LC 型に対応した通信光可視化コネクタ

LC 型に対応した通信光可視化コネクタ
Visual Connection Identifier for LC Type Connector
鈴木 香菜子*
小島 正嗣*
Kanako Suzuki
大越 幹夫*
Seiji Kojima
中谷 佳広
Yoshihiro Nakatani
西 川 貴 雄 **
*
Takahiro Sato
鈴 木 智 之 **
Takao Nishikawa
Mikio Ohkoshi
佐藤 高宏
*
Toshiyuki Suzuki
末 岡 鉄 也 **
Tetsuya Sueoka
光ファイバーの変更や廃止作業の効率化を目的として,回線の運用状態を簡単に判別でき,北米
などで主流の LC2 心型に対応した通信光可視化コネクタを開発した。特殊 GI 光ファイバーを使用
することにより,損失 0.43 dB,反射減衰量−40 dB 以下を達成した。さらに,実際に使用する
10 Gbps の通信信号を BER(Bit Error Rate:ビットエラー率)で評価し,信号劣化の無いことを
確かめた。また,LC2 心型コネクタ用の検知器も新たに開発し,通信光検知感度−22.8 dBm と実
際に通信で用いられる最低光量−20 dBm 以下で検知できることを確認した。
To address the need for efficient installation work such as removal and, MACs (Moves,
Adds and Changes) of optical fiber, we have developed new technologies for the easy
recognition of the operating status of optical telecommunication line that allows the
installation work to be completed swiftly. We have developed LC duplex optical visual
connection identifiers which are a major component in the data center in the USA. With
optimized GI optical fiber, an attenuation of 0.43 dB and return loss of less than −40 dB
are achieved. Furthermore no degradation of BER as a 10 Gbps data signal is confirmed.
Also we have developed a detector for the LC duplex optical visual connection identifier
which has excellent performance with −22.8 dBm detection sensitivity and less than the
minimum communication optical power of −20 dBm.
● Key Word:通信光可視化,LC 型コネクタ,光判別
● Production Code:VCI
● R&D Stage:Development
1. 緒 言
単に確認できる SC(Square Connector)型対応の通信光
通信分野では,高速・大容量伝送が可能な光ファイバー
型対応の通信光可視化コネクタは,両端研磨が施されたス
が主流となり,さらなる発展が期待されている。これに伴
タブフェルールにファイバーを切断する溝を設け,溝内に
い,特に,データセンターや局舎などの光通信関連設備で
屈折率整合樹脂を充填し,溝部から漏れた光を検知して通
は,光ファイバーの撤去や更新,増設などの工事が頻繁に
信状態の有無を判別するものである。この通信光可視化コ
行われるようになってきた。
ネクタを北米,東南アジアなど海外へ拡販するために,汎
このような光通信関連設備の光ファイバーを伝送する通
用のシングルモードファイバーに比べて,光を伝送するコ
信光は,可視光ではないため,目視にて確認することがで
ア径が大きいマルチモードファイバー用の,L C(Local
きない。そのため,光伝送路の運用状態が容易に把握でき
Connector)2 心型通信光可視化コネクタを開発した。L C
ず,判定に時間がかかっていた。さらに使用している光伝
フェルールに 2 種類の特性が異なるファイバーを融着し
送路の光コネクタを,誤って抜いてしまうヒューマンエ
て,融着部から通信光の一部を取り出し,受光した光を電
ラーなどの懸念もあり,光通信関連設備における未使用の
気信号に変換し,LED(Light Emission Diode)を光らせ
光ファイバーを有効に活用することができないといった問
ることで通信状態を目視にて確認する。
題があった 1),2)。
本報告では漏れ光を発生させるための光ファイバーの選
そこで,著者らは,2008 年から通信状態を目視にて簡
定,選定した光ファイバーを用いた LC 2 心型対応の通信
*
**
40
日立金属株式会社 電線材料カンパニー
NTT コミュニケーションズ株式会社
日立金属技報 Vol. 30(2014)
可視化コネクタを開発し,2011 年に製品化した 3),4)。SC
*
**
Cable Material Company, Hitachi Metals, Ltd.
NTT Communications Corporation
LC 型に対応した通信光可視化コネクタ
光可視化コネクタの損失,反射減衰量等の光学特性,通信
信号への影響,および LC 2 心型コネクタに対応した光判
(a)
LED
別器の通信感度特性について検討を行った結果について述
Circuit (module)
べる。
PD
SC stub ferrule
2. 通信光可視化コネクタと光判別器の目標性能
表 1 に開発した LC 2 心型通信光可視化コネクタと光判
別器の基本性能目標を示す。コネクタの目標性能は JIS C
Multi mode fiber (GI)
5961(光ファイバーコネクタ試験方法)に準拠した値とし
Slit (The refractive index
matching material)
た。光コネクタ内部に用いるファイバーは,マルチモード
ファイバーでコア径 50 μm,クラッド径 125 μmの GI
(b)
(Graded Index)ファイバーとした。光コネクタの接続損
LED
Circuit (module)
失は VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)
PD
光源(λ = 850 nm)使用時で 0.5 dB 以下,反射減衰量は
LC ferrule
20 dB 以上,
温度サイクル試験中の損失変動が 0.3 dB 以下,
温度範囲は−40℃∼ 85℃である。光判別器は,判別手段
は目視で確認できるように LED 等による色別判定,寸法
Multi mode fiber (GI)
は手で持ちやすく作業性に優れていること,電源電圧は
Fusion splice
3 V,受光レベルは−20 dBm ∼+10 dBm,使用温度範囲
は−10℃∼ 50℃(保存温度範囲−20℃∼ 60℃)
,さらに,
SC 型通信光可視化コネクタにも使用できることである。
表 1 LC2心型コネクタ通信光可視化コネクタと光判別器の目標性能
Table 1 Target specifications of visual connection identifier for duplex
LC type and optical distinction
開発品
通信可視化
コネクタ
目標性能
接続損失
≦0.5 dB
入射波長λ=850 n m
反射減衰量
≧40 dB
入射波長λ=850 n m
伝送特性
使用温度範囲
光判別器
≦0.3 dB
(損失変動)
コネクタ接続前と
変化なきこと
ー40∼70℃
PD hole
LC adapter
温度サイクル試験:
ー40∼85℃/10 サイクル
高温高湿試験:
85℃・85%/100h
(b)
BER 測定
Hole cover
ー
判別手段
色(LED)
ー
外径寸法
持ちやすいこと
ー
電源電圧
3V
ー
受光レベル
ー30∼+10 dBm
ー
ー10∼50℃
保存温度範囲:
−20∼60℃
使用温度範囲
(a)
備考
項目
環境試験
図 1 通信光可視化コネクタの内部構造 (a)SC 型 (b)LC 型
Fig. 1 Structure of visual connection identifiers (a) SC type
(b) LC type
LC plug
図 1 に SC 型通信光可視化コネクタと,開発した L C 型
通信光可視化コネクタの内部構造を示す。S C 型通信光可
視化コネクタは,SC 用の両端研磨が施された外径 2.5 mm
のスタブフェルールにファイバーを切断する溝を設けてい
る。溝内には屈折率整合樹脂を充填しており,溝部から漏
れた光の一部を PD(PhotoDiode)で検知して電気信号に
図 2 LC 型通信光可視化コネクタの外観構造
(a)可視化コネクタ本体 (b)光ファイバーを取り付けた状態
Fig. 2 Appearance of visual connection identifiers for LC type
(a) body (b) body with optical fiber
変換し,LED を発光させ通信光の有無を判別する。
開発した LC 型通信光可視化コネクタは,LC 用の片端
り,外径が小さいため高密度化を実現することができる。
研磨が施された外径 1.25 mm のフェルールを用いている。
また,漏れ光発生方法が,溝構造から融着構造に変わるこ
フェルール外径が小さいことから,SC 型のように溝を形
とで,高信頼性化も可能となる。LC 型通信光可視化コネ
成することが困難なため,特性が異なる 2 種類のファイ
クタの実現に向け,
融着用ファイバーの選定および融着
バー融着部から微小な漏れ光を発生させ,漏れ光の一部を
条件の検討を行った。
検知している。開発した LC 型通信光可視化コネクタは
図 2 に LC 型通信光可視化コネクタの外観構造を示す。
SC 型に比べ,接続点が 1 カ所少ないことから低損失とな
LC 2 心型コネクタ用光アダプタの構造であり,コネクタの
日立金属技報 Vol. 30(2014) 41
中央には,漏れ光の一部を検知するための PD 挿入用孔を
3. 光学特性
設け,必要な時に開閉できるようカバーを付けている。
図 3 に光判別器の外観構造を示す。通信光の一部を受
3. 1
漏れ光発生方法検討
光するための PD と判別結果を表示する LED を備えてい
コネクタ部から漏れ光を発生させるためには,低損失化
る。SC 型,LC 型いずれの通信光可視化コネクタにも対
および高密度化,そして高信頼性を実現することが課題で
応するため,PD 設置面側には,磁石で簡単に取り外し可
あった。そこで,高密度実装可能で信頼性の高い融着によ
能なアタッチメントが取り付けてある。SC 型コネクタ測
る漏れ光発生方法を検討した。通常の GI ファイバーと,
定時はアタッチメントを取り付けた状態でコネクタ側 PD
ファイバーの各種構造パラメータ(コア径,クラッド径,
孔に設置し,LC 2 心型コネクタ型測定時はアタッチメント
屈折率,屈折率分布形状など)を変更した GI ファイバー
を取り外して設置する。コネクタ側 PD 孔との位置決め機
(以下特殊 GI ファイバ−と称す)を融着し,融着部の損失
構として,SC 型コネクタの場合は PD 周辺のアタッチ
を確認した。3 種類の構造パラメータを変更した特殊 GI
メント部に 4 本の脚が設けられており,LC 2 心型コネクタ
ファイバー A,B,C を用い,融着の放電パワーや放電時間,
の場合は PD 後ろ側に 1 カ所凸部が設けられている。通信
放電距離などを変更して通常 GI ファイバーとの融着を実
光有無の判別誤作動を防ぐために,SC 型可視化コネクタ
施した。図 4 に通常 GI ファイバーと特殊 GI ファイバー
測定時にはアタッチメントを取り付け,LC 2 心型可視化
の融着部の損失測定結果を示す。SC 型通信光可視化コネ
コネクタ測定時にはアタッチメントを取り外さなければ検
クタの損失は平均 0.58 dB である。開発中の LC 2 心型通
知感度を測定できないよう,位置決め脚の数を変更し,
信光可視化コネクタの光学特性目標仕様は,接続損失 0.5
SC 型,LC 2 心型それぞれのコネクタに対応した形状とし
dB 以下(λ =850 nm,VCSEL 光源使用)であるため,融着
た。光判別器の大きさは,W27 mm × H36 mm × D32 mm
部の損失 0.3 dB である特殊ファイバー C を用いることと
とした。
決定した。光検知感度については特殊 GI ファイバー A,
B,
また,判別器後部にはボタン電池収容部があり,簡単に
C いずれを使用した場合でも,目標値−20 dBm 以上を満
電池交換が可能な形状とし,3 V 小型ボタン電池で連続使
足することを確認している。
用時間 300 時間を達成している。
Optical loss of fusion splice (dB)
1.2
Battery case
(a)
1.0
0.8
0.6
0.4
Target value 0.5 dB
or less
0.2
0
Magnet
Average loss of
SC type connector
0.58 dB
Special GI Fiber
A
Special GI Fiber
B
Special GI Fiber
C
PD
LED
4 pins for positioning
adjustment
Attachment
(removable)
図 4 融着部の損失測定結果
Fig. 4 Measurement result of optical loss of fusion splice
(b)
3. 2
接続損失・反射減衰量
図 5 に通信光可視化コネクタの接続損失,図 6 に反射
減 衰 量 測 定 結 果 を 示 す。 光 源 は, 入 射 波 長 850 nm の
VCSEL 光源を用い,接続損失の測定サンプル数は LC コ
ネクタ端末 180 サンプル,反射減衰量の測定サンプル数は
PD
40 サンプルで実施した。接続損失は最大 0 . 43 dB,平均 0.27
1 pin for positioning
adjustment
dB であり目標値である損失 0 . 5 dB 以下を満足した。コネ
クタ内部の光ファイバーの融着条件や特殊光ファイバーの
ファイバーパラメータを変更することで,さらに低損失化
図 3 光判別器の外観構造
(a)SC コネクタ測定時(b)LC コネクタ測定時
Fig. 3 Appearance of optical distinction
(a) SC connector measurement (b) LC connector measurement
42
日立金属技報 Vol. 30(2014)
が可能なことを確認している。コネクタ損失と検知感度
およびコストを考慮した設計を行った。反射減衰量はすべ
てのサンプルにおいて 40 dB 以上であることを確認した。
(a) 0.5
λ= 850 nm
N= 180
Ave. = 0.27 dB
Max. = 0.43 dB
Min. = 0.09 dB
45
40
35
30
25
20
15
5
0
0.3
−50
0.2
0.1
0
−0.2
0
0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3 0.35 0.4 0.45
0
0.5 0.55
F1
図 5 接続損失測定結果
Fig. 5 Measurement result of insertion loss
λ= 850 nm
N = 40
Ave. = 41.13 dB
Max. = 41.85 dB
Min. = 40.21 dB
12
10
8
20
F2
F3
30
F4
(b) 0.5
Insertion loss change (dB)
14
10
40
50
60
Time (h)
Insertion loss (dB)
Frequency
50
−0.1
10
F5
F6
F7
F8
温度(℃)
100
85%RH
50
0.4
0
0.3
−50
0.2
0.1
0
−0.1
−0.2
6
0
4
20
40
60
80
100
Time (h)
2
0
100
0.4
Temp. (℃)
Frequency
Insertion loss change (dB)
50
Temp. (℃)
LC 型に対応した通信光可視化コネクタ
F1
40
40.2 40.4 40.6 40.8 41 41.2 41.4 41.6 41.8
F2
F3
F4
F5
F6
F7
F8
温度(℃)
42 42.2
Return loss (dB)
図 6 反射減衰量測定結果
Fig. 6 Measurement result of return loss
図 7 環境試験結果 (a)温度サイクル試験(b)高温高湿試験
Fig. 7 Test result of environment (a) temperature cycling test
(b) high-humidity temperature test
4. 伝送特性
図 8 に 10 Gbps 伝送実験の測定を示す。10 GbE-SR10
3. 3
環境試験
準拠(IEEE802.3 ba)のトランシーバー(入射波長 850 nm)
通信光可視化コネクタの環境試験として,温度サイクル
を用い,可視化コネクタを伝送路に入れない場合と入れた
試験および高温高湿試験を実施した。
温度サイクル試験は,
場合の BER を測定した。また,光ファイバーは OM2 の
−40℃∼ 85℃/ 10 サイクル,高温高湿試験は 85℃,85%
GI ファイバーを使用し,ファイバー長 2 m,100 m の場
RH / 100 h とし,試験中の損失変動を測定した。サンプ
合について比較した。可視化コネクタのサンプル数は 8 個
ル数は LC コネクタ端末 8 サンプルで実施した。図7に結
とした。図 9 にファイバー長 2 m の時の BER 測定結果,
果を示す。温度サイクル試験および高温高湿試験いずれも
図 10 にファイバー長 100 m の時の BER 測定結果を示す。
試験中の損失変動 0.17 dB 以下と良好な結果を得た。
3. 4
光検知感度
LC 2 心型コネクタ用光アダプタを用い,通常の LC コネ
Coaxial cable
1m
(Differential)
クタと通信光可視化コネクタを接続し,光検知感度を測定
した。その際,通信は 1 心のみとし,もう 1 心は通信無し
の状態とした。なお,光源は波長 850 nm の VCSEL 光源
を用い,サンプル数は 40 個で実施した。検知感度は,目
12.5G PPG
CXP
Attenuator
Optical fiber
with VCI
CXP
12.5G ED
標値−20 dBm 以上に対して,−22.8 dBm であることを
確認した。検知感度は,使用している PD の受光サイズを
変更したり,コネクタ用アダプタの材料を光透過率の良い
ものに変更することで,さらに感度を向上することも可能
である。
PPG: Pulse Pattern Generator
ED: Error Detector
CXP: 10G be-SR10 Transceiver
図 8 10 Gbps 伝送実験測定系
Fig. 8 Measurement set up for BER of 10 Gbps
日立金属技報 Vol. 30(2014) 43
1E−5
Bit Error Rate
5
2
1E−6
5
2
1E−7
5
2
1E−8
5
2
1E−9
5
2
1E−10
5
2
1E−11
5
2
1E−12
−16
0
2
2
2
2
2
2
2
2
m Without VCI
m
m
m
m
With VCI
m
m
m
m
−15
−14
100 mm
図 11 19 インチラック用通信光可視化モジュール
Fig. 11 Module of visual connection identifier (19-inch)
−13
−12
−11
Received OMA (dBm)
6. 次世代開発品(常時監視モニタリング)
通信光可視化コネクタの次世代型として,常時監視モニ
タリングシステムの開発を行っている。図 12 に SC 型コ
図 9 BER 測定結果(ファイバー長 2 m)
Fig. 9 Measurement result of BER ( 2 m optical fiber length)
ネクタの常時監視モニタリングシステムを示す。19 イン
Bit Error Rate
チラックのパッチパネルに 12 コの SC 型通信光可視化コ
1E−5
ネクタを搭載し,各コネクタに光判別機能を持たせ,通信
5
光有無の情報をパソコンやタブレットで確認するものであ
2
1E−6
5
2
1E−7
5
2
1E−8
5
2
1E−9
5
2
1E−10
5
2
1E−11
5
2
1E−12
−16
る。通信回線の運用状態を,データセンターや光通信設備
内のメンテナンスセンター,または手持ちのタブレットな
どでいつでもどこにいても,リアルタイムで監視すること
ができる。通信回線の常時監視が可能になることで,作業
0 m Without VCI
100 m
100 m
100 m
100 m
With VCI
100 m
100 m
100 m
100 m
−15
−14
の効率化を図り,故障エリアをすぐに特定してダウンタイ
ムの時間を大幅に短縮することができ,未使用回線への切
り替えも早急に対応可能となる。
現在,SC コネクタの多心型
(24 心∼ 48 心)
,2 心,単心
LC コネクタに対応した常時監視モニタリングシステムに
−13
−12
−11
ついても検討を開始している。
Received OMA (dBm)
(a)
(b)
図 10 BER 測定結果(ファイバー長 100 m)
Fig. 10 Measurement result of BER (100 m optical fiber length)
この結果から,ファイバー長によらず,可視化コネクタを
伝送路に導入しても伝送特性に劣化が無いことが分かる。
5. 通信光可視化モジュール
開発した LC 2 心型通信光可視化コネクタを 6 個(12 心)
(c)
用い,片端に 12 心 MPO コネクタを取り付け通信光可視
化モジュールを作製した。図 11 に 19 インチラック搭載の
LC 2 心型通信光可視化モジュールを示す。データセンター
や光通信設備で一般的に使用されている 19 インチのラッ
クに形状を合わせ,4 個の LC 2 心型通信光可視化モジュー
ル(48 心)を引き出し型トレイに搭載した。19 インチラッ
50 mm
クの 1 ユニットに引き出しトレイを 2 段組み込める構成と
しており,最大 96 心の LC 2 心型コネクタを接続すること
ができる。通信光有無を確認する際は,トレイを引き出し
て確認したいコネクタに光判別器を設置する。引き出し型
にすることで,狭いスペースにより多くのコネクタを収納
することができ,高密度化・小型化を実現している。
44
日立金属技報 Vol. 30(2014)
図 12 SC 型コネクタ常時監視モニタリングシステム
(a)タブレットによる確認(b)パソコンによる確認
(c)19 インチラックパッチパネル
Fig. 12 Monitoring system for SC type connector
(a) tablet (b) mobile PC (c) 19-inch patch panel
LC 型に対応した通信光可視化コネクタ
7. 結 言
鈴木 香菜子
Kanako Suzuki
マルチモードファイバー(GI)に対応した LC 2 心型通信
光可視化コネクタと光判別器を開発し以下の結果を得た。
日立金属株式会社
電線材料カンパニー
電線事業部
(1)入射波長 850 nm の VCSEL 光源使用時で,接続損失
0.43 dB 以下,反射減衰量 40 dB 以上を満足した。
(2)温度サイクル試験,高温高湿試験では損失変動 0.17
dB 以下であることを確認した。
(3)光判別器は検知感度−22.8 dBm 以上となり,使用温
度範囲内で問題無く動作し,連続動作 300 時間を達成
小島 正嗣
Seiji Kojima
日立金属株式会社
電線材料カンパニー
電線事業部
することを確認した。また,SC 型コネクタ,LC 2 心型
コネクタいずれにも対応できる構造を実現した。
(4)伝送特性の確認試験として 10 Gbps の伝送実験を実
施し,BER を測定した結果,通信光可視化コネクタ導
入前後で,伝送特性に劣化が無いことを確認した。
大越 幹夫
Mikio Ohkoshi
日立金属株式会社
電線材料カンパニー
電線事業部
(5)19 インチラックに搭載できる通信光可視化モジュー
ルを作製し,高密度・小型化を可能とした。
中谷 佳広
本開発品は,光伝送路の接続点で視覚的に回線状況を判
Yoshihiro Nakatani
別できるため,今後ますます拡充する光ファイバー通信網
日立金属株式会社
の見える化や,設備の有効活用,保守業務の効率化への貢
電線事業部
電線材料カンパニー
献が期待できる。
引用文献
佐藤 高宏
Takahiro Sato
日立金属株式会社
1) M.Waki, et al.: Study on improving workability with
fiber distribution management system by using visible
light communication, IEICE General Conference, (2010),
B-10-14.
2) T. Kubo , et a l . : Temperat u re I ndependent I n - L i ne
Monitoring Technique by Using 1.3um-Band Chirped
QPM-LM Device, IEICE General Conference, (2010),
B-10-27.
3) Sueoka, et al.: Development and Application of Visual
Connection Identifier for Optical Line, IWCS, 59 (2010),
p.48.
4) Nakatani, et al.: Development of Optical Visual Connection
電線材料カンパニー
電線事業部
西川 貴雄
Takao Nishikawa
NTT コミュニケーションズ株式会社
鈴木 智之
Toshiyuki Suzuki
NTT コミュニケーションズ株式会社
Identifier, IWCS, 59 (2010), p.369.
末岡 鉄也
Tetsuya Sueoka
NTT コミュニケーションズ株式会社
日立金属技報 Vol. 30(2014) 45