AN-758: ADE7753を使った無効電力量パルス出力の作成 (Rev. 0) PDF

AN-758
アプリケーション・ノート
ADE7753を使った無効電力量パルス出力の作成
著者:Meghan Baker
はじめに
無効電力= 皮相電力2−有効電力2
このアプリケーション・ノートでは、 ADE7753 から読み取っ
た無効電力量に基づいてパルス出力を作成する方法を説明しま
す。ADE7753は、RMS、有効電力、皮相電力、無効電力の測
定機能を備えた電力量計用集積回路です。測定した数値は、
SPIシリアル/パラレル・インターフェースを介して読み出し
ます。本書の例では、無効電力量パルス出力アプリケーション
はMicrochip®のPIC16F877に実装しています。
概要
無効電力量の定義
無効電力量は、『IEEE Standard Dictionary 100-1996』で次の
ように定義されています。
∞
Vn×In×sin(ϕn)
無効電力量= n∑
=1
ここで、 V n と I n はそれぞれライン周波数の n 次高調波の電圧と
電流の RMS 値で、 ϕ n は電圧の n 次高調波と電流の n 次高調波間
の位相差です。無効電力量とは、無効電力のある一定時間での
和です。これは誘導負荷にとって正の値となります(この場合、
電流が電圧より進んでいます)。
無効電力量の計算
無効電力量の計算には、主に2通りの方法があります。1つは電
力三角形を使って間接的に計算する方法、もう 1 つはローパ
ス・フィルタを使って直接計算する方法です。
図1 は電力三角形法で使用する有効電力、無効電力、皮相電力
の関係を示します。
皮相電力
無効電力
この関係は基本周波数においては成り立ちますが、高調波が存
在すると大きな誤差が発生します。
無効電力量の直接的な計算方法の1つは、常に90度の位相シフ
トと 20dB /ディケードの減衰を用います。ローパス・フィル
タのカットオフ周波数は、基本周波数より高いすべての周波数
で90度の位相シフトが発生するよう、基本周波数よりかなり低
い値に設定します。これらの周波数は 20dB /ディケードで減
衰します。この方法はライン周波数の変動の影響を受けやすい
ものの、ライン周期に基づいてゲインを補正すれば解決できま
す。 ADE7753 はこの方法を用いて無効電力量を計算します。
ADE7753 は周期レジスタも搭載しており、マイクロコント
ローラはそれを使ってライン周期に基づくゲイン補正を行うこ
とができます。
ADE7753のパルス出力
ADE7753は、有効電力量に比例するパルス出力を供給します。
このパルス出力は、リファレンス電力計に対する有効電力量機
能のキャリブレーションに最適です。このキャリブレーション
では、対象の電力量計とリファレンス電力計に定常負荷を接続
します。キャリブレーション中の電力量計からのパルス出力を
リファレンス電力計からのパルス出力と比較します。ゲインお
よびオフセットの補正を行う場合は、テスト中の電力量計から
のパルス出力が、基礎テスト電流Ibとそれより低いテスト電流
I min の両方について基準計と同じになるまで、有効電力量ゲイ
ン/オフセット・レジスタ、CFDEN、WGAIN、APOSを調整
します。図2は、有効電力量レジスタAENERGYとCFパルス出
力の計算とキャリブレーションに使用する ADE7753 の信号の
流れを示します。
θ
有効電力
図1.
電力三角形
REV. 0
アナログ・デバイセズ株式会社
本 社/ 〒105-6891 東京都港区海岸1-16-1 ニューピア竹芝サウスタワービル
電話03(5402)8200
大阪営業所/ 〒532-0003 大阪府大阪市淀川区宮原3-5-36 新大阪MTビル2号
電話06(6350)6868
―1―
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APOS[15:0]
電流
チャンネル
WDIV[7:0]
AENERGY [23:0]
LPF2
+
23
+
電圧
チャンネル
0
上位24ビットは
AENERGY [23:0]レジスタ
によりアクセス可能
%
WGAIN[11:0]
48
0
有効電力量
信号
LPF2からの出力は、
内部有効電力量レジスタ内で
累積(積分)
される
4
CLKIN
出力LPF2
T
波形レジスタ
の値
CFNUM[11:0]
11
時間(nT)
0
%
DFC
11
CF
0
CFDEN[11:0]
図2.
有効電力量レジスタAENERGYの信号チェーン
LSBが有効電力量レジスタAENERGYに累積するたびに、デジ
タル周波数コンバータ(DFC)はパルスを生成します。このコ
ンバータが(CFNUM+1)/(CFDEN+1)パルスを生成すると、
ピン11にCFパルスが出力されます。図3は、累積した有効電力
量に基づくデジタル周波数コンバータからのパルス出力です。
AENERGY
無効電力量パルス出力の精度は、クラス2 の無効電力量計に関
するIEC62053-23の規定どおり、0.05Ib≦I<0.1Ibから±2.5%、
0.1Ib≦I<Imaxから±2%とします。±2%の周波数変動による誤
差の増分は、2.5%未満とします。
正
の
電
力
CFDEN+1
CFNUM+1
設計アーキテクチャ
t
ADE7753は、半ライン・サイクルごとに無効電力量を読み出
負
の
電
します。無効電力量を読み出す周波数は、累積に含まれる半ラ
イン・サイクルの数に基づいています。この数は、 ADE7753
のLINECYCレジスタで設定します。ADE7753をライン・サイ
クル累積モードにする手順は以下の通りです。
力
CFDEN+1
–
CFNUM+1
CF
1. 累積処理を行うための半ライン・サイクルの数をLINECYC
レジスタ(アドレス0x1C)で設定します。
t
図3.
力率0の無効電力量パルス出力が力率1の有効電力量パルス出力
と同じ周波数を持つように、無効電力量パルス出力と有効電力
量パルス出力のスケーリングは同じにします。通常は有効電力
量パルス出力を3,200imp/kWhにキャリブレーションするため、
この例でも無効電力量パルス出力を3,200imp/kVARhにキャリ
ブレーションしています。
2. MODE レジスタ(0x09 )のCYCMODE ビットを設定して
CFパルス出力図
ライン・サイクル累積モードを有効にします。
____
3. IRQイネーブル・レジスタIRQEN(0x0A)のCYCENビッ
トを設定して、ライン・サイクル累積読取り値を使用でき
____
る間 IRQラインがローになるようにします。
ADE7753は、無効電力量用のゲイン/オフセット補正レジス
タを備えていません。無効電力量のパルス出力によって、メー
タのこの部分のキャリブレーションが簡略になるので、パルス
出力はADE7753の外部に生成してください。
4. RSTSTATUSレジスタ(0x0C)を読み出してステータス・
設計の目標
レジスタをリセットします。
ADE7753から無効電力量の読出しはできますが、無効電力量
専用のパルス出力は備えていません。本設計の目標は、
ADE7753内の無効電力量測定値から無効電力量パルス出力を
生成することです。
―2―
REV. 0
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この問題を解決するために、無効電力量をマイクロコントロー
ラ内部に累積します。マイクロコントローラ内への無効電力量
の累積レートは、マイクロコントローラの計算帯域幅と受入れ
可能なパルス出力リップルとのトレードオフによって決まりま
す。 MCU がパルス出力の生成のみに集中できる場合は、他の
タスクを抱えている場合に比べ、累積レートはかなり速くなり
ます。この例では、 MCU は無効電力量パルス出力の生成のみ
に集中するため、10kHzという高速の累積レートを使用し、周
波数出力ジッタは100µsとなっています。
____
5. IRQ 割 込 み が ロ ー に な っ て か ら R S T S T A T U S レ ジ ス タ
(0x0C)を読み出します。LINECYCレジスタへの書込み後
の最初のライン・サイクル累積電力量の読取り値は破棄し
てください。この読取り値の累積時間がLINECYCレジスタ
の新しい値と一致しない場合があるためです。
6. RSTSTATUS レジスタ( 0x0C )を読み出して、ステータ
ス・レジスタをリセットします。
____
7. IRQ 割 込 み が ロ ー に な っ て か ら R S T S T A T U S レ ジ ス タ
(0x0C)を読み出します。
8. LVARENERGYレジスタ(0x08)を読み出します。
9. 必要に応じてステップ7、8を繰り返します。
最初のライン・サイクル累積割込みの後に読み出したライン・
サイクル累積値は正しくない場合があります。LINECYCレジ
スタの新しい値を適用するまでに1 ライン・サイクル累積周期
を要します。
LINECYC半ライン・サイクルごとに読み出す無効電力量の値
をパルス出力に変えるには、VARスレッショールド(これによ
り VARCF パルスを発行します)を設定する必要があります。
この無効電力量パルス出力のレベルは、有効電力量CF信号パス
のCFNUM+1/CFDEN+1の比と同様になります(図4を参照)。
この実装では、パルスの出力に必要な無効電力量を設定する変
数は1つ(VARCFLEVEL)のみです。
LVARENERGY
R
VA
の
正
t
負
の
VA
R
–VARCFLEVEL
VARCF
t
VARCFパルス出力の実装
ADE7753CF 信号チェーンでは、有効電力量の値は CLKIN/4
(CLKINは3.579545MHz)ごとに更新されます。無効電力量値
はあまり頻繁に読み出せません。半ライン・サイクル累積時間
に対してLINECYCを1に設定していても、新しい値は50Hzの
ライン周波数で10msごとにしか読み出せません。
REV. 0
無効電力量の符号は有効電力量よりも変化しやすいため、VAR
パルスを出力するための正と負のスレッショールドはさらに重
要です。顧客が電力会社から供給される電気の使用を停止して
電力を戻し始める頻度は、負荷が容量性負荷から誘導負荷に変
わる頻度に比べるとかなり小さくなります。
有効電力量CF信号チェーンには、ゲイン/オフセット補正が含
まれます(図2を参照)。これらの補正は、VARCFパルス出力
に対しても実行されます。前述したように、 ADE7753 による
無効電力量の計算方法では、ライン周波数でゲイン補正が必要
となります。この補正にはルックアップ・テーブル法を用いま
す。無負荷スレッショールドは、過小な負荷に対するVARCF
パルスの出力を防止するためのものです。無負荷スレッショー
ルドはクリープを防止します。以上が図 5 で示す VARCF 信号
チェーンの全容です。
VARCFLEVEL
図4.
ADE7753の有効電力量標準累積モードでは、CFパルスを出力
するための2 つのスレッショールド(正と負のスレッショール
ド)があります。エネルギーを使用する顧客がある一定時間内
に標準累積モードで十分なエネルギーを消費するか、または反
対に電力会社に十分な電力を供給する場合に、CFパルスを出力
します。エネルギーの絶対値のみを累積するのではなく、正と
負のスレッショールドを使用し、エネルギーの符号が変わって
もCF出力が不正確にならないようにすることが重要です。標準
累積モードでは、ADE7753のAENERGY有効電力量レジスタ
が、符号付きの累積を使用して、x量の正のエネルギーとx量の
負のエネルギーが続いた場合に打ち消しあわないようにしま
す。CFパルス出力でも同じ現象が生じるようにして、有効電力
量レジスタとCF出力周波数間の関係を維持します。
―3―
AN-758
VARCFLEVEL
補正テーブル・
ルックアップ
周期
オフセット補正
>VARCFLEVEL
または
<−VARCFLEVEL
LVARENERGY
はい
パルス出力
無負荷カウンタの
リセット
いいえ
いいえ
最終パルス後の
経過時間が長すぎる?
(無負荷カウンタ=X?)
無負荷カウンタを
インクリメント
はい
LVARENERGY = 0
無負荷カウンタの
リセット
図5.
VARCF信号チェーン
ここでは、無効電力量パルス出力のゲイン、オフセット、ライ
ン周波数補正技法について説明します。
したがって、デフォルトのクロック周波数、半ライン・サイク
ル累積時間、ハーフスケールの2つの入力が与えられた場合の、
LVARENERGYレジスタの予想読取り値は19.4です。
ゲイン
ADE7753からの無効電力量読取り値を経時的に累積して、無
LAENERGY=PF×0×CCCCD×累積時間(s)×%FS×
CLKIN / 4×2–25
効電力量パルス出力を生成します。パルス出力を発生させるア
キュムレータ・レベルを選択する必要があります。このレベル
は、ADE7753の有効電力量信号パスのCF比と類似しています。
アキュムレータ・レベルでは、任意の負荷のパルス出力周波数
を設定します。
LAENERGY=PF×0×CCCCD×
1 1
1
3.579545×106
× × ×
×2–25=55.9
2 2
2×50
4
設計計算
ADE7753データシートのエネルギー・スケーリング・テーブ
ルから、フルスケールの無効電力量LVARENERGY (レジス
タ値)と有効電力量LAENERGYの比は0.347となります。
LVARENERGY=0.347×LAENERGY
LVARENERGYFS=0.347×LAENERGYFS
LVARENERGYレジスタは整数値しか保持しないため、値は
常に整数となります。ADE7753では、無効電力量の24MSBに
しかレジスタ・アクセスできませんが、内部レジスタに15LSB
を格納しています。これらのLSBでは、19と20の間の
LVARENERGY読取り値を累積/調整し、この負荷の平均の
LVARENERGYレジスタ読取り値が19.4となるようにします。
LVARENERGY=0.347×55.9=19.4
任意の負荷の累積有効電力量は次のように表すことができます。
LAENERGY=PF×FSの平均値×累積時間(s)×%FS×
CLKIN / 4×2–25
ここで、FS の平均値は0xCCCCD (WGAIN =0 におけるフル
スケール時のLPF2平均ワード値)です(ADE7753データシー
トの「Integration Time Under Steady Load」を参照)。
電力量計のキャリブレーション手順の詳細については、
ADE7753データシートのキャリブレーションの説明を参照し
てください。サンプルの電力量計の仕様は以下のとおりです。
LINECYC
累積時間
(s)=
2fl
メータ定数
最大電流
ライン電圧
ライン周波数
テスト電流
%FSは、アナログ入力のレベルに基づくフルスケール有効電力
量(%)です。電流入力と電圧入力をアナログ入力レンジの半
分に設定している場合、有効電力量はフルスケールの 1/4 とな
ります。
―4―
MeterConstant(imp/kWh)=3200
Imax=60A
Vnominal=220V
fl=50Hz
Ib=10A
REV. 0
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この例では、ImaxとVnominalを各アナログ入力レンジの1/2にスケー
リングしています。したがって、このメータの場合は、電流=
Imax、ライン電圧=Vnominalで最大CF出力は以下のとおりです。
図6はオフセット補正を示します。
OFFSETSIGN
LVARENERGY
CF=
メータ定数(imp / kWh)×Load(kW)
×cos(ϕ)
3600s / h
CFmax=
図6.
オフセットの整数部
オフセットの端数部
OFFSETSHOLE
OFFSETFRAC × 28
無効電力量オフセットの補正
計算値とは異なり、LVARENERGY レジスタの実際の符号を
見なければ、オフセットが正か負かを判定することはできませ
ん。パルス出力の実装により正と負のVAR負荷に対して同じ周
波数が発生するためです。したがって、LVARENERGY レジ
スタのオフセットから得られる VARCF が 100mHz の場合は、
オフセットの符号から推測してOFFSETSIGNを正に設定しま
す。オフセットの整数部 OFFSETWHOLE はゼロに設定し、
OFFSETFRACは0x2A(10進値42)に設定します。
3200×60A×220 V / 1000
×cos(0)=11.73Hz
3600s / h
ここではVARパルス出力とCFパルス出力を比較するため、力
率0の場合の予想無効電力量パルス出力は、力率1の場合の予想
有効電力量パルス出力と同じになるよう固定します。
マイクロコントローラの累積レートを100µs、パルスを発行さ
せるアキュムレータ・レベル( VARCFLEVEL )を 0x3FA9
(十進値16297)に設定します。
LVARENERGY=VARCFLEVEL×VARCF×
MCU累積時間(s)
LVARENERGY=0x3FA9×0.1×100×10–6=0.16297
LVARENERGY[24:0]
VARCFLEVEL=
(1)
VARCF×MCU累積時間(s)
VARCFLEVEL=
OFFSETSIGN
ここで
VARCFLEVEL=0x3FA9
19.4
=16297d=0x3FA9
12×100×10–6
VARCF=100mHz、力率1の場合のオフセットに基づいてパル
ス出力周波数
オフセット
LVARENERGYレジスタのオフセットは、力率=1の設定で決
まります。力率1の場合、無効電力量を測定しません。
VARCFOFFSETは、周波数出力から計算できます。
µC 累積時間(s )=100µs 、マイクロコントローラの累積と累積
の間の時間
OFFSETSIGN=SIGN(LVARENERGY)
OFFSETSIGN=0
計算式(1)を変形すると次のようになります。
LVARENERGY=VARCFLEVEL×VARCF×
MCU累積時間(s)
OFFSETWHOLE=INT(LVARENERGY)
この実装では、3 バイトを使ってオフセットを設定します(符
号用1バイト、整数部用1バイト、端数部用1バイト)。オフセッ
トの端数部は、MSBの前に小数点を固定した符号なしの整数と
してマイクロコントローラに格納されます。
OFFSETFRAC=LVARENERGY×28
OFFSETWHOLE=0
OFFSETFRAC=0.16297×28=42=0x2A
VARCFOFFSET=LVARENERGY[24:0]×28
REV. 0
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OFFSETSIGNフラグは、オフセットが正か負かを示すために
ライン周波数ゲイン補正
使用します。オフセットの端数部はマイクロコントローラの累
積サイクルごとに累積し、それがオーバーフローするたびに、
オフセット符号フラグに基づいて全無効電力量に1 ビットを加
算または減算します。 0x00 から 0xFF へ、あるいは 0xFF から
0x00へのロールオーバーを探すべきかどうか判断するには、符
号ビットが必要です。これらの遷移は、ステータス・レジスタ
のキャリー・ビットに反映されます。オフセットの整数部を別
のレジスタに格納しておけば、マイクロコントローラの累積サ
イクルごとに、オフセットの整数部について容易に補正を行う
ことができます。
無効電力量パルス出力の生成アルゴリズムでは、ライン周波数
におけるLVARENERGY 読取り値のゲイン補正が新たに必要
となります。可変のライン・サイクル周波数を計算に含めるに
は、LVARENERGY読取り値に対して2つの1/f補正処理を行う
必要があります。累積時間に基づいて読取り値を適正にスケー
リングする補正処理と、ADE7753の無効電力量読取り値の1/f
減衰を計算に含める補正処理です。
無負荷スレッショールド
クラス2メータに関するIEC62053-23規格の無効電力量無負荷
スレッショールドは0.5%Ibです。これは、ADE7753のフルス
ケールの無効電力量読取り値0.0209%に相当します。
ADE7753では、これよりも厳しいフルスケール乗算器出力の
0.001 %の有効電力量無負荷スレッショールドを使用します。
この例では、ImaxとVnominalを両方ともハーフスケールに設定し
ているため、 ADE7753 の有効電力量無負荷スレッショールド
は0.4692mHzとなります。
CFno-load1=無負荷スレッショールド1×CFmax×
VARCFno-load1=0.00001×11.73 Hz×
1
%FS
パルス出力の計算では、LVARENERGY レジスタのゲインは
一定であると仮定していますが、実際はLVARENERGY レジ
スタのゲインはライン周波数に応じて変化します。たとえば、
52.5Hzのライン周波数では、50Hzの場合よりも半ライン・サ
イクル内での電力の累積量は少なくなります。これは累積時間
が短いためです。ゲイン補正がなく、同じ負荷を適用している
場合は、52.5Hzのパルス出力は50Hzの場合より遅くなります。
52.5HzのLVARENERGY読取り値が小さくなるためです。し
たがって、さまざまな累積時間でLVARENERGY 読取りに適
正な重付けをするには、1/f補正計数が必要となります。
ローパス・フィルタは、無効電力量の計算のために電流チャン
ネルに実装します。このフィルタでは、無効電力量読取りにお
いて新たな1/f減衰が発生します。
通常、ライン周波数は±5 %変動するため、周波数の変動中の
無効電力量を正確に表すために無効電力量レジスタのゲインを
補正する必要があります。
1
=0.4692 mHz
0.5×0.5
ADE7753 PERIODレジスタを使ってライン周波数を求めるこ
この例では、無効電力量の無負荷スレッショールドを実装する
ために、最終パルス以降の半ライン・サイクル周期の数を計算
しています。0.4692mHzの無負荷スレッショールドまたはパル
スなしの2131.29秒は、50Hz時の半ライン・サイクル
0x034089(十進値213,129)に相当します。したがって、最後
のパルスから213,129の半ライン・サイクルが経過すると、累
積したLVARENERGY をクリアして、半ライン・サイクルの
カウントがゼロから再開します。
とができます。
ライン周期(s)=PERIOD×
8
CLKIN
1 パルスを出力するために累積する必要のある無効電力の量
VARCFLEVELは、このPERIOD読取り値に従って調整します。
この実装では、ルックアップ・テーブルを補正用に使用してい
るため、マイクロコントローラで計算する必要はありません。
この実装では、無効電力量の無負荷スレッショールドを
IEC62053-23仕様に従って設定し、有効電力量の無負荷スレッ
ショールドと同じ概念を使用します。そのため、オフセット・
レジスタが必要とする分解能を低減でき、無負荷スレッショー
ルドに対して2 バイトのみで半ライン・サイクルをカウントで
きます(厳格な無負荷スレッショールドの場合、3 バイト必要
です)。
CFno-load2=無負荷スレッショールド2×CFmax×
VARCFno-load2=0.000209×11.73 Hz×
1
%FS
1
=9.795 mHz
0.5×0.5
―6―
REV. 0
AN-758
表1.
VARCFLEVELライン周波数の補正テーブル
PERIOD
(10進値)
8512
8544
8576
8608
8640
8672
8704
8736
8768
8800
8832
8864
8896
8928
8960
8992
9024
9056
9088
9120
9152
9184
9216
9248
9280
9312
9344
9376
9408
補正した
VARCFLEVEL
テーブル・
インデックス
0x3974
0x39E2
0x3A52
0x3AC1
0x3B31
0x3BA2
0x3C13
0x3C84
0x3CF6
0x3D68
0x3DDA
0x3E4D
0x3EC1
0x3F34
0x3FA9
0x401D
0x4092
0x4108
0x417D
0x41F4
0x426A
0x42E2
0x4359
0x43D1
0x4449
0x44C2
0x453B
0x45B5
0x462F
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
PERIOD レジスタ読取り値を使って補正テーブルに直接イン
デックスすれば簡単ですが、エントリが896もあるためテーブ
ルが大きくなりすぎます。PERIODレジスタ読取り値を使って
小さな補正テーブルをインデックスするには、PERIODレジス
タ値から補正テーブル・アレイへのインデックスを計算する式
が必要となります。できる限り乗算は避けてください。マイク
ロコントローラで16×16を実行するには、約200の命令サイク
ルが必要になってしまいます。ルックアップ・テーブルを使用
するのは、短時間で適正な結果を得るためなので、テーブルは
短時間でインデックスする必要があります。
マイクロコントローラでは、オペランドを右にシフトすること
により、簡単に 2 n で除算できます。 896 個のエントリは 2 5 すな
わち32で除算できるため、補正テーブルのインデックスに有効
な方法です。テーブルには29(896/32+1)個のエントリがあ
るため、最悪の場合 0.4 %の誤差が生じます。もっと分解能を
上げてテーブル中のエントリを増やすと、誤差の割合は小さく
なります。補正テーブルへのインデックスは、( PERIOD −
PERIOD n o m i n a l ) /32 + 14 です。テーブルのエントリは公称
VARCFLEVELと(PERIOD/PERIODnominal)2を掛けて求める
ため、ライン周波数が公称値より大きいと、小さな
LVARENERGY読取り値に対応するためにVARCFLEVELも
小さくなります。
たとえば、PERIOD=9408、公称PERIOD=8960の場合、アレ
イ・インデックスは28となります。
INDEX=(PERIOD−PERIODnominal)/32+14
INDEX=(9408−8960)/32+14=28
PERIOD = 9408 、公称 PERIOD = 8960 、 VARCFLEVEL =
0x3FA9の場合、ルックアップ・テーブルのエントリは次式で
求められます。
ルックアップ・テーブル値=
ライン周波数の変動幅は±5 %であるため、補正テーブルは公
称PERIODレジスタ読取り値±5%に対応する必要があります。
50Hz時の公称PERIODレジスタ読取り値は約8,960(10進値)
です。したがって、8,512∼9,408のPERIOD読取り値を補正す
る必要があります。
PERIOD
VARCFLEVELnominal× PERIOD
nominal
2
ルックアップ・テーブル値=
0x3FA9×
9408 2
=17967.44=0x462F
8960
ファームウェア・アーキテクチャ
図7は、VARCFパルス出力を作成するためのファームウェア実
装のフローチャートを示します。
REV. 0
―7―
AN-758
メイン・プログラム:
MCUアキュムレーション・レジスタをクリアする
半ライン・サイクル間に累積処理を行うようADE7753を設定する
ライン・サイクル累積処理が終了するとローになるIRQをイネーブルにする
外部割込み(IRQに接続)
をイネーブルにする
100µsごとの割込みタイマを設定する
割込みを待つ
タイマISR
IRQ ISR:
LVARENERGYとオフセットを累積する
SPIポートを介してLVARENERGYレジスタを読み取る
IRQをリセットするためにRSTATUSレジスタを読み取る
いいえ
VARCFLEVELスレッショールドに達したか?
PERIODレジスタを読み取る
ISRの終了
ルックアップ・テーブルから新しいVARCFLEVELを取得する
はい
VARCFパルスの出力
いいえ
最後のCFパルスからの経過時間が長すぎるか?
ISRの終了
ISRの終了
はい
無負荷スレッショールドに到達
累積したLVARENERGYとオフセットをクリアする
ISRの終了
図7.
マイクロコントローラのフローチャート
―8―
REV. 0
AN-758
ライン周波数変動時の性能
結果
直線性
1.000%
1.000%
ADE7753 VARCF
0.500%
0.500%
%誤差
%誤差
ADE7753 VARCF
0%
0%
–0.500%
–0.500%
–1.000%
47
–1.000%
0.01
0.1
1
10
49
50
51
52
53
ライン周波数(Hz)
100
電流(A)
図8.
48
図9.
VARCF直線性
ライン周波数変動時のVARCF性能
図9は、ライン周波数におけるVARCFパルス出力の性能を示し
ます。デジタル周波数コンバータは一定周波数で累積処理を行
い、その入力に対して固定の周期をとるため、VAR読取り値の
ゲインはライン周波数全般で補正してください。追加のゲイン
補正を実行するため、 ADE7753 は無効電力量の計算に使用す
る LPF のゲイン減衰を計算に含めることができます。ルック
アップ・テーブルを使ってゲイン補正を実行するため、誤差特
性はノコギリ波パターンを示します。これは2 つの補正ビンの
エッジにある周波数によるもので、理想的な補正はできませ
ん。
図8のVARCF直線性誤差は、電流の変動に関するIEC 6205323の無効電力量クラス2の仕様に適合しています。この仕様で
の規定は次の通りです。
0.05Ib≦I<0.1Ibから±2.5%未満
0.1Ib≦I<Imaxから±2%未満
このメータは、Ib=10A、Imax=60Aでキャリブレーションして
います。したがって誤差は、0.5∼1Aで±2.5%未満、1∼60A
で±2%未満となります。
VARCF 実装は、ライン周波数(影響量)の変動に関するIEC
62053-23無効電力量クラス2の仕様に適合しています。この仕
様では、±2%の周波数変動による誤差を±2.5%未満としてい
ます。
上の図は±5 %の周波数変動に関するもので、この仕様に適合
しています。
REV. 0
―9―
AN-758
― 10 ―
REV. 0
AN-758
REV. 0
― 11 ―
AN05241-0-4/05(0)-J
AN-758
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― 12 ―
REV. 0
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