日本語版

超高速7 ns
単電源コンパレータ
AD8561
特長
ピン配置
5 Vで7 nsの伝播遅延
単電源動作:3 V∼10 V
8ピン・ナロー幅SO
8ピン・プラスチックDIP
(SO-8)
(N-8)
低消費電力
ラッチ機能
TSSOPパッケージ
アプリケーション
高速タイミング
クロック・リカバリとクロック・ディストリビューション
V+ 1
V+
+IN
–IN
V–
OUT
OUT
GND
LATCH
8
OUT
+IN 2
+
7
OUT
–IN 3
–
6
GND
5
LATCH
V– 4
AD8561
AD8561
ライン・レシーバ
デジタル通信
8ピンTSSOP
位相検出器
(RU-8)
高速サンプリング
リード・チャネルの検出
PCMCIAカード
LT1016設計のアップグレード
V+
+IN
–IN
V–
1
8
AD8561
4
5
OUT
OUT
GND
LATCH
概要
AD8561は入力部と出力部を左右に分けて実装したシングル7 nsコ
ンパレータです。電源が個別に用意されているので、入力段は±5
V二電源と+5 V単電源で動作することができます。
伝播遅延時間が7 nsと高速なため、
AD8561はタイミング回路やラ
イン・レシーバに最適です。立ち上がり信号と立ち下がり信号の伝
播遅延は十分にマッチングされており、全温度範囲で動作します。
遅延がマッチングされているため、出力のデューティ・サイクルと
入力のデューティ・サイクルが一致するので、AD8561はクロック・
リカバリへの応用に理想的です。
AD8561のピン配置はLT1016と同じですが、
消費電流が少なく、
ま
た同相入力範囲が広く、
同相入力範囲には負電源レールが含まれて
います。
AD8561は産業用温度範囲(−40℃∼+85℃)で仕様が規定されて
います。AD8561は8ピン・プラスチックDIP、8ピンTSSOP、または
ナロー幅SO-8表面実装パッケージで供給されます。
アナログ・デバイセズ社が提供する情報は正確で信頼できるものを期していますが、
当社はその情報の利用、また利用したことにより引き起こされる第3者の特許または権
利の侵害に関して一切の責任を負いません。さらにアナログ・デバイセズ社の特許また
は特許の権利の使用を許諾するものでもありません。
REV.0
アナログ・デバイセズ株式会社
本 社/東京都港区海岸1 - 1 6 - 1 電話03(5402)8200 〒105−6891
ニューピア竹芝サウスタワービル
大阪営業所/大阪市淀川区宮原3 - 5 - 3 6 電話06(6350)6868㈹ 〒532−0003
新大阪第2森ビル
AD8561―仕様
電気的仕様(特に指定のない限り、@V+=+5.0 V、V−=VGND=0 V、TA=+25℃)
パラメータ
記号
条件
最小
標準
最大
単位
2.3
7
mV
8
mV
入力特性
オフセット電圧
VOS
−40℃≦TA≦+85℃
オフセット電圧ドリフト
∆VOS/∆T
入力バイアス電流
IB
VCM=0 V
IB
−40℃≦TA≦+85℃
入力オフセット電流
IOS
VCM=0 V
入力同相電圧範囲
VCM
4
μV/℃
−6
−3
μA
−7
−3.5
0.0
同相除去比
CMRR
0 V≦VCM≦+3.0 V
大信号電圧利得
AVO
RL=10 kΩ
入力容量
CIN
65
μA
±4
μA
+3.0
V
85
dB
3000
V/V
3.0
pF
2.0
1.65
V
ラッチ・イネーブル入力
ロジック“1”電圧スレッショルド VIH
ロジック“0”電圧スレッショルド VIL
1.60
0.8
V
ロジック“1”電流
IIH
VLH=3.0 V
−1.0
−0.3
μA
ロジック“0”電流
IIL
VLL=0.3 V
−4
−2
μA
ns
ラッチ・イネーブル
パルス幅
tPW(E)
6
セットアップ時間
tS
1
ns
ホールド時間
tH
1.2
ns
3.5
V
デジタル出力
ロジック“1”電圧
VOH
IOH=−50μA、∆VIN>250 mV
3.5
ロジック“1”電圧
VOH
IOH=−3.2 mA、∆VIN>250 mV
2.4
ロジック“0”電圧
VOL
IOL=3.2 mA、∆VIN>250 mV
tP
100 mVのオーバードライブ電圧で
V
0.25
0.4
V
ダイナミック性能
伝播遅延
伝播遅延
tP
200 mVステップ
6.75
9.8
ns
−40℃≦TA≦+85℃
8
13
ns
5 mVのオーバードライブ電圧で
100 mVステップ
8
ns
差動伝播遅延時間
(立ち上がり伝播遅延対
立ち下がり伝播遅延)
∆tP
100 mVのオーバードライブ電圧で
100 mVステップ1
0.5
立ち上がり時間
20%から80%
3.8
ns
立ち下がり時間
80%から20%
1.5
ns
2.0
ns
電源
電源変動除去比
PSRR
正電源電流
I+
+4.5 V≦V+≦+5.5 V
50
65
4.5
−40℃≦TA≦+85℃
グラウンド電源電流
IGND
アナログ電源電流
I−
VO=0 V、RL=∞
mA
7.5
mA
2.2
3.3
mA
3.8
mA
2.3
4.5
mA
5.5
mA
−40℃≦TA≦+85℃
−40℃≦TA≦+85℃
dB
6.0
注
1
設計で保証されています。
仕様は予告なく変更することがあります。
−2−
REV.0
AD8561
電気的仕様(特に指定のない限り、@V+=+5.0 V、V−=VGND=0 V、V−=−5 V、TA=+25℃)
パラメータ
記号
条件
最小
標準
最大
単位
1
7
mV
入力特性
オフセット電圧
VOS
−40℃≦TA≦+85℃
オフセット電圧ドリフト
∆VOS/∆T
入力バイアス電流
IB
VCM=0 V
IB
−40℃≦TA≦+85℃
入力オフセット電流
IOS
VCM=0 V
入力同相電圧範囲
VCM
8
μV/℃
−6
−3
μA
−7
−2.5
−5.0
同相除去比
CMRR
−5.0 V≦VCM≦+3.0 V
大信号電圧利得
AVO
RL=10 kΩ
入力容量
CIN
mV
4
65
μA
±4
μA
+3.0
V
85
dB
3000
V/V
3.0
pF
1.65
V
ラッチ・イネーブル入力
ロジック“1”電圧スレッショルド VIH
2.0
ロジック“0”電圧スレッショルド VIL
1.60
0.8
ロジック“1”電流
IIH
VLH=3.0 V
−1
−0.5
20
V
μA
ロジック“0”電流
IIL
VLL=0.3 V
−4
−2
20
μA
ラッチ・イネーブル
パルス幅
tPW(E)
6
ns
セットアップ時間
tS
1.0
ns
ホールド時間
tH
1.2
ns
デジタル出力
ロジック“1”電圧
VOH
IOH=−3.2 mA
ロジック“0”電圧
VOL
IOL=3.2 mA
tP
100 mVのオーバードライブ電圧で
2.6
3.5
V
0.2
0.3
V
200 mVステップ
6.5
9.8
ns
−40℃≦TA≦+85℃
8
13
ns
ダイナミック性能
伝播遅延
伝播遅延
tP
5 mVのオーバードライブ電圧で
100 mVステップ
7
ns
差動伝播遅延
(立ち上がり伝播遅延対
立ち下がり伝播遅延)
∆tP
100 mVのオーバードライブ電圧で
100 mVステップ1
0.5
立ち上がり時間
20%から80%
3.8
ns
立ち下がり時間
80%から20%
1.5
ns
1
ns
70
dB
ディスパーション
2
ns
電源
電源変動除去比
PSRR
電源電流
正電源電流
±4.5 V≦VCC とVEE≦±5.5 V
55
VO=0 V、RL=∞
I+
4.7
−40℃≦TA≦+85℃
グラウンド電源電流
IGND
VO=0 V、RL=∞
2.2
−40℃≦TA≦+85℃
負電源電流
I−
2.4
−40℃≦TA≦+85℃
注
1
設計で保証されています。
仕様は予告なく変更することがあります。
REV.0
−3−
6.5
mA
7.5
mA
3.3
mA
3.8
mA
4.5
mA
5.5
mA
AD8561―仕様
電気的仕様(特に指定のない限り、@V+=+3.0 V、V−=VGND=0 V、TA=+25℃)
パラメータ
記号
条件
最小
標準
最大
単位
入力特性
オフセット電圧
VOS
入力バイアス電流
IB
VCM=0 V
−6
−3.0
μA
IB
−40℃≦TA≦+85℃
−7
−4
μA
7
入力同相電圧範囲
VCM
同相除去比
CMRR
0.1 V≦VCM≦1.5 V
60
出力HI電圧
VOH
IOH=−3.2 mA、VIN>250 mV
1.21
出力LO電圧
VOL
IOL=+3.2 mA、VIN>250 mV
PSRR
+2.7 V≦VCC、VEE≦+6 V
0
+1.5
mV
V
dB
出力特性
V
0.3
V
電源
電源変動除去比
電源電流
40
dB
VO=0 V、RL=∞
V+電源電流
I+
4.0
−40℃≦TA≦+85℃
グラウンド電源電流
IGND
V−電源電流
I−
4.5
mA
5.5
mA
1.6
2.5
mA
3.0
mA
2.4
3.3
mA
3.8
mA
9.8
ns
−40℃≦TA≦+85℃
−40℃≦TA≦+85℃
ダイナミック性能
伝播遅延
tP
20 mVのオーバードライブ電圧で
100 mVステップ2
8.5
注
1
出力HI電圧(プルアップ抵抗なし)。3 V動作でV+に抵抗をプルアップするのに役立ちます。
設計で保証されています。
仕様は予告なく変更することがあります。
2
絶対最大定格
全アナログ電源電圧
デジタル電源電圧
………………………………………… +14 V
…………………………………………… +14 V
アナログ正電源/デジタル正電源 ……………………… −600 mV
入力電圧1 ……………………………………………………… ±7 V
差動入力電圧
………………………………………………… ±8 V
θJA2
θJC
単位
8ピン・プラスチックDIP(N)
103
43
℃/W
8ピンSO
(R)
158
43
℃/W
8ピンTSSOP
240
43
℃/W
注
1
2
GNDに対する出力短絡時間 ………………………………
パッケージ・タイプ
無制限
保管温度範囲
アナログ入力電圧は、±7 Vまたはアナログ電源電圧のうちどちらか低い値となります。
θJAは最悪の条件に対して規定されています。すなわち、P-DIPパッケージではデバイスを
ソケットに実装した状態、SOICおよびTSSOPパッケージではデバイスを回路基板にハンダ
付けした状態で規定されています。
N、R、RUパッケージ ………………………… −65℃ ∼ +150℃
動作温度範囲
…………………………………… −40℃ ∼ +85℃
接合部温度範囲
N、R、RUパッケージ ………………………… −65℃ ∼ +150℃
リード温度範囲(ハンダ付け、10秒) …………………… +300℃
オーダー・ガイド
モデル
温度範囲
パッケージ
パッケージ・オプション
AD8561AN
−40℃ ∼ +85℃
8ピン・プラスチックDIP
N-8
AD8561ARU
−40℃ ∼ +85℃
8ピン薄型収縮スモール・アウトライン
RU-8
AD8561AR
−40℃ ∼ +85℃
8ピン・スモール・アウトライン
SO-8
注意
ESD(静電放電)の影響を受けやすいデバイスです。4000 Vもの高圧の静電気が人体やテスト装置に容易に帯電し、検知さ
れることなく放電されることもあります。このAD8561には当社独自のESD保護回路を備えていますが、高エネルギーの静
電放電にさらされたデバイスには回復不能な損傷が残ることもあります。したがって、性能低下や機能喪失を避けるため
に、適切なESD予防措置をとるようお奨めします。
−4−
WARNING!
ESD SENSITIVE DEVICE
REV.0
AD8561
標準性能特性(特に指定のない限り、V+=+5 V、V−=0 V、TA=+25℃)
5
20
500
+125˚C
VS = 5V、単電源
ステップ・サイズ = 100mV
容量負荷 = 10pF
VS = 5V、単電源
4
400
3
+25˚C
2
伝播遅延 – ns
コンパレータ数
出力電圧 – V
15
–40˚C
300
200
TA = +25˚C
10
5
1
100
0
0.5
–2.5 –2.0 –1.5 –1.0 –0.5 0
差動入力電圧 – mV
1.0
0
1.5
図1. 出力電圧対差動入力電圧
20
–5 –4 –3 –2 –1 0 1 2
入力電圧 – mV
10
tPD +
立ち下がりエッジ
20
30
負荷容量 – pF
10
0
40
ステップ・サイズ = 800mV
20
400mV
200mV
0
50
図4. 伝播遅延対負荷容量
5
0.5
0
0
4.5
2
1
1.5
ソース抵抗 – kΩ
75
図7. 伝播遅延対温度
3
100
125
時間 – ns
+125˚C
10
VS = 5V
ステップ・サイズ = 100mV
オーバードライブ = 5mV
負荷容量 = 10pF
0
1
2
3
同相電圧 – V
図8. 伝播遅延対VCM
2
ホールド時間
セットアップ時間
1
4
5
0
–50
–25
0
−5−
25
50
温度 – ˚C
75
100
125
図9. ラッチ・セットアップ・ホールド
時間対温度
REV.0
5.5
–40˚C
0
25
50
温度 – ˚C
5.25
4
5
5
0
5
電源電圧 – V
図6. 伝播遅延対正電源電圧
15
10
–25
4.75
+25˚C
VS = +5V、単電源
ステップ・サイズ = 100mV
オーバードライブ = 5mV,
負荷容量= 10pF
0
–50
TA = +25˚C
100mV
20
伝播遅延 – ns
15
50
10
図5. 伝播遅延対ソース抵抗
20
単電源、
ステップ・サイズ = 100mV
オーバードライブ = 5mV
容量負荷 = 10pF
15
10
5
20
30
40
オーバードライブ – mV
20
TA = +25˚C
伝播遅延 – ns
tPD –
立ち下がりエッジ
10
0
40
30
伝播遅延 – ns
伝播遅延 – ns
0
5
図3. 伝播遅延対オーバードライブ
VS = 5V、単電源
オーバードライブ = 10mV
容量負荷 = 10pF
15
伝播遅延 – ns
4
図2. 入力オフセット電圧の分布
VS = 5V、単電源
ステップ・サイズ = 100mV
オーバードライブ負荷 = 5mV
0
3
AD8561
5.0
0.4
4.4
0
I–、アナログ電源電流 – mA
0.5
出力HI電圧 – V
出力LO電圧 – V
TA = +125˚C
0.3
TA = –40˚C
TA = +25˚C
0.2
TA = +125˚C
TA = +25˚C
3.2
TA = –40˚C
2.6
0.1
0
3.8
2.0
0
3
6
9
シンク電流 – mA
12
15
図10. 出力LO電圧、VOL対シンク電流
0
0
6
9
ソース電流 – mA
12
15
図11. 出力HI電圧、VOH対ソース電流
–1.0
V+ = 5V, V– = 0V
–2.0
V+ = 5V, V– = –5V
–3.0
–4.0
–5.0
–75 –50 –25
図12.
0
25 50 75 100 125 150
温度 – ˚C
アナログ電源電流対温度、+5 V、
−5 V電源
0
0
40
35
–2.0
TA = +25˚C
–3.0
TA = +125˚C
25
20
+125˚C
15
+25˚C
10
–40˚C
–4.0
入力バイアス電流 – µA
–1
30
TA = –40˚C
正電源電流 – mA
I–、アナログ電源電流 – mA
–1.0
–2
–3
–4
5
–5.0
0
2
図13.
4
6
8
電源電圧 –V
10
12
アナログ電源電流対電源電圧、
1
10
周波数 – MHz
図14. 正電源電流対周波数
+5 V、−5 V電源
100
–5
–7.5
図15.
–5
–2.5
0
入力同相電圧 – V
2.5
5
入力バイアス電流対入力同相電圧、
+5 V、−5 V電源
0
入力バイアス電流 – µA
–1.0
–2.0
–3.0
–4.0
–5.0
–75 –50 –25
0
25 50 75 100 125 150
温度 – ˚C
図16. 入力バイアス電流対温度
−6−
REV.0
AD8561
アプリケーション
高速性能の最適化
較するとします。
コンパレータは信号が2.5 V付近にあるときにだけ
動作すればよいので、
コンパレータが出力を変化させる必要がある
他の高速コンパレータまたはアンプと同様、
AD8561から最高の性
能を引き出すには、
適切な設計およびレイアウト手法を用いなけれ
ときには、両方の信号が入力範囲内(2.5 V付近および3.0 Vよりかな
り下)にあります。
信号が3.0 Vを大きく超える場合は、入力電流が増加し、デバイス
ばなりません。高速回路の性能は、浮遊容量、不適切なグラウンド・
インピーダンス、
または他のレイアウトの問題があるとすぐに制限
の動作が遅くなります。
AD8561の入力バイアス電流(−3μA標準)はLT1016(+5μA標
を受けます。
入力へのソース抵抗を小さくすることが、
AD8561に高速動作を実
準)より低く、電流はAD8561から流れ出てLT1016に流れ込みます。
行させる上での重要事項です。
ソース抵抗と等価入力容量の組み合
比較的低い抵抗値および低いインピーダンス・ソース、またはその
わせによって、入力の応答が遅延し、出力に遅延が生じることがあ
いずれかを入力に使用する場合、
バイアス電流による電圧シフトは
ります。AD8561の入力容量と入力ピンからグラウンドへの浮遊容
小さいはずです。
量が結合すると、
数ピコファラッドの等価容量になります。3 kΩの
AD8561(6.75 ns標準)はLT1016(10 ns標準)より高速です。これ
ソース抵抗と5 pFの入力容量の組み合わせによっても15 nsの時定数
は多くのシステムにとって利点ですが、
高速性能を活用するにはタ
が生じますが、これはAD8561の5 nsの能力よりも低速です。最高の
イミング調整が必要なことがあります。
AD8561の出力電圧振幅はやや広くなっており、グラウンドより
性能を得るには、
ソース・インピーダンスが1 kΩ未満でなければな
0.2 V高い電圧から正電源電圧の1.1 V以内までです。AD8561の消費
りません。
また、高速アプリケーションでは電源にバイパス・コンデンサを
電流(標準5 mA)は、LT1016(標準25 mA)より低くなっています。
使用することも重要です。
ピン1とピン4の各電源ピンからグラウン
ドに、
ピンの0.5インチ以内に1μFの電解バイパス・コンデンサを配
出力振幅の拡大
置してください。これらのコンデンサは、電源に生じる電圧リップ
通常動作には必要ありませんが、
AD8561の出力電圧振幅は、デバ
ルを低減します。さらに、10 nFセラミック・コンデンサを電源ピン
イスの出力からV+電源に5 kΩ抵抗を接続すれば拡大することがで
からグラウンドに、
できるだけ電源ピンに近付けて配置しなければ
きます。この構成は出力電圧振幅を大きくすることが重要な、低電
なりません。これらのコンデンサは高周波スイッチング中に、デバ
圧電源アプリケーションで役立ちます。デバイスの出力に5 kΩの
イスのための電荷貯蔵庫として働きます。
プルアップ抵抗を付加しても、
AD8561の仕様には悪影響を及ぼしま
適切な高速性能を引き出すために、グラウンド・プレーンが推奨
せん。
されます。これは回路基板の表面に連続する導電プレーンを使用
し、
必要な電流経路に対してのみブレークを設けることによって構
出力負荷の検討
築できます。グラウンド・プレーンは低い誘導性グラウンドとな
AD8561の出力は伝播遅延を大幅に増やすことなく、
最大40 mAの
り、回路基板の異なるグラウンド・ポイントにおいて「グラウンド・
出力電流を供給可能です。このデバイスの出力を20個を超えるTTL
バウンス」によって引き起こされる電位差をなくします。また、適
入力ロジック・ゲートに接続してはなりません。つまり、100Ω未
切なグラウンド・プレーンは回路基板上の浮遊容量の影響を抑えま
満の負荷抵抗を駆動するようにしてください。
す。
AD8561から最高性能を引き出すには、
デバイス出力の容量性負荷
を小さくすることが重要です。容量性負荷が50 pFを超えると、
出力
LT1016の置き換え
波形にリンギングが生じ、コンパレータの動作帯域幅が減少しま
AD8561はLT1016コンパレータとピン・コンパチブルです。
す。
LT1016をより高性能のAD8561と簡単に置き換えることができます
が、両者には違いがあり、確実に適切な動作を実行させるために、
出力をラッチするためのセットアップ時間とホールド時間
これらの違いを把握しておいてください。
ピン5のラッチ入力を使用して、
AD8561出力のデータを保持する
AD8561とLT1016では大きな違いが5つあります。つまり、入力電
圧範囲、入力バイアス電流、速度、出力振幅、消費電力です。
ことができます。ラッチ入力の電圧がHIになると、デバイスの出力
は入力電圧に関係なく一定となります。
ラッチのためのセットアッ
+5 V単電源動作時のLT1016の入力電圧範囲は+1.25 V∼+3.5 V
プ時間は、2 ns∼3 nsで、ホールド時間は3 nsです。これは、出力で
です。AD8561の入力電圧範囲はこれより広く、0 V∼3.0 Vです。3.0 V
データを確実に保持するには、入力信号はラッチ・ピンがHIに遷移
を超える信号では、応答時間が遅くなることがあります(図8を参
するより少なくとも5 ns、そしてラッチ・ピンがHIに遷移した後で
照)
。両方の信号が3.0 Vを超える場合は、
「高速性能の最適化」の項
少なくとも3 ns有効でなければならないことを意味します。ラッチ
で述べたソース抵抗に関する注意を念頭に置いて、
信号をシフトさ
入力電圧がLOになると、約8 nsで新しい出力データが現れます。
せるか減衰させて範囲内に収めることができます。1つの信号だけ
ラッチ入力のロジックHIは最小+2.0 V、
ロジックLOは最大+0.8 V
が3.0 Vをわずかに超え、
他の信号が常に0 V∼3 Vの範囲内にある場
です。これにより、ラッチ入力はTTLまたはCMOSロジック・ゲー
合は、回路を変更しなくてもコンパレータは動作します。
トと容易にインターフェースします。AD8561のラッチ回路には組
例:コンパレータが高速移動信号を2.5 V固定リファレンスと比
REV.0
込みヒステリシスはありません。
−7−
AD8561
入力段とバイアス電流
入力信号はコンパレータの非反転入力に直接接続されます。出
AD8561は、PNP差動入力段を使用して負電源レールから正電源
力はR1とR2を通して、反転入力にフィードバックされます。VREF
レールの2.2 V以内まで、入力同相範囲を拡張可能にします。入力同
ウィンドウの中心、すなわち平均スイッチング電圧を設定してお
相電圧はデバイスの2入力における電圧の平均ということが分かり
き、R1とR1+R2の比でヒステリシス・ウィンドウの幅が決まりま
ます。最速応答時間を達成するには、入力同相電圧がいずれの電圧
す。以下の式1に示すとおり、Q出力は入力電圧がVHIを超えるとHI
も超えないよう注意が必要です。
に切り替わり、
入力電圧がVLOより低くなるとLOに切り替わります。
AD8561の入力バイアス電流は3μAです。他のPNP差動入力段と
R1
VHI=(V+−1−VREF)―――― +VREF
R1+R2
同様、このバイアス電流はHIの入力でゼロになり、LOの入力では2
倍になります。抵抗が大きいと、入力バイアス電流のために大きな
(1)
電圧降下が生じる可能性があるので、
入力に接続する抵抗値を選ぶ
R1
VLO=VREF− 1− ――――
R1+R2
際には注意が必要です。
(
AD8561の入力容量は標準3 pFです。これは、5 kΩソース抵抗を
)
入力に挿入し、伝播遅延の変化を測ることによって測定されます。
ここで、V+は正の電源電圧です。
ヒステリシスの使用
また、
コンデンサCFを追加してフィードバックネットワークに極
正帰還を加えればコンパレータに容易にヒステリシスを追加す
(ポール)を導入することもできます。これには高周波でヒステリ
ることができます。コンパレータにヒステリシスを加えると、入力
シス量を増加させる効果があります。これは、高周波ノイズ環境で
信号がスイッチング・スレッショルド付近にあるときに出力の状態
比較的遅い信号を比較するときに役立ちます。fP=1/2πCFR2を超
が変わって欲しくないようなノイズの多い環境で役立ちます。図17
える周波数では、ヒステリシス・ウィンドウはVHI=V+−1 V、VLO
にヒステリシスをもつAD8561を構成するための方法を示します。
=0 Vに近付きます。fP以下の周波数では、スレッショルド電圧は式
1のままです。
信号
VREF
R1
コンパレータ
R2
CF
図17. ヒステリシス付きAD8561の構成
−8−
REV.0
AD8561
SPICEモデル
* AD8561 SPICE Macro-Model Typical Values
* 4/98, Ver. 1.0
* TAM / ADSC
*
* Node assignments
*
non-inverting input
*
|
inverting input
*
|
|
positive supply
*
|
|
|
negative supply
*
|
|
|
|
Latch
*
|
|
|
|
|
DGND
*
|
|
|
|
|
|
Q
*
|
|
|
|
|
|
|
QNOT
*
|
|
|
|
|
|
|
|
.SUBCKT AD8561
1
2
99
50
80
51
45
65
*
* INPUT STAGE
*
*
Q1
4
3 5 PIX
Q2
6
2 5 PIX
IBIAS 99
5 800E-6
RC1
4 50 1E3
RC2
6 50 1E3
CL1
4
6 1E-12
CIN
1
2 3E-12
VCM1
99
7 1
D1
5
7 DX
EOS
3
1 POLY(1) (31,98) 1E-3 1
*
* Reference Voltage
*
EREF 98 0 POLY(2) (99,0) (50,0) 0 0.5 0.5
RREF 98 0 100E3
*
* CMRR=80dB, ZERO AT 1kHz
*
ECM1 30 98 POLY(2) (1,98) (2,98) 0 0.5 0.5
RCM1 30 31 10E3
RCM2 31 98 1
CCM1 30 31 15.9E-9
*
* Latch Section
*
RX 80 51 100E3
E1 10 98 (4,6) 1
S1 10 11 (80,51) SLATCH1
R2 11 12 1
C3 12 98 10E-12
E2 13 98 (12,98) 1
R3 12 13 500
*
* Power Supply Section
*
REV.0
−9−
AD8561
GSY1 99 52 POLY(1) (99,50) 4E-3 -2.6E-4
GSY2 52 50 POLY(1) (99,50) 3.7E-3 -.6E-3
RSY
52 51 10
*
* Gain Stage Av=250 fp=100MHz
*
G2 98 20 (12,98) 0.25
R1 20 98 1000
C1 20 98 10E-13
D2 20 21 DX
D3 22 20 DX
V1 99 21 DC 0.8
V2 22 50 DC 0.8
*
* Q Output
*
Q3
99 41 46 NOX
Q4
47 42 50 NOX
RB1 43 41 200
RB2 40 42 5E3
CB1 99 41 10E-12
CB2 42 50 5E-12
RO1 46 45 2E3
R02 47 45 500
EO1 98 43 POLY(1) (20,98) 0 1
EO2 40 98 POLY(1) (20,98) 0 1
*
* Q NOT Output
*
Q5
99 61 66 NOX
Q6
67 62 50 NOX
RB3 63 61 200
RB4 60 62 5E3
CB3 99 61 10E-12
CB4 62 50 5E-12
RO3 66 65 2E3
RO4 67 65 500
EO3 63 98 POLY(1) (20,98) 0 1
EO4 98 60 POLY(1) (20,98) 0 1
*
* MODELS
*
.MODEL PIX PNP(BF=100,IS=1E-16)
.MODEL NOX NPN(BF=100,VAF=130,IS=1E-14)
.MODEL DX D(IS=1E-16)
.MODEL SLATCH1 VSWITCH(ROFF=1E6,RON=500,VOFF=2.1,VON=1.4)
.ENDS AD8561
− 10 −
REV.0
AD8561
外形寸法
サイズはインチと(mm)で示します。
8ピン・プラスチックDIP
(N-8)
0.430 (10.92)
0.348 (8.84)
8
5
1
4
0.280 (7.11)
0.240 (6.10)
0.060 (1.52)
0.015 (0.38)
PIN 1
0.210 (5.33)
MAX
0.325 (8.25)
0.300 (7.62)
0.130
(3.30)
MIN
0.160 (4.06)
0.115 (2.93)
0.022 (0.558) 0.100 0.070 (1.77) 実装面
0.014 (0.356) (2.54) 0.045 (1.15)
BSC
0.195 (4.95)
0.115 (2.93)
0.015 (0.381)
0.008 (0.204)
8ピン薄型縮小スモール・アウトライン
(RU-8)
0.122 (3.10)
0.114 (2.90)
1
5
0.256 (6.50)
0.246 (6.25)
0.177 (4.50)
0.169 (4.30)
8
4
PIN 1
0.006 (0.15)
0.002 (0.05)
0.0256 (0.65)
BSC
0.0433
(1.10)
MAX
0.0118 (0.30)
0.0075 (0.19)
実装面
8°
0°
0.0079 (0.20)
0.0035 (0.090)
0.028 (0.70)
0.020 (0.50)
8ピンスモール・アウトラインIC
(SO-8)
0.1968 (5.00)
0.1890 (4.80)
8
0.1574 (4.00)
0.1497 (3.80) 1
PIN 1
0.0098 (0.25)
0.0040 (0.10)
実装面
REV.0
5
4
0.2440 (6.20)
0.2284 (5.80)
0.0688 (1.75)
0.0532 (1.35)
0.0500 0.0192 (0.49)
(1.27) 0.0138 (0.35) 0.0098 (0.25)
0.0075 (0.19)
BSC
− 11 −
0.0196 (0.50)
x 45°
0.0099 (0.25)
8°
0° 0.0500 (1.27)
0.0160 (0.41)
うにやさ
ゅ
い
し
ちき
PRINTED IN JAPAN
D0974-2.7-4/99,1A
AD8011
AD8561
み
る
「この取扱説明書はエコマーク認定の再生紙を使用しています。」
ど
りをまも
− 12 −
REV.0