AN-968 アプリケーション・ノート 電流源の回路と動作 著者:Martin Murnane VDD REFIN1(+) GND IN+ OUT– AD7794/AD7795 AIN1(+) AIN1(–) IN+ OUT– OUT+ AVDD VDD IN– OUT+ AIN2(+) AIN2(–) IN– MUX AIN3(+) BUF IN-AMP Σ-Δ ADC SERIAL INTERFACE AND LOGIC CONTROL DOUT/RDY DIN SCLK CS AIN3(–) GND REFIN2(+) RCM VDD REFIN2(–) IOUT1 INTERNAL CLOCK DVDD REFIN1(–) GND CLK 07488-001 PSW 図 1.AD7794 電流源アプリケーション(詳細については、AD7794 データシートを参照) はじめに 低電流—ADC アプリケーション 多くのアプリケーションで、センサー駆動用、正確な計測用、 その他のアプリケーション用のデバイスを励起する電流源が必 要となります。このアプリケーション・ノートでは、アナロ グ・デバイセズの IC を使って電流源をデザインする際に使用で きるいくつかのオプションについて説明します。特定のデバイ スに組込まれるマイロアンペア・レンジの電流源から、中電力 や高電力ディスクリート・アプリケーションの 1 A レンジまで の電流源の例も示します。 ADC によっては、定電流源 (励起電流とも呼ばれます)を内蔵す るセンサー直接実装向けに特別にデザインされているものもあ ります。 AD7794 デバイスは、10 µA~1 mA で設定可能な励起電流を持 っています (図 1 参照)。この電流源はレジスタ(I/O レジスタ)か ら制御され、2 本の出力ピンの内の 1 本(この場合 IOUT1)に流れ る電流をイネーブルします(詳細については、図 1 を参照してく ださい)。これは、センサー消費電力が小さい携帯型アプリケー ションには十分な機能です。 Rev. 0 社/〒105-6891 東京都港区海岸 1-16-1 ニューピア竹芝サウスタワービル 電話 03(5402)8200 大阪営業所/〒532-0003 大阪府大阪市淀川区宮原 3-5-36 新大阪 MT ビル 2 号 電話 06(6350)6868 本 AN-968 AD7719 ADC には、最大電流 400 µA の同様の電流源があります (図 2 参照)。同様に、2 つの電流源も使用可能です。両電流源は 200 µA であり、AD7794 ADC と同じ方法で制御することができ ます。すなわち、一方または両方の電流を出力ピンへ流すこと ができます。図 2 では、両電流が IOUT1 ピンに出力されて、ブ リッジとリファレンスを駆動しています。詳細については、 AD7719 データ・シートを参照してください。 低電流—オペアンプ・アプリケーション 電流源に対するディスクリート・オプションは、オペアンプ駆動 の回路です(図 3)。AD8610 オペアンプは駆動電流が比較的大き いオペアンプで、±12 V から駆動されます。 10pF アナログ・デバイセズは、定電流源機能を内蔵する多くの ADC を提供しています。詳細については、www.analog.com/adcs をご 覧ください。 2kΩ VIN LK1 2kΩ 2 5V AVDD 22Ω 6 3 1MΩ AD8610ARZ LOAD IOUT1 1kΩ I1 10pF 2kΩ I2 10kΩ REFIN(+) AD8610ARZ 6.25kΩ REFIN(–) 図 3.10 mA 電流ソース/シンク AIN2 IN(+) VIN の負電圧がオペアンプを制御して、このデバイスの電圧出 力を持ち上げます。アンプの出力電流が 1 Ω の検出抵抗に流れ ます。帰還オペアンプの入力電圧が上昇して、制御オペアンプ 入力に逆極性の電圧を発生させます。平衡状態に達して、定常 状態の電流が 1 Ωの検出抵抗に流れます。検出抵抗は電流の測 定に使いますが、負荷抵抗も高価な検出抵抗のコスト削減のた めに使うことができます。この方式の欠点は、負荷がなくなっ た場合、たとえばアンプが飽和した場合に回路が未知状態にな ることです。 XTAL1 AD7719 PRESSURE BRIDGE AIN1 XTAL2 AIN4 IN(–) AIN3 250Ω AGND 07488-002 OUT(+) OUT(–) 図 2.AD7719 の電流源アプリケーション(詳細は AD7719 データシートを参 照) AD8610 は優れた電流ノイズ性能と電圧ノイズ性能を持ってい るために選択されたことに注意してください。詳細については、 AD8610 データ・シートを参照してください。この回路では、 正または負の電圧を VIN に与えることにより、10 mA 以上の電 流をそれぞれシンクまたはソースすることができます。 マイクロコントローラ アナログ・デバイセズは、低電流レンジの電流源を内蔵した広 範囲なマイクロコントローラも提供しています。詳細について は、www.analog.com/microcontrollers を参照してください。 Rev. 0 07488-003 1Ω - 2/4 - AN-968 中電流—バイポーラ・アプリケーション 大電流—MOSFET アプリケーション 図 4 に、100 mA 以上の大きな電流を持つ電流源の例を示します。 この回路では、負荷へ電流を供給するためにプッシュプルのオ ペアンプ出力ドライバ・ステージを使っています。正の電圧を VIN に与えると、制御オペアンプの出力電圧が上昇して、Q1 を ターンオンさせるので、10 Ω の抵抗を通して負荷へ電流が流れ ます。この 10 Ω の抵抗は、熱暴走を防止するために必要です。 電流が増えると、検出抵抗の電圧も大きくなるので、制御オペ アンプへの電圧帰還も増えて平衡状態に到達します。平衡状態 になると、VIN の固定入力電圧に対応する定電流が負荷に流れ ます。これにより負荷へ電流を供給するので、これは定電流源 になります。 大電流アプリケーションが必要な場合には、前述の回路でプッ シュプルを MOSFET と数個の部品で置き換えることにより負荷 電流を増やすことができます。 LK1 2kΩ 10Ω 2 Q1 R3 10Ω E B 22pF 12kΩ Q2 C 0.1µF –12V 07488-004 10µF 1Ω SENSE RESISTOR 図 4.100 mA 以上の電流のソース/シンク Rev. 0 10kΩ 07488-005 AD8610ARZ 図 5.IRF640 MOSFET を使用した電流シンク、1000 mA 図 5 の回路では、MOSFET (IRF640 N チャンネル)のゲート電圧 を設定するために制御ループを使っています。図 5 の回路では、 検出抵抗と帰還アンプを使って、前述の例で示したように VIN の感度を低下させています。図 5 の最大電流は 1000 mA です。 ただし、MOSFET と検出抵抗のみを変更することにより、さらに 大きな電流の駆動に対して同じ制御ループを使うことができま す。また、図 5 の回路の利点は、ジャンパーLK2 で示すように、 回路の電源とは異なる電圧の電源を負荷に対して使うことがで きることです。これは、200 V の絶対最大定格を持つ IRF640 の ような高電圧の MOSFET を使用する場合、回路の他の部分に供 給される 15 V より高い電圧でこの回路が動作できることを意味 します。 E R2 10Ω D1 22pF 100mΩ C D2 1 56Ω 190kΩ LOAD 10MΩ 3 U1 1 2 6 10µF VIN 3 LK1 5 15kΩ 0.1µF P4 10kΩ 7 +12V B AD8610ARZ VIN 15kΩ 帰還ループにアンプを追加すると、VIN での感度が低下します。 たとえば、ゲインを 10 にすると、±1 V の VIN 制御電圧が可能 になります。 12kΩ LK2 10MΩ SENSE RESISTOR VIN 入力電圧が負の場合には同様の状況が発生しますが、Q2 が ターンオンするために電流が逆向に流れます。VIN の一定電圧 に対応して、一定の電流が負荷に流れます。VIN にステップ入 力電圧を与える場合、すなわち周波数 20 kHz で±100 mV の VIN 電圧を与える場合でも、回路は約 3 µs の電流セトリング・タイ ムで良く動作します。このスイッチングから、回路の安定性を 知ることができます。 EXT +5V - 3/4 - AN-968 この回路では、1000 mA の電流をシンクするように MOSFET と 検出抵抗が選択されています。したがって、100 mΩ の検出抵抗 では、最大負荷での合計電圧が 0.1 V になります。検出抵抗の 消費電力は 0.1 W です。制御アンプに対する合計電圧帰還が 2.0 V になるように、帰還回路のゲインは 20 に設定されていま す。このため、負荷から 1000 mA の電流をシンクするために必 要な VIN の電圧は 2.0 V になります。シミュレーションでの応 答については、図 6 を参照してください。DAC を使って VIN を 駆動してこの電圧を制御すると、負荷を流れる電流が変化する ため、可変電流源にすることができます。VIN の電圧を 1.0 V に固定すると、500 mA の定電流源になります。 レイアウト・モジュール EXT +5V +10V 0.1µF C B VIN P4 LK1 15kΩ 10MΩ 2 56Ω 3 P4 VIN D2 1 0Ω R3 10Ω E D1 B 22pF CURRENT SINK 1A/DIV E R2 10Ω LK3 15kΩ Q2 12kΩ 15kΩ LK2 Q1 AN07488-0-10/08(0)-J 12kΩ AD8610ARZ LOAD + 10µF C 0.1µF 7 6 AD8610ARZ 190kΩ VOLTAGE (VIN) 2V/DIV 200mΩ 10kΩ 07488-006 図 7.レイアウト・モジュール用の電流シンク回路 広範囲な電流源アプリケーションで使用できる電流源レイアウ ト・モジュールを開発するときは、約 1 mA~約 1000 mA に対 して、図 7 の回路を使ってください。そうすると、必要とされ る電流範囲に応じて必要な部品のみを PCB に実装して、同じモ ジュールを使うことができます。 図 6.検出抵抗電流ステップ応答―回路シミュレーション応答(デューティ・ サイクル= 25%) 動作させる場合、負荷は MOSFET のドレインまたはソース、あ るいは電流パス内の任意の場所に接続することができます。 MOSFET の発熱も重要であるため、MOSFET を選択する際には RDS(ON) の値が非常に重要な要素になります。このケースでの RDS(ON)の値は、150 mΩ (typ)です。電流がこれより大きいときは、 可能な場合 20 mΩ以下の RDS(ON)値を使用してください。 ©2008 Analog Devices, Inc. All rights reserved. Rev. 0 07488-007 10µF 5 15kΩ SENSE RESISTOR + –10V 商標および登録商標は各社の所有に属します。 - 4/4 - 結論 定電流源または可変電流源の安定性は、正確な計測を行う場合 に非常に重要です。アナログ・デバイセズは、図 1 と図 2 のよ うな IC 部品として、または図 3、図 4、図 5、図 7 のようなデ ィスクリート部品として、広範囲なアプリケーション向けに柔 軟で信頼度の高い電流源を実現できる広範囲なデバイスを提供 しています。