日本語参考資料 最新版英語アプリケーション・ノートはこちら AN-617 アプリケーション・ノート ウェーハ・レベル・チップ・スケール・パッケージ WAFER LEVEL CHIP SCALE PACKAGE 著者:ウェーハ・レベル・パッケージ開発チーム 概要 目的 Wafer Level Chip Scale Package(WLCSP)は、パッケージングプ ロセスの全てをウェーハ状態で加工するフリップチップ技術の一 種です。 WLCSP はダイの回路面上に加工された半田ボール(バ ンプ)によりプリント回路基板(PCB)へ裏返しに実装されます。 これらの半田ボールのサイズは一般的なフリップチップ技術に比 べるとかなり大きく(リフロー前で 250~300 µm)、アンダーフィ ルは要求されません。この技術には他にも以下のような利点があ ります。 このアプリケーション・ノートは、エンドユーザ向けに下記につ いて説明します。 1 次レベルのパッケージ材(封止材、リードフレーム、また は有機基板)が無いため、大幅な省スペース化を実現でき ます。たとえば、8 バンプ WLCSP が使用する基板面積は 8 ピン SOIC が使用する基板面積のわずか 8%です。 標準的なプラスチックパッケージで使用されるワイヤボン ドやリードが無いため、インダクタンスが低減するなど、 電気的性能が向上します。 リードフレームと封止材が無いため、軽量化と薄型化を実 現できます。 実装時に低質量ダイのセルフアライメント特性により、実装 歩留まりが向上されます。 図 1. WLCSP の構造と構成 WLCSP の標準的な寸法 PCB の設計 表面実装ガイドライン WLCSP の信頼性 熱特性 リワーク 出荷形態 7 × 8 配列のウェーハ・レベル・チップ・スケール・パッケージ(WLCSP)の写真 アナログ・デバイセズ社は、提供する情報が正確で信頼できるものであることを期していますが、その情報の利用に関して、あるいは利用に よって生じる第三者の特許やその他の権利の侵害に関して一切の責任を負いません。また、アナログ・デバイセズ社の特許または特許の権利 の使用を明示的または暗示的に許諾するものでもありません。仕様は、予告なく変更される場合があります。本紙記載の商標および登録商標 は、それぞれの所有者の財産です。※日本語版資料は REVISION が古い場合があります。最新の内容については、英語版をご参照ください。 ©2007–2012 Analog Devices, Inc. All rights reserved. 本 社/〒105-6891 東京都港区海岸 1-16-1 ニューピア竹芝サウスタワービル 電話 03(5402)8200 大阪営業所/〒532-0003 大阪府大阪市淀川区宮原 3-5-36 新大阪トラストタワー 電話 06(6350)6868 AN-617 アプリケーション・ノート 目次 概要 ...................................................................................................... 1 実装の留意事項 .................................................................................. 7 目的 ...................................................................................................... 1 半田印刷工程 .................................................................................. 7 構造と構成 .......................................................................................... 3 部品搭載工程.................................................................................. 7 WLCSP の構造 ................................................................................ 3 リフロー工程.................................................................................. 7 WLCSP の構成 ................................................................................ 4 WLCSP の信頼性 ................................................................................ 8 WLCSP の寸法 ................................................................................ 4 熱特性.................................................................................................. 9 PCB の設計.......................................................................................... 5 リワーク........................................................................................ 10 スタンドオフ .................................................................................. 5 出荷形態............................................................................................ 11 ソルダーマスクの設計 .................................................................. 5 仕様 ............................................................................................... 11 基板の材料 ...................................................................................... 5 ESD 保護 ....................................................................................... 11 さまざまな推奨事項 ...................................................................... 6 引き剥がし強度............................................................................ 11 基板の設計 ...................................................................................... 6 供給方向........................................................................................ 11 ピン 1 の方向 ................................................................................ 11 - 2/ - AN-617 アプリケーション・ノート 構造と構成 RDL タイプは、ワイヤボンディング用に設計されたダイ(ボン ドパッドはダイの周囲に配列)から WLCSP を作るものです。ダ イレクトバンプタイプとは異なり、 RDL タイプの WLCSP では 二層のリパッシベーションを使用します。最初のリパッシベー ションをダイ上に塗布し、ボンドパッド部を開口しておきます。 RDL 層を蒸着して、ペリフェラルアレイをエリアアレイ状に再 配線します。その後は、ダイレクトバンプと同じように、第二の リパッシベーション層、UBM、半田バンプという構造になりま す(図 3 参照)。 WLCSP の構造 アナログ・デバイセズの WLCSP はダイレクトバンプタイプと、 再配線(RDL)タイプという 2 種類に分類できます。ダイレクト バンプタイプは、アクティブ回路面へのストレス・バッファの役 割を果たす有機リパッシベーション層とアンダーバンプメタル 層(UBM)、半田バンプで構成されています。アクティブ回路 面はボンドパッドの開口部を除き、リパッシベーションで全体が 覆われています。また、ボンドパッド開口部上には UBM が蒸着 されています。UBM はさまざまな層を積み重ねた構造であり、 拡散層、バリア層、湿潤層、耐酸化層として機能します。この UBM 上に半田ボールを落とし(この方法はボールドロップとい われます)、これをリフローして半田バンプを形成します(図 2 参照)。 SOLDER BUMP UBM SOLDER BUMP RDL REPASSIVATION LAYER 2 UBM DIE REPASSIVATION LAYER 1 図 3. REPASSIVATION LAYER 2 RDL タイプの代表的な構造 何れのタイプもボールドロップ処理後に、ウェーハの裏面研磨、 レーザーマーキング、個片化を行い、テープ&リールに収納しま す。オプションとして、裏面ラミネートを裏面研磨後に追加し、 個片化処理中に発生するダイ割れの低減やパッケージの取り扱 いを容易にする方法もあります。 DIE 03272-002 BOND PAD 03272-003 REPASSIVATION LAYER 1 図 2. ダイレクトバンプタイプの代表的な構造 - 3/ - AN-617 アプリケーション・ノート WLCSP の構成 WLCSP の寸法 アナログ・デバイセズの WLCSP 製品はすべて、標準ピッチが 0.5 mm または 0.4 mm です。このため、各ピン配列には、それぞ れのバンプやピッチに対応する最小ダイサイズ(パッケージサイ ズ)があります。ピッチが 0.5 mm または 0.4 mm の最小ダイサイ ズを表 1 に示します。 代表的なバンプの直径、高さ、およびシリコンの厚みとそれらの 許容誤差を表 2 に示します。 表 2. 表 1. 0.5 mm および 0.4 mm ピッチの WLCSP 最小ダイサイズ Minimum Die Size Array Maximum I/O Pitch = 0.5 mm Pitch = 0.4 mm 2×2 4 1.0 mm × 1.0 mm 0.8 mm × 0.8 mm 2×3 6 1.0 mm × 1.5 mm 0.8 mm × 1.2 mm 3×3 9 1.5 mm × 1.5 mm 1.2 mm × 1.2 mm 3×4 12 1.5 mm × 2.0 mm 1.2 mm × 1.6 mm 4×4 16 2.0 mm × 2.0 mm 1.6 mm × 1.6 mm 4×5 20 2.0 mm × 2.5 mm 1.6 mm × 2.0 mm 5×5 25 2.5 mm × 2.5 mm 2.0 mm × 2.0 mm 5×6 30 2.5 mm × 3.0 mm 2.0 mm × 2.4 mm 6×6 36 3.0 mm × 3.0 mm 2.4 mm × 2.4 mm 6×7 42 3.0 mm × 3.5 mm 2.4 mm × 2.8 mm 7×7 49 3.5 mm × 3.5 mm 2.8 mm × 2.8 mm 7×8 56 3.5 mm × 4.0 mm 2.8 mm × 3.2 mm 8×8 64 4.0 mm × 4.0 mm 3.2 mm × 3.2 mm 8×9 72 4.0 mm × 4.5 mm 3.2 mm × 3.6 mm 9×9 81 4.5 mm × 4.5 mm 3.6 mm × 3.6 mm 9 × 10 90 4.5 mm × 5.0 mm 3.6 mm × 4.0 mm 10 × 10 100 5.0 mm × 5.0 mm 4.0 mm × 4.0 mm - 4/ - 0.5 mm および 0.4 mm ピッチの WLCSP パッケージ寸法 Dimension Tolerance 0.5 mm Pitch 0.4 mm Pitch Bump Diameter ±40 µm 320 µm 260 µm Bump Height ±30 µm 240 µm 200 µm Silicon Thickness ±30 µm 360 µm 400 µm 300 µm Total Package Height ±60 µm 600 µm 600 µm 500 µm AN-617 アプリケーション・ノート PCBの設計 は、半田バンプ径の 80%にしてください。必要な規定を満たすた めに、パッドの厚さは 1/2 oz 未満にする必要があります。また、 パターン幅はパッド径の 60%以下の値を推奨します。ソルダーマ スクの開口径はパッド径 + 100 µm にしてください。推奨パッド 寸法を表 4 に示します。 スタンドオフ 実装後の PCB とダイ表面との隙間(スタンドオフ)は、PCB に スクリーン印刷される半田ボール径とパッド径によって変動し ます。代表的な寸法を表 3 に示します。300 µm のボールは直径 250 µm の NSMD パッドに、250 µm のボールは直径 200 µm の NSMD パッドに、150 µm のボールは直径 110 µm の NSMD パッ ドにそれぞれ搭載したときの寸法です。 表 4. 推奨パッド寸法 表 3. 実装後の代表的な WLCSP 寸法 Solder Ball Size (µm) Total Package Height Before Board Mount (mm) Standoff Height (mm) 300 0.600 ± 0.06 0.190 ± 0.03 250 0.500 ± 0.06 0.140 ± 0.03 150 0.315 ± 0.015 0.120 ± 0.03 Pad Diameter (mm) Solder Mask Diameter (mm) 0.320 ± 0.04 0.250 ± 0.015 0.350 ± 0.015 0.260 ± 0.04 0.200 ± 0.015 0.300 ± 0.015 0.160 ± 0.04 0.110 ± 0.015 0.210 ± 0.015 基板の材料 WLCSP は標準的なガラスエポキシ基板に対応します。更に標準 FR-4 をより熱膨張係数(CTE)の小さい高温 FR-4 に変えること で実装信頼性を向上させることが可能です。PCB の CTE は、金 属層の数、ラミネート材料、パターン密度などの条件で変動しま す。基板のガラス転移温度は、組立品の適用温度を上回っている ことが理想的です。 DIE STAND-OFF HEIGHT Bump Diameter (mm) パッド上の仕上げ層は、実装の歩留まりと信頼性に大きく影響し ます。 SOLDER BUMP 03272-004 PCB 図 4. 実装後の WLCSP 半田接合部断面 ソルダーマスクの設計 PCB の製造には、次の 2 種類のパッドパターンが有ります。 Non solder mask defined (NSMD):PCB 上のパッド径(これ にパッケージ I/O を接続します)がソルダーマスクの開口径 より小さいもの。 Solder mask defined (SMD):ソルダーマスクの開口径がパッ ド径より小さいもの。 この 2 つのタイプのパッドパターンの断面比較を図 5 に示します。 図 5. PAD PAD PCB PCB 03272-005 SOLDER MASK NSMD と SMD のパッドパターンの断面図 パッドのエッチング寸法はソルダーマスクの開口径より厳密に 制御されるため、SMD よりも NSMD のほうが推奨されます。ま た、NSMD パッドの場合、ソルダーマスクの開口部からパッドが 完全に露出するため、パッドの側面も半田で覆われることになり、 実装後の接合信頼性が向上します。(図 4 参照) NSMD パッドに接続する配線パターンの幅はパッド径の 60%以 下にする必要があります。更に PCB 設計でビアインパッドを使 用する場合は、半田接合のボイドができないようにビアを充填し て平坦にメッキを施す必要があります。 基板設計時には、基板メーカーでのソルダーマスク位置合わせ精 度能力をチェックして、ソルダーマスクの開口サイズがパッド外 径より 50 μm になるようにします。使用される実際のパッド寸法 - 5/ - 最も適した表面仕上げとして有機表面保護材(OSP)を推奨 します。保管期間は 6 カ月です。 OSP の代わりに浸漬銀または浸漬錫も使用できます。 無電解のニッケル浸漬金(ENIG)は脆化を防ぐために厚さ を 0.02~0.05 µm に制限すれば許容できます。 基板は薄いほど柔軟性が高く、その結果、温度サイクルに おける接続信頼性が高くなります。工業用に使用されてい る標準的な基板の厚みは 0.4 ~2.3 mm です。どの厚みを選 択するかは、実装後のシステム組立部品に求められる仕様 によります。 AN-617 アプリケーション・ノート さまざまな推奨事項 これは 75 µm パターンで必要な間隙値 125 µm より大きいため、 パターンを表面層に配線することができます。同様に、ソルダー マスクの標準開口径が 300 µm で、ピッチが 400 µm であれば、 ソルダーマスク開口部間の間隙は 100µm しかありません。この 間隙値は 125 µm より小さいため、表面層にパターンを配線する ことができません。これに代わる方法として、ビアインパッドを 使って配線することが考えられます(表5参照)。 パッド/ソルダーマスク位置合わせの許容誤差 = ± 25 μm ソルダーマスクはレーザダイレクトイメージング(LDI)が 可能なものを使用してください。 個別アライメントマークを使用してください。 シルクスクリーンとデバイスのフットプリントの間隔を維 持してください。 表 5. パターン幅が 75 µm の場合のパッドの寸法 基板の設計 デバイスの機能が増大して小型化が進むほど、基板の製造は難し くなります。現在、業界では狭ピッチ化(400 µm)による多配 列化へと向かっていますが、基板製造技術に基づく形状の制約が 存在するため基板表面層だけの配線では一般に設計が不可能な 領域が増えてきています。パターン(幅と間隔)は、ソルダーマ スクの各開口部間に収まらなければなりません。75 µm パターン 幅の標準的なクリアランスは各側面でそれぞれ 25 µm となりま す。したがって、この場合の必要最少間隙は 25 µm + 75 µm + 25 µm = 125 µm です。隣接する 2 つのパッドの間に 75 µm のパター ンを配線するには、隣接するソルダーマスク開口部間の間隙を 125 µm 以上の幅にする必要があります。PCB の標準的な配線/ 間隙のルールを図 6 と 表 5 に示します。 図 6. Pitch (µm) Mask Size (µm) Clearance Between Adjacent Mask Openings (µm) 500 350 500 − (350/2 + 350/2) = 150 400 300 400 − (300/2 + 300/2) = 100 Comments No issues routing (150 µm > 125 µm) Issues routing (100 µm < 125 µm) パッドにビアを設けることで、パターン間隙のクリアランスが増 えます。しかし、開口径が 300 μm の標準ビアの場合、半田がビ アの中に垂れ下がって、半田接合が脆くなったり切断したりしま す。さらに、キャプチャパッドも半田パッドより大きくなってし まいます。レーザーによるマイクロビアを使用することで、基板 に 100 µm の穴を開けることができ、メッキ処理後にはさらに 50 µm まで小さくできます。実装の歩留まりを最大にするために、 半田接合のボイドができないようにビアを充填して平坦にメッ キを施す必要があります。この例を図 7 に示します。 PCB の標準的な配線/間隙のルール 図 7. ソルダーマスクの標準開口径が 350 µm で、ピッチが 500 µm の 場合、ソルダーマスク開口部間の間隙は 150 µm になります。 - 6/ - ビアインパッドの断面構造図 AN-617 アプリケーション・ノート 実装の留意事項 基板実装を行うために、リフロー前に半田ペーストを基板にスク リーン印刷する必要があります。以下にプロセスフローを示しま す。 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 基板は実装前に 125°C で 24 時間乾燥してください。 WLCSP の受入れ検査 半田ペーストの印刷と検査 基板に WLCSP を搭載 半田リフローと検査 フラックス洗浄(オプション) 検査 リフローのピーク温度は、モイスチャーセンシティビティ レベル(MSL)に従って、パッケージが認定された最大温 度を超えないようにしてください。標準的な WLCSP デバイ スは MSL-1 です。 加熱炉は窒素パージを行い、炉内の酸素成分が 100 ppm を 下回るようにしてください。 半田印刷工程 半田ペースト印刷では特別な注意が必要です。高さ、位置合わせ のような工程すべてで検査を注意深く実施する必要があります。 さらに以下に注意してください。 ステンシルのタイプ:レーザーカットまたは電気鋳造 ステンシル厚(推奨値) 半田ボール径が 300 µm で 0.5mm ピッチのデバイス = 100 µm(4 ミル) 半田ボール径が 150 µm で 0.5mm ピッチのデバイス = 100 µm(4 ミル) 半田ボール径が 250 µm で 0.4mm ピッチのデバイス = 75 µm(3 ミル) スキージ タイプ:金属製 角度 = 60° 推奨半田ペースト:Alpha OM338T または千住金属工業 S70G type 4 (SAC305) 図 8. 推奨リフロープロファイルの限界値 表 6. 推奨リフロープロファイルの限界値 Profile Feature Pb Free Average Ramp Rate (TL to TP) 1.25°C/sec max Preheat Minimum Temperature (TSMIN) Maximum Temperature (TSMAX) Time (TSMIN to TSMAX), tS 100°C 200°C 60 sec to 75 sec Ramp-Up Rate (TSMAX to TL) 1.25°C/sec 部品搭載工程 Time Maintained Above Liquids (tL) Liquids Temperature (TL) ~50 sec 217°C Peak Temperature (TP) 260°C +0°C/−5°C Time Within 5°C of Actual Peak Temperature (tP) 20 sec to 30 sec Ramp-Down Rate 3°C/sec max Time 25°C (t25°C) to Peak Temperature 5 min max 部品搭載にはビジョンアライメント機能を持った全自動搭 載装置を使用してください。 搭載する力は最小とし、一般に 150 グラムにしてください。 搭載の精度を高めるために個別アライメントマークの使用 を推奨します。 リフロー前にアラインメント、ブリッジなどを確認するた めに X 線検査を行います。 実際のリフロー温度設定は、密度および熱負荷の影響に基づいて エンドユーザにて決定されます。詳細については、半田ペースト メーカーのデータシートなども参照してください。 リフロー工程 注意:WLCSP(特にボールが大きいか高スタンドオフのパッケー ジ)は、一般にアンダーフィルを必要としません。もしアンダー フィルを採用される場合は、材料を慎重に選択、評価して、基板 の組立工程/材料に適合することを確認してください。 図8と表6に、JEDEC J-STD-D20 をベースにした推奨リフ ロープロファイルを示します。リフロープロファイルと ピーク温度は、ボイド形成に大きな影響を与える可能性が あるため注意が必要です。ピーク温度が低い場合は、長め の半田溶融時間(TAL)を必要とする可能性があります。 - 7/ - AN-617 アプリケーション・ノート WLCSPの信頼性 ダイを覆う封止材によって生じるパッケージ関連の一般的な問 題は、封止材のない WLCSP ではほとんどありません。たとえば、 高温での電気的故障は、多くの場合封止材に起因するイオン不純 物の移動が原因です。また、封止材の中に湿気が入り、ポプコー ン現象または腐食が起こることもあります。WLCSP では、この ような故障はいずれもありません。それでも、PCB にダイを実装 するため、温度サイクル中での半田破壊のような 2 次的なパッ ケージの問題を考慮する必要があります。 アルミニウムのような薄膜内のエレクトロマイグレーションと 同じように、この場合も強い温度依存性があります。データシー トの最大電流値の制限を確認してください。 アナログ・デバイセズは、故障メカニズムに基づいた新製品/新 プロセスの包括的な認定評価を実施しています。通常の寿命条件 で起きる可能性がある故障メカニズムについては、加速試験を 行います。WLCSP に関連した故障メカニズムと適切なストレス 試験の詳細を表 7 に示します。 半田ボール内のエレクトロマイグレーションは、電流密度が最大 になるポイント(すなわちパッシベーション開口部)で起きます。 電流密度がかなり高ければ相分離が発生し、半田バンプと UBM の間でボイドが生じることがあります。 表 7. WLCSP 故障メカニズム 故障メカニズム 説明 腐食 バンプまたは UBM の腐食は数種類の故障の原因になります。化学反応によって オートクレーブ/ 回路の断線が発生したり、デンドライト現象によって短絡や電流リークを発生す 高加速度ストレス試験 ることがあります。 (HAST) ストレス試験 拡散 過度の金属間化合物の形成によって半田接合が脆化し、半田バンプの不良が発生 することがあります。 高温保存(HTS) サーモマイグレーション/ エレクトロマイグレーション 時間経過とともに半田バンプのマイグレーションが発生することがあります。過 剰な Sn/Cu または Sn/Ni は、UBM/半田接合部でバンプの切断を発生させること があります。 高温動作寿命(HTOL) バンプ下地破壊 バンプ下のシリコンまたは表面保護膜に破壊が生じると、機能を喪失することが あります。 バンプ/ダイ・シェア強度 熱機械的負荷による半田疲労 WLCSP と基板間の熱膨張係数差により、半田接合部に高ストレスが生じて半田 バンプの不良が発生することがあります。 基板レベルでの温度サイク ル 機械的負荷による半田疲労 基板が過度に湾曲されると製品が故障することがあります。 基板レベルでの落下試験 さまざまな組立/試験動作中または実際の使用中に基板を繰り返し曲げると(周 期的曲げ)、基板やパターン、半田接続部、部品などに亀裂が入り、電気的な故 障が生じることがあります。 基板レベルでの曲げ試験 - 8/ - AN-617 アプリケーション・ノート 熱特性 熱特性は、半田ボールから PCB への熱伝導によって左右されま す。すなわち、WLCSP の熱特性を比較する場合にはボール数、 基板の構造、銅パターンの密度などを加味する必要があります。 また、グラウンドプレーンに接続する放熱用のボール数も考慮す る必要があります。 JESD51-9 1s0p 320 比較シミュレーションは、WLCSP が JESD51-9 の標準評価基板 (1s0p:1 層基板と 2s2p:4 層基板)に完全に実装されていて、ダ イのサイズは約 500 µm ずつ増大するものと仮定することにより、 簡略化することができます。表 8 に、ANSYS 市販コードに基づ いた 3 次元有限要素法解析(FEA)でモデル化した配列シリーズ、 ダイサイズ、放熱用のボールの数を示します。 表 8. 0m/sec 1m/sec 2m/sec 270 θJA (°C/W) 220 170 120 FEA のために検討されたパッケージ構造 70 Thermal Ball 0 Min Die Size (mm) 0.96 × 0.96 2×1×2 5 0 1.3 × 0.9 2×3 6 1 0.95 × 1.45 3×3 9 1 1.3 × 1.3 3×4 10 1 1.5 × 2.0 4×4 16 2 2.0 × 2.0 4×5 20 2 2.0 × 2.5 5×5 25 2 2.5 × 2.5 6×6 36 4 3.0 × 3.0 8×8 64 7 4.0 × 4.0 20 0 10 20 30 40 50 60 Ball Count JESD51-9 2s2p 160 0m/sec 1m/sec 2m/sec 140 120 10 種類の配列で、周囲温度 85°C、1s0p と 2s2p の評価基板、0.25 W と 1.25 W の消費電力、3 種類のエアフロー条件によりモデル 化しました。表 9 に代表的な結果を示し、図 9 に比較グラフを示 します。 100 80 60 40 最も一般的な熱特性の評価尺度は、接合部温度と周囲温度間の熱 抵抗熱抵抗(θJA)です。 20 0 - 9/ 10 20 30 Ball Count θJA 値は基板構造に依存します。銅層が多ければ、放熱効果が大 きくなります。この関係は、低熱伝導評価基板(1s0p:1 層基板) と高伝導評価基板(2s2p:4 層基板)を比較することで明らかに なります(図 9 参照)。 40 50 60 03272-009 Max I/O 4 θJA (°C/W) Array 2×2 図 9. 1 層基板(1s0p)と 4 層基板(2s2p)の θJA の比較(0.25 W) - AN-617 アプリケーション・ノート 表 9. 表 8 によるパッケージ構造のモデルから得られた代表的な結果 θJA (°C/W) Package Type PCB Power 0 m/sec 1 m/sec 2 m/sec θJC (°C/W) θJB (°C/W) 5L WLCSP 1S0P 0.25 W 266.6 231.5 217.2 2.5 57.6 1.25 W 249.5 224.3 212.1 2.7 56.3 0.25 W 148.7 139.7 136.5 2.5 54.6 1.25 W 146.9 139.4 136.4 2.6 55.2 0.25 W 108.5 89.0 82.3 0.6 17.1 1.25 W 101.1 87.3 81.2 0.6 17.5 0.25 W 47.9 43.4 42.1 0.7 9.1 1.25 W 46.8 43.3 42.1 0.7 9.2 0.25 W 65.5 50.4 45.8 0.1 7.1 1.25 W 60.6 49.7 45.4 0.2 7.3 0.25 W 28.0 23.8 22.8 0.2 4.5 1.25 W 26.9 23.7 22.7 0.2 4.5 2S2P 20L WLCSP 1S0P 2S2P 64L WLCSP 1S0P 2S2P リワーク WLCSP のリワークは、ボールグリッドアレイ(BGA)パッケー ジのリワークと同じように行います。次の手順でリワークを実施 します。 1. 2. リワーク処理中の吸湿ダメージを防ぐために基板を乾燥し ます。リワーク対象のデバイスも約 125~130°C で乾燥され る必要があります。 リワークステーションにおいて、ノズルから噴き出るホット エアにより、実装時のリフロープロファイルを再現します。 温度が鉛フリー半田の融点(約 217°C)に達したら、リワー ク処理をするデバイスを取り外すことができます。デバイ - 10/ 3. 4. 5. - スは、リワークステーションのバキュームワンドで取り出 すことができます。 デバイスを取り除いたら、残りの半田が均一に広がるよう にパッドを再調整します。 再調整されたパッドにクリーニング不要のフラックスを塗 布して、新しいデバイスを搭載します。 再現された実装リフロープロファイルによりリワークス テーションにて新しいデバイスを実装します。このとき、 パッケージが認定された最大温度を超えないように注意し てください。 AN-617 アプリケーション・ノート 出荷形態 近年の全自動実装装置は非常に高い精度で毎時数千個の部品を ピックアップし、搭載することができます。この動作を達成する ために、部品搬送システムは一定の方向に高速で部品を供給する 必要があり、マシンの要求に確実に連動していなければなりませ ん。こうした条件を満たす現在入手できる最適な梱包材はテープ &リールです。アナログ・デバイセズのテープ&リールシステム は、大部分の全自動実装装置と完全互換です。 供給方向 供給方向とは、エンドユーザがテープを引き出す方向のことです。 すべての製品の供給方向は、スプロケットホールが手前に来るよ うにリールを持った状態で反時計まわりとなります(図 10 参照)。 仕様 アナログ・デバイセズのテープ&リールの仕様は、EIA Standard 481「Taping of Surface-Mount Components for Automatic Placement」 に準拠しています。 03272-010 ESD 保護 アナログ・デバイセズのテープ&リールは、静電気放電(ESD) に対して非常に優れた保護機能を備えています。 テープ&リール材料はすべて静電拡散材です。非防湿包装のリー ルは、ESD 導電性コーティングを施した箱または導電性 ESD バッグに入れて出荷します。この保護対策を生かすために、袋の 開封は必ず ESD が管理された作業エリアで行ってください。 引き剥がし強度 図 10. 供給方向 ピン 1 の方向 デバイスは、供給方向とスプロケットホールによってピン 1 が正 しい向きになるように巻かれています。ピン 1 の向きは、スプロ ケットホールを基準に C1 から C4 の方向になります(図 11 参照)。 引き剥がし強度は 8 mm 幅のテープで 10~100 g、12 mm 以上の 幅のテープで 10~130 g です。いずれも、室温、引き剥がし速度 300 ± 10 mm/min、引き角度 175~180°という条件での試験結果で す。 DIRECTION OF FEED ROUND SPROCKET HOLES M1 C2 C4 C3 03272-011 C1 図 11. ピン 1 の向き ©2007–2012 Analog Devices, Inc. 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