IC MCZ5209SN AppNote Jp

CAT.NO : 1H0500-1
APR.2015
MCZ5209SN APPLICATION NOTE
Ver1.0
スタンバイ対応 自己起動端子付
PFC + LLC制御IC
MCZ5209SN
アプリケーションノート ver. 1.0
SHINDENGEN
ELECTRIC MFG.CO.,LTD
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使用上の注意
このたびは、弊社製品をご使用いただき誠にありがとうございます。
当 IC をご使用の際は、お客様の安全を確保するため下記の警告ならびに注意を必ず守ってご使用下さい。
警
告
注
意
警
告
注
意
!
誤った取り扱いをしたときに死亡や重大な人身事故および大きな物的損害に結びつく危険性のあるもの。
!
誤った取り扱いをしたときに軽傷に結びつく恐れ、または軽微な物損事故に結びつく恐れのあるもの。
!
当 IC は、一般電子機器(事務機器・通信機器・計測機器・家電製品等)に使用されることを意図しております。誤動作や事
故が直接人体や生命を脅かす恐れのある医療器、航空宇宙機、列車、輸送機器(車載、船舶等)、原子力等の制御機器
には使用しないで下さい。一般電子機器以外にご使用になる場合は弊社までご相談下さい。
!
修理や改造は、重大な事故につながりますので、絶対にやめて下さい。
《感電、破壊、火災、誤動作等の危険があります。》
!
異常時は出力端子に過大電圧が発生したり、電圧低下となる場合があります。 異常時の、負荷の誤動作や破壊等を想定
した保護対策(過電圧保護、過電流保護等の保護対策)を最終機器に組み込んで下さい。
!
入力端子、出力端子の極性を確認し誤接続の無いことを確認してから通電して下さい。
《保護素子が切れたり、発煙・発火の原因になります。》
!
決められた入力電圧を必ず守っていただくとともに、入力ラインに必ず保護素子を挿入して下さい。
《異常時には発煙・発火の危険があります。》
!
使用中に故障または、異常が発生した時は、すぐに入力を遮断して電源を停止させて下さい。また、直ちに弊社にご相談
下さい。
●本資料に記載されている内容は、製品改良などのためお断りなしに変更することがありますのでご了承下さい。
●御使用頂く際には、仕様書の取り交わしをして頂けます様お願いします。
●ここに記載されたすべての資料は正確かつ信頼し得るものでありますが、これらの資料の使用によって起因する損害または特許権そ
の他権利の侵害に関しては、当社は一切その責任を負いません。
●本資料によって第三者または当社の特許権その他権利の実施に対する保証または実施権の許諾を行うものではありません。
●本資料の一部または全部を当社に無断で転載または複製することを堅くお断りいたします。
! 当社は、品質と信頼性の向上に絶えず努めていますが、半導体製品はある確率で故障が発生したり、誤動作する場合があります。
必要に応じ、安全性を考慮した冗長設計、延焼防止設計、誤動作防止設計等の手段により結果として人身事故、火災事故、社会的な損
害等が防止できるようご検討下さい。
!
本資料に記載されている当社半導体製品は、特別に高い品質・信頼性が要求され、その故障や誤動作が直接人命を脅かしたり、人
体に危害を及ぼす恐れのある機器あるいはシステムに用いられることを目的として設計、製造されたものではありません。下記の特別
用途、特定用途の機器、装置にご使用の場合には必ず当社へご連絡の上、確認を得て下さい。
特別用途
輸送機器(車載、船舶等)、基幹用通信機器、交通信号機器、防災/防犯機器、各種安全機器、医療機器 等
特定用途
原子力制御システム、航空機器、航空宇宙機器、海底中継器、生命維持のための装置 等
! なお、IC 製品に関しては、特別用途・特定用途に限らず、連続運転を前提として長期製品寿命を期待される機器、装置にご使用さ
れる場合に関しては当社へお問い合わせ下さい。
当社は IC 製品を安全に使っていただくために回路支援をいたしています。弊社担当営業または商品企
画にお問い合わせ下さい。
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Index
1 : 概要
1.1: 特長
4
1.2: ブロック図
5
1.3: 端子配置図
5
1.4: 各ピン機能一覧
6
2 : 基本動作の説明
7
2.1: はじめに
2.1.1: 各動作ブロックについて
7
2.1.1: 各動作モードについて
7
8-9
2.2: 電源供給部
8-9
2.2.1: 制御 IC 電源供給部
10-16
2.3: PFC 制御部
2.3.1: 電流臨界型オン幅制御方式 PFC の動作原理
10
2.3.2: ゼロ電流検出 ZC 端子 (3pin)
11
2.3.3: PFC 出力電圧制御 FBP 端子 (5pin)
12
2.3.4: PFC 位相補償 COMP 端子 (4pin)
13
2.3.5: PFC ゲートドライバ VGP 端子 (1pin)
14
2.3.6: PFC 部各種保護機能
15-16
17-28
2.4: LLC 制御部
2.4.1: 発振制御部 FBL 端子 (12pin)
17-18
2.4.2: ゲートドライバ出力 VGH 端子、VGL 端子 (22、16pin)
19
2.4.3: LLC 部各種保護機能
20-28
29-33
2.5: 共通制御部
2.5.1: AC 入力監視機能 LS 端子 (7pin)
29
2.5.2: アクティブスタンバイおよびバースト機能
30-32
2.5.3: 過熱保護機能
33
3 : 周辺回路定数の決定
3.1: PFC 部の設計
34-38
3.2: LLC 部の設計
39-44
3.3: 共通部の設計
45-46
4 : 回路例
47
4.1: 代表回路図
5 :外形寸法図
5.1: SOP24 (MCZ5209SN)
48
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1
概要
MCZ5209SN は、電流臨界型 PFC(Power Factor Correction)制御用コントローラと、高耐圧ゲートドライ
バを有した周波数変調タイプの LLC ブリッジ型全波電流共振電源制御用コントローラの 2 つの制御回路を
集積したコントローラ IC です。高耐圧自己起動端子(ドレインキック機能)を搭載しており、無損失起動が可能
です。
PFC 部の制御は電流臨界型を採用し、低ノイズ・高効率を実現できます。また、LLC 部は 600V 耐圧の高
耐圧ゲートドライバを有し、ハイサイド MOSFET の直接駆動が可能であるとともに共振はずれ保護
(Capacitive Mode Protection)機能等の各種保護機能を備えており、部品点数の削減や高効率を実現でき
ます。
スタンバイ時の待機電力改善機能(アクティブスタンバイ機能、バースト機能)を搭載しており、全負荷領域に
わたって高効率を維持した電源を実現出来ますので以下の製品に最適です。
レーザープリンタ等の OA 機器用電源
AC アダプタ等の外付け電源
PDP / LCD 等大画面フラット TV 用電源
産業機器用電源
絶縁型 LED 照明用電源
Audio、プロジェクタ用電源
1.1 特長
【共通部特長】
1.
2.
3.
4.
5.
6.
PFC 機能と LLC 機能をワンチップ化し、SOP24 パッケージで実現。
自己起動端子を搭載し、無損失起動を実現。
高効率バースト機能を搭載し、0W 付近のスタンバイ負荷領域での消費電力削減を実現。
アクティブスタンバイ機能を搭載し、数 W 付近の軽負荷領域での消費電力削減を実現。
外部ラッチ機能を搭載し、過電圧ラッチ回路を構成可能。
過熱保護 TSD(Thermal shut down)機能を搭載し、IC 異常発熱時の保護を実現。
【PFC 部特長】
1.
2.
3.
4.
電流臨界型 PFC により高効率・低ノイズを実現。
オン幅(電圧)制御により入力ライン検出不要で、部品点数削減を実現。
過電流検出しきい値は 0.5V であり、検出抵抗損失削減を実現。
フィードバックオープン・ショート保護、過電圧発振停止保護(OVP:Over Voltage Protection)、
軽負荷時の PFC 出力電圧上昇保護機能を搭載。
【LLC 部特長】
1. 高信頼性実績を誇る 600V 耐圧ゲートドライバ内蔵、ハイサイド MOSFET も直接駆動可能。
2. MOSFET 駆動電源用レギュレータを内蔵し、過渡状態での安定ドライブを実現。
また、ハイサイド・ローサイドゲートそれぞれ独立した電圧低下保護機能(UVLO)搭載。
3. 出力負荷の短絡および過電力時の保護に対応出来る 2 種類の過電流保護機能(OCP)を搭載。
ピーク負荷の大きいアプリケーションにも最適。
4. 共振はずれ保護機能搭載により、共振はずれ(Capacitive mode)を回避し MOSFET を保護。
5. Brown Out 保護機能を搭載し、低入力電圧動作時の保護を実現。
6. MOSFET の di/dt ストレスを低減するソフトスタート機能搭載。
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1.2 ブロック図
図 1 . MCZ5209SN ブロック図
1.3 端子配置図
図 2 . MCZ5209SN 端子配置図
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1.4 各ピン機能一覧
端子番号
記号
1
VGP
2
CSP
3
ZC
4
COMP
5
FBP
6
SGND
7
LS
8
ASTBY
9
BURST
10
CSO
11
CSL
12
FBL
13
SST
14
SSC
15
Vc1
16
VGL
17
PGND
18
Vc2
19
NC
20
VB
21
VS
22
VGH
23
NC
24
Vin
機能
PFC 部のドライバ出力回路
PFC 部のゲート駆動用電源出力端子です。
PFC 部の過電流検出端子
PFC 部主スイッチの過電流を検出します。
PFC 部のオンタイミング検出端子
ゼロ電流を検出して、PFC 部主スイッチのオンタイミングを決めます。
PFC 部のフィードバックアンプの出力端子(位相補償設定用)
PFC 部の位相補償設定用の端子です。
フィードバックアンプ入力端子、PFC 出力電圧制御、低入力保護、SS リセット
PFC 部出力電圧のフィードバックや低入力保護を行います。
制御信号系 GND 端子
制御信号系の GND 接続端子。
AC 入力監視用端子
AC 入力電圧監視を行い、AC 低入力保護を行います。
アクティブスタンバイ切り替え端子、バーストモード切り替え端子
通常動作モード、アクティブスタンバイモード、バーストモード切り替え端子です。
バースト動作制御端子
バーストモード時にバースト動作を制御する端子です。
LLC 部の過電流平均化検出応答調整用端子
OCP 検出時の応答を調整する端子です。
LLC 部の過電流検出、過電流平均化検出、di/dt(共振はずれ)検出端子
LLC 部の過電流(OCP1)、過電流平均(OCP2)および di/dt 検出用の端子です。
LLC 部発振器の周波数設定用端子:Duty や動作周波数の制御
LLC 部の発振周波数や Duty を制御し出力フィードバックを行う端子です。
LLC 部のソフトスタートと異常検出時の間欠動作用コンデンサ接続端子
LLC 部のソフトスタート時間および OCP1/2 動作時の間欠動作時間を決めます。
LLC 部のバーストモード時ソフトスタート切り替え用端子
バーストモード時にオープンとなり、ソフトスタート時間を短くします。
制御回路の電源供給端子
制御 IC の電源供給端子です。
LLC 部のローサイドドライバ出力端子
LLC 部のローサイドゲート駆動用電源出力端子です。
パワー系 GND 端子
パワー系の GND 接続端子。
ドライバ用電源出力端子
PFC 部および LLC 部のゲート駆動用電源出力端子です。
未接続端子
沿面距離確保のための空きピン。
LLC 部のハイサイドドライバ電源端子
LLC 部のハイサイドゲート駆動用電源出力端子です。
LLC 部のハイサイドドライバ基準電源端子
LLC 部のハイサイドゲートの基準端子です。
LLC 部のハイサイドドライバ出力端子
LLC 部のハイサイドゲート駆動用電源出力端子です。
未接続端子
沿面距離確保のための空きピン。
起動回路入力端子
起動回路用の入力端子です。
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2
基本動作の説明
※ 特に指定がない場合、しきい値等の数値は TYP 表記しています。詳細は特性仕様書をご覧下さい。
また、各特性図の詳細についても特性仕様書の特性図をご覧ください。
2.1 はじめに
2.1.1 各動作ブロックについて
MCZ5209SN は、以下の主要ブロックから構成されています。各ブロックの動作については 2.2 項以降
をご覧下さい。また、各機能の調整方法については 3 項以降をご覧下さい。
・ 電源供給部
自己起動回路や各電源供給部について記載しています。詳細は 2.2 項をご覧下さい。
・ PFC 制御部
PFC 部の動作および各種保護機能について記載しています。詳細は 2.3 項をご覧下さい。
・ LLC 制御部
LLC 部の動作および各種保護機能について記載しています。詳細は 2.4 項をご覧下さい。
・ 共通制御部(アクティブスタンバイ機能、バースト機能など)
共通制御部の動作および各種保護機能について記載しています。詳細は 2.5 項をご覧下さい。
2.1.2 各動作モードについて
MCZ5209SN には 3 つの動作モードがあります。この 3 つの動作モードは ASTBY 端子の電圧に
よって決まります。ASTBY 端子電圧と動作モードの関係は P30 の 2.5.2 項をご覧ください。
各動作モードでの PFC および LLC 部の動作を表 1 に、その時の動作波形を表 2 に示します。
特に動作モードの指定がない場合、本ページ以降の説明では通常動作モードを基準に記載しています。
表.1 各動作モードでの PFC および LLC 部動作
通常動作モード
アクティブスタンバイモード
PFC 部動作
動作
停止
LLC 部制御
対称制御
非対称制御
LLC 部動作
連続動作
連続動作
バーストモード
停止
非対称制御
バースト動作
表.2 各動作モードでの PFC および LLC 部動作波形
*バーストモード時の LLC 部ゲートおよび電流波形はアクティブスタンバイモードと同様に非対称動作です。
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2.2 電源供給部
2.2.1 制御 IC 電源供給部 (自己起動回路および電源制御回路)
MCZ5209SN は起動抵抗を必要としない起動回路を
内蔵していますので、部品点数が少なく簡単に動作させ
ることが出来ます。
図 3 に自己起動回路の概略図を示します。
Vin 端子は電源起動時に高圧部から Vc2 端子に接続
したコンデンサ C237 を充電するための端子で、高耐圧
スイッチと定電流回路で構成されています。
電源起動後は補助巻線 Nc から Vc1 端子に電圧供
給を行います。なお、ドロッパ回路を内蔵しており Vc1 耐
圧は 35V となります。
電源起動時の動作シーケンスを図 4 に示します。
図.4
図.3
起動シーケンス図
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自己起動回路概略図
Vin 端子から Vc2 端子に接続したコンデンサ C237 への供給電流は Vc2 端子電圧により変化します。
Vc2=1V 時が Idk(on)1=2.8mA、Vc2=4V 時が Idk(on)2=33.0mA です。
【期間(A)】
電源起動時、Vc1 端子電圧が Vc1(dkoff) 12.6V 未満の場合、Vc2 端子電圧は 13.3V になるまで充電
されます。Vc2 端子電圧が 10V 以上、LS 端子電圧が 2.0V 以上になると PFC および LLC が動作可能に
なります。PFC および LLC の発振開始タイミングについては、後述する 2.3.6.2 項および 2.4.3.3、2.5.1
項をご覧ください。
電源動作し補助巻線 Nc に電圧が発生するとコンデンサ C233 に充電され Vc1 端子電圧が上昇してき
ます。Vc1 端子電圧が Vc1(dkoff) 12.6V 以上になると起動回路は切り離されて補助巻線からの供給のみ
となります。その場合、Vc2 端子電圧は Vc2(dkoff) 11.8V にクランプされます。
【期間(B)】
ドレインキック回路がオフした状態で SST 端子電圧が 2.0V 未満の場合、ASTBY 端子は放電していま
す。SST 端子電圧が 2.0V 以上になると ASTBY 端子が充電を開始します。ASTBY 端子が 4.0V 未満の
場合、BURST 端子は 400uA で放電しています。ASTBY 端子が 4.0V 以上になると BURST 端子の放電
がオフします。起動時は常に通常動作モードで起動するシーケンスとなります。バーストモード時の動作シ
ーケンスについては 2.5.2 項をご覧ください。
【期間(C)】
Vc1 端子電圧が Vc1(dkon) 8.0V 以下まで低下した場合、起動回路が再度動作します。なお、Vc2 端
子電圧が Vc2(SP) 8.0V まで低下すると IC は停止します。
Vc1 端子および Vc2 端子に接続するコンデンサ C233、C237 は起動・切断などの過渡状態で安定動
作する容量を挿入してください。所望の入出力条件にもよりますが、100u~470uF 程度を推奨します。
また、 C233 および C237 のコンデンサが MCZ5209SN の Vc1 端子および Vc2 端子から遠い場合、
Vc1 端子および Vc2 端子にノイズが入り誤動作する可能性があります。その場合、Vc1 端子および Vc2
端子直近に誤動作防止用の 0.1u~1.0uF 程度の MLCC(C234、C238)を挿入してください。
表.3 制御 IC 電源供給部関係しきい値
項目
各規格値の詳細は特性仕様書をご確認ください。
記号
条件
規格値
ドレインキック供給電流 1
Idk(on)1
Vin=100V、Vc2=1.0V
2.8
mA
ドレインキック供給電流 2
Idk(on)2
Vin=100V、Vc2=4.0V
33.0
mA
ドレインキック ON 時 Vc2 電圧
Vc2(dkon)
Vin=100V
13.3
V
ドレインキック OFF 時 Vc2 電圧
Vc2(dkoff)
Vc1=16V
11.8
V
ドレインキック停止 Vc1 電圧
Vc1(dkoff)
Vin=100V
12.6
V
ドレインキック再起動 Vc1 電圧
Vc1(dkon)
Vin=100V
8.0
V
Vc2 動作開始電圧
Vc2(st)
10.0
V
Vc2 動作停止電圧
Vc2(sp)
8.0
V
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2.3 PFC 制御部
2.3.1 電流臨界型オン幅制御方式 PFC の動作原理
IL(peak) = 2Iin
IL(peak)
包絡線
チョーク電流
IL
Iin = IL(ave)
チョーク電流
IL
Vin
Vin
Ion
Ioff
0A
Ton Toff
Ton
Toff
Ton
Toff
0A
Ton
Ton
図 5 . 臨界動作
Toff
図 6 . スイッチング 1 サイクル波形
MCZ5209SN の PFC 部は、電流臨界型を採用しており、図 5 のようにチョーク電流 IL はゼロスタート・ゼ
ロエンドの繰り返し三角波となります。また、オン幅制御方式であるため、オン幅 Ton は負荷に応じて決定さ
れ一定値となります。なお、オフ幅 Toff は入力電圧 Vin に応じてスイッチング毎に変化しますので、スイッチ
ング周期は変動します。
各電流値は以下の式により算出されます。Ton および L 値は一定であるため、IL のピークである IL(peak)
は Vin に比例します。Vin は正弦波状であるため、IL(peak)も正弦波状となります。(式 A)
IL (peak ) =
Vin × Ton
[ A ] ・・・(A)
L
ただし、スイッチング周波数は AC 商用周波数より十分高く、スイッチング 1 周期では Vin 一定とみなしま
す。(図 6)
入力電流 Iin は、コンデンサ Cin により IL から高周波成分が除去され平均化された電流 IL(ave)と等しくな
ります。また、IL は三角波のため、IL(ave)は IL(peak)の 1/2 となります。(式 B)
Iin = IL (ave ) =
IL (peak )
[ A ] ・・・(B)
2
式(B)に式(A)を代入し、
Iin = IL(ave) =
IL (peak ) Vin × Ton
=
[ A ] ・・・(C)
2
2L
式(C)のように、MCZ5209SN のオン幅制御により、Iin と Vin は比例関係となるため、力率改善が可能と
なります。回路上での波形例を図 7 に示します。
図 7 . 回路上の波形例
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2.3.2 ゼロ電流検出 ZC 端子 (3pin)
MCZ5209SN は、コントロール巻線電圧を検出しスイッチング素子のオンを行っています。このオンタイ
ミングは ZC 端子により決まります。
図 8 のように ZC 端子電圧が Vzc(L) 0.5V を下回ったタイミングで、主スイッチをオンさせております。そ
の結果、スイッチングサイクル毎にチョークコイルのエネルギが確実に放出完了したタイミングで主スイッ
チがオンするため、電流臨界動作となります。また、このゼロ検出電圧に対して、+1V のヒステリシスをもた
せることにより耐ノイズ性を高めています。
ZC 端子に Vzc(H) 1.5V を超える電圧が印加されない場合は Trestart 400us でオントリガが入ります。
これにより、電源起動時に ZC 端子電圧が発生していない状態においてもゲートをオンする信号が入るた
め、発振させるトリガーとなります。
さらに、MCZ5209SN には軽負荷時に発振周波数が高くなりすぎることを抑制するために、ゲート出力
がオフしてから ZC のオントリガを受け付けない Toff(min) 4.0us を設けています。この期間に ZC 端子電
圧が 0.5V を下回ってもオントリガを受け取らず、ゲート出力はオンしません。最小 OFF 時間経過後に ZC
端子電圧が 0.5V を下回ったタイミングでゲート出力がオンします。
ZC 端子周辺部品の定数設定については、3.1.5 項 を参照してください。
ヒステリシス
1V
Toff(min)
ZC検出電圧(L)
0.5V
ZC端子電圧
0V
PFC部MOS
ドレイン電流
0A
PFC部
ダイオード電流
0A
PFC部MOS
ドレイン電圧
0V
図 8 . オンタイミング(Z/C 端子)
表.4 ZC 端子関係しきい値
項目
ZC 検出電圧(H)
各規格値の詳細は特性仕様書をご確認ください。
記号
条件
規格値
Vzc(H)
1.5
V
ZC 検出電圧(L)
Vzc(L)
0.5
V
最小 OFF 時間
Toff(min)
4.0
us
リスタート時間
Trestart
400
us
ZC=0V
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2.3.3 PFC 出力電圧制御 FBP 端子 (5pin)
MCZ5209SN は PFC 部の出力電圧を検出し PFC 部主スイッチのオン幅を変化させることで、出力電
圧を制御しております。
図 9 に示すように出力電圧から抵抗分圧(R111~R114, R115) して FBP 端子に接続することにより、
出力電圧は FBP 端子電圧が Vo(ref) 3.0V になる値で安定になります。
また、フィードバックエラーアンプの出力である COMP 端子電圧と主スイッチのオン幅は比例関係であ
り、Vth(bst) 0.8V 以上でオン開始、4.0V で最大オン時間になります(図 10)。COMP 端子は最大で約
5.5V まで充電します。フィードバックが掛かることにより、COMP 端子電圧が制御され、出力電圧が安定
します。
FBP-GND 端子直近にノイズ対策としてコンデンサ(C112)を接続してください。なお、コンデンサ容量が
大きすぎると応答にも影響してきますので、1000p~2200pF 程度を推奨します。
PFC OUT
COMP
R111
~
R114
4
3.0V= Vo(ref)
FBP
5
R115
C112
SGND
6
図 9. FBP 端子内部ブロック図
COMP vs Ton
30
Ton [us]
25
20
15
10
5
0
0.5
1
1.5
2
2.5
3
3.5
4
4.5
5
5.5
COMP [V]
図 10 . COMP 端子電圧とオン幅の関係
表.5 FBP 端子関係しきい値
項目
エラーアンプ入力しきい値
各規格値の詳細は特性仕様書をご確認ください。
記号
条件
Vo(ref)
最小 ON 時間
Ton(min)
COMP=Vth(bst)
最大 ON 時間
Ton(max)
COMP=open or 5V
軽負荷間欠用しきい値
Vth(bst)
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規格値
3.0
V
320
ns
27
us
0.8
V
2.3.4 PFC 位相補償 COMP 端子 (4pin)
PFC コンバータは、商用 AC 入力の周波数に対して応答しないように調整する必要があります。
COMP 端子‐SGND 間にコンデンサ(C132,C133)および抵抗(R132)を接続する事でアンプの位相補償を
行い、商用 AC 入力の周波数でのフィードバックループゲインを落とします。
回路例を図 11 に示します。目安として、C133 は 1.0u~2.2uF 程度、C132 は 0.22u~0.47uF 程度、
R132 は 1k~47kΩ程度を推奨します。COMP 端子の調整方法は、3.1.6 項 をご覧下さい。
図 11 . COMP 端子接続例
表.6 COMP 端子関係しきい値
項目
各規格値の詳細は特性仕様書をご確認ください。
記号
条件
エラーアンプ出力ソース電流 1
Ieaso1
SST=0V,FBP=0.6V,COMP=3.0V
-100
uA
エラーアンプ出力ソース電流 2
Ieaso2
SST=2.4V,FBP=0.6V,COMP=3.0V
-50
uA
Ieasi
FBP=5.0V,COMP=3.0V
100
uA
0.8
V
エラーアンプ出力シンク電流
軽負荷間欠用しきい値
Vth(bst)
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規格値
2.3.5 PFC ゲートドライバ VGP 端子 (1pin)
PFC のゲート出力は VGP 端子にて行います。
VGP 端子は安定した Vc2 電源より供給され、ゲートドライバ駆動能力は 0.6A(Source)/0.6A(Sink)
です。この値は信号系誤動作を引き起こさずに MOSFET を十分高速にドライブできるように調整されて
おります。
一般的に用いられる駆動回路の例を図 12 に示します。
抵抗 R1 および R2 は使用する MOSFET のゲート容量 Qg 等に応じて調整してください。
また、R3 には 10k~47kΩ程度の抵抗を接続してください。
A)、B)の様に電荷引き抜き用ダイオードを用いる場合には小容量ショットキーダイオードなど
を用い、スナッピー(ハード)リカバリーダイオードは使わないように注意して下さい。
推奨ダイオード例として 新電元製 D1NS4(アキシャル)や M1FM3(面実装)があります。
また、Qg の大きい MOSFET を接続して引き抜きが十分でない場合、図 12 C)のように
引き抜き側に PNP トランジスタを使用して下さい。
図 12 .PFC ゲート駆動回路接続例
表.7 PFC ゲートドライバ関係しきい値
項目
各規格値の詳細は特性仕様書をご確認ください。
記号
条件
規格値
ソース駆動能力
Iout(so)P
Vc2=VB=12V , VGP=0V
-600
mA
シンク駆動能力
Iout(si)P
Vc2=VB=12V , VGP=12V
600
mA
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2.3.6 PFC 部各種保護機能
2.3.6.1 PFC 過電流保護機能
過電流保護は図 13 のように MOSFET のソース-GND 間に接続された過電流検出抵抗(R121)により
決定される電圧を CSP 端子で監視することで行います。
CSP 端子電圧が Vcsp 0.5V 以上になると主スイッチをオフします。通常動作時の最大ドレイン電流以
上、かつチョーク飽和電流以下で過電流検出ポイントを設定して下さい。
なお、MCZ5209SN にはゲートオン直後のノイズによる過電流保護の誤動作防止の為、ゲートオン信
号が入ってから一定期間、過電流検出を受け付けないリーディングエッジブランク時間 (TLEB) を設けて
います。(図 14)
スイッチングノイズによる誤動作防止のため、図 13 のようにコンデンサ(C121)を挿入してください。コン
デンサは CSP-GND 間直近に接続してください。コンデンサ容量は 1000p~10000pF 程度を推奨します。
また、R126 を追加することによりさらにノイズによる誤動作を抑制できます。抵抗値は 47~1kΩ程度
を推奨します。CSP 端子の設計方法は 3.1.8 項 をご参照下さい。
図 13 . CSP 端子接続例
図 14 . 過電流保護 動作シーケンス
表.8 PFC 過電流保護機能関係しきい値
各規格値の詳細は特性仕様書をご確認ください。
項目
記号
条件
規格値
過電流保護しきい値
Vcsp
FBP=1.0V
0.5
V
リーディングエッジブランク時間
Tleb
CSP=1.0V
220
ns
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- 15 -
2.3.6.2 PFC 出力過電圧保護、低入力電圧保護、FBP 端子オープン/ショート保護
出力過電圧保護(OVP)は、図 15 のように FBP 端子電圧が Vo(ref)×1.08 以上になると、ゲート出力を
停止して出力電圧の上昇を抑えます。これにより、電解コンデンサ等へのストレスを低減できます。
PFC は一般的に商用周波数に反応しないように応答を遅く設計しますので、起動時や負荷急変時など
の過渡的な状態で出力電圧が一時的に上昇することがありますが、この保護機能は有効な対策となりま
す。
低入力電圧保護は、入力電圧が低下し FBP 端子電圧が Vfbp(off) 0.35V 以下になると、PFC 部が停止
します。これにより、ゲートが出力されなくなりますので MOSFET やその他部品へのストレスを低減できま
す。
なお、FBP 端子電圧が Vfbp(on) 0.45V 以上になると PFC 部は発振を開始します。
また、FBP 端子がオープンもしくは GND ショートでも、FBP 端子電圧が 0.35V 以下になりますので、
本保護機能により PFC 部が停止します。
PFC OUT
COMP
4
3.0V= Vo(ref)
R132
C133
ON Time Controller
C132
R111
~
R114
Vo(ref) x 1.08
PFC Gate OFF
0.45V/0.35
FBP
PFC STOP
5
R115
図 15 . FBP 端子内部ブロック図
表.9 PFC オープン保護機能関係しきい値
項目
FBP 過電圧保護しきい値
各規格値の詳細は特性仕様書をご確認ください。
記号
条件
規格値
Vfbp(H)
Vo(ref)*1.08
V
FBP オープン保護しきい値 1
Vfbp(on)
0.45
V
FBP オープン保護しきい値 2
Vfbp(off)
0.35
V
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2.4
LLC 部
2.4.1 発振制御部 FBL 端子 (12pin)
MCZ5209SN の発振周波数は FBL 端子に接続されたコンデンサ Ct の充放電時間により決定されます。
FBL 端子が放電されている期間がハイサイドまたはローサイドがオンしている期間、充電している期間が
ハイサイドおよびローサイドが同時にオフするデッドタイム(DT)となります。
FBL 端子が充放電を繰り返すことにより、ハイサイドおよびローサイドが交互にオン・オフします。
図 16 に FBL 端子の接続図および動作シーケンスを示します。なお、FBL 端子充電開始電圧は動作モー
ドにより異なります。各動作モードでの動作シーケンスは図 17 をご覧ください。
FBL
FBL
FB
VGH
Ct
Rt
VGL
PC1
DT
DT
DT
DT
図 16. FBL 端子接続図(左)および動作シーケンス(右)
Vfbl(top)
FBL
Vfbl(bottom)1
VGH
VGL
(A) 通常動作モード
Vfbl(top)
FBL
Vfbl(bottom)1
Vfbl(bottom)1
Vfbl(bottom)3
Vfbl(bottom)3
VGH
VGL
(B) アクティブスタンバイモードおよびバーストモード
図 17. 各動作モードにおけるゲートオン・オフタイミング
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- 17 -
FBL 端子には Ct コンデンサの他に最低発振周波数設定用 Rt 抵抗および動作発振周波数およびに最
高発振周波数設定用 FB 抵抗を接続します。
出力電圧のフィードバックは FB 抵抗にシリーズ接続されたフォトカプラ PC1 で行います。
PC1 に電流が流れることにより FBL 端子の放電期間が短くなるため、発振周波数が高くなります。
発振周波数は Rt 抵抗および FB 抵抗により決定します。図 18 には、Rt 抵抗値を変化させた時の発振
周波数およびデッドタイムの関係を示します。
Rt vs frequncy
600
Ct=2200pF
frequency [kHz]
500
Ct=1800pF
400
Ct=1500pF
300
Ct=1000pF
Ct=820pF
200
100
0
0
5
10
15
20
25
30
Rt [kohm]
frequency vs dead time
800
Ct=2200pF
dead time [ns]
700
Ct=1800pF
Ct=1500pF
600
Ct=1000pF
500
Ct=820pF
400
300
200
0
50
100
150
200
250
300
350
400
frequency [kHz]
図 18. Rt 抵抗と発振周波数(上)および発振周波数とデッドタイム(下)の関係
表.10 LLC FBL 端子関係しきい値
項目
FBL 充電電流
FBL 充電停止電圧
各規格値の詳細は特性仕様書をご確認ください。
記号
条件
Ifbl(charge)
FBL=4.0V
規格値
-9.0
mA
Vfbl(top)
4.75
V
FBL 充電開始電圧 1
Vfbl(bottom)1
3.35
V
FBL 充電開始電圧 2
Vfbl(bottom)2
Tss(3)
2.35
V
FBL 充電開始電圧 3
Vfbl(bottom)3
ASTBY=open
2.25
V
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- 18 -
2.4.2 ゲートドライバ出力 VGH 端子、VGL 端子 (22、16pin)
ゲート出力は VGL(ローサイド MOSFET)、VGH(ハイサイド MOSFET)端子より出力されます。
LLC ゲートドライバ駆動能力は、0.24A(Source)/0.40A(Sink)です。この値は、信号系誤動作を
引き起こさずに MOSFET を十分高速にドライブできるように設計されています。
一般的に用いられる駆動回路の例を図 19(A)に示します。Qg の大きい MOSFET などを使用される場
合は図 19(B),(C)のようにシンクダイオードを接続してください。シンクダイオードを使用する場合には小容
量ショットキーダイオードなどを用い、ハードリカバリーダイオードは使用しないでください。
推奨ダイオード例として 新電元製 D1NS4(アキシャル)や M1FM3(面実装)があります。
図 19. LLC ゲート駆動回路接続例
ハイサイド MOSFET 駆動用フローティング電源(VB)は、図 20 に示すように Vc2 端子の
レギュレータ出力コンデンサを電圧源として高圧側へ向かうダイオード D233 と
フローティング平滑コンデンサ C239 によるブートストラップ回路により生成されます。
外付け D233 によるブートストラップ回路採用によりローサイドとハイサイドの電位差が
最小限に保たれ、過渡的にも安定した駆動用電源が供給できます。
C239 には MLCC を用い、その値は 0.1u~1.0uF を推奨します。また D233 には高速かつ
ソフトリカバリー特性を持った 600V 耐圧以上のものを用いて下さい。新電元製 D1NK60
或いは D1FK60(面実装)を推奨いたします。(PFC 出力電圧を約 400V とした場合。)
Np
C239
D233
D1NK60
D1FK60
VGH
VS
VGL
VB
Vc2
PGND
図 20. ハイサイドドライバ部回路
表.11 LLC 部ドライブ能力関係しきい値
項目
各規格値の詳細は特性仕様書をご確認ください。
記号
条件
規格値
ソース駆動能力
Iout(so)L
Vc2=VB=12V , VGL=VGH=0V
-240
mA
シンク駆動能力
Iout(si)L
Vc2=VB=12V , VGL=VGH=12V
400
mA
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- 19 -
2.4.3 LLC 部各種保護機能
2.4.3.1 LLC 過電流保護機能 CSL 端子、CSO 端子 (11、10pin)
MCZ5209SN の LLC 部には過電流保護機能を備えており、CSL 端子で検出を行います。
CSL および CSO 端子の接続例を図 21 に示します。
図 21. CSL および CSO 端子接続例
図 21 のように共振コンデンサ C221 に流れる電流を電流検出抵抗 R221 で検出し、分割抵抗 R225
および R226 で分割して CSL 端子へ接続します。各抵抗値の算出方法は 3.2.5 項をご覧ください。
CSL 端子には正負両方向にそれぞれ 3 つのしきい値を備えており、その電圧レベルによって 3 つの保護
機能が動作します。ここではそれぞれの保護機能を OCP1、OCP2、di/dt と定義します。
表.12 LLC OCP の 3 つの機能
記号
名称
CSL 端子しきい値条件
① OCP1
Cycle by cycle OCP
CSL 端子電圧が±0.525V を超えた時
Frequency limit OLP
② OCP2
CSL 端子電圧が±0.350V を超えた時
Capacitive mode protection
③ di/dt
CSL 端子電圧が±0.070V を下回った時
*OCP : Over current protection 、 OLP : Over load protection
【OCP1】
OCP1 は CSL 端子が±0.525V を超えると動作します。
図 22 はハイサイド MOSFET がオンしている期間に OCP1 検出が動作した例を示しています。
ハイサイド期間中は、CSL 端子電圧が+0.525V 以上になると OCP1 検出が動作します。
ローサイド期間中も同様に、-0.525V 以下になると OCP1 検出が動作します。
図 22. OCP1 動作シーケンス
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- 20 -
OCP1 検出が動作すると MCZ5209SN は以下の制御を行います。
(a) FBL 端子が充電期間に切り替わり、ゲート出力(VGH or VGL)をオフにします。
(b) SST 端子を FBL の 8 周期分 40uA にて充電します。
(c) CSO 端子を FBL の 8 周期分 750uA にて充電します。
OCP1 検出するとゲート出力が即時オフしますので、異常状態時に MOSFET に流れる電流ピークを抑
制し過電流やトランスの飽和を防ぎます。また、SST 端子を充電することにより異常状態が長く続いた際
にタイマ間欠ラッチ停止をさせることが出来ますので、MOSFET やその他部品の異常発熱を防ぐことが出
来ます。
なお OCP1 検出した後 FBL の 8 周期以内に OCP1 検出しない場合、SST 端子は Timer 放電電流
(refresh) 650uA で SST 端子を 2.1V になるまで放電します。
((FBL マスク期間))
CSL 端子には MOSFET がターンオン・オフする際のスイッチングによって発生するノイズによる OCP1
検出誤動作防止のため、FBL 端子が放電を開始してから FBL マスク電圧以下になるまでの間 OCP1 が
動作しないようにマスクをしています。そのため、この期間にしきい値を超えても OCP1 動作は行いません。
((内部フィルタ))
外的要因などにより発生するノイズによる誤動作を防止するため、約 200ns の内部フィルタを内蔵して
います。これにより、CSL 端子が OCP1 しきい値を超えてから FBL が充電されるまでに約 200ns の遅れ
が生じます。
((OCP1 および OCP2 を同時に検出した時について))
なお、OCP1 検出電圧は OCP2 検出電圧よりも高い値に設定されておりますので、OCP1 が動作してい
る期間は OCP2 も検出電圧を超えておりますが、OCP1 および OCP2 が同時に検出された場合は
OCP1 検出が優先されるシーケンスとなっています。
【OCP2】
OCP2 は CSL 端子が±0.350V を超えると動作します。
OCP2 が動作すると MCZ5209SN は以下の制御を行います。
(a) SST 端子を FBL の 8 周期分充電します。CSO 端子電圧によって充電電流は変化します。
・ 0.9V≦CSO<1.0V : SST 端子への充電は行いません。
・ 1.0V≦CSO<1.5V : SST 端子を 1.7uA で充電します。
・ 1.5V≦CSO≦2.5V : SST 端子を 40uA で充電します。
(b) CSO 端子を OCP2 検出しきい値が超えている期間 750uA にて充電します。
OCP2 も OCP1 同様に FBL マスク期間およびに内部フィルタがあります。
なお OCP2 検出した後 FBL の 8 周期以内に OCP2 検出しない場合、SST 端子は Timer 放電電流
(refresh) 650uA で SST 端子を 2.1V になるまで放電します。
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- 21 -
【CSO】
CSO 端子は CSO 端子電圧に応じて発振周波数を制御しております。CSO 端子電圧と発振周波数の
関係を図 23 に示します。CSO 端子は IC 内部でプレチャージされており 0.9V で維持されています。
前述の OCP1 および OCP2 が動作すると、図 24 に示すように CSO 端子が充電され CSO 端子電圧が
1.0V 以上になると発振周波数が CSO 端子電圧に応じて高くなっていきます。発振周波数を高くすること
で出力電力を制限します。なお、CSO 端子は最大で 2.8V まで充電されます。
Vcso vs frequency
500
Ct=2200pF
frequency [kHz]
400
Ct=1800pF
Ct=1500pF
300
Ct=1000pF
Ct=820pF
200
100
0
0.8
1
1.2
1.4
1.6
1.8
2
2.2
2.4
2.6
2.8
3
Vcso [V]
図 23. CSO 電圧 VS 発振周波数
図 24. CSO 電圧動作シーケンス
【di/dt】
di/dt は CSL 端子が±0.070V を下回るネガティブエッジを検出して動作します。
di/dt が動作すると MCZ5209SN は以下の制御を行います。
(a) FBL 端子が充電期間に切り替わり、ゲート出力(VGH or VGL)をオフにします。
(b) 動作モードに応じて SST 端子の充電を行います。
・ 通常動作モード
: SST 端子への充電は行いません。
・ アクティブスタンバイモード : SST 端子を FBL の 8 周期分 40uA にて充電します。
・ バーストモード
: SST 端子を FBL の 8 周期分 40uA にて充電します。
di/dt 動作するとゲート出力が即時オフしますので、共振はずれ(Capacitive mode)を防ぐことが出来ま
す。これにより MOSFET の異常発熱や破損を防ぐことが出来ます。
di/dt も OCP1 および OCP2 同様に FBL マスク期間およびに内部フィルタがあります。
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- 22 -
図 25. di/dt 動作シーケンス
各検出モード時の Timer および CSO 充電の関係を表 13 に示します。
表.13 各検出モードにおける Timer および CSO 充電動作関係表
検出モード
OCP1 検出
OCP2 検出
di/dt 検出
動作モード
通常動作モード
アクティブスタンバイモード
バーストモード
通常動作モード
アクティブスタンバイモード
バーストモード
通常動作モード
アクティブスタンバイモード
バーストモード
Timer 充電
CSO 充電
(A)
(B)
(C)
(D)
無し
(A)
(A)
無し
(A) FBL の 8 周期間分 SST 端子を 40uA にて充電
(B) FBL の 8 周期間分 CSO 端子を 750uA にて充電
(C) FBL の 8 周期間分 SST 端子を 1.7uA(1V≦Vcso<1.5V)、40uA(1.5V≦Vcso)にて充電
(D) OCP2 検出電圧を超えた期間分 CSO 端子を 750uA にて充電
表.14 LLC 部 OCP 関係しきい値
項目
各規格値の詳細は特性仕様書をご確認ください。
記号
条件
規格値
OCP1(+/-)検出電圧
Vocp1(+/-)
+/- 0.525
V
OCP2(+/-)検出電圧
Vocp2(+/-)
+/- 0.350
V
di/dt(+/-)検出電圧
Vdidt(+/-)
+/- 0.070
V
CSO 端子プレチャージ電圧
Vcso(pre)
CSL=0V
0.90
V
OCP2 動作開始 CSO 端子電圧
Vcso(ocp2)
lVocp2(+/-)l<CSL<lVocp1(+/-)l
1.0
V
Timer 充電切替 CSO 端子検出電圧
Vcso(tmr)
1.5
V
OCP2 動作時 CSO 端子充電電流
Icso(ocp2)
-750
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- 23 -
uA
2.4.3.2 ブラウンアウト保護機能 FBP 端子 (5pin)
FBP 端子は PFC 出力電圧を監視し、PFC 出力電圧の安定化を行うとともに LLC 部の入力監視も行っ
ております。FBP 端子の電圧に応じて SST 端子の充電および放電を行います。
この機能により、入力起動時や瞬停切断時において LLC 部が共振はずれ等の状態に移行することを防
ぐことが出来ます。
SST 端子の充電および放電が行われる FBP 端子電圧は動作モードにより表 15 の電圧になります。
表.15 各動作モードにおける SST 充電・放電開始 FBP 端子電圧
動作モード
通常動作モード
アクティブスタンバイモード
バーストモード
表.16 LLC 部 OCP 関係しきい値
項目
SST 充電開始
2.2V
0.65V
0.65V
SST 放電開始
2.0V
0.55V
0.55V
各規格値の詳細は特性仕様書をご確認ください。
記号
条件
規格値
入力電圧監視しきい値 1(SS-Reset)
Vsen1(ss-reset)
2.2
V
入力電圧監視しきい値 2(SS-Reset)
Vsen2(ss-reset)
2.0
V
入力電圧監視しきい値 3(SS-Reset)
Vsen3(ss-reset)
0.65
V
入力電圧監視しきい値 4(SS-Reset)
Vsen4(ss-reset)
0.55
V
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- 24 -
2.4.3.3 ソフトスタート、起動時 di/dt 保護、ラッチ停止機能 SST 端子 (13pin)
SST 端子は電源起動時のソフトスタート機能や異常状態時のラッチ停止機能等の以下の 4 つの機能を
搭載しております。
(1) ソフトスタート機能
(2) 起動時 di/dt 保護機能 Tss(3)
(3) 過電流保護機能動作時のタイマ間欠ラッチ停止機能
(4) ラッチ停止機能
(1) ソフトスタート機能
MCZ5209SN はソフトスタート機能を搭載しています。図 26 に示す通り、電源起動時に SST 端子を充
電していくことで高い発振周波数から起動を開始し、徐々に発振周波数を低くしていきます。これにより、起
動時に MOSFET に過電流等が流れるのを防止でき安全な立ち上がりを実現することが出来ます。
SST 端子の充電は 3 つの条件が揃うと開始されます。
(a) Vc2 端子電圧が Vc2 動作開始電圧(10.0V)以上であること
(b) LS 端子電圧が LS 端子出力動作電圧(2.0V)以上であると
(c) FBP 端子電圧が SST 充電開始電圧以上であること(必要な FBP 電圧は表 15 をご覧下さい。)
SST 動作シーケンスは図 27 をご覧ください。
SST 端子の充電が開始され、SST 端子電圧が 0.6V 以上になると FBL 端子の発振が開始します。FBL
端子が発振開始されると各ゲート出力も動作を開始します。
SST 端子の SS 充電電流は SST 端子電圧に応じて 2 段階となります。
SST 端子電圧が 0V~0.6V までは 90uA、SST 端子電圧 0.6V 以上の場合は 30uA で充電します。これ
は LLC 動作開始 SST 電圧まで早めに充電できるように調整されています。
なお、SST 端子は 2.1V まで充電され、通常動作している間はその電圧でクランプされます。
Vsst vs frequency
600
Ct=2200pF
frequency [kHz]
500
Ct=1800pF
400
Ct=1500pF
Ct=1000pF
300
Ct=820pF
200
100
0
0.4
0.6
0.8
1
1.2
1.4
1.6
Vsst [V]
図 26. SST 電圧と発振周波数の関係
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- 25 -
1.8
2
2.2
図 27. SST 動作シーケンス
(2) 起動時 di/dt 保護機能 Tss(3)
MCZ5209SN は起動時の di/dt 動作を保護する Tss(3)機能を搭載しております。
LLC 電流共振の電源動作開始直後、共振コンデンサの電圧が不安定な過渡的状態において、
MOSFET に流れる電流がボディダイオードに流れている期間中にゲートがオフしてしまう場合があります。
この状態では、ボディダイオードの trr 成分により、反対側 MOSFET がオンした際に短絡電流が流れてし
まい MOSFET に負荷がかかります。
MCZ5209SN では Tss(3)機能を内蔵しており、この起動時のボディダイオード導通中にゲートがオフす
ることを回避できます。
図 28 のように電源動作開始後 2 発目のローサイド側 VGL 出力時に FBL 端子の Ct 充電開始電圧値
を Vfbl(bottom)2 まで下げることでローサイドのオン幅を伸ばします。これにより、MOSFET が正方向に電
流が流れてからゲート出力をオフすることが出来ます。
図 28. Tss(3)動作シーケンス
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- 26 -
(3) 過電流保護機能動作時のタイマ間欠ラッチ停止機能
MCZ5209SN は OCP1、OCP2 および di/dt 動作時にタイマ間欠ラッチ停止する機能を搭載しています。
Timer 充電を行うタイミングおよび条件は表 13、タイマ間欠ラッチ停止シーケンスは図 29 をご覧ください。
図 29 のように異常状態を検知すると SST 端子を充電します。SST 端子を充電する Timer 充電電流は
各動作モードによって異なりますので、Timer 充電電流値は表 13 をご覧ください。
タイマ間欠ラッチ停止機能は、OCP1 や OCP2、アクティブスタンバイやバーストモードで di/dt 検出とな
る異常状態において SST 端子を 3.5V まで Timer 充電して停止させる機能です。ラッチカウンタを内蔵し
ており、2 回連続で異常状態が続き 3.5V まで到達するとラッチ停止します。ラッチ停止した場合は Vc2 端
子電圧をラッチ解除電圧 7.5V 以下にするとラッチ解除されます。
図 29 の(A)、(B)、(C)条件におけるそれぞれの動作の詳細を下記に示します。
(A)点のように SST 端子電圧が 3.5V まで到達する前に過負荷がなくなった場合、SST 端子は Timer
放電電流(Refresh)650uA で SST 端子電圧が 2.1V になるまで放電します。この場合、ラッチカウンタは
動作しません。
(B)点のように SST 端子電圧が 3.5V まで到達すると発振を停止します。その際、ラッチカウンタは 1 カ
ウントします。SST 端子は Timer 放電電流(間欠) 6.5uA で放電されていきます。SST 端子電圧が 0.3V
まで低下すると放電が終了し、その時点で SST 充電開始条件が揃っていると SST 端子は充電していき
再起動します。再起動時に OCP 動作せず SST 端子電圧が 1.5V まで到達するとラッチカウンタのカウン
トが解除されそのまま発振を継続します。
(C)点のように SST 端子電圧が Timer しきい値 3.5V まで到達し、再起動後再び連続で OCP 動作によ
り Timer しきい値 3.5V まで到達するとラッチカウンタが 2 カウントしてラッチ停止します。ラッチ停止すると
PFC 部の発振も停止します。
ラッチ解除するには Vc2 端子電圧をラッチ解除電圧 7.5V 以下にする必要があります。ラッチが解除さ
れ再度 Vc2 動作開始電圧以上になると LLC 部の発振を開始します。
図 29. SST タイマ間欠ラッチ動作シーケンス
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- 27 -
(4) ラッチ停止機能
MCZ5209SN は 2 次側過電圧時等の異常状態においてラッチ停止できるようにラッチ停止機能を搭載し
ております。図 30 に 2 次側 OVP 回路構成例を示します。
SST 端子を外部より 4.5V まで持ち上げることでラッチ停止機能が有効になります。ラッチ停止機能が
有効になると PFC 部および LLC 部は発振停止します。ラッチ停止を解除する為には Vc2 端子電圧をラッ
チ解除電圧 7.5V 以下にする必要があります。ラッチが解除され再度 Vc2 動作開始電圧以上になると
LLC 部の発振を開始します。
構成案①
構成案②
構成案③
3つの中でOVP動作としては一番
早く動作します。
数100usecオーダーでOVP動作
したい場合、CTRの高いフォトカ
プラが必要です。
数msecオーダーでOVP動作可
能な場合は、本構成となりま
す。
図 30. ラッチ停止機能回路構成例
表.17 LLC 部 SST 関係しきい値
項目
SS 端子しきい値
各規格値の詳細は特性仕様書をご確認ください。
記号
条件
Vss
規格値
1.5
V
SS 充電電流 1
Iss(charge)1
SST=0V
-90
uA
SS 充電電流 2
Iss(charge)2
SST=1.0V
-30
uA
Iss(discharge)
SST=1.0V FBP=0V
SS 放電電流
180
uA
Vss(open)
2.1
V
LLC 動作開始 SST 電圧
Vss(st)
0.6
V
LLC 動作停止 SST 電圧
Vss(sp)
0.5
V
SST ラッチ停止電圧
Vss(latch)
4.5
V
Timer しきい値 1
Vtimer(set)
3.5
V
SST 端子開放電圧
Timer しきい値 2
Vtimer(reset)
0.3
V
Timer 充電電流 1
Itimer(charge)1
CSL > lVocp1(±)l
-40
uA
Timer 充電電流 2
Itimer(charge)2
表 13 参照
-1.7
uA
Timer 充電電流 3
Itimer(charge)3
表 13 参照
-40
uA
Timer 放電電流(Refresh)
Timer 放電電流(間欠)
SST ラッチ停止電圧
Itimer(refresh)
650
uA
Itimer(discharge)
6.5
uA
Vss(latch)
4.5
V
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- 28 -
2.5
共通制御部
2.5.1 AC 入力監視機能 LS 端子 (7pin)
LS 端子は AC 入力監視用ヒステリシスコンパレータの入力端
子です。AC 入力ラインからの分圧抵抗により AC 入力監視を
行い、その電圧に応じて PFC および LLC の動作を制御します。
LS 端子電圧が 2V 以上になると PFC および LLC が動作可
能になります。電源起動時の一例を図 32 に示します。
LS 端子電圧が 2V 未満および一旦 2V 以上になってから
1.5V 未満になると COMP 端子および SST 端子をショート、
Vc1 端子および BURST 端子を放電させます。
ショートおよび放電させることにより、PFC および LLC を停止
させることが出来ます。その為、AC 入力ライン電圧が低下した
際などの保護に利用することが出来ます。
図 31. AC 入力監視回路
図 32. AC 入力監視回路
表.18 LS 関係しきい値
各規格値の詳細は特性仕様書をご確認ください。
項目
記号
条件
LS 端子出力動作電圧
Vls(st)
Vin=Vc1=16V
2.0
V
LS 端子出力停止電圧
Vls(sp)
Vin=Vc1=16V
1.5
V
LS 端子出力停止時 BURST 放電電流
Ibst(lsdis)
Vin=Vc1=16V , LS=0V
4.5
mA
LS 端子出力停止時 Vc1 放電電流
lvc1(lsdis)
Vin=Vc1=16V , LS=0V
2.0
mA
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- 29 -
規格値
2.5.2 アクティブスタンバイおよびバースト機能
アクティブスタンバイモードおよびバーストモードは ASTBY 端子の電圧に応じて制御しています。
各動作モードと ASTBY 端子電圧の関係は表 19 をご覧ください。
表.19 ASTBY 端子電圧と各動作モード
ASTBY 端子電圧
動作モード
0V ≦ ASTBY < 1.0V
通常動作モード
1.0V ≦ ASTBY < 3.2/3.0V
非対称ステップモード
3.2/3.0V ≦ ASTBY < 4.0/3.9V
アクティブスタンバイモード
4.0/3.9V ≦ ASTBY ≦ 4.5V
バーストモード
PFC 部
動作
動作
停止
停止
LLC 部
対称動作
非対称動作
非対称動作
非対称動作
2.5.2.1 アクティブスタンバイ機能 ASTBY 端子(8pin)
アクティブスタンバイ機能は定格負荷 5%~20%程度の軽負荷領域の損失低減を実現できる機能です。
アクティブスタンバイモードでは PFC 部は発振停止、LLC 部ではハイサイドおよびローサイドのオン幅比
率を約 1:2 とする非対称動作を行います。
各しきい値における詳細動作シーケンスについては図 33 をご覧ください。
表 19 のように ASTBY 端子電圧が 1V 未満の場合は通常動作モードになります。ASTBY 端子電圧が
1V 以上になると非対称ステップモードになります。非対称ステップモードではハイサイドとローサイドのオ
ン幅比を ASTBY 端子電圧によって広げていくモードです。ASTBY 端子電圧が 1V 未満の時はハイサイド
とローサイドのオン幅比は 1:1 ですが、ASTBY 端子電圧によってこのオン幅比を広げていきます。
ASTBY 端子電圧が 3.2V 時のオン幅比率は 1:2 となります。
ASTBY 端子電圧が 3.2V 以上になるとアクティブスタンバイモードになります。この時、PFC が停止しま
す。なお、ヒステリシスを持っておりアクティブスタンバイモードを解除するには ASTBY 端子電圧を 3.0V
以下にする必要があります。アクティブスタンバイモードに入ると前述の FBP 端子の入力電圧監視しきい
値 Vsen の値が切り替わります。また、di/dt 動作時の Timer 充電を有効にします。
アクティブスタンバイモード中に ASTBY 端子電圧を 3.0V 以下にするとアクティブスタンバイモードは解
除され PFC 部は発振を開始します。その後、FBP 端子電圧が AS 動作解除マスク電圧 2.4V まで到達す
ると入力電圧監視しきい値 Vsen のしきい値を通常動作モードの値に切り替えます。
2.5.2.2 バースト機能 ASTBY、BURST、SSC 端子 (8、9、14pin)
ASTBY 端子が 4.0V 以上になるとバーストモードになります。バーストモードを解除する為には ASTBY
端子を 3.9V 以下にする必要があります。なお、バーストモードでは SSC 端子はオープンとなります。SSC
端子がオープンになることでソフトスタート時間を変えることができます。
通常動作モードおよびアクティブスタンバイモードでは SSC 端子は SSC 端子放電電流 5.0mA にて放電
されています。
通常モードおよびアクティブスタンバイモードでは BURST 端子は IC 内部で放電回路を持っており、
BURST 端子放電電流 1 400uA で放電されております。バーストモードになるとこの放電回路がオフして
BURST 端子はオープン状態となります。
補助巻線の Vcc や外部回路より分圧し BURST 端子を持ち上げて BURST 端子出力停止電圧 2.0V 以
上になると SST 端子が放電され LLC 部の発振が停止します。次に BURST 端子出力起動電圧 1.8V 以
下になると SST 端子の充電が開始され LLC 部が発振開始します。
詳細シーケンスについては図 33 をご覧ください。
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- 30 -
図 33. アクティブスタンバイ・バーストモードシーケンス図
表. 20 ASTBY、BURST 関係しきい値
項目
各規格値の詳細は特性仕様書をご確認ください。
記号
条件
ASTBY 端子開放電圧
Vastby(open)
Vin=Vc1=24V、SST=2.5V
4.5
V
バーストモード開始 ASTBY 端子電圧
Vastby(bston)
4.0
V
バーストモード解除 ASTBY 端子電圧
Vastby(bstoff)
3.9
V
BURST 端子出力停止電圧
Vbst(H)
2.0
V
BURST 端子出力起動電圧
Vbst(L)
1.8
V
AS ステップ動作開始電圧
Vas(stpon)
3.0
V
AS ステップ動作解除電圧
Vas(stpoff)
1.0
V
AS モード開始電圧
Vas(on)
3.2
V
AS モード解除電圧
Vas(off)
3.0
V
400
uA
0
uA
5
mA
BURST 端子放電電流 1
Ibst(dis)1
BURST 端子放電電流 2(バーストモード)
Ibst(dis)2
SSC 端子放電電流
Issc(dis)
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- 31 -
ASTBY<Vastby(bston/off)
BURST=1.5V
ASTBY>Vastby(bston/off)
BURST=1.5V
ASTBY<Vastby(bston/off)
SSC=0.5V
規格値
【バーストおよびアクティブスタンバイ切り替え回路】
バーストおよびアクティブスタンバイの切り替え回路例を図 34 に示します。それぞれの定数の設計方法
については 3.3.3 項をご覧ください。
図 34 は大きく分けて二つのブロックに分けられます。(A)がバースト動作時のバースト周期設定および
出力電圧下限検出回路、(B)がバーストおよびアクティブスタンバイモード切り替え端子です。
[(A)部分]
C232 でバースト動作時の発振停止期間を設定します。コンデンサ容量を大きくするとバースト時の発振
停止期間が伸びます。R231、R232 で BURST 端子出力起動/停止電圧を設定します。なお、BURST 端
子は通常動作およびアクティブスタンバイモードでは 400uA で放電しております。そのため、R231 および
R232 の抵抗値を小さくしすぎると通常動作およびアクティブスタンバイモードで BURST 端子が 2.0V 以
上に持ち上がり発振が停止してしまう可能性があります。R231 は 10kΩ以上を推奨します。
2 次側は出力電圧の下限を検出する回路です。R384、R385 で所望の出力電圧下限を設定します。出
力電圧下限以下になると IC302 の Ref がしきい値以下になり Q301 がオンし、PC203 のトランジスタに電
流が流れます。これにより BURST 端子を 1.8V 以下に引っ張り発振が開始して出力電圧が上昇するよう
になります。
[(B)部分]
アクティブスタンバイおよびバーストモードを切り替える時の回路例です。上記回路では以下の動作とな
ります。
表. 20 STBY、AS 信号と動作モード
STBY 信号
AS 信号
① GND とショート
GND とショート
② GND とショート
オープン
③ オープン
GND とショート
④ オープン
オープン
動作モード
通常動作モード
通常動作モード
アクティブスタンバイモード
バーストモード
図 34. バーストおよびアクティブスタンバイ回路例
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- 32 -
2.5.3 過熱保護機能
MCZ5209SN には過熱保護機能があります。本機能が働くと PFC および LLC 部がともに発振停止しま
す。過熱保護動作開始温度は 140℃min です。過熱保護温度にはヒステリシスがあり、過熱保護解除温
度は過熱保護動作開始電圧から 40℃下がった温度となります。
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- 33 -
3
周辺回路定数の決定
ここからは周辺回路定数の計算例を示します。図 35 は、アクティブスタンバイおよびバーストモード使用
時の回路図です。通常動作モードのみ使用時の回路図については図 47 をご覧ください。
D110
D101
D102
TH101
L102
F201
D111
L111
T201
Q141
C104
D141
D103
C105
C106
C311
C312
1 Vo1
C111
R143
Q143
R131
C102 C103
CN301
D311
R242
C141
R142
C242
Q241
R241
C243
Q242
R243
R141
2 GND
C221
R244
R221
IC502
C501
D232
R121
C502
CN302
3 Vstby
Q231
L101
ZD231
C101
C237
R111
R116
C239
R236
D233
F101
24
Vin
NC
VGP
CSP
AC-IN(L) 2
AC-IN(N) 1
R113
VGH
IC101
R114
1
VS
R233
C233
R232
4 GND
C236
C201
C234
C238
R112
C235
VB
NC
Vc2
PGND
FBP
SGND
LS
ASTBY
VGL
R255
PC203
13
Vc1
SSC
SST
COMP
BURST CSO
CSL
FBL
R341
ZD381
R383
Q301
12
R385
R382
C352
R342
R343
R225
C107
R231
R105
R353
R384
IC302
R126
R104
R211
C231
R132
R106
R381
R386
MCZ5209SN
ZC
C112
CN101
D231
R234
R212
R344
R347
PC201
R348
C222
C351
R351
R115
C121
C131
C132
C133
R108
C223
R345
IC301
R107
C232
R226 C21
R227
R252
R371
PC202
CN304
R372
5 STBY
R260
D251
R256
PC204
R362
R257
Q251 R259
R361
SW371
6 GND
7 AS
図 35. MCZ5209SN 回路図例
AC 入力フィルタ部(C101~C106、L101、L102)については貴社ノイズ規格等を考慮の上、適切な定数で
設計戴きますよう、よろしくお願いいたします。
3.1 PFC 部の設計
3.1.1 PFC 部チョークコイルの設計
チョークコイルは PFC 回路の性能を左右する重要な部品です。PFC 回路仕様により最適な定数を以下の
計算式を利用し算出し、コイルメーカに問い合わせください。
最終的には実機にてコアおよび巻線の温度上昇をご確認いただいたうえで、巻線およびコアサイズを決定
してください。
また、3.1 項で出てくる Po は PFC 部の定格出力電力、Po(max)は PFC 部の最大出力電力、Ps は垂下
点での PFC 部の出力電力となります。Ps の目安としては Po(max)の 1.2~1.5 倍です。また効率ηは
PFC 部のみの効率となり LLC 部の効率は含まれませんので、Po や Po(max)の値は LLC 部の損失を考慮
して設定してください。
<コアサイズの選定>
コアサイズの選定には、コアギャップlgが 2mm 以下を目安に選定してください。
コアギャップlgの算出式は以下の式(1)~(5)になります。
lg = 4π ×
Ae × Np 2
×10 -7 [mm] ・・・(1)
Lp
Lp = Ton ×
Vin( AC)min × 2
× 10 3 [mH] ・・・(2)
Idp
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- 34 -
Idp =
Ps × 2 × 2
[ A ] ・・・(3)
η × Vin(AC)min
Ton = Don × T max =
Don =
Don
[s] ・・・(4)
f min
Vo - Vin( AC) min× 2
・・・(5)
Vo
2
なお、Ae はコアの実効断面積[mm ]、fmin は最小発振周波数[Hz](W/W 入力:40k~60kHz,100V/200V
系:50k~70kHz)です。
( )内の数値については目安となります。
<Np 巻線のターン数>
チョークコイル Np 巻線のターン数は、式(6)にて算出される値の小数点以下切り上げた整数で決定します。
Np = Ton ×
Vin( AC)min × 2
× 10 9 [Turn] ・・・(6)
ΔB × Ae
なお、ΔB はコアの磁束密度変化[mT]です。ΔB はコア材により大きく異なりますので、コイルメーカに問
い合わせください。
<Nc 巻線のターン数>
Nc 巻線ターン数は最大入力電圧時に 1.5V 以上の電圧が制御巻線に発生する必要がありますので、式
(7)を目安に最小の整数で決定してください。
Nc > 1.5 ×
Np
[Turn]
Vo - { 2 × Vin( AC) max}
・・・(7)
W/W 入力で Vin(AC)max を 264V、PFC 出力電圧 Vo を 390V とした場合、Np と Nc の巻数は大体
10:1 が目安になります。
例) W/W 想定で Np が 50 ターンの場合
Vin(AC)max=264V、Vo=390V とすると Nc>4.5 となり、Nc は 5 ターンとなります。
<巻線の選定>
2
Np 巻線の断面積は、チョークコイルの実効電流値 IL(rms) [A]と巻線の電流密度[A/mm ]から選定します。
電流密度は使用する銅線の種類(単線もしくはリッツ線)、より本数などによって変わります。図 36 に
AC85V 入力時の IL(rms)を示します。こちらを参考にしてコイルメーカに問い合わせください。
IL(rms) v.s. Po
AC85V
6
5
IL(rms)[A]
4
3
2
1
0
50
100
150
200
250
300
Po[W]
図 36. AC85V 入力時の IL(rms)
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- 35 -
350
400
3.1.2 PFC 部 MOSFET(Q141)の選択
PFC 部 MOSFET(Q141)の選定は、最大ドレイン電流 Idp にマージンをかけた値以上の定格電流の製品を
選定してください。
なお、最終的には実機にてジャンクション温度を確認のうえで、MOSFET およびヒートシンクを決定してくださ
い。
製品定格電流および製品耐圧マージンについて、考え方の目安を以下に示します。
製品耐圧> Vo 1.25 [ V ] ・・・(8)
製品定格電流> Idp 1.25 [ A ] ・・・(9)
Vo は出力設定電圧です。
3.1.3 PFC 部出力ダイオード(D111)の選択
出力ダイオード(D111)選定は、目安として最大負荷電流 Io_max の 6~8 倍の定格電流値のダイオードを使
用してください。なお、最終的には実機にてジャンクション温度を確認のうえで、ダイオードおよびヒートシンクを
決定してください。
3.1.4 PFC 部バイパスダイオード(D111)の選択
インダクタの音鳴きなど対処のためにインラッシュバイパスダイオードを使用する場合には、バイパスダイオ
ード(D110)の選定は最大突入電流値に対してせん頭サージ順電流 IFSM が大きいダイオードを使用してくだ
さい。最大突入電流値はパターンインピーダンスや入力電圧によって異なりますので、シミュレーションにて確
認いただくか実機にて測定してください。
推奨部品例: D4F60(新電元工業)
3.1.5 ZC 周辺回路定数の調整
抵抗 R131 および ZC-GND 間にコンデンサ C131 を追加することでオンタイミングを調整することが可能
です(図 37)。共振期間でのドレイン-ソース間電圧(Vds)が下限に達したタイミングでオンするように調整す
ることでスイッチング損失を抑えることが出来ます。
C131 については 15pF 程度を目安に、R131 については以下の式(10)、(11)を参考に実機にて最大入
力電圧時の Vds を観測しながら調整ください。
オンタイミングを決める Z/C 端子の最大流入・流出電流は±5mA となっております。Z/C 端子へ流れる電
流を最大電流の 80%以下に抑えるため抵抗 R131 で調整する必要があります。
具体的には式(10)、(11)より算出された抵抗値 RZC より大きい抵抗値を選択してください。
L111
◆ 制御巻線プラス側
Np
Nc
- 7. 5
Np
[Ω]
4 ×10 3
Vo ×
Nc
R131
R ZC + =
・・・(10)
※7.5V は、ZC 端子内部ツェナー電圧
Z/C
C131
◆制御巻線マイナス側
(- Vin(AC) max× 2 )×
R ZC =
図 37 . Z/C 端子周辺回路
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- 36 -
4 ×10
3
Nc
Np
[Ω] ・・・(11)
設計例として、Vo=400[V]、Vin(AC)max=276[V]、Np=50[Turn]、Nc=5[Turn]の時、
5
- 7.5
50
= 8.1[kΩ]
4 ×10 3
400 ×
◆ 制御巻線プラス側 :
R ZC + =
(- 276 × 2 )×
◆ 制御巻線マイナス側 : R ZC =
- 4 ×10
5
50
3
= 9 .8 [kΩ]
よって、ZC 制限抵抗 R131 は 9.8kΩ以上に設定します。
3.1.6 位相補償の調整 (R132、C132、C133)
エラーアンプにはトランスコンダクタンスアンプ(gm アン
プ)を使用しています。位相補償調整については、図 38
を参考にコンデンサと抵抗を接続ください。
C133 は、計算式(12)より求めることができます。
カットオフ周波数 fc は 20Hz 程度を目安に設定してくだ
さい。C132 は C133 の 10 分の1程度の容量を目安に
調整してください。
C133 ≒
130
[uF] ・・・(12)
2π × fc
※アンプのトランスコンダクタンス値 130 [uA / V]
図 38 . COMP 端子周辺回路
なお SST<1.5V 以下の場合は、アンプのトランスコンダクタンス値は 200[uA/V]と高くなります。これによ
り起動時における PFC 出力電圧のオーバーシュートおよびディップを低減する事が出来ます。
R132 は、抵抗値を大きくするとカットオフ周波数fc以上の高い周波数領域でのゲインを調整する事が出
来ます。ただし、抵抗値を大きくしすぎると波形歪みの原因になりますので、1k~10kΩを目安に調整してく
ださい 。
※推奨定数例: R132=1kΩ、C132=0.22uF、C133=2.2uF
また位相補償の調整につきましては、その他部品定数によって変わる可能性があります。上記算出方法
を目安に最終的には実機より動作波形および力率等を確認して調整してください。
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- 37 -
3.1.7 PFC 出力電圧の調整 (R111~R115、C112)
PFC 出力電圧は、外付けに接続する分圧抵抗により任意の電圧に設定することができます。電圧設定の
際には、外部に分圧抵抗(R111~R115)が必要になります。(図 39 参照)
エラーアンプ入力しきい値は 3.0V になっておりますので、式(13)より分圧抵抗値を決定してください。なお、
損失低減のため、上側分圧(R111~R115)抵抗値は 2MΩ程度を推奨いたします。(PFC 出力電圧を約
400V とした場合。)
また、ノイズによる誤動作防止の為、FBP-GND 間にはコンデンサ C112 を挿入してください。このコンデン
サはフィードバックの応答に影響しますので、1000p~2200pF 程度にすることを推奨いたします。
図 39 . FB 端子周辺回路
(R111 + R112 + R113 + R114) =
R115 × ( Vo - 3.0)
[Ω] ・・・(13)
3 .0
なお、各抵抗の精度は出力電圧の精度に直結いたします。高精度抵抗品の選定を推奨いたします。
3.1.8 過電流保護ポイントの調整(R121、R126、C121)
過電流保護ポイント Ps は過電流検出抵抗 R121 により調整いたします。R121 の抵抗値は式(14)により
決定してください。
Ps は、最大負荷電力 Pomax の 1.2~1.5 倍を目安としてください。過電流保護ポイントを大きくする場合
はチョークコイルの磁気飽和を十分考慮して設計してください。
なお、ノイズ低減のために入れる C121 は 1000pF、R126 は 100~1kΩ程度を挿入してください。
η× Vin(AC) min
R121 = 0.5 ×
2 × 2 × Ps
[Ω] ・・・ (14)
3.1.9 PFC 出力コンデンサの選定(C111)
過電圧検出電圧は出力電圧の 1.08 倍で設定されます。出力コンデンサ(C111)の耐圧は、この過電圧検
出電圧+マージンを考慮してご選定ください。
Vo(OVP) = Vo ×1.08 [V ]
・・・(15)
C111 の容量は、許容リップル電流と保持時間に応じて調整してください。
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- 38 -
3.2 LLC 部の設計
3.2.1 LLC 部トランスの設計
LLC 電流共振電源は、定格入力・定格負荷条件において電流臨界点(CRM)で動作するように設計を行う
ことで最も高効率・低ノイズを実現することが出来ます。本設計手順においても CRM を基準に説明しており
ます。
(1) インダクタンス値および共振コンデンサ容量の設計
(2) 巻数比の設計
(3) 磁束密度の確認
(4) 実機動作の確認
(1) インダクタンス値および共振コンデンサ容量の設計
インダクタンス値(Lp、Lr)および共振コンデンサ容量(Cr)の初期値を下記計算式より計算しこれをもとにシ
ミュレーションを行い定数の最適値を決定します。共振コンデンサ Cr の目安を示します。(下記例は発振周
波数を 50~100kHz 程度に設計した時です)
表.21 共振コンデンサの目安
出力電力
AC100V 系
AC200V 系
PFC(DC390V)
50W~100W
0.10uF
0.027uF
0.010uF
100W~200W
0.15uF
0.033uF
0.022uF
200W~300W
0.22uF
0.047uF
0.033uF
インダクタンス値 Lp は目安として所望の設定発振周波数の 75%程度で計算します。
f 0.75
1
2 π (Lp Cr ) ・・・(16)
リーケージインダクタンス Lr は、トランス構造により変わりますので、例えば PFC 想定の場合(DC390V)
Lr の初期値としては、Lp の 20~30%程度を想定して計算します。計算で算出した後、実際にトランス作
製し計測された Lp や Lr 値で微調整を行います。この時の共振周波数 fr は以下の計算式で算出されます。
fr
1
2 π (Lr Cr )
・・・(17)
(2) 巻数比の設計
入力電圧(Vin)と出力電圧(Vo)の関係より巻き数比(n=Np/Ns)を計算します。
n
Vin
2 k ( Vo
k : 結合係数
VF)
・・・(18)
等価巻き数比 neq=k×n
VF : 出力ダイオードの VF
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結合係数 k は、以下の式で表されます。
k
1
Lr
Lp
・・・(19)
Lp : 1 次側インダクタンス
Lr : リーケージインダクタンス(共振インダクタンス)
1 次側巻数 Np はコアギャップで決まる AL-value(AL)により次式で表されます。
Np
Lp
AL
・・・(20)
AL : AL-Value
Ns
Np
n
・・・(21)
以上の初期設定を目安としてシミュレーションにて動作確認を行ってください。なお、出力パワーが取れな
いまたは共振はずれになる場合、以下の調整を行ってください。
・ 共振コンデンサの値を増やす
・ Lp 値を下げる
(3) 磁束密度の確認
シミュレーションにて出力パワーが取れることを確認したら、磁束密度ΔBm が問題ないかご確認ください。
ΔBm
Lp Ipk
Np
Ae
・・・(22)
CRM における励磁電流のピーク値は以下の式で表されます。
Ipk(Lm)
Vo neq
4 Lm fr
・・・(23)
(4) 実機動作の確認
シミュレーションにおいて動作確認後、実機にて動作確認を行ってください。
以下の条件において出力パワーがとれるか確認してください。
・共振はずれの確認
・ 入力電圧下限において所望の垂下負荷まで出力が取れ、共振はずれしていないか確認します。
・ 起動・切断・負荷急変において出力が取れ、共振はずれしていないか確認します。
・ 負荷短絡試験において共振はずれしていないか確認します。
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- 40 -
3.2.2 LLC 部 MOSFET の選定(Q241、Q242)
LLC 部 MOSFET の選定は最大ドレイン電流にマージンをかけた値以上の定格電流の製品を選定してく
ださい。なお、最終的には実機にてジャンクション温度を確認のうえで、MOSFET およびヒートシンクを決定
してください。
3.2.3 LLC 発振周波数制御部の選定(C211、R211、R212)
LLC 発振制御は FBL 端子に接続したコンデンサおよび抵抗
で行います。(図 40)
FBL 端子ではデッドタイムおよび初期・最高・最低発振周波数
を設定します。
なお、Ct コンデンサ容量ではデッドタイムおよび初期発振周波
数 fss、Rt 抵抗では最低発振周波数、FB 抵抗では最高発振周
波数が決まってきます。それぞれの定数設定方法については次
項に示します。
図 40. FBL 端子接続図
3.2.3.1 デッドタイムおよび初期発振周波数 fss の調整
デッドタイムおよび初期発振周波数は図 41 に示すように Ct コンデンサ容量および Rt 抵抗値により決定
します。図 41 の詳細は電源仕様書の特性図をご覧ください。
frequency vs dead time
800
Ct=2200pF
dead time [ns]
700
Ct=1800pF
Ct=1500pF
600
Ct=1000pF
500
Ct=820pF
400
300
200
0
50
100
150
200
250
300
350
400
frequency [kHz]
Rt vs fss
fss [kHz]
800
700
Ct=2200pF
600
Ct=1800pF
Ct=1500pF
500
Ct=1000pF
400
Ct=820pF
300
200
100
0
0
5
10
15
20
Rt [kohm]
図 41. デッドタイムおよび fss
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- 41 -
25
30
3.2.3.2 最低発振周波数 fmin の調整
ここで、発振器の充電期間(デッドタイム期間)を
tcharge、発振器の放電期間(片側ゲートオン)を
tdischarge とします。
Rt vs frequncy
600
Ct=2200pF
500
frequency [kHz]
最低発振周波数 fmin は Ct コンデンサ容量と Rt 抵
抗により決定します。図 42 は Rt 抵抗と発振周波数の
関係を示しています。
図 42 の詳細は電源仕様書の特性図をご覧ください。
Ct=1800pF
400
Ct=1500pF
300
Ct=1000pF
Ct=820pF
200
100
0
0
それぞれの値は次式で求められます。
なお、Vfbl(top)および Vfbl(bottom)1 の電圧値は Ct
コンデンサ容量や発振周波数により変わりますので実
機にてご確認ください。
t ch arg e =
Rt × Ct × Vfbl( top )
Vfbl(bottom )1
Vfbl( top )
10
15
20
25
Rt [kohm]
図 42. Rt 抵抗と周波数の関係
Rt × Ct × Vfbl(bottom )1
Rt × 9.0 ×10 3 - Vfbl( top ) Rt × 9.0 ×10 3 - Vfbl(bottom )1
t disch arg e = -Rt × Ct × ln
fmin =
-
5
・・・(24)
・・・(25)
1
・・・ (26)
2 × t ch arg e + t disch arg e
(
)
3.2.3.3 最高発振周波数 fmax の調整
最高発振周波数 fmax は並列に接続された Rt 抵抗値と FB 抵抗値により決定されます。
フィードバックされフォトカプラ PC201 のトランジスタ側がショート状態と想定した時の Rt と FB の分割抵
抗値 Rt1 は次式で求められます。その際の発振周波数は前述の(24)~(26)式で求められます。
Rt1
Rt FB
・・・ (27)
Rt FB
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- 42 -
30
3.2.4 LLC ソフトスタート制御部の選定(C235)
まずは通常動作モード時およびアクティブスタンバイモード時のソフトスタート時間およびタイマ間欠ラッ
チ動作時のタイマ充電時間について述べます。
ソフトスタート動作時の SST 端子への SS 充電電流 Iss(charge)は SST 端子電圧が 0.6V 以上の時に
30uA となります。SST 電圧が SS しきい値 Vss 1.5V 以上になると OCP 動作時の Timer 充電が可能にな
りますので、ソフトスタート時間は SST=1.5V に到達するまでの時間で設計します。
SST 電圧が 0.6V でゲート出力が開始されてから SST 電圧が 1.5V 到達までの時間を tss とすると、式
(28)のように求まります。ソフトスタート時の SST 端子電圧と発振周波数の関係は、特性仕様書の特性図を
ご覧下さい。
t ss
0.9 C235
・・・(28)
30 10 6
また、OCP1 動作時およびアクティブスタンバイ動作時の di/dt 検出時の SST 端子への Timer 充電電流
Itimer(charge)1 は 40uA となります。
SST 電圧が 2.1V で安定後、OCP 動作により SST 端子電圧が増加していき、SST=3.5V まで達する時間
Ttimer は、式(29)のように求まります。
t timer
1.4 C235
40 10 6
・・・(29)
OCP2 動作時の SST 端子への充電電流は CSO 端子電圧により変わります。CSO≦1.5V の時の Timer
充電電流 Itimer(charge)2 は 1.7uA となります。SST=3.5V まで達する時間 Ttimer は、式(30)のように求ま
ります。
t timer
1.4 C235
1.7 10 6 ・・・(30)
CSO>1.5V の時の Timer 充電電流 Itimer(charge)3 は 40uA となり、SST=3.5V まで達する時間 Ttimer
は、式(29)のように求まります。
また、SST=3.5V 到達後の間欠動作時 SST 端子からの Timer 放電電流 Itimer(discharge)は、6.5uA と
なります。
なお、間欠動作時発振停止期間は、SST 電圧が Vtimer(reset) 0.3V まで下がると解除されます。よって、間
欠動作時の発振停止時間 Ttimer(停止)は、式(31) のように求まります。
ttimer( 停止 )
3.2 C235
・・・(31)
6.5 10 6
次にバースト動作時ですが、バースト動作時は SSC 端子がオープンとなり SST 端子に接続するコンデン
サ容量 C(合成)は C235 と C236 の直列容量値となります。直列容量値は式(32)になります。
C(合成)
C235 C236
C235 C236
・・・(32)
式(32)で出た値をもとに上記式(28)~(31)の C235 を置き換えて計算してください。
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- 43 -
3.2.5 過電流保護機能 OCP1、OCP2、di/dt の調整(R221、R225、R226、C222)
LLC 部の過電流検出は CSL 端子にて行います。
共振コンデンサ C221 に流れる電流 Ipk を検出抵抗
R221 にて電圧検出し、分圧抵抗 R225 および R226 にて
分圧したものを CSL 端子にて検出します。
なお、CSL 端子は 90uA の CSL 端子電流が流れます
ので、R225 は 10~47Ω程度を推奨します。
また、スイッチングノイズによる誤動作を防ぐため、C222
にはフィルタ用のコンデンサを挿入してください。フィルタ用
コンデンサは 0.01uF 程度を推奨します。
図 43. 過電流検出回路
過電流保護機能は OCP1 が±0.525V、OCP2 が±
0.350V となりますので OCP2 の方が先に働きます。
所望の OCP2 動作時の共振コンデンサ電流を Ipk とすると、電圧検出抵抗 R221 は式(33)を満たす定数
にする必要があります。式(34)より R225 および R226 を求めます。なお、R225 は 10Ω~47Ω程度として
R226 の定数を求めます。
最後に式(35)に実定数を入力して、所望の Ipk 値になるか確認します。
R221>
0.35
[Ω] ・・・ (33)
Ipk
R226 =
0.35 × R225
[Ω] ・・・ (34)
Ipk × R221- 0.35
Id =
R225 + R226
× 0.35 [ A ] ・・・ (35)
R226 × R221
CSO 端子にはコンデンサ C223 および抵抗 R227 を接続します。OCP1 および OCP2 動作時に CSO 端
子を充電して発振周波数を可変させます。OCP1 および OCP2 動作時の CSO 端子充電電流は表 13 をご
覧ください。CSO 端子に接続するコンデンサは実機にて応答をご確認の上、調整してください。初期値として
は、C223 が 0.1u~1.0uF、R227 が 10k~100kΩとなります。
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- 44 -
3.3 共通部の設計
3.3.1 補助巻線部の設定
自己起動回路を使用する場合、LLC 部または PFC 部
に補助巻線を巻いて電源起動後は補助巻線より Vcc 供
給を行います。
補助巻線の巻き数は、ドレインキック停止 Vc1 電圧
12.6V よりも高い電圧が発生するように調整してください。
図 44 に補助巻線部の回路を示します。
MCZ5209SN の Vc1 耐圧が 35V となりますので、補助
巻線の電圧が 35V を超えるような条件がある場合には図
44 の点線部にあるドロッパを入れてください。
図 44. 補助巻線部回路
また、MCZ5209SN の発熱が大きい場合もドロッパを入
れて Vc1 端子への電圧を低くすることで、発熱を低減することが出来ます。電源起動時にドロッパ後の電圧
がドレインキック停止 Vc1 電圧 12.6V を超えるように設計してください。
R233 には電流制限の為、1.5Ω程度を入れてください。また、D231 は新電元製 D1FL20U や M1FL20U
を推奨します。
3.3.2 AC 入力監視部の設定
LS 端子の接続例を図 45 に示します。AC ラインより抵抗 R104~R107、R108 にて抵抗分圧して C107
により平滑を行うことで入力ラインの検出を行っています。図 45 は半波整流による検出となりますが、AC
両端子よりダイオードを接続して両波整流することにより C107 容量が低減できるため応答を早くすることが
可能です。半波整流時の LS に発生する電圧 VLSin は式(36)の近似式で求めることができます。コンデン
サ C107 はリップルの振幅がヒステリシス幅を超えないように容量の設定を行います。コンデンサ容量を必
要以上に大きくすると起動、停止時の遅れが大きくなります。また、コンデンサ C107 の容量によりリップル
の振幅が変化することで動作点に影響するため実機で R104~R107 もしくは R108 を確認・調整してくださ
い。また、規格などでダイオードが必要な場合は R104 の前に挿入してください。
図 45 における構成例で AC90V~AC264V 入力仕様の場合の参考定数例と致しまして、R104~
R107=2.2MΩ, R108=560kΩ, C1=0.47uF に設定します。また、部品実装におきましては R108,C107 は
MCZ5209SN の IC 端子直近に配置してください。
交流入力 AC(rms)に対する LSin 端子の電圧
VLSin は、
VLSin
AC(rms)
R2
〔V〕
1.72
R1 R2
・・・ (36)
また、抵抗 R1+R2 による損失 Rloss は概算以下の
ようになります。
Rloss AC(rms)
1 .3
2
R1 R2 〔W 〕
・・・ (37)
図 45. LS 端子周辺の回路例
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- 45 -
3.3.3 バーストおよびアクティブスタンバイ部回路定数の設定
図 46 にバーストおよびアクティブスタンバイ機能を使用した時の回路例を示します。出力電圧は 12V で、
バースト時は 12V 出力からドロッパで 5V を出力することを想定した回路図になっています。
なお、説明の都合上 3 つのブロックに分けて説明します。
(A) BURST 端子部分定数
R231 は BURST 端子放電電流 400uA を考慮し 15kΩと設計しました。R232 は Vc2 UVLO を考慮し
Vc1 が 11V 時に BURST 端子電圧が 1.8V 以上になるように 75kΩと設計しました。
R255 は 2 次側出力電圧下限検出時の引き抜き電流を設定します。図の例では 2V で 400uA 程度流れ
るように 4.7kΩとしました。コンデンサ C232 は実機のバースト周期より 0.01uF としました。
(B) 2 次側出力電圧下限検出部定数
出力電圧の下限は約 6.2V とし設計を行いました。IC302 は 2.5V のシャントレギュレータを使用し、R384
および R385 は出力電圧が 6.2V 時に IC302 のリファレンス端子が 2.5V になるように設計しました。
ZD381 は出力電圧下限の 6.2V より低く、IC302 のリファレンス電圧以上のツェナーダイオードを選択して
おります。R381 は出力電圧下限時に 1mA 程度電流が流せるように設計しています。
(C) バースト・アクティブスタンバイ部分定数
アクティブスタンバイの切り替えは R256、R257 の分圧により ASTBY 端子を 3.2V~4.0V にします。
Q251 のコレクタ・エミッタ間飽和電圧 Vce(sat)および D251 の Vf を考慮して抵抗値を選定してください。今
回の例では Vce(sat)を 0.4V、Vf を 0.5V として ASTBY 端子が約 3.5V 程度になる定数にしています。
R361 および R371 は出力電圧下限時においても十分電流が流れるようにしてください。今回の例では
1mA 程度流れるように 4.7kΩとしています。
図 46. バーストおよびアクティブスタンバイ回路例
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4
回路例
4.1 代表回路図
図 47. 代表回路図
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5
外形寸法図(正式寸法に関しては納入仕様書をご覧下さい)
5.1 SOP24
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Notes:
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