nr885k an jp

NR885K
アプリケーション ノート
面実装タイプ同期整流型チョッパレギュレータIC
NR885K
第 9 版 2015 年 6 月
サンケン電気株式会社
NR885K
---
目次
---
1.概要
1-1
特長
----------
3
1-2
主な用途
----------
3
1-3
種別
----------
3
2-1
外形図
----------
4
2-2
定格
----------
5
2-3
回路図
----------
7
3-1
端子記号、名称
----------
8
3-2
端子機能説明
----------
8
2.製品仕様
3.各端子の説明
4.NR880K シリーズの動作説明
4-1
PWM 出力制御
----------
9
4-2
過電流・過熱保護
----------
10
5.使用に際しての注意事項
5-1
外付部品選定上の注意
----------
11
5-2
パターン設計上の注意
----------
16
5-3
電源の安定性
----------
19
6-1
ソフトスタート
----------
20
6-2
出力 ON・OFF 制御
----------
21
6-3
スパイクノイズの低減
----------
22
6-4
逆バイアス保護
----------
23
6-5
外付けブーストラップダイオード
----------
23
----------
24
6.応用
7.用語解説
2
NR885K
1.概要
NR885K は、パワーMOS 内蔵の同期整流型チョッパレギュレータICです。また、電流制御方
式により、セラミックコンデンサのような超低 ESR のコンデンサに対応できます。過電流保護、
低入力禁止、過熱保護等のスイッチング・レギュレータとしての、保護機能を有しています。
起動時の突入電流を防ぐために、ソフトスタート機能も有しています。外付けに、コンデンサ
を接続することで、ソフトスタート時間を設定できます。また、外部信号でオンオフできる機
能も有しており、EN 端子へ外部から信号を与えることで、NR885K をターンオン/ターンオフで
きます。位相補償用回路を内蔵しているため、外付けの位相補償用部品は不要です。裏面にヒ
ートスラグ付きの小型薄型の HSOP8 ピンパッケージで供給されます。
●1-1
特長
・出力電流 3.0A
HSOP-8Pin 面実装パッケージで、出力電流は最大 3.0Aです。
・高効率
最大効率94% (VIN=8V/Vo=5V/Io=0.8A)
・出力電圧可変
0.8~14V
・出力に低 ESR コンデンサ
セラミックコンデンサが使用可能
・動作周波数
NR885K:350kHz
・過電流、過熱保護内蔵
垂下型過電流保護及び過熱保護回路を内蔵しています。(自動復帰型)
・位相補償回路内蔵
位相補償回路を内蔵していますので、外付けの位相補正部品が必要ありません。
・ソフトスタート機能
外付コンデンサの追加で、起動時に出力電圧立ち上がり速度を遅らせることが出来ます。
・ON/OFF 機能
・小型 PKG 使用
ヒートスラグ付 HSOP8 ピンパッケージ
●1-2
主な用途
・オンボードローカル電源
・OA機器用電源
・レギュレータ2次側出力電圧安定化
・テレコム用電源
●1-3
種別
・種別:半導体集積回路(モノリシックIC)
・構造:樹脂封止型(トランスファーモールド)
3
NR885K
2.製品仕様
●2-1
外形図
2-1-1
NR885K 外形図
単位:㎜
Unit:㎜
2.70
端子配列
1.BS
2.VIN
3.SW
4.GND
5.FB
6.NC
7.EN
8.SS
*1.品名標示
*2.ロット番号(3 桁)
第 1 文字
西暦年号下一桁
第 2 文字
月
1~9 月:アラビア数字
10 月:O
11 月:N
12 月:D
(1 to 9 for Jan. to Sept.,
O for Oct. N for Nov. D for Dec.)
第 3 文字 製造週
01~05:アラビア数字
*3.管理番号(4 桁)
● 外部端子処理:Sn-2.5Ag メッキ
4
NR885K
●2-2
定格
表1 絶対最大定格
項目
記号
規格
単位
入力電圧 VIN
VIN
20
V
BS 端子電圧 VBS
VBS
25.5
V
SW 端子電圧 VSW
VSW
20
V
FB 端子電圧 VFB
VFB
5.5
V
EN 端子電圧 VEN
VEN
20
V
SS 端子電圧 VSS
VSS
5.5
V
許容損失 *1
Pd
1.69
W
接合温度
Tj
150
℃
保存温度
Tstg
-40~150
℃
熱抵抗(接合-ケース間) *2
θj-c
40
℃/W
熱抵抗(接合-周囲間) *2
θj-a
74
℃/W
条件
*1 過熱保護を搭載しており Tj>160℃で動作する場合があります。
*2 ガラスエポキシ基板 30.0mm×30.0mm (銅箔エリア 25.0mm×25.0mm)実装時
表2 推奨動作条件
項目
記号
規格
単位
直流入力電圧
VIN
4.5 or Vo+3v ~ 18
V
出力電流
IO
0~3.0
A
出力電圧
Vo
0~14
V
動作時周囲温度
Top
-40~+85
゚C
*3
*3 入力電圧範囲の最小値は、4.5V もしくは VO+3V のどちらか大きい値とする。
VIN<6V では、VIN-BS 間にダイオードを挿入することを推奨致します。もしくは BS 端子にダイオー
ドを接続して外部から電圧を印加することを推奨致します。
5
NR885K
表3 電気的特性
(特に指定が無い限りは、Ta=25℃、Vo=3.3V 設定時
R1=5kΩ,R2=1.6kΩ)
規格値
項目
記号
設定基準電圧(*4)
VREF
⊿VREF/⊿
T
出力電圧温度係数
効率
*6
η
動作周波数 (*5)
fo
ラ イ ン レ ギュレーション
*7
ロ ー ド レ ギュレーション
*7
TYP
MAX
0.784
0.800
0.816
280
VIN=12V,Io=1.0A
VIN=12V,Io=1.0A
Ta=-40℃ to +85℃
±0.05
mV/℃
90
%
VIN=12V,Io=1A
kHz
VIN=12V,Io=1A
350
420
50
mV
VIN=6.3~18V,Io=1A°
VIN=8~18V,Io=1A°
VLoad
50
mV
VIN=12V,Io=0.1~3.0A
A
VIN=12V
IS
静止時回路電流1
IIN
3.1
6.0
6
mA
IIN(off)
Low 時流出電流
V
測定条
VLine
過電流保護開始電流
静止時回路電流 2
単位
MIN
VIN=12V,Io=0A,
VEN=10kΩ pull up to VIN
10
uA
VIN= 12V,Io=0A,VEN= 0V
VSS=0V, VIN=12V
ISS1
6
10
14
μA
VssH
2.7
3.0
3.3
V
VIN=12V
50
100
μA
VEN= 10V
VIN=12V
SS 端子 *9
開放電圧
流入電流
IEN
オンスレッシュ電圧
VC/EH
0.7
1.4
2.1
V
最大ONデユーティ― *7
DMAX
85
90
95
%
最小ON時間 *7
DMIN
過熱保護開始温度 *7
TSD
EN 端子
過熱保護復帰ヒステリシス *7
151
TSD_hys
150 *8
nsec
165
℃
20
℃
*4 MIN/MAX は暫定
*5 MIN/MAX は暫定
η(%)=
*6 効率は次式により算出されます。
VO・IO
VIN・IIN ×100
*7 設計保証値です。
*8 図 1 の入出力特性グラフは、最小 ON 時間により制限される入出力条件を示しています。
但し、負過電流は 100mA 以下の場合とする。
20
18
16
VIN[V]
14
12
10
8
6
0.8
1
1.2
1.4
1.6
1.8
2
2.2
2.4
Vo[V]
図1
6
NR885K
●2-3
回路図
2-3-①
内部等価回路図
図2
NR885K
2-3-②
標準接続図
NR885K
C1/C2: 10uF / 25V ×2
C3: 0.1uF
L1: 10uH
R3: 22Ω(Option)
C4/C5: 22uF / 6.3V ×2
C7: 0.1uF
R1: 100kΩ
R4: 8.2 kΩ
R6: 3.9kΩ(Vo=3.3V)
R5: 4.3kΩ
D1:*Option
図3
7
NR885K
3.各端子の説明
●3-1
端子記号、名称
表4
端子番号
1
2
3
記号
BS
VIN
SW
NR885K
名称
ハイサイド用ブースド端子
入力端子
スイッチング出力端子
4
5
6
7
8
GND
FB
NC
EN
SS
グランド端子
基準電圧端子
未接続
ON/OFF 端子
ソフトスタート設定端子
●3-2
・NR885K
BS 1
8 SS
VIN 2
7 EN
SW 3
6 NC
GND 4
5 FB
端子機能説明
・BS (端子番号 1):
ハイサイドスイッチ Nch-MOS のゲート駆動用の内部電源です。SW 端子と BS 端子間に 0.1uF 以上のコ
ンデンサを接続し、ハイサイド Nch-MOS を駆動させます。
・IN (端子番号 2):
IC の入力電圧です。
・SW (端子番号 3):
出力にパワーを供給するスイッチング出力端子です。
・GND (端子番号 4):
グランド端子です。
・FB (端子番号 5):
出力電圧設定用の端子です。R1、R2で出力電圧を設定します。
・NC(端子番号 6):
未接続端子です。
・EN(端子番号 7):
IC を ON/OFF させるための端子です。
・SS(端子番号 8):
端子にコンデンサを接続することで出力電圧をソフトスタートさせることができます。
8
NR885K
4.NR885K の動作説明
●4-1
PWM出力制御
NR885K は、電流制御と電圧制御の2系統の帰還ループとスロープ補正を行う3つのブロック
で構成され、電圧制御帰還では出力電圧を PWM 制御に帰還するループとなり、NR885K では出
力電圧の抵抗分割を基準電圧 0.8V で比較するエラーアンプで構成されています。電流制御帰還
ではインダクタ電流を PWM 制御に帰還するループであり、センス MOSFET を使用して分流さ
れたインダクタ電流をカレントセンスアンプで検出を行っています。また、スロープ補正では電
流制御方式の特性上,サブハーモニック発振を回避するため電流制御スロープに対して補正を行
っています。図3に示すように,NR885K では,電圧制御帰還,電流制御帰還,スロープ補正の
信号を演算することで,電流制御方式による PWM 制御を行っています。
図4
電流制御PWM制御チョッパ型レギュレータ基本構成
NR885K は UVLO が解除された時や、EN・SS 端子が閾値を超えた時に、スイッチング動作し
ます。最初は、MIN_ON デューティーもしくは MAX_ON デューティーでスイッチング動作します。 ハイ
サイドスイッチ(M1、
以下 M1と示す。
) は出力にパワーを供給するスイッチング MOSFET で、
まずは、ローサイドスイッチ(M2、以下 M2と示す。)が ON して、M1 を駆動させるためのブー
スト用コンデンサ C3 をチャージします。M1:ON 時において、SW 端子とインダクタに電圧が印加され
ることにより、インダクタ電流が増加し、それを検出する電流検出アンプの出力も上昇します。
この電流検出アンプの出力とスロープ補正信号とが加算された信号と、誤差増幅器の出力を比較し
ます。加算された信号が、誤差増幅器(Error amp)の出力を超えた時に、比較器の出力が“H”と
なり、RS フリップフロップがリセットされます。そして、M1が OFF し、ローサイドスイッチ
(M2、以下 M2と示す。)が ON することにより、回生電流が M2 を通って流れます。外付けに
SBD(D1)を接続した場合は、D1 にも回生電流が流れます。
NR885K では毎周期にセット信号が発生し、RS フリップフロップがセットされます。また、加
算された信号が誤差増幅器(Error amp)の出力電圧を超えなかった場合、
OFF Duty 回路の信号に
より、RS フリップフロップが必ずリセットされます。
9
NR885K
●4-2
過電流・過熱保護
過電流時出力電圧特性
Vo の低下と共に発振周波数が低下
します。
図5
NR885K は、垂下型過電流保護回路を内蔵しています。過電流保護回路はスイッチングトランジ
スタのピーク電流を検出し、ピーク電流が設定値を超えると強制的にトランジスタのON時間を
短縮させて出力電圧を低下させ電流を制限しています。更に出力電圧が低下しますとスイッチン
グ周波数を低下させることで低出力電圧時の電流増加を防止しています。過電流状態が解除され
ると出力電圧は自動的に復帰します。
過熱保護時出力電圧特性
出力電圧
復帰設定温度
保護設定温度
接合温度
図6
過熱保護回路は、ICの半導体接合温度を検出し、接合温度が設定値(約 160℃)を超えると出
力トランジスタを停止させ、出力をOFFとします。接合温度が過熱保護設定値より 20℃程度低
下しますと自動的に復帰します。
※(過熱保護特性)注意事項
瞬時短絡等の発熱に対しICを保護する回路であり、長時間短絡等、発熱が継続する状態での
信頼性を含めた動作を保証するものではありません。
10
NR885K
5.使用に際しての注意事項
●5-1
外付部品選定上の注意
5-1-①
チョークコイルL1
チョークコイルL1は、チョッパ型スイッチングレギュレータの中心的役割を果たしています。
レギュレータの安定動作維持のため、飽和状態での動作や、自己発熱による高温動作等の危険な
状態は回避しなくてはなりません。チョークコイル選定のポイントとしては以下の事項が挙げら
れます
a)スイッチングレギュレータ用であること
ノイズフィルタ用のコイルは、損失が大きく発熱が大となりますのでご使用を
避けて下さい。
b)サブハーモニック発振の回避
ピーク検出電流制御ではインダクタ電流がスイッチング動作周波数の整数倍の周期で変動する
ことがあります。このような現象をサブハーモニック発振と呼び、ピーク検出電流制御モードで
は原理的に発生する問題です。その為、安定な動作をさせる為に IC 内部でインダクタ電流に補
正を行っており、出力電圧に対応した適切なインダクタ値を選定することが必要です。
図 7 はサブハーモニック発振を回避するためのインダクタンス L 値選定範囲を示した図です。尚、
インダクタンス L の上限については、入出力条件、負荷電流によって変わることがあるため、目
安としての値になります。
図7
NR885K(350kHz)でのインダクタンス L 値選定範囲
チョークコイル電流の脈流部ΔIL およびピーク電流 ILp は、次式にて表されます。
IL 
(Vin  Vout )  Vout
L  Vin  f
---(A)
ILp 
IL
 Iout
2
---(B)
11
NR885K
この式よりチョークコイルのインダクタンス L が小さいほど、ΔIL,ILp ともに増大することが分
かります。よってインダクタンスが過小であるとチョークコイル電流の変動が大きくなるためレ
ギュレータの動作が不安定になるおそれがあります。過負荷・負荷短絡時の磁気飽和によるチョ
ークコイルのインダクタンスの減尐に注意願います。
図8
c)定格電流を満足すること
チョークコイルの定格電流は、使用する最大負荷電流より大きくなくてはなりません。負荷電
流がコイルの定格電流を越えると、インダクタンスが激減し、ついには飽和状態となります。こ
の状態では、高周波インピーダンスが低下し、過大な電流が流れますのでご注意下さい。
d)ノイズが尐ないこと
ドラム型のような開磁路型コアは、磁束がコイルの外側を通過するため周辺回路へノイズによ
る障害を与えることがあります。なるべくトロイダル型や EI 型、EE 型のような閉磁路型コアの
コイルをご使用下さい。
12
NR885K
5-1-②
入力コンデンサ CIN
入力コンデンサ CIN は、入力回路のバイパスコンデンサとして動作し、スイッチング時の急峻
な電流をレギュレータに供給しており、入力側の電圧降下を補償しています。従って極力レギュ
レータICの近くに取り付ける必要があります。また、AC 整流回路の平滑コンデンサが入力回
路にある場合でも、NR885K の近くにレイアウトされていなければ入力コンデンサは平滑コンデ
ンサと兼用とすることが出来ません。(CIN は標準接続図の C1/C2 です。)
CIN 選定のポイントとして次のことが挙げられます。
a)耐圧を満足すること
b)許容リップル電流値を満足すること
CIN の電流の流れ
C1電流波形
CIN
電流波形
IIN
VIN
1.VIN
リップル電流
0
Iv
Ip
C1
CIN
Ton
D
T
図9
Ton
T
図 10
入力コンデンサのリップル電流は負荷電流の
増加に伴って増大する。
これら耐圧や許容リップル電流値を、オーバーしたりディレーティング無しで使用した場合、コ
ンデンサ自身の寿命が低下(パンク、容量の減尐、等価インピーダンス増大、等)するばかりで
なく、レギュレータの異常発振を誘発する危険があります。従って、十分なマージンをとった選
択が必要です。尚、入力コンデンサに流れるリップル電流実効値 Irms は下記の(2)式で求め
られます。
Irms  1.2 
Vo
 Io
Vin
例えば
--(2)
VIN=20V,Io=3A,Vo=5V とすると、
I r m 1s.2 
5
 3  0.9 A
20
となりますので、許容リップル電流が、0.9A より大きいコンデンサを選ぶ必要があります。
13
NR885K
5-1-③
出力コンデンサ COUT
電流制御方式は,電圧制御方式にインダクタ電流を検出し、帰還するループを追加した方式であ
る。帰還ループにインダクタ電流を追加することで,LC フィルタの二次遅れ要素の影響を考慮
せず,安定な動作を実現できます。したがって、二次遅れを補正するために必要であった LC フ
ィルタの容量 C を小さいものにでき,さらに低 ESR のコンデンサ(セラミックコンデンサ)を
用いても安定した動作を得ることが可能です。
出力コンデンサ COUT は、チョークコイルL1と共にLCローパスフィルターを構成し、スイッ
チング出力の平滑コンデンサとして機能しています。出力コンデンサにはチョークコイル電流の
脈流部ΔIL と等しい電流が充放電されています。従って入力コンデンサと同様に、耐圧及び許容
リップル電流値を十分なマージンを取った上で満足する必要があります。
IL
Vout
L1
CC2電流波形
OUT 電流波形
Io
リップル電流
ESR
RL
0
⊿IL
出力コンデンサのリップル電流はチョークコイルのリップル
C2
COUT
電流と等しく、負荷電流が増減しても変化
しない。
図 11
COUT の電流の流れ
出力コンデンサのリップル電流実効値は、下記の(3)式で求められます。
Irms 
IL
2 3
---(3)
例えばΔIL を 0.5A としますと、
Irms 
0.5
≒ 014
. A
2 3
となり、許容リップル電流が 0.14A 以上のコンデンサが必要になります。
又、レギュレータの出力リップル電圧 Vrip は、チョークコイル電流の脈流部ΔIL(=C2充
放電電流)と出力コンデンサ COUT の等価直列抵抗 ESR の積によって定まります。
Vrip  IL  Cout  ESR
---(4)
従って出力リップル電圧を小さくするには、等価直列抵抗 ESR の低いコンデンサを選ぶ必要
があります。一般的に電解コンデンサにおいては同一シリーズの製品ならば、同一耐圧で容量が
大きい程、又は同一容量で耐圧が高い程(≒外形が大きくなる程)ESR は低くなります。
ここでΔIL=0.5A
Vrip=40mV
としますと、
CoutESR  40  0.5  80m
となり、ESR が 80mΩ以下のコンデンサを選べば良いことになります。また ESR は温度によ
って変化し一般に低温になると増加しますので、使用温度における ESR を確認する必要があり
14
NR885K
ます。尚 ESR 値はコンデンサ固有のものですのでコンデンサメーカにご問い合わせ下さい。
5-1-④
フライホイールダイオード・D1
フライホイールダイオードD1を外付けに接続することで効率をアップさせることができます。
フライホイールダイオードD1は、スイッチングオフ時にチョークコイルに貯えられたエネルギ
ーを放出させる為の物です。フライホイールダイオードには必ずショットキーバリアダイオード
を使用して下さい。一般の整流用ダイオードやファーストリカバリダイオード等を使用した場合、
リカバリ及びオン電圧による逆電圧印可によりICを破壊する恐れがあります。又 NR885K の
SW 端子(3 番端子)から出力された電圧は入力電圧とほぼ同等である為、フライホイールダイ
オードの逆方向耐圧が入力電圧以上あるものをご使用下さい。
フライホイール Di にはフェライトビーズは入れないでください。
5-1-⑤
出力電圧 Vo と出力コンデンサ Co
NR885K では安定動作を確保するための目安として、出力電圧と出力コンデンサの対比を表 5 に
示します。
インダクタ L については
5-1-① チョークコイルL1
を参照して選定して下さい。
(図
6インダクタンス L 値選定範囲を参照)
表5.Vo・Co 対比表
Vout[V]
350kHz
Cout[uF]
(セラミックコンデンサ使用)
(アルミ電解コンデンサ使用:ESR≒100mΩ)
1.2
33~100
47~330
1.8
22~100
47~470
3.3
10~68
20~180
5
4.7~47
4.7~100
9
3.3~22
2.2~47
12
3.3~22
2.2~33
14
2.2~22
2.2~33
15
NR885K
●5-2
パターン設計上の注意
5-2-①
大電流ライン
接続図中の太線部分には大電流が流れますので、出来る限り太く短いパターンとして下さい。
図 12
5-2-②
回路図
入出力コンデンサ
入力コンデンサ C1,C2 と、出力コンデンサ C4,C5 は、出来る限りICに近づけて下さい。入
力側に AC 整流回路の平滑コンデンサがある場合には、入力コンデンサと兼用にすることが可能
ですが、距離が離れている場合には、平滑用とは別に入力コンデンサを接続することが必要です。
また、コンデンサ部分のパッドの接続やパターン引き回しにも配慮が必要です。
図 13 良いパターン例
図 14 悪いパターン例
16
NR885K
5-2-③
FB 端子(出力電圧設定について)
FB 端子は出力電圧を制御する為のフィードバック検出端子です。出来る限り出力コンデンサ
COUT に近い所に接続して下さい。遠い場合、レギュレーションの低下、スイッチングリップルの
増大により異常発振の原因となることがありますのでご注意下さい。
R4+R5 及び R6 を接続することで出力電圧の設定が可能です。
IFB が約 0.5mAになるように設定ください。
(IFB は下限 0.5mA で考え、上限は特に制限は
ありませんが、消費電流が増える方向なので効
率低下になりますので注意ください。
R4+R5、R6、出力電圧は次式で求められます。
IFB=VFB/R6
*VFB=0.8v±2%
R4+R5=(Vo-VFB)/IFB
R6=VFB/IFB
図 15
Vout=(R4+R5)×(VFB/R6)+VFB
安定動作する為にスイッチングノイズの
影響を受けない様、電圧検出ラインはコン
パクトにまとめたレイアウト設計が重要
です。
・Vo=0.8V に設定する際も、安定動作の為 R2 は接続ください。
・入出力電圧の関係については、SW 端子のオン幅がおよそ 200nsec 以上になるような
設定を推奨致します。
FB 端子及び R4,R5,R6 の配線はフライホイールダイオードと並走する配線はしないでください。
スイッチングノイズが検出電圧に干渉し異常発振する場合があります。
特に FB 端子から R6 の配線は短く設計することを推奨します。
17
NR885K
● 参考パターンレイアウト例
図 16
表面:部品面(両面基板)
図 17
裏面:GND 面(両面基板)
NR885K
図 18
デモボード回路図
※デモボード回路図の部品番号は、当該基板が NR110、NR120、NR880 シリーズ共用のため、前述
の応用回路例などと一部一致しません。予めご了承ください。NR880 シリーズにおいて、
C9,R9,C10 は使用しません。また、D1,D2,R3,R8,R10,C11,C12 はオプションです。
18
NR885K
5-3
電源の安定性
チョッパ型レギュレータの位相特性は、レギュレータIC内部の位相特性と出力コンデンサ
COUT・負荷抵抗 ROUT の合成になります。レギュレータIC内部の位相特性は、一般的には制御
部の遅れ時間と出力誤差増幅器の位相特性で定まります。この内、制御部の遅れ時間による位相
遅れは、実使用上はほとんど問題になることはありません。また出力誤差増幅器の位相補正内蔵
により、安定性を良くするための出力電圧及び出力コンデンサの設定については、
4-1-⑤ 出力電圧と出力コンデンサ
を参照して下さい。
19
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6.応用
●6-1
ソフトスタート
8 番端子にコンデンサを接続すると入力電圧投入時にソフトスタートがかかるようになります。
Vout は Css の充電電圧に相関し立ち上がります。よって Css 充電の時定数計算で概略求まりま
す。
コンデンサCss はPWM制御の OFF 期間をコントロールして立ち上がり時間を制御する為のも
ので、立ち上がり時間t_ss及びディレイ時間t_delay は
以下の式で概略求まります。
ソフトスタート機能を使用しない場合は 8 番端子をオープンとして下さい。
FB
VIN
Vin=4.1V
Iss
SS
時間
SS
×0.9
Css
Vss2=1.79V
Vss1(th)
基準電圧
(0.8V)
Error Amp.
Vss1=0.9V
IC内部
時間
Vo
● t_delay ⇒ SS端子電圧 < Vss1(th) = Vss1(0.9V)
● tss ⇒ Vss1(0.9V) ≦ SS端子電圧 ≦ Vss2(1.79V)
※Cssに0.1uFを使用した場合の例:
t_delay = Css*Vss1/Iss = 0.1uF*0.9v/10uA = 9ms
tss = Css*(Vss2-Vss1)/Iss/0.9 = 0.1uF*(1.79v-0.9v)/10uF/0.9 ≒ 9.9ms
時間
t_delay
tss
タイミングチャート1
VIN
VIN
VEN
VEN
出力起動時間
VEN=4.1V
100
時間
Vss2=1.79V
Vss1=0.9V
時間
Vo
ソフトスタート時間 [ms]
VSS
10
1
0.1
時間
t_delay
t_delay
t_ss
t_all
tss
タイミングチャート2
0.01
0.0001
0.001
0.01
0.1
SSコンデンサCss [uF]
図 19
ソフトスタート特性
20
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放電時間t_discharge [ms]
SSコンデンサ放電時間
7
SS 開放電圧=3V
6
SS 放電能力は 500uA
5
左記のグラフは SS 端子電圧が 3V⇒0V に
4
3
なるまでの時間を表している。
2
1
0
0.01
SSコンデンサ放電時間
0.1
SSコンデンサCss [uF]
1
Css がない場合や極端に小さい場合、過電流保護 Is で制限した出力電流で出力コンデンサを充電する
時定数で立ち上がります。
出力コンデンサ起動での時定数
t=(Co×Vo)/Is
・・・・・・(無負荷時)
*負荷がある状態では Is 値より負荷電流分が減算されます。
●6-2
出力の ON・OFF 制御
7 番・EN 端子を用いて、出力 ON・OFF 制御が可能です。図 20(A)のようにオープンコレク
タ等のスイッチにより、7 番端子を VENL(1.4v)以下にすると出力は停止します。
外部 ON/OFF 機能を使用しない場合は、図 20(B)のように IN~EN 間に 100kΩのプルアップ
抵抗を接続してください。VIN 電圧印加で起動します。
100kΩ
100kΩ
(A)
(B)
図 20
ONOFF 制御
21
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●6-3
スパイクノイズの低減
6.3.1BS 直列抵抗の挿入
図 21 の RBS(オプション)を挿入することで、IC 内蔵の
パワーMOSFET のターンオンスイッチングスピードを
遅くすることが出来ます。スパイクノイズはスイッチング
スピード低下に連動して下がる傾向となります。
RBS を使用する場合は 22Ω を上限として設定してくだ
さい。
※ご注意
1)誤って RBS の抵抗値を大きくしすぎると、IC 内蔵パワ
ーMOSFET はアンダードライブとなり、最悪破損する
事が有ります。
2)RBS が大きすぎると、起動不良を起こす事が有りま
す。
※デモボードの R3 です。
RBS
1.BS
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図 21. BS 直列抵抗の挿入
6.3.2 スナバ回路の追加
上記の対策に図 22 のように抵抗とコンデンサ(RC スナ
バ)を追加することにより、出力波形及び、ダイオードのリ
カバリータイムを補正し、一層のスパイクノイズを低減させ
ることができます。6.3.1 項と共にに効率が低下しますの
で注意して下さい。
※オシロスコープにてスパイクノイズを観測される際には、
プローブの GND リード線が長いとリード線がアンテナの
作用をしてスパイクノイズが大きく観測されることがありま
す。スパイクノイズの観測に当たってはプローブのリード
線を最短にして出力コンデンサの根本に接続して下さい。
※デモボードの C12,R10 です。
2.IN
3.SW
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4.GND
*オプション
図 22. スナバ回路の追加
6.3.3 ビーズコア挿入に関するご注意
図 23 ビーズコア挿入禁止エリア
図 23 の赤の点線内ではフェライトビーズなどのビーズコアを挿入しないでください。プリント基板パ
ターン設計においては、IC の安全且つ安定動作のため、配線パターンの寄生インダクタンスを小さく
抑えていただくように推奨しております。
ビーズコアを挿入すると、元々配線パターンが持つ寄生インダクタンスに、ビーズコアが持つインダク
22
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タンスが加算されるため、この影響によってサージ電圧の発生、或いは IC の GND が不安定/負電位に
なるなど、誤動作が発生したり、最悪の場合破損に至る事があります。
ノイズの低減に関しては、基本的に 6.3.1 項「BS 直列抵抗挿入」及び、6.3.2 項「スナバ回路の追加」で
対策してください。
●6-4
逆バイアス保護
バッテリーチャージ等、入力端子より出力の電圧が高くなるような場合には、入出力間に逆バイア
ス保護用のダイオードが必要となります。
2.VIN
3.SW
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図 24
●6-5
逆バイアス保護用ダイオード
低入力時の外付けブーストラップダイオード
VIN 入力電圧が 6V 以下でも特に問題なく使用できますが、効率が若干低下する恐れがあるので、
IN-BS 間にダイオードを挿入することを推奨致します(図 25 を参照)。もしくは BS 端子にダイオードを
接続して外部から電圧を印加して下さい(図 26 を参照)。
5V
2.VIN
1.BS
1.BS
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3.SW
3.SW
図 25
外付けブーストラップダイオードト接続1
図 26
外付けブーストラップダイオードト接続2
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7.用語解説
・ジッタ
異常スイッチング動作の一種で、入出力条件が一定にも関わらずスイッチングパルス幅が変
動する現象であります。ジッタが発生すると、出力のリップル電圧ピーク幅が増加します。
・推奨動作条件
正常な回路機能を維持するために必要とされる動作条件を示すもので、実使用においては当
条件内とする必要があります。
・絶対最大定格
破壊限界を示す定格であり、瞬時動作及び定常動作において、一項目かつ一瞬たりとも規格
値を超えないように配慮する必要があります。
・電気的特性
各項目に示している条件で動作させた場合の特性値規格であります。動作条件が異なる場合
には、規格値から外れる可能性があります。
・PWM (Pulse width modulation)
パルス変調方式の一種で、変調信号波(チョッパ型スイッチングレギュレータの場合、出力
電圧)の変化に応じて、パルスの幅を変えて変調する方式であります。
・ESR (Equivalent series resistance)
コンデンサの等価直列抵抗値を示します。コンデンサに直列に接続された抵抗と同等の作用
を示します。
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注意
●本書に記載されている内容は、改良などにより予告なく変更することがあります。ご使用
の際には、最新の情報であることをご確認下さい。
●本書に記載されている動作例及び回路例は、使用上の参考として示したもので、これらに
起因する当社もしくは第三者の工業所有権、知的所有権、その他の権利の侵害問題につい
て当社はいっさい責任を負いません。
●本書に記載されている製品をご使用の場合は、これらの製品と目的物との組み合わせにつ
いて使用者の責任において検討・判断を行って下さい。
●当社は品質、信頼性の向上に努めていますが、半導体製品では、ある確率での欠陥、故障
の発生は避けられません。部品の故障により結果として、人身事故、火災事故、社会的な
損害等を発生させないよう、使用者の責任において、装置やシステム上で十分な安全設計
及び確認を行って下さい。
●本書に記載されている製品は、一般電子機器(家電製品、事務機器、通信端末機器、計測
機器等)に使用されることを意図しております。ご使用の場合は、納入仕様書の締結をお
願いします。高い信頼性が要求される装置(輸送機器とその制御装置、交通信号制御装置、
火災・防犯装置、各種安全装置など)への使用をご検討の際には、必ず当社販売窓口へご
相談及び納入仕様書の締結をお願いします。極めて高い信頼性が要求される装置(航空宇
宙機器、原子力制御、生命維持の為の医療機器など)には、当社の文書による合意がない
限り使用しないで下さい。
●本書に記載された製品は耐放射線設計をしておりません。
●本書に記載された内容を文書による当社の承諾無しに転記複製を禁じます。
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