AN1228

ご注意:この日本語版ドキュメントは、参考資料としてご使用の上、最新情報に
つきましては、必ず英語版オリジナルをご参照いただきますようお願い
します。
AN1228
オペアンプを使用したデザインの精度 : ランダム ノイズ
著者 :
Kumen Blake
Microchip Technology Inc.
はじめに
本アプリケーション ノートでは、低ノイズで高精
度のオペアンプ回路の設計に必要となる基本的な
背景知識および設計理論を紹介します。特に、ロー
パス応答の回路において、シンプルでなおかつ高い
効果のある手法や近似を紹介します。
本アプリケーション ノートの内容は、信号対ノイ
ズ比(SNR)の高いオペアンプ回路の設計を手がける
エンジニアの方で、設計のトレードオフを短時間で
効果的に評価したい方を対象にしています。
本アプリケーション ノートが扱う内容には普遍性
があり、従来型の電圧帰還型 (VFB) オペアンプにも
電流帰還型 (CFB) オペアンプにも当てはまりま
す。ただし、例にはすべてマイクロチップ社の電圧
帰還型オペアンプを使用しています。
また、巻末には参考資料のリストのほか、用語やコ
ンピュータによる設計支援に関する付録も用意し
ています。
キーワード
•
•
•
•
•
オペアンプ
デバイス ノイズ
ノイズ スペクトル密度
積分ノイズ
信号対ノイズ比 (SNR)
前提条件
本アプリケーション ノートの内容を理解するに
は、次のような統計学の概念に関する知識が望まれ
ます。
•
•
•
•
•
•
•
平均
標準偏差
分散
ガウス ( 正規 ) 確率密度関数
ヒストグラム
統計的独立性
相関
基本的な回路解析に関する知識も必要です。
© 2009 Microchip Technology Inc.
背景知識
ここでは、低周波ノイズ解析の基礎について説明し
ます。この説明は本質的に理論的なものですが、実
際の数値で例を挙げて概念を分かりやすく説明し
ます。この内容が次項以降の土台となります。これ
らの概念の理論的な詳細は、参考資料 [2, 4, 5] を参
照してください。
次項以降でこれらの概念を具体的に説明します。こ
の分野になじみがない場合は、本アプリケーション
の例で実際に作業を行いながら、全体を何度も繰り
返して読むことをお勧めします。
平均はどこへ
統計学で最もよく使われる概念は、平均です。標準
的な回路解析では、任意の時間において決定論的な
値 (DC + AC) が得られます。これらの決定論的な値
を取り除くと、後に残ったノイズ変数の平均はゼロ
になります。
ノイズは、平均応答についてのランダムな変動 ( 確
率的な値 ) と解釈されます。ここでは線形回路を扱
うので、重ね合わせを使用できます。つまり、平均
とランダムな変動を加算すると正しい最終結果が
得られます。
ノイズ スペクトル密度
ランダムなアナログ ノイズを解析する際、アプロー
チとして最も容易なのは周波数領域から始めると
いう方法です ( 時間領域の方が得意なエンジニアの
方も例外ではありません )。定常的なノイズ源 ( そ
の統計が時間で変化しないもの ) は、パワースペク
トル密度 (PSD) 関数で表せます。
ここではアナログ電子回路を解析するので、扱うパ
ワーの単位は W、V2/Ω、A2Ω となります。このノ
イズのパワーは、統計学上の分散 (σ2) と等しくなり
ます。無相関なランダム変数の総和の分散は、次の
とおりです。
式 1:
無相関変数の総和の分散
⎛
⎞
var ⎜ ∑ X k⎟ =
⎝ k ⎠
∑ var ( Xk )
k
ここで :
Xk
=
無相関なランダム変数
var()
=
分散関数
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回路内のさまざまなランダム ノイズ源は物理的に
独立した現象によって発生しているため、この事実
は非常に重要な意味を持ちます。このようにノイズ
源が物理的に独立した回路ノイズ モデルでは、無
相関な統計量が生成されます。
PSD は分散の概念を拡張したものです。ノイズ パ
ワー変数の変動を全周波数帯域の多くの微小帯域
に分布させます。各微小帯域のノイズ ( パワーの単
位は W) は、統計学的に他のどの微小帯域からも独
立しています。PSD の単位は (W/Hz) なので、
「密
度」関数と呼ばれます。これらの概念を図 1 に示し
ます。
PSD (W/Hz)
Bin Power ≈ PSD(fk) · ∆fk
注:
慣れていないと √Hz という単位に戸惑う
かもしれません。しかし PSD ( 単位 W/Hz)
を平方根演算してノイズ電圧密度やノイ
ズ電流密度を得ていることを考えれば、
これはごく自然なことです。
厳密には、受動回路 (RLC 回路 ) では特定の抵抗値
で変換を行う必要があります (P = V2/R = I2R)。しか
し能動デバイスを含む場合のノイズ解析では、ほと
んどの場合、標準抵抗値 1Ω と仮定します。
積分ノイズ
ここでは、合理的な設計判断を下すために必要とな
る全ノイズ変動を調べる方法を説明します。周波数
に関する定積分を使用して、PSD を統計学的な分散
( 標準偏差の二乗 ) に変換します。
計算
∆fk
f (Hz)
0
fk
図 1:
•
•
式 2:
全ノイズ変動
N ≈ ∑ ( PSD ( f k ) ⋅ ∆f k )
パワースペクトル密度
本アプリケーション ノートでは、PSD のグラフ ( お
よび関数 ) はすべて片側であり、x 軸の単位は Hz で
す。回路解析では伝統的に Hz が使用されますが、
それは物理的なスペクトル アナライザの出力が Hz
だからです。
注:
式 1、およびどの周波数の微小帯域のパワーも他の
微小帯域から独立しているという事実により、すべ
ての微小帯域のパワーを足し合わせていくことが
できます。
ノイズに関する電子工学の文献を読む際
は、次の点に注意することが非常に重要
です。
PSD は片側か両側か。
周波数の単位はヘルツ (Hz) かラジアン
毎秒 (rad/s) か。
ほとんどの低周波回路の場合、信号やノイズはパ
ワーではなく電圧および電流として解釈、測定され
ます。このため、PSD は通常、次の 2 つの等価形式
で表わされます。
• ノイズ電圧密度 (en)。単位は (V/√Hz)
• ノイズ電流密度 (in)。単位は (A/√Hz)
ここで、電圧と電流は RMS 値で、それぞれ (VRMS/
√Hz) および (ARMS/√Hz) と表記されることもありま
す。しかし RMS 値であることは自明なので、伝統
的に RMS の添え字は省略します。
k
N =
ここで :
N
全ノイズのパワー (W)
離散的時間で測定したノイズ データに対して総和
の近似を使用します。積分は連続的時間のノイズに
適用されるものですが、理論上の結果を得るのに役
立ちます。
よく使われる式
回路解析では、積分ノイズ (En) への変換は通常、ノ
イズ電圧密度で行います ( 式 3 参照 )。En はノイズ
の標準偏差です。
式 3:
積分ノイズ電圧
En =
∞
2
∫0 e n ( f ) df
ここで :
en(f)
=
=
En
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=
∞
∫0 PSD ( f ) df
ノイズ電圧密度 (V/√Hz)
PSD ( f ) ⋅ ( 1 Ω )
=
積分ノイズ電圧 (VRMS)
=
標準偏差 (VRMS)
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ノイズ電流密度も積分ノイズ (In) に変換できます。
式 4:
∞
∫0
=
In
PG(|x| > xL; 0, 1)
1.64
10%
1.64
3.29
2.58
1%
2.58
5.15
3.29
0.1%
3.29
6.58
4.50
6.80 × 10-6
4.50
9.00
6.00
10-9
6.00
12.00
2
ノイズ電流密度 (A/√Hz)
=
xL
i n ( f ) df
ここで :
in(f)
重要な両側検定の確率
Crest Factor ( 注 1)
積分ノイズ電流
In =
表 1:
PSD ( f ) ⁄ ( 1Ω )
=
積分ノイズ電圧 (ARMS)
=
標準偏差 (ARMS)
注 1:
解釈
積分 (RMS) ノイズというデータに基づいて正しく
判断を下すには、確率密度関数を求める必要があり
ます。本アプリケーション ノートの例では、ノイズ
はガウス ( 正規 ) 確率密度関数となります。
オペアンプ、およびプリント基板上の抵抗器内部の
主なノイズ源はガウス性です。これらを合計して得
られる全体のノイズもガウス性です。図 2 は、対数
y 軸上に標準のガウス確率密度関数 ( 平均 = 0、
標準
偏差 = 1) を示したものです。
1.97 ×
Peak-to-Peak
Peak
(VPK/VRMS) (VP-P/VRMS)
マイクロチップ社のオペアンプのデータ
シートでは、Eni ( 通常、0.1 Hz から 10 Hz
の間 ) を規定するのに 6.6 VP-P/VRMS を使
用しています。これは、アナログ オシロ
スコープのトレースで観察できるノイズ
の範囲とほぼ同じです。
本アプリケーション ノートにおける積分ノイズの
結果は、周波数からも時間からも独立しています。
これらは、グローバルな意味でノイズを説明する際
にのみ使用できます。2 つの異なる時間で観察され
たノイズどうしの相関は、積分後には失われます。
フィルタ適用後のノイズ
我々が測定したノイズは、物理的なノイズ源内部で
観察される本来の形から必ず変化しています。線形
システムにおいて、ノイズに対するこうした変化を
表す最も容易な方法は、ソースから出力への ( 周波
数領域における ) 伝達関数を用いることです。この
結果得られる出力ノイズのスペクトル形状は、ソー
スのものとは異なります。
0
1.E+00
10
-1
1.E-01
10
-2
1.E-02
10
pG(x; 0, 1)
-3
1.E-03
10
-4
1.E-04
10
1.E-05
10-5
-6
1.E-06
10
伝達関数とノイズ
1.E-07
10-7
-8
1.E-08
10
-9
1.E-09
10
-6
図 2:
-5
-4
-3
-2
-1
0
x
1
2
3
4
5
6
標準のガウス確率密度関数
この曲線上の重要な点と、ランダムなガウス変数が
これらの点の外側にある確率 ( 両側検定 ) を表 1 に
示します。この情報は、RMS 値 ( 電圧または電流 )
をピーク値または P-P 値に変換する際に使用しま
す。表の見出しにある xL は、平均からのシグマ数
と呼ばれることもあります。
参考資料 [3、4、5] でも指摘されているように、線
形操作 ( 伝達関数で表される ) の出力におけるノイ
ズと入力ノイズの間には、伝達関数の二乗の振幅の
関係があります ( 式 5 参照 )。これは、PSD の各微
小周波数帯域の相互間に統計学的な独立性がある
結果と考えられます ( 図 1 参照 )。
式 5:
出力ノイズ
V OUT 2 2
2
e nout = ------------e ni
V IN
ここで :
eni
=
VIN のノイズ電圧密度 (V/√Hz)
enout
=
VOUT のノイズ電圧密度 (V/√Hz)
例 1 は、シンプルな伝達関数を二乗の振幅に変換す
る方法を示したものです。まずラプラス変換 [2] を
行います。
次にフーリエ変換 (s を jω に置き換え ) を
行ってから、最後に二乗の振幅の形 (ω2 の関数 ) に
変換しています。最後の変換は、因数分解形で変形
するのが最善です。
© 2009 Microchip Technology Inc.
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例 1:
しかし物理的な世界では、ブリック ウォール フィ
ルタは理想的とはほど遠い振る舞いをします。ブ
リック ウォール フィルタは、有限個の回路要素で
は実現できません。物理的フィルタで理想的なブ
リック ウォール フィルタを構築しようとすると、
ステップ応答にギブス現象 ( オーバーシュートやリ
ンギングがなかなか減衰しない ) が見られる、ノイ
ズが大きくなる ( 極の Q 値が高いため )、実装が難
しいという 3 つの基本的な問題が発生します。
伝達関数の変換例
ラプラス変換の関数 :
V OUT
1
------------- = ----------------------V IN
1 + s ⁄ ωP
フーリエ変換の関数に置き換え :
V OUT
1
-,
------------- = -------------------------V IN
1 + j ω ⁄ ωP
二乗の振幅に変換 :
V OUT 2
1
------------- = -------------------------V IN
1 + j ω ⁄ ωP
2
1
= --------------------------,
2
1 + ( f ⁄ fP )
s → jω
1
= -------------------------------2
1 + ( ω ⁄ ωP )
ω → 2πf
ここで :
s
=
注:
=
ラプラス周波数 (1/s)
σ + jω
ω
ωP
=
ラジアン表記の角周波数 (rad/s)
=
極 (rad/s) の角周波数
f
=
周波数 (Hz)
fP
=
極の周波数 (Hz)
フィルタの教科書などで「理想的な」ブ
リック ウォール フィルタなどの記述があ
る場合はそのことを念頭に置いて読むよ
うにしてください。
積分ノイズ電圧の積分計算 ( 式 3 および式 4) は、ブ
リック ウォール フィルタを使用する場合が最もシ
ンプルな形になります。式 6 に示すように、この場
合、ブリック ウォール フィルタの周波数の fL と fH
が新しい積分範囲となります。積分電流ノイズにつ
いても同様に扱います。
式 6:
ブリック ウォール フィルタを使用した
積分ノイズ
E nout =
ブリック ウォール フィルタ
∞
∞
伝達関数の中で数学的に最も操作しやすいのが、ブ
リック ウォール フィルタです。ブリック ウォール
フィルタは阻止域の減衰量が無限大 ( ゼロ ゲイン )
で、通過域のゲインは一定 (HM) となります ( 図 3
参照 )。
=
2
∫0 e nout ( f ) df
V
2
OUT
∫0 e ni ( f ) ------------V
2
df
IN
= HM ⋅
fH
2
∫fL e ni ( f ) df
ここで :
|H(j2πf)| (V/V)
HM
0
図 3:
0
fL
fH
f (Hz)
ブリック ウォール フィルタ
ここでは、3 種類のブリック ウォール フィルタを
使用します ( 図 3 参照 )。
• ローパス (fL がゼロの場合 )
- fL = 0 < fH < ∞
• バンドパス ( 図のとおり )
- 0 < fL < fH < ∞
• ハイパス (fH が無限大の場合 )
- 0 < fL < ∞ = fH
ブリック ウォール フィルタは、数学的にノイズを
簡単に計算できるので好都合です。
fL
=
低域カットオフ周波数 (Hz)
fH
=
高域カットオフ周波数 (Hz)
HM
=
通過域のゲイン (V/V)
これらの計算をコンピュータで実行できる一般的
な回路シミュレータおよび数式処理システムの詳
細は、付録 B「コンピュータの利用」を参照してく
ださい。
ホワイト ノイズ
ホワイト ノイズの PSD は、すべての周波数で一定
です。ホワイト ノイズの名称は、すべての可視波
長 ( 周波数 ) が均等に混ざった光が白色であること
に由来しています。これは、現実世界のノイズ現象
を数学的に抽象化したものです。
真のホワイト ノイズの PSD は、無限大の積分ノイ
ズを生成します。しかしすべての回路および物理的
材料には帯域幅の限界があるため、このことが物理
的に問題となることはありません。
ここでは、数学的に最も操作しやすいホワイト ノ
イズから見ていくことにします。その他のスペクト
ル形状は、以降の項で取り上げます。
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ノイズ パワー帯域幅
ホワイト ノイズがブリック ウォール フィルタを通
過した場合 ( 図 3 参照 ) の積分ノイズは、非常にシ
ンプルな計算で求められます。式 6 は、次の式に簡
略化できます。
式 7:
ブリック ウォール フィルタを使用した
積分ホワイト ノイズ
ショット ノイズの電流密度の大きさは、ダイオー
ドの直流電流 (ID) と電子の電荷 (q) によって変化し
ます。これは通常、ホワイト ノイズとしてモデル
化されます ( 式 9)。
式 9:
i nd =
q
ここで :
=
入力ノイズ電圧密度 (V/√Hz)
enout
=
出力ノイズ電圧密度 (V/√Hz)
通常、この式はノイズ パワー帯域幅 (NPBW) と呼
ばれるもので表されます。NPBW とは、ホワイト
ノイズ密度を正しい積分ノイズ値に変換する帯域
幅 ( 平方根記号の中 ) です。ブリック ウォール フィ
ルタの場合は、式 8 を使用できます。
式 8:
2q I D
ここで :
E nout = H M e ni f H – f L
eni
ダイオードのショット ノイズ
=
ID
=
電子の電荷
1.602 × 10-19 (C)
=
ダイオードの電流 (A)
具体的な例を見てみましょう。
例 2:
ダイオードのショット ノイズの計算
次の場合 :
ID = 1 mA
計算 :
NPBW で表した積分ホワイト ノイズ
i nd =
E nout = H M e ni NPBW
2 ( 1.602 × 10
– 19
C ) ( 1 mA )
= 17.9 pA/√Hz
ここで :
NPBW
=
fH –fL,( ブリック ウォール フィルタ
の場合 )
注:
ハイパス フィルタでは、無限大の積分ノイズが生じ
るように見えます。しかし実際の回路では帯域幅
に制限があるので、
fH は有限です (バンドパス応答 )。
注:
NPBW はホワイト ノイズにのみ適用され
ます。他のノイズ スペクトル形状には、よ
り複雑な式、またはコンピュータによるシ
ミュレーションが必要になります。
回路のノイズ源
ここでは、回路のノイズ源となる各種部品と、その
ソースと出力の間の伝達関数を取り上げます。
ダイオードのショット ノイズ
ダイオードとバイポーラ トランジスタはショット
ノイズを発生します。これは、電子がランダムな到
着時間にポテンシャル障壁を横切ることの影響に
よるものです。ダイオードの等価回路モデルを図 4
に示します。
本アプリケーション ノートの計算結果は
すべて小数点以下の桁数を必要以上に多
くとっていますが、実際は小数点以下第 2
位で十分です。桁数を多くしているのは、
読者が実際の計算結果を確認しやすくす
るためです。
抵抗器のサーマル ノイズ
抵抗器内部のサーマル ノイズは通常、( 関係する周
波数と温度の範囲で ) ホワイト ノイズとしてモデル
化されます。このノイズは直流電流には関係なく、
抵抗器の温度によって変化します。この現象は、導
体や CMOS トランジスタのチャネルなど、抵抗性
のあるすべての物質に見られます。
図 5 に、抵抗器のサーマル ノイズ電圧および電流
密度のモデルを示します。回路解析をしやすくする
ため、ソースには極性を示しています。
enr
R
inr
R
ID
D
図 4:
ind
図 5:
物理に基づいた抵抗器のノイズ モデル
物理に基づいたダイオードのノイズ
モデル
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DS01228A_JP - ページ 5
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等価ノイズ電圧および電流スペクトル密度は次の
ようになります (273.15 K = 0°C であることに注意し
てください )。
式 10: 抵抗器のサーマル ノイズ密度
e nr =
4kT A R
i nr =
4kT A ⁄ R
VDD
eni
VP
VM
VN
VI
ibn
AOL
VOUT
ibi
ここで :
k
=
=
ボルツマン定数
1.381 × 10-23 (J/K)
TA
=
周囲温度 (K)
R
=
抵抗値 (Ω)
図 6:
4kTA は抵抗器の内部パワーを表します。別の抵抗器
が利用できる最大パワーは、kTA です ( 抵抗値が等
しい場合 )。物理学では両側のノイズ スペクトルが
よく使われるので、多くの場合、利用可能な最大パ
ワーは kTA/2 と表されます。
ここで、例として 1 kΩ の抵抗器を使用します。
例 3:
サーマル ノイズ密度の計算
次の場合 :
R = 1 kΩ
TA = 25°C = 298.15 K
ノイズ電圧密度の計算 :
e nr =
4 ( 1.381 × 10
– 23
J/K ) ( 298.15 K )
= 4.06 nV/√Hz
4 ( 1.381 × 10
– 23
電圧帰還 (VFB) 型オペアンプでは、2 つのノイズ電
流源は同じ大きさとなります。この大きさはマイク
ロチップ社のオペアンプのデータシートでは記号
ini で表記されており、単位は fA/√Hz です (f はフェ
ムトで、10-15 を表します )。
ここでは、これらスペクトル密度のホワイト ノイ
ズの部分について論じます。1/f ノイズについては
後述します。
文献によっては、アンプのノイズ モデルに 1 つし
かノイズ電流源が記載されていないことがありま
す。このような場合、もう 1 つのノイズ電流のパ
ワーがノイズ電圧の大きさの中に組み込まれてい
ます。
J/K ) ⁄ ( 298.15 K )
= 4.06 pA/√Hz
オペアンプのノイズ
オペアンプのノイズは 3 つのノイズ源でモデル化さ
れます。1 つは入力ノイズ電圧密度 (eni) に対するも
ので、後の 2 つは入力ノイズ電流密度 (ibn と ibi) に
対するものです。これら 3 つのノイズ源はすべて物
理的に独立しているので、統計的に無相関です。図
6 に、このモデルを示します。これは、[1] で紹介さ
れている DC 誤差モデルとほぼ同じものです。
オペアンプには、物理的に独立した 2 つの
ノイズ電流源があることに注意してくだ
さい。
電流帰還 (CFB) 型オペアンプでは、2 つの入力バイ
アス電流 (IBN と IBI) の大きさが異なるため、2 つの
ノイズ電流源 (ibn と ibi) は大きさが異なります。こ
れらは、物理的に独立した統計的に無相関な過程に
よって生成されます。通常、CFB オペアンプは、
100 MHz 以上などの広帯域幅のアプリケーション
で使用されます。
マイクロチップ社の CMOS 入力オペアンプのノイ
ズ電流密度は、入力ピンの ESD ダイオード漏れ電
流 ( 仕様には入力バイアス電流 IB として記載 ) に基
づきます。表 2 に、MCP6241 オペアンプの各温度
時のホワイト ノイズ電流値を示します。
表 2:
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物理に基づいたオペアンプのノイズ
モデル
ノイズ電圧源はオペアンプのもう一方の入力に置
くこともできます ( 負のピンを VI に接続し、正の
ピンを VM に接続する )。この接続でも、同じ出力
電圧 (VOUT) が得られます。
注:
ノイズ電流密度の計算 :
i nr =
VSS
MCP6241 (CMOS 入力 ) のノイズ電流
密度
TA
(°C)
IB
(pA)
ini
(fA/√Hz)
25
85
125
1
20
1100
0.57
2.5
19
© 2009 Microchip Technology Inc.
AN1228
表 3 に、MCP616 オペアンプの各温度時のホワイト
入力ノイズ電流密度を示します。このオペアンプは
バイポーラ (PNP) 入力です。ベース電流は入力バイ
アス電流で、これは温度が上昇すると減少します。
表 3:
MCP616 ( バイポーラ入力 ) のノイズ
電流密度
TA
(°C)
IB
(nA)
ini
(fA/√Hz)
-40
-21
82
25
-15
69
85
-12
62
ノイズ解析プロセス
ここでは、通常のノイズ設計における解析プロセス
を説明します。ここでは、プロセスを分かりやすく
するため、非常にシンプルなノイズ設計問題を使用
します。
シンプルな例
図 8 に、オペアンプとローパス ブリック ウォール
フィルタ (fL = 0) を使用した回路を示します。この
フィルタの帯域幅 (fH) は 10 kHz で、ゲイン (HM) は
1 V/V です。オペアンプの入力ノイズ電圧密度 (eni)
は 100 nV/√Hz で、GB 積は fH よりはるかに大きく
なります。
一般に、入力ノイズ電圧密度 (eni) は温度が変化して
もそれほど大きく変化しません。
注:
ノイズ電流密度 (ini) は温度 (TA) によって
大きく変化します。
注:
ほとんどの場合、IB と TA の関係および
ショット ノイズの式を使用して TA に対す
る ini を計算できます。唯一の例外は、入
力バイアス電流キャンセル回路を内蔵し
たオペアンプです。
伝達関数
回路内の各ノイズ源から出力までの伝達関数を求
める必要があります。これは、SPICE シミュレー
ション ( 付録 B「コンピュータの利用」参照 ) また
は手計算による解析で求められます。本アプリケー
ション ノートでは、内容の理解を深め、設計に役
立つ近似を得るために、手計算のアプローチを重視
します。
手計算のアプローチで最も簡単なのは、ラプラス周
波数変数 (s) を用いた回路解析です。図 7 に、抵抗
器、インダクタ、コンデンサとそれぞれのインピー
ダンス (s を使用 ) を示します。
R
図 7:
sL
1
sC
一般的な受動素子のインピーダンス
モデル
U1
Brick Wall
Low-pass Filter
VIN
図 8:
VOUT
オペアンプ回路
図 9 に、オペアンプのノイズ電圧密度 (eni) と出力ノ
イズ電圧密度 (enout) の両方を示します。enout は、eni
とローパス ブリック ウォール フィルタの通過域ゲ
イン (HM) を乗算したものであることに着目してく
ださい。
Noise Voltage Density (nV/√Hz)
100
enout
0
図 9:
0
eni
f (Hz)
10k
ノイズ電圧密度
この回路では、ノイズ電流密度 ibn および ibi はとも
に電圧源とオペアンプ出力に流れ込み、ゼロ イン
ピーダンスとなるので無視できます。
これで、出力における積分ノイズ (Enout) を計算に
よって求められます。計算結果を 3 種類の単位
(RMS、ピーク、P-P) で表すと次のようになります。
例 4:
積分ノイズの計算
E nout =
=
∞
2
∫0 e nout ( f ) df
10 kHz
∫0
2
( 100 nV/ Hz ) df
= ( 100 nV/ Hz ) 10 kHz
= 10 µVRMS = 33 µVPK= 66 µVP-P
注:
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本アプリケーション ノートでは、クレス
ト ファクタ 3.3 VPK/VRMS ( または 6.6 VPP/VRMS) を使用します。
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AN1228
Enout(t) (µV)
図 10 は、数値シミュレーションによって求めた出
力ノイズの時間変化を示したものです。Enout は、こ
のノイズの変動を表します。同じデータをヒストグ
ラムで表したものが図 11 です。図 11 内の曲線は、
理想的なガウス確率密度関数 ( 平均と変動が同デー
タのそれらと同じ ) を表しています。
50
40
30
20
10
0
-10
-20
-30
-40
-50
フィルタ適用後のノイズ
ここでは、オペアンプの出力にフィルタを使用した
回路を説明します。この説明では、実数極を持つ
フィルタを例に挙げながら理解を深め、設計に役立
つ式を求めていきます。
回路内の受動素子がノイズに与える影響は、ここで
は考慮しません ( 後の項で説明します )。フィルタに
よって生成されるノイズも、ここでは無視します。
fSAM = 10 kSPS
実数極を 1 つ持つローパス フィルタ
0
10
20
30
40
50 60
t (ms)
70
80
90 100
図 12 は、オペアンプの出力に実数極を 1 つ (fP) 持
つローパス フィルタを接続した回路図です。図 8 同
様、ibn と ibi のソースはゼロ インピーダンスとなる
ため、ノイズ電流密度については考慮する必要があ
りません。ここでは、fP はオペアンプの帯域幅より
はるかに低いため、オペアンプの帯域幅は無視でき
るものと仮定します。
図 10: 出力ノイズの時間波形
Percentage of Occurrences
9%
8%
U1
Real Pole
Low-pass Filter
VIN
1024 Samples
VOUT
7%
6%
Enout
Gaussian
5%
図 12: ローパス フィルタを使用したオペアンプ
回路
4%
出力積分ノイズを計算するためには、フィルタの伝
達関数が必要です。この伝達関数は二乗の振幅の形
とする必要があります ( 結果の導出方法の詳細は
例 1 を参照 )。
3%
2%
1%
40
30
20
10
0
-10
-20
-30
-40
0%
Enout (µV)
式 11: ローパス伝達関数
図 11: 出力ノイズのヒストグラム
V OUT
1
------------- = -------------------------V IN
1 + j ω ⁄ ωP
プロセスのまとめ
V OUT
------------V IN
ここまでで紹介した基本的なプロセスを以下にま
とめます。
1
= --------------------------2
1 + ( f ⁄ fP )
図 13 は、この伝達関数の振幅を dB で表したもの
です。
0
-5
| H(j2πf) | (dB)
• ノイズとフィルタに関する情報を収集する
• ノイズ源におけるノイズを出力におけるノイズ
に変換する
• 出力ノイズ成分を積分して 1 つにまとめる
• 出力信号への影響を評価する
2
-10
-15
-20
-25
-30
-35
-40
0.01
0.1
1
f / fP
10
100
図 13: フィルタの振幅特性
DS01228A_JP - ページ 8
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AN1228
オペアンプの入力ノイズ電圧密度(eni)がホワイトで
あると仮定すると、次の積分ノイズが得られます。
式 12: 積分ノイズの導出
E nout =
∞
∫0
e
= e ni
2
nout ( f )
df =
∞
∫0
2
e ni df
--------------------2 2
1 + f ⁄ fP
∞
f P [ atan ( f ⁄ f P ) ] 0
実数極を 2 つ持つローパス フィルタ
図 14 に示したローパス フィルタには、実数極が 2
つあります (fP1 と fP2)。図 8 同様、ibn と ibi のソー
スはゼロ インピーダンスとなるため、ノイズ電流密
度については考慮する必要がありません。ここで
は、fP1 と fP2 はオペアンプの帯域幅よりはるかに低
いため、オペアンプの帯域幅は無視できるものと仮
定します。
= e ni ( π ⁄ 2 ) ⋅ f P
よって、このフィルタのノイズ パワー帯域幅
(NPBW) は次のとおりとなります ( 式 8 参照 )。
式 13: ノイズ パワー帯域幅
NPBW = ( π ⁄ 2 ) ⋅ f P
NPBW を小さくすると積分出力ノイズも必ず小さ
くなりますが、あまり小さくしすぎると信号応答が
低下します。フィルタの -3 dB 帯域幅 (BW) を、目
的の信号のBWと少なくとも同じだけ大きくとる必
要があります (fP はこのフィルタの BW)。
U1
VIN
このフィルタの伝達関数と、振幅を二乗した伝達関
数 (ω2 の関数 ) を因数分解形で表すと、次のとおり
となります。
式 15: ローパス伝達関数
V OUT
1
1
------------- = ------------------------------ ⋅ -----------------------------1 + j ω ⁄ ω P1 1 + j ω ⁄ ω P2
V IN
V OUT 2
1
1
------------- = -----------------------------2- ⋅ -----------------------------2V IN
1 + ( f ⁄ f P1 ) 1 + ( f ⁄ fP2 )
ここで :
ここで :
BW = ローパス フィルタの -3 dB 帯域幅 (Hz)
tR = 10% ~ 90% の立ち上がり時間 (s)
ここで、帯域幅を適度に広く設定した数値例を計算
してみましょう。ノイズはフィルタの帯域幅によっ
て制限されます。
fP = BW = 10 kHz
Gain = 1 V/V
オペアンプの仕様 :
=
1 番目の極の周波数 (Hz)
fP2
=
2 番目の極の周波数 (Hz)
0
-20
-30
-40
-50
-60
eni = 100 nV/√Hz
-70
BW = 1 MHz
-80
0.01
フィルタの立ち上がり時間 :
t R ≈ 35 µs
fP2/fP1 = 2
-10
積分ノイズの計算
フィルタの仕様 :
fP1
図 15 は、fP2 が fP1 の 2 倍のときの伝達関数の振幅
を dB で表したものです。
| H(j2πf) | (dB)
例 5:
VOUT
図 14: ローパス フィルタを使用したオペアンプ
回路
ローパス フィルタでは、ステップ応答の最大許容
立ち上がり時間に基づいてBWを選択することもで
きます [6] ( この方法は合理的なローパス フィルタ
全般に使用できます )。
式 14: 立ち上がり時間と帯域幅
t R ≈ 0.35 ⁄ BW
Two Real Pole
Low-pass Filter
0.1
1
f / fP1
10
100
図 15: フィルタの振幅特性
積分ノイズの計算 :
fP << オペアンプの帯域幅
NPBW = ( π ⁄ 2 ) ⋅ ( 10 kHz ) = 15.8 kHz
E nout = ( 100 nV/ Hz ) ⋅ ( 15.8 kHz )
= 12.6 µVRMS = 41.4 µVPK = 82.9 µVP-P
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NPBW は、前述したのと同じ手順で計算できます。
π
1 - + -----1 -⎞
NPBW = ⎛ ---⎞ ⁄ ⎛ -----⎝ ⎠ ⎝
⎠
2
f P1
f P2
先ほどと同じように、NPBW と BW はよく似てお
り、BW は立ち上がり時間とトレードオフの関係に
あります ( 式 14 参照 )。
式 17: BW
f P1
1 f P1 2
BW = ----------------------------------- , X = 1 + --- ⋅ ⎛⎝ -------⎞⎠
2 f P2
2
X+ 1+X
ここで :
fP1 = FP2 = 15.5 kHz
フィルタの帯域幅と立ち上がり時間 :
BW = 9.98 kHz
t R ≈ 35 µ s
積分ノイズの計算 :
fP2 << オペアンプの帯域幅
NPBW = 12.2 kHz
E nout = ( 100 nV/ Hz ) ⋅ ( 12.2 kHz )
= 11.0 µVRMS = 36.4 µVPK = 72.9 µVP-P
実数極を 1 つ持つハイパス フィルタ
≤
fP2
ここで、オペアンプの帯域幅を無視できる場合の数
値例を計算してみましょう。
例 6:
積分ノイズの計算
フィルタの仕様の変更 :
式 16: NPBW
fP1
例 7:
積分ノイズの計算
フィルタの仕様 :
fP1 = 13.4 kHz
図 16 は、オペアンプの出力に実数極を 1 つ (fP) 持
つハイパス フィルタを接続した回路図です。図 8 同
様、ibn と ibi のソースはゼロ インピーダンスとなる
ため、ノイズ電流密度については考慮する必要があ
りません。実際の回路では、fP よりはるかに高い周
波数 (fH) のローパスフィルタを使用して、積分ノイ
ズが無限大になるのを防ぐ必要があります。他に何
もなくても、オペアンプの BW を使用して NPBW
を制限できます。
fP2 = 26.8 kHz
U1
Gain = 1 V/V
オペアンプの仕様 :
eni = 100 nV/√Hz
Real Pole
High-pass Filter
VIN
VOUT
BW = 1 MHz
フィルタの帯域幅と立ち上がり時間 :
BW = 9.98 kHz
t R ≈ 35 µs
積分ノイズの計算 :
fP2 << オペアンプの帯域幅
NPBW = 14.0 kHz
図 16: ハイパス フィルタを使用したオペアンプ
回路
このフィルタの伝達関数と、振幅を二乗した伝達関
数 (ω2 の関数 ) を因数分解形で表すと、次のとおり
となります。
式 18: ハイパス伝達関数
jω ⁄ ω P
V OUT
------------- = -------------------------- , ω < ω H
1 + jω ⁄ ω P
V IN
= 0,
ω ≥ ωH
E nout = ( 100 nV/ Hz ) ⋅ ( 14.0 kHz )
= 11.8 µVRMS = 39.0 µVPK = 78.1 µVP-P
V OUT
------------V IN
2 つの極がどちらも 15.5 kHz として、同じ例をもう
一度計算してみましょう。
2
2
( f ⁄ fP )
= --------------------------2- ,f < f H
1 + ( f ⁄ fP )
= 0,
f ≥ fH
ここで :
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fP
=
極の周波数 (Hz)
fH
=
ローパス NPBW (Hz)
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図 17 は、この伝達関数の振幅を dB で表したもので
す (fH は表示していません )。
0
-5
| H(j2πf) | (dB)
-10
-15
-20
-25
実数極を 2 つ持つバンドパス フィルタ
図 18 は、実数極を 2 つ ( ハイパス極 fP1 とローパス
極 fP2) 持つバンドパス フィルタを使用したオペア
ンプ回路です。図 8 同様、ibn と ibi のソースはゼロ
インピーダンスとなるため、ノイズ電流密度につい
ては考慮する必要がありません。ここでは、オペア
ンプの帯域幅は fP1 および fP2 よりはるかに高いも
のと仮定して、オペアンプの帯域幅を無視すること
にします。
-30
U1
-35
-40
0.01
0.1
1
f / fP
10
100
図 17: フィルタの振幅特性
NPBW は、前述したのと同じ手順で計算できます
(fH が積分ノイズの式において積分の上限となる )。
式 19: NPBW
NPBW = f H – ( π ⁄ 2 ) ⋅ f P
ここで :
fP
<<
fH
積分ノイズの計算
このフィルタの伝達関数と、振幅を二乗した伝達関
数 (ω2 の関数 ) を因数分解形で表すと、次のとおり
となります。
式 20: バンドパス伝達関数
j ω ⁄ ω P1
V OUT
1
------------- = ------------------------------ ⋅ -----------------------------1 + j ω ⁄ ω P1 1 + j ω ⁄ ω P2
V IN
fH = Op amp’s NPBW
Gain = 1 V/V
-5
NPBW = ( 1.57 MHz ) – ( 15.8 kHz ) = 1.55 MHz
E nout = ( 100 nV/ Hz ) ⋅ ( 1.55 MHz )
= 124 µVRMS = 411 µVPK = 822 µVP-P
注:
fH と fP が近い場合を除き、ハイパス フィ
ルタの NPBW は積分ノイズにはほとんど
影響を与えません ( ただしこの場合、ハイ
パスではなくバンドパス フィルタとなり
ます )。
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| H(j2πf) | (dB)
eni = 100 NV/√HZ
fP << オペアンプの帯域幅
fP1
=
ハイパス極の周波数 (Hz)
fP2
=
ローパス極の周波数 (Hz)
図 19 は、この伝達関数の振幅を dB で表したもので
す (fP2 = 100 fP1)。
0
積分ノイズの計算 :
( f ⁄ f P1 )
1
= -----------------------------2- ⋅ -----------------------------21 + ( f ⁄ f P1 ) 1 + ( f ⁄ f P2 )
ここで :
オペアンプの仕様 :
BW = 1 MHz
NPBW ≈ ( π ⁄ 2 ) ⋅ BW = 1.57 MHz
2
2
V OUT
------------V IN
フィルタの仕様 :
fP = 10 kHz
VOUT
図 18: バンドパス フィルタを使用したオペ
アンプ回路
ここで、オペアンプの帯域幅をフィルタの極よりも
はるかに高く設定して ( 実際によくあるケースです
が )、数値例を計算してみましょう。
例 8:
Two Real Pole
Band-pass Filter
VIN
fP2/fP1 = 100
-10
-15
-20
-25
-30
-35
-40
10m
0.01
100m
0.1
1
1
10
10
f / fP1
100
100
1k
1000
10k
10000
図 19: フィルタの振幅特性
NPBW の導出には、数式処理システムを使用すると
便利です。
式 21: NPBW
1
NPBW = ( π ⁄ 2 ) ⋅ f P2 ⋅ ---------------------------1 + f P1 ⁄ f P2
DS01228A_JP - ページ 11
AN1228
ここで、もう 1 つの数値例を計算してみましょう。
例 9:
選択性の大きいフィルタ
このほか、n > 1 のときに遷移域の急峻なフィルタ
と し て チ ェ ビ シ ェ フ、逆 チ ェ ビ シ ェ フ、エ リ プ
ティック フィルタなどがあります。これらのフィ
ルタは遷移域 ( 通過域と阻止域の間 ) が狭いため、
NPBW と BW の比は 1 に近くなります。遷移域が
狭いため、出力の積分ノイズも減少します。ただし
ステップ応答にはリンギングが多く、減衰も遅くな
ります。
積分ノイズの計算
フィルタの仕様 :
fP1 = 100 Hz
fP2 = 10 kHz
Gain = 1 V/V
オペアンプの仕様 :
eni = 100 nV/√Hz
ここでも、NPBW は -3 dB 帯域幅の近似として求め
られます。より正確な結果は、シミュレーションに
よって得られます ( 付録 B「コンピュータの利用」
を参照 )。
BW = 1 MHz
積分ノイズの計算 :
fP2 << オペアンプの帯域幅
フィルタ内部のノイズ
NPBW = ( 15.7 kHz ) ⁄ 1.01 = 15.5 kHz
E nout = ( 100 nV/ Hz ) ⋅ ( 15.5 kHz )
= 12.5 µVRMS = 41.2 µVPK = 82.3 µVP-P
その他のフィルタに関するコメント
ここでは、他のフィルタが出力積分ノイズに与える
影響、フィルタ次数がn = 1より大きい場合に NPBW
を求める非常にシンプルな近似およびフィルタ内
部で発生するノイズについて説明します。
後で詳しく紹介しますが ( 図 25 参照 )、アクティブ
フィルタは最初に予想したよりもはるかに多くの
ノイズを発生することがあります。フィルタ内部の
オペアンプによって、フィルタの出力にフィルタよ
り広い帯域幅のノイズ電圧密度が生じます。この帯
域幅は、オペアンプの帯域幅と同じ広さとなること
もあります。抵抗器とオペアンプによるノイズの影
響はフィルタ通過域の端でピークとなる ( ノイズが
大きくなる ) 傾向があり、これによって出力積分ノ
イズも大きくなります。
いくつかのシンプルなローパス フィルタ
表 4 に、いくつかのローパス フィルタ ( 最大 5 次ま
で ) の NPBW と BW の比を示します。
表 4:
いくつかのローパス フィルタの NPBW
Low-pass
Filter Type
NPBW / BW
n=1 n=2 n=3 n=4 n=5
Identical Real Poles
1.571
1.220
1.155
1.128
1.114
Bessel
1.571
1.153
1.071
1.046
1.038
Butterworth
1.571
1.111
1.047
1.026
1.017
注:
ごく大まかに言って、ほとんどすべての
フィルタで NPBW は -3 dB の帯域幅に相
当します ( 主な例外は n = 1 のとき )。
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複数のノイズ源
R-C ローパス フィルタ
ここでは、複数のノイズ源を 1 つの出力積分ノイズ
結果にまとめる方法として、2 種類のアプローチを
紹介します。この知識を、シンプルな R-C ローパス
フィルタおよび非反転ゲイン回路に応用します。
図 21 は、実数極を 1 つ (fP) 持つ R-C ローパス フィ
ルタを使用した回路です。図 8 同様、ibn と ibi のソー
スはゼロ インピーダンスとなるため、ノイズ電流
密度については考慮する必要がありません。ここで
は、fP はオペアンプの帯域幅よりはるかに低いた
め、オペアンプの帯域幅は無視できるものと仮定し
ます。
ノイズ出力の合成
ノイズ結果を出力で合成する際は、次の統計的独立
性を利用します。
• 全周波数範囲における各微小帯域の PSD ノイズ
• 物理的に独立したノイズ源
これらの独立性により、相関について考える必要が
ないため、計算は簡単です。
出力ノイズ密度を 1 つずつ積分し、次に二乗和のア
プローチで結果を 1 つにまとめられます ( 式 1 参照 )。
または、最初に二乗和のアプローチですべてのノイ
ズ密度を足してから、その結果のノイズ密度を積分
することもできます。
enr1
R1
VOUT
VIN
C1
図 21: R-C ローパス フィルタを使用した回路
この R-C ローパス フィルタを理解するために、最
初にノイズ密度の積分から始めます。この回路は図
12 と似ていますが、R1 のサーマル ノイズを追加し
ています。
このフィルタの伝達関数と、振幅を二乗した伝達関
数 (ω2 の関数 ) を因数分解形で表すと、式 22 のとお
りとなります ( 図 13 は、伝達関数の振幅を dB で表
したものです )。
eno12, … , enok2
Integrate Noise Densities
(over frequency)
U1
Sum of Squares
(at each frequency)
Eno12, … , Enok2
eno2
Sum of Squares
Integrate Noise Density
(over frequency)
Eno2
図 20: 出力ノイズ成分を 1 つにまとめる方法
どちらのアプローチにも長所があります。最初に積
分を行うと、どのノイズ源が支配的であるかを判断
できます。手計算ではこちらの方が便利です。最初
に出力ノイズ密度を求める方法は、設計時の周波数
シェーピング要素の調整に便利です。コンピュータ
シミュレーションではこちらの方が簡単です。
式 22: R-C ローパス フィルタの伝達関数
V OUT
1 ⁄ ( sC 1 )
1
1
------------- = --------------------------------- = ------------------------- → --------------------------1 + sR 1 C 1
1 + j ω ⁄ ωP
V IN
R 1 + 1 ⁄ ( sC1 )
V OUT 2
V OUT
= ------------------------V IN
e nr1
2
1
= --------------------------2
1 + ( f ⁄ fP )
ここで :
fP
ωP
=
=
R-C フィルタの極の周波数 (Hz)
1/ (2πR1C1)
=
2πfP
NPBW は、前述したのと同じ手順で計算できます。
式 14 に示した NPBW ( または BW) と tR のトレード
オフは、このフィルタにも当てはまります。
式 23: NPBW
NPBW = ( π ⁄ 2 ) ⋅ f P
次の項 (「R-C ローパス フィルタ」) では、図 20 の
左側のアプローチを、その次の項 (「非反転ゲイン回
路」) では、図 20 の右側のアプローチを説明します。
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AN1228
積分ノイズは次のようになります。
非反転ゲイン回路
式 24: 積分ノイズ
図 22 は、非反転ゲイン回路を完全にモデル化した
ものです。R1 と R3 は直列のノイズ電圧密度ソース
を使用していますが、これは、その方が VOUT まで
の伝達関数がシンプルになるためです。R2 はシャ
ント ノイズ電流密度ソースを使用しています。こ
れは、VOUT までの伝達関数を ibi と同じにでき、計
算が少なくてすむためです。
E noU1 = e ni ⋅ NPBW
E noR1 = e nr1 ⋅ NPBW
=
4kT A R 1 ⋅ ( π ⁄ 2 ) ⁄ ( 2 π R 1 C 1 )
=
kT A ⁄ C 1
2
E nout =
2
E noU1 + E noRC
VIN
ここで :
EnoU1
=
U1 の出力の積分ノイズ (VRMS)
EnoR1
=
R1 の出力の積分ノイズ (VRMS)
Enout
=
出力の積分ノイズの合計 (VRMS)
EnoR1 の最後の式 (sqrt(kTA/C1)) は、一般に ( 平方根
記号の中の PSD を指して )「kT/C ノイズ」と呼ばれ
ます。この結果は、今回のケース (R-C ローパス フィ
ルタの出力の積分サーマル ノイズ ) にしか当てはま
りません。
注:
この式において、R1 によって発生するの
は C1 ではなくサーマル ノイズであること
に注意してください。
ここで、オペアンプとフィルタの抵抗器の両方がノ
イズ源となっている場合の数値例を計算してみま
しょう。
例 10: 積分ノイズの計算
周囲温度 :
TA = 25°C = 298.15 K
フィルタの仕様 :
R1 = 10 kΩ
C1 = 1.5 nF
Gain = 1 V/V
R1
R2
= 1.66 µVRMS
E nout = 13.0 µVRMS = 43.0 µVPK = 85.9 µVP-P
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R3
enr3
ここでは、最初にノイズ密度を足し合わせて出力ノ
イズ密度 (enout) を求めます。今回のケースでは回路
に受動素子がないので、enout を積分して Enout を求
めるのは手計算で簡単に行えます。
まず、各ノイズ源から VOUT までのすべての伝達関
数を用意します ( 参考資料 [1] を参照 )。ここでは、
ゲインは一定と仮定します。周波数シェーピングは
後で取り上げます。
式 25: 伝達関数
V OUT
------------V IN
V OUT
------------e nr3
V OUT
------------i bn
V OUT
------------i bi
V OUT
V OUT
= ------------= ------------= GN
e nr1
e ni
= 1
= –R1 GN
V OUT
= ------------= R3
i nr2
ここで :
GN
=
ノイズ ゲイン (V/V)
= 1 + R3 ⁄ R2
NPBW = ( π ⁄ 2 ) ⋅ ( 10.6 kHz ) = 16.7 kHz
E noRC = ( 12.8 nV/ Hz ) ⋅ ( 16.7 kHz )
ibi
一定ゲインでの解析
積分ノイズの計算 :
fP << オペアンプの帯域幅
e nr1 = 12.8 nV/ Hz
VOUT
図 22: 複数のノイズ源を持つ非反転ゲイン
アンプ
BW = 1 MHz
= 12.9 µVRMS
U1
inr2
eni = 100 nV/√Hz
E noU1 = ( 100 nV/ Hz ) ⋅ ( 16.7 kHz )
eni
ibn
オペアンプの仕様 :
フィルタの極、帯域幅、立ち上がり時間 :
fP = BW = 10.6 kHz
t R ≈ 33 µ s
enr1
オペアンプが閉ループ状態で、他の ( 外部 ) エネル
ギー源がゼロのとき、ノイズ ゲイン (GN) は非反転
入力から VOUT までとなる点に注意してください。
注:
ノイズ ゲインの概念は、オペアンプの動
作を理解する上できわめて重要です。こ
れにより、オペアンプの帯域幅および安
定性の解析が容易になります。
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振幅を二乗した伝達関数は、単に式 25 の定数項を
二乗したものです。次に、これらのノイズ密度を 1
つの式にまとめて ( 二乗和のアプローチにより ) 出
力ノイズ密度を求めます。
式 26: ノイズ密度の合成
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
e nout = G N ( e nr1 + e ni + i bn R 1 ) + e nr3 + ( i bi + i nr2 )R 3
2
2
2
2
= G N ( 4kT A R 1 + e ni + i bn R 1 ) + 4kT A R 3
2
2
+ ( i bi + 4kT A ⁄ R 2 )R 3
Enout を求めるだけならこの式で十分ですが、入力
換算形に変換すると、更に設計に役立つ情報が得ら
れます。両辺を GN2 で割り、GN を 1 + R3/R2 で置き
換え、簡単にまとめると次式となります。
式 27: オペアンプのノイズの式
2
e nout
⁄
2
GN
=
2
e ni
+
2 2
i bn R 1
+
2
2
i bi ( R 2 ||R 3 )
+ 4kT A ( R 1 + ( R 2 ||R 3 ) )
これを見ると、出力ノイズ密度は入力から見た抵抗
値 (R1 および (R2||R3)) と非常にシンプルな関係にあ
ることが分かります。
回路内に受動素子がある場合は、各ノイズ源の周波
数の形状が異なるため、より詳細な解析が必要とな
ります。
次の例では、すべてのノイズ源をほぼ同じ大きさに
しています。
例 11:
積分ノイズの計算
周囲温度 :
TA = 25°C = 298.15 K
回路の仕様 :
R1 = 100 kΩ
R2 = R3 = 200 kΩ
オペアンプの仕様 :
eni = 100 nV/√Hz
ini = 1 pA/√Hz
GBWP = 100 kHz
事前計算 :
GN = 2.00 V/V
(R2||R3) = 100 kΩ
入力ノイズ密度 :
2
e ni = ( 100 nV/ Hz )
2
注:
式 27 は反転アンプ ( すなわち R2 を VIN で
駆動し、R1 を接地 ) にも当てはまります。
帯域幅を制限した場合の解析
有限の出力積分ノイズを得るには、NPBW を制限す
るフィルタが必要です。このフィルタをオペアンプ
で実装するには、回路に受動素子 ( コンデンサなど )
を追加するか、またはオペアンプの後段にフィルタ
を使用します。
NPBW は、オペアンプの BW で設定できます。手
計算の場合、応答は 1 つの実数極を使って近似で求
められます。VFB オペアンプのデータシートに記載
されている GB 積 (GBWP) の仕様値によって、次の
式が得られます。
2
2
i bn R 1 = ( 100 nV/ Hz )
2
2
2
i bi ( R 2 ||R 3 ) = ( 100 nV/ Hz )
2
4kT A ( R 1 + ( R 2 ||R 3 ) ) = ( 57.4 nV/ Hz )
2
出力ノイズ密度 :
2
2
e nout ⁄ G N = ( 182 nV/ Hz )
2
e nout = 365 nV/ Hz
出力積分ノイズ :
GBWP = 100 kHz
BW ≈ 50 kHz
NPBW ≈ 78.6 kHz
E nout ≈ ( 365 nV/ Hz ) ⋅ ( 78.6 kHz )
≈ 102 µVRMS = 338 µVPK = 675 µVP-P
式 28: オペアンプの帯域幅によるNPBWの設定
BW ≈ GBWP ⁄ G N
NPBW ≈ ( π ⁄ 2 ) ⋅ BW
ここで :
GBWP
=
利得帯域幅積 (Hz)
BW
=
帯域幅 (Hz)
NPBW
=
ノイズ パワー帯域幅 (Hz)
注:
CFB オペアンプのデータシートには
GBWP ではなく BW の仕様値が記載され
ています。
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シミュレーション例
ここでは、2 種類のフィルタ設計を取り上げます。
SPICE を使用したシミュレーションによって、簡単
に数値結果を得ることにします。最初の設計例で
は、ノイズ性能に改善の余地があるオペアンプ回路
を示し、その問題点を明らかにします。2 つ目の設
計例では、簡単な変更を加えることによってノイズ
性能の大幅な改善を試みます。
2 次フィルタ
図 23 は、帯域幅 1 kHz の 2 次バターワース フィル
タです。このフィルタはオペアンプに MCP616 を使
用しています。ここでは、1/f ノイズは存在しない
DS01228A_JP - ページ 15
AN1228
ものと仮定します。抵抗器 R3 は、オペアンプ入力
から見た抵抗値のバランスをとるためのもので、入
力バイアス電流に起因する出力オフセットを最小
限に抑える働きをしています [1]。トポロジはサレ
ンキー型です。
3 次フィルタ
この図 23 のフィルタには、明らかにいくつかの改
善が必要です。抵抗値を小さくすると、サーマル ノ
イズ密度は小さくなります。出力にフィルタを追加
すると、出力の積分ノイズは大幅に抑えられます。
C1
4.7n
R1
R2
U1
38.3k 64.9k MCP616
VIN
1 kHz 付近でフィルタ曲線が膨らんでいるのは、
フィルタの帰還動作によるものです。eni ( オペアン
プの入力ノイズ電圧密度 ) によるノイズよりも、R3
およびR2 によるノイズの方が大きくなっています。
VOUT
C2
2.2n
R3
102k
これらの改良を加えた回路を図 26 に示します。抵
抗値は約 1/4 になっています。これ以上抵抗値を小
さくすると出力負荷の問題が発生するので、この程
度でとどめています。追加したフィルタ段 (R4 と C4)
の効果を最大限に得るために、フィルタの設計を 3
次バターワースに変更しています。
C1
27n
図 23: バターワース ローパス フィルタ
R4
15.8k
VOUT
C4
10n
C2
5.6n
R3
28.7k
図 26:
1k
1.E+3
f (Hz)
10k
1.E+4
100k
1.E+5
図 24: フィルタの伝達関数
図 25 に、出力ノイズ電圧密度を示します。ラベル
は、各出力密度のノイズ源を表しています。enr1、
enr2、enr3 は R1、R2、R3 のサーマル ノイズを表して
おり、eni、ibn、ibi はオペアンプのノイズ源を表し
ています。すべてを合計した出力ノイズ密度は、
「total」と表記しています。
1000
eno (nV/¥Hz)
R2
U1
20.0k MCP616
VIN
10
0
-10
-20
-30
-40
-50
-60
-70
-80
-90
-100
-110
-120
100
1.E+2
total
enr3
eni
ibi
100
10
1
10
1.E+1
R1
8.35k
enr1
ibn
100
1.E+2
1k
10k
1.E+3
1.E+4
f (Hz)
図 25: 出力ノイズ密度
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enr2
100k
1.E+5
1M
1.E+6
改良後のバターワース ローパス フィルタ
R4 と C4 の後段にバッファを配置すると NPBW が
広くなり、ノイズへの影響が非常に大きくなってし
まいます。このため、出力には出力バッファを使用
していません。
R3 と並列にコンデンサ (C3 ( 図には表示していませ
ん )) を追加すると、R3 のノイズを更に抑えられま
す。SPICE シミュレーションを使用すれば、ノイズ
削減の費用対効果を容易に判断できます。
図 27 に、
シミュレーションで求めた図 26 の伝達関数
を示します。先に示した伝達関数 ( 図 24) に比べ、阻
止域での減衰が改善されていることが分かります。
|VOUT/VIN| (dB)
|VOUT/VIN| (dB)
図 24 に、シミュレーションで求めた図 23 の伝達関
数を示します。
10
0
-10
-20
-30
-40
-50
-60
-70
-80
-90
-100
-110
-120
100
1.E+2
1k
1.E+3
f (Hz)
10k
1.E+4
100k
1.E+5
図 27: フィルタの伝達関数
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AN1228
図 28 に、図 26 の出力ノイズ電圧密度を示します。
ラベルは、各出力密度のノイズ源を表しています。
enr1、enr2、enr3、enr4 は R1、R2、R3、R4 のサーマル
ノイズを表しており、eni、ibn、ibi はオペアンプの
ノイズ源を表しています。すべてを合計した出力ノ
イズ密度は、「total」と表記しています。
1000
eno (nV/¥Hz)
10
100
1.E+2
1k
10k
1.E+3
1.E+4
f (Hz)
オートゼロ オペアンプの 1/f ノイズは非常
に小さいので無視できます。
1/f ノイズは、半導体や抵抗性デバイスの原子レベル
の不均一性によって発生します。この不均一性によ
り、これらのデバイスを流れる DC 電流に影響が生
じます。時定数の異なる多くの不均一性が同時に作
用することが、1/f ノイズの典型的な発生原因です。
enr1
ibi
1
10
1.E+1
低周波アプリケーション (1 kHz 未満 ) では、フリッ
カ ノイズ (1/f ノイズまたはピンク ノイズとも呼ば
れる ) が重要になります。このノイズによって、出
力はホワイト ノイズで予測されるよりも大きく変
動します。
注:
total
eni
enr3
enr2
enr4
ibn
100
フリッカ ノイズ
100k
1.E+5
1M
1.E+6
図 28: 出力ノイズ密度
1/f ノイズの大きい素子には、カーボン抵抗器や半
導体デバイス ( ダイオードやトランジスタ ) などが
あります。しかし程度の差はあれ、1/f ノイズはす
べての導体で発生します。
ここでは、1/f ノイズとその出力変動性への影響、お
よびデータシートでの関連情報の見方を説明しま
す。低周波アプリケーションの設計例を挙げて、設
計アプローチを紹介します。
図 25 と図 28 を比較してみると、低周波数 ( すなわ
ち 200 Hz 未満 ) の出力ノイズ密度を抑えることに
成功したことが分かります。全体的な NPBW も大
幅に低減しています。
1/f ノイズの基礎
これら 2 つの設計の出力積分ノイズの比較結果を表
5 に示します。これは、図 25 と図 28 の情報を分か
りやすくまとめたものです。
1/f ノイズの名前は、その PSD の形状に由来してい
ます ( 単位は VRMS2/Hz)。このノイズ パワーは、周
波数の逆数として低周波数で増大します。
表 5:
式 29: 1/F ノイズ
各設計の比較
Noise Source
Thermal
Op Amp
Eno (µVP-P)
2
2nd Order
3rd Order
R1
5.4
2.5
R2
10.6
5.4
R3
154.4
9.1
R4
—
4.2
eni
120.6
13.4
ibn
1.9
0.5
ibi
26.9
0.9
Total
198.1
17.8
2
e nf ( f ) = e nf ( 1 Hz ) ⁄ f
ここで :
enf(f)
注:
=
周波数 f での 1/f ノイズ電圧密度
(nV/√Hz)
ノイズ電圧密度 (enf) は 1/√f (10 dB/decade)
として変化します。
式 29 では、1/f ノイズがある特定の周波数 (1 Hz) で
規定されている点に注意してください。これは、後
で行う計算を簡単にするためです。
1/f ノイズが現れるためには、DC 電流が流れる必要
があります。例えば、PSpice のダイオード ノイズ
モデルでは次の式を使用します。
式 30: ダイオードの 1/F ノイズ
2
i nd ( f ) = KF ⋅ I D
AF
⁄f
ここで :
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inf(f)
=
ダイオードの周波数 f での 1/f ノイズ
電流密度 (nV/√Hz)
KF
=
PSpice のノイズ パラメータ (A2 – AF);
デフォルト値は 0 ( 通常は約 10-15)
AF
=
PSpice のノイズ指数 ; デフォルト値は 1
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AN1228
Noise Voltage Density (nV/√Hz),
log scale
1/f Noise
図 31 に、同じノイズ データのヒストグラムを示しま
す。更に、同じ平均 (0 µV) と標準偏差 (3.55 µV) を持
つ理想的なガウス分布曲線も併記されています。
7%
Percentage of Occurrences
1/f ノイズはコーナー周波数で指定する場合もあり
ます。これは、1 つのノイズ源にホワイト ノイズと
1/f ノイズの両方が存在する場合に行われます。ホ
ワイト ノイズ密度と 1/f ノイズ密度が等しくなる部
分がコーナー周波数です ( 図 29 参照 )。後で見るよ
うに、これら 2 種類のノイズは fcorner 付近でスムー
ズに混ざり合い、この図に示したような直線的な折
れ曲がりにはなりません。
3000 Samples
6%
Enf
5%
4%
Gaussian
3%
2%
1%
12
8
10
6
4
2
0
-2
-4
-6
-8
-10
-12
0%
1/f Noise (µV)
White Noise
図 31: 1/f ノイズのヒストグラム
fcorner
図 29: コーナー周波数の概念図
ホワイト ノイズ密度とコーナー周波数が分かれば、
1/f ノイズ電圧密度 (enf (1 Hz)) は簡単な計算で求め
られます。
式 31: コーナー周波数からの変換式
ここで :
enw
=
ホワイト ノイズ電圧密度 (nV/√Hz)
fcorner
=
コーナー周波数 (Hz)
図 30 は、1/f ノイズのデータ ( ベンチでの評価 ) を
プロットしたもので、典型的な 1/f ノイズの動きを
見ることができます。データは平均がゼロになるよ
うに調整してあり、サンプル レートは毎秒 1 サン
プル (1 SPS) です。図 10 のホワイト ノイズと比べ
ると、1/f ノイズの局所平均は時間とともに変動し
ています。
1/f Noise (µV)
1/fノイズの局所平均の変動は、アプリケー
ションでは大きな問題となります。
12
10
8
6
4
2
0
-2
-4
-6
-8
-10
-12
100µ
1.E+05
fSAM = 1 SPS
10µ
1.E+04
e nf ( 1 Hz ) = e nw f corner ⁄ ( 1 Hz )
注:
最初の 2048 個のデータ ポイントを FFT ルーチンを
使用してノイズ密度に変換したグラフを図 32 ( 青線 )
に示します。赤線は、青線と同じ積分ノイズ パワー
となるようにした 1/f ノイズ曲線です。
1/f Noise (V/√Hz)
f (Hz),
log scale
fSAM = 1 SPS
1µ
1.E+03
100n
1.E+02
100µ
1.E-04
1m
1.E-03
10m
1.E-02
f (Hz)
100m
1.E-01
1
1.E+00
図 32: 1/f ノイズ、FFT ( 最初の 2048 個の
データ ポイント )
積分 1/f ノイズ
解析をシンプルにするため、ここではカットオフ周
波数 fL、fH のバンドパス ブリック ウォール フィル
タを使用します ( 図 3 参照 )。これにより、次の式
が得られます。
式 32: 積分 1/F ノイズ
2
E nf =
fH
∫ fL
2
e nf ( f ) df =
fH
∫ fL
2
e nf ( 1 Hz )
---------------------- df
f
2
= e nf ( 1 Hz ) ⋅ ln ( f H ⁄ f L )
E nf = e nf ( 1 Hz ) ⋅
0
5
10
15
20
25 30
t (min)
図 30: 1/f ノイズの時間波形
DS01228A_JP - ページ 18
35
40
45
50
ln ( f H ⁄ f L )
すなわち、積分パワー ( 統計的分散 ) は、ブリック
ウォール フィルタに囲まれるディケード ( またはオ
クターブ ) の数に比例します。
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1/F ノイズの増大 ( 注 1、注 2)
fH/fL
No. Decades
Enf (µVP-P)
1/fL
1.259
0.10
3.7
0.13 s
101
1
11.6
1.00 s
102
2
16.4
10 s
103
3
20.1
100 s
104
4
23.2
1000 s
105
5
26.0
2.78 hr
106
6
28.5
27.8 hr
107
7
30.7
11.6 day
108
8
32.9
116 day
109
9
34.9
3.17 year
9.50
35.8
10.0 year
3.16 × 109
注 1:
2:
注:
これらの数値は、fH = 10 Hz、および
enf(1 Hz) = 1160 nV/√Hzとしたときのものです。
この表には、プリント基板の現実的な設計寿
命を考慮した値までしか記載していません。
fH/fL > 10 かつ fH << fcorner の場合は、バン
ドパス フィルタの fH と fL の比を変えても
1/f ノイズの変動性にはほとんど影響しま
せん。
データシートの情報
表 7 に、MCP616/7/8/9 のデータシートに記載されて
いるノイズ仕様を示します。このオペアンプ ファ
ミリはバイポーラ (PNP) 入力なので、CMOS 入力オ
ペアンプよりもノイズ電流が大きくなっています。
表 7:
MCP616/7/8/9 のノイズ仕様
Parameters
Sym Typ
Units
Conditions
µVP-P
f = 0.1 to
10 Hz
Noise
Input Noise
Voltage
Eni
2.2
Input Noise
Voltage Density
eni
32
nV/√Hz f = 1 kHz
Input Noise
Current Density
ini
70
fA/√Hz f = 1 kHz
入力ノイズ電圧 (Eni) は、0.1 Hz ~ 10 Hz のノイズ電
圧の積分値で、単位は (µVP-P) です。この仕様値は、
低周波で使用するオペアンプ選定の目安となりま
す。一般に、この値は 1/f ノイズの影響を強く受け
ますが、自動ゼロ調整オペアンプは例外です。
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入力ノイズ電流密度 (ini) は、ホワイト ノイズが優勢
な周波数 ( この場合は 1 kHz) の値が記載されます。
この仕様値は、抵抗値が大きい場合のオペアンプ選
定の目安となります。なお、この曲線は統計的に独
立した両方の入力ノイズ電流源を表している点に
注意してください。
図 33 は、MCP616/7/8/9 のデータシートに記載され
ているノイズ密度をグラフにしたものです。ノイズ
仕様は、このデータを表しています。マイクロチッ
プ社の CMOS 入力オペアンプでは、ini の値が非常
に小さく、設計にほとんど影響を与えないため、こ
のようなグラフには表示されません。
10,000
10,000
1,000
1,000
ini
100
100
eni
Input Noise Current
Density (fA/¥Hz)
表 6:
入力ノイズ電圧密度 (eni) は、ホワイト ノイズが優勢
な周波数 ( この場合は 1 kHz) の値が記載されます。
この仕様値は、高周波で使用するオペアンプ選定の
目安となります。
Input Noise Voltage
Density (nV/¥Hz)
表 6 は、fH と fL の比を変えたときに 1/f ノイズがど
のように増大するかを示したものです。数学的に、
Enf は f がゼロに近づくと無限に増大します。しか
し実際には、その増大はきわめてゆっくりとしてい
るので、アプリケーションで問題になることはほと
んどありません。これらの数値は、図 32 に示した
データに基づいています。
10
10
0.1 1.E+0
1
10 1.E+0
100 1.E+0
1k 1.E+0
10k
1.E1.E+0
01
0 Frequency
1
2 (Hz) 3
4
図 33: MCP616/7/8/9 の入力ノイズ電圧密度の
グラフ
ini のホワイト ノイズ部分の温度変化の例は、表 2
および表 3 を参照してください。
設計例
ここで紹介する設計例は、図 26 で示したフィルタ
に簡単な変更を加えたものです。ここでの目標は、
1/f ノイズによって影響を受ける低周波回路を示す
ことにあります。100 Hz のカットオフ周波数を得る
ため、コンデンサの容量をすべて 10 倍にしていま
す。これらの変更を加えたものを図 34 に示します。
これも 3 次バターワース フィルタです。
C1
270n
R1
8.35k
R2
U1
20.0k MCP616
R4
15.8k
VIN
VOUT
C2
56n
C4
100n
R3
28.7k
図 34: バターワース ローパス フィルタ
DS01228A_JP - ページ 19
AN1228
表 8 は、図 36 の情報を分かりやすくまとめたもの
です。これらの結果を、図 25、図 28、表 5 と比較
すると、多くの有益な情報が得られます。
図 35 に、シミュレーションで求めた伝達関数を示
します。図 27 と比べてみてください。
表 8:
|VOUT/VIN| (dB)
R4 と C4 の後段にバッファを配置すると NPBW が
広くなり、ノイズへの影響が非常に大きくなってし
まいます。このため、出力には出力バッファを使用
していません。
ノイズ電圧が出力に与える影響
Noise Source
Thermal
10
0
-10
-20
-30
-40
-50
-60
-70
-80
-90
-100
10
1.E+1
Op Amp
100
1.E+2
f (Hz)
1k
1.E+3
Eno (µVP-P)
R1
0.78
R2
1.72
R3
2.89
R4
1.32
eni
5.31
ibn
0.36
ibi
0.45
Total
6.49
10k
1.E+4
図 35: フィルタの伝達関数
図 36 に、出力ノイズ電圧密度を示します。ラベル
は、各出力密度のノイズ源を表しています。enr1、
enr2、enr3、enr4 は R1、R2、R3、R4 のサーマル ノイ
ズを表しており、eni、ibn、ibi はオペアンプのノイ
ズ源を表しています。すべてを合計した出力ノイ
ズ密度は、
「total」と表記しています。
eno (nV/¥Hz)
1000
total
eni
enr3
enr2
enr4
100
10
1
0.1
1.E-1
enr1
ibi
ibn
1
1.E+0
10
100
1.E+1
1.E+2
f (Hz)
1k
1.E+3
10k
1.E+4
図 36: 出力ノイズ密度
図 28 と図 36 を比べると、ホワイト ノイズが減少
していることが分かります。30 Hz 未満のところで
1/f ノイズの影響も見られます。
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AN1228
設計の最適化
支配的なノイズ源を見つける
ここまで、ノイズ解析と設計の基礎を見てきまし
た。この知識をもとに、ここからはオペアンプ回路
のノイズ性能を短時間で効果的に最適化する方法
を説明します。
最大のノイズ源の半分以上の大きさ (VRMS) のノイ
ズ源はすべて支配的なノイズ源と見なす必要があ
ります。これは非常に大まかな基準に見えるかもし
れませんが、実際にこの方法はうまく機能します。
信号対ノイズ比 (SNR)
信号対ノイズ比 (SNR) は、回路内のノイズが設計仕
様を満たしているかどうかを判断する際に最もよ
く使われる指標の 1 つです。通常、SNR は ( 正弦波
の ) 信号パワーと積分ノイズ パワーの比として定義
されます ( 単位は dB)。
式 33: 出力の SNR
SNR = 20 ⋅ log 10 ( V OUT ⁄ E nout )
ここで :
VOUT = 正弦波の出力信号 (VRMS)
Enout = 出力積分ノイズ電圧 (VRMS)
SNR = 信号対ノイズ比 (SNR)(dB)
アプリケーションによっては、VOUT をフル スケー
ル範囲との関係で表すこともあります (VPK または
VP-P)。本アプリケーション ノートでは、これは行
いません。
まず、アプリケーションで要求される精度を満たし
た SNR 値を選択します。この SNR の要件を満たすま
で回路を何度も修正します。出力電圧を固定した場
合、これは出力ノイズを最小化することと同じです。
注:
信号のフル スケール範囲はなるべく大き
くとるようにしてください。これにより、
最小限のコストと労力で出力ノイズを減
らせます。
ノイズの低減
設計が適切ならば、ノイズ性能は一握りの重要な部
品によってのみ左右されます。その他の部品は、ノ
イズ以外の設計目標に合わせて選定できます。
高ゲイン アンプを前段に置く
高ゲイン アンプは、なるべく信号源 ( センサなど )
の近くに配置します。これより後段のノイズ源はす
べて、このゲインによって分割されるので、出力ノ
イズへの影響は小さくなります。高ゲイン アンプ
より前段、および高ゲイン アンプ内部のノイズ源
が設計の正否の鍵となります。
高ゲイン アンプより後段にあるアンプやその他の
回路要素はすべて、ゲインをなるべく 1 V/V に近い
値に設定してください。
© 2009 Microchip Technology Inc.
このことを分かりやすく示すため、表 9 では、大き
なノイズ源 (Enout1) と小さなノイズ源 (Enout2) が全体
のノイズ (Enout) にどのように影響するかを一覧に
しています。Enout2/Enout1 の比は、Enout1 を基準に
した Enout2 の相対的な大きさを表しています。
Enout/Enout1 の比は、Enout2 の影響によって Enout が
Enout1 の何倍になっているかを表しています。
Enout2/Enout1 が 1/2 以下の場合は、エンジニアリング
精度の範囲内 ( 誤差 12% 未満 ) で Enout2 の影響を無
視できます。なお、前述のとおり、ノイズの項は二
乗和の後に平方根演算を行ったものです。
表 9:
2 番目に大きいノイズ源の影響
Enout2/Enout1
Enout/Enout1
1/1
1.414
1/2
1.118
1/3
1.054
1/5
1.020
1/7
1.010
1/10
1.005
ノイズのフィルタリング
ノイズのフィルタリングは、なるべく低い NPBW
で行います。
シンプルなフィルタを主要なノイズ源のなるべく
近くに配置します。こうすると、ベンチで設計をテ
ストする際に便利です。ほとんどの場合、抵抗器と
コンデンサを 1 つずつ使用した実数極 1 つのフィル
タで十分です。
これよりも高度なフィルタはソースから離れた場
所に配置します。こうすると、複雑なフィルタ 1 つ
だけで多くのノイズ源に対応できるという利点が
あります。これにより、アクティブ フィルタの素
子感度を抑えて ( コンデンサ、抵抗器、オペアンプ
の帯域幅を変更しても影響がほとんどない )、全体
的なコストを抑えられます。
ADC のベースバンドに折り返しノイズが混入する
ことがあります。この影響を最小限に抑えるには、
サンプル レートよりもはるかに遅い ( 例えば 10 倍
遅い ) 帯域幅を持つアンチエイリアス フィルタを選
定します。
前に見たように、シンプルな R-C ローパス フィル
タをバッファを使用せず最後段に置くことによっ
て、ノイズ全体に対するオペアンプの影響を最小限
に抑えられます。このフィルタは、A/D コンバータ
(ADC) の入力段に置いてゲイン誤差を最小化でき
ます ( ただし最後のコンデンサが ADC の入力サン
プリング コンデンサよりもはるかに大きい場合の
み )。
DS01228A_JP - ページ 21
AN1228
部品の選定
まとめ
いくつかのシンプルなルールに従うだけで、設計目
標に適合した部品を容易に選定できます。
本アプリケーション ノートでは、回路設計で使用
するノイズ理論の概要を簡単に説明しました。統計
学、回路設計、回路ノイズ設計に関する読者の知識
を補うように説明を展開しています。
抵抗器
設計の要所では、なるべく値の小さい抵抗器を選ぶ
のがふつうです。ただしこのルールには例外があ
り、抵抗器が回路内の電流源として振る舞っている
場合 ( トランスインピーダンス アンプのゲイン抵抗
など ) は、抵抗値を大きくするとノイズ電流が減少
します ( 式 10 参照 )。
抵抗性材料にカーボンを使用している抵抗器は避
けてください。これらの抵抗器では 1/f ノイズが大
きくなります。
抵抗性材料に金属を使用している抵抗器を選んで
ください。一般に、1/f ノイズ性能が最も良いのは
巻線抵抗器ですが、高周波回路では寄生インダクタ
ンスおよび容量の問題があります。金属皮膜抵抗器
は 1/f ノイズも少なく、高周波特性も良好です。
オペアンプ
最初は汎用部品を使用して設計を開始してくださ
い。そして回路の他の部分を最適化した後で、低ノ
イズの部品を探すようにします。
高周波アプリケーション (1 kHz 以上など ) や、オー
トゼロ オペアンプを使用するアプリケーションで
は、ホワイト ノイズ (eni および ini) を目安にオペア
ンプを選定します。
低周波アプリケーション (1 kHz 未満など ) では、
1/f ノイズ性能 (eni および ini) も比較します。0.1 Hz
から 10 Hz までの積分ノイズを比較してください
( マイクロチップ社のオペアンプ データシートでノ
イズ電圧仕様 (µVP-P) を参照 )。データシートにこの
仕様が記載されていない場合は、ノイズ スペクト
ルのグラフから必要な情報を読み取ることができ
ます。1/f ノイズの領域で、各オペアンプの同一周
波数でのノイズ密度を比較します。
設計プロセス、フィルタがノイズに与える影響、複
数のノイズ成分を回路の出力で 1 つにまとめる方
法、回路のノイズ性能の最適化など、多くの例を挙
げて読者の理解を深めるよう努めました。
ノイズ設計で必要とされる内容は本アプリケー
ション ノートでほとんど網羅しています。ホワイト
ノイズと 1/f ノイズについても説明しました。手計
算による解析とコンピュータ シミュレーションも
何度も使用しました。解析の労力を節約する手段と
して、コンピュータによる解析も紹介しています。
本アプリケーション ノートの巻末には、これらの
内容の背景知識を知る上で役立つ参考資料も紹介
しています。また、付録として、用語の解説とコン
ピュータによる設計支援の概要も紹介しています。
参考資料
関連するアプリケーション ノート
[1]
AN1177『オペアンプを使用したデザインの
精度 : DC 誤差』(DS01177)、著 Kumen Blake、
Microchip Technology Inc.、2008 年発行
ノイズ
[2]
『Analysis and Design of Analog Integrated
Circuits』第 2 版、著 Paul R. Gray and Robert
G. Meyer、John Wiley & Sons、1984 年発行
[3]
『Principles of Digital and Analog
Communications』著 Jerry D. Gibson、
Macmillan、1989 年発行
[4]
『Communication Systems:An Introduction to
Signals and Noise in Electrical Communication』
第 3 版、著 A. Bruce Carlson、McGraw-Hill、
1986 年発行
[5]
『Probability, Random Variables, and Stochastic
Processes』第 3 版、著 Athanasios Papoulis、
McGraw-Hill、1991 年発行
その他
[6]
DS01228A_JP - ページ 22
『High-Speed Digital Design:A Handbook』
共著 Howard Johnson、Martin Graham
© 2009 Microchip Technology Inc.
AN1228
付録 A:
用語
ここでは、アンプのノイズ設計で使用する一般的な
用語をいくつか説明します。用語は、相互の関連性
を理解できるように内容別に分類してあります。
A.1
スペクトル密度
パワー スペクトル密度 (PSD) とは、ノイズ源の統
計的変動を周波数領域で説明したものです。単位は
(W/Hz) です (dBm/Hz に変換される場合もある )。こ
れは、ノイズの自己相関関数とも関係があります。
ノイズ パワー密度とも呼ばれます。
ノイズ電圧密度 (en) は、PSD の平方根を標準抵抗
( 通常は 1Ω) に正規化したものです。単位は (V/√Hz)
です。スポット ノイズまたはルート ヘルツ当たり
ノイズとも呼ばれます。
ノイズ電流密度 (in) は、PSD の平方根を標準抵抗
( 通常は 1Ω) に正規化したものです。単位は (A/√Hz)
です。スポット ノイズまたはルート ヘルツ当たり
ノイズとも呼ばれます。
ノイズ電圧 (En) は、ノイズ パワーの平方根を標準
抵抗 ( 通常は 1Ω) で正規化したものです。単位は
(VRMS、VPK、VP-P) のいずれかです。単位が VRMS
のときは、標準偏差とも呼ばれます。
ノイズ電流 (In) は、ノイズ パワーの平方根を標準抵
抗 ( 通常は 1Ω) で正規化したものです。単位は
(ARMS、APK、AP-P) のいずれかです。単位が ARMS
のときは、標準偏差とも呼ばれます。
A.4
確率密度関数
すべてではありませんが、多くの物理的ノイズ源は
ガウス ( 正規 ) 確率密度関数となります。これらは
ガウス ノイズ、または加法性白色ガウス ノイズ
(AWGN) とも呼ばれます。通常、このノイズは IID
(Identical and Independently Distributed) の仮定を満た
すランダム過程に関係しており、同じ確率密度関数
を持つ統計的に独立した多数のランダム変数の総
和です。この確率密度関数は次のとおりです。
式 A-1:
2
A.2
ホワイト ノイズは、すべての周波数で一定値を持
つ PSD です。システム ノイズの計算を簡単に行え
るので、数学的に便利です。
広帯域ノイズは、回路の興味のある周波数範囲にわ
たって ( ほぼ ) ホワイトなノイズ源をいいます。実
際にはホワイト ノイズではありませんが、回路か
らはホワイト ノイズに見えます。
ノイズ パワー帯域幅 (NPBW) は、回路がホワイト
ノイズをどのように処理するかを表す、数学的に便
利なパラメータです。単位は (Hz) です。実際の回
路と同じ出力ノイズを生成するブリック ウォール
フィルタの帯域幅に相当します。
過剰ノイズとは、低周波数でホワイト ノイズを上
回るノイズ全般をいい、次のものがあります ( 本ア
プリケーション ノートでは 1/f ノイズしか取り上げ
ていません )。
• 1/f ノイズ。フリッカ ノイズまたはピンク ノイ
ズとも呼ばれる。
• 1/f2 ノイズ。レッド ノイズとも呼ばれる。
• RTS (Random Telegraph Signal) ノイズ。バースト
ノイズやポップコーン ノイズとも呼ばれる ( 実数
極を 1 つ持つローパス フィルタでホワイト ノイ
ズを濾波したようなスペクトル形状のノイズ )。
A.3
–( x – µ )
1
p ( x ;µ, σ ) = -------------- ⋅ exp ⎛⎝ ----------------------⎞⎠
2σ
2 πσ
スペクトル形状
積分ノイズ
A/D コンバータ (ADC) と D/A コンバータ (DAC) の
量子化誤差は、通常、一様確率密度関数を持つラン
ダム ノイズとしてモデル化されます ( ただし入力で
のデバイス ノイズはガウス ノイズです )。この確率
密度関数は次のとおりです。
式 A-2:
p ( x ;µ, σ ) = 1 ⁄ ( 2 3 σ ) , x – µ < 3 σ
= 0, otherwise
A.5
性能指数
信号対ノイズ比 (SNR) とは、
信号パワーとノイズ パ
ワーの比です。通常は単位 (dB) で表されますが、
(VRMS/VRMS) や (ARMS/ARMS) なども使用されます。
比の分子として信号のフル スケール範囲が使われ
ることもあり、その場合の単位は (VPK または VP-P)
です。
本アプリケーション ノートでは取り上げていませ
んが、これ以外の性能指標には次のものがあります。
• ノイズ指数 (NF) (dB)
• ノイズ係数 (F) (V/V)
• ノイズ温度 (TN) (K)
ノイズ パワー (N) とは、ノイズ源の統計的変動で
す。単位は (W) です (dBm のこともある )。
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AN1228
付録 B:
コンピュータの利用
本アプリケーション ノートでは主に手計算と式を
用いることに重点を置きましたが、実際の設計では
コンピュータを使うことがほとんどです。
B.1
ノイズ シミュレーション
回路ノイズ シミュレーションは SPICE シミュレー
タの AC シミュレーションの一部として実行できま
す。SPICE プログラムはカリフォルニア大学バーク
レー校で開発されました。回路設計では SPICE から
派生した多くのシミュレータが使われていますが、
ボード レベルの設計で最も多く使われているのが
PSpice® (Cadence® 社製 ) です。
B.1.1
概論
ノイズ シミュレーションで現実的な結果を得るに
は、部品モデルを正しく定義する必要があります。
マイクロチップ社からも、PSpice で正しく動作する
ように設定されたオペアンプ マクロ モデルが提供
されています。通常、抵抗器、ダイオード、トラン
ジスタは ( モデルが正確なら ) 正しいホワイト ノイ
ズを発生します。ダイオードやトランジスタの 1/f
ノイズは、関連するパラメータを注意深く扱わなけ
れば正しくシミュレーションすることはできませ
ん。抵抗器のモデルには 1/f ノイズは含まれません。
必要なら、ダイオードや従属している信号源を用い
て 1/f ノイズを回路に追加する必要があります。
ノイズ解析を実行する前に、入力ソースと出力回路
ノードを定義しておく必要があります。SPICE から
は、周波数全体の入力換算ノイズ ベクタが生成さ
れます。これは、選択した入力ソースに換算されま
す。また、SPICE からは選択したノードにおける出
力ノイズ ベクタも生成されます。
SPICE シミュレータの種類によって、ノイズ結果の
表示方法には、ノイズ電圧 ( 電流 ) 密度 (VRMS/√Hz)
またはノイズ電圧 ( 電流 ) 密度の二乗 (VRMS2/Hz) の
2 種類があります。使用するシミュレータがどちら
の表示であるかは、抵抗器のサーマル ノイズで確
認できます。1 kΩ の抵抗 (+25°C 時 ) が 4×10-9 VRMS/
√Hzと表示されれば前者、1.6×10-17 VRMS2/Hz と表示
されれば後者です。
注:
PSpice で生成されるノイズの単位は (VRMS/
√Hz)です。他のシミュレータもこの単位である
とは限りません。
シミュレータの波形表示ツールを使用してどのノ
イズ源が最も大きいかを判断し、ノイズのフィルタ
リングやシェーピングを改善していきます。
B.1.2
PSPICE による積分ノイズの計算
PSpice で積分ノイズを計算するには、波形表示ユー
ティリティの Probe を開いて、次のトレースを追加
します。
例 B-1:
PSPICE のトレース機能
sqrt(s(v(onoise)*v(onoise)))
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これは出力ノイズの累積積分 (0 Hz から f まで。
PSpice の関数 s() を使用 ) で (En0f と呼ぶ )、単位
は (VRMS/√Hz) です。
fL から fH まで ( 図 3 参照 ) の積分ノイズ (Enout) を
得るには、f = fL のときと f = fH のときの En0f の値
を読み取ります ( これらの値を EL、EH と呼ぶこと
にします )。積分ノイズは次のとおりとなります
( スペクトル形状は任意 )。
式 B-1:
E nout =
2
2
EH – EL
このトレースのデータをスプレッドシートに取り
込むには、Probe の画面左下にあるラベルをクリッ
クします。すると、このトレースが選択されます
( ラベルの色が変わります )。ここで Ctrl-C を押
すと、
データが Windows のクリップボードにコピー
されます。これをスプレッドシートでペーストして
ください。以上の手順により、2 列のデータ ( 周波
数ベクトルとノイズ ベクトル ) が取り込まれます。
B.1.3
SPICE による NPBW の推定
シミュレーション結果から積分ノイズを取り込ん
だら、フィルタの NPBW は簡単に推定できます。以
下に、この手順を簡単に示します。
• ノイズ電圧源として非常に大きい抵抗器を使用
する ( または 2 つの抵抗器を並列に使用する )
• ノイズ源とフィルタの入力の間にバッファを挿
入する
• 出力ノイズ密度 (enout) をプロットする
• DC から無限大 ( 十分に大きな周波数 ) までの出
力積分ノイズ (Enout) を計算する
• 選択したゲイン HM での通過域を表す enout の値
を選択する
• NPBW を計算する
式 B-2:
NPBW の推定
NPBW = ( E nout ⁄ e nout )
B.2
2
数式処理エンジンの使用
次のような処理に数式処理システムを使用すると、
ノイズ解析の時間が大幅に短縮されます。
•
•
•
•
ノード式を伝達関数に変換する
伝達関数を因数分解する
振幅を二乗した伝達関数を部分分数展開する
積分ノイズ ( または NPBW) に使用する定積分を
評価する
一般的なツールには、次のものがあります。
• Mathematica® (Wolfram Research 社製 )
• Maple™ (Waterloo Maple Software 社製 )
• Matlab® (The MathWorks 社製、Symbolic Math
Toolbox™ を使用 )
• MathCad® (Parametric Technology Corporation 社製 )
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