AN-584: AD813xの使い方 (Rev. 0) PDF

AN-584
アプリケーション・ノート
AD813xの使い方
動作原理
AD813x は、追加された入力と出力が外部に出ている点で従来型オ
ペアンプと異なっています。追加された入力 VOGM が、出力同相モ
ード電圧を制御します。追加された出力は、従来型オペアンプの 1
つの出力のアナログ相補信号になっています。この動作のために、
AD813x は 2 つの帰還ループを使います。これは、従来型オペアン
プのシングル・ループとは対照的です。これは種々の新しい回路
をつくる場合に自由度を大きくしますが、それでもオペアンプの
基本理論を使って動作を解析することができます。
帰還ループの 1 つが出力同相モード電圧 VOUT,cm を制御します。そ
の入力は VOCM (ピン 2)で、出力は同相モード、すなわち 2 つの差動
出力(+OUT と−OUT)の平均電圧です。この回路のゲインは内部で 1
に設定されています。AD813x が直線領域で動作しているとき、こ
れが動作制約の 1 つ VOUT,cm = VOCM を設定します。
2 つ目の帰還ループは差動動作を制御します。オペアンプと同様に、
ゲインと伝達関数のゲイン・カーブは受動帰還回路を追加すること
により制御することができますが、ループを閉じて動作をフルに制
約するためには 1 つの帰還回路のみが必要です。しかし、必要と
される機能に応じて、2 つの帰還回路を使うことができます。差動
入力に対して各々が反転された 2 つの出力があるため、これが可
能です。
用語の定義
差動電圧は 2 つのノード電位間の差を意味します。たとえば、出
力差動電圧(または等価な出力差動モード電圧)は、次のように定義
されます。
(1)
V+OUT と V−OUT は+OUT ピンと−OUT ピンの電圧(共通リファレンス
を基準)。
同相モード電圧とは、2 つのノード電圧の平均を意味します。出力
同相モード電圧は次式で定義されます。
(2)
ピン機能の説明
ピン番号
記号
機能
1
–IN
負側入力
2
VOCM
3
4
V+
+OUT
5
–OUT
6
7
8
V–
NC
+IN
このピンに加える電圧により、同相
モード出力電圧を比1:1で設定しま
す。たとえば、VOCMでの1 V dcによ
り+OUTと−OUTのDCバイアス・レベ
ルが1 Vに設定されます。
正電源電圧
正側出力。注: −DINの電圧は+OUTで
は反転されます。
負側出力。注: +DINの電圧は-OUTでは
反転されます。
負電源電圧
未接続
正側入力
AD813xの一般的な使い方
ここで、一次解析のために幾つかの仮定を行います。これらは、オペ
アンプの解析で使われる一般的な仮定です。
図 1.回路の定義
•
入力インピーダンスが非常に大きいため、負荷効果は無視でき
る。
•
入力バイアス電流は無視できるほどに十分小さい。
•
出力インピーダンスは十分小さい。
•
オープン・ループ・ゲインは十分大きいため、入力差動電圧が
実質的に 0 となる状態までアンプを駆動する。
•
オフセット電圧は 0 と見なす。
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本
AN-584
AD813x を純差動入力で動作させることができますが、多くのアプ
リケーションではシングルエンド入力で差動出力の回路が必要と
されます。
シングルエンド/差動変換回路の場合、駆動されない入力の RG は基
準電圧に接続されます。この場合はグラウンドに接続されます。そ
の他の条件は後で説明します。また、電圧 VOCM したがって VOUT,cm
は、以後グラウンドと見なします。図 2 に、2 つの帰還パスを持つ
AD813x を使うこのような回路の一般化した回路図を示します。
AD813x は従来型オペアンプと同様に、2 つの差動入力を持ってお
り、これらは差動モード入力電圧(VIN,dm)と同相モード入力電圧
(VIN,cm)で駆動することができます。AD813x にはもう 1 つの入力
(VOCM)があり、これは従来型オペアンプにはありません。この入力
は前述の入力とは全く別のものです。相補出力は 2 つあり、その
応答は差動モード出力(VOUT,dm)と同相モード出力(VOUT,cm)により決
定することができます。
表 I に、任意のタイプの入力からいずれかのタイプの出力までのゲ
インを示します。
表 I.差動モード・ゲインと同相モード・ゲイン
Input
VOUT,dm
VOUT,cm
VIN,dm
VIN,cm
VOCM
RF/RG
0
0 (By Design)
0
1 (By Design)
0 (By Design)
図 2.代表的な 4 抵抗帰還回路
各帰還回路に対して、帰還係数は、反対符号の入力に帰還される
出力信号に乗算する小数値として定義することができます。これ
らの項は次のようになります。
帰還係数 β1 は駆動される側のもので、帰還係数 β2 は基準電圧(グ
ラウンド)に接続される側のものです。また、各帰還係数は 0~1 の
範囲の値であることに注意してください。
差動出力(VOUT, dm)は差動入力電圧(VIN, dm)と RF/RG の積に等しくな
ります。この場合、両差動入力が駆動されているか、または 1 方
の出力が駆動され、他方がグラウンドなどの基準電圧に固定さ
れているかは、問題になりません。最初の列に示す 2 つのゼロ
から分かるように、いずれの同相モード入力もこのゲインに影
響を与えません。
VIN, dm から VOUT, cm までのゲインは 0 であり、一次では帰還回路の
比の一致に依存しません。同相モード帰還ループは AD813x 内で、
このゲイン項を小さくする対策を提供します。バランス誤差の項
は、このゲイン項が 0 から離れている度合を表します。
シングルエンド/差動変換ゲインの式は、次式から求めることがで
きます(β1 と β2 の全値に対して可能)。
VIN, cm から VOUT, dm までのゲインは、帰還回路の一致度に直接依存し
ます。この伝達関数に似た項は(従来型オペアンプで使用)、同相モ
ード除去比(CMRR)です。したがって、高い CMRR を持つ場合は、
帰還比が一致していることを意味します。
この式は、直感的に分かり易い式ではありません。よく見ると、β1
の許容誤差はゲインに対して β2 の許容誤差と同じ影響を与えない
ということが直ちに分かります。
VIN, cm から VOUT, cm までのゲインは理論的に 0 で、一次では帰還比
の一致に依存しません。VIN, dm から VOUT, cm までの場合と同様に、
同相モード帰還ループがこの項を小さく維持します。
RF1/RG1 = RF2/RG2 とすると、ゲイン式は簡単になり G = RF/RG となり
ます。
VOCM から VOUT, dm までのゲインは、帰還比が一致する場合にのみ理
論的に 0 です。VOCM の変化で発生する差動出力信号の大きさは、帰
還回路内の一致度に関係します。
基本的な回路動作
AD813x の使い方を理解する便利で容易な方法の 1 つは、等しい比
を持つ 2 つの帰還回路を提供することです。寄生の影響を等しく
するため、これらの回路を 2 つの等しい値の帰還抵抗(RF)と 2 つの
等しい値のゲイン抵抗(RG)で構成します。この回路を図 1 に示しま
す。
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VOCM は、ゲイン= 1 の伝達関数で出力同相モード電圧 VOUT, cm を制
御します。比の一致している帰還回路(前の仮定)では、各出力への
影響は同じであり、VOCM から VOUT,dm までのゲインはゼロと言うこ
ともできます。駆動されない場合は、出力同相モードは電源中心
になります。0.1 µF のバイパス・コンデンサを VOCM に接続するこ
とが推奨されます。
等しくない帰還比を使用する場合は、VOUT, dm に対応する 2 つのゲイ
ンは非ゼロになります。これにより数学的解析が複雑になり、デバ
イス動作の直感的理解が難しくなります。これらの構成の幾つか
を別のセクションに示します。
出力ノイズ電圧の計算
従来型オペアンプの場合と同様に、差動出力誤差(ノイズ電圧とオ
フセット電圧)は+IN と−IN での入力換算項に回路ノイズ・ゲイン
を乗算することにより計算することができます。ノイズ・ゲイン
は次のように定義されます。
(6)
図 1 の回路の総合出力換算ノイズを計算するときは、抵抗 RF と抵
抗 RG の影響に注意が必要です。種々のクローズド・ループ・ゲイン
での出力ノイズ電圧密度の計算については表 II を参照してくださ
い。
表 II.特定のゲインに対する推奨抵抗値とノイズ性能
Gain
1
2
5
10
RG
(Ω)
499
499
499
499
RF
(Ω)
499
1.0 k
2.49 k
4.99 k
Bandwidth
–3 dB
360 MHz
160 MHz
65 MHz
20 MHz
Output
Noise
AD813x
16 nV/Hz
24.1 nV/Hz
48.4 nV/Hz
88.9 nV/Hz
Output
Noise
AD813x + RG, RF
17 nV/Hz
26.1 nV/Hz
53.3 nV/Hz
98.6 nV/Hz
シングルエンド入力信号の場合は(たとえば、−DIN をグラウンドに
接続し、入力信号を+DIN に加える場合)、入力インピーダンスは次
のようになります。
(8)
回路の入力インピーダンスは、インバータとして接続された従来
型オペアンプの場合より実効的に高くなります。これは、差動出
力電圧の成分が同相モード信号として入力に現れて、特に入力抵
抗 RG 両端の電圧を持ち上げるためです。
単電源アプリケーションでの入力同相モード電圧
範囲
AD813x は、レベル・シフト(グラウンド基準の入力信号)に対して最
適化されています。例えば、シングルエンド入力の場合、これはアン
プの負側電源電圧(V−)が 0 V に設定されると、図 1 の−DIN の電圧
も 0 V になることを意味します。
出力同相モード電圧の設定
AD813x の VOCM ピンは、内部で電源の中心値(V+と V−の電圧の平
均値)にほぼ等しくバイアスされています。この内部バイアスを使
用すると、出力コモン・モード電圧が期待値の約 100 mV 以内で発
生します。出力同相モード・レベルの正確な制御が必要な場合に
は、外付け電源または抵抗分圧器(RSOURCE < 10 kΩ)を使用するこ
とが推奨されます。
AD813x差動アンプADC駆動のアプリケーション
上の注意
高性能ADCの駆動
アプリケーション回路入力インピーダンスの計算
図1の+DINと−DINでの実効入力インピーダンスのように、回路の実
効入力インピーダンスは、シングルエンドまたは差動のいずれの
信号源でアンプを駆動するかに依存します。平衡差動入力信号の
場合、入力間(+DINと−DIN)の入力インピーダンス(RIN,dm)は、
(7)
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図 3 の回路に、12 ビット 40 MSPS ADC の AD9224 を駆動する
AD813x の簡略化したフロントエンド接続を示します ADC の駆動
には差動が最も適しており、データ・シートに記載するように歪
みが最小になります。AD813x は、ADC の駆動でトランスを不要に
し、シングルエンド/差動変換、同相モード・レベルのシフト、駆動
信号のバッファリングを行います。
AD813x の正側出力と負側出力は、AD9224 のスイッチド・キャパ
シタ・フロントエンドの影響を小さくするため 1 対の抵抗 49.9Ω
を介してそれぞれの AD9224 入力に接続されます。最適歪み性能を
得るために、電源±5 V で動作させます。
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また、AD813x はシングルエンド入力から差動出力までゲイン= 1
で構成することもできます。さらに–IN の 23 Ω (合計 522 Ω)により、
50 Ω ソース抵抗と非反転入力を駆動する 50 Ω 終端抵抗との並列イン
ピーダンスとバランスをとります。
信号ジェネレータは、グラウンド基準のバイポーラ出力などを持って
いて、
グラウンドの上下に対称に駆動します。
VOCM を AD9224 の CML
ピンに接続すると、AD813x の出力同相モードが 2.5 V に設定され、
これは AD9224 に対して電源中心レベルになります。この電圧は、
0.1 µF のコンデンサでバイパスされます。
AD9224 のフルスケール・アナログ入力範囲は、SENSE ピンと AVSS
を接続することにより、4 V p-p に設定されます。これは、高調波
歪みを最小にするスケールにするために決定されました。
3 V単電源の差動ADCドライバ
多くの新しい A/D コンバータは 3 V 単電源で動作することができ
るため、システム消費電力を大幅に削減することができます。ア
ナログ入力でのダイナミック・レンジを広げるため、差動入力を
採用しています。差動入力ではダイナミック・レンジがシングル
エンド入力の 2 倍になります。
差動入力を使うもう 1 つの利点は、
歪み性能を改善できることです。
AD813x は低歪み、かつ 3 V 単電源で動作できるため、10 ビットの
単電源アプリケーション向けの ADC ドライバとして適しています。
図 4 に、10 ビット 40 MSPS ADC コンバータ AD9203 を駆動する
AD813x の回路図を示します。
AD813x が 4 V p-p で変化する場合、各出力は 2 V p-p 振幅になり、
位相が 180˚異なる信号を出力します。出力での同相モード電圧が
2.5 V の場合、各 AD813x 出力は 1.5 V~3.5 V の範囲で変化するこ
とを意味します。
DIN+にグラウンド基準の 4 V p-p、5 MHz 信号を使用して図 3 の回
路をテストしました。接続したデバイス回路をサンプリング・レ
ート 20 MHz MSPS で動作させたとき、SFDR (スプリアス・フリー・
ダイナミック・レンジ)は–85 dBc と測定されました。
図 4. AD813x による、10 ビット 40 MSPS A/D コンバータ AD9203 の
駆動
図 3. AD813x による、12 ビット 40 MSPS A/D コンバータ AD9224 の
駆動
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AD813x 出力の同相モードは、VOCM に接続された分圧器により電源
中心に設定され、0.1 µF のコンデンサで AC バイパスされています。
これにより、AD813x 出力でこの電源間の最大ダイナミック・レン
ジが得られます。AD813x 出力の 110 Ω 抵抗とシャント・コンデン
サにより、ノイズと折り返しを抑える 1 極ローパス・フィルタが
構成されています。
図 5 に、両デバイスを接続して、アナログ入力周波数 2.5 MHz、40
MSPS のサンプリング・レートで取得した FFT プロットを示し
ます。
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AD813x の性能は、この ADC の駆動に最適とされているセンター・
タップ付きトランス駆動と同等です。 AD813x には、トランス・
ソリューションにはない DC 維持性能を持っている利点がありま
す。
図 6 に、ツイストペア・ラインを駆動する AD813x の回路を示しま
す。カテゴリ 3 やカテゴリ 5 (Cat3 や Cat5)のようなツイストペア・
ラインは既に多くのビルディングで電話とデータ通信用に設置さ
れています。このような伝送線の特性インピーダンスは通常約 100
Ω です。AD813x 出力のバランスは非常に優れているため、同相モ
ード信号が小さくなり、したがってツイストペアの駆動から発生
する EMI も少なくなります。
図 6.シングルエンド/差動変換 100 Ω ライン・ドライバ
図 5.
AD9203 を駆動する AD813x の FTT 応答
平衡ラインを駆動するツイストペア・ライン・ドラ
イバ
ツイストペア・ケーブルを駆動するときは、純差動信号のみをラ
インへ駆動することが望まれます。信号が純差動(すなわち平衡信
号)で、かつ伝送線が撚り線で平衡な場合は、信号の放射が最小に
なります。
相補電界の大部分が 2 本の撚り線の間の空間に閉じ込められるた
め、ケーブルからの大きな放射はありません。ケーブル内の電流は
磁界を発生し、これがある程度放射されますが、各撚りで、2 つの
隣接する撚りで発生する各磁界は、互いに逆極性を持ちます。撚り
のピッチが十分短い場合は、これらの小さい磁界ループが大部分の磁
束を含むため、遠端磁界強度は無視できます。
差動駆動信号内の不平衡は、ケーブル上で同相モード信号として
現れます。これは、同相モード信号で駆動された単線と等価です。
この場合、線はアンテナとして機能して放射が発生します。した
がって、差動ツイストペア・ケーブルを駆動する際に放射を少なくす
るためには、差動駆動信号が良く平衡していることを確認する必要
があります。
各出力に直列な 2 本の抵抗により、ライン送信端を終端します。
AD813x の出力インピーダンスは非常に小さいため、短絡と見なす
ことができるので、2 本の終端抵抗により伝送線送信端で 100 Ω 終
端が形成されます。受信端は、ライン間に接続する 100 Ω 抵抗で
直接終端されます。
伝送線のこのバック終端により、出力信号が 1/2 倍されます。固定
ゲイン 2 の AD813x により、
システム全体ゲイン= 1 が得られます。
このケースでは、入力信号は出力インピーダンス 50 Ω の信号ジェ
ネレータから供給されています。これは、AD813x の+DIN の近くで
49.9 Ω 抵抗により終端されています。ソースと終端の実効並列抵
抗は 25 Ω です。–DIN とグラウンドとの間の 24.9 Ω 抵抗により+DIN
ソース・インピーダンスと整合させるため、DC とゲインの誤差が
小さくなります。
短距離で、オペアンプ出力のような低インピーダンス・ソースか
ら+DIN が駆動される場合、+DIN には終端抵抗は不要です。この場
合、–DIN は直接グラウンドへ接続することができます。
送信等化器
伝送線の長さによって伝送する信号が減衰させられます。この影
響は高い周波数ほど大きくなります。これを補償する 1 つの方法は、
送信回路で高い周波数を持ち上げる等化器を使用して、ケーブルの
受信端で減衰効果を相殺させることです。
AD813x の同相モード帰還ループは出力での同相モード電圧を小
さくするのに役立っています。このため、この機能を使って平衡
度の優れた差動ライン・ドライバを構成することができます。
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高い周波数で帰還回路の RG 部品のインピーダンスを小さくする
ことにより、ゲインを高周波で上げることができます。図 7 に、
RG を 10 pF のコンデンサでシャントしたゲイン= 2 のライン・ド
ライバを示します。この効果を図 8 の周波数応答プロットに示し
ます。
巻線間容量(CSTRAY)が均一に分布していると仮定すると、駆動源か
らの信号が、駆動される 1 次側近くに配置されている 2 次側出力
端子に混入します。一方、2 次側の反対側端子には信号が混入しま
せん。これは、近くにある 1 次側端子が駆動されないためです(図
9 参照)。この不平衡の正確な大きさは、トランスの寄生の大きさ
に依存します。
図 7.周波数ブースト回路
図 9.トランスに固有なシングルエンド/差動変換の不平衡
差動回路のバランスは、差動出力間に値の等しい抵抗分圧器を接
続して、グラウンドを基準とした回路の中心ポイントを測定する
ことにより、測定することができます。2 つの差動出力は同じ振幅
で位相が 180˚異なると見なすことができるので、完全にバランス
した出力では信号が現れないはずです。
図 9 の回路に、Minicircuits 社の T1-6T トランスを示します。この
トランスの 1 次側はシングルエンドで駆動され、2 次側では端子間
に高精度分圧器が接続されています。分圧器は、2 本の 500 Ω
(0.005%高精度抵抗)で構成されています。電圧 VUNBAL (AC 同相モー
ド電圧にも一致)は、両出力の平衡度を表します。
図 10 のプロットに、信号ジェネレータを使ってシングルエンドで
トランスを駆動した場合と AD813x を使って差動で駆動した場合
の比較を示します。図 10 の上側の信号カーブは、シングルエンド
構成のバランス応答を、下側のカーブは差動駆動時のバランス応
答を、それぞれ示しています。100 MHz でのバランスは、AD813x
を使った場合 35 dB 良くなっています。
図 8.送信ブースト回路の周波数応答
その他のアプリケーション
平衡トランス・ドライバ
トランスは、シングルエンド/差動変換(および逆変換)に使われてき
た最も古いデバイスです。またトランスは、電流アイソレーショ
ン、昇圧または降圧、インピーダンス変換の機能も持っています。
このため、アプリケーションによっては常にトランスの用途があ
りました。
ただし、トランスをシングルエンドで駆動して出力を見ると、ト
ランスに固有な寄生のために基本的な不平衡があることが分かり
ます。トランスの 1 次(駆動)側の一方を DC 電位(通常グラウンド)
にして、他方を駆動します。これにより、トランスの差動出力信
号で優れたバランスが必要なシステムでは問題が発生します。
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2 個のダイオードのカソードを相互に接続し、この出力ノードを
100 Ω の抵抗を介してグラウンドに接続します。
図 12.全波整流器
図 10.図 9 と図 11 の回路の出力バランス誤差
AD813x の良くバランスした出力が、トランスの各 1 次入力に振幅
が等しく位相が 180˚異なる駆動信号を提供しています。このため、
2 次側の接続極性に応じて、巻線間容量を経由する信号が、トラン
スの 2 つの 2 次側信号を等しく大きくするか、または小さくしま
す。いずれの場合でも、寄生の影響は対称であるため、バランス
したトランス出力が得られます(図 11 参照)。
差動出力電圧がゼロのとき、少し順方向にバイアスされるようにダイ
オードを動作させます。ショットキ・ダイオードの場合、これは約
400 mV です。順方向バイアスは CR1 を使って調節することができ
ます。この回路では、差動出力電圧を発生することなく VOUT, cm を
変化させることができます。
この回路の利点の 1 つは、各ダイオードがループ内で極性を反転す
る際に帰還ループが一時的にオープンにならないことです。この方
式は、従来型オペアンプを使用する全波整流器で使用されていま
す。これらの従来型回路は、約 1 MHz 以上の周波数では良く動作
しません。
順方向バイアスが十分でない場合は(VOUT, cm が低すぎる)、全波整流
出力波形の下側先端が丸くなります。さらに、周波数が高くなると、
下側先端の丸みが強くなります。順方向バイアスを大きくして、
高い周波数で先端をシャープにすることができます。
全波整流器の性能を測定する、高信頼の数値化できる方法はあり
ません。理論的な波形はシャープな周期的不連続性を持つため、
上限周波数のない高調波(主に偶数次)を持っていますが、実用的回
路では、周波数が高いほど、高い高調波が減衰するので、低い周波
数で現れたシャープな先端はかなり丸くなります。
図 11. AD813x を使った平衡トランス・ドライバ
この回路は 300 MHz までの周波数で動作し、機能しているときに
出力に残った主な高調波は 2 次でした。このため、600 MHz で正
弦波のように見えました。図 13 に、100 MHz、2.5 V p-p 入力で駆
動した際の出力のオシロスコープ・プロットを示します。
全波整流器
AD813x の平衡出力と数個のショットキ・ダイオードを組み合わせて
使用すると、非常に高速な全波整流器を構成することができます。こ
のような回路は、AC 電圧の測定やその他の計算に便利です。
図 12 に、このような回路の構成を示します。AD813x の各出力は、
HP2835 ショットキ・ダイオードのノードを駆動します。これらの
ショットキ・ダイオードは、高速動作用に選択します。低い周波
数(10 MHz 以下)では、1N4148 のようなシリコン信号ダイオードを
使うことができます。
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DAC を 2 倍でオーバーサンプルする際のクロックを発生するため
に、2 次高調波ジェネレータの使用が便利なことがあります。この
回路の出力をローパス・フィルタを通過して動作させると、2 次高
調波ジェネレータとして使用することができます。
図 14 に、複数帰還ローパス・フィルタの回路図を示します。アク
ティブ・セクションには 2 極が含まれ、出力にさらに 1 極が追加
されています。フィルタは、1 MHz の-3 dB 周波数としてデザイン
されています。実際の-3 dB 周波数の測定値は 1.12 MHz でした(図
15)。
図 14. 1 MHz、3 極の差動出力ローパス複数帰還フィルタ
図 13. 100 MHz 入力での全波整流器の応答
差動フィルタ・アプリケーション
オペアンプと同様に、AD813x を使って種々のタイプのアクティ
ブ・フィルタを構成することができます。これらはシングルエン
ド入力/差動出力にすることができ、差動 ADC を駆動する際に折り
返し防止機能として使うことができます。
図 15. 1 MHz ローパス・フィルタの周波数応答
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