OKI-EMSのコア技術について

OKI-EMSのコア技術について
∼ ハイエンド製品の受託生産サービスで培った独自開発技術 ∼
町田 政広 小日向 隆
高齋 一貫
近年のエレクトロニクス業界では、製品のライフサイ
れる。さらに、PCBと部品を接合するはんだ材料は、地
クル短期化、低価格化、グローバル化が進み、企業にお
球環境保護の観点より「共晶はんだ」に替わり、「鉛フ
いては、事業の選択と集中、工場再編など経営効率向上
リーはんだ」
(OKI−EMSでは組成:Sn-3.0Ag-0.5Cuを採
や競争力強化が必要となってきた。
用)
の使用が主流となっている。
この様な組織・構造変革の下、製造分野においても迅
これら動向を踏まえ、ハイエンド製品を製造、基板実
装サービスを提供していく上では、
「はんだ付け」及び
速で柔軟な生産体制の確保が求められてきた。
O K I で は 、 2 0 0 2 年 よ り E M S( E l e c t r o n i c s
Manufacturing Service、以降OKI−EMSと称す)を展
「はんだ付け検査」の技術の前進と革新が必要となる。
特に、
「はんだ付け」においては、
「リフロー」と「フロー」
開、OKIグループ企業の総合力とこれまで情報通信機器の
のはんだ付け技術、
「はんだ付け検査」においては、高速・
分野で培った豊富な開発・生産実績をもとに総合的サー
高精度の自動検査技術がキーとなる。これら技術におい
ビスを提供してきた。
ては、最新の汎用設備を導入しても製品実現することが
現在では、情報通信、計測、産業、医療分野のハイエ
できるものではないため、OKI−EMSでは、製品動向に
ンド製品に対して開発設計から組み立て・検査まで一貫
応じた独自技術を開発し、基板実装サービスの一つの商
した「設計・生産ワンストップサービス」を提供している
品としてお客様へ提供している。
(図1)
。
2005年
本章では、この中でも基板実装サービスにフォーカス
2008年
現在
した「はんだ付け」及び「はんだ付け検査」のコア技術に
お客様
370×300×2(L18)
12,000部品
(50,000端子)
部品
開
発
設
計
部
材
調
達
基
板
実
装
装
置
組
立
検
査
輸
送
大型多層化
450×350×3(L24)
お客様
設計・生産ワンストップサービス
製
品
企
画
2012年
610×500×6.0(L48)
510×460×4.8(L32)
PCB
ついて、開発経緯と特徴について紹介する。
2011年
販
売
8,000部品
(32,000端子)
10,000部品
(40,000端子)
4,000部品
(16,000端子)
大型多ピン化
部品点数増加
□40㎜(1,500端子) □45㎜(2,000端子) □50㎜(2,500端子)
はんだ
共晶
鉛フリー
鉛フリー化
図1 OKI−EMSの提供サービス
図2 ハイエンド製品の動向
ハイエンド製品の動向
OKI−EMSが受託しているハイエンド製品の動向につ
いて、
「Printed Circuit Board
(以降、PCBと称す)
」
、
「部
品」
、
「はんだ」の視点より示す
(図2)
。
まず、PCBの動向をみると、近年、サイズの大型化、
板厚、層数の増加が進み、将来についても大型多層化が
ハイペースで進んでいくことが予測される。また、部品
については、大型多ピン化、実装点数が増加、結果とし
て高密度実装が加速している。今後も部品形状、種類の
多様化が進み、高密度実装を先導していくことが予測さ
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OKIテクニカルレビュー
2011年10月/第218号Vol.78 No.1
リフローはんだ付けの課題
OKI−EMSで取り扱うハイエンド基板は、一般的なノー
トパソコン基板に対して、
「PCBサイズ約5倍」、
「PCB厚
み約4倍」
、
「SMT
(Surface Mount Technology)
部品の
実装点数約5倍」と非常に重厚感のある構成である。
これら基板を汎用リフロー装置で、はんだ付けした
ケースを見ていく。
まず、ノートパソコン基板では、PCBサイズが小さく、
厚みも薄く、部品の実装数もさほど多くない。また、実
装部品自体も大きくないことから、各部品間でバラツキ
① ファン攪拌によるヒータ熱風の均熱強化
ない適性温度でのはんだ付けが可能であり、結果、良好
② 微細回収機構による循環熱風時の温度低下防止
なはんだ付けを得ることができる。
③ ヒータの熱風速度・基板間距離の最適化による熱伝達性
一方、ハイエンド基板においては、大型多層のPCBに
能向上
0603サイズチップから□50mmサイズの半導体までの大
また、上記に加え基板搬送に関しては、従来の定速度
小さまざまな部品が数多く実装される。このため、各部
搬送より速度制御搬送方式を採用したことにより、熱伝
品間には大きな温度ばらつきが発生、小さい部品では温
達性能の飛躍的な向上を実現した。
度が高くなりすぎて熱破壊、大きい部品では十分な温度
がかからないことより、はんだ未溶融、未接合不良が発
生する
(図3)
。
従来のリフロー装置における部品間の温度バラツキは、
鉛フリーはんだ付けが可能な温度領域である15℃以内の
ハイエンド基板のリフローはんだ付けにおいては、各
確保が極めて困難であったが、今回開発した高精度リフ
部品間で温度バラツキのない高精度なはんだ付け方式の
ロー装置では、部品間の温度バラツキを約3℃に抑え、従
開発が必要であった。
来比1/5と大幅な低減を図り、ハイエンド基板における高
品質の鉛フリーはんだ付けを実現した
(図5)
。
ノートパソコン基板
ハイエンド基板
MINサイズ部品
MINサイズ部品
基板
(汎用リフロー装置
によるはんだ付け)
245
はんだ付け
温度
MAXサイズ部品
高
はんだ付け
温度
MAXサイズ部品
適
正
良好な
はんだ付け
PCB
部品MAX温度
部品MIN温度
温度(℃)
熱破損
良好な
はんだ付け
高
適
正
未溶融
低
部品の熱破損
240
温度バラツキ
15℃
温度バラツキ
3℃
低
235
サイズ
250×200mm
510×460mm
厚(層数)
1.2mm(10層)
4.8mm(32層)
実装数
SMT
MIN
部品 サイズ
MAX
2,000点
10,000点
0603チップ(0.6×0.3mm)
0603チップ(0.6×0.3mm)
□35mm(1,000端子)
□50mm(2,500端子)
はんだ
鉛フリーはんだ
鉛フリーはんだ
温度バラツキ
1/5化
はんだ付け
可能範囲
230
225
図3 基板比較とリフローはんだ付け
はんだ未溶融
∼
∼
高精度リフローはんだ付け技術
OKI−EMSでは、以上のリフローはんだ付けの課題に
取り組み、ハイエンド基板に対応した高精度鉛フリーリ
0
従来方式
新方式
図5 リフロー方式別の温度バラツキ比較
フローはんだ付け技術を開発した。
本開発においては、下記に示す様な3つの開発要素を取
スルーホール部品のはんだ付けの課題
り込んでいる
(図4)
。
従来方式
不均一熱風
製品を構成する部品は、リフロー工法によりはんだ付
新方式
熱風速度
の最適化
ファン撹拌
による均熱化
ファン
ヒータ
ヒータ
けされるSMT部品が主である。しかし、一部の部品では、
PCBのスルーホール
(接続用の貫通穴)
に部品リードを挿
入、さらにはんだを充填し、固定・接合する形態の部品
ファン
がある(以降スルーホール部品と称す)。従来、スルー
ホール部品は、はんだコテによる手はんだ付けにより実
基板
基板
ヒータ距離
の最適化
装されてきた。
ノートパソコン基板に対して、ハイエンド基板では、ス
ルーホール部品の実装数、はんだ付け端子数が多く、作
ヒータ
ファン
循環熱風の温度低下
ファン
ヒータ
微細回収による循環
熱風の温度低下防止
図4 高精度リフローの開発要素
業面で膨大な工数を要する。
ノートパソコン基板におけるスルーホール部品のはん
だ付けでは、はんだコテがPCB銅パターンに接触するこ
とにより、コテ先の熱がパターン全体に行き渡り、結果、
OKIテクニカルレビュー
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供給はんだがスルーホール内に十分充填され、良好なは
スルーホール
部品
んだ付けが得られる。
一方、ハイエンド基板においては、PCBが厚く、層数
はんだが
流れ込み、充填
浸漬(深さを制御)
が多いことから、コテ先の熱がPCB銅パターン全体に行
PCB
き渡らず、結果として、供給はんだがスルーホール内に
充填されない状態となる。この状態を解消するために、は
圧力
圧力
溶融はんだ
んだコテ温度を高め、はんだ付け時間を延ばすとPCBの
図7 静圧方式はんだ付け
銅パターンと基材の熱膨張の違いからひずみ応力の掛か
る銅パターン付け根の部分で断線を起こす。
さらに、鉛フリーはんだ特有の銅パターンがはんだに
スルーホール
部品
侵食される不具合(Sn-3Ag-0.5Cuはんだ特有の銅パッ
ド食われ現象)が発生するなど、その品質確保は極めて
難しい状況であった
(図6)
。
スル
ーホ
ール
部品
傾斜ピールバック
PCB
PCB
揺動
揺動
ハイエンド基板へのスルーホール部品はんだ付けにお
溶融はんだ
溶融はんだ
ガス
<揺動>
<引上げ>
いては、スルーホールへ十分なはんだを充填、基板への
図8 ロボット動作
ダメージのない自動はんだ付けの開発が必要であった。
これにより、はんだ充填率100%、断線、侵食など基板
ノートパソコン基板
ハイエンド基板
ダメージレスの一括自動はんだ付けを実現した
(図9)
。
はんだコテ
糸はんだ
良好なはんだ付け
断線
侵食
従来方式
基板
(スルーホール部品
のコテはんだ付け)
糸はんだ
新方式
はんだコテ
はんだ付け
温度
PCB
スルーホール部品
はんだ付け
温度
PCB
高
高
適
正
適
正
低
はんだ未充填
スルーホール部品
はんだ充填
20%
はんだ付け
はんだ充填
100%
低
強度不足
PCB
スルーホール
部品
サイズ
250×200mm
510×460mm
厚(層数)
1.2mm(10層)
4.8mm(32層)
実装数
4点
15点
端子数
40端子
320端子
鉛フリーはんだ
鉛フリーはんだ
はんだ
図6 基板比較とスルーホール部品のコテはんだ付け
強度確保
基板パターン
断線
パターン侵食
正常
正常
図9 はんだ付け方式別の品質
静圧方式はんだ付け技術
OKI−EMSでは、ハイエンド基板へのスルーホール部
品はんだ付けの課題に取り組み、静圧方式はんだ付け技
術を開発した。
はんだ付け検査の課題
ここでは、SMT部品を2種類に分類し、それぞれのは
んだ付け検査における課題を説明する。
静圧はんだ付け方式では、まず、噴流のないほぼ静止
まず、BGA(Ball Grid Array)、CCGA(Ceramic
状態に近い溶融はんだに対して、基板を深さ制御しなが
Column Grid Array)
などはんだ付け端子部が部品下に隠
ら浸漬します。浸漬時、PCBスルーホールには、溶融は
れ、外観確認不可能な部品を「下面電極部品」とし、QFP
んだよりの大きな圧力加わり、結果としてスルーホール
(Quad Flat Package)
、SOP
(Small Outline Package)
内にはんだが強制的に流れ込み、短時間ではんだが充填
などはんだ付け端子部の外観確認が可能な部品を「一般
される
(図7)
。
部品」と定義する。
また、ロボット動作により、浸漬時、基板を微細に揺
従来、OKI−EMSでは、下面電極部品については、X線
動させ、はんだ付けの阻害要因となるガス抜きを行い、引
検査、一般部品については、熟練検査員による目視検査
き上げ時、スピードを制御した傾斜ピールバック動作を
で保証してきた。特に、下面電極部品の検査では、全部
行うことによりはんだショート、つららなどのはんだ不
品・全端子について3次元X線検査を実施し、より高いレ
良を防止する
(図8)
。
ベルのはんだ付け保証を提供してきた。
なお、3次元X線検査は、任意の位置ではんだ付け部の
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OKIテクニカルレビュー
2011年10月/第218号Vol.78 No.1
断面画像を抽出・診断するため、透過式X線検査と異なり、
した箇所について現物基板の上面および斜めからの拡大
周辺状況の写り込みによるノイズが少なく、より高精度
観察で良否判定を行う。
従来の上面からの目視検査では検出できない不良もこ
な検査が可能な検査方式である。
近年、ハイエンド基板においては、部品実装点数の増
加に伴い一般部品が増加、さらに高密度設計・部品配置の
のX線検査と斜視照合により、精度の高い検出が可能と
なった
(図11)
。
観点より下面電極部品の採用も高まり、一般部品、仮面
電極部品ともにその接合端子数が飛躍的に増加している
(図10)
。
NW
高速3次元
X線検査
OKI開発プログラム
により高速化
接合端子数(ポイント)
60,000
SMT部品
下面電極部品
40,000
一般部品
30,000
9,600
20,000
16,000ポイント×2.4
(4,000点)
下面電極
部品 4,000
10,000
一般部品
0
12,000
14,000
拡大斜視
部品
20,000
32,000ポイント
(8,000点)
拡大斜視可能な
照合システムと連携
50,000ポイント
(12,000点)
接合端子数
(部品点数)の増加
40,000ポイント
(10,000点)
50,000
×1.4
照合システム
X線
検査
PCB
外観
X線検査
照合システム
×1.4
NG端子
22,400
×1.2
26,000
×1.2
30,000
目視
検査
NG端子
判別難
×1.9
NG端子
2005年
図10
2008年
2011年
2014年
部品形態別の接合端子数トレンド
この様な製品動向に対して、下面電極部品では、X線検
判別難
図11
NG端子
隠れた不良も検出
検査システムとはんだ不良の検出
査の能力不足、また、一般部品では目視検査による誤判
定など品質保証上のリスクが大きく、さらには検査時間
今後の展開
も飛躍的に増加、生産性を低下させる要因となっていた。
ハイエンド基板のはんだ付け検査においては、下面電
OKI−EMSでは、
「他社EMSがやりたがらないこと」、
極部品に対する高速3次元X線検査と一般部品に対する高
「汎用技術ではできないこと」を知恵と技術で可能とし、
精度な自動検査の開発が必要であった。
お客様の夢を実現する工場として魅力あるサービスを提
供していく。
今後もハイエンド製品の動向と連動した技術を開発、
高速3次元X線検査システムの構築
OKI−EMSでは、上記の課題に取り組み、これまで培っ
OKI−EMSの特徴である高信頼性・高品質を目指したコア
技術を探求していく。
◆◆
てきたX線検査技術をベースとした高速3次元X線検査シ
ステムを開発、構築した。
従来のX線検査に対して、高速スキャン機構を採用、さ
らにOKI独自開発の検査アルゴリズムを適用することで高
速かつ高精度の自動検査を可能とした。
結果として、1秒当たり100端子の高速検査を実現、こ
れにより下面電極部品のみならず一般部品も検査対象に
取り込んだ全SMT部品の全端子検査を実現した。
●筆者紹介
町田政広:Masahiro Machida.EMS事業部 品質保証部 生産
技術開発チーム
小日向 隆:Takashi Obinata. EMS事業部 品質保証部 生産技術
開発チーム
高齋一貫:Kazutaka Takasai. EMS事業部 品質保証部 生産技術
開発チーム
また、不具合を後工程に流出しないという考え方に基
づきX線検査では検査判定値を厳しく設定している。つま
り、不良を良品と判断することはないが、良品を不良と
判断する場合がある。X線検査で不良と判定した基板に限
っては、X線検査とデータ連携した照合システムで再度状
態確認を実施する。この照合では、X線検査で不良と判定
OKIテクニカルレビュー
2011年10月/第218号Vol.78 No.1
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