H2
H3
H1
H2
H3
H
L
H
L
H
L
H
L
L
L
H
H
H
H
L
L
L
H
L
H
L
H
L
H
L
H
H
H
L
L
L
L
H
H
H
L
L
L
L
L
L
L
H
H
H
H
H
H
タイミングチャートは(5-1)を参照願います。
-2-
対
出力
UH
X
X
X
L
L
X
X
X
真理値表
出力
H:Source,L:Sink,X:Hi-Z
VH
WH
UL
VL
L
X
H
L
X
L
H
L
X
L
L
H
X
X
L
H
X
X
L
L
L
X
L
L
X
X
L
L
X
X
L
L
WL
L
L
L
L
H
H
L
L
3-Phase DC Brushless Motor Pre-Drivers
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NJM2626
(3-4)FR 端子
モータの正逆転切替の入力端子です。FR 端子を”H”、または”L”にすることでモータの回転方向を制御で
きます。
正逆転切替は運転動作中は行わないでください。Power 素子が上下アーム短絡し破壊する場合がありま
す。
但し、正逆転切換前後に PWM DUTY=0%(Verr<0.35V)とすれば、安全に正逆転を行うことが出来ます。
耐ノイズ性の向上の為、ヒステリシス入力回路を採用しております。入力電圧は 0V∼Vref の電圧範囲と
なります。
FR 入力とモータ回転方向は次のようになります。
FR 端子
L
H
FR 端子とモータ回転
回転方向(励磁シーケンス)
U→V→W
U→W→V
(3-6)ILIMIT 端子
モータのトルクリミッター機能、起動時のソフトスタートやモータ拘束時の電流の制御を実現するための
電流検出端子です。センス用抵抗 RS を下アーム素子のソース側と GND 間に接続します。
RS の端子電圧を ILIMIT 端子に入力することで電流状態を検出し、RS 端子電圧が IC 内部の基準電圧 VTH を
越えると下アーム素子制御出力端子 UL∼WL が L となり下アーム素子を OFF させます。過電流検出後のリ
セット動作は、内部発振器部のクロック信号の1周期毎に行います。電流リミット値 ILIMIT は VTH / RS とな
ります。
ノイズにより、電流検出機能が誤動作する場合は図のフィルター(Rf、Cf)を挿入してください。
タイミングチャートは(4-2)過電流検出回路を参照願います。
(3-7)Vref 端子
内部基準電圧の出力端子です。安定化のために GND 間に 1μF 程度のコンデンサを挿入します。
(3-8)Verr 端子
モータの回転数をコントロールする速度指令入力端子です。
入力電圧は 0V∼Vref の電圧範囲となります。
出力のデューティは、次のいずれかで制御することができます。
・ Verr アナログ電圧による制御
内部の三角波と Verr 端子に入力される電圧を比較し、Verr 入力電圧が 0.9V(typ.)以下でデューテ
ィが 0%、2.8V(typ.)以上で 100%となり、Verr 入力電圧によりモータの速度制御が出来ます。
デューティ信号の周波数は三角波の発振周波数となります。
・ Verr パルス電圧による制御
PWM0%、PWM100%に相当する入力として Verr 入力電圧が 0.35V(max.)以下、3.5V(min.)以上の
パルス信号により、モータの速度制御ができます。
(3-9)OSC 端子
この端子にコンデンサを接続することにより、IC 内部の三角波の発振周波数(PWM 周波数)を決めます。
接続コンデンサと発振周波数の関係は、特性例として(5-5)fosc vs. OSC-Capacitor のグラフを参照願いま
す。
1000pF のコンデンサを接続すると、約 25KHz の PWM 周波数となります。PWM 周波数が低いとモータ
からのスイッチング音が聞こえ、逆に高すぎると Power 素子のスイッチングロスが増加するため、20KHz
∼30KHz 近辺の PWM 周波数の選択を推奨します。
-3-
3-Phase DC Brushless Motor Pre-Drivers
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4.保護回路
(4-1) 低電圧検出回路(UVLO)
電源電圧 Vcc の投入/遮断時、及び低下時に回路動作や出力部が不安定になることを防止するため、低電
圧検出回路が内蔵されています。検出回路が動作時、出力 UH∼WH はオフ、出力 UL∼WL は L となりま
す。
検出電圧の近傍での検出チャタリングを避けるためにヒステリシスを持っています。
低電圧検出タイミングチャート
⊿UVLO
Vcc
5.45V(typ.)
5.0V(typ.):UVLO
UH/VH/WH
UL/VL/WL
UVLO動作期間
UH/VH/WHはHi-Z出力
UL/VL/WLはL出力
(4-2) 過電流検出回路
ILIMIT 端子にてモータ電流検出センス抵抗からの電圧をモニターリングすることにより、過電流検出がで
きます。
過電流検出タイミングチャート
Vposc:2.8Vtyp.
OSC
OSC
Vbosc:0.9Vtyp.
Verr
内部
CLOCK
Vth:0.5Vtyp.
I Limit
UL/VL/WL
(下側出力)
過電流検出リセット
過電流検出動作
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5.その他
(5-1)ホール入力
対
出力
タイミングチャート
FR:L Forward Rotation
H1
H2
H3
UH
VH
WH
UL
VL
WL
FR:H Reverse Rotation
H1
H2
H3
UH
VH
WH
UL
VL
WL
-5-
3-Phase DC Brushless Motor Pre-Drivers
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NJM2626
(5-2)クローズドループ速度制御回路例
モータの負荷変動などに対しても安定した速度制御が必要な場合は、モータの速度情報信号(例えば,FG
信号など)と基準速度信号と比較した偏差信号を Verr に与えることで比較的安定した速度制御が可能となり
ます。
汎用オペアンプを使った速度制御回路の構成例を以下に示します。
この回路は入力バッファ、レベルシフト、速度設定用のアンプから成り立っています。FG信号はバッフ
ァを介して入力され、0.47μFのCでDCカットします。レベルシフトで NJM2626 の動作電圧に合わ
せた信号レベルに調整した後、積分し、速度制御回路で制御信号を増幅します。速度調整は「speed set」
VRで行います。システム安定度に問題がある場合は、VR1を調整します。
Vcc=12V
0.1u
82k
10k
from
NJM2626 H1 ,H2 or H3
FG
0.47u
2k
10k
to Verr
VR1
2k
4.7u
10u
47k
speed set
Opamp:NJM13403
極数が少ないモータで FG パルス数が少なくて速度制御性能が不安定な場合、FG パルス数を H1,H2、H3
より合成して3逓倍する回路例を以下に示します。
H1
条件:Vcc=12V
H2
H3
FG_OUT
H1
H2
H3
FG_OUT
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3-Phase DC Brushless Motor Pre-Drivers
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NJM2626
(5-2)ショートブレーキ回路例
本 IC ではモータ回転状態から速度指令電圧 Verr を L にした場合、慣性運転によるブレーキとなります。
ブレーキモードとしてショートブレーキ(SB)を使用する場合は、Verr 切替タイミングと SB の ON/OFF
タイミングで3相ブリッジパワー回路のアーム短絡を防止するためにデッドバンド時間を設ける必要があ
ります。デッドバンド生成回路とショートブレーキ回路例を以下に示します。
5V
10k
10k
SB
デッドバンドは SB 入力の立ち上がり/立下り
を積分して生成しています。
30k
+
-
-
2k
10k
Verr
+
0.01u
10k
SB
comparator
NJM2901
Verr
sb
10k
-
30us
110us
sb
+
30k
sb
Rg1
1:FR
Rg2
NJM2626
3:H1
15:UH
Rotor
Position
Decode
4:H2
14:VH
5:H3
13:WH
VCC
16:VCC
2:Vref
Vref
UVLO
1u
12:UL
6:OSC
Rg3
Saw
Osillator
Logic
11:VL
1000p
Hi
10k
+
7:Verr
+
Low
Verr
8:GND
-
-
10:WL
+
-
9:ILimit
-7-
3-Phase DC Brushless Motor Pre-Drivers
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NJM2626
(5-3)24V 電源対応について
電源電圧 Vcc とモータ電圧 VM を 24V 電源で使用する場合について説明します。
上アーム素子の Pch-MOSFET のゲートバイアス抵抗については、(3-1)を参考に設計します。
下アーム素子の Nch-MOSFET のゲート電圧について UL~WL 端子は、Nch-MOSFET のゲート-ソース電
圧 VGS の定格を考慮して、Vcc=26V で出力電圧 20V(max.)となる冗長回路構成となっております。
(5-4)上アーム素子:Nch-MOSFET 対応について
外付け3相ブリッジ素子を全て Nch-MOSFET で構成する場合の回路構成例を下記に示します。
モータ用電源(VM)とは、別に Nch-MOSFET のゲートドライブ用電源 10V をご用意ください。
10V
VM
1:FR
NJM2626
3:H1
15:UH
Rotor
Position
Decode
4:H2
14:VH
5:H3
16:VCC
13:WH
VCC
2:Vref
Vref
Motor
UVLO
12:UL
6:OSC
Saw
Osillator
Logic
11:VL
+
7:Verr
+
-
8:GND
10:WL
+
-
9:ILimit
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3-Phase DC Brushless Motor Pre-Drivers
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5-5)fosc vs. OSC-Capacitor
NJM2626
fosc vs. OSC-Capacitor
VCC=12V
Verr=2.2V
Ta=25degC
fosc [kHz]
100
10
10
100
1000
10
4
OSC Capacitor [pF]
<注意事項>
このデータブックの掲載内容の正確さには
万全を期しておりますが、掲載内容について
何らかの法的な保証を行うものではありませ
ん。とくに応用回路については、製品の代表
的な応用例を説明するためのものです。また、
工業所有権その他の権利の実施権の許諾を伴
うものではなく、第三者の権利を侵害しない
ことを保証するものでもありません。
-9-