富士時報 Vol.77 No.4 2004 低浮上状態におけるヘッド試験評価技術 佐藤 公紀(さとう きみのり) 特 集 1 片野 智紀(かたの とものり) まえがき スライダを支えるジンバルばねから構成される〕を 8 nm 以下の高さで浮上させ,突起衝突時に発生する PZT 出力 ハードディスク装置(HDD)の記録密度は,年率 30 ∼ 。従来 から,突起欠陥の有無を調べるものである(図2) 60 %で増加しており,2004 年中には 100 Gbits/in2 に達す は浮上量が 10 nm を超えていたため,スライダが安定に る見通しである。記録密度を増加するには,磁気ヘッドと 浮上し,突起欠陥を高い精度で検出可能だったが,現在は 磁気ディスクとの距離を近づけ,書込み・読込み分解能を コンタクト状態に近い低浮上状態にあるため,スライダと 上げることが必要である。 磁気ディスクの接触頻度が増し,GH ヘッドの浮上安定性 図1に,記録密度と,ヘッドの浮上量(磁気ヘッドー磁 確保が難しくなってきている。擬似コンタクト状態におけ 気ディスク間スペーシング)のロードマップを示す。実線 る GH ヘッドの挙動を把握し,試験の安定性を保つべく開 は後述する GH(Glide Height)試験での浮上量,破線は 発を進めている。 HDD に内蔵されている RW(Read Write)ヘッドの浮上 ヘッド挙動解析 量を表す。記録密度 100 Gbits/in2 に対応するには,RW ヘッドの浮上量を 10 nm 以下に保つ必要がある。磁気 ディスク表面上に高さ数 nm の突起があっても,走行して いる磁気ヘッドに衝突し,磁気ヘッドや磁気ディスクにダ 擬似コンタクト状態における,GH ヘッドの挙動につい て評価解析を行った。 メージを与える可能性があるので,突起欠陥に対する厳密 な管理が重要である。 富士電機では,製造した全ディスクに対して突起の検出 図2 GH 試験システム 試験(GH 試験)を実施し,磁気ディスクの良品判定を 行っている。これは GH ヘッド〔突起高さ検出専用の試験 GHヘッド ヘッド。PZT(ピエゾ素子)センサを搭載したスライダと, スライダ 図1 ヘッド浮上量のロードマップ バンプ欠陥 記録 密度 30 Gbits/in2 100 Gbits/in2 170 Gbits/in2 25 磁気ディスク PZTセンサ (a)構成 1.0 RWヘッドの浮上量 PZT出力(V) 浮上量(nm) 20 15 10 5 0 GH試験での浮上量 2002 2003 2004 2005 0.5 0 −0.5 −1 0.05 2006 0.35 (b)PZT出力波形 片野 智紀 磁気ディスク媒体の開発に従事。 記録媒体の開発に従事。現在,富 現在,富士電機アドバンストテク 士電機アドバンストテクノロジー ノロジー (株) デバイス技術研究所 (株) デバイス技術研究所主任研究 グループマネージャー。計測自動 0.25 時間(ms) (年) 佐藤 公紀 0.15 員。日本トライボロジー学会会員。 制御学会会員,日本機械学会会員。 275(33) 富士時報 低浮上状態におけるヘッド試験評価技術 Vol.77 No.4 2004 なお,同図で縦軸のスライダ振動は負側が磁気ディスク 2.1 解析方法 図3に実験解析方法を示す。GH ヘッドを磁気ディスク nm 程度であり 10 nm 以下のヘッド浮上量に比べ非常に大 上で走行させ,スライダが磁気ディスクと接触しやすい環 きい。PZT 出力と対比させると,スライダが磁気ディス 境下(低いディスク回転数など)で,PZT 出力により接 ク面に近づいた極小点で PZT 出力が励起されその後減衰 触振動を検知し,同時に LDV(レーザドップラー振動計) によりスライダ流出端の振動を計測する。実験には 3.5 イ ンチアルミディスクおよび 30 %サイズの GH ヘッドを用 図5 ヘッド接触時の PZT 出力スペクトラム(低周波領域) いている。 117 2.0 図4 はスライダと磁気ディスクが接触したときの PZT 出力のスペクトラムである。500 ∼ 600 kHz,1,200 kHz 付 近にピークが見られるが,これらはスライダ構造自身のね 振幅(mV) 2.2 解析結果 52 1.5 65 1.0 131 90 0.5 じりモード,曲げモードの固有振動ピークに対応している と考えられる。スライダが磁気ディスクと接触状態にある 0 170182 196 39 0 50 100 150 200 周波数(kHz) ため,種々の振動モードを励起している。 250 300 図5は図4の低周波領域を拡大したものである。スライ ダと磁気ディスクとの接触状態を反映し,100 kHz 以下の ピークが確認できる。図6は LDV により計測したスライ ダ振動と,このときの PZT 出力とを同時計測した後,時 図6 ヘッド接触時のスライダ振動と PZT 出力信号 間スケールを合わせて表したものである。 80 スライダ変位(nm) 図3 GH ヘッド接触状態解析方法 スライダ振動 極小 極大 40 0 −40 −80 0 0.05 0.10 0.15 0.20 0.25 0.30 0.25 0.30 250 300 時間(ms) LDV PZT信号(V) 0.06 PZT信号 PZTセンサ ヘッド 振動 (流入端) (流出端) 接触 0.04 0.02 0 −0.02 −0.04 −0.06 0 0.05 0.10 0.15 0.20 時間(ms) 媒体 図7 接触時のスライダ振動スペクトラム 図4 ヘッド接触時の PZT 出力スペクトラム ピッチングモード 10 52 2.0 スライダ構造振動 8 振幅(V) 振幅(mV) 特 集 1 面に近づく方向である。スライダの振動振幅は 60 ∼ 80 1.5 0.560 1.0 0.607 0.5 0 0.5 13 32 2 1.0 周波数(MHz) 276(34) 65 4 1.194 0.378 0 6 1.5 2.0 0 0 50 100 150 200 周波数(kHz) 富士時報 低浮上状態におけるヘッド試験評価技術 Vol.77 No.4 2004 し,再び極小点で PZT 出力が励起される,ということを 衰性を持っており,スライダサイズによりヘッドの走行安 繰り返している。 定的が異なることが分かる。例えば,ピッチングモードに 図 7 はスライダ振動のスペクトラムであり,50 ∼ 60 ついてはヘッド C の時定数τはヘッド A,B の 1/5 程度 kHz 付近に図5と一致するピークが見られる。シミュレー となっている。すなわち突起により励振されても速やかに ションの結果,このピークはスライダ空気軸受のピッチン 収束し,振動が継続するような接触状態になりにくいと考 グモード(前後傾き回転モード)に相当することが分かっ えられ,表1に示した振動接触発生頻度の傾向と一致する。 た。すなわち,スライダはピッチング方向の空気ばねに起 一方,レール幅が異なるヘッド A,B ではその減衰性に差 因して接触ー跳躍を繰り返す自励振動状態にあり,先のよ が見られなかった。 うな過大な振動振幅になったと考えられる。図6では,ス ライダ振動が極大,すなわちスライダ流出端が磁気ディス クから最も離れたところでも PZT 出力が励起されている。 3.2 浮上姿勢 表1にヘッドの浮上姿勢角をシミュレーションにより求 つまり,ピッチングの振動振幅が過大になり流入端および めた結果を示す。ピッチ角度で見ると,ヘッド C はヘッ 流出端が交互に磁気ディスクに当たっていると推測される。 ド A,B よりも 2 倍以上大きいが,ヘッド AーB 間でも レール幅の違いによりピッチ角に差異が生じている。図9 ヘッド種類と走行安定性 はフライングハイトテスタによりヘッドのピッチ角を,そ の周速度を変えながら実測した結果(平均値)である。表 磁気ディスクの品質を向上させるには,前述の振動が継 1のシミュレーション結果と比較するとヘッド間の傾向は 続する接触状態を回避し,GH ヘッドを安定的に走行させ る試験条件について検討する必要がある。本章ではヘッド 種類とヘッド走行安定性の関係について,振動減衰性, 図8 空気軸受固有振動モードと時定数 ヘッド浮上姿勢の観点から解析を行いその影響について考 1,000 察した結果を述べる。 10 mil S 10 mil D ヘッドA,B 50 %(9,10 mil) 3.1 振動減衰性 ダがバンプを乗り越えた状態を設定し,このときの応答振 動から減衰性を求めた。解析を行った 3 種類のヘッドの特 時定数 ( s) τ トリー(CML)が開発したヘッド浮上シミュレータ CML Air(ver. 6.5.1)を用いて解析を行った。解析ではスライ 9 mil D 30 S ヘッドの空気軸受振動における振動減衰性を,カリフォ ルニア大学バークレー校のコンピュータメカニカルラボラ 9 mil S 30 D 一次ピッチ 二次ロール S:片側レールバンプ乗越え D:両側レールバンプ乗越え 100 三次バウンス 一次ピッチ 性を 表 1 に示す。ヘッド A,B とヘッド C とではスライ 三次ピッチ ダサイズが異なり,ヘッド A とヘッド B とでは空気軸受 レール面の幅が異なる。実験によりその浮上安定性(振動 二次ロール 接触発生頻度)を確認したところそれぞれ差異が認められ 10 た。 1 ヘッドC,30 % 10 100 固有振動数(kHz) 1,000 機械的振動における減衰は一般的に指数関数的であるた め,シミュレーションで得られた応答振動から時定数τを 算出し振動減衰性の指標とした。解析結果から算出した ヘッドの時定数を図8に示す。同図では固有振動モードと 図9 周速とヘッド姿勢角 の対応を取るため,横軸に固有振動数,縦軸に時定数を 取っている。同図からヘッド A,B(50 %ヘッド)はヘッ ヘッド姿勢角 ( rad) ヘッド サイズ 空気軸受面 レール幅 試験周速 振動接触 発生頻度 ピッチ ロール A 50 % 10 mil 5.5 m/s 15 % 92 1.4 B 50 % 9 mil 7.5 m/s 5% 100 1.7 ピッチ姿勢角( rad) ド C(30 %ヘッド)よりも高い固有振動数および高い減 表1 解析を行ったヘッド種類とその特性 ヘッドA 50 % 10 mil ヘッドB 50 % 9 mil ヘッドC 30 % 300 250 10 m/s 7.5 m/s 200 5.5 m/s 150 100 50 0 0 5 10 15 20 周速(m/s) C 30 % 6.5 mil 10.0 m/s 2% 253 −0.3 277(35) 特 集 1 低浮上状態におけるヘッド試験評価技術 Vol.77 No.4 2004 図10 浮上量とヘッド高周波共振 表2 同定パラメータ パラメータ 値 k1 2.0×10−11 ζ1 0.2 特 集 1 ωn1 337,000 k2 1.0×10−13 ζ2 0.01 ωn2 2,180,000 k3 5.0×10−15 ζ3 0.005 ωn3 4,878,000 k4 3.0×10−15 ζ4 0.008 ωn4 7,900,000 k5 2.0×10−15 ζ5 0.02 ωn5 10,700,000 周速=5.5 m/s 周速=8.5 m/s 2 PZT出力 富士時報 0 0 0.5 1.0 1.5 2.0 周波数(MHz) 周速が低い(つまり浮上量が小さい)場合には,700 kHz 以上の高周波成分が顕在化していることが分かる。 4.2 新しい GH 試験の考察 よく一致している。 図9ではヘッド A とヘッド B とでは GH ヘッドを伝達関数 H のシステムとして考える。ブ その周速度に対するピッチ角はほぼ等しいといえ,ヘッド ロックの入力は衝撃力 F,出力は PZT 出力 Y である。従 AーB 間のピッチ角が異なるのは試験周速の違いが表れた 来の GH 試験は,PZT 出力 Y をもとに行ってきたが,Y ものと考えられる。 には GH ヘッドの動特性項 H が含まれているため,GH 以上の結果を表1に示す振動接触発生頻度と対比させる ヘッドの固有振動による影響や,個体差による影響を大き と,ピッチ角が大きいほど発生頻度が小さく,走行安定性 く受ける。新しく提案する方式は,GH ヘッドの個体差の が高くなっている。この理由としては,次の二つが想定さ 影響を受けない衝撃力 F で,評価するものである。衝撃 れる。一つは,浮上量すなわち流出端と磁気ディスクとの 力 F は, スペーシングが一定の場合,ピッチ角が大きいほど,スラ F = H −1・Y ……………………………………………(1) イダの重心が高く,スライダへの潤滑剤移着の影響が少な である。ここで GH ヘッドの伝達関数 H は,以下の仮定 いというものである。もう一つは,スライダ流出端が磁気 のもと,式 のように与えられる。 (2 ) (2 ) ( 3) , ディスクに接触する際に,摩擦が発生し,これがスライダ (1) 衝撃力は,理想インパルス入力 Iδ(t)とする。 回転中心に対して偶力となり,その結果ピッチング振動が (2 ) GH ヘッドは N 次元の質量スプリングダンパ系とする。 (1) 誘発される,というものである。スライダのピッチ角が大 (3) PZT 出力はヘッドの加速度を表すものとする。 きいほど磁気ディスクとの接触面積が小さくなり,発生す H(ω)= AI(ω)/I …………………………………(2 ) る摩擦が小さくなるため,ピッチング振動が抑制されるも (Iωnj3/kj) (ωnj2 −ω2 − 2 iζj ωnj ω) AI(ω)=Σ [ N のと考えられる。 新しい GH 試験方法の検討 j =1 ] ……… /{ (ωnj2 −ω2)2 +(2ζj ωnj ω)2 } (3) ここで,AI(ω)は,ヘッドにインパルス入力 Iδ(t) が加わったときの加速度をフーリエ変換したもの,N は 4.1 従来の GH 試験の問題点 質量スプリングダンパ系の次数である。 GH ヘッドの浮上量が 10 nm 以上であれば,潤滑膜や磁 気ディスクの表面うねりによるスライダ振動の影響を受け ず,PZT センサ出力から突起の検出を高い精度で行うこ とができる。しかし浮上量が 8 nm を下回ると,潤滑膜の 一部がスライダに接触し始め,また磁気ディスク表面の微 4.3 パラメータの同定 式 の振動のパラメータ kj,ωnj,ζj( j = 1 ・・・ N) (3) は,以下の実験により求めることができる。 表面に,GH ヘッドの固有周期より十分短い(1/5 以下) 細なうねりにより,スライダの姿勢や挙動が乱されるため, 幅の突起を生成した,バンプディスクを用意する。例えば 機械振動の発生や,PZT のエレキノイズ影響が大きくな GH ヘッドの周速を 6 m/s,同定したい GH ヘッドの固有 る。これにより,突起との衝突現象でないにもかかわらず, 周波数を 800 kHz とすると,突起幅は 1.5 µm 以下が必要 衝突と同等の振幅を観測してしまい,誤った検出を引き起 である。前記バンプディスク上に GH ヘッドを浮上させ, こす可能性がある。図10は同一ヘッドを使い,2 種類の周 突起にヒットしたときの PZT 波形を記録し,これをフー 速で浮上させた場合の,PZT 出力の周波数応答である。 リエ変換して,AI(ω)の実験データ AI(ω)* を得る。 278(36) 富士時報 低浮上状態におけるヘッド試験評価技術 Vol.77 No.4 2004 図11 ヘッド動特性の同定 図13 バンプ衝突時の衝撃力 0.3 0.2 特 集 1 SNR=23.1 dB 0.1 衝撃力 PZT出力(V) 0.2 0 0.1 −0.1 −0.2 −0.3 0 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 0 0.2 0.4 0.6 時間(ms) 時間(ms) (a)PZT出力 (a)衝撃力 0.8 1.0 0.8 1.0 衝撃力のスペクトラム 30 PZT出力振幅 25 20 同定モデル 15 測定値 10 5 5 0 0 0 0.5 1.0 1.5 0.2 0 2.0 0.4 0.6 周波数(MHz) 周波数(MHz) (b)PZT出力スペクトラム (b)衝撃力のスペクトラム 図12 バンプ衝突時の PZT 出力 を表2のように決めた。共振周波数は,複数のヘッドにお 0.3 いて共通して共振点となる周波数を採用した。 PZT出力(V) 0.2 ここで,試験対象となる磁気ディスク上において,突起 SNR=20.0 dB 0.1 から衝撃入力 f(t)を受けたときの GH ヘッド加速度を a 0 (t)とし,単位インパルス応答関数を h(t)とすると, −0.1 t a(t)= −0.2 −0.3 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 h(t −τ) ・f(τ)dτ ………………………(4 ) 式 をフーリエ変換すると, (4 ) A(ω)= H(ω) ・F(ω) …………………………(5) 時間(ms) である。ここで,周波数伝達関数 H(ω) は式 で与えら (2 ) (a)PZT出力 れるので,突起にヒットしたときの PZT センサ出力波形 25 の逆関 のフーリエ変換 AI(ω)に周波数伝達関数 H(ω) 20 PZT出力振幅 0 −1 を掛けることで,任意の衝撃入力 F(ω) を知 数 H(ω) 15 ることができる。 10 4.4 実 験 5 7 nm の突起に衝突させた場合について,衝撃力を求め, 0 0 0.5 1.0 1.5 2.0 周波数(MHz) (b)PZT出力スペクトラム PZT 出力の SNR(Signal/Noise Ratio)と衝撃力の SNR を比較した。ここでは,PZT 出力,衝撃力とも,加算平 均によるフィルタリングを実施している。 図12, 図13は 7 nm の突起に衝突させた場合の PZT 出 力と,そのときの衝撃力である。衝撃力の SNR = 23.1 dB kj,ωnj,ζj は AI(ω) と AI(ω)* の二乗差が最小にな であり,PZT 出力の SNR = 20.0 dB よりも優れている。 るように決める。 これは衝撃力のスペクトラムが低周波帯域に集中している 図11はサイズ 50 %ー10 mil レール幅の GH ヘッドに対 ため,フィルタリングの帯域を適切に設定すれば,信号成 して,本手法を適用し,パラメータを求めた例である。 分に影響与えることなく高周波ノイズをカットできるため GH ヘッドの自由度は 5 とし,おのおのの共振パラメータ と推測される。 279(37) 富士時報 低浮上状態におけるヘッド試験評価技術 Vol.77 No.4 2004 突起衝突時に発生する衝撃力から,突起欠陥の有無を調べ あとがき る新しい試験方法を開発した。本試験方法は PZT 出力の 大きさから求める従来試験方法に比べ,SNR を 3 dB 以上 特 集 1 現在,磁気ディスクの量産工程では,製造した全ディス 改善できる。今後は,上記知見や技術を量産試験工程へ展 クに対して,GH ヘッドを 8 nm 以下で浮上させ,突起の 開し,試験の安定化,検出感度の向上を進めていく予定で 検出試験を実施し,磁気ディスクの良品判定を行っている。 ある。 スライダと磁気ディスクとが擬似コンタクト状態にあるた め,スライダは外乱の影響を受けて,振動しやすく,突起 の検出精度を確保することが難しくなってきている。 GH 出力と LDV 出力を同時に測定することにより,浮 上量が 8 nm 以下でのスライダ挙動を調べた結果,スライ 参考文献 (1) Yamane, M. et al. 2- DOF Analysis of Friction-Induced Slider Vibrations in a Near-Contact Regime. The 2003 JSME- ⅡP/ASME-ISPS Joint Conference. ダはピッチング動作により磁気ディスク表面と接触しなが (2 ) Sato, K. ; Kikuchi, H. Specification of the bump on the ら走行していることを明らかにした。また,ピッチ角や振 hard disk surface by deviation of impulse force. 9 th 動減衰性の異なる GH ヘッドを使って,浮上安定性を比較 Joint MMM / Intermag. GP- 8, 2004, p.396. した結果,ピッチ角の大きいヘッド,減衰係数の高いヘッ ドが,より安定に浮上できることを明らかにした。 さらにスライダ振動の影響を受けにくい試験方法として, 280(38) .日本機械学会編. (3) 機械工学便覧.A3 編「力学・機械力学」 1986. *本誌に記載されている会社名および製品名は,それぞれの会社が所有する 商標または登録商標である場合があります。