参考回路:日本語版

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回路ノート
CN-0191
使用したリファレンス・デバイス
テスト済み回路設計集“Circuits from the Lab™ ”は共
通の設計課題を対象とし、迅速で容易なシステム
統合のために製作されました。さらに詳しい情報
又は支援は http://www.analog.com/jp/CN0191 をご覧
ください。
AD5791
D/A コンバータ、20 ビット、1ppm、
±1LSB INL、電圧出力
AD8675
オペアンプ、レール to レール出力、
36V、2.8nV/√Hz 、高精度
AD8676
オペアンプ、デュアル、36V、2.8nV/√
Hz、超高精度、レール to レール出力
20 ビット、リニア、低ノイズ、高精度バイポーラ±10V DC 電圧源
DAC のリファレンス入力の入力インピーダンスは、DAC の
コードに大きく依存し、DAC のリファレンス信号が適切にバ
ッファされないと直線性誤差を生じるため、リファレンス・
バッファはこの設計において非常に重要です。120dB の高い
オープンループ・ゲインを持つ AD8676 は、この回路のアプ
リケーションに必要なセトリング・タイム、低オフセット電
圧、低インピーダンス駆動能力を実現することが実証テスト
されています。AD5791 は、デュアル・オペアンプ AD8676 を
使ってその電圧リファレンス入力をバッファした状態で特性
が評価され、出荷前のキャリブレーションが行われているの
で、これらのデバイスの組合わせに対する信頼性(性能の再
現性)がさらに向上します。
回路の機能とその利点
図 1 に示す回路は、±1 LSB の積分非直線性、±1 LSB の微分非
直線性、低ノイズを実現しながら、−10V~ +10V の範囲でプロ
グラム可能な 20 ビット分解能の出力電圧を提供します。
この回路へのデジタル入力はシリアルで、標準 SPI、QSPI™、
MICROWIRE®、DSP の各インターフェース規格と互換性が
あります。高精度アプリケーションに対応するため、この回
路は高精度と低ノイズの両方を実現します。これは、AD5791、
AD8675、AD8676 の高精度デバイスの組み合わせによって可
能になります。
+15V
1.5kΩ C1 +
1/2
AD8676B
+
A1
10µF
–
10µF
+
10µF
R3
0.1µF
0.1µF
5
4
VDD
VCC
9
IOVCC
8 LDAC
+ –
B1
−15V
VREFPF
10
7 CLR
AD8676B
+15V
1kΩ
R2
1kΩ
1/2
+3.3V +15V
−15V
3
20
VREFPS
R1
+
PRECISION
5V DC
SOURCE
RFB
+15V
–
INV 1
11 SDO
SPI INTERFACE
AND DIGITAL
CONTROL
–10V TO +10V
OUTPUT
VOLTAGE
C1
14 SYNC
VOUT 2
AD5791B
+
AD8675A
VREFNF
VREFNS
AGND
6 RESET
VSS
12 SDIN
DGND
13 SCLK
15
18
16
17
19
−15V
0.1µF
R4
1kΩ
+
R5
2kΩ
10µF
–15V
–
B2
+ –
1/2
AD8676B
09599-001
A2
+
1/2
AD8676B
図 1. 20 ビット精度、±10V 電圧源(簡略化した回路図:接続の一部およびデカップリングは省略されています。)
アナログ・デバイセズ社は、提供する情報が正確で信頼できるものであることを期していますが、その情報の利用に関して、あるいは利用に
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Rev. 0
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本
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大阪営業所/〒532-0003 大阪府大阪市淀川区宮原 3-5-36 新大阪トラストタワー
電話 06(6350)6868
CN-0191
回路ノート
0.6
これらのデバイスを組み合わせることにより、業界最先端の
20 ビット分解能、±1 LSB の積分非直線性(INL)、±1 LSB の微
分非直線性(DNL)で単調増加性を保証するとともに、低消
費電力、小さい PCB 面積、優れたコスト・パフォーマンスを
実現します。
0.4
AD5791 を独立した正リファレンス電圧と負リファレンス電
圧を使って駆動し、出力電圧範囲が負リファレンス電圧から
正リファレンス電圧まで(この場合−10V~+10V)になるよう
にした回路を図 1 に示します。出力バッファには、低ノイズ
で低ドリフトの AD8675(AD8676 のシングル・オペアンプ・
バージョン)を使用しています。AD8676 アンプ(A1 および
A2)は、+5V のリファレンス電圧を+10V と−10V にスケーリ
ングするのにも使用されています。これらのスケーリング回
路の R2、R3、R4、R5 は、許容誤差 0.01%、温度係数
0.6ppm/°C の高精度な金属箔抵抗です。全温度範囲で最高の性
能を得るためには、Vishay 300144 シリーズや VSR144 シリー
ズなどの抵抗ネットワークが使用できます。抵抗性熱ノイズ
によるシステムのノイズを低く抑えるために、小さい抵抗値
(1kΩ および 2kΩ)を選択しています。R1 と C1 はカットオ
フ周波数が約 10Hz のローパス・フィルタを形成します。この
フィルタの目的は電圧リファレンスのノイズを減衰させるこ
とです。
–0.2
–0.4
–0.6
–0.8
0
200k
400k
600k
800k
1M
DAC CODE
図 2. DAC コード 対 積分非直線性
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
–0.1
–0.2
09599-003
–0.3
–0.4
–0.5
0
200k
400k
600k
800k
1M
DAC CODE
図 3. DAC コード 対 微分非直線性
図 1 に示す回路の精度に関する性能は、DAC コードの関数と
しての積分非直線性と微分非直線性を示す図 2 と図 3 のデー
タで実証されています。図からわかるように、積分非直線性
と微分非直線性はどちらも±1 LSB の仕様内に十分収まってい
ます。
この回路の未調整での全誤差は、DC 誤差の組合せ(つまり、
INL 誤差、ゼロスケール誤差、フルスケール誤差)からなり
ます。図 4 に、DAC コードの関数としての未調整の全誤差の
グラフを示します。DAC コードがゼロ(ゼロスケール誤差)
のときと DAC コードが 1,048,575(フルスケール誤差)のと
きに誤差が最大になります。これは予測値で、抵抗ペア R2 お
よび R3、抵抗ペア R4 および R5 の不整合、アンプ A1、A2、
B1、B2 のオフセット誤差に起因します(図 1 参照)。
1
0
–1
–2
–3
–4
–5
09599-004
TOTAL UNADJESTED ERROR (LSB)
2
直線性の測定
Rev. 0
0
09599-002
図 1 に示す D/A コンバータ(DAC)は SPI インターフェース
を備えた高電圧 20 ビット・コンバータ AD5791 で、±1 LSB
の INL、±1 LSB の DNL 、7.5 nV/√Hz のノイズ・スペクトル
密度を実現します。また、AD5791 は 0.05 ppm/°C という極め
て低い温度ドリフトを実現します。AD5791 は高精度のアー
キテクチャを採用しているので、規定された直線性を確保す
るため、電圧リファレンス入力にフォース/センス・バッファ
を使う必要があります。リファレンス入力をバッファするた
めのアンプ(B1 および B2)は、低ノイズ、低温度ドリフト、
低入力バイアス電流のものを選択する必要があります。この
機能のために推奨するアンプは、0.6µV/°C の低オフセット・
ドリフトと 2nA の低入力バイアス電流を特長とする 36V、
2.8nV/√Hz の超高精度デュアル・オペアンプ AD8676 です。ま
た、AD5791 はこのデュアル・オペアンプを使ってその電圧
リファレンス入力をバッファした状態で特性が評価され、出
荷時のキャリブレーションが行われているので、これらのデ
バイスの組み合わせに対する信頼性(性能の再現性)がさら
に向上します。
DNL (LSB)
回路説明
INL (LSB)
0.2
0
200k
400k
600k
800k
DAC CODE
図 4. DAC コード 対 全未調整誤差
-2/4 -
1M
CN-0191
回路ノート
10
この場合の抵抗ペアの不整合の規定値は最大 0.02%(不整合
の代表値はこれよりもはるかに小さい)です。アンプのオフ
セット誤差は最大 75µV、つまり、フルスケール範囲の
0.000375%で、抵抗の不整合による誤差に比べると無視できる
くらいの大きさです。したがって、フルスケール誤差とゼロ
スケール誤差の予測値はそれぞれ最大で約 0.02%、つまり約
210 LSB になります。図 4 の測定値は、フルスケール誤差の
測定値が 1 LSB、ゼロスケール誤差の測定値が 4 LSB、つま
り、フルスケール範囲の 0.0003%であることを示しているの
で、すべての部品の許容誤差がその規定の最大値より大幅に
優れていることが分かります。
8
6
VOLTAGE (µV)
4
0
–2
–4
–6
FULL-SCALE
ZERO-SCALE
MID-SCALE
–8
高精度を実現するには、回路出力でのピーク to ピーク・ノイ
ズを 1 LSB 未満に抑える必要があります。1 LSB は 20 ビット
の分解能で 20V のピーク to ピーク電圧範囲の場合、19.07µV
に相当します。10 秒間にわたり 0.1Hz~10Hz の帯域幅で測定
したピーク to ピーク・ノイズを図 5 に示します。3 種の条件
でのピーク to ピーク値は、ミッドスケール出力で 1.48µV、フ
ルスケール出力で 4.66µV、 ゼロスケール出力で 5.45µV です。
ノイズはミッドスケール出力で最小となっています。これは
DAC コアからのノイズのみを表しているからです。ミッドス
ケールのコードを選択したときは、各電圧リファレンス経路
からのノイズの影響は DAC によって低減されます。
4
ZERO-SCALE
FULL-SCALE
MID-SCALE
3
09599-006
ノイズの測定
OUTPUT VOLTAGE (µV)
2
–10
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
TIME (Seconds)
図 6. 100 秒間測定した電圧ノイズ
測定時間を長くすると低い周波数が含まれ、ピーク to ピーク
値が大きくなります。低周波数では、温度ドリフトと熱電対
効果がノイズに影響するようになります。これらの影響は、
AD5791、AD8675、AD8676 のような温度係数の低い部品を選
択し、回路の構築について慎重に検討することによって最小
限に抑えることができます。「さらに詳しい資料」セクショ
ンのリンクされたドキュメントを参照してください。
バリエーション回路
2
AD5791 は 0V~+5V から±10V までの広い出力範囲をサポート
します。図 1 に示す構成を使用して、必要に応じて対称また
は非対称の出力範囲を生成することもできます。個別のリフ
ァレンスを VREFP と VREFN に供給し、AD5791 のデータシート
に述べられているように、AD5791 の内部コントロール・レ
ジスタの RBUF ビットをロジック「1」に設定することにより、
出力バッファをユニティ・ゲインに設定する必要があります。
1
0
–1
–2
09599-005
–3
–4
0
2
4
6
8
10
TIME (Seconds)
図 5. 0.1Hz~10Hz の帯域幅での電圧ノイズ
しかしながら、実際のアプリケーションでは、0.1Hz で 1/f ノ
イズを減衰させるハイパス・カットオフ・フィルタ特性では
なく、通過帯域に DC までの周波数が含まれます。したがっ
て、図 6 のほうが、より現実的に実測ピーク to ピーク・ノイ
ズを示しています。この場合、回路の出力でノイズを 100 秒
間測定しているので、実効的に 0.01Hz までの低い周波数が測
定に含まれています。上側のカットオフ周波数は約 14Hz で、
測定セットアップによって制限されます。図 6 に示す 3 つの
条件でのピーク to ピーク値は、ミッドスケール出力で 4.07µV、
フルスケール出力で 11.85µV、ゼロスケール出力で 15.37µV
です。ワーストケースのピーク to ピーク値である 15.37µV は
約 0.8 LSB に相当します。
Rev. 0
-3/4 -
また、AD5791 はデータシートに述べられているように、単
一の正電圧リファレンスから対称のバイポーラ出力電圧範囲
を生成するゲイン 2 のモードも備えています。このモードで
は負電圧リファレンスを生成する必要がありませんが、フル
スケール誤差とゼロスケール誤差が大きくなります。このモ
ードは AD5791 の内部コントロール・レジスタの RBUF ビッ
トをロジック「0」に設定することにより選択されます。
回路の評価とテスト
図 1 に示す回路は、修正済みの AD5791 評価ボード上に構築
したものです。AD5791 評価ボードとテスト方法の詳細につ
いては、評価ボードのユーザーガイド UG-185 を参照してく
ださい。
CN-0191
回路ノート
さらに詳しい資料
データシートと評価ボード
Egan, Maurice. "The 20-Bit DAC Is the Easiest Part of a 1-ppmAccurate Precision Voltage Source," Analog Dialogue,
Vol. 44, April 2010.
AD5791 データシート
AD5791 評価ボード
AD8676 データシート
Kester, Walt. 2005. The Data Conversion Handbook. Analog
Devices. Chapters 3 and 7.
AD8675 データシート
MT-015 Tutorial:Basic DAC Architectures II: Binary DACs.
Analog Devices.
MT-016 Tutorial:Basic DAC Architectures III: Segmented DACs,
Analog Devices.
改訂履歴
MT-031 Tutorial:Grounding Data Converters and Solving the
Mystery of AGND and DGND. Analog Devices.
3/11—Revision 0: 初版
MT-035 Tutorial:Op Amp Inputs, Outputs, Single-Supply, and
Rail-to-Rail Issues, Analog Devices.
MT-101 Tutorial:Decoupling Techniques. Analog Devices.
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