DN341 16ビットADCによる簡素化された電流測定

16ビットADCによる簡素化された電流測定
− デザインノート341
Mark Thoren
はじめに
LTC®2433-1はDC測定用の高性能16ビット・デルタシグ
マADCです。入力のノイズフロアが1.45μVRMSでリファ
レンスの範囲が100mV∼VCCなので、入力の分解能と範囲
を多様なアプリケーション向けに最適化することができま
す。柔軟なSPIインタフェースをセルフクロックに設定す
ることができるので、ADCのリファレンスをデータ収集シ
ステムとは異なる電位にしなければならないアプリケー
ションで、デジタル信号の分離やレベルシフトが簡素化さ
れます。
データの転送
フルスケール5.4Aの−48Vテレコム用電源の電流モニタを
図1aに示します。LTC2433-1のシリアル・インタフェー
スは内部シリアル・クロック、連続変換モードに設定され
ています。このモードはチップ・セレクトを”L ”に接続
し、SCKを電源立上げ時に“H”に引き上げることによって
選択されます。このモードでは、LTC2433-1は1秒当たり
6.8サンプルを連続的に変換し、そのデータを17.5kHz
±2%
(内部発振器の許容誤差)
のシリアル・データ・レート
で出力します。
タ・ビットを引き続き出力します。 このように、RS232
などの標準的非同期通信方式の場合のように、EOCビット
を開始ビットとして使うことができます。残念なことに、
内部発振器の許容誤差のため、19ビット全てを非同期で受
信するのは危険です。1つの解決策は水晶でコントロール
されたクロック信号をFOピンに与えることですが、もっと
簡単(かつ安価)な方法があります。
S D O 信号とS C K 信号をXO R 結合すると、マンチェス
ター・エンコーディングに似た、クロック情報が埋め込ま
れたシリアル・データ信号が発生し、これはマイクロコン
トローラまたはFPGAを使って簡単にデコードすることが
できます。データのフォーマットを図2に示します。
変換実行中、SCKとSDOは両方とも
“H”
なので、XOR出力
は
“L”
になります。変換終了時、SDOとSCKの両方が
“L”
に
なるためグリッチが生じることがありますが、SDOとSCK
のエッジは内部ゲートの遅延分離れているだけなので、グ
リッチは大きくても10nsです。受信側のデバイスは、グ
リッチではなく開始ビットであることを確認するため、少
なくとも20nsの“H”レベルを待つべきです。(示されてい
る光カプラ回路は500nsより狭いパルスには応答しません
次の立上りエッジ
LTC2433-1のシリアル・データのフォーマットは非同期 ので、グリッチは問題ではありません。)
はDUMMYビットの中央で、これはSIGNビットのサンプリ
の受信に適しています。変換実行中、SDOは”H”になりま
す。変換終了時にSDOは2クロック・サイクルのあいだ
“L” ングを3/4ビット後に同期させます。
、LTC、LTはリニアテクノロジー社の登録商標です。
になり(EOCビットとDUMMYビット)、次に残りのデー
+
V
12V TO 100V
5V
a
13k
最小電源電圧で3mA、最大電源
SELECT R FOR 3mA AT MINIMUM SUPPLY
電圧で10mAの最大電流になるよ
VOLTAGE, 10mA MAX CURRENT AT MAXIMUM
うにRを選択する
SUPPLY VOLTAGE
5V
0.1µF LT1029
4.7µF
48V
0.010Ω
45.3k
1
VREF
108mV
1k
2
3
–48V
10k
LTC2433
VCC
REF+
REF–
FO
SCK
SDO
4
IN+
CS
5
IN–
GND
9
VCC
8
7
6N139
1.54k 2
GND
6
3
FULL SCALE = 5.4A
–48V
(1c)
BAT54S
2×
a
LT1790-5
590Ω
DATA
5V
(INVERTED) 100kHz
DRIVE
1µF
5
4.7µF
b
DN341 F01
–48V
図1a.−48V電流モニタ
07/04/341
1µF
8
7
6
V–
–7V TO –100V
(1b)
VCC
10
a
4.7µF
b
MPSA42
1.05k
b
+
–
MPSA92
4.1mA
a
LOAD
1.05k
4.7µF
b
MIDCOM
50480
(1d)
SCK
SDO
EOC
DMY
DMY
SCK ⊗ SDO
DMY
POTENTIAL START
発生する可能性の
10ns-20ns BIT
ある10ns∼20ns
GLITCH
のグリッチ
SIGN
SIGN
SIGN
D4
D15
D15
SYNC
ON MIDBIT
ミッドビット
TRANSISTION
遷移点で同期
D15
D14
3/4 BIT
PERIOD
D1
D14
D2
D1
D0
D1
D0
D0
次の変換
NEXT CONVERSION
READ NEXT
次のビットを
BIT
読み取る
DN341 F02
図2.タイミング図
SIGNをサンプリングした後、次の遷移はさらに3/4ビット
遅れて始まり、D15のサンプリングを同期させます。すべ
てのデータ・ビットが受信されるまでこのプロシージャが
続きます。
このデータ受信の手法では、光カプラの立上り時間と立下
り時間の差、受信デバイスのタイミング誤差、LTC24331の内蔵発振器の2%の誤差を含む−50%∼33%の総タイミ
ング誤差を許容します。
データ受信の疑似コード
以下の疑似コードを適当なマイクロコントローラに移植す
るか、またはこれらの疑似コードを使ってプログラマブ
ル・ロジック・デバイスでステートマシンを設計すること
ができます。
1. 20nsを超すデータの“H”状態を待つ。
2.“L”を待つ。これは開始ビットの終了点です。
3. 遷移点を待つ(ダミービットの中点)
4. クロック周期の3/4だけ待つ
5. SIGNをサンプリングし、遷移点を待つ
6. クロック周期の3/4だけ待つ
7. D15をサンプリングし、遷移点を待つ
8. クロック周期の3/4だけ待つ
9. D14をサンプリングし、遷移点を待つ
10.すべてのビットが読み取られるまで継続する
この回路は20MHzで動作するPICマイクロコントローラを
使ってテストされました。十分なタイミング・マージンが
あるか徹底してコードをテストします。また、データの読
み取りプロシージャが割り込みによって阻止されると生じ
る可能性のあるエッジの欠落の場合のタイムアウトがコー
ドに備わっていることが、良いプログラミングでは不可欠
です。これは、19ビットをすべて出力するのに要する理論
上の時間の倍以上読み出しに時間がかかると読み出しを中
止することにより、簡単に実現できます。
電源とアナログ入力
図1aの電源とリファレンスはLT®1029高精度シャント・
リファレンスから得られます。LT1029の電流が常に少な
くとも1mAになるように直列抵抗を選択します。変換実行
中、LTC2433-1には200μA流れます。データ出力フェー
ズでは、ADCの電流は4μAに低下し、6N139光カプラには
50%のデューティ・サイクルで2mA流れます。6N139はこ
のアプリケーションの低入力電流と中程度の速度の要件を
満たします。変換中はLEDをオフしておくため、データを
反転する必要があります。
5Vリファレンスは電流測定のために108mVまで分割さ
れ、差動入力範囲は±54mVとなり、4mVのオーバーレン
ジ能力をもって50mVの標準出力電流シャントに適合しま
す。電圧をモニタするアプリケーションでは、5Vリファレ
ンスを直接使うことができ、その結果定まる±2.5Vの入力
範囲に適合するように入力を分割することができます。
この回路は多様なアプリケーションに適応させることがで
きます。図1bは100Vまでの上側の電流検出に適していま
す(電流源トランジスタの電力消費によって制限されま
す)。図1cは負電源の下側検出の場合です。図1dは電力と
リファレンス電圧の両方に小型のテレコム・トランスと
LT1790-5直列リファレンスを使った完全な絶縁型電源で
す。
まとめ
LTC2433-1は困難なDCモニタの問題に対する簡単でコス
ト効率の高いソリューションです。この高精度ADCを「源
流」
に配置することにより、複雑
(かつ不正確)
なアナログの
レベル・シフトを従来は必要としたアプリケーションを簡
素化することができます。必要なものは、LTC2433-1の
提供する柔軟なSPIインタフェースに加えて、差動入力と
リファレンスの独創的ですが簡単な応用だけです。
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