NSC ADC78H89

主な仕様
ADC78H89 は、アナログ系とデジタル系に個別の電源電圧を与
えて動作できます。アナログ電源 (AVDD) の電圧範囲は+ 2.7V
から+ 5.25V まで、デジタル電源 (DVDD) の電圧範囲は+ 2.7V
から AVDD までです。 標準的な消費電力は、+ 3V 動作時で
1.5mW、+ 5V 動作時で 8.3mW です。 消費電力を低減できる
パワーダウン機能を備えており、+ 3V 動作時で 0.3μW、+ 5V
動作時で 0.5μW となります。 ADC78H89 は 16 ピンの TSSOP
パッケージで提供されます。 産業用温度範囲である− 40 ℃∼+
85 ℃の動作が保証されています。
■
■
■
■
変換レート
DNL
INL
消費電力
500 kSPS
± 1 LSB (max)
± 1 LSB (max)
3V 電源
5V 電源
1.5 mW ( 代表値 )
8.3 mW ( 代表値 )
アプリケーション
■
■
■
■
■
自動車のナビゲーション・システム
ポータブル・システム
医療機器
移動通信
計測器や制御システム
ピン配置図
製品情報
Order Code
Temperature Range
Description
ADC78H89CIMT
− 40 ℃ to + 85 ℃
16-Lead TSSOP Package
ADC78H89CIMTX
− 40 ℃ to + 85 ℃
16-Lead TSSOP Package, Tape & Reel
20030401
TRI-STATE® はナショナル セミコンダクター社の登録商標です。
MICROWIRE™ はナショナル セミコンダクター社の商標です。
QSPI™ および SPI™ はモトローラ ( 株 ) の商標です。
© National Semiconductor Corporation
DS200616-01-JP
1
ADC78H89
シリアル・データ出力はストレート・バイナリ形式で、SPI™、QSPI™、
MICROWIRE™ など、広く使われている標準的な DSP シリアル・
インタフェースと互換性があります。
互換シリアル・インタ
ADC78H89 7 チャネル、500kSPS、12 ビット A/D コンバータ
入力 7 チャネル
可変パワー・マネージメント
独立したアナログ電源とデジタル電源
SPI™/QSPI™/MICROWIRE™/DSP
フェース
■ 16 ピン TSSOP パッケージ
Modified to 78H89 specs
New Datasheet for Warren Craddock, copy and rename from ds200577. CN
■
■
■
■
ds200616
ADC78H89 は入力 7 チャネルの 12 ビットCMOS A/D コンバータ
で、低消費電力で動作し変換スループットは 500kSPS です。
ADC78H89 はトラック / ホールド回路を内蔵した逐次比較レジス
タ・アーキテクチャを採用しています。AIN1 から AIN7 まで 7 チャ
ネルの入力を備えています。
20021111
特長
20020919
概要
ADC78H89
7 チャネル、500kSPS、12 ビット A/D コンバータ
7 チャネル、500kSPS、12 ビットA/D コンバータ
ADC78H89
2003 年 4 月
ADC78H89
ブロック図
端子説明および等価回路
端子番号
シンボル
等価回路
説明
アナログ I/O
5 - 11
AIN1 to AIN7
2
NC
アナログ入力です。 信号の電圧範囲は 0V から AVDD です。
内部には接続されていないので、開放のまま使用するかグラウンド
に接続してください。
デジタル I/O
16
SCLK
デジタル・クロック入力です。クロック周波数範囲は 10kHz から
8MHz で、記載の性能は 8MHz で保証されています。このクロック
は変換処理と読み出し処理を直接制御します。
15
DOUT
デジタル・データ出力です。 出力サンプルは、SCLK の立ち下がり
エッジに同期して出力されます。
14
DIN
デジタル・データ入力です。 SCLK の立ち上がりエッジで本ピンか
らデータが取り込まれ ADC78H89 内部の制御レジスタへ与えられま
す。
1
CS
チップ・セレクトです。 CS ピンの立ち下がりエッジで変換処理が開
始されます。 CS が LOW の間は連続して変換が行われます。
3
AVDD
正電圧のアナログ電源ピンです。+ 2.7V ∼+ 5.25V の安定した電
源に接続し、ピンから 1cm 以内に 0.1μF のセラミック・モノリシッ
ク・コンデンサと 1μF のタンタル・コンデンサを設けグラウンドに対し
てバイパスを行なってください。
13
DVDD
正電圧のデジタル電源ピンです。+ 2.7V から AVDD までの電源を
接続し、ピンから 1cm 以内に 0.1μF のセラミック・モノリシック・コ
ンデンサを設けグラウンドに対してバイパスを行なってください。
GND
アナログ電源とデジタル電源のグラウンド・リターンです。 両ピンは
内部的には同一のため、必ず等しい電位となるように接続してくだ
さい。 万が一、ピン間に電位差が存在すると、デバイスを通して過
大な電流が流れます。
電源
4, 12
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2
(Note 1)
本データシートには軍用・航空宇宙用の規格は記載されていません。
関連する電気的信頼性試験方法の規格を参照ください。
アナログ電源電圧 AVDD
デジタル電源電圧 DVDD
任意のピンの対 GND 電圧
入力電流 (Note 3)
ESD 耐性
人体モデル
マシン・モデル
ハンダ付け温度 ( 赤外線 )
10 秒
接合部温度
保存温度範囲
− 0.3V ∼ 6.5V
− 0.3V ∼ AVDD + 0.3V
6.5V ( 最大値 )
− 0.3V ∼ AVDD + 0.3V
± 10 mA
+ 150 ℃
− 65 ℃∼+ 150 ℃
動作定格
− 40 ℃≦ TA ≦+ 85 ℃
動作温度範囲
2500V
250V
AVDD 電源電圧
+ 2.7V ∼+ 5.25V
DVDD 電源電圧
+ 2.7V ∼ AVDD
デジタル入力ピン電圧範囲
− 0.3V ∼ AVDD
パッケージ熱抵抗
260 ℃
パッケージ
16-lead TSSOP on 4-layer, 2 oz. PCB
θJA
96 ℃ / W
ADC78H89 コンバータの電気的特性 (Note 2)
特記のない限り、以下の仕様は AVDD = DVDD =+ 2.7V ∼+ 5.25V、fSCLK = 8MHz、fSAMPLE = 500kSPS に適用されます。 太字
のリミット値は TA = TMIN ∼ TMAX に、それ以外のリミット値は TA = 25 ℃に適用されます。
Symbol
Parameter
Conditions
Typical
Limits
Units
STATIC CONVERTER CHARACTERISTICS
Resolution with No Missing Codes
AVDD =+ 5.0V, DVDD =+ 3.3V
12
Bits
INL
Integral Non-Linearity
AVDD =+ 5.0V, DVDD =+ 3.3V
±1
LSB(max)
DNL
Differential Non-Linearity
AVDD =+ 5.0V, DVDD =+ 3.3V
±1
LSB(max)
OE
Offset Error
AVDD =+ 5.0V, DVDD =+ 3.3V
±2
LSB(max)
OEM
Offset Error Match
AVDD =+ 5.0V, DVDD =+ 3.3V
±2
LSB(max)
GE
Gain Error
AVDD =+ 5.0V, DVDD =+ 3.3V
±3
LSB(max)
GEM
Gain Error Match
AVDD =+ 5.0V, DVDD =+ 3.3V
±3
LSB(max)
DYNAMIC CONVERTER CHARACTERISTICS (fIN = 40 kHz, -0.02 dBFS sine wave, unless otherwise noted)
SINAD
Signal-to-Noise Plus Distortion Ratio
72.6
dB
SNR
Signal-to-Noise Ratio
72.8
dB
THD
Total Harmonic Distortion
− 86
dB
SFDR
Spurious-Free Dynamic Range
88
dB
ENOB
Effective Number of Bits
11.8
bits
Channel-to-Channel Crosstalk
− 82
dB
IMD
FPBW
Intermodulation Distortion, Second
Order Terms
fa = 40.161 kHz, fb = 41.015 kHz
− 93
Intermodulation Distortion, Third Order
Terms
fa = 40.161 kHz, fb = 41.015 kHz
− 90
− 3 dB Full Power Bandwidth
dB
AVDD =+ 5V
11
AVDD =+ 3V
8
MHz
POWER SUPPLY CHARACTERISTICS (CL = 10 pF)
AVDD,
DVDD
Analog and Digital Supply Voltages
Total Supply Current, Normal Mode
(Operational, CS low)
IDD
Total Supply Current, Shutdown (CS
high)
AVDD ≧ DVDD
2.7
V(min)
5.25
V(max)
AVDD = DVDD =+ 4.75V to + 5.25V,
fSAMPLE = 500 kSPS
1.65
2.3
mA(max)
AVDD = DVDD =+ 2.7V to + 3.6V,
fSAMPLE = 500 kSPS
0.5
2.3
mA(max)
AVDD = DVDD =+ 4.75V to + 5.25V,
fSAMPLE = 0 kSPS
0.1
μA
AVDD = DVDD =+ 2.7V to + 3.6V,
fSAMPLE = 0 kSPS
0.1
μA
3
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ADC78H89
絶対最大定格
ADC78H89
ADC78H89 コンバータの電気的特性 (Note 2)( つづき)
特記のない限り、以下の仕様は AVDD = DVDD =+ 2.7V ∼+ 5.25V、fSCLK = 8MHz、fSAMPLE = 500kSPS に適用されます。 太字
のリミット値は TA = TMIN ∼ TMAX に、それ以外のリミット値は TA = 25 ℃に適用されます。
Symbol
Parameter
Conditions
Typical
Limits
Units
AVDD = DVDD =+ 4.75V to + 5.25V
8.3
12
mW(max)
AVDD = DVDD =+ 2.7V to + 3.6V
1.5
8.3
mW(max)
AVDD = DVDD =+ 4.75V to + 5.25V
0.5
μW
AVDD = DVDD =+ 2.7V to + 3.6V
0.3
μW
POWER SUPPLY CHARACTERISTICS (CL = 10 pF)
Power Dissipation, Normal Mode
(Operational, CS low)
PD
Power Dissipation, Shutdown (CS
high)
ANALOG INPUT CHARACTERISTICS
VIN
Input Range
IDCL
DC Leakage Current
CINA
Input Capacitance
0 to AVDD
V
1
μA(max)
In Track Mode
33
pF
In Hold Mode
3
pF
DIGITAL INPUT CHARACTERISTICS
DVDD =+ 4.75Vto + 5.25V
2.4
DVDD =+ 2.7V to + 3.6V
2.1
V(min)
DVDD =+ 2.7V to + 5.25V
0.8
V(max)
10 nA
1
μA(max)
2
4
pF(max)
DVDD − 0.5
V(min)
VIH
Input High Voltage
VIL
Input Low Voltage
IIN
Input Current
VIN = 0V or DVDD
CIND
Input Capacitance
V(min)
DIGITAL OUTPUT CHARACTERISTICS
VOH
Output High Voltage
ISOURCE = 200 μA, DVDD =+ 2.7V to
+ 5.25V
VOL
Output Low Voltage
ISINK = 200 μA
IOZL
TRI-STATE Leakage Current
COUT
TRI-STATE Output Capacitance
2
Output Coding
0.4
V(max)
1
μA(max)
4
pF(max)
Straight (Natural) Binary
AC ELECTRICAL CHARACTERISTICS
fSCLK
Clock Frequency
tCON
Conversion Time
1.625 μs with fSCLK = 8 MHz
DC
Duty Cycle
tTH
Track/Hold Acquisition Time
Full-Scale Step Input
Throughput Time
Conversion Time + Acquisition Time,
500 kSPS with fSCLK = 8 MHz
fRATE
Throughput Rate
tAD
Aperture Delay
Note 1:
8
MHz(max)
13
SCLK cycles
3
SCLK cycles
16
SCLK cycles
500
kSPS(min)
%
40-60
4
ns
「絶対最大定格」とは、個々に適用されるリミット値で、これを超えるとデバイスの有効性が損なわれるおそれがあります。 絶対最大定格条件下では機
能的な動作は想定されていません。 最大定格でデバイスを長時間にわたって動作させると信頼性に影響を及ぼすおそれがあります。
Note 2:
データシートの min/max リミット値は、設計、テスト、統計解析によって保証されています。
Note 3:
電源ピンを除きます。
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4
ADC78H89
タイミング・テスト回路
ADC78H89 タイミング仕様
以下の仕様は AVDD = DVDD =+ 2.7V ∼+ 5.25V、fSCLK = 8MHz、CL = 50pF に適用されます。太字体のリミット値は TA = TMIN
∼ TMAX に、それ以外のリミット値は TA = 25 ℃に適用されます。
Symbol
Parameter
Conditions
tCONVERT
tACQ
Acquisition Time; Throughput Time =
tCONVERT + tACQ = 16 x tSCLK
Typical
Limits
Units
13
SCLK Cycles
3
SCLK Cycles
t1a
High SCLK Setup to Falling CS
(Note 4)
10
ns(min)
t1b
Low SCLK Hold to Falling CS
(Note 4)
10
ns(min)
t2
Delay from CS Until DOUT
TRI-STATE® Disabled
30
ns(max)
t3
Data Access Time after SCLK
Falling Edge
30
ns(max)
t4
Data Setup Time Prior to SCLK
Rising Edge
10
ns(max)
t5
Data Valid SCLK Hold Time
10
ns(max)
t6
SCLK High Pulse Width
0.4 x tSCLK
ns(min)
t7
SCLK Low Pulse Width
0.4 x tSCLK
ns(min)
t8
CS Rising Edge to DOUT
High-Impedance
20
ns(max)
Note 4:
セットアップ時間 t1a とホールド時間 t1b の規定はありますが、CS を有効な状態にするときのクロック・レベルは任意 (HIGH または LOW) です。
5
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ADC78H89
タイミング図
ADC78H89 Serial Timing Diagram
SCLK and CS Timing Parameters
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6
アパーチャ・ディレイ (APERTURE DELAY) は、変換処理開始
後 4 番目の SCLK 立ち下がりエッジから、変換を行なうために入
力信号がホールドされるまでの時間です。
ミッシング・コード (MISSING CODES) は ADC 出力に現れるこ
とのないコードです。 ADC78H89 は、ミッシング・コードが生じな
いことが保証されています。
微分非直線性(DIFFERENTIAL NON-LINEARITY : DNL)は、
理想的なステップである1LSB からの最大偏差として表されます。
オフセット・エラー (OFFSET ERROR) は、理想的な値 (GND
+ 0.5LSB) に対する、(000...000) から (000...001) に移る最初の
コード遷移の偏差です。
デューティ・サイクル (DUTY CYCLE) は、繰り返しデジタル波形
での、周期に対する HIGH の時間の比です。このデータシートで
は SCLK に適用されます。
信号 / ノイズ比 (SIGNAL TO NOISE RATIO : SNR) は、クロッ
ク信号の 1/2 以下の周波数における、歪みと DC 成分を除いた
その他すべてのスペクトラル成分の実効値に対する入力信号の
実効値の比として dB で表されます。
有効ビット (EFFECTIVE NUMBER OF BITS : ENOB) は、信
号 /( ノイズ+歪み ) または SINAD の別の規定方法です。ENOB
は (SINAD − 1.76)/6.02として定義され、この値のビット数をもつ
理想的な A/D コンバータに等しいコンバータであることを意味しま
す。
信 号 /( ノイズ + 歪み ) 比 (SIGNAL TO NOISE PLUS
DISTORTION RATIO : (S/N + D) or SINAD) は、クロック信
号の 1/2 以下の周波数における、歪みを含め DC 成分を除いた
その他すべてのスペクトラル成分の実効値に対する入力信号の
実効値の比として dB で表されます。
フル・パワー入力帯域 (FULL POWER BANDWIDTH) は、フ
ル・スケール入力に対して再現される出力基本周波数特性で低
周波数帯域に対して 3dB 落ちる周波数として測定されます。
スプリアス・フリー・ダイナミック・レンジ (SPURIOUS FREE
DYNAMIC RANGE : SFDR) は、入力信号の実効値に対する
ピーク・スプリアス信号との差で、dB で表されます。ここで言う
ピーク・スプリアス信号とは、出力スペクトラムに現われる任意の
スプリアス信号であり、入力に現われるものではありません。
ゲイン・エラー(GAIN ERROR) は、
理想的な値 (VREF −1.5LSB)
に対する、
オフセット・エラー調整後の、(111...110) から (111...111)
に移る最終コード遷移の偏差です。
積分非直線性 (INTEGRAL NON-LINEARITY : INL) は、負
のフルスケール ( 最初のコード遷移の 1/2LSB 下 ) から正のフルス
ケール ( 最後のコード遷移の 1/2LSB 上 ) まで引いた直線からそ
れぞれ個々のコードとの偏差として表されます。この直線から任
意のコードとの偏差は、各コード値の中央から測定します。
全高調波歪み (TOTAL HARMONIC DISTORTION: THD) は、
2 次から 6 次までの高調波の合計出力レベルと基本周波数の出
力レベルの比で、dBc で表されます。 全高調波歪み THD は次
式から求められます。
混変調歪み (INTERMODULATION DISTORTION: IMD) は、
A/Dコンバータの入力に 2 つの近接した周波数を同時に入力し、
結果として作り出される追加のスペクトラル成分です。 元の周波
数のパワーの合計に対する、両者の 2 次高調波のパワー ( また
は両者の 2 次高調波と 3 次高調波すべてのパワー ) の比として
定義されています。 IMD は通常 dBFS で表されます。
f1 は基本周波数 ( 出力 ) パワーの実効値 (RMS 値 )、f2 から f6
は高調波のうち 2 次から 6 次までの高調波のパワーです。
代表的な性能特性
特記のない限り、TA =+ 25 ℃、fSAMPLE = 500kSPS、fSCLK = 8MHz、fIN = 40.2kHz。
Spectral Response
Spectral Response
7
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ADC78H89
用語の定義
ADC78H89
代表的な性能特性 ( つづき )
特記のない限り、TA =+ 25 ℃、fSAMPLE = 500kSPS、fSCLK = 8MHz、fIN = 40.2kHz。
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DNL
DNL
INL
INL
DNL vs. Supply
INL vs. Supply
8
ADC78H89
代表的な性能特性 ( つづき )
特記のない限り、TA =+ 25 ℃、fSAMPLE = 500kSPS、fSCLK = 8MHz、fIN = 40.2kHz。
SNR vs. Supply
THD vs. Supply
ENOB vs. Supply
SNR vs. Input Frequency
THD vs. Input Frequency
ENOB vs. Input Frequency
9
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ADC78H89
アプリケーション情報
1.0 ADC78H89 を使用する
始をトリガします。また SCLK( シリアル・クロック ) は、変換処理
とシリアル・データ・タイミングの両方を制御します。DOUT はシリ
アル・データ出力ピンで、変換結果がシリアル・データ・ストリー
ムとして出力されます。シリアル・データ・ピン DIN のデータは
ADC78H89 の制御レジスタに書き込まれます。
Figure 1 に、ADC78H89 の機能図を示します。また、ADC78H89
のシリアル・インタフェースのタイミング図を、前述の「タイミング
図」の項にそれぞれ示します。 CS はチップ・セレクトを表し、
ADC78H89 の変換サイクルとシリアル・データ転送フレームの開
FIGURE 1. ADC78H89 Functional Diagram
変換処理とシリアル・データ・タイミングは SCLK によって制御され
ます。 1 回の変換処理には 16 SCLK サイクルが必要です。 CS
を LOW にすると変換処理が始まります。複数の変換処理は、CS
の立ち下がりエッジから立ち上がりエッジまでの単一のシリアル・フ
レームとして連続して実行されます。CS を LOW に保持している
間は ADC78H89 は変換を継続します。
しません。 続く立ち下がりエッジでデバイスはトラック・モードに移
り変換処理が始まります。どのような場合でも変換処理の完了に
は合計で 16 個の立ち下がりエッジが必要です。
ADC78H89 からの読み出し完了には 16 SCLK サイクルを必要と
します。サンプルの各ビット( 先頭の 4 つのゼロを含む ) は SCLK
の立ち下がりで出力され、次の立ち上がりエッジの時点で DOUT
上のデータは有効となります。 ADC78H89 は 4 ビットの先頭ゼロ
を DOUT から出力したあと、最上位ビットから順に 12 ビットのデー
タを出力します。 最終データビット DB0 は 16 番目の SCLK の立
ち下がりエッジで出 力され、次の立ち上がりエッジの時 点で
DOUT 上のデータは有効となります。 CS が LOW になった直後
の SCLK エッジは、アプリケーションによって立ち上がりエッジにな
る場合と立ち下がりエッジになる場合があります。
CS を LOW にすると、変換処理が始まると同時に制御レジスタに
書き込みが行われます。 制御レジスタに書き込まれた新しい設定
値は次の変換処理に作用します。 すなわち、入力チャネル選択
の設定と対応する出力との間には 1 サンプル分の遅延が存在し
ます。
CS を LOW にすると ADC78H89 の基本動作である変換処理と
データ出力が始まります。この時点で DOUT ピンは TRI-STATE
から復帰します。 CS が LOW になったあと最初の SCLK の立ち
下がりでコンバータはトラック・モードに移り、入力信号の取り込み
を開始します。CS が LOW になった時点から数えて、入力信号
の取り込み処理に必要な時間は 3 SCLK です。この取り込み時
間は tACQ として規定されています。SCLK の 4 番目の立ち下が
りエッジでコンバータはトラック・モードからホールド・モードへと移
り、アナログ入力信号はこの時点でサンプルされます (Figure 1 参
照 )。 変換処理の完了には続いて 13 SCLK サイクルを必要とし
ます。
変換の実行とともに制御情報を制御レジスタに書き込まなければ
なりません。 各変換の最初の 8 個の SCLK 立ち上がりエッジで
制御レジスタへの書き込みが行われます。 ADC78H89 を動作さ
せるには、DIN に適切なデータを与えて制御レジスタを設定する
必要があります。 現在の変換処理で制御レジスタに書き込んだ
データによって、次の変換処理でサンプルされる入力チャネルが
決まります。
制御レジスタへの書き込みは CS が LOW になったあとの SCLK
の立ち上がりエッジで行われ、DIN データは最上位ビットから順に
書き込まれます。DIN ピンからのデータ書き込みは 16 SCLK を必
要とする変換データの読み出しと並行して行われます。 制御レジ
スタには前半の 8 SCLK の立ち上がりエッジで書き込まれ、後半
の 8 SCLK の立ち上がりエッジの DIN は無視されます。 Table 1
はビットの機能で、MSB は書き込みデータの最初のビットを示しま
す。電源立ち上げ時のデフォルト値は、制御レジスタの全ビットゼ
ロです。
CS が HIGHとなっていて変換が行われていないときは、SCLK を
HIGH または LOW に保持して ADC78H89 をアイドル状態にでき
ます (CS が HIGH のときに、当然ながら SCLK を入力したままに
しても構いません )。クロックがアイドルかどうかによらず、CS が
LOW になったあとの最初の SCLK の立ち下がりエッジで変換処
理が始まります (Figure 1 参照 )。SCLK を LOW の状態でアイド
ルさせた場合、SCLK の最初の立ち上がりエッジは動作には関係
Table 1. Control Register Bits
Bit 7 (MSB)
DONTC
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Bit 6
DONTC
Bit 5
ADD2
Bit 4
ADD1
Bit 3
ADD0
10
Bit 2
DONTC
Bit 1
DONTC
Bit 0
DONTC
Table 2. Control Register Bit Descriptions
ビット
シンボル
説明
7, 6, 2, 1, 0
DONTC
Don’t care です。このビットの値はデバイスの動作には影響を与えません。
5
ADD2
4
ADD1
3
ADD0
この 3 ビットで、次の CS の立ち下がりエッジでサンプルおよび変換処理を行う
入力チャネルを指定します。ビット・パターンと選択されるチャネルの対応を Table
3 に示します。
の ADC78H89 の簡略ブロック図を Figure 2、3 にそれぞれ示しま
す。Figure 2 では ADC78H89 はトラック・モードになっています。
スイッチ SW1 によってマルチプレクサで選択された 7 チャネルのう
ちの 1 つのチャネルがサンプリング・コンデンサに接続され、SW2
によってコンパレータ入力は平衡に保たれます。 ADC78H89 は、
CS が LOW になったあと 3 SCLK サイクルにわたってこの状態を
保ちます。
Table 3. Input Channel Selection
ADD2
ADD1
ADD0
Input Channel
0
0
0
AIN1 (Default)
0
0
1
AIN2
0
1
0
AIN3
0
1
1
AIN4
1
0
0
AIN5
1
0
1
AIN6
1
1
0
AIN7
1
1
1
GND
Figure 3 では ADC78H89 はホールド・モードにあります。 サンプ
リング・コンデンサは入力電圧 ( 正確には AVDD/2と VINとの電
位差 ) を保持したまま SW1 によってグラウンドに接続され、またス
イッチ SW2 はコンパレータを非平衡状態にします。制御回路はコ
ンパレータが平衡状態になるまで、サンプリング・コンデンサに一
定量の電荷 ( 電位 ) を加算または減算するように電荷再配分型
DAC を制御します。コンパレータが平衡になった時点で DAC に
与えられているデジタル・ワードがアナログ入力電圧のデジタル値
を表します。ADC78H89 は、CS が LOW になったあと後半の 13
SCLK サイクルにわたってこの状態を保ちます。
2.0 ADC78H89 の動作
ADC78H89 は、電荷再配分 D/A コンバータを採用した逐次比
較型の A/D コンバータです。トラック・モードとホールド・モードで
FIGURE 2. ADC78H89 in Track Mode
FIGURE 3. ADC78H89 in Hold Mode
11
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ADC78H89
アプリケーション情報 ( つづき )
ADC78H89
アプリケーション情報 ( つづき )
3.0 ADC78H89 の伝達関数
ADC78H89 の LSB の大きさは AVDD/4096 です。理想的な伝達
特性を Figure 4 に示します。
ADC78H89 の出力フォーマットはストレート・バイナリ形式です。
コード遷移は連続する LSB と LSB の中点付近で生じます。
FIGURE 4. Ideal Transfer Characteristics
4.0 回路例
ログ電源と分離し、さらにバイパス・コンデンサで安定化を図って
います。 ADC78H89 はアナログ電圧 (AVDD) をリファレンス電圧
として使用するため、AVDD を可能なかぎりクリーンにすることが
重要です。 ADC78H89 の消費電力は小さいため、高精度な電
圧リファレンスを電源として用いて性能を最大限に引き出すことも
可能です。図では 4 本の信号をマイクロプロセッサまたは DSP に
接続しています。
ADC78H89 の代表的アプリケーション回路の例を Figure 5 に示
します。この例では、固定電圧出力または電圧外部設定機能を
備えるナショナルの LP2950 低ドロップアウト電圧レギュレータを用
いて、アナログ電圧とデジタル電圧の両方を供給しています。ア
ナログ電源は ADC78H89 近傍に配置したコンデンサ・ネットワー
クでバイパスしています。デジタル電源は直列抵抗を介してアナ
FIGURE 5. Sample Circuit
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5.0 アナログ入力
7.0 パワー・マネージメント
ADC78H89 入力段の等価回路を Figure 6 に示します。 各変換
の始まりでは ADC78H89 が持つ 7 つのチャネルのうち 1 つが単
純なトランスファ・ゲート回路によって選択されます。したがって、
等価回路は Figure 6 のように表せます。ダイオード D1 と D2 はア
ナログ入力の ESD 保護を目的としています。アナログ入力電圧
これ
が AVDD + 300mV を超えるか GND − 300mV を下回ると、
ら ESD ダイオードが即座に導通し電流をサブストレートに流しま
す。
ADC78H89 はデュアル電源のデバイスです。 2 系統の電源は
ESD 保護回路を共有しているため、電源を適切な順序で印加し
なければならない点に注意が必要です。ESD ダイオードの導通を
避けるため、デジタル電源 (DVDD) 電圧はアナログ電源 (AVDD)
電圧を 300mV 以上超えてはなりません。
したがって、ADC78H89
のアナログ電源はデジタル電源よりも先に (または同時に ) 印加す
る必要があります。
CS を LOW にすると ADC78H89 は全面的にパワーアップし、CS
を HIGH にすると全面的にパワーダウンします。ただし例外があ
り、変換処理の 16 番目の SCLK 立ち下がりエッジから、次の変
換 処 理の 1 番目の SCLK 立ち下 がりエッジまでの間は、
ADC78H89 は自動的にパワーダウン・モードに移ります (Figure 1
参照 )。
Figure 6 に示すコンデンサ C1 の代表値は 3pF で、主にピンの容
量成分です。 抵抗 R1 はマルチプレクサとトラック / ホールド回路
のスイッチに起因するもので代表値は 500Ω です。コンデンサ C2
は ADC78H89 のサンプリング・コンデンサで代表値は 30pF です。
サンプリング・コンデンサの充電で生じる入力の変動を吸収させ
る意味で、ADC78H89 は低インピーダンスの信号源で駆動された
ときに最も高い性能を発揮します。そのため、動的な性能がクリ
ティカルなアプリケーションでは、入力信号は低出力インピーダン
ス・アンプで駆動しなければなりません。また、ADC78H89 を AC
信号のサンプルに使用する場合は、バンドパス・フィルタまたはロー
パス・フィルタを使用して高調波やノイズを排除するとTHDとSNR
の改善が図れます。
ADC78H89 では、パワーアップ後の待ち動作やダミー変換サイク
ルは必要ありません。デバイスはパワーアップ直後の最初の変換
から、完全な分解能でアナログ入力を取り込みます。
ADC78H89 は連続して複数の変換を実行します。 各変換には
16 SCLK サイクルがかかります。 ADC78H89 は CS が LOW の
間は変換を継続して実行します。
単位時間あたりの変換数を減らせば、設計者はスループットと消
費電力のどちらかを優先できます。ADC78H89 の最大消費電力
の代表値とスループットの関係を Figure 7 に示します。パワーアッ
プ状態への移行はきわめて高速なため、消費電力の計算に考慮
する必要はありません。 消費電力は単純に、ノーマル・モードで
動作する時間の割り合いにノーマル・モード時の消費電力 ( たと
えば AVDD = DVDD =+ 2.7V ∼+ 3.6V の場合で 8.3mW) を乗
算し、シャットダウン・モードで動作する時間の割り合いにシャット
ダウン・モード時の消費電力 (AVDD = DVDD =+ 2.7V ∼+ 3.6V
で 0.3mW) を乗算して、両者を加算すれば求められます。
FIGURE 6. Equivalent Input Circuit
6.0 デジタル入力とデジタル出力
ADC78H89 のデジタル入力 (SCLK、CS、DIN) は上限電圧が
規定されており、また AVDD を超えてはなりません。デジタル入力
ピンはラッチアップが起こらないよう設計されていますが、DVDD 確
定後に SCLK、CS、DIN に印加したほうがリスクを低減できます。
FIGURE 7. Typical Power Dissipation vs. Throughput
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ADC78H89
アプリケーション情報 ( つづき )
ADC78H89 7 チャネル、500kSPS、12 ビット A/D コンバータ
外形寸法図 単位は millimeters
16-Lead TSSOP
Order Number ADC78H89CIMT, ADC78H89CIMTX
NS Package Number MTC16
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て使用することはできません。
1. 生命維持用の装置またはシステムとは (a) 体内に外科的に使
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従って適切に使用された場合に、これの不具合が使用者に身
体的障害を与えると予想されるものをいいます。
2. 重要な部品とは、生命維持にかかわる装置またはシステム内
のすべての部品をいい、これの不具合が生命維持用の装置ま
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