sla7080mpr ds jp

2 相 SPM モータードライバ IC
SLA7080M シリーズ
データシート
2016 年 2 月 Ver.2.00
本資料は、2 相ステッピングモーター・ユニポーラ駆動用ドライバ IC である
SLA7080M シリーズについてまとめたものです。
本資料には開発中のため暫定的な内容が含まれています。
最新情報に関しては、弊社担当部門までお問合せ願います。
1.
はじめに ........................................................................................... 2
2.
特徴 .................................................................................................. 2
3.
製品名と電流定格について.............................................................. 3
4.
製品仕様 ........................................................................................... 3
5.
減定格図 ........................................................................................... 6
6.
外形図&捺印形状 ............................................................................ 7
7.
内部ブロック図&ピンアサイン ...................................................... 8
8.
応用回路例 ....................................................................................... 9
9.
真理値表 ......................................................................................... 10
10. 回路構成 ......................................................................................... 11
11. 機能説明 ......................................................................................... 13
12. ご使用に際して .............................................................................. 19
13. 熱設計資料 ..................................................................................... 22
14. 代表特性例 ..................................................................................... 24
サンケン電気株式会社
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SLA7080M シリーズ データシート Ver.2.00
1. はじめに
長年ご愛顧頂いております、弊社 2 相ステッピングモーター・ユニポーラ駆動ドライバの各
シリーズですが、新たに「SLA7080M シリーズ」をリリースすることになりました。
本資料は、
「SLA7080M シリーズ」に関する情報をまとめたものです。
2. 特徴
(1) 主電源電圧 VBB=46V max(使用範囲 10V~44V)
(2) Logic 電源電圧 VDD=3V~5.5V 対応
(3) 出力電流 IO(max):1A、1.5A、2A、3A をラインナップ
(4) Phase 入力対応(Full step/Half Step 対応)
(5) モーター電流を検出する「検出抵抗」を内蔵
(6) シリーズ品はピンコンパチブル
(7) ZIP タイプ 23pin モールドパッケージを採用(SLA パッケージ)
(8) OFF 時間固定の自励式 PWM 電流制御を採用
(9) PWM OFF 時の損失を低減する回路(同期整流回路)を搭載
(10) モーターホールド時に発生する異音を防止する同期 PWM 機能を搭載
(11) 待機時のドライバー消費電流を低減する Sleep 機能を搭載
(12) モーターコイルオープン/ショート保護および過熱保護を内蔵
→保護機能を外した「保護回路非内蔵品」も用意
(13) ブランキング時間(Min オン時間)を外部信号で切替可能
→3.2µs/5.2µs
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3. 製品名と電流定格について
SLA7080M シリーズの製品名と電流定格の対応を表 3-1 に示します。
表 3-1 SLA7080M シリーズ製品名と電流定格の対応一覧
製品名称
1A
SLA7080MPR
SLA7081MPR
SLA7082MPR
SLA7083MPR
電流定格
(最大設定電流値)
1.5A
2A
3A
○
○
○
○
4. 製品仕様
表 4-1 絶対最大定格
項
目
モーター電源電圧
主電源電圧
記 号
VM
VBB
Logic 電源電圧
VDD
出力電流
IO
Logic 入力電圧
REF 入力電圧
検出電圧
許容損失
特記なき場合、TA=+25℃
備 考
単位
V
V
V
V
A
A
A
A
V
V
V
DC 印加
1μs(Duty 5%)以下
SLA7080MPR
SLA7081MPR
制御電流値
SLA7082MPR
SLA7083MPR
VIN
VREF
VRS
規 格 値
46
46
6
7
1.0
1.5
2.0
3.0
‐0.3 ~ VDD+0.3
‐0.3 ~ VDD+0.3
±1
PD
4.7
W
No Fin
ジャンクション温度
°C
TJ
150
動作周囲温度
‐20 ~ 85
°C
TA
保存温度
‐30 ~ 150
°C
Tstg
(※)出力電流値は、Duty 比、周囲温度、放熱条件によって制限される可能性があります。
いかなる使用条件下においても、決して指定された最大出力電流および最大接合部温度
(TJ)を超えないようにしてください。
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表 4-2 推奨動作範囲
特記なき場合、TA=+25℃
項
目
モーター電源電圧
主電源電圧
記 号
VM
VBB
規 格 値
Min
Max
44
10
44
単位
備
考
V
V
VDD サージ電圧は±0.5V
以下にして下さい。
12pin リード部温度
ケース温度
°C
TC
90
No Fin 時
注:VM が高いほど、OUT 端子の耐圧(100V min)に近づくためブレイクダウンを起こしや
すい状態に近づきます。
OUT 端子がブレイクダウン(サージノイズ含)すると、本シリーズでは異常(コイルオ
ープン)と認識し、保護が働く可能性が高くなるので十分な評価をお勧めします。
Logic 電源電圧
VDD
3.0
5.5
V
表 4-3 電気的特性-1
特記なき場合、TA=+25℃、VBB=24V 、VDD=5V
定 格
項 目
記 号
単位
条 件
Min.
Typ.
Max.
動作時
IBB
15
mA
主電源電流
Sleep 時
IBBS
100
µA
Logic 電源電流
IDD
5
mA
出力MOSFET 耐圧
VBB=44V,ID=1mA
VDSS
100
V
0.7
0.85
IO=1A
0.45
0.6
IO=1.5A
出力MOS FET ON 抵抗 RDS(on)
Ω
0.25
0.4
IO=2A
0.18
0.24
IO=3A
0.85
1.1
IO=1A
1.0
1.25
IO=1.5A
出力MOS FET Di 順電圧
VF
V
0.95
1.2
IO=2A
0.95
2.1
IO=3A
最大応答周波数
fclk
250
KHz 入力信号 Duty=50%時
VIL
0.25VDD
V
Logic 入力電圧
VIH
0.75VDD
V
±1
IIL
µA
Logic 入力電流
±1
IIH
µA
Io=1A 品
0.04
0.3
Io=1.5A 品 & 3A 品
VREF
0.04
0.45
V
REF 入力電圧
Io=2A 品
0.04
0.4
Sleep1 ※1
VREFS
2.0
VDD
V
REF 入力電流
±10
IREF
µA
※特記なき場合、電流は製品から流れ出す方向を‘-’とします。
※1 Sleep の状態は、「IBBS」、「出力:OFF」となります。
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表 4-3 電気的特性-1 (続き)
特記なき場合、TA=+25℃、VBB=24V 、VDD=5V
定 格
項 目
記 号
単位
条 件
Min.
Typ.
Max.
VREF
VREF
SENSE 検出電圧
VSENSE
VREF
V
‐0.03
+0.03
Io=1A 品 & 1.5A 品
0.296
0.305
0.314
検出抵抗 ※2
Io=2A 品
RS
0.199
0.205
0.211
Ω
Io=3A 品
0.150
0.155
0.160
3.2
µs
B_SEL=L
PWM 最小オン時間
ton(min)
5.2
µs
B_SEL=H
PWM オフ時間
toff
13
µs
Sleep‐Enable 復帰時間
tSE
100
µs
Phase IN → Out ON
tcon
1.5
µs
スイッチング時間
Phase IN → Out OFF
tcoff
1.0
µs
過電流検知電圧 ※3
モーターコイルショート時
VOCP
0.65
0.7
0.75
V
1A 品 & 1.5A 品
2.3
A
過電流検知電流
2A 品
IOCP
3.5
A
VOCP÷Rs
3A 品
4.6
A
負荷断線未検知時間
PWM オフから開始
topp
2
µs
過熱保護温度
ケース裏面(飽和温度時)
°C
Ttsd
140
IFlagL=1.25mA
VFlagL
1.25
V
Flag出力電圧
IFlagH=-1.25mA
VFlagH VDD‐1.25
V
IFlagL
1.25
mA
Flag出力電流
‐1.25
IFlagH
mA
※特記なき場合、電流は製品から流れ出す方向を‘-’とします。
※2 内蔵しています抵抗単体の値に製品構成による抵抗値(約 5mΩ)が含まれております。
※3 VSENSE≧VOCP の条件で保護回路が働きます。
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図 4-1 基準電圧 VREF の設定範囲
VDD
Sleep1設定範囲
2.0V
禁止帯
VOCP=0.7V
0.45V
0.4V
0.3V
1A品
2A品
0V
1.5A品
3A品
モーター電流設定範囲
※「モーター電流設定範囲」⇔「Sleep1 設定範囲」の切替えに十分注意してください。禁止
帯に VOCP が存在するため、切替え時間が遅いと OCP 動作(VSENSE>VOCP)となります。
5. 減定格図
パッケージ許容損失 PD [W]
Allowable Package
Power Dissipation
図 5-1 減定格図
5.0
θJ-A=26.6℃/W
4.0
3.0
2.0
1.0
0.0
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
周囲温度 TA [℃]
Ambient Temperature
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6. 外形図&捺印形状
LF № 2151
単位:mm
・端子材質:Cu
・端子処理:Ni メッキ+半田メッキ(鉛フリー)
a.品名標示①
SLA708xMR※
b.品名標示②
P
c.ロット番号
第 1 文字
西暦年号下一桁
第 2 文字
月
1~9 月 : アラビア数字
10 月 : O
11 月 : N
12 月 : D
第 3,4 文字
製造日
01~31 : アラビア数字
※品名標示①の「x」は、電流定格により「0」、「1」、
「2」
、
「3」のいずれかの数字が標示されます。
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7. 内部ブロック図&ピンアサイン
図 7-1 SLA7080MPR シリーズ内部ブロック図
Pin 番号
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
記
号
機
能
Out A
A 相出力
Out A/
A/相出力
Sense A
B_SEL
INA
/INA
INB
/INB
VBB
Gnd
Ref/Sleep
VDD
Gnd1
Gnd2
Sync
Flag
Sense B
A 相電流検出
ブランキング時間切替入力
Out B/
B/相出力
Out B
B 相出力
A 相側切替入力
B 相側切替入力
主電源(モーター電源)
製品 Gnd
制御電流/Sleep 設定入力
Logic 電源
Gnd1
Gnd2
PWM 制御切替入力
保護回路モニター出力
B 相電流検出
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8. 応用回路例
図 8-1
参考定数
r1=10KΩ
r2=1KΩ(VR)
r3~8=1K~10KΩ(入力状態が不定に至らない場合は不要)
☆特に VDD ラインのノイズに注意してください。
VDD ラインのノイズが 0.5V 以上になると製品が誤動作する場合がありますので、Gnd
パターンの引き回しには十分に注意してください。
製品 Gnd(12pin)部から VDD 系 Gnd(ロジック Gnd)と VBB 系 Gnd(パワーGnd)
を分けるとノイズ低減の効果があります。
☆使用しない Logic 入力端子(INA、/INA、INB、/INB、B_SEL、Sync)は、必ず VDD
側又は Gnd 側にプルアップ/プルダウンをしてください。
オープンで使用した場合には、製品が誤動作および破壊に至る可能性があります。
☆Logic 出力(Flag)端子を使用しない場合は、必ずオープンにして下さい。
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9. 真理値表
(1)相切替入力対出力
SLA7080M シリーズにおける相切替入力の論理は表 9-1 のようになります。
表 9-1 相切替入力端子論理
A 相側
INA(7pin)
Low
High
Low
High
/INA(8pin)
Low
Low
High
High
OutA(1,2pin)
OFF
ON
OFF
OFF
/OutA(3,4pin)
OFF
OFF
ON
OFF
B 相側
INB(9pin)
/INB(10pin)
OutB(22,23pin) /OutB(20,21pin)
Low
Low
OFF
OFF
High
Low
ON
OFF
Low
High
OFF
ON
High
High
OFF
OFF
※Out はパワーMOSFET ドレインの状態を表しています(PWM 動作は含んでおりません)。
(2)Logic 入力端子
(1)相切替入力以外の Logic 入力の動作を示します。
表 9-2
Logc 入力論理
端子名
Low Level
PWM 非同期
Sync
ブランク時間:3.2µs
B_SEL
High Level
PWM 同期
ブランク時間:5.2µs
(3)Logic 出力端子(Flag)
保護回路内蔵品には Flag 出力端子を用意しています。
表 9-3 にモニター出力論理を示します
表 9-3 モニター出力論理
端子名
Low Level
High Level
正常動作
保護回路動作
Flag
※保護回路が働いた時点で出力が OFF 状態となります。
保護機能を解除するためには、Logic 電源を再投入して下さい。
【ロジック入力端子に関しての注意】
ロジック系入力端子(INA、/INA、INB、/INB、Sync、B_SEL)には、ノイズ耐量向上のためにロー
パスフィルター(LPF)を設けています。
また各入力端子は CMOS 入力となっているため、ハイインピーダンスの状態にあります。ご使用の際
は、必ず「Low レベル」&「High レベル」にてご使用願います。なおマイコンからの信号がハイインピー
ダンスになることが想定される場合は、プルダウン抵抗、またはプルアップ抵抗を取り付けて下さい。特
に出力の ON⇔OFF に関わる IN 端子がご使用中にハイインピーダンスになると出力が異常発振をお
こす可能性があり、最悪の場合には MOSFET が破壊する可能性があります。
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10. 回路構成
(1)制御用モノリシック IC(MIC)
・Logic Block
Logic 電源 VDD を供給源とする回路ブロックで、主に入力信号に応じて各ブロックへ信号を
伝播します。
・PWM Control
OFF 時間固定の自励 PWM 電流制御を行ないます。
内蔵発振器(OSC)にて PWM オフ時間やブランキング時間を決定しています。
(詳細な動作は、次節を参照して下さい)
・Synchro Control
モーターホールド時に発生することがある異音を防止する、チョッピング同期回路になります。
Sync 端子を High レベルにすると、A 相と B 相のチョッピング OFF を同期させる信号を発
生させます。
なお動作メカニズムは SLA7070M シリーズと同一になりますので、チョッピング同期機能を
モーター回転時に動作させた場合、モーター電流が正常に制御されずトルクの低下や振動の
増加を招く場合があります。このため、回転時に本機能を使用することは推奨していません。
また停止時においても、本機能は 2 相励磁のタイミングのみのご使用を推奨しております。
これは、2 相励磁以外のタイミングでは A 相と B 相の電流制御値や PWM オフ時間が異なっ
ているため、同期しない場合や制御電流値が大きく崩れる可能性があるためです。
・Reg 回路
出力 MOS FET のゲートドライブ回路(Pre-Drive)やリニア回路の動作に必要な電源を生成
する内部レギュレータになります。
・Protect 回路
モーターコイルのショート/オープン保護回路となります。
保護はすべて検出抵抗 Rs に生じた電圧を検知することで働きます。
このため、OUT 端子や電流検出端子が Gnd にショートした際の過電流は検知できません。
またオープン保護回路は PWM 動作しているときにのみ働きますので、モーターを高速回転
させているなど定電圧駆動の状態となっているときは働きません。
保護回路が働くと出力が Disable となり、復帰するためには Logic 電源を再投入する必要が
あります。詳細は、次項を参照ください。
・TSD 回路
製品(制御 IC)の温度が上昇し、閾値以上の温度となった場合に出力を Disable にしてドラ
イバを保護する回路になります。
復帰方法に関しては、Protect 回路と同等となります。
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(2)出力 MOS FET チップ
電流定格(4 種類)の違いにより、それぞれ搭載する MOS FET チップが異なります。
仕様に関しては表 4-3 を参照してください。
電流定格
1A
1.5A
2A
3A
検出抵抗値
0.7Ω Typ
0.45Ω Typ
0.25Ω Typ
0.18Ω Typ
(3)検出抵抗
本シリーズ品にはモーター電流を検出するための抵抗を搭載しております。
なお電流定格の違いにより,搭載する抵抗値は異なります。
仕様に関しては表 4-3 を参照してください。
電流定格
1A
1.5A
2A
3A
検出抵抗値
0.305Ω Typ
0.305Ω Typ
0.205Ω Typ
0.155Ω Typ
※上記の各検出抵抗値は、内蔵しています抵抗単体の値に製品構成による抵抗値
(約 5mΩ)が含まれております。
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11. 機能説明
(1)PWM 制御に関して
①ブランキング期間について
モーターを駆動させた際の Sense 端子に発生する動作波形の観測例を図 11-1 に示します。
図 11-1 PWM チョッピング時 Sense 端子波形例
5µs/div
500ns/div
PWM がオン→オフの直後に数 µs の期間、Sense 端子にはスパイク状のノイズ(リンギン
グノイズ)の発生が確認できます。このリンギングノイズは「モーターコイルの線間容量」、
「モーター配線の引き回し」等により発生の仕方がさまざまです。
本シリーズでは、検出電圧 VRS と DAC 出力電圧 Vtrip をコンパレータで比較することで
電流制御(PWM オン→オフ)しています。このため、PWM オンの直後に Sense 端子に発生
するリンギングノイズが Vtirp を超えるような場合、コンパレータが反応し PWM オフして
しまいます(ハンチング状態)
。
この現象を防止するため、PWM オンしてから一定期間はコンパレータからの電流検出信
号を無視する「ブランキング期間」を設けています(図 12-2)。
図 11-2 PWM 制御時 SENSE 端子波形模式図
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②ブランキング時間とハンチング現象について
ブランキング時間を短くする事で下限域の電流
制御(追従)性を向上させる事が出来る反面、リン
ギングノイズに対する余裕度が減少します。このた
め、実際にモーターを駆動した場合、ハンチング現
象が発生する場合があります(図 11-3 に発生時の
波形例を示します)
。
この対策として、SLA7080M シリーズではブラ
ンキング時間を選択できるようにしました(B_SEL
端子)
。
短いブランキング時間(3.2µs)を選択した状態
でハンチング現象が観測された場合には、長いブラ
ンキング時間(5.2µs)を選択することにより、こ
の問題を改善できる場合があります。
図 11-3 ハンチング現象発生時
の Sense 端子波形例
20μs/div
③ブランキング時間の違いに関して
ブランキング時間の違いに着目して特性を比較した場合、表 11-1 のようになります。た
だし両者の比較は、モーター、モーター電源電圧や REF 入力電圧などといった駆動条件、
回路定数が同じ場合を考えます(つまり、製品だけを変えて比較するという意味です)。
表 11-1 ブランキング時間の違いによる特性比較
比較項目
特性比較
内部ブランキング設定時間
短
PWM 最小オン時間
小
対リンギングノイズ耐量
大
最小コイル電流
小
長
次に、各項目について簡単に説明します。
・PWM 最小 ON 時間 ton(min)
本製品の PWM 制御ではブランキング時間が設けてあるため、電流を絞るために ON 時
間を短くしようとしてもブランキング時間より短くすることが出来ず、この分だけ必ず
ON となります。
PWM 最小 ON 時間とは、このブランキング時間により必ず出力が ON 状態となる時間
を指し、ブランキング時間の短い方が「小」となります。
・最小コイル電流
PWM 最小 ON 時間状態で制御されている時のコイル電流を指します。ブランキング時
間の短い方が電流を絞ることが出来るということになります。
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④PWM オフ期間について
本シリーズでは、PWM オフ時間は内部発振器より生成した固定時間となっています。
またこの PWM オフ時間に発生する損失を低減するため、
PWM オン時と同様に MOS FET
をオン状態としてモーターコイルに蓄えられた逆起電力を解消する機能が内蔵されていま
す(同期整流動作)
。
図 11-4 に逆起電力回生方法の違いを示しますが、
本シリーズは PWM オフ側の MOS FET
も OFF⇔ON します。なお同期整流動作の切替りの際は MOSFET が同時に ON することを
防止するためのデッドタイム
(約 0.5µs)
が設けられており、この期間は回生電流が MOS FET
のボディダイオードに流れます。
図 11-4 同期整流動作
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(2)保護機能
本シリーズには、
「モーターコイルショート保護回路」
、
「モーターコイルオープン保護回路」
および「過熱保護回路」が搭載されております。
以下に各保護回路の説明を示します。
①モーターコイルショート保護(負荷ショート)について
本シリーズに内蔵したモーターコイル保護回路は、電流制御と同様に検出抵抗に発生する
電圧 VRS を検知することで動作し、保護動作の電圧 VOCP は約 0.7V に設定しております。
なお保護回路が働いた時点で、出力が Disable の状態となります。
モーターコイルショート保護動作条件:VRS>VOCP
図 11-5 モーターコイルショート保護回路動作
※検出抵抗を通らずに流れる過電流は検知できません。
※保護が働いた後に回路を復帰するには、VDD を立ち上げ直す必要があります。
②モーターコイルオープン保護について(特許取得済)
ユニポーラ駆動において、動作時に 1 つの出力端子(モーターコイル)が断線することは、
ドライバ破壊の原因になります。これは断線後に接続されている MOS FET に、PWM オフ
時に逆起電力により非常に高いエネルギーが加わる「アバランシェ状態」となるためです。
「アバランシェ状態」では、出力が MOS FET のドレイン‐ソース間の耐圧に達した状態
(ブレイクダウンした状態)でモーターコイルに蓄えられたエネルギーを解消します。本シ
リーズでは、ある程度のアバランシェエネルギー耐量を持った MOS FET を使用しています
が、アバランシェエネルギー耐量は温度に依存し、高温になるにつれて低下します。
断線状態では PWM 動作を繰り返すたびに高いエネルギーが加わるため、MOS FET の温
度は上昇、「印加エネルギー>耐量」となった時点でドライバが破壊します。そこで本シリ
ーズには、この「アバランシェ状態」を検知してドライバを保護する回路を搭載しました。
以下にその動作を示します。
モーターコイルが断線すると先に説明しましたように、PWM オフ期間中は接続されてい
る MOS FET が耐圧に達した状態で回生電流が流れます。正常時は検出電圧 VRS が PWM オ
フ期間は負電位になるのに対して、モーターコイルが断線した状態では正電位が発生するこ
とになります。つまり、PWM オフ期間に VRS が正電位であることを検知することにより、
モーターコイルが断線していることを検知できることになります。
本シリーズでは、検知誤動作を回避するためモーター断線の状態を連続して 3 回検知した
時点で保護が働く様に設計されています。図 11-6 に動作図を示します。
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図 11-6 負荷オープン保護動作
※注意
PWM オフした後に発生するサージノイズにより出力のブレイクダウンが確認された場
合、ブレイクダウン発生期間が負荷断線未検知時間(topp)を過ぎても継続しますと、実
際に負荷が断線していなくても保護機能が働く場合があります。モーター及び配線の引き
回し等の見直しをしてブレイクダウン時間を負荷断線未検知時間(topp)内で収まるよう
に改善を行って下さい(セットバラツキの考慮も必要です)
。
なおブレイクダウンが確認されていない場合には、動作に問題ありません。
また改善方法の 1 つとして、Out-Gnd 間にサージノイズ吸収用のコンデンサを取り付け
ることで正常動作となる場合が御座います。
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③過熱保護について
製品温度が上昇し、Ttsd を超えたところで保護回路が働き、全出力が Disable になります。
注)本製品の内部構成はマルチチップ構成(制御用 IC×1,MOSFET×4,チップ抵抗×
2)となっています。主な発熱源は MOSFET とチップ抵抗となりますが、実際に温
度を検知する場所は制御用 IC です。このように発熱源と熱の検知場所(制御用 IC)
とに距離があるため、熱の伝達に遅れが生じます。このため急激な温度変化には追従
できません。従いまして、設計段階でアブノーマル評価を十分に行い、ジャンクショ
ン温度が保証値(150℃)を超えないようにして下さい。
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12. ご使用に際して
(1)モーター電流の設定について
本シリーズにおけるモーター電流 Io は、図 8-1 の応用回路例の場合は r1,r2 と製品内蔵の
検出抵抗 Rs の定数により決まります。以下に Io を求める計算式を示します。
Io
r2
VDD
r1 r 2
Rs
・・・・・式①
なお、2 重下線の項は基準電圧 VREF になります。
VREF を 0.04V 以下に設定すると製品のバラツキや配線パターンのインピーダンス等の影響
を受け電流精度が低下する可能性が高くなります。
(2)制御電流の下限値について
本シリーズは、OFF 時間固定の自励式 PWM 電流制御方式を採用しています。固定されて
いる PWM オフ時間内にモーターコイルに蓄えられたエネルギーが解消してしまうと、コイル
電流は図 12-1 に示すような断続した電流として流れます。
つまり、PWM による平均電流が低下し、モータートルクも低下します。このコイルに電流
が断続的に流れ始める状態を制御電流の下限値と弊社では考えています。制御電流の下限値は、
ご使用されるモーター等の条件により異なりますが、以下の式にて概算できます。
I O min
VM
R
VM
RDS(on)
toff
exp
:
:
:
1
t OFF
tC
1
tC
R
モーター電源電圧
MOS FET オン抵抗
PWM オフ時間
Lm
R
Rm RDS ( on )
Rm
Lm
RS
・・・・・・式②
RS
:
:
:
モーター巻き線抵抗
モーター巻き線インダクタンス
電流検出抵抗
制御電流値をこの下限値以下に設定しても製品が破壊することはありませんが、設定電流に
対し制御電流が悪化します。
図 12-1 制御電流下限モデル波形
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(3)アバランシェエネルギーの確認
本シリーズのユニポーラ駆動方式は、出力の MOS FET の耐圧を越えるサージ電圧(リンギ
ングノイズ)が製品に印加される場合があります。本製品は、このサージ電圧を想定して十分
なアバランシェ耐量を持つ MOS FET を使用しておりますので、通常はサージ電圧が発生して
も問題なく使用いただけます。
ただし、モーターのハーネスの引き回しが長い場合や定格電流
VM
および定格電圧付近で使用される場合は、弊社の想定を越えるア
バランシェエネルギーが製品に印加されることがありますので
SPM
実機評価において必ず製品に印加されているアバランシェエネ
ルギーを確認してください。
ID
アバランシェエネルギーの確認方法を以下にまとめます。
図 12-2 に観測ポイント,図 12-3 に波形図を示します。
VDS(AV)
【計算例】
図 12-3 の波形観測の結果より
VDS(AV)=140V
ID=1A
t=0.5µs
のデータが得られた場合、アバランシェエネルギーEAV は下
記より求められます。
EAV≒VDS(AV)×1/2×ID×t ・・・・・式④
=140V×1/2×1A×0.5×10-6
=0.035[mJ]
例のように計算した EAV を、
図 12-4 に示すグラフと比較し、
MOS FET のアバランシェエネルギー耐量範囲内であるか
を確認して安全性を判断します。
Rs
図 12-2 観測ポイント
図 12-3 ブレイクダウン時
波形図
図 12-4 繰返しアバランシェエネルギー耐量 EAV
20
SLA7083M
Eav [mJ]
16
12
SLA7082M
SLA7081M
8
SLA7080M
4
0
0
25
50
75
製品温度 Tc[℃]
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100
125
150
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(3)電源(VBB、VDD)の ON/OFF シーケンスに関して
本製品は、主電源 VBB とロジック電源 VDD の ON/OFF の順序に制限はありません。
(4)モーター電源電圧(VM)と主電源電圧(VBB)について
本製品は図 7-1 の内部ブロック図に記載したように、制御用 IC(MIC)と出力段パワー
MOSFET マルチチップ構造となっているため、モーター電源と主電源とは電気的に分離され
ております。したがいまして、モーター電源と主電源とで異なった電源を使用して駆動するこ
とも可能です。ただし両電源は電源電圧範囲が異なりますので、注意願います。
(5)内部ロジック回路に関して
a)チョッピング同期回路について
モーターHold 時に発生することがある、モーター異音を防止するための機能となり、Sync
端子をハイレベルに設定すると有効となります。
ただしこの機能をモーター回転時に使用すると、制御電流が安定せず、モータートルクの
低下や振動の増加が起きる場合があるため、回転時に使用することはお勧めできません。
b)出力 Disable(Sleep)回路について
モーターフリー状態(出力 Disable)にするには、
REF 端子を 2V 以上に設定して下さい。この状態では、 図 12-5 Disable 解除と Phase 入力
のタイミング
主電源系の回路を停止させて回路電流を低減する
Sleep モードになります。
なお出力 Disable(Sleep)状態からモーターを回
100µs (min)
転させるモードに移行する場合、製品の立ち上がりだ
けではなく、モーター励磁電流の立ち上がり時間を考
慮した上で、Disable 解除からクロックエッジ入力ま
での時間を設定するようにしてください(図 12-5)。
c)Ref/Sleep1 端子について
本製品の REF 端子は図 4-1 や前項 b などに説明がありますが、
①出力制御電流の基準電圧設定…Low レベル
(VREF≦0.3~0.45V、電流定格により異なります)
②出力 Enable/Disable 制御入力…High レベル (VREF≧2.0V)
の 2 つの機能を兼ねております。
なお出力 Enable/Disable の切り替わりのしきい値電圧は、
約 1.75V に設定しています。
REF 電圧制御の際は、下記に注意してください。
・①の領域だけでなく、①~閾値電圧(1.75V typ)の範囲も、REF 電圧にしたがい制御
電流値も変わります。このため損失には注意が必要となります。また基準電圧分割比の
選択状態によっては OCP 動作となる場合もあります。
・特に閾値電圧付近に REF 電圧が設定された場合、出力が Enable と Disable を繰り返し
てしまう可能性があります。
d)ロジック系端子について
・入力端子(INA、/INA、INB、/INB、Sync、B_SEL)
使用しない端子がある場合には、VDD または GND へ
接続をしてください。オープンで使用した場合、製品が
予期せぬ動作をする可能性があります。
・出力端子(モニター出力端子、Flag 端子)
製品内部は図 12-6 の等価回路のように、インバータ
出力となっています。このため Flag 端子を使用しない
場合は、必ずオープンとしてください。
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図 12-6 モニター出力端子内
部等価回路
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13. 熱設計資料
本シリーズでの損失を正確に算出するには、モーターの実動作時の時定数や励磁モード、入力
周波数及びそのシーケンス等、変動するパラメータが必要になり現実的ではありません。
そこで、まずワースト条件にて、近似計算にて算出します。最小限のパラメータのみを抽出し
た損失の計算式は以下の通りです。
P I 2 (R DS(on)+Rs) 2
P
I
RDS(on)
Rs
:
:
:
:
製品損失
動作電流≒Io
搭載 MOSFET のオン抵抗
搭載検出抵抗
上記にて算出した製品損失を元に、下に示した図 13-1 の温度上昇曲線を用いて製品のジャン
クション温度を推定します。この時、最悪条件(動作周囲温度の最大値)にて、ジャンクション
温度が 150℃を超えなければ問題はありませんが、
最終判断は実動作における製品発熱を測定し、
図 13-1 より損失およびジャンクション温度を確認してください。
図 13-1 製品温度上昇特性
150
ΔTJ-A=26.6×PD
上昇温度 ΔT [℃]
Rise Temperature
125
100
75
ΔTC-A=21.3×PD
50
25
0
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
3.5
4.0
4.5
5.0
パッケージ許容損失 PD [W]
Allowable Package Power Dissipation
製品に放熱板を付けて使用される場合、ΔTJ-A を算出するパラメータの中で製品の熱抵抗 θJ-A
が変化します。この値は放熱板の熱抵抗を θFIN とすると
θJ-A≒θJ-C+θFIN=(θJ-A-θC-A)+θFIN
となり、この式で算出した θJ-A の値を代わりに使用して計算します。
また実動作にて製品温度を測定しジャンクション温度を推定する場合は、次のように考えます。
まず、製品の 12Pin リード部の温度上昇を測定します(ΔTC-A)。この温度上昇から図 13-1 の製
品温度上昇グラフを見て、損失 P とジャンクション温度 Tj を推定します。この際、製品の温度
上昇 ΔTC-A とジャンクション上昇温度 ΔTJ の関係は、以下の計算式で近似できます。
ΔTJ≒ΔTC-A+P×θJ-C
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☆注意事項
・本製品の内部構成はマルチチップ構成(制御用 IC×1,MOSFET×4,チップ抵抗×2)とな
っています。主な発熱源は MOSFET とチップ抵抗となりますが、実際に温度を検知する場所
は制御用 IC です。このように発熱源と熱の検知場所(制御用 IC)とに距離があるため、熱の
伝達に遅れが生じます。このため急激な温度変化には追従できません。従いまして、設計段階
でアブノーマル評価を十分に行い、ジャンクション温度が保証値(150℃)を超えないように
して下さい。
・この熱設計資料は、実際に製品を動作させる前にどの程度まで使用できるかを検討するための
資料です。最終的には実機にて製品発熱(12Pin の温度)を確認して判断して下さい。
なお製品発熱の最大推奨値は以下の様になります。
No Fin 時:90℃
Fin 接続時:80℃
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14. 代表特性例
(1)出力 MOS FET オン電圧 VDS(on)特性
SLA7080M
SLA7081M
1.4
1.4
1.2
1.2
1.0
1.0
Io=1.5A
VDS(on) [V]
VDS(on) [V]
Io=1.0A
0.8
0.6
0.8
0.6
Io=0.5A
0.4
0.4
0.2
0.2
0.0
-25
0
25
50
75
100
Io=1.0A
0.0
125
-25
0
製品温度 Tc[℃]
25
50
75
100
125
100
125
製品温度 Tc[℃]
SLA7082M
SLA7083M
1.4
1.4
1.2
1.2
1.0
1.0
Io=3.0A
VDS(on) [V]
VDS(on) [V]
Io=2.0A
0.8
0.6
0.8
Io=2.0A
0.6
Io=1.0A
0.4
0.4
0.2
0.2
0.0
Io=1.0A
0.0
-25
0
25
50
75
100
125
-25
製品温度 Tc[℃]
0
25
50
75
製品温度 Tc[℃]
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(2)出力 MOS FET ボディダイオード順方向電圧 VF 特性
SLA7080M
SLA7081M
1.0
1.0
0.9
0.9
VSD [V]
1.1
VSD [V]
1.1
Io=1.0A
0.8
Io=1.5A
0.8
0.7
0.7
Io=1.0A
Io=0.5A
0.6
0.6
-25
0
25
50
75
100
125
-25
0
製品温度 Tc[℃]
25
50
75
100
125
製品温度 Tc[℃]
SLA7082M
SLA7083M
1.1
1.1
1.0
1.0
Io=3.0A
Io=2.0A
0.9
Io=2.0A
VSD [V]
VSD [V]
0.9
0.8
0.8
Io=1.0A
Io=1.0A
0.7
0.7
0.6
0.6
-25
0
25
50
75
100
125
-25
製品温度 Tc[℃]
0
25
50
75
100
125
製品温度 Tc[℃]
サンケン電気株式会社
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