参考回路:日本語版

日本語参考資料
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回路ノート
CN-0221
接続/参考にしたデバイス
Circuits from the Lab™ 実用回路は今日のアナログ・
ミックスド・シグナル、RF 回路の設計上の課題の
解決に役立つ迅速で容易なシステム統合を行うため
に作製、テストされました。詳しい情報と支援につ
いては www.analog.com/jp/CN0221 をご覧ください。
ADuCM360/
ADuCM361
24 ビット Σ-Δ ADC 内蔵 Cortex-M3
ベースのマイクロコントローラ
ADP1720-3.3
低ドロップアウト・リニア・
レギュレータ
高精度アナログ・マイクロコントローラ ADuCM360 と外付け熱電対を
使用した USB ベースの温度モニタ
ッシュ、8 kB SRAM、各種デジタル・ペリフェラル(UART、
タイマ、SPI、I2C インターフェースなど)と共に、デュアル
の 24 ビット・シグマデルタ(Σ-Δ)型 A/D コンバータ 、デュ
アルのプログラマブル電流源、12 ビット D/A コンバータ、
1.2 V 内部リファレンスを集積しています。
評価と設計支援
回路評価ᇶᯈ
CN-0221 評価⏝ボード(EVAL-ADuCM360)
設計と統合ファイル
回路、レイアウト・ファイル、部品表、
ADuCM360 用ソースコード
この回路では、熱電対と 100Ω の白金測温抵抗体(RTD)を
ADuCM360/ADuCM361 に接続します。この RTD は冷接点補
償に使用します。
回路の機能とその利点
ソースコードでは、4Hz の ADC サンプリング・レートを選択
しました。ADC の入力プログラマブル・ゲイン・アンプ
(PGA)のゲインを 32 に設定すると、ADuCM360/
ADuCM361 のノイズフリー・コード分解能は 18 ビット以上
になります。
これは、高精度熱電対温度モニタ・アプリケーションにおい
て高精度アナログ・マイクロコントローラ
ADuCM360/ADuCM361 を使用した回路です。
ADuCM360/ADuCM361 は ARM Cortex-M3 コア、126 kB フラ
3.3V
USB HEADER
ADP1720-3.3
BEAD
BEAD
10Ω
OUT
GND
IN
5V
4.7µF
4.7µF
10µF
0.1µF
FT232R
D–
D+
RxD
AVDD
AIN5/IEXC
GND
SHIELD
0.1µF
TxD
RESET
10Ω
100Ω
PtRTD
0.1µF
BEAD
IOVDD
RESET
P2.2/BM
AIN0
SD
0.01µF
10Ω
AIN1
0.01µF
FERRITE BEADS:
1kΩ @ 100MHz
TAIYO YUDEN
BK2125HS102-T
ADuCM360
VREF +
RREF
5.6kΩ
0.1%
VREF –
AIN7/VBIAS
AGND
TxD
RxD
09985-001
J1
P0.1/SIN
AIN3
THERMOCOUPLE
JUNCTION
P0.2/SOUT
AIN2
図 1. 熱電対インターフェースを備えた温度モニタ・コントローラとしての ADuCM360/ADuCM361
(簡略化した回路;接続のすべては示されていません)
Rev. 0
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CN-0221
回路ノート
なお、リファレンス抵抗(RREF)は高精度の 5.6 kΩ(±0.1%)
にする必要があります。
回路の説明
このアプリケーションでは ADuCM360/ADuCM361 の次の特徴
を利用します。
•
•
•
•
•
•
•
•
熱電対と RTD 用にソフトウェアでゲインを 32 に設定した
PGA を備えた 24 ビット Σ-Δ ADC。この ADC1 を連続的に
切り替えながら熱電対電圧と RTD 電圧をサンプリングし
ました。
制御電流を RTD に強制的に流すプログラマブル励起電流
源。このデュアルの電流源は 0 µA から 2 mA まで設定可能
です。この例では、RTD の自己発熱によってもたらされる
誤差を最小限にするために 200 µA に設定しました。
ADuCM360/ADuCM361 に含まれる ADC 用内部 1.2 V リフ
ァレンス。熱電対電圧を測定するため、高精度の内蔵電圧
リファレンスを使用しました。
ADuCM360/ADuCM361 に含まれる ADC 用の外付け電圧リ
ファレンス。RTD 抵抗を測定するためこの VREF+と
VREF−ピンの間に外付けリファレンス抵抗(RREF)を接続
するレシオメトリック構成を使用しました。
バイアス電圧発生器(VBIAS)。熱電対の同相電圧を
AVDD/2 に設定するために VBIAS 機能を使用しました。
ARM Cortex-M3 コア。126 kB フラッシュと 8 kB SRAM を
集積した強力な 32 ビット ARM コアでユーザー・コードを
実行し、ADC の設定、制御、RTD からの ADC 変換結果の
処理、UART/USB インターフェースを介した通信制御をし
ます。
ホスト PC への通信インターフェースとして UART を使用
しました。
ADuCM360/ADuCM361 をフラッシュ・ブート・モードに
設定する 2 個の外付けスイッチを使用します。SD を”ロ
ー・レベル”に保持したまま、リセットボタンをトグルす
る事により、ADuCM360/ADuCM361 は通常のユーザー・
モードではなくブート・モードになります。ブート・モー
ドでは UART インターフェースを介して内蔵フラッシュに
再書き込みする事ができます。
ADuCM360/ADuCM361 の USB インターフェースは(USB 信号
を UART に直接変換する形で)UART to USB トランシーバ
FT232R を使用して実現されています。
図 1 に示すデカプリングに加え、USB ケーブル自体にも
EMI/RFI 保護を強化するフェライト・ビーズを使用する必要が
あります。回路で使用したフェライト・ビーズは(100MHz で
1000 Ω のインピーダンスを持つ)太陽誘電製の#BK2125HS102T です。
回路は、大面積のグランドプレーンを持った多層 PC ボード
(PCB)に構築してください。適正な性能を実現するには正し
いレイアウト、グラウンディング、デカプリング技術が必要で
す。(チュートリアル MT-031「Grounding Data Converters and
Solving the Mystery of "AGND" and "DGND"」、 チュートリアル
MT-101「Decoupling Techniques」、ADuCM360TCZ 評価⏝ボー
ドレイアウトを参照)
この回路の評価に使用される PCB を図 2 に示します。
このアプリケーションで使用する熱電対は温度範囲が−200°C ~
+350°C のタイプ T(銅コンスタンタン)です。 その感度は約
40 µV/°C なので、ゲイン 32 の PGA 設定で、バイポーラモード
の ADC で、熱電対の全温度範囲をカバーできます。
RTD は冷接点補償に使用しました。この回路で実際に使用した
RTD は、白金 100 Ω RTD(Enercorp 社 PCS 1.1503.1)です。
これは 0805(表面実装パッケージ)で供給可能です。この
RTD の温度変動は 0.385 Ω/°C です。
Rev. 0 | Page 2 of 5
09985-002
熱電対と RTD はいずれも非常に小さな信号を生成します; 従
って、それらの信号を増幅するために PGA が必要です。
図 2. この回路で使用した EVAL-ADuCM360ボード
CN-0221
回路ノート
20
コードの説明
今回の回路のテストに使用したソースコードは ADuCM360 製品
ページから zip ファイルでダウンロードできます。
–20
ERROR (°C)
UART はボーレート= 9600、データビット=8、パリティ無し、
に設定します。今回の回路を PC に直接接続した場合、図 3 に
示すように、Hyper Terminal のような通信ポート・ビューワ・
アプリケーションを使用して、プログラムから UART に送信さ
れた結果を表示する事ができます。
0
–40
–60
–100
–210
–140
–70
0
70
140
210
280
09985-004
–80
350
TEMPERATURE (°C)
図 4. 簡単な線形近似法を使用した時の誤差
最初は、熱電対での電圧が 40 µV/°C とする直線的な簡単な仮定
に基づいて変換を行いました。しかし、この場合図 4 からわか
るように、誤差が許容できるのは 0°C 付近の狭い範囲のみです。
熱電対温度をより精度良く計算する方法は正の温度に 6 次多項
式を用い、負の温度に 7 次多項式を用いる事です。しかしこれ
には数値演算が必要となり、演算時間とコードサイズが増大し
ます。これらに対し、納得のいく妥協案は、一定数の電圧につ
いてそれぞれの温度を計算する事です。これらの温度を配列に
格納し、隣接する 2 点間で線形補間を行う事によって中間値を
計算します。この方法を使用する事により誤差が大幅に減少す
る事が図 5 からわかります。図 5 は理想的な熱電対電圧を使用
した時の計算誤差です。
09985-003
0.30
0.25
図 3. 通信ポート表示アプリケーション Hyper Terminal の出力
ERROR (°C)
0.15
0.10
0.05
まず熱電対の 2 本のワイア間の電圧を測定します(V1)。そし
て RTD 電圧を測定し、ルックアップ・テーブルによって温度に
変換します。次にこの温度をその等価な熱電対電圧(V2)に変
換します。さらに V1 と V2 を加算して全体の熱電対電圧を計算
し、最終的な温度測定値に変換します。
0
–0.05
–210
–140
–70
0
70
140
TEMPERATURE (°C)
210
280
350
09985-005
温度の測定値を得るために、熱電対と RTD の温度を測定します。
RTD 温度はルックアップ・テーブルを介して等価な熱電対電圧
に変換されます(ISE 社、表 ITS-90 の熱電対 T タイプを参照)。
これら 2 つの電圧を加算する事によって、熱電対の絶対値が得
られます。
0.20
図 5. 52 個のキャリブレーション・ポイントと理想的な測定による
区分的線形近似を使用した時の誤差
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CN-0221
回路ノート
図 6 は ADuCM360 上の ADC1 を使用して、熱電対の動作範囲全
体にわたり 52 点の熱電対電圧を測定した時の誤差を示します。
全体のワーストケース誤差は<1°C です。
0.5
基本的なテストのセットアップを図 7 に示します。熱電対を J5
に接続します。そしてジャンパ J1 を取り付けて、熱電対のコモ
ン・モード電圧を AIN7/VBIAS ピンから供給できるようにする
必要があります。ボードの電力は PC の USB 接続から供給しま
す。
0.3
0.2
ERROR (°C)
回路のテストと評価するために、熱電対測定と RTD 測定を別々
に評価しました。
熱電対測定のテスト
0.4
0.1
0
回路の性能を評価するために 2 つの方法を使用しました。初め
に、回路のテストに使用した熱電対をボードに接続し、氷の温
度を測定し、次に沸騰水の温度を測定しました。
–0.1
–0.2
–0.3
–140
–70
0
70
140
TEMPERATURE (°C)
210
280
350
09985-006
–0.4
–0.5
–210
回路の評価とテスト
図 6. ADuCM360/ADuCM361 によって測定した 52 個のキャリブレ
ーション・ポイントを使用して区分的線形近似を行った時の誤差
RTD の温度はルックアップ・テーブルを使って計算し、熱電対
の場合と同じ方法を RTD についても用います。RTD にはその
温度を抵抗の関数として表す別の多項式がある事に注意してく
ださい。
図 4 と図 6 に示すように、誤差を十分に評価するために
Wavetek 社の多機能校正器 4808 を使用しました。図 7 に示すよ
うに、熱電対の代わりに電圧源として校正器を使用しました。
T タイプ熱電対の全範囲を評価するために、この校正器を用い
て、T タイプ熱電対の負と正の範囲に対応する−200°C ~+350°C
の範囲の 52 ポイントに等価の熱電対電圧を設定しました(ISE
社の表 ITS-90 の T タイプ熱電対を参照)。
ルックアップ・アルゴリズムの正確性を評価するために、+1°C
間隔で温度−200°C ~ +350°C の範囲に相当する 551 個の電圧値
を温度計算関数に代入しました。図 4 と図 5 に示すように線形
法と区分的線形近似法について誤差を計算しました。
RTD の直線化と性能の最適化の詳細については、アプリケーシ
ョン・ノート AN-0970「RTD Interfacing and Linearization Using
an ADuC706x Microcontroller」を参照してください。
EVAL-ADuCM360TCZ
THERMOCOUPLE
JUNCTION
J5
バリエーション回路
J1
ADuCM360/ADuCM361 は標準のシリアル線インターフェース
を介してプログラム/デバックする事ができます。
標準的な UART to RS-232 インターフェースには、FT232R トラ
ンシーバの代わりに 3V 電源で動作する ADM3202 などのデバイ
スを使用する事ができます。より広い温度範囲の測定には、タ
イプ J のような別の熱電対を使用する事ができます。冷接点補
償誤差を最小限に抑えるには、サーミスタを PCB 上に配置する
のではなく実際の冷接点に接触させて配置します。
冷接点温度の測定に RTD と外付けリファレンスを使用する代わ
りに、外付けデジタル温度センサーを使用する事もできます。
たとえば、ADT7410 を I2C インターフェースを介して
ADuCM360/ADuCM361 に接続する事ができます。
冷接点補償の詳細については Sensor Signal Conditioning, Analog
Devices, Chapter 7, “Temperature Sensors.”を参照してください。
USB コネクタとこの回路の間にアイソレーションが必要な場合
は、アイソレーション・デバイス ADuM3160/ADuM4160 を追加
してください。
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SEE TEXT
AIN7/VBIAS
USB
CABLE
WAVETEK 4808
MULTIFUNCTION
CALIBRATOR
PC
09985-007
ADP120 の代わりにレギュレータ ADP1720 を使用する事ができ
ます。ADP1720 の動作温度範囲は同じ(−40°C~ +125°C)です
が消費電流はより少ないです(標準 35 µA 対 70 µA)、しかし
最大入力電圧は低下します。
図 7. 熱電対の全出力電圧範囲での回路の校正と
テストに使用したセットアップ
CN-0221
回路ノート
RTD 測定のテスト
さらに詳しくは
RTD 回路と直線化処理のソースコードを評価するために、ボー
ド上の RTD を正確で調整可能な抵抗源と置き換えました。使用
した計器は 10 進の可変抵抗器 1433-Z です。RTD 値は 90 Ω~
140 Ω ですが、これは RTD の温度範囲−25°C ~ +114°C を表し
ます。
CN0221 Design Support Package:
http://www.analog.com/CN0221-DesignSupport
テスト・セットアップ回路を図 8 に示します。そして RTD
0.1µF
1433-Z
DECADE
RESISTOR
AN-0970 Application Note : RTD Interfacing and Linearization Using
an ADuC706x Microcontroller
IOVDD
MT-022 Tutorial : ADC Architectures III:Sigma-Delta ADC Basics
0.1µF
AVDD
MT-023 Tutorial : ADC Architectures IV:Sigma-Delta ADC
Advanced Concepts and Applications
IOVDD
AIN5/IEXC
10Ω
Kester, Walt.1999.Sensor Signal Conditioning.Analog
Devices.Chapter 7, "Temperature Sensors."
Kester, Walt.1999.Sensor Signal Conditioning.Analog
Devices.Chapter 8, "ADCs for Signal Conditioning."
テストの誤差結果を図 9 に示します。
AVDD
ADIsimPower 設計ツール
MT-031 Tutorial : Grounding Data Converters and Solving the
Mystery of “AGND” and “DGND”
AIN0
0.01µF
MT-101 Tutorial : Decoupling Techniques
AIN1
10Ω
ITS-90 Table for Type T Thermocouple.
ADuCM360
0.01µF
データシードと評価用ボード
ADuCM360 データシート/評価用キット
VREF +
RREF
5.6kΩ
0.1%
ADuCM361 データシート/評価用キット
09985-008
VREF –
ADM3202 UART to RS232 トランシーバ・データシート
ADP120 データシート
図 8. RTD 誤差測定のためのテスト・セットアップ
ADP1720 データシート
0
–0.01
改訂履歴
–0.02
5/12—Revision 0:初版
ERROR (°C)
–0.03
–0.04
–0.05
–0.06
–0.07
09985-009
–0.08
–0.09
–0.10
–25
–5
15
35
55
75
95
115
TEMPERATURE (°C)
図 9. 区分的直線化コードと ADC0 の測定値を用いた
RTD 測定の誤差(°C)
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CN09985-0-5/12(0)
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