AN-1192: AD8338 を使用したデザイン (Rev. 0) PDF

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AN-1192
アプリケーション・ノート
AD8338 を使用したデザイン
著者: David Hunter
はじめに
低消費電力でダイナミックレンジの広い AD8338 可変ゲイン・
アンプ (VGA) は、デバイスの豊富な機能セットにより多くのソ
リューションを提供します。従来、VGA は信号レベルの正規化、
プログラマブルなゲイン・システム、ダイナミックレンジの拡
張、自動ゲイン制御(AGC)などの多くのアプリケーションで使
用されてきました。
このデバイスのコア回路は、GAIN ピン入力を使って設定され
る 80 dB の総合ダイナミックレンジを提供します。デザインを
最小構成とする場合、18 mm2 の小さいボード面積でゲイン = 1~
10,000 の回路を実現することができます。外付け抵抗を使用す
るとこのデバイスは市販品として最も柔軟な VGA の 1 つになり、
低入力ノイズ、可変減衰/利得アンプとして機能できる VGA、
または大きな総合ゲインのアンプ機能を提供します。
このアプリケーション・ノートでは、AD8338 のデザインと
様々な状況でのこのデバイスの使い方について説明します。ま
た、一般的なデザイン手法、および特別な拡張動作モードにつ
いての情報も記載してあります。幾つかのアプリケーション例
も示してあります。
図 1.ブロック図
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AN-1192
アプリケーション・ノート
目次
はじめに .............................................................................................. 1
AD8338 の出力 ............................................................................... 3
改訂履歴 .............................................................................................. 2
AD8338 に対する入力 ................................................................... 6
デザイン上の考慮事項 ...................................................................... 3
デザイン例: 電圧制御の減衰/利得アンプ .............................. 10
効果的なデザイン .......................................................................... 3
改訂履歴
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AN-1192
アプリケーション・ノート
デザイン上の考慮事項
効果的なデザイン
AD8338 を用いた効果的なデザインには、デバイスの長所と短所
を理解することが必要です。デバイスはもともと低消費電力で
あるため、バッテリ-・アプリケーションで長い動作時間を提
供し、固定設置のシステムでは低消費電力を実現します。しか
しながら AD8338 の特長であるこの低動作電流のために幾つか
の制限が生じ、デバイスを最も効果的に使用するためには、こ
れらを理解する必要があります。一般に、消費電力のトレード
オフは、帯域幅とスルーレートとの間で行われます。
スルーレートと出力振幅の仕様は、デバイスの大信号機能につ
いての情報を提供します。規定値では、各出力は 1.5 V のリファ
レンス電圧から約 700 mV 変化します。
図 2 に、1.5 V リファレンスを中心に±700 mV の出力振幅を示し
ます。2 つの出力の差が実効振幅 ±1.4 V になります (データ・シ
ートに規定するように差動で 2.8 V p-p を実現)。
中程度のゲイン (40 dB)での AD8338 の消費電流は 3 mA (typ)で
す。したがって、3 V 電源での通常動作では、静止消費電力は僅
か 9 mW です。これを姉妹品である AD8330 の消費電力、5V で
20mA と 比 較 す る と そ の 10% に し か な り ま せ ん 。 た だ し 、
AD8338 は、AD8330 より低速で、1.5 kV/µs のスルーレートも、
150 MHz の−3 dB ポイント動作も持っていません。そのかわり、
AD8330 とは異なり、30 dB 大きいゲインを提供し、デザイン性
能を決める多くの機能が追加されています。このため、AD8338
は注目する信号が 18 MHz より低くかつ振幅が小さいベースバン
ドまたは低周波中間周波数 (IF) アプリケーションで最もよく使
用されます。
電源については、このデバイスは 3.0 V~5.0 V で動作しますが、
1.50 V の内蔵リファレンス電圧を使って、電源電圧とは無関係
にデバイスのバイアスを設定しています。これは、AD8338 の信
号経路は電源とは無関係に、3.0 V システムに正規化されること
を意味します。
LFCSP-16 パッケージは、この高集積デバイスに対して非常に
小型なソリューションを提供しています。最適な使用には、幾
つかのレイアウト上の考慮が必要です。一般に、次のレイアウ
ト考慮事項に注意する必要があります。
•
•
•
•
入力 INMR/INMD と入力 INPR/INPD は同じ長さで近づけて
配置する必要があります。
電源バイパス・コンデンサは、デザイン上可能な限りデバ
イス・ピン近くに配置します。
INPD 入力と INMD 入力に外付け抵抗を付けて使用する場合、
INMR 入力と INPR 入力は直接または適切な値の抵抗を介し
て短絡して、不安定を防止します。
変調効果を小さくするため GAIN ピンと VAGC ピンの配線
に注意します。
図 2.差動信号とその出力波形の合計振幅
オーバードライブ状態では波形がクリップされるため、振幅情
報が失われて信号の品質が損なわれるます。オーバードライブ
出力の他に注意する必要がある問題は、スルーレートの制限で
す。
小信号帯域幅が 18 MHz ですべてのゲインに対して規定されてい
ますが、これはこの周波数で差動出力が±1.4 V 変化できること
を意味するのではありません。フル帯域幅 18 MHz でシングルエ
ンド振幅 0.7 V の出力を期待するものとすると、関数計算は次の
ようになります。
() = 0.7 sin(218 × 106 )
変化率は信号の微分で得られ、
•
•
•
= 2π18 × 106 × 0.7 cos(2π18 × 106 t)
(2)
dV(t)
= 79.17 × 106 V/s
(3)
t = 0 のとき、変化のピーク・レートは次のようになり、79 V/μs
です。
dt
これは、AD8338 の性能より 30 V/μs 大きな値です。大振幅の出
力信号に対する最大実効周波数は、次のようになります。
小信号帯域幅 : 18 MHz
スルーレート: 50 V/μs
出力ピーク to ピーク振幅: 2.8 V
Rev. 0
dV(t)
dt
AD8338 の出力
AD8338 の最適性能を得るためには、シグナル・チェーンのデザ
インを出力から始める必要があります。データ・シートの次の
3 つの重要機能に注意します。
(1)
50V
µs
f=
- 3/10 -
=
0.7×2πf
106
50×106
2π0.7
(4)
(5)
AN-1192
アプリケーション・ノート
式 5 から、大振幅周波数の計算値は約 11.3 MHz になります。図
3 に、周波数に対する大信号出力振幅値のクイック・リファレ
ンスを示します。
図 4.2 トーン歪み解析、出力無負荷
図 3.大信号振幅の周波数特性、シングル・エンド
出力に対するその他のデザイン考慮事項は負荷です。ドライバ
は周波数に対して低い出力インピーダンスを持ちますが、直線
性性能は 1 kΩ 以下の差動負荷から低下し始めます。
図 4 に、AD8338 の最小負荷での出力 (1.0 kΩ)を示します。ここ
では、2 トーン相互変調歪みは妥当な低さです。図 5 に、200 Ω
差動負荷での出力の動作を示します。
図 4 に比較して相互変調歪みが高レベルであることに注意して
ください。AD8338 の後段のデバイスが 1 kΩ より小さい入力イ
ンピーダンスを持つ場合、AD8138 のようなバッファを使うこと
で、この障害を克服することができます。
図 5.2 トーン歪み、差動負荷 = 200 Ω
Rev. 0
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アプリケーション・ノート
AD8338 のピン配置も、出力ステージで使用する帰還抵抗値を容
易に変更できるようになっています。これは主に、1.50 V の設
定ポイントからの同相モード出力を調整する手段を提供します。
帰還抵抗の値を小さくしたい場合がありますが、値を小さくす
ると、出力は比例して小さくなります。これは、内部電流モー
ド VGA ブロックが電流出力のために起こります。この電流の最
大振幅はデザインにより固定で、最大出力振幅は帰還抵抗で決
まります。内部帰還抵抗 9.5 kΩ の場合、出力は±0.7 V に制限さ
れます。並列に 9.5 kΩ 抵抗を追加接続すると、出力は半分の
±0.35 V に低下します。
デザイン例: AD8130 の駆動
5.0V
5.0V
0.1µF
この例は、AD8338 の差動出力をシングルエンド出力へ変換す
る際の Mini-Circuits 社製トランス ADT16-6T+についての例です。
多くの RF デザインでは、50 Ω の特性インピーダンスを使用す
るため、ADT16-6T+も 50 Ω を中心としてデザインされています。
トランス・アプリケーションの考慮事項を使って注意深くデザ
インすると、50 Ω の制限から離れて、他のインピーダンスで使
用することも可能です。
トランスの効果的な使用のためには、トランスのモデル化で使
用する次式を理解する必要があります。
0.1µF
2
OUTP
2
5.0V
2.5V REF
OUTM
FB
ADR5041
0.1µF

= 1
1
(6)

2 = 1 2
AD8130
AD8338
(7)
1
2 2 = 1 1
2 = 1
11509-006
INPR
INMR
トランスは、Mini-Circuits 社や Coilcraft 社などの多くの製造者が
市販しています。特にフェライト・コアを使用するトランスは、
適切な範囲の帯域幅で優れたインピーダンス整合を提供します。
これに対して、集中定数 LC 回路は非常に狭い範囲の帯域幅で
の性能に優れています。
(8)
1
(9)
2
添字 2 が付いた項は 2 次側(Secondary Stage)の部品を表し、添字
1 が付いた項は 1 次側(Primary Stage)の部品を表します。項 N は、
トランスの対応する側の巻数を表します。
図 6.AD8130 アンプを使用した
シンプルな差動/シングルエンド変換ソリューション
最適な直線性を維持して、AD8338 の差動出力をシングルエンド
信号へ変換が必要な場合には、AD8130 のような後段アンプが優
れた選択肢になります。
式 10~式 13 は、理想的なケースでの 1 次側から 2 次側への関係
または逆向きの関係を表します。これらの項を使って、2 次巻
線側から見たインピーダンスを計算します。
2 =
AD8130 は高速高入力インピーダンスの差動/シングルエンド変
換アンプであり、外付け部品なしで完全なソリューションを提
供します。AD8130 は、6 MΩ の差動入力インピーダンスと 4 MΩ
の同相モード入力インピーダンスを持っています。
ただし、幾つかのトレードオフがあります。AD8130 の最小電源
電圧は 4.5 V で、このために全体のデザインは、 5.0 V 電源固有
になってしまいます。AD8130 の出力は、各レールから 1.1 V 内
側の範囲 (1.1 V~3.9 V)に制限されますが、出力でフル信号振幅
2.8 V p-p が実現でき、AD8338 からの差動出力に一致します。
AD8130 のアプリケーションにはリファレンス電圧も必要です。
リファレンス電圧が 2.5 V の中心より外れて設定されると、出力
の実効範囲は小さくなります。
デザイン例: 出力ステージの受動部品結合
消費電力の制限が厳しい場合には、能動素子数を少なくする必
要があります。この場合、ボード面積と部品価格が犠牲になり
ますが、非抵抗受動部品が効果的なソリューションを提供しま
す。
一般に、受動結合に対してはトランスとインダクタ・コンデン
サ (LC 回路)の 2 つのデザイン方法があります。
Z2 =
2
2
V1
I1
2 =
1
1 =
1
ここで、
1
=

1 2
1

1 1
2
�
N2
N1

(10)
×
× �2�
1
2
N2
N1
�
(11)
(12)
(13)
1
したがって、

2 = 1 × �2�
1
2
(14)
式 14 から、2 次インピーダンスと 1 次インピーダンスの関係は、
巻数比の 2 乗で表されることが分かります。ADT16-6T+ トラン
スのデータ・シートでは、インピーダンス比を 16:1 と規定して
います。これは巻数比とは異なります。この固有のケースでは、
巻数比 1:4 に対して、1 次インピーダンスが 50 Ω に、2 次インピ
ーダンスが 800 Ω(16 倍)に、それぞれなります。
最適な直線性を得るためには、AD8338 出力の負荷を少なくと
も 1 kΩ にする必要があります。式 14 から、インピーダンス Z2
を 1.0 kΩ に設定しようとすると、計算によりインピーダンス Z1
は 62.5Ω になります。ただし、Z2 を 1.2 kΩ に設定すると、イン
ピーダンス Z1 は 75 Ω になり、これは業界の標準値になります。
トランスが 1 次巻線から 2 次巻線へのエネルギー結合を開始す
る前に、デバイスの磁化インダクタンスが、使用できる下側周
波数を設定します。このケースでは、50 Ω システムの場合、デ
バイスの結合は 3 dB ポイントの 100 kHz から 70 MHz までにな
ります。
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AN-1192
アプリケーション・ノート
このデザインの場合、出力は 75 Ω に設定され、入力は 1.2 kΩ に
設定されています。トランスの 2 次巻線が AD8338 出力に直接接
続されている場合、トランスは 3 dB 結合ポイントより下の周波
数では短絡となります。したがって DC カット用コンデンサが
必要になり、その値はトランスの結合周波数で決定されます。
そのために、トランスの 3 dB ハイパス・コーナー(AD8338 にイ
ンターフェースする 2 次側が基準)を計算する必要があります。
結合周波数の変化は 50 Ω を超える負荷の変化の比に比例すると
いう簡単な近似を行うことができます。したがって、75 Ω ポー
トの新しいインピーダンスは、
75
 = 100 × 50
 = 150
(15)
(16)
トランスのハイパス 3 dB コーナーの近似値が得られたので、ト
ランス結合が実効的に始まるポイントで AC 結合が有効に働く
ように出力コンデンサを選択します。シンプルな方法は、注目
するコーナー周波数で約 10 Ω となるように出力コンデンサ値を
選択することです。このケースでは、150 kHz のコーナー周波数
に対して、
1
 ≈ 
 ≈
巻数比の性質から、出力最大信号振幅での 1 次電圧は、
N
V1 = N1 V2
2
(20)
信号 V2 は、OUTP と OUTM との差から構成されているため、
1
1 = 4 (±0.7 − ∓0.7)
1 = ±0.350
(21)
(22)
式 21 は電圧 V1 を表し、 2 つの信号の差の瞬時値として変化す
ることに注意してください。OUTP が正の場合、OUTM は負に
なります。OUTP が負の場合、OUTM は正になります。
覚えておくべき重要な性質は、電力はこのインピーダンス変換
で保存されることです。(いいかえると、電圧が増幅されても、
電力は増幅されません)75 Ω 負荷で、4.67 mA のピーク電流が
得られ、 AD8338 出力は 1.2 kΩ の等価負荷に 1.17 mA を供給し
ます。
(17)
1
2150×10
 ≈ 0.1
(18)
(19)
図 7.トランスを使用する回路例
これらの技術を 1:1 バラン・トランスを使った回路にも適用する
ことができますが、十分低い周波数で磁気結合できる既成品ト
ランスを探すことが困難です。
図 8.図 7 に示す短絡からの差動入力信号 (CH2/CH3、青/灰色)
からのトランス出力 (CH1、黄色)
図 8 で、各出力は 162 mV の rms 合計出力を発生し、トランス出
力は 40 mV rms になります。
AD8338 に対する入力
間違いなく、AD8338 の入力ステージは他の VGA と比べてユニ
ークです。デバイスの入力は、入力のダイナミックレンジ、ノ
イズ、帯域幅、電力整合の限界を設定します。入力ステージの
デザインに注意すると、デバイスをアプリケーションに合わせ
て微調整することができます。
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アプリケーション・ノート
入力抵抗のゲインに対する影響
50
入力抵抗を選択する際に注意する 2 つ目の問題は、ゲインへの
影響です。データ・シートが式 6 で規定するように、GAIN ピン
に加える電圧が 0.1V の場合、最小ゲインは、
40

� − 26
20
(23)
9.5 kΩ の帰還抵抗を維持し、上の例で 210 Ω の入力抵抗を使用
すると、最小ゲインは、
9500
() = 20 × log � 210 � − 26
(25)
() = 80 + 7.1
(26)
–40
–50
0.1
CALCULATED
MEASURED
0.3
0.5
0.7
0.9
VGAIN VOLTAGE (V)
() = 87.1
1.1
(27)
図 9 に、 210 Ω の入力抵抗を使用した場合の、測定ゲインと計
算ゲインを示します。
100
80
60
20
0.5
1.0
11509-009
CALCULATED
MEASURED
VGAIN VOLTAGE (V)
図 10 では、式 23 から得られる最小ゲインが −38.7 dB の減衰に
なります。この実際の意味は、AD8338 を減衰器として設定する
と、電源レールより大きい入力信号を処理することができるこ
とです。図 10 を得るために行った測定では、10 V p-p の入力信
号を 41.2 kΩ の入力抵抗に入力しました。理論上、内部トランス
コンダクタンス・ステージの 3 mA の入力電流制限値を超えない
限り、非常に高い入力電圧を使うことができます。
ゲインは入力抵抗の関数として変化するため、設計に注意が必
要です。低インピーダンス・ソースまたは受動 LC フィルタに
よりフィルタが短絡状態として機能する場合、式 23 はゲインが
非常に大きくなることを示しています。AD8338 を駆動するソー
スのソース抵抗が 1 Ω とすると、最小ゲインは 53 dB になりま
す。信号がない場合、内部デバイス・ノイズは 53 dB だけ増幅
されます。
40
0
図 10.VGAIN 対ゲイン、測定値と計算値、入力抵抗 = 41.2 kΩ
図 9.VGAIN 対ゲイン、測定値と計算値、入力抵抗 = 210 Ω
同様に、このゲイン調整は大きな入力抵抗値にも有効であり、
図 10 に示す減衰/利得 VGA 特性が得られます。この例では、
210 Ω の入力抵抗を 41.2 kΩ の抵抗で置き換えています。
入力ノイズに敏感なシステムの場合、注目する周波数に対して
入力が特定の抵抗値になるような方法で、入力を整形する必要
があります。注目する周波数の外側では、入力回路のインピー
ダンスは大きな値になる必要があります。図 11 に、この動作を
得るための一般的な構成を示します。
RIN
LIN
CIN
RIN
LIN
CIN
OUTP
AD8338
OUTM
11509-011
GAIN (dB)
–10
–30
GAIN ピンに加える電圧を 1.1 V とすると、最大ゲインは、
0
0
–20
(24)
() = 7.1
10
11509-010

GAIN (dB)
() = 20 × log �
30
図 11.帯域外周波数で高入力インピーダンスを実現し、帯域内
周波数で固定の低入力インピーダンスを得るための入力調整
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アプリケーション・ノート
同じ手順を繰り返して、CIN 値を求めます。
デザイン例
この設計例では、10 MHz の IF 周波数で AD8338 をレシーバ・シ
グナル・チェーンで使用するものとし、システム・インピーダ
ンスは 50 Ω でシングルエンド (不平衡)とします。注目信号の帯
域幅は 2 MHz 幅と想定します。
 = 5 × 2
 = 250
C = 2π107×250Ω
(41)
 = 63.7
(42)
30
25
20
15
GAIN (dB)
 = 25
(40)
1
トランスを使うと、シングルエンド・システムを AD8338 に容
易に結合することができます。ここでは、注目周波数で、LC 回
路の等価インピーダンスが 0Ω (短絡)になります。見えるインピ
ーダンスは 2 本の RIN 抵抗だけになります。AD8338 入力の内部
ノードは低インピーダンスとして現れるため、トランスから見
えるインピーダンスは 2 RIN になります。最大電力変換(伝送電
力の最適化した値)では、この入力インピーダンスは 50 Ω にし
なければなりません。
2 = 50
(39)
(28)
(29)
10
5
RIN = 25 Ω で、式 23 から計算した最小システム・ゲインは、
25
0
� − 26 = 25.6
(30)
–5
AD8338 での不安定性の要因を回避するため、使用しないときは
INPR 入力と INMR 入力に DC パスが必要です。これにより、帯
域外信号に対してアンプから見たインピーダンスが設定される
ため、値 191 kΩ が使用されます。この値は INMR から INPR へ
の差動で使用されるため、シングルエンド・ゲインは、この値
の 1/2(95.5 kΩ)で計算されます。したがって、帯域外信号に対し
て、最小ゲインは、
1
 =
ℎ
300
(31)
(32)
デザイン仕様から、中心周波数は 10 MHz で、帯域幅は 2 MHz
となります。そうすると、Q は、
 =
107
2×106
 = 5 × 2
(35)
 ≈ 3.97
100
50
(36)
(37)
(38)
10
FREQUENCY (MHz)
100
図 13.実効入力インピーダンス (シングルエンド) の周波数特性
図 12 に示すように、AD8338 の実効最小ゲインは注目信号に対
して高く、注目帯域外信号に対しては小さくなります。さらに、
図 13 に、結合トランスから見た実効インピーダンスを示します。
このインピーダンスが大きくなると、結合される着信エネルギ
ーが小さくなり、不要信号の除去比が向上します。
この実験に対して実際のフィルタを構築しました。帯域幅が 1
MHz であることを測定し、Q = 10 が得られました。RIN は 25 Ω
です。式 35~式 38 より、L と C の値は、
•
•
Rev. 0
150
1
Q を求めたら、抵抗 RIN に対する LIN 部品と CIN 部品のインピー
ダンスはすぐに計算できます。
 = 2107
200
0
(34)
250
250
(33)
 = 5
 = 250
100
図 12.L = 3.97 µH、C = 63.7 pF を使った最小ゲインの計算
注目信号が結合され、かつ注目帯域外信号が結合されないよう
に入力を整形するときは、図 11 に示す LIN と CIN の値の選択に
は注意が必要です。これらの値を選択する 1 つの方法は、式 32
で与えられる共振回路の Q を求めることです。

10
FREQUENCY (MHz)
EQUIVALENT INPUT IMPEDANCE (Ω)
9500
20 log �95500� − 26 = −46
–10
11509-012
9500
11509-013
20 log �
- 8/10 -
L = 8 μH
C = 30 pF
AN-1192
アプリケーション・ノート
図 14 に、これらの部品の測定した応答を示します。挿入損失が
2.6 dB あることに注意してください。
フィルタに入力した後、これら 2 つのトーンをゲイン = +0 dB
(VGAIN = 0.10 V)の AD8338 に入力しました。
図 14. フィルタの周波数応答
図 16.AD8338 の後段の信号スペクトル
VGAIN = 0.1 V
2 つの正弦波トーンを電力カプラーに入力し、カプラーからの
出力を図 15 に示す信号レベルで 50 Ω 終端に供給しました。こ
の信号から 20 mV 振幅の合計出力が得られました。
図 16 に、AD8338 の無負荷出力を示します。不要信号が 18.8 dB
だけ減衰され、注目信号は 11.3 dB 増幅されていることに注意し
てください。これは、入力フィルタにより整形されたゲインを
示しています。
図 15.2 つのトーンのスペクトル
F1 (1 MHz) のレベルは−32.8 dB
F2 (10 MHz) のレベルは −30.7 dB
Rev. 0
図 17. AD8338 の出力
VGAIN = 0.27 (ゲイン = +13.5 dB)
- 9/10 -
AN-1192
アプリケーション・ノート
3.0V
ゲインが大きくなると結果は続きます。ここで、ゲインは+13.5
dB に設定されています。帯域内信号の実効ゲインは+21.3 dB で、
帯域外信号は 6.1 dB 減衰しています。測定されたゲインからの
目標ゲインのずれは、フィルタ、入力、トランスでの損失の関
数になっています。インダクタとコンデンサの等価直列抵抗
(ESR)は周波数の関数であり、システム全体の動作にも影響を与
えます。高度な性能が必要な場合は、シルバー・マイカコンデ
ンサの使用が推奨されます。この応答に対するもう 1 つの改善
策は、この回路の直列 LC 素子の前に接続するシンプルなフィル
タから得ることができます。
デザイン例: 電圧制御の減衰/利得アンプ
図 18 に、図 10 のデータを得るために使用した減衰/利得アン
プ・デザインの回路図を示します。 このアンプは、減衰 −38.7
dB に対する GAIN = 0.1 V (測定値−37 dB)から利得 +33.2 dB に対す
る GAIN= 1.0 V (測定値+32.1dB)までのゲイン範囲に対して検証
されました。減衰量の大きなレンジに対して、アンプ入力は 20
V p-p の差動入力、または 10 V p-p のシングルエンドで駆動され
ました。
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Rev. 0
OUT+
C3
0.1µF
AD8338
INMR
C5
0.1µF
OUT–
C4
0.1µF
11509-018
OUTM
VREF
INMD
COMM
IN–
R2
41.2kΩ
C2
0.1µF
OUTP
INPD
INPR
OFSN
IN+
R1
41.2kΩ
VBAT
DETO
C1
1µF
図 18.減衰/利得アンプの回路図 (MODE、GAIN、VAGC の各
ピン接続は省略)
これは、注目信号に対して、アンプは ADC 駆動用アンプ、調整
可能な自動ゲイン・コントローラ、または広い入力範囲を必要
とするその他のシグナル・コンディショニング・アプリケーシ
ョンとして機能できることを意味します。
表 1.VGAIN 対ゲイン、計算値と測定値
Gain Voltage
Calculated Gain (dB)
0.1
−38.7
−37
0.2
−30.7
−29.4
0.3
−22.7
−22
0.4
−14.7
−14.4
0.5
−6.7
−1.7
0.6
+1.3
+1.7
0.7
+9.3
+10
0.8
+17.3
+17.2
0.9
+25.3
+25
1.0
+33.3
+32.1
商標および登録商標は、それぞれの所有者の財産です。
- 10/10 -
Measured Gain
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