自動車用DDR電源の スタンバイ電流を極力減らすには

2013 年 7 月
第 23 期第 2 号
高効率のスイッチングと低ノイズの
自動車用 DDR 電源の
スタンバイ電流を極力減らすには
リニア・レギュレーションを兼ね備えた
David Gilbert
こ の 号 の 内 容
電源の優先順位の適正化 8
µModule DC/DC コンバータ 18
帯域幅が 30MHz を超え、SNR が
64dB で SFDR が 80dB の 325MHz
IF サンプリング・システムの
リファレンス・クロック分配 26
画像用のほぼノイズのない
A/D コンバータ・ドライバ 31
ノート PC やスマートフォンの電源を立ち上げるときには待つことができる人で
も、車のエンジンをかけるときには待ちたくない方が多いようです。車の場合、
ナビゲーション・システムやインフォテイメント・システムなどの機器をすぐに
使いたいユーザが多いため、自動車メーカはなるべく早く起動できるように設
計するよう努力しています。そのための方策の 1 つが、イグニション・スイッチ
がオフの状態でも DRAM(ダイナミック・メモリ)を常に動作状態にしておくこと
です。
自動車に使われている DDR3 メモリは 1.5V 電源で動作し、そのピーク負荷電流は 2A を超えています。このため、
効率の高い DC/DC コンバータを用いて熱の発生を最小限に抑えることが望ましいです。これらのアプリケーショ
ンでは、自動車が走行していないときのバッテリの消費を抑えるため、軽負荷時の効率も同様に重要です。DDR
メモリはスタンバイ時に 1.5V 電源から 1mA∼10mA を消費するこ
とがありますが、長期間の駐車中にバッテリから 10mA が流れるこ
とは許されません。
この制約により、リニア・レギュレータは使用できません。入力電流
と出力電流が等しいからです。これに対して、降圧スイッチング・レ
ギュレータに流れる入力電流は降圧比に比例して負荷電流より少な
くなります。
IIN =
1 VOUT • IOUT
•
VIN
η
ここで、h は効率(0∼1)です。
LT®8610AB 同期整流式降圧レギュレータが 1mA 負荷のとき約
83% の効率を達成している様子を図 1 に示します。バッテリ電圧が
12V で 1.5V 出力の負荷電流が 1mA の場合、入力電流の計算値は
わずか 151µA です。
LT8610 は自動車用機器に常時オンの電源を供給します。
www.linear-tech.co.jp
(4 ページへ続く)
リニアテクノロジーの
ニュース
この号の内容
COVER STORY
自動車用 DDR 電源のスタンバイ電流を極力減ら
すには
David Gilbert
書籍『Analog Circuit Design』が大ヒット
1
ジーの『Analog Circuit Design, Volume 2』が好評です。業界の権威である Bob Dobkin
DESIGN FEATURES
相対的な電圧に関わらない任意の優先順位での
電源の選定:マイクロプロセッサ不要
Sam Tran
と故 Jim Williams によって編集された本書は、シリーズの第 2 巻であり、アナログ回路設計
技術について幅広く解説しています。
『Analog Circuit Design, Volume 2, Immersion in
8
0V∼80V の電源を直接モニタする 3mm×3mm
2
QFN デバイス:I C インタフェース、ピーク値の
トラッキングを特長とし、任意の電源で動作
CY Lai
高効率スイッチング電源とローノイズ・リニア・
レギュレータを µModule パッケージに統合
David Ng
低電圧マイクロプロセッサ、ASIC、FPGA を
中間バス電圧サージから保護する降圧 µModule®
レギュレータ
Willie Chan、Jason Sekanina
Gabino Alonso
Michel Azarian
画像入力用のほぼノイズのない A/D コンバータ・
ドライバ
Derek Redmayne
18 ビット A/D コンバータ用の低消費電力、
DC 高精度ドライバ
が満載です。第 2 巻の各章には、単なるアプリケーション・ノートや参考回路だけではなく、
堅牢な設計を実際に行うために必要とされる問題解決、意思決定、思考過程への洞察が含ま
れています。だから私はこの本が好きなのです。著者である Bob Dobkinと故 Jim Williams
18
(その他に Carl Nelson と Bob Widlar の研究および著作あり)は、輝かしい経歴と豊かな
経験の持ち主で、それを読者に伝えています。この本は、すべての設計者の書棚に Volume I
と並べておく価値のある本です。」
20
英国の『Electronics Weekly』の最近の記事では、
「本書はリニア・アナログ電子工学の最も
精妙なところを深く掘り下げる本であり、読者に想像力なく、ただ参考回路をコピーしたいだ
けの場合や、読者が既に A 級のアナログ・グルでない限り、すべてのページから何かを学ぶ
ことができるでしょう。」と論評されていました。
24
4 月にカリフォルニア州サンノゼで開催された Design West Show で、Bob Dobkin はアナロ
グ設計の技術について論じ、技術者からの質問を受け、
『Analog Circuit Design』書籍シリー
ズの両方の巻の数冊にサインをしました。本と並んで展示されていたのは、 Jim Williams の
26
31
Guy Hoover
36
back page circuits
40
2 | 2013年7月: LT Journal of Analog Innovation
得ています。EDN は、現在、本書の各章の抜粋を同社の Web サイト上に掲載しています。
ています。
「この本は第 1 巻の優れた続巻であり、有益なアプリケーション・ノートや参考回路
13
帯域幅が 30MHz を超え、SNR が 64dB で
SFDR が 80dB の 325MHz IF サンプリング・
システムのリファレンス・クロック分配
the Black Art of Analog Design』は、エレクトロニクス分野の各種雑誌から、高い評価を
EDN Analog and Power 部門の編集者である Steve Taranovich は、次のようにコメントし
DESIGN IDEAS
LTspice IV の最新情報
Elsevier Science & Technology Books 社の Newnes から 1 月に出版されたリニアテクノロ
斬新な電子工学立体作品の写真でした。これらの作品は、Jim が電子機器のフリーマーケット
Design West の会場で Bob
Dobkin が『Analog Circuit
Design, Volume 2 』にサイン
リニアテクノロジーのニュース
に頻繁に出かけて個人的に探し回り、見つけた
電子機器を労を惜しまず組み立てたものです。
Jim の立体作品は、それぞれが芸術品であるだ
けでなく、実用的な電子計器であり、温度、大気
圧などの自然現象の正確な測定値を示します。
書 籍 へ のサイン 中、 Bob Dobkin はアナログ
回路設計の課題と充足感について述べました。
Elsevier 社から出版されたリニアテクノロジーの
書籍シリーズ『Analog Circuit Design』。
Volume 1 は Elsevier 社の昨年の技術書籍
部門でベストセラーとなり、1 月に発行された
Volume 2 は好調な滑り出しを見せています。
以下は、Bob Dobkin による『Analog Circuit
Design, Volume 2』の前書きからの抜粋です。
「アナログ設計はやりがいがあります。入力から
出力までに多くの道筋があり、その間の回路に
レイアウト、および検査の重要な側面に焦点を
EE Times China による ACE Award:Best Data
ます。アナログ設計は言語の学習に似ています。
当てています。私たちの願いは、これらのアプリ
Conversion Product(最優秀データ変換製品)部
初めて言語を習うとき、人は単語帳から始め、新
ケーション・ノートの優れた書き手が、アナログ
門、LTC2389-18̶LTC2389-18 は、 市 販 さ
しい単語を見つけると 1 つずつ調べることでそ
設計の「魔術」に光をあてることです。
れている最高速の 18 ビット、ノー・レイテンシ
よってまったく異なる結果になる可能性があり
の言語の文章を分析します。同様に、アナログ
設計では、回路の基礎と同様にさまざまなデバ
イスの機能について学びます。ノード方程式を
書き、個々の回路を検討することにより、各回路
の動作を調べることができます。」
「アナログ回路設計では、最終的な回路を実現
するために、既に身に付けた基本回路構成を使
うことになります。つまり、差動アンプ、トランジ
スタ、FET、抵抗、そして以前に研究した回路で
す。新しく習った言語で詩を書くまでに大変な年
月がかかるのと同様に、芸術的なアナログ回路
を設計するにも時間が掛かります。」
「現在のシステム・マニュアルに回路設計が載る
ことはまれです。マニュアルに記載されているの
は、ブロック図とさまざまなブロックに接続する
何千ものリード線が書かれた結線回路図です。
では、人々はどのようなアナログ回路設計を目
指すのでしょうか ? あなたがもし初心者であって、
これまでに経験のない問題にぶつかった場合に
役に立つ参考資料を見つけることは難しいので
す。できることであれば、これらの本が何らかの
答えを示すだけでなく、再現性のある回路を設
計し、それをラボで試験する方法を見出すため
の役に立つことを願っています」
「現代は、かつてないほどアナログ設計の需要
が高まっています。アナログ設計は、今や高度
なアナログ信号処理機能を持つ IC とトランジス
タの組み合わせです。第 2 巻では、回路設計、
著者のビデオや注文案内など、本書の詳細につ
い て は、 www.linear-tech.co.jp/designtools/
acd_book.php にアクセスしてください。
SAR A/D コンバータで、他の追随を許さない
99.8dB の SNR(2.5Msps)を備えています。こ
のデバイスは精度が高いので、医療用画像処
理、高速データ収集、科学計測、産業用プロセ
ス制御、自動テスト装置、レーダー、ソナー、お
リニアテクノロジー、数々の賞を受賞
リニアテクノロジーのいくつかの製品は、最近、
業界の重要なアワードを受賞しました。
よび半導体製造装置のアプリケーションに最適
です。
EE Times & EDN による ACE Award:Best Power
会議およびイベント
Device(最優秀パワー・デバイス)部門、LTC6804 バッ
TECHNO-FRONTIIER 2013、電源システム展、会
テリ・スタック・モニタ̶LTC®6804 は、ハイブリッ
場:東京ビッグサイト、日程:7 月 17 日∼19 日、小間
ド車、電気自動車、およびその他の高電圧積層
番号 1F301̶リニアテクノロジーは、パワーシス
バッテリ・システム向けの高電圧バッテリ・モニ
テム・マネージメント、バッテリ・マネージメン
タです。LTC6804 は、電圧が最大 4.2V で直列
ト・システム、ワイヤレス・センサ・ネットワーク
に接続されたバッテリ・セルを最大 12 個まで 16
の各分野の製品を展示して、高性能アナログ・
ビットの分解能および 0.04% より優れた精度で
ソリューションを紹介します。詳細については、
測定できます。
www.linear-tech.jp/tf2013/ をご覧ください。
EE Times China による ACE Award:Best Power
The Battery Show 2013、 会 場:Suburban
Management Product(最優秀パワー・マネージメ
Collection Showcase、開催地:ミシガン州ノバイ、
ント製 品 )部 門、 LT8610/LT8611̶LT8610 は、
日程:9 月 17 日∼19 日、小間番号 E1011̶リニア
2.5A、42V 入力対応の同期整流式降圧スイッチ
テクノロジーのバッテリ・マネージメント・シス
ング ・レギュレータです。同期整流動作により、
テム製品群を紹介します。9 月 19 日(木)午後
最大 96% の効率を実現しつつ、Burst Mode
®
12:05 より、Sam Nork が「Active balancing
動作技術により、無負荷のスタンバイ状態では
solutions for series-connected battery packs
2.5µA 以下の静止電流を維持します。このデバ
(直列接続バッテリ・パックのアクティブ・バラ
イスは超低静止電流なので、自動車システムま
ンス調整ソリューション)」について発表します。
たは産業用システムなど、常時オン動作と最適
詳細については、www.thebatteryshow.com
なバッテリ寿命が要求されるアプリケーションに
をご覧ください。n
最適です。
2013年7月: LT Journal of Analog Innovation | 3
LT8610A および LT8610AB は、部品点数が少なく、最小入力電圧が低く、
低静止電流で、広い負荷範囲で高い効率を備えています。これらの特長
により、 LT8610A および LT8610AB は、自動車アプリケーションで DDR
メモリに予備電源を供給する用途に最適です。
(LT8610A/AB、1 ページからの続き)
波数を減らして Burst Mode® 動作に移行する
100
車載バッテリから 1.5V DDR メモリへの
直接の DC/DC 変換
EFFICIENCY (%)
LT8610A および LT8610AB は、自動車システ
ム専用に設計された、同期整流式モノリシック
降圧レギュレータです。
これらのデバイスは3.5A
を供給する一方で、消費する静止電流はわず
か 2.5µA です。これらのデバイスを用いた回路
95
ことにより、効率を維持します。高速トランジェン
90
ト応答は、負荷が非常に少ないときも維持され
85
ます。この機能と非常に低い静止電流(2.5µA)
80
を兼ね備えているので、負荷が数 µA の場合で
75
も、LT8610Aと LT8610AB は静止電流がゼロ
70
を設計するのは簡単です。他の半導体を用いる
60
必要はありません。これらのデバイスは安価な
55
セラミック・コンデンサを取り付ければ動作しま
50
す。また、MSOP パッケージのリードは半田付け
のリニア・レギュレータより効率的です。低周波
65
動作を避ける必要があるシステムでは、ロジック
H の信号またはクロック信号を SYNC ピンに
入力すれば、 Burst Mode 動作をオフにするこ
1
0.1
10
100
ILOAD (mA)
1k
10k
VIN = 12V
VOUT = 1.5V
RT = 93.1k (475kHz)
L = COILCRAFT XAL6030-332ME 3.3µH
と検査が容易です。最小オン時間が標準で 30ns
(保証最大値:45ns)なので、スイッチング周
波数が高く降圧比の大きな小型降圧レギュレー
図 1.LT8610AB の効率と負荷
タを設計できます。1.5V 出力で 3.5A を供給す
とができます。
LT8610Aと LT8610AB の違いは、LT8610AB
の方が軽負荷時の効率が高いことです。これは、
Burst Mode 時の電流制限値を大きくし、スイッ
チ・サイクルごとにより多くのエネルギーを供給
し、所定の負荷でのスイッチング周波数を低くす
るアプリケーションを図 2 に示します。効率を最
は負荷 1A で標準 200mV なので、コールドクラ
ることで実現しています。MOSFET のオンとオフ
周波数は 475kHz です。
ンク時にも出力はレギュレーション状態に維持
を切り替えるには一定量のエネルギーが必要な
されます。最小入力電圧の標準値を図 3 に示し
両デバイスとも、自動車環境に対する優れたフォ
ので、スイッチング周波数が低くなるとゲート充
ます。
電損失が減少し、効率が高くなります。
適化し、AM 無線帯域より低く保つため、動作
ルト耐性を備えています。42V の最大入力電圧
低リップルの Burst Mode 動作および
設計と高速電流コンパレータにより、デバイス
最小静止電流によるバッテリの節約
3.6
は出力短絡時に保護されます。最小入力電圧は
LT8610A および LT8610AB は、 全負荷範囲
3.4
ワーストケースでも 3.4V、最大デューティ・サイ
にわたって出力電圧リップルを最小限に抑える
3.2
クルは 99% を超えており、ドロップアウト電圧
よう設計されています。軽負荷時には、動作周
VIN
12V
図 2.この LT8610A または LT8610AB
4.7µF
VIN
BST
EN/UV
LT8610A/
PG
SW
LT8610AB
BIAS
SYNC
10nF
降圧コンバータ回路は、自動車用バッテ
1µF
リで使用可能であり、3.5A 負荷で 1.5V
INTVCC
RT
を出力します。低静止電流と同期整流に
より、全ての負荷範囲で高い効率が得ら
93.1k
れます。
fSW = 475kHz
4 | 2013年7月: LT Journal of Analog Innovation
FB
TR/SS
GND
0.1µF
3.3µH
549k
4.7pF
1M
INPUT VOLTAGE (V)
はロード・ダンプに対応します。堅牢なスイッチ
3.0
2.8
2.6
2.4
VOUT
1.5V
47µF 3.5A
×3
2.2
2.0
–55 –25
95
65
35
TEMPERATURE (°C)
5
125
155
図 3.コールドクランク時または起動 / 停止時にメモリを動作状
態に維持。LT8610A および LT8610AB は、25℃では標準の
最小入力電圧である 2.9V まで動作し、全温度範囲での保証最
大値は 3.4V です。
設計特集
LT8610A および LT8610AB は、全負荷範囲にわたって出力電圧リップルを
最小限に抑えるよう設計されています。軽負荷時には、動作周波数を減らして
Burst Mode 動作に移行することにより、効率を維持します。高速トランジェン
ト応答は、負荷が非常に低いときにも維持されます。
EFFICIENCY (%)
90
OUTPUT VOLTAGE RIPPLE (mVP–P)
95
LT8610AB
85
80
LT8610A
75
70
65
60
55
50
1
0.1
10
100
ILOAD (mA)
1k
10k
70
70
60
60
50
40
30
LT8610AB
20
10
0
VIN = 12V
VOUT = 1.5V
RT = 93.1k (475kHz)
L = COILCRAFT XAL6030-332ME 3.3µH
LT8610A
2
1
3
NUMBER OF 1210 47µF OUTPUT CAPACITORS
VIN = 12V
VOUT = 1.5V
RT = 93.1k (475kHz)
L = COILCRAFT XAL6030-332ME 3.3µH
(a)
図 4.LT8610AB の Burst Mode 時の電流制限値を増やすと、
軽負荷時の効率が LT8610A と比較して大幅に向上します。 OUTPUT VOLTAGE RIPPLE (mVP–P)
100
50
40
30
20
LT8610AB
10
0
LT8610A
2
1
3
NUMBER OF 1210 47µF OUTPUT CAPACITORS
VIN = 12V
VOUT = 1.5V
RT = 18.2k (2MHz)
L = COILCRAFT XAL4020-102ME 1µH
(b)
図 5.出力電圧リップルと 1210 サイズの 47µF 出力コンデンサの数。2 つのインダクタ値の場合で、負荷は 10mA。
(a)図 2 の 475kHz アプリケーションでのリップル。
(b)図 6 の 2MHz アプリケーションでのリップル。
LT8610A と LT8610AB の 効 率 の 差を 図 4 に
10mA 負荷時に 2 つのインダクタ値について、
からです。軽負荷時の効率を高くすることが最も
示 しま す。1mA∼100mA の 負 荷 範 囲 で は、
LT8610A と LT8610AB の出力リップルを出力
重要である場合は、データシートで推奨されて
LT8610AB は LT8610A と比較して 10% 以上
容量の関数として比較しています。
効率が高くなっています。Burst Mode 時の電
流制限値を増やすと、各スイッチ・サイクルで供
給されるエネルギーが増えるという相反関係が
あるので、出力電圧リップルを低く保つには出
力容量を大きくすることが必要です。図 5 では、
電流制限のほかに、インダクタ値をどう選ぶか
は Burst Mode 動作での効率とスイッチング周
波数に影響します。これは、電流制限値が一定
の場合、値の大きなインダクタの方が値の小さ
なインダクタより多くのエネルギーを蓄積できる
いる初期値より高い値までインダクタ値を増や
してもかまいません。
高速化によるソリューションの小型化
大半の自動車システムでは 9V∼16V が標準的
な入力電圧なので、アプリケーション回路は通
常この範囲に合わせて最適化されます。図 2 の
475kHz アプリケーションは、3.5V∼42V の全
VIN
12V
VIN
4.7µF
BST
EN/UV
LT8610A/
PG
SW
LT8610AB
BIAS
SYNC
10nF
FB
TR/SS
1µF
INTVCC
RT
18.2k
fSW = 2MHz
GND
入力範囲にわたって目的の周波数で動作しま
0.1µF
1µH
549k
す。ただし、通常の動作電圧を 16V(トランジェ
VOUT
1.5V
47µF 3.5A
×3
ントは 42V)に制限すると、動作周波数を高くし
てインダクタの値とサイズを小さくすることがで
きます。ワーストケースの最小オン時間である
45ns では、図 6 に示すように、LT8610A およ
び LT8610AB を 2MHz に設定できます。
4.7pF
1M
図 6.図 2 と同様の 12V 入力 /1.5V 出力のアプリケーションで
すが、インダクタの値およびサイズを下げるために LT8610A お
よび LT8610AB の動作周波数を 2MHz に高めています。
2013年7月: LT Journal of Analog Innovation | 5
BIAS ピンによる効率の最適化
100
100
95
95
90
LT8610A および LT8610AB は、特に自動車ア
90
プリケーションに合わせて最適化された 2 つの
COILCRAFT
XAL5030-222ME 2.2µH
85
EFFICIENCY (%)
EFFICIENCY (%)
重要な機能は、この内部レギュレータが VIN ピンと BIAS ピンのいずれからも電流を流すことが
できることです。BIAS ピンに 3.1V 以上の電圧を接続すると、ゲート駆動電流は BIAS ピンから
流れます。BIAS ピンの電圧が VIN ピンの電圧より低い場合、内部リニア・レギュレータはより
低い電圧の電源を使用して効率的に動作するので、全体的な効率が向上します。
80
75
COILCRAFT
XAL4020-102ME 1µH
70
65
85
65
55
55
1
10
100
ILOAD (mA)
1k
50
10k
LT8610AB
VIN = 12V
VOUT = 1.5V
RT = 18.2k (2MHz)
に導通させることが可能です。ゲート駆動電源
COILCRAFT
XAL4020-102ME 1µH
70
60
0.1
ゲート駆動回路は 3V 未満の電圧で FET を完全
75
60
50
内蔵 N チャネル MOSFET を使用します。特に、
80
を発生するため、 LT8610A/AB にはリニア電
COILCRAFT
XAL5030-222ME 2.2µH
圧レギュレータが内蔵されており、その出力が
INTVCC ピンになっています(INTVCC ピンに
は外部回路による負荷はかけないでください)。
0.1
1
10
100
ILOAD (mA)
1k
10k
重要な機能は、この内部レギュレータが VIN ピ
LT8610A
VIN = 12V
VOUT = 1.5V
RT = 18.2k (2MHz)
ンと BIAS ピンのいずれからも電流を流すことが
できることです。BIAS ピンを開放状態のままに
した場合、ゲート駆動電流は VIN ピンから流れ
100
100
95
95
90
90
BIAS = 3.3V
GATE DRIVE DRAWN FROM
85% EFFICIENT SUPPLY
85
80
75
EFFICIENCY (%)
EFFICIENCY (%)
図 7.LT8610A および LT8610AB の 2MHz での効率と負荷、2 種類のインダクタ値の場合
BIAS = 0V
GATE DRIVE DRAWN FROM VIN
70
65
1k
10k
LT8610AB
VIN = 12V
VOUT = 1.5V
RT = 18.2k (2MHz)
L = COILCRAFT XAL4020-102ME 1µH
電圧の電源を使用して効率的に動作するので、
図 1、4 および 7 の効率データは BIAS ピンを開
放にして測定しました。結論として、 1.5V 出力
65
50
全体的な効率が向上します。
BIAS = 3.3V
GATE DRIVE DRAWN FROM
85% EFFICIENT SUPPLY
70
55
10
100
ILOAD (mA)
低い場合、内部リニア・レギュレータはより低い
75
55
1
れます。BIAS ピンの電圧が VIN ピンの電圧より
80
60
0.1
接続すると、ゲート駆動電流は BIAS ピンから流
85
60
50
ます。ただし、 BIAS ピンに 3.1V 以上の電圧を
が唯一の通電状態レールである場合は、BIAS
BIAS = 0V
GATE DRIVE DRAWN FROM VIN
ピンの適切な接続先はないと考えられます。た
だし、3.3V または 5V の電源がある場合は、た
0.1
1
10
100
ILOAD (mA)
1k
10k
LT8610A
VIN = 12V
VOUT = 1.5V
RT = 18.2k (2MHz)
L = COILCRAFT XAL4020-102ME 1µH
図 8.BIAS ピンを 3.3V の外部電源に接続すると、効率を向上できます。
(外部電源の効率は 85% と仮定しており、ここに示す全効
率の要素として考慮されています。)
とえそれがスタンバイ状態やイグニション・ス
イッチがオフで使用できない場合であっても
BIAS ピン に 接 続してください。3.3V 電 源 を
BIAS ピンに接続した場合と接続しない場合の
効率を図 8 に示します。全体の効率を計算する
場合、 3.3V レールから供給された電力を計算
に組み入れ、その電力は 85% の効率で発生し
たと仮定しました。
BIAS ピンに外部から電源を供給する利点は、
入力電圧が 16V より高くなった場合、スイッチン
し、RT の抵抗値は 18.2kΩ に変更され、スペー
グ周波数は減少して安全動作を維持しますが、
ス節減のためインダクタの値とサイズは小さく
動作周波数が高い方が大きくなります。ゲート
出力はレギュレーション状態のままです。2MHz
なっています。選択した 2 つのインダクタについ
駆動電流が多くなるからです。外部バイアスに
のソリューションは図 2 の回路と同一です。ただ
て効率と負荷のグラフを図 7 に示します。
よる利点は、LT8610AB と比較して LT8610A
6 | 2013年7月: LT Journal of Analog Innovation
設計特集
自動車用の電源を考えるうえで大切なことは、コールドクランク時とアイドリング停止
トランジェント時の動作です。こうした状況では、12V バッテリからの電圧が 4V より低
い電圧に降下する場合があります。LT8610AB は最大 99% のデューティ・サイクルで
動作するので、可能な最低限の入力電圧で出力レギュレーションを維持します。
の方が大きくなります。LT8610AB では、Burst
上昇し、その後次第に低下して 0V に戻るまでの
源を供給する用途に最も適しています。LT8610
Mode 時の電流制限値を増やすと、所定の負荷
出力電圧を図 10(b)に示します。
ファミリの性能のまとめを表 1 に示します。
まとめ
データシート、デモボード、およびその他のア
での動作周波数が低くなるからです。
用途はメモリに限らない
LT8610A および LT8610AB は、部品点数が少
図 9 に示すように、LT8610AB は、3.3V 電源
なく、最小入力電圧が低く、低静止電流で、広い
や 5V 電源などを 90% 以上の効率で生成する
負荷範囲で高い効率を達成しています。これら
ので、他の自動車用電源としても非常に優れた
の特長により、LT8610A および LT8610AB は、
レギュレータです。
自動車アプリケーションで DDR メモリに予備電
プリケーション情報については、 www.linear-
tech.co.jp/LT8610 にアクセスしてください。n
自動車用の電源を考えるうえで大切なことは、
コールドクランク時とアイドリング停止トランジェ
ント時の動作です。こうした状況では、12V バッ
テリからの電圧が 4V より低い電圧に降下する
場 合 が あります。LT8610AB は 最 大 99% の
デューティ・サイクルで動作するので、可能な最
低限の入力電圧で出力レギュレーションを維持
します。ドロップアウト電圧を図 10(a)に示しま
す。この電圧は、目的の出力レギュレーション電
圧に向けて入力電圧が減少していくときの VIN
とVOUTの差です。LT8610AB は起動時とドロッ
表 1.モノリシック同期整流式降圧コンバータである LT8610 ファミリの特長の比較
LT8610
LT8610A
LT8610AB
最大負荷電流
(A)
2.5
3.5
3.5
最小オン時間
(ns)
(標準)
50
30
30
VIN = 12V、VOUT = 1.5V、
ILOAD = 10mA、fSW=475kHz、
L = 3.3µH
73.9
73.9
85.5
ILOAD = 10mA、COUT = 47µF、
L = 3.3µH
8.4
8.4
52.5
パラメータ
条件
効率(%)
プアウト時の動作も優れているので、入力電圧
に対して予測可能で信頼できる出力電圧が得ら
100
800
90
700
80
600
DROPOUT VOLTAGE (V)
EFFICIENCY (%)
れます。入力電源電圧が 0V から 10V に次第に
出力電圧リップル
(mVP-P)
70
60
50
40
30
fSW = 700kHz
VIN = 12V
L = 4.7µH
20
0.001
0.1
VOUT = 3.3V
VOUT = 5V
1
10
100
LOAD CURRENT (mA)
1000
図 9.3.3V 出力と 5V 出力の効率は 90% より高いので、
全電力損失が減少し、温度の上昇が抑えられています。
VIN
2V/DIV
VIN
500
400
VOUT
2V/DIV
300
VOUT
200
100
0
0
0.5
1.5
2
2.5
1
LOAD CURRENT (A)
(a)
3
3.5
100ms/DIV
2.5Ω LOAD
(2A IN REGULATION)
(b)
図 10.LT8610AB は 99% のデューティ・サイクルで動作するので、スムーズに起動し、ドロップアウト電圧が小さくて済みます。
2013年7月: LT Journal of Analog Innovation | 7
相対的な電圧に関わらない任意の優先順位での
電源の選定:マイクロプロセッサ不要
Sam Tran
そのアプリケーションには複数の入力電源がありますか?主電源と同じ、もしくはそれよりも高い電圧の 2 次
電源が 1 つ以上ありますか?主電源より高い電圧の 2 次電源が存在する場合にも、必ず主電源を出力へ供
給する方法はありますか?入力電源の切り替えにおいて、電源間のショートや逆給電をどうやって防いでい
ますか?同じような電圧の電源間の電流分担を防ぐ必要はありますか?ユーザが電源を逆に接続したり、過
電圧の電源をシステムに接続したりする危険性はありますか? LTC4417 優先順位付け PowerPath™ コント
ローラは、動作電圧範囲が 2.5V∼36V と広いので、ユーザ定義の優先順位および妥当性に基づいて入力
電源の接続を制御すると同時に、システムに最大 ±42V の過電圧および逆電圧が加わった場合の保護を行
うことにより、このような問題をすべて解決します。
3 つの入力電源の優先順位付け
3 入力の優先順位回路を図 1 に示します。ここで
は、12V の AC アダプタを最高の優先順位とし、
14.8V のリチウムイオン・バッテリ・スタックを 2
番目の優先順位、 12V の密閉型鉛(SLA)蓄電
FDD4685
V1
12V WALL
ADAPTER
V2
14.8V Li-ION
MAIN/SWAPPABLE
FDD4685
FDD4685
+
で簡単に設定されます。V1 が最高の優先順位
RS
1k
0.1µF
V1
低電圧フィルタ時間が組み込まれているので、
誤作動の防止に役立ちます。
1M
60.4k
0.1µF
1.05M
UV2
V2 INVALID
VALID3
V3 INVALID
OV2
68.1k
V3
EN
SHDN
HYS
CAS
UV3
16.9k
OV3
GND
49.9k
図 1.3 入力の LTC4417 による優先順位付けされた入力電源選択アプリケーション
8 | 2013年7月: LT Journal of Analog Innovation
V1 INVALID
LTC4417
698k
1M
VALID2
31.6k
0.1µF
1M
VALID1
V2
高精度(±1.5%)コンパレータは、各入力の
圧状態または低電圧状態が検出されると、入力
VS3 G3
VOUT
OV1
されたままになります。
電源は速やかに切断されます。8µs の過電圧、
VS2 G2
UV1
の高い電源が有効である限り、優先順位の低い
確認したのちに出力への接続を行います。過電
VS1 G1
39.2k
の高い入力電源を出力に接続します。優先順位
入力電源が 256ms 以上安定状態にあることを
0.1µF
806k
電圧(UV)の範囲内にある限り、より優先順位
OV ピンと UV ピンの電圧を絶えずモニタして、
0.1µF
FDD4685
0.1µF
つまり、抵抗分割で設定した過電圧(OV)と低
入力は、その相対的な電圧には関係なく、切断
DS
BAT54
FDD4685
V3 +
12V SLA
BACKUP
で、V3 が最低の優先順位です。
LTC4417 は、入力電源電圧が有効である限り、
CL
120µF
CS
6.8nF
池を最低の優先順位とします。優先順位は、電
源を LTC4417 の対応したピンに接続すること
+
FDD4685
2A
OUTPUT
設計特集
高電圧(2.5V∼36V)、3 入力の LTC4417 優先順位付け PowerPath コントローラは、
使いやすく堅牢で、機能が完備しています。電源電流の供給が自動的に優先順位付けさ
れるので、優先順位の低い入力電源の寿命が長くなり、同時に、制御された切り替えに
より、切り替え時に入力電源が相互導通および逆導通から保護されます。
12V WALL ADAPTER VALIDATES
V2
2V/DIV
V1, VOUT
2V/DIV
14.8V Li-ION BATTERY
12V WALL ADAPTER
VOUT
UNDERVOLTAGE FAULT
IWALL, IBAT
5A/DIV
14.8V Li-ION BATTERY
V2, VOUT
2V/DIV
タの動作により、切り替え中、入力電源間に相
12V WALL ADAPTER
互導通も逆導通も起こっていないことが 2 つの
Li-ION BATTERY CURRENT
入力電源電流波形で分かります。
抵抗とコンデンサ(図 1 の RSと CS)は、14.8V
WALL ADAPTER CURRENT
Li-ION BATTERY CURRENT
IWALL
1A/DIV
のリチウムイオン・バッテリを出力に接続した
WALL ADAPTER CURRENT
100µs/DIV
IL = 2A
CL = 120µF
図 2.低電圧入力から高電圧入力への切り替え
電源である 14.8V のリチウムイオン・バッテリ
がすぐに出力に接続されます。VGS コンパレー
VOUT
V1
2V/DIV
IBAT
1A/DIV
認されると、次に優先順位の高い有効な入力
100µs/DIV
IL = 2A
CL = 120µF
図 3.高電圧入力から低電圧入力への切り替え
とき、その突入電流のピーク値を 14A に制限
する役目を果たします。突入電流が大きいと、
入力電源の UV フォルトが発生したり、外付け
MOSFET の許容尖頭ドレイン電流(IDM)を
超えたり、場合によってはコネクタが損傷したり
する可能性があります。RS と CS の値を大きく
設定すると、切り替え時間が長くなり、その結
他の有効な入力電源に切り替えられるのは、過
ト / ソース間酸化膜への過電圧印加を防止しつ
電圧フォルトまたは低電圧フォルトが検出される
つ、一般的なロジック・レベル定格の P チャネル
か、より優先順位の高い電源が有効になった場
MOSFET を十分にオーバードライブすることが
合に限ります。この機能により、図 1 について、
可能です。
電圧が低く優先順位の高い 12V の AC アダプタ
が有効である場合には、それを出力に接続した
ままにすることができます。別の電源が出力に
電力を供給している場合にも、 12V の AC アダ
プタが有効になると、それが出力に再接続され
ます。
LTC4417 の重要な特長は、切り替え時に入力
電源を相互導通から保護するブレーク・ビフォ
ア・メーク回路です。ゲート / ソース間(VGS)コ
ンパレータは、切断する側の入力電源の外付け
MOSFET がオフになったことを検出してから、
別の入力電源を共通の出力に接続できるように
LTC4417 は、バック・トゥ・バックの外付け P チャ
します。接続時に出力から入力電源への逆導通
ネル MOSFET をスイッチとして駆動し、入力電
を防止するため、高い出力電圧が検出されると、
源と出力の間の接続と切断を切り替えます。強
逆電圧(REV)コンパレータは接続を遅らせま
力なゲート・ドライバにより、バック・トゥ・バッ
す。出力電圧が低下して、接続する側の入力電
クの P チャネル MOSFET は 入 力 電 源 の 挿 入
源電圧より低くなるまで接続は遅らされます。
時にオフ状態に確実に保持され、大型でオン抵
抗の低い P チャネル MOSFET を駆動して、安
定状態の電力損失を低減し、出力の動作電圧
範囲を広げます。6.2V のゲート / ソース間クラ
ンプ電圧が内部に組み込まれているので、ゲー
図 2 は、UV フォルトが原因で LTC4417 が 12V
果出力電圧が 400mV 低下します。RS と CS の
値を大きくすると突入電流は小さくなりますが、
その代わり出力電圧の低下幅が増えます。RSと
CS を選択するときは、このトレードオフに十分
注意してください。ショットキ・ダイオード(DS)
は、高速の切断を実現します。
LTC4417 が、優先順位の低い有効な 14.8V の
リチウムイオン・バッテリ・スタックを切り離して、
新たに有効になった優先順位の高い 12V の AC
アダプタを出力に接続する様子を図 3 に示しま
す。REV コンパレータが、初期状態で 14.8V に
なっている出力電圧を監視しているので、12V
の AC アダプタがすぐに出力に接続されることは
ありません。2 つの入力電源電流波形で示すよ
うに、REV コンパレータは、出力電圧が 12V の
AC アダプタの電圧以下まで放電するまで接続
を遅らせ、逆電流が流れないようにします。
の AC アダプタを出力から切り離したときの状態
を示したものです。切断する側の 12V AC アダ
プタのバック・トゥ・バック P チャネル MOSFET
がオフであることが VGS コンパレータによって確
2013年7月: LT Journal of Analog Innovation | 9
LTC4417 は、バック・トゥ・バックの外付け P チャネル MOSFET をスイッチとして駆動し、入力電源と
出力の間の接続と切断を切り替えます。強力なゲート・ドライバにより、バック・トゥ・バックの P チャ
ネル MOSFET は入力電源の挿入時にオフ状態に確実に保持され、大型でオン抵抗の低い P チャネル
MOSFET を駆動して、安定状態の電力損失を低減し、出力の動作電圧範囲を広げます。
V1
2V/DIV
12V WALL ADAPTER
VOUT
2V/DIV
IIN
0.2A/DIV
VOUT
IIN
優先順位付けされた低 ICC による
出力のソフトスタート
消費電力の最小化
電圧が高い入力電源を、電圧が低い出力コンデ
LTC4417 の最大動作電流はわずか 28µA であ
ンサに急に接続すると、大きな突入電流が流れ
り、この電流のうち可能な限り多くの電流が、最
ることがあります。出力電圧が 0.7V より低い場
も優先順位の高い有効な電源から流れます。通
合、LTC4417 は VOUT をソフトスタートさせる
常動作時は、 VOUT が 2.5V より高くなると、電
ことにより、突入電流を最小限に抑えます。
源電流の半分を超える量が出力から流れます。
VOUT が 2.5V より低いとき、動作電流は最も優
先順位の高い有効な入力電源から流れ、残りの
電源電流は、最も電圧の高い入力電源から流れ
1ms/DIV
ます。LTC4417 は、優先順位の低い入力電源
IL = 0A
CL = 120µF
の電圧が出力電圧より低い場合、それらの入力
電源からはほとんど電流を消費しません。
図 4.出力のソフトスタート
SHDN を強制的に L にすると、デバイスは一
出力電圧が 11.88V になると 12V の AC アダプ
タが素早く接続されるので、AC アダプタからの
突入電流が低く抑えられています。AC アダプタ
の電流波形が示すように、AC アダプタから供給
される電流は、2A の負荷電流と、VOUT を充電
時停止モードになります。このモードでは、消費
電力を節減するため過電圧コンパレータおよび
低電圧コンパレータに電力が供給されず、すべ
ての入力電源が無効になります。この状態では、
電源電流は最も電圧の高い電源から流れます。
LTC4417 が 12V の AC アダプタから電力を受
け、最初は放電されていた 120µF の出力コンデ
ンサの電圧をソフトスタートで立ち上げた場合
の入力電流と出力電圧の波形を図 4 に示します。
図に示すように、入力電流のピーク値は 500mA
に制限されます。
出力がその最初の電源に接続された後、似たよ
うな電圧の複数のシステムでは、入力電源の切
り替え時に入力電圧と出力電圧がそれぞれほ
ぼ同等なので、チャネル変更時の突入電流が
最小限で済みます。このため、入力電源電圧が
近いシステムでは、図 1 に示す RS、CS、および
DS による突入電流制限回路を省略することが
するためのわずかな電流の和です。
できます。
図 5.逆電圧保護機能を備えた 24V アプリケーション
図 6.過電圧および逆電圧の遮断
V1
24V REGULATED
SWITCHING
TABLETOP SUPPLY
SMBJ26CA
FDD4685
FDD4685
+
FDD4685
V2
14.8V Li-ION
MAIN BATTERY
2A
OUTPUT
CL
120µF
V3, VOUT
10V/DIV
V3 = VOUT = 11.1V
27V
FDD4685
FDD4685
V3
11.1V Li-ION
BACKUP BATTERY
FDD4685
V1
10V/DIV
–27V
V1
VS1 G1
VS2 G2
V2
V3
LTC4417
VS3 G3
VOUT
100µs/DIV
IL = 2A
CL = 120µF
10 | 2013年7月: LT Journal of Analog Innovation
設計特集
±42V に対応できるよう設計された入力電源ピン(V1∼V3)を備えているので、
LTC4417 に必要なことは、入出力間での想定される電圧変位より大きな BVDSS
定格を持つ P チャネル MOSFET を選択するだけで、過電圧、低電圧、および逆
電圧の入力電源の挿入からシームレスに保護することが可能です。
過電圧、低電圧、および逆電圧の挿入に対する
V1
12V SUPPLY
保護
R3
806k
電源が物理的に抜き差しされるアプリケーショ
ンでは、電源の不適切な挿入や故障した電源の
R2
41.2k
V2
7.4V Li-Ion
BATTERY
(2 × 3.7V)
挿入が起こる可能性があります。故障した AC ア
ダプタが挿入されると、損傷の可能性がある過
R1
60.4k
+
電圧にシステムがさらされることがあり、バッテ
R6
768k
リを不適切に挿入すると挿入時に逆電圧が加
わることがあります。電圧の仕様が異なる標準
R5
53.6k
V3
7.4V Li-Ion
BATTERY
(2 × 3.7V)
化されたコネクタの普及によって、さらに頻繁に
こうした間違いが起きる可能性がでてきました。
+
±42V に対応できるよう設計された入力電源
ピン(V1∼V3)を備えているので、 LTC4417
R7
140k
変位より大きな BVDSS 定格を持つ P チャネル
V2
UV2
LTC4417
UV3
OV3
R8
113k
MOSFET を選択するだけで、過電圧、低電圧、
OV1
V3
R11
140k
R9
53.6k
に必要なことは、入出力間での想定される電圧
UV1
OV2
R4
113k
R10
768k
V1
HYS
RHYS
255k
1%
および逆電圧の入力電源の挿入からシームレス
に保護することが可能です。
図 7.ヒステリシス電圧の設定
完全な入力フォルト挿入保護システムを図 5 に
示します。LTC4417 は、 –42V∼42V の 入 力
電圧範囲でデバイス自体を保護します。最悪の
場合の電圧変位にも耐えられるよう、 BVDSS が
–40V の FDD4685 というP チャネル MOSFET
が選択されています。挿入時には、 256ms のデ
グリッチ・タイマにより、強力なゲート・ドライバ
が、最初に外付け MOSFET を確実にオフに維
持します。入力電圧が 20V より高い場合に推奨
されるトランジェント電圧サプレッサ(TVS)ダイ
オードにより、LTC4417 の絶対最大定格電圧
である ±42V をトランジェント電圧が超えない
ことが保証されます。 27V の強制的な V1 過電
圧ステップと、その後の–27V 逆電圧ステップを、
高インピーダンスの入力電源アプリケーション
シス電圧が発生します。抵抗分割の値を調整す
すべてのバッテリおよびコンデンサに存在する
るか、OV ピンおよび UV ピンと直列に抵抗を追
内部直列抵抗により、負荷電流が存在すると動
作電圧を低下させる電圧降下が発生します。負
荷電流をなくせば、この電圧降下から電圧源を
回復させることができます。一部のバッテリおよ
びコンデンサは、低電圧フォルトによって負荷電
流が切り離されると、数百 mV 程度の電圧上昇
を起こします。ヒステリシスが不十分な場合、入
力電源はその有効な電圧範囲内に戻り、再度接
続されることがあります。
LTC4417 が 11.1V のリチウムイオン・バッテリ・
こうした状況では、 LTC4417 を使用することに
スタックおよび出力から遮断している様子を図 6
より、外付け抵抗 RHYS を流れるヒステリシス電
に示します。説明を簡単にするため、図 5 には突
流のイネーブルおよび設定が可能です。ヒステ
入電流制限回路を示していません。
リシスが組み込まれると、RHYS を流れる電流の
1/8 が OVと UV の抵抗分割器に流れてヒステリ
加するか、あるいはその両方を行うことにより、
各入力電源の内部抵抗特性に合わせて個々の
ヒステリシス電圧を調整し、回復後の誤った再
接続を防止することができます。
12V の AC アダプタに約 200mV の OV ヒステリ
シスおよび UV ヒステリシスを発生させるための
抵抗分割器 R1∼R3と、これらに流れる 245nA
のヒステリシス電流を設定する 255kΩ の抵抗
RHYS を図 7 に示します。抵抗による T 型構造
(R4∼R7 と R8∼R11)を使用して、リチウム
イオン・バッテリの端子において、独立した OV
ヒステリシス電圧および UV ヒステリシス電圧で
ある 201mV および 390mV をそれぞれ設定し
ています。
2013年7月: LT Journal of Analog Innovation | 11
LTC4417 は、カスケード接続することにより、任意の数の入力電源に対して優先順位
を付けることが簡単にできます。カスケード接続されたすべての LTC4417 の VOUT ピ
ンを単純にシステムの出力に接続し、優先順位の高いいずれかの LTC4417 の CAS
ピンを次に優先順位の高い LTC4417 の EN ピンに接続します。
任意の数の電源の優先順位付け
を追加する場合は、その CAS ピンと EN ピンを
まとめ
LTC4417 は、カスケード接続することにより、
デイジーチェーン接続すればカスケード接続が
高 電 圧(2.5V∼36V)、3 入 力 の LTC4417 優
任意の数の入力電源に対して優先順位を付け
ることが簡単にできます。2 つの LTC4417 につ
いて図 8 に示すように、カスケード接続されたす
べての LTC4417 の VOUT ピンを単純にシステ
ムの出力に接続し、優先順位の高いいずれかの
LTC4417 の CAS ピンを次に優先順位の高い
LTC4417 の EN ピンに接続します。LTC4417
可 能です。最も優 先 順 位 の 高 い LTC4417 の
EN ピンを L にすると、すべての入力電源が共
通の出力から切り離されます。最も優先順位の
高い LTC4417 の SHDN ピンを L にすると、
その LTC4417 はディスエーブルされ、
シリアル・
チェーン内にある次の LTC4417 が出力を制御
できるようになります。
先順位付け PowerPath コントローラは、使いや
すく堅牢で、電圧に関係なく、さまざまな入力電
源からアプリケーションを自律的に給電すること
ができます。電源電流の供給が自動的に優先順
位付けされるので、優先順位の低い入力電源の
寿命が長くなり、同時に、制御された切り替えに
より、切り替え時に入力電源がショートおよび逆
電流から保護されます。
±1.5% の高精度過電圧および低電圧コンパ
図 8.カスケード接続アプリケーション
レータによる入力電源の継続的モニタ、 256ms
IRF7324
M1
M2
の入力デグリッチ時間、6.2V のクランプ回路を
内蔵した強力なゲート・ドライバなどの重要な
特長により、故障した入力電源からの過電圧保
護、低電圧保護、および逆電圧保護が有効にな
CVS1_1
0.1µF
ります。
VS1 G1
抵抗分割で規定した過電圧および低電圧作動
VOUT
LTC4417
MASTER
点、調整可能な電流モード・ヒステリシス、外
付けの突入電流制限回路、および外付けのバッ
DISABLE ALL CHANNELS
SHDN MASTER
EN
SHDN
CAS
ク・トゥ・バック P チャネル MOSFET により、
LTC4417 は多数のアプリケーションに適用する
ことが可能です。LTC4417 は、24 ピン GN パッ
ケージおよびリードレスの 4mm×4mm QFN
パッケージで供給されます。いずれのパッケー
IRF7324
M3
M4
ジも C グレ ード、 I グレ ード、 および –40ºC∼
125ºC の H グレードで供給されます。
デ ー タ シ ート、 デ モ ボ ード、 お よ び そ の
CVS1_2
0.1µF
他 の ア プ リ ケ ー ション 情 報 に つ い て は、
www.linear-tech.co.jp/LTC4417 にアクセ ス
VS1 G1
VOUT
LTC4417
SLAVE
12 | 2013年7月: LT Journal of Analog Innovation
EN
SHDN
CAS
+
VOUT
CL
47µF
TO NEXT
LOWER PRIORITY
LTC4417
してください。n
設計特集
0V∼80V の電源を直接モニタする 3mm×3mm
QFN デバイス:I2C インタフェース、ピーク値の
トラッキングを特長とし、任意の電源で動作
CY Lai
電源のモニタと制御メカニズムを組み合わせることにより、システムのエネルギー効率と信頼性を大幅に向
上させることができます。LTC2945 は、小型、堅牢で使いやすい、高集積度のデジタル・パワー・モニタ・
ソリューションです。最小限の部品点数で電源をモニタすることが要求されるアプリケーションに適合するよ
う設計されています。
LTC2945 の機能ブロック図を図 1 に示します。
のハイサイドおよびローサイド電流検出アプリ
LTC2945 は、4V∼80V の電源から直接電力
高精度の電流検出アンプ、高精度の抵抗分割
ケーションに適しています。現在普及している広
を供給できる高電圧リニア・レギュレータを内
器、A/D コンバータ、ホスト・コントローラと通
範囲電源モニタのほとんどは、動作するのに低
蔵することにより、これらの問題を回避していま
信するための I2C インタフェースなど、電源のモ
電圧の 2 次電源が必要ですが、以下のいくつか
す。リニア・レギュレータの出力(INTVCC)は
ニタに必要なすべての基本要素を内蔵していま
の理由で好ましくないことがあります。
LTC2945 に電力を供給しますが、電源ノイズ
す。必要なのは外付けの電流検出抵抗だけで
• 利用可能な 2 次電源がない
す。ホストは LTC2945 を周期的にポーリングし
て、利用可能な電力データ、保持された最小値
が内部回路の精度を落とすことがないようにデ
バイスの外部でバイパスすることができます。リ
• 2 次電源にはノイズの多いデジタル回路が負
ニア・レギュレータには 10mA の負荷を接続す
荷として接続されている場合が多く、電源モニ
および最大値を確認できます。また、LTC2945
ることができるので、一部のアプリケーションで
タの電源電圧除去比は高周波では低くなるの
からアラートを送信することにより、測定値が設
は、オプトカプラなどの回路に給電するための
で、フィルタ処理を十分に行うか、バイパスす
定リミットを超えた場合はホストに割り込みをか
専用の高電圧リニア・レギュレータを省くことが
る必要がある
けることができます。
できます。
• 2 次電源は存在するが、アクセスが容易では
任意の電源での電力のモニタ
ない。つまり、プリント回路基板上で離れた場
LTC2945 の内部電流検出アンプは 0V∼80V
所に配置されており、電源ラインの引き回し
の同相範囲を備えているので、さまざまな種類
が複雑になる
図 1.LTC2945 の機能ブロック図
SENSE+
VDD
SENSE–
ADR0
ADR1
ALERT
DECODER
+
VSTBY
20X
–
5.7V
VSTBY
GEN
INTV CC
2
IC
735k
SDAO/SDAO
(LTC2945 / LTC2945-1)
VREF = 2.048V
735k
LOGIC
SDAI
VSTBY
12
MUX
6.3V
15k
6.4V
12-BIT ADC
SCL
REGISTERS
15k
6.4V
ADIN
GND
2013年7月: LT Journal of Analog Innovation | 13
LTC2945 は、広範なシステムに容易に適合する高集積電源モ
ニタです。0V∼80V の同相電圧範囲、2.7V∼80V の動作電圧
範囲、電圧および電流の高精度(±0.75%)測定機能を備え、
電力を計算するデジタル乗算器を内蔵しています。
RSNS
VIN
4V TO 80V
SENSE+
RSNS
VIN
0V TO 80V
VOUT
SENSE+
SENSE–
VDD
SENSE–
SENSE+
LTC2945
VOUT
SENSE–
INTVCC
2.7V TO 5.9V
VDD
4V TO 80V
RSNS
VIN
0V TO 80V
VOUT
VDD
LTC2945
LTC2945
C2
INTVCC
C2
INTVCC
C2
GND
GND
GND
図 2a.計測対象電源から電力供給を
図 2b. 広範囲の 2 次電源から電力供給を
図 2c.低電圧の 2 次電源から電力供給を
受けている LTC2945
受けている LTC2945
受けている LTC2945
GND
RSNS
VIN
>80V
SENSE+
VOUT
SENSE+
SENSE–
>80V
INTVCC
VDD
RSNS
VIN
0V TO 80V
RSHUNT
RSHUNT
VOUT
SENSE–
VDD
VDD
INTVCC
VDD
INTVCC
LTC2945
GND
LTC2945
C1
GND
C2
INTVCC
C2
LTC2945
GND
LTC2945
C2
SENSE–
GND
GND
VNEG
>–80V
RSHUNT
SENSE–
SENSE+
RSNS
VOUT
VNEG
–4V TO –80V
SENSE+
RSNS
VOUT
図 3a.ハイサイドのシャント・レギュレータを通じ
図 3b.ハイサイドの電流検出回路構成でロー
図 3c.ローサイドの電流検出回路構成でロー
図 3d.ローサイドの電流検出回路構成で
て電力供給を受けている LTC2945
サイドのシャント・レギュレータを通じて電力供
サイドのシャント・レギュレータを通じて電力供
計測対象の電源から電力供給を受けている
給を受けている LTC2945
給を受けている LTC2945
LTC2945
4V∼80V の電源をモニタし、同じ電源から電力
LTC2945 は、80V を超える動作に対応するた
図 4 は、整合した PNP ペアといくつかの抵抗を
を得ているLTC2945の標準的なアプリケーショ
め、INTVCC ピンに 6.3V/35mA のシャント・レ
使用して、この構成でバス電圧を測定する方法
ンを図 2a に示します。バス電圧は内部の抵抗
ギュレータも内蔵しています。バス電圧より6.3V
を示しています。ここに示す抵抗値は、 VIN が
分割を介して SENSE+ ピンで測定され、ハイサ
低い電圧でグランドをフロート状態にしたアプリ
165V±10% の場合に合わせて最適化されて
イドでの負荷電流を測定するのに検出抵抗が使
ケーションで使用する LTC2945 を図 3a に示し
います。LTC2945 のシャント・レギュレータは、
用されます。モニタ対象のバス電圧が 2.7V より
ます。バス電圧の大半は外付けのシャント抵抗
ハイサイド電流検出アプリケーションにおいて、
低い場合、LTC2945 の電源は図 2b に示すよう
の両端で降下します。したがって、実際にはバス
使用可能な唯一の 2 次電源が 80V を超える場
に電圧範囲の広い 2 次電源から得るか、図 2c に
電圧から分離可能で LTC2945 に必要な電流を
合、図 3b に示すように構成することもできます。
示すように低電圧の 2 次電源から得ることがで
供給できるすべての電流源を利用可能です。
きます。
14 | 2013年7月: LT Journal of Analog Innovation
設計特集
LTC2945 は、変換サイクルにわたって測定電圧を本質的に平均化し、トラン
ジェント・スパイクや AC 電源ラインの高調波に起因するノイズを効果的に
除去するオーバーサンプリングデルタシグマ A/D コンバータを内蔵しています。
バス電圧、検出電圧、および ADIN の電圧は、産業用グレードの全温度範囲で
フルスケール時に全誤差が ±0.75% 未満の精度で測定されます。
図 4.ハイサイドのシャント・レギュレータ構成で
最大誤差が ±0.75% の測定精度
VIN
バス電圧を測定するためのアプリケーション回路
R1
2k
R2
2k
NST30010MXV6
LTC2945 は、変換サイクルにわたって測定電
INTVCC
圧を本質的に平均化し、トランジェント・スパイ
LTC2945
クや AC 電源ラインの高調波に起因するノイズ
ADIN
R3
1150k
R4
5.76k
を効果的に除去するオーバーサンプリング デル
GND
タシグマ A/D コンバータを内蔵しています。バ
UP TO 8mA LOAD
(OPTOS, ETC.)
ス電圧、検出電圧、および ADIN の電圧は、産
業用グレードの全温度範囲でフルスケール時に
RSHUNT*
15k
全誤差が±0.75%未満の精度で測定されます。
*THREE 1W, 5k RESISTORS IN SERIES
12 ビットのデルタシグマ A/D コンバータのフル
スケール電圧は、検出電圧の場合は 102.4mV
ネットワーク構築、通信、ハイエンドの計算装置
て LTC2945 に直接電力を供給できます。この
用の –48V 分散電源システムなど、電源の出力
構成では、バス電圧を内部抵抗分割器を介して
が負電圧である場合、通常は、図 3c および 3d
VDD ピンで測定します。
に示すようなローサイドの電流検出が好まれま
す。図 3c に示すのは、シャント抵抗と LTC2945
のシャント・レギュレータが、80V を超える負電
源の電圧より6.3V 高い電圧に INTVCC を制限
している例です。より一般的な例では、図 3d に
(25mV/LSB)、ADIN の電圧の場合は 2.048V
(0.5mV/LSB)です。ADIN の電圧および検出
電圧の積分直線性誤差(INL)の標準値は、図 6
図 3c のようなローサイド電流検出アプリケーショ
および 7 に示すように、どちらも優に ±0.5LSB
ンで 80V を超えるバス電 圧を測 定するには、
以内に入っています。LTC2945 のオフセット電
図 5 に示すように抵抗分割器を ADIN ピンに接
圧の規格値はワーストケースでも ADIN の電圧
続します。
の場合は ±1.1LSB 程度、電流検出電圧の場合
は ±3.1LSB 程度と小さいので、LTC2945 は測
示すように負電源の電圧が 80Vより小さいので、
定値の下端で精度が重要になるアプリケーショ
代わりに内部のリニア・レギュレータを使用し
ンにも最適です。
図 5.ローサイドのシャント・レギュレータ構成で ADIN ピンに
図 6.ADIN ピンの電圧の INL 曲線
よりバス電圧を検出
図 7.SENSE ピンの電圧の INL 曲線
0.3
0.4
0.2
GND
0.2
INTVCC
LTC2945
ADIN
R2
GND
0.1
ADC INL (LSB)
R1
ADC INL (LSB)
RSHUNT
VNEG > –80V
(25µV/LSB)、 バ ス 電 圧 の 場 合 は 102.4V
0.0
–0.1
0.0
–0.2
–0.2
–0.3
0
1024
2048
CODE
3072
4096
–0.4
0
1024
2048
CODE
3072
4096
2013年7月: LT Journal of Analog Innovation | 15
一般的に、安全性の理由から高電圧の部分を絶縁する必要があるシステムでは、光絶縁が用いられてい
ます。LTC2945 は、光アイソレータ・インタフェースを備えたアプリケーションでは、 I2C インタフェースの
SDA 信号を SDAI ピンと SDAO ピン(LTC2945-1 の場合は SDAO ピン)に分割することによって絶縁アプ
リケーションに対応します。
読み出した電力データを単調で高分解能のデー
ピーク値のトラッキングと過大値 / 過小値の
LTC2945-1 ではプルアップ抵抗を高電圧に直
アラート
タにする必要があります。LTC2945 は、12 ビッ
接接続することができます。SCL ピンと SDAI ピ
ンは、6.3V/3mA の内部クランプにより安全な
多くの電源モニタ・システムでは、測定値の最
トの検出電圧データと 12 ビットのバス電圧デー
小値と最大値を常に把握することが重要です。
タをデジタル的に乗算し、結果の切り捨てを行
電圧に制限されています。SDAO ピンの信号は
なぜなら、これらのデータを使って使用率の動
わないことにより、24 ビットの電力データを生成
(SDAO ピンに)反転されるので、図 9 に示すよ
きを研究し、より効率的な資源配分を行うことが
します。
可能であり、システム健全性の指標になることが
うに光アイソレータの入力ダイオードのアノード
でクランプすることができます。
光絶縁とシャットダウン
多いからです。以前は、こうした情報を収集する
LTC2945 は、I2C シリアル・インタフェースを
電源トランジェント
介してシャットダウンし、静止電流を標準 20µA
バス電圧が 80V よりはるかに低いアプリケー
に減少させます。これは、特にバッテリ駆動の
ションであっても、 LTC2945 の動作電圧範囲
アプリケーションで重要です。一般的に、安全
の広さは有利です。例えば、自動車のロード・
のにシステムのマイクロプロセッサによる電源モ
ニタの周期的なポーリングが必要で、それによっ
て貴重な CPU 時間が費やされ、I2Cインタフェー
スの渋滞を招く可能性がありました。LTC2945
は、電力、電圧、電流、および ADIN の電圧の
最小値および最大値を記憶することにより、この
問題を解決しています。LTC2945 のページ読
み出し機能により、1 回の I2C 読み出しでこれら
全てのデータを読み出すことができます。電力、
電圧、電流、および ADIN の電圧について過大
値または過小値の制限値違反を通知するように
ALERT ピンを構成することもできます。
性の理由から高電圧の部分を絶縁する必要が
ダンプでの誘導性逆起電力によるトランジェン
あるシステムでは、光絶縁が用いられています。
トや、活線挿抜における出力短絡では、通常
LTC2945 は、図 8 に示すように、光アイソレー
の動作電圧を大幅に超えた過電圧が発生する
タ・インタフェースを備えたアプリケーションで
ため、そういった電圧に耐えることのできる堅
は、I2C インタフェースの SDA 信号を SDAI ピン
牢な電源モニタ・ソリューションが必要となりま
と SDAO ピン(LTC2945-1 の場合は SDAO ピ
す。 LTC2945 の絶対最大定格は 100V であり、
ン)に分割することによって絶縁アプリケーショ
選択できるトランジェント電圧サプレッサ(TVS)
ンに対応します。
ダイオードの範囲が広いので、こうした種類の
内部のリニア・レギュレータまたはシャント・レ
切り捨てのない 24 ビットの電力データ
ギュレ ータを 使 用して I2C バス上 のプルアッ
デジタル・サーボ・ループを使用してシステムの
プ抵抗にある程度の電流を流すことができま
電源出力を安定化するアプリケーションでは、安
す。内部レギュレータを用いることが望ましくな
定性の問題を最小限に抑えるため、モニタから
電圧サージに対する保護は容易です。大きな
MOSFET パワー・デバイスがブレークダウンし
て誘導性のスパイクを安全にクリップできる場
合で、ブレークダウン電圧が 100V 未満である
かったり、他の低電圧の電源がない場合には、
図 8.LTC2945 とマイクロコントローラ間の 10kHz I2C インタフェースの光絶縁
図 9.LTC2945-1 とマイクロコントローラ間の 1.5kHz I2C インタフェースの光絶縁
3.3V
3.3V
5V
SDAI
R4
10k
R5
0.82k
R6
0.51k
48V
R7
10k
R4
20k
µP
1/2 MOCD207M
LTC2945-1
GND
16 | 2013年7月: LT Journal of Analog Innovation
µP
1/2 MOCD207M
GND
SDA
SDAO
GND
SDAO
1/2 MOCD207M
R7
10k
VDD
SDA
GND
R6
0.51k
SDAI
VDD
LTC2945
R5
7.5k
1/2 MOCD207M
設計特集
LTC2945 の絶対最大定格は 100V であり、選択できるトランジェント電圧サプレッサ(TVS)ダイオードの範
囲が広いので、電圧サージに対する保護は容易です。大きな MOSFET パワー・デバイスがブレークダウン
して誘導性のスパイクを安全にクリップできる場合で、ブレークダウン電圧が 100V 未満である大半の 12V
システムおよび 24V システムでは、TVS ダイオードを省略できる場合があります。
RSNS
0.02Ω
VIN
SENSE +
VOUT
SENSE–
INTVCC
VDD
R12
100Ω
R4
1k
LTC2945
Q1
PZTA42
R3
0.51k
R1
1k
3.3V
C2
1µF
R2
1k
R7
0.51k
FGND
R8
0.51k
R9
1k
R10
1k
R11
10k
VDD
VCC
T1
SMAJ78A
SCL
C1
0.1µF
SCL
SDAI
SDA
GND
HCPL-063L
FGND
µP
3.3V
VCC
ADR1
ADR0
SDAO
ADIN
INT
ALERT
GND
GND
GND
HCPL-063L
FGND
M1
BSP149
R5
1Ω
図 10.最大 200V のサージ保護を備え堅牢化された 4V∼80V
ハイサイド電力モニタ
大半の 12V システムおよび 24V システムでは、
TVS ダイオードを省略できる場合があります。
TVS ダイオードまたは MOSFET のブレークダ
ウンによる電圧のハードクランプは、誘導性エ
ネルギーが高すぎるか予測できない場合、実用
的ではないかもしれません。200V のサージを
切り抜けることができる LTC2945 ベースの電
源モニタを図 10 に示します。ここでは、高電圧
ピンが T1 によって 80V 未満にクランプされてい
ます。通常動作では、 M1 はデバイスのグランド
がシステムのグランドより数 mV 高い線形領域
で動作します。サージが加わっている間、デバイ
スのグランド電位は T1 によって持ち上げられ、
残りのサージ電圧が M1 の両端にかかります。
するため、ピーク値や谷の値などのデジタル・
BSP149 のブレークダウン電圧は 200V であり、
ウォッチドッグ機能とウィンドウ・コンパレータが
サージの印加時間は BSP149 の安全動作領域
用意されています。SDA ピンを分けたことによ
によって制限されます。たとえば、室温では VIN
り、簡単に光絶縁を行えます。LTC2945 は、省
に200Vのサージが1ms加わっても大丈夫です。
スペースの 3mm×3mm QFN パッケージおよ
まとめ
LTC2945 は、広範なシステムに容易に適合す
る高集積電源モニタです。0V∼80V の同相電
圧範囲、2.7V∼80V の動作電圧範囲、電圧お
よび電流の高精度(±0.75%)測定機能を備え、
び 12 ピン MSOP パッケージで供給されます。
デ ー タ シ ート、 デ モ ボ ード、 お よ び そ の
他 の ア プ リ ケ ー ション 情 報 に つ い て は、
www.linear-tech.co.jp/LTC2945 にアクセ ス
してください。n
電力を計算するデジタル乗算器を内蔵していま
す。電力、電圧、電流および外部電圧をモニタ
2013年7月: LT Journal of Analog Innovation | 17
高効率スイッチング電源とローノイズ・リニア・
レギュレータを µModule パッケージに統合
David Ng
高速または高分解能の機能を持
つデバイスには、クリーンな電力
が必要です。スイッチング ・レギュ
レータはさまざまな入出力条件
にわたって高い効率を実現します
が、標準的なスイッチング ・レギュ
レータでは、データレートの高い
FPGA I/O チャネルやビット数の
大きいデータ・コンバータが必要
とするローノイズ性能と高速トラ
ンジェント応答の両立を果たすこ
とは出来ません。一方で、高性能
リニア・レギュレータは低出力ノ
イズおよび高速トランジェント応
答を特長としますが、簡単にヒー
トアップしてしまいます。
VIN
6V TO 36V
LTM8028
VIN
402k
10µF
0.01µF
RUN
MARGA
IMAX
BKV
SS
165k
RT
VOUT
1.2V
5A
VOUT
LINEAR
REGULATOR SENSEP
PGOOD
SYNC
GND
VOB VO0 VO1 VO2
37µF*
+
100µF
470µF
*37µF = 4.7µF + 10µF + 22µF IN PARALLEL
図 1.LTM8028 は、36V 入力、UltraFast、低出力ノイズの 5A µModule レギュレータです。
LTM®8028 は、それらの良いとこ取りをしたも
リニア・レギュレータはスイッチング ・レギュレー
のです。つまり、UltraFast™リニア・レギュレー
タの出 力を目的の出 力 電 圧より 300mV 高 い
タが制御する高効率の同期整流式スイッチン
電圧に制御して、余裕電圧、効率、トランジェン
グ・コンバータであり、これらが小型の 15mm×
ト応答の最適な組み合わせを実現しています。
15mm µModule® パッケージに統合されてい
LTM8028 は最大 40V の入力で動作し、0.8V∼
ます。このデバイスは LGA(高さ 4.32mm)およ
1.8V の範囲の出力電圧で最大 5A を発生しま
び BGA(高さ 4.92mm)パッケージで供給され、
す。標準的な 1.2V 出力のアプリケーションを
どちらも RoHS 規格に準拠しています。
図 1 に示します。
図 2.12V 入力、1.2V/5A 出力のアプリケーションでは、
図 3.1.0V 出力では、LTM8028 のトランジェント応答は 20mV
図 4.LTM8028 のトランジェント応答はわずか 38mV です。
LTM8028 の消費電力は 4W より少なく、温度上昇はわずか
45℃です。
未満です。
50
VIN = 12V
VOUT = 1.2V
POWER LOSS (W)
4
40
3
30
TEMP RISE
2
20
POWER LOSS
1
0
10
0
1
2
3
ILOAD (mA)
4
5
18 | 2013年7月: LT Journal of Analog Innovation
0
TEMPERATURE RISE (°C)
5
VOUT
20mV/DIV
20mV
IOUT
2A/DIV
38mV
VOUT
20mV/DIV
IOUT
2A/DIV
10µs/DIV
VOUT = 1V
COUT = 100µF + 22µF + 10µF + 4.7µF
LOAD STEP = 0.5A TO 5A
tRISE/FALL = 1µs
20µs/DIV
VOUT = 1.8V
COUT = 100µF + 22µF + 10µF + 4.7µF
LOAD STEP = 0.5A TO 5A
tRISE/FALL = 1µs
設計特集
リニア・レギュレータはスイッチング ・レギュレータの出力を目的の出力電圧より
300mV 高い電圧に制御して、余裕電圧、効率、トランジェント応答の最適な組み
合わせを実現しています。LTM8028 は最大 40V の入力で動作し、0.8V∼1.8V
の範囲の出力電圧で最大 5A を発生します。
VIN
9V TO 15V
LTM8028
VIN
150k
10µF
0.01µF
RUN
MARGA
IMAX
BKV
SS
FULL LOAD
NOISE
AND RIPPLE
500µV/DIV
1mV
82.5k
RT
VOUT
1.2V
5A
VOUT
LINEAR
REGULATOR SENSEP
PGOOD
SYNC
GND
VOB VO0 VO1 VO2
f = 500kHz
137µF*
+
100µF
470µF
*137µF = 100µF + 4.7µF + 10µF + 22µF IN PARALLEL
1µs/DIV
図 5.LTM8028 の出力でのピーク・トゥ・ピークのスイッチング・ノイズは 1mV 未満です。
(回路図には、この結果を得るために使用した構成を示します。)
LTM8028 の出力電圧は、3 つのトライステート
従来のリニア・レギュレータを用いた設計では、
周波数領域ではスペクトラム・ノイズ成分が
入力(VO0、VO1、および VO2)を制御すること
12V の電源から 1.2V/5A を出力すると 50W 以
非常に低く、図 6 に示すように、スイッチング・
で設定します。MARGA ピンに電圧を与えるこ
上の損失が発生するので、高価なヒートシンク
コン バ ータの 基 本 周 波 数 で ある 300kHz に
とにより、出力電圧を最大 ±10% の範囲でマー
による放熱が必要になります。図 2 に示すように、
4µV/ √Hz のピークがあります。このことは、ビッ
ジニング調整できます。電流制限値は IMAX ピ
LTM8028 の電力損失はその 12 分の 1(4W)
ト数の多いデータ変換回路に電力を供給する場
ンによって最大値の 5A より低い値に設定するこ
と少ないので、標準的な接合部温度の上昇はわ
合に重要です。
とが可能であり、PGOOD 信号は出力が目標電
ずか 45℃で済みます。
圧の 10% 以内に入っていることを示します。
LTM8028 の心 臓 部は高 性 能リニア・レギュ
レータです。そのライン・レギュレーションと
ロード・レギュレーションは室温で 0.2% 未満
図 6.LTM8028 の出力ノイズ・スペクトラム密度はピーク値が
であり、 -40 ℃∼125 ℃の全温度範囲で 1% で
わずか 4µV/ √Hz なので、感度の高いデータ変換回路の電源の
す。LTM8028 は、その UltraFast 帯域幅によ
有力候補になります。
り、 10%∼90% の負荷ステップでのトランジェ
ント応答がわずか 2% にすぎません。それぞれ
10
1V および 1.8V を 供 給 するよう LTM8028 を
構成した場合に、 1A/µs のスルーレートで負荷
µV/√Hz
1
0.1
0.01
0.001
COUT = 137µF
VOUT = 1.8V
IOUT = 5A
VIN = 12V
10
100
1k
10k
FREQUENCY (Hz)
ション、高速トランジェント応答、および低出
力ノイズがシステム設計に求められるときは、
LTM8028 µModule レギュレータを検討してく
ださい。このデバイスでは、高性能スイッチング
・レギュレータとリニア・レギュレータの最高の
機能を省スペースの単一パッケージに統合して
います。
データシート、デモボード、およびその他のア
LTM8028 のトランジェント応答を図 3 および 4
プリケーション情報については、www.linear-
に示します。
tech.co.jp/LTM8028 にアクセスしてください。n
リニア・レギュレータと同期整流式スイッチング
注記
・コンバータが同じパッケージに収容されてい
1 小振幅のノイズの測定には注意が必要です。この測定は、同
軸ケーブル、インピーダンス整合回路、および 150MHz の
HP461A アンプを使用して行いました。これはリニアテクノ
「A Monolithic Switching
ロ ジ ー の Application Note 70、
(Jim Williams)に記
Regulator with 100µV Output Noise」
み込まれているので、低出力ノイズ特性が得ら
1M
低 電 力 損 失、 許 容 範 囲 の 厳しいレギュレ ー
ステップが 0.5A から 5A まで変化させた場合の
ても、電源電圧除去比が高くノイズ軽減策が組
100k
まとめ
れます。図 5 は、ピーク・トゥ・ピーク・ノイズが
1mV
未満であることを示しています。1
述されている構成と同様ですが、ここでの測定では帯域幅を
10MHz に制限していないことだけが異なります。
2013年7月: LT Journal of Analog Innovation | 19
低電圧マイクロプロセッサ、ASIC、FPGA を中間バス
電圧サージから保護する降圧 µModule レギュレータ
Willie Chan、Jason Sekanina
公称 24V∼28V の中間バス電圧は、直列接続のバッテリをバックアッ
プ電源にすることができる産業用システム、航空宇宙システム、防衛シ
ステムで一般的になっており、ここでは 12V のバス・アーキテクチャは
配電損失のため実用的ではなくなってきています。システム・バスとデ
ジタル・プロセッサの電源入力の間の電圧ギャップが大きくなることに
より、電力供給、安全性、およびソリューション・サイズに関する設計
上の課題が浮かび上がってきました。
単一段の非絶縁型降圧 DC/DC コンバータをポ
います。したがって POL DC/DC コンバータで
イントオブロード(POL)で使用する場合は、コ
の積極的な保護が必要です。LTM4641 は、出
ンバータをきわめて正確な PFM/PWM タイミン
力過電圧を含む多くのフォルトから負荷を保護
グで動作させる必要があります。入力サージが
し、回復させる 38V 定格の 10A DC/DC 降圧
発生すると、 DC/DC コンバータにストレスが加
µModule® レギュレータです。
わり、負荷に過電圧の危険が生じることがありま
す。製造段階に入り込んだコンデンサの不具合
要があり、正確な PFM/PWM タイミングが要求
されます。さらに、デジタル・プロセッサにより厳
しい電圧レギュレーション範囲が要求され、電
圧を安全な制限値の範囲内に維持するために
高速トランジェント応答が必要です。比較的高
い入力電圧では、DC/DC レギュレータの上側
スイッチのオン時間の誤差に対する余裕も減少
します。
航空宇宙アプリケーションや防衛アプリケーショ
ンで発 生 することが 多 い バス電 圧サージ は、
DC/DC コンバータだけでなく負荷をも危険にさ
らします。DC/DC コンバータは、過電圧サージ
を受けている間において必要な入力電圧除去
特性を実現するため、十分に高速な制御ループ
によって安定化できる性能を備えている必要が
入力電圧とサージに伴って高まる、
正確なスイッチング・タイミングの重要性
あります。
生じて、FPGA、ASIC、またはマイクロプロセッ
入力電圧と出力電圧の差が大きい場合には、
DC/DC コンバータがバス・サージを安定化で
サを破損する危険性があります。損傷の程度に
リニア・レギュレ ータに比 べてスイッチング
きないかバス・サージに耐えられない場合は、
よっては、根本原因を突き止めるのが困難な場
DC/DC レギュレータが、変換効率の面で断然
負荷に過電圧が生じています。負荷のバイパス・
合もあります。
に有利です。ソリューション・サイズの小型化を
コンデンサが年月の経過や温度によって劣化す
実現するには、非絶縁型の降圧コンバータが最
ると負荷トランジェント応答性能が下がるため、
により、出力電圧に負荷の定格を超える変動が
ユーザでの不具合を防ぐために、過電圧発生
のリスクを軽減する方策は絶対に必要です。特
に上流の電圧レールが公称 24V または 28V の
場合には、従来のヒューズを用いた過電圧保護
善です。パワー・インダクタおよびフィルタ・コン
製品の設計寿命の末期にはこれによる過電圧
デンサのサイズを減らすのに十分高い周波数で
フォルトが生じる可能性もあります。制御ループ
動作することができるからです。
の設計限度を超えてコンデンサが劣化すると、
は、応答速度が十分ではなく、最新の FPGA、
ただし、降圧比の高いアプリケーションでは、
ASIC、およびマイクロプロセッサを保護するた
DC/DC スイッチング ・コンバータが 3% といっ
めの信頼性のある方式とは言えなくなってきて
た非常に低いデューティ・サイクルで動作する必
図 1.ヒューズ、サイリスタ、およびツェナー・ダイオードで構成される従来の過電圧保護回路。
この回路は安価ですが、最新のデジタル回路を確実に保護するには応答時間にばらつきが多く、
特に上流の電源レールが中間電圧バスである場合には不適当です。さらに、過電圧フォルトからの
回復には人手の作業が必要です。
20 | 2013年7月: LT Journal of Analog Innovation
以下の 2 つのメカニズムにより、負荷が過電圧
にさらされる可能性があります。
POWER SUPPLY REGULATED LINE
DC/DC
+
CIN(BULK)
SCR
CMLCC
LOAD
設計特集
LTM4641 は、出力過電圧を含む多くのフォルトから負荷を保護し、
回復させる 38V 定格の 10A DC/DC 降圧 µModule スイッチング ・
レギュレータです。
4
SHORT-CIRCUIT APPLIED
VINL, VINH
25V/DIV
4
VIN
4V TO 38V
4.5V START-UP
+
3
2
CROWBAR
5V/DIV
VOUT
200mV/DIV
MSP*
10µF
50V
×2
100µF
50V
3
VING VINGP VINH MTOP
1
SW
VOUT
VINL
1.1V VOUT PEAK
750k
この回路の動作を
1
video.linear-tech.
co.jp/143 で見る
MBOT
VOSNS+
LTM4641
RUN
TRACK/SS
10nF
MCB**
CROWBAR
fSET
UVLO
INTVCC
DRVCC
2
VOSNS–
COUT
100µF
×3
VOUT
1V
10A
5.49k
5.49k
LOAD
GND
OVPGM
IOVRETRY OVLO FCB LATCH SGND
5.6M
4µs/DIV
VIN = 38V
VOUT = 1V
OVERVOLTAGE TRIP THRESHOLD SET TO 5%
SGND CONNECTS TO GND INTERNAL TO µMODULE REGULATOR
* MSP: (OPTIONAL) SERIES-PASS OVERVOLTAGE POWER INTERRUPT MOSFET, NXP PSMN014-60LS
** MCB: (OPTIONAL) OUTPUT OVERVOLTAGE CROWBAR MOSFET, NXP PH2625L
図 2.LTM4641 は 500ns 以内に過電圧状態に応答し、
図 3.LTM4641 の出力過電圧保護回路図。プローブ・アイコンは
電圧ストレスから負荷を保護します。
図 2 の波形に対応します。
• 第 1 に、制御ループがなんとか安定状態を維
持することができていても、重いトランジェント
負荷ステップの発生により、設計開始時に予
想していたより大きい電圧変動が生じ得ます。
• 第 2 に、制御ループの安定性が条件付きにせ
よ崩れてしまった場合、出力電圧が発振して
許容限度を超える電圧ピークをもたらすことが
あり得ます。誤った誘電体材料が使用された
場合や、製造工程に偽造品の部材が入り込ん
だ場合には、コンデンサも予想外に劣化した
り、劣化時期が早まることがあります。
安い偽造部品のもたらす高い代償
グレー・マーケットやブラック・マーケットの偽
には節約に見えても長期的には巨額の出費に
重視するアプリケーションであっても同様です。
なってしまいます。
2012 年 5 月に公表された米国上院軍事委員会
たとえば、偽造コンデンサはさまざまな形で不良
になります。偽造タンタル・コンデンサについて
は、自己発熱がポジティブ・フィードバック・メカ
ニズムによって熱暴走を引き起こし破壊する例
が報告されています。偽造セラミック・コンデン
サには、粗悪な誘電体材料が使用されている可
能性があるので、年月が経過するか、動作温度
が高いと容量が急速に失われます。コンデンサ
が致命的に故障するか容量が低下して制御ルー
プが不安定になると、電圧波形の振幅が当初の
設計よりはるかに大きくなり、負荷を危険にさら
(SASC)の報告書によると、軍用機および兵器
システムには、性能と信頼性を損なう可能性が
ある偽造電子部品が広く使用されていました。
これらのシステムは、防衛産業における最高クラ
スの請負業者が製造したシステムです。こうした
システム内部にある電子部品がますます増加し
ている(新型の次世代主力戦闘機には 3,500 を
超える集積回路が搭載されている)ことと相まっ
て、偽造部品は、もはや無視できないシステム
の性能上および信頼性上の脅威となってしまっ
ています。
すことがあります。
リスク軽減計画
準規格には合致しません(偽造品は、たとえばリ
産業界にとっては残念なことですが、偽造部品
リスク軽減計画では、システムが過電圧状態に
サイクル部品だったり、家電製品の廃棄物から
は、サプライ・チェーンおよび電子機器の製造
の再生品だったり、粗悪材料で製造したものだっ
工程にますます紛れ込んできています。最も扱
たりします)。偽造部品が不良になると、短期的
いに注意が必要なアプリケーションや安全性を
造部品は(価格的に)魅力的ですが、本物の標
対してどのように応答し、そこからどのように回
復するかを検討する必要があります。過電圧フォ
ルトによって起きる発煙や発火の可能性は許容
2013年7月: LT Journal of Analog Innovation | 21
R1
20k
この回路の動作を video.linear-
tech.co.jp/148 で見る
4.5V START-UP
OPERATION UP TO 28VIN
CONTINUOUS, TRANSIENT
PROTECTED TO 80VIN
+
CIN(BULK)
100µF
100V
RT1
NTC
SWITCHING ACTION IS
TEMPORARILY LATCHED OFF IF
VIN EXCEEDS 80V; AUTONOMOUS
RESTART ATTEMPS OCCUR IN
9 SECOND INTERVALS WHEN INPUT
VOLTAGE RETURNS BELOW 80V. NOTE
LT3010-5 IS RATED FOR 80V, ABSOLUTE
MAXIMUM.
MSP
CIN(MLCC)
10µF
100V
×2
5V
D1
36V
2%
R2
8.25k
RfSET
1M
VINL
VING VINGP
VINH
SW
VOUT
fSET
図 4.LTM4641 と外部 LDO を使用した
D2
R3
2.7M
VIN
RROV
4.7M
OUT
LT3010-5
SENSE
SHDN
GND
LATCH
VORB+
HYST
FCB
LTM4641
VOSNS–
VORB–
TEMP
1VREF
OVPGM
OTBH
PGOOD
INTVCC
DRVCC
IOVRETRY
RUN
TRACK/SS
TMR
CSS
1nF
D2: CENTRAL SEMI CMMSH1-100G
MCB: NXP PSMN5R0-30YL
MSP: NXP PSMN028-100YS
RT1: MURATA NCP15WM474J03RC
されるものなのか ? 過電圧フォルトに起因する
VOSNS+
OVLO
RBOV
29.4k
MCB
CROWBAR
UVLO
最大 80V の入力サージ保護
COMP SGND
5V
100µF
6.3V
×4
VOUT
1V
10A
RSET1A
5.49k
RSET1B
5.49k
LOAD
LOCAL HIGH
FREQUENCY
DECOUPLING
GND
CTMR
1µF
SGND CONNECTS TO GND INTERNAL TO MODULE. KEEP SGND
ROUTES/PLANES SEPARATE FROM GND ON MOTHERBOARD
• ツェナー・ダイオードのブレークダウン電圧、
電源とフォルト保護の組み合せによる、
損傷により、根本原因を突き止めて改善措置を
サイリスタのゲート・トリガしきい値、および
高速・高信頼の応答と回復の実現
講じるための作業が妨げられることはないか ?
ヒューズを溶断するのに必要な電流のばらつ
より優れた解決策は、起こりつつある過電圧状
現地のオペレータが障害が発生したシステムの
きにより、応答時間が一定になりません。保
態を正確に検出し、入力電源を素早く切り離す
電源オン / オフ・サイクル(再起動)を行うと、シ
護回路が作動するのが遅すぎて、危険な電圧
一方で、負荷での過剰な電圧を低インピーダン
ステムの被害がさらに拡大し、かえって回復の
が負荷に到達することを防げない場合があり
ス経路で放電する方法です。これは LTM4641
妨げにならないか ? フォルトの原因を突き止め、
ます。
の保護機能を使用すれば可能となります。
通常のシステム動作を再開するために必要な手
順と時間はどれくらいか ?
従来の保護回路の欠陥
従来の過電圧保護方式は、ヒューズ、サイリスタ
(SCR)、ツェナー・ダイオードで構成されてい
ます(図 1)。入力電源電圧がツェナーのブレー
クダウン電圧を超えると、サイリスタが作動し、
上流のヒューズを溶断するために必要な電流が
流れます。
この素直な回路は比較的単純で安価ですが、こ
の手法には次のような欠点があります。
• また、フォルトから回復する際には、ヒューズ
を物理的に交換した後にシステムの再起動を
行うなどの人手による作業が発生します。
• デジタル IC のコアに電力を供給するラインを
保護する目的でサイリスタの使用した場合の
パワー・スイッチ、補償回路をすべて 1 つの表
面実装パッケージに統合した 38V 定格の 10A
降圧レギュレータです。ASIC、 FPGA、マイク
ロプロセッサなど高価な負荷を保護するため、
保護能力は限られています。大電流での順方
多彩なモニタ回路および保護回路も内蔵してい
向電圧降下が、最新のデジタル・プロセッサ
ます。LTM4641 は、入力低電圧、入力過電圧、
のコア電圧と同等以上であるからです。
これらの欠点により、従来の過電圧保護方式
は、数万円から数十万円もする ASIC や FPGA
などの高価な部品に電力を供給する、高電圧
から低電圧への DC/DC 変換の保護には適し
ていません。
22 | 2013年7月: LT Journal of Analog Innovation
このデバイスの心臓部は、インダクタ、制御 IC、
過熱、出力過電圧、および出力過電流について
常に監視しており、これらの状態が起きた場合
には負荷を保護するための適切な動作を行い
ます。
設計特集
基幹システムでの過電圧保護には、高速、正確、均一であることが要求されており、
従来の SCR/ ヒューズ・ベースの方式の能力を超えるレベルが必要です。LTM4641
は高効率の 10A DC/DC 降圧レギュレータで、厳しい保護要件を満たすため、高速で
高精度の出力過電圧保護回路を 1 つの表面実装パッケージ内に統合しています。
保護機能が誤って動作しないように、これらのモ
は無関係の専用の電圧リファレンスを使用して
まとめ
ミッション・クリティカルな電子機器の中には、
ニタ対象パラメータにはそれぞれグリッチ耐性
フォルト状態を検出します。これにより、制御ルー
とユーザが調整可能なトリガしきい値が組み込
プのリファレンスに一点障害が発生した場合へ
まれています。ただし、過電流保護は例外で、電
の耐性が得られます。
流モード制御によりサイクル単位で確実に実行
されます。出力過電圧の場合、LTM4641 はフォ
ルト検出後 500ns 以内に反応します(図 2)。
LTM4641 の保護機能は、そのフォルト回復オ
プションによって強化されています。従来の過
電圧ヒューズ / サイリスタ保護方式では、電源
LTM4641 は迅速かつ確実に応答して下流デ
を高価な負荷から切り離す機能をヒューズに依
バイスを保護し、さらにヒューズ・ベースの解
存しています。ヒューズが溶断するようなフォル
決策とは異なり、フォルト状態が治まった後、自
トから回復するには、人手による作業が必要で
動的にリセットして再起動することができます。
す。このため、稼働率が高いシステムや遠隔地
LTM4641 は内部の差動検出アンプを使用し
にあるシステムをフォルトから回復させるため
て、負荷の電源端子の電圧を安定化し、同相ノ
に、場合によっては許されないほどの時間が掛
イズと、 LTM4641 と負荷の間に生じる PCBト
かります。対照的に、LTM4641 では、ロジック・
レースの電圧降下に起因する誤差を最小限に
レベル制御ピンの状態を切り替えるか、規定の
抑えます。負荷での DC 電圧は、入力、負荷、
タイムアウト時間後に自律的に再起動するよう
温度の全範囲で ±1.5% より高い精度で安定
に LTM4641 を設定することにより、フォルト
化されます。この正確な出力電圧測定値は、高
状態が解消されれば通常動作を再開できます。
速の出 力 過電 圧コンパレ ータにも供 給され、
LTM4641 が動作を再開した後にフォルト状態
LTM4641 の保護機能の起動に使用されます。
が再発した場合は、前述した保護機能が即座に
過電圧状態を検出すると、µModule レギュレー
タはいくつかの並行した処理を速やかに開始し
ます。外付けの MOSFET(図 3 の MSP)によっ
て入力電源を切り離し、レギュレータおよび高
価な負荷から高電圧の経路を取り除きます。別
の外付け MOSFET(図 3 の MCB)によって低
インピーダンスのクローバー機能を実装し、負
荷のバイパス・コンデンサ(図 3 の COUT)を急
速に放電します。LTM4641 の内蔵 DC/DC 降
圧レギュレータはラッチオフ・シャットダウン状
態に移行し、HYST ピンで示されるフォルト信号
を送出します。システムはこの信号を使用するこ
とにより、十分に管理されたシャットダウン・シー
ケンスまたはシステム・リセットを開始すること
ができます。制御ループのリファレンス電圧と
再作動して負荷を保護します。
入力サージ保護
時 には、 出 力 過 電 圧 保 護 だ けで は 足りなく
12V∼28V の分散電源バスと低電圧の高性能
デジタル IC を組み合せた構成が増えつつあり
ます。リスクの軽減はこれまでにないほど重要に
なっており、この問題は特にバスが電圧サージ
の影響を受けやすい場合に深刻です。最新の高
価な FPGA、ASIC、およびマイクロプロセッサ
が要求する電源電圧の絶対最大定格は公称電
圧プラス 3%∼10% 程度と低く、極端に壊れや
すくなっており、過電圧フォルトが起きた場合に
は発火することすらあります。フォルトは、スイッ
チング ・レギュレータのタイミング誤差、入力電
圧サージ、または製造時に入り込んだ不適切な
部品が原因で発生することがあります。
基幹システムでの過電圧保護には、高速、正
確、均一であることが要求されており、従来の
SCR/ ヒューズ・ベースの方式の能力を超えるレ
ベルが必要です。LTM4641 は高効率の 10A
DC/DC 降圧レギュレータで、厳しいシステム要
件を満たすため、高速で高精度の出力過電圧保
護回路を 1 つの表面実装パッケージ内に統合し
ています。
て、入力過電圧保護が必要な場合もあります。
データシート、デモボード、およびその他のアプ
LTM4641 の保護回路は、入力電圧をモニタし
リケーション情報については、www.linear-tech.
て、ユーザが設定した電圧しきい値を入力電圧
co.jp/LTM4641 にアクセスしてください。n
が超えると、その保護機能を作動させることが
できます。予想最大入力電圧がモジュールの定
格である 38V を超える場合は、外部に高電圧
LDO を追加して制御回路と保護回路を稼働状
態に維持することにより、入力サージ保護範囲
謝辞
• Afshin Odabaee:リニアテクノロジー、µModule パワー製
品部門、製品マーケティング・マネージャ
• Yan Liang:リニアテクノロジー、アプリケーション・エンジ
ニア
を最大 80V まで広げて、LTM4641 を引き続き
完全に動作可能な状態にしておくことができます
(図 4)。
2013年7月: LT Journal of Analog Innovation | 23
LTspice IV の最新情報
Gabino Alonso
モデル、 デモ回 路、 イベント、 および
ユーザのヒントに関する最新情報については、以下の
Twitter サイトで @LTspice をフォローしてください。
video.linear-tech.co.jp/167
www.twitter.com/LTspice
ビデオ
降圧レギュレータ
ノイズ・シミュレーション
• LTC3838-2:DCR による電流検出機能を備え
(video.linear-tech.co.jp/167)
Tyler Hutchison(アプリケーション・エンジニ
ア)が、LTspice® .noise シミュレーションをセッ
トアップして入力換算と出力換算の両方の電圧
ノイズを表示する方法を示し、ノイズの発生要
因を洗い出すいくつかの裏技を説明します。
厳選デモ回路
昇圧および SEPIC レギュレータ
• LT3957A:効率の高い昇圧コンバータ
(入力:4.5V∼16V、出力:24V/600mA)
www.linear-tech.co.jp/LT3957A
• LTC3122:出力切断機能を備えた 5V 入力
/12V 出力の同期整流式昇圧コンバータ
(入力:1.8V∼5.5V、出力:12V/0.8A)
www.linear-tech.co.jp/LTC3122
• LTC3890-2:自動車用 12V SEPIC コンバータ
および 3.3V 降圧コンバータ(入力:5V∼
35V、出力:12V/2A および 3.3V/10A)
www.linear-tech.co.jp/LTC3890-2
昇降圧レギュレータ
• LT8705:通信機器用電圧スタビライザ
(入力:36V∼80V、出力:48V/5A)
www.linear-tech.co.jp/LT8705
た高効率、降圧 DC/DC コンバータ(入力:
4.5V∼14V、出力:0.4V∼2.5V/50A)
www.linear-tech.co.jp/LTC3838-2
• LTM8001:スーパーキャパシタによるバック
アップ電源を備えた2出力レギュレータ
(入力:
9V∼15V、出力:3.3V/1Aおよび 2.5V/0.5A)
www.linear-tech.co.jp/LTM8001
バッテリ・チャージャおよび LEDドライバ
• LT3651-8.4:最大電力点制御機能を備えた
4A、2 セル・チャージャ(入力:16V∼32V、
出力:8.4V/4A)
www.linear-tech.co.jp/LT3651-8.2
• LT3763:パルス幅変調方式の 20A シングル
LEDドライバ(入力:10V∼30V、出力:6V
LED/20A)www.linear-tech.co.jp/LT3763
昇降圧レギュレータ
• LTC3129:静止電流が 1.3µA の 15V、200mA
同期整流式昇降圧 DC/DC コンバータ
www.linear-tech.co.jp/LTC3129
• LTC3245:入力電圧範囲の広い、低ノイズの
250mA 昇降圧チャージポンプ
www.linear-tech.co.jp/LTC3245
降圧レギュレータ
• LTC3621/-2:静止電流が 3.5µA の 17V、1A
同期整流式降圧レギュレータ
www.linear-tech.co.jp/LTC3621
• LTC3639:高効率、150V 100mA 同期整流
式降圧レギュレータ
www.linear-tech.co.jp/LTC3639
• LTC3838-1/-2:デュアル差動出力検出機能を
備えた高速、高精度のデュアル降圧 DC/DC
ケーブル・ドロップ・コンペンセータ
コントローラ
• LT6110:電流基準の LDO を使用したワイヤ
損失補償(入力:4.9V∼15V、出力:3V/1A)
www.linear-tech.co.jp/LT6110
www.linear-tech.co.jp/LTC3838-1
PowerPath コントローラ
• LTC4417:12V の主電源から 14.8V のバッテ
リ・バックアップ電源への優先順位の切り替え
www.linear-tech.co.jp/LTC4417
LTspice IV とは
LTspice® IV は、電源設計の作業を迅速化するための高性能 SPICE シミュレータ、回路図入力プログラム、お
よび波形ビューワです。LTspice IV では、SPICE を拡張してモデルを加えたことにより、標準的な SPICE シミュ
レータと比較してシミュレーション時間が大幅に短縮されており、他の SPICE シミュレータでは数時間を要する
ほとんどのスイッチング ・レギュレータの波形を数分以内に表示できます。
リニアテクノロジーから無償で入手できます。
このダウンロー
LTspice IVは、www.linear-tech.co.jp/LTspiceで、
ドには、LTspice IV の完全機能版、リニアテクノロジーのパワー製品のマクロ・モデル、200 種類を超えるオペ
アンプ・モデル、ならびに抵抗、トランジスタ、MOSFET のモデルが含まれています。
24 | 2013年7月: LT Journal of Analog Innovation
厳選モデル
• LTC3883/-1:パワー・システム・マネージメン
ト機能を備えた単相降圧 DC/DC コントローラ
www.linear-tech.co.jp/LTC3883
反転および SEPIC レギュレータ
• LTM8045:最大出力電流が 700mA で反転
または SEPIC 構成の μModule DC/DC コン
バータ www.linear-tech.co.jp/LTM8045
設計上のアイデア
バッテリ・チャージャ
Hot Swap ™および PowerPath コントローラ
• LT3651-8.2/8.4:モノリシック4A高電圧2セル・
リチウムイオン・バッテリ・チャージャ www.
linear-tech.co.jp/product/LT3651-8.2
• LTC4226:動作範囲の広いデュアル Hot
Swap コントローラ
www.linear-tech.co.jp/LTC4226
ケーブル・ドロップ・コンペンセータ
• LTC4417:優先順位付け PowerPath コント
ローラ www.linear-tech.co.jp/LTC4417
• LT6110:ケーブル・ドロップ・コンペンセータ
www.linear-tech.co.jp/LT6110
発振器
• LTC6995-1/2:TimerBlox®:長時間タイマ、
低周波発振器
www.linear-tech.co.jp/LTC6995 n
パワー・ユーザのヒント
帯域幅全体でのノイズの積分
LTspice IV は回路の .noise 解析を実行できます。ここでは、出力ノイズや入力ノイズについて、あるいは抵抗、ダイオード、トランジスタのようなノイズを発生するいずれかの
部品について 1Hz 帯域幅のノイズ電圧密度(V/ √Hz)を簡単にプロットできます。
(.noise シミュレーションの実行方法について詳しくは、http://video.linear-tech.co.jp/167
で Tyler Hutchison のノイズ・シミュレーション・ビデオをご覧ください。)
LTspice では、帯域幅全体でノイズ
を積分することもできます。この機
能を使用するには、波形ビューワで
Ctrl キーを押しながらデータ・トレー
ス・ラベル V(noise) をクリックします。
これにより、.noise 指令で指定した
帯域幅に基づいて全 RMS ノイズが
表示されます。
.noise 指令で指定した帯域幅ではな
く、制限された帯域幅での全ノイズ
を計算する場合は、水平軸をクリッ
クして、波形ビューワの左側(低)と
右側(高)の周波数リミットを変更す
ることができます。波形に目的の帯
域幅を表示したら、Ctrl キーを押し
ながらデータ・トレース・ラベルをク
リックして、目的の帯域幅に基づく
全 RMS ノイズを表示します。
あるいは、特定の帯域幅での全ノイ
ズを計算する .measure 文を回路図
に追加し、それぞれのシミュレーショ
ン後に LTspice のエラー・ログ(Ctrl
+ L)に結果を表示することもできま
す。
(.measure 文の使用に関する詳
細については、 LTspice Help(F1)
および video.linear-tech.co.jp/115
のビデオをご覧ください。)
.measure 文を回路図に追加して、
ノイズの計算結果をエラー・ログに
生成します。
シミュレーションを楽しんでください !
2013年7月: LT Journal of Analog Innovation | 25
帯域幅が 30MHz を超え、SNR が 64dB で
SFDR が 80dB の 325MHz IF サンプリング・
システムのリファレンス・クロック分配
Michel Azarian
リファレンス・クロックのバッファ処理と分配によって RF レシーバに生
じたクロック・ジッタは、システム性能を制限することがあります。フロ
ントエンド・フィルタ要件緩和の成果を得る目的で比較的高い中間周
波数(IF)を使用する場合は、ジッタが小さいという要件がさらに重要
となります。この記事では、325MHz IF サンプリング・システムの設計
について詳しく説明し、発生するジッタを最小限に抑えつつ、正弦波の
リファレンス信号を、高速 A/D コンバータを駆動するのに適した 1 対
の差動 LVPECL クロックに変換するクロック・バッファおよび分配器を
紹介します。
分が含まれる場合、クロック・ジッタは SNR を
低下させる主要な誤差原因の一つになります。
したがって、 A/D コンバータのクロックのジッタ
は、図 1 の IF サンプリング・クロックに示すように、
できるだけ小さくしておくことが重要です。
A/D コンバータのクロック入力での AM-PM ノ
イズ変換を避けるため、クロックのスルーレート
は高くすることが必要であり、方形波が理想で
す。A/D コンバータのクロック入力はリミッタの
役目を果たし、信号を取り込み、入力信号のゼ
ロ交差(または他の基準)で判定することによっ
システムの説明
の SFDR(スプリアス・フリー・ダイナミックレン
て方形にします。AM-PM ノイズ変換が行われ
RF レシーバでのダウンコンバージョンの最終段
ジ)は、入力周波数が高くなるほど悪化します。
るのは、低周波または低振幅の正弦波のように、
を A/D コンバータが実行する IF サンプリング(ま
たはアンダーサンプリング)システムでは、IF の
周波数が高いほど、RFフロントエンドでのイメー
ジ除去フィルタの特性条件を緩和することがで
きます。このことはフィルタのコスト、サイズ、お
よび挿入損失の低減に役立ち、それによって増
幅の必要性が下げられるので、一層の低コスト
化および低消費電力化につながります。IF サン
プリングを採用している標準的な RF レシーバ・
チェーンを図 1 に示します。
比較的高い IF でレシーバを設計することのマイ
ナス面は、高い周波数のアナログ入力信号をサ
ンプリングする際の A/D コンバータの性能の低
下が、システム全体の性能に与える影響がより
大きくなることです。たとえば、A/D コンバータ
図 1.標準的なシングル IF 段
RF レシーバのブロック図
さらに重要なことは、より高い周波数の入力を
入力信号のスルーレートが低く、方形波と比較
サンプリングする際に、A/D コンバータのアパー
するとスロー・モーションのような信号の場合で
チャ・ジッタとそのクロック・ジッタの組み合わ
あり、信号がゼロ交差点を通過する時点です。
せによる影響が、信号対ノイズ比(SNR)を低下
抵抗の熱ノイズ、電源からのノイズなど、何らか
させ始めることです。
の種類の AM ノイズが存在すると、入力信号の
クロック・ジッタの影響を実例で示すには、同じ
A/D コンバータと同じクロックを使用し、2 つの
スルーイング信号(一方は他方より傾斜の高い
信号)をサンプリング中、クロック・ジッタに起因
する電圧誤差の大きさを比較します。図 2 に示
すように、 2 つの信号をサンプリングしていると
き、
このクロックには同じ大きさの時間ジッタ(tJ:
単位は s-RMS)が存在します。変動速度が速い
してリミッタの出力でジッタが発生することにな
るので、AMノイズは PMノイズに変換されます。
ところが、入力信号がゼロ点を交差する場合で
も、LVPECL 信号の立ち上がり時間および立ち
下がり時間が短いため、クロックに加えられた
AM ノイズが PM ノイズに変換されることほとん
どありません。
信号に対する方が、クロック・ジッタの不確実性
の影響が大きいので、アナログ入力に高周波成
ANTENNA
IF SAMPLING
DOWN-CONVERTING
MIXER
BPF
BAND
SELECTIVITY
FILTER
26 | 2013年7月: LT Journal of Analog Innovation
ゼロ交差点はエッジ間で一致しなくなり、結果と
LNA
BPF
BPF
IMAGE
REJECTION
FILTER
IF
SELECTIVITY
FILTER
LO
ADC
IF SAMPLING
CLOCK
DIGITAL PROCESSOR
設計上のアイデア
比較的高い IF でレシーバを設計することのマイナス面は、高い周波数のアナログ入力信号を
サンプリングする際の A/D コンバータの性能の低下が、システム全体の性能に与える影響が
より大きくなることです。たとえば、A/D コンバータの SFDR(スプリアス・フリー・ダイナミッ
クレンジ)は、入力周波数が高くなるほど悪化します。さらに重要なことは、より高い周波数
の入力をサンプリングする際に、A/D コンバータのアパーチャ・ジッタとそのクロック・ジッタ
の組み合わせによる影響が、信号対ノイズ比(SNR)を低下させ始めることです。
リファレンス・クロックは、一般に OCXO デバイ
図 2.低速および高速で変化する信号を
デジタル化する際のクロック・ジッタの影響
スまたは TCXO デバイスから発生させており、
SLOW INPUT SIGNAL
通常は非常に低いジッタと位相ノイズを有して
FAST INPUT SIGNAL
います。受信 RF チャネルの帯域幅(または 2 つ
以上の隣接チャネルを同時にデジタル化するレ
シーバでは複数チャネルの帯域幅)の 2 倍より
VERROR(FAST)
適度に高くなるように PLLリファレンス周波数を
VERROR(SLOW)
選んで、正しい周波数計画を実施した場合には、
同じリファレンス・クロックを IF サンプリング A/
D コンバータに使用することも可能です。IF フィ
ルタの通過帯域とその移行帯の大部分が A/D
コンバータの単一のナイキスト・ゾーンに収まっ
て周波数が折り返さないようにするのが理想で
す。これは図 3 に示す IF フィルタ振幅応答を見
tJ
ることによって明確になります。ここで、 IF は A/
D コンバータの第 7 ナイキスト・ゾーンに合致す
るように選択します。図 3では、fS は A/Dコンバー
また、最新の A/D コンバータは最高の性能を実
図 1 に示す LO 信号の発生元は、通常はフェー
タのサンプリング・レートを表します。この場合、
現するためにクロック入力を差動で駆動すること
ズロック・ループ(PLL)
システムです。PLL では、
図 1 の LO は、ミキサーでダウンコンバートした
が必要です。クロック信号の送信元と送信先を
LO のロック元としてリファレンス・クロックが必
中間周波数帯域の中心が、図 3 に示した IF 選択
互いに近づけて配置することは通常ないので、
要です。従来は 10MHz が一般的なリファレン
フィルタの中心にくるように選択します。
クロック信号の配線は一般に PCB 上でかなり長
ス周波数でした。しかし、現在ではより高周波の
い距離になります。クロック信号を差動形式で送
リファレンス・クロックが一般的になりつつあり
ると、結合の影響を受けなくなり、シングルエン
ます。現に、最近の RF 設計では 100MHz 以上
ドのクロック配線と比べて全体としてより堅牢な
のリファレンス周波数は珍しくありません。
図 3.周波数の折り返しを防ぐA / Dコンバータの
サンプリング・レートを基準にした IF フィルタ振幅
です。図 4 のクロック・バッファおよび分配器は、
このシステムで非常に重要な役割を果たします。
IF SELECTIVITY FILTER
AMPLITUDE RESPONSE
設計になります。
図 4 は、リファレンス周波数を 100MHz と仮定
して、前述したクロック分配方式をまとめたもの
応答の例
1st fS/2 2nd fS
NYQUIST NYQUIST
ZONE
ZONE
3fS/2
2fS
5fS/2
3fS
7th 7fS/2
NYQUIST
ZONE
FREQUENCY
2013年7月: LT Journal of Analog Innovation | 27
LTC2153-14 は、高いアナログ入力周波数について性能を規定
した 310Msps、14 ビット A/D コンバータなので、このような IF
サンプリング A/D コンバータとして適しています。
回路の実装
CLOCK BUFFER AND DISTRIBUTER
図 4.リファレンス・クロック
分配方式
前述したように、ジッタは IF を高くした場合の
性能を制限する主な要因の 1 つです。一般的
100MHz IF SAMPLING CLOCK, LVPECL
100MHz
な A/D コンバ ータへ のクロック分 配 器として
REF IN
SINEWAVE
LTC6957-1 を使用した場合にどれ位の性能が
PLL
LO
100MHz PLL REF, LVPECL
得られるかを調べるために、図 5 に示すようにリ
ニアテクノロジーの 2 つのデモ回路を変更して
接続してみました。
LTC2153-14 は、高いアナログ入力周波数に
OCXO デバイスまたは TCXO デバイスからシ
の少ないデュアル LVPECL 出力クロック・バッ
ついて性能を規定した 310Msps、 14 ビット A/
ングルエンドの正弦波を受け取り、A/D コンバー
ファで、このアプリケーションに適しており、前述
D コンバータなので、このような IF サンプリング
タおよび PLL への転送に適した 2 種類の差動
したすべての条件を満たしています。LTC6957
A/D コンバータとして適しています。そのデモ
LVPECL 信号を配信しています。クロック・バッ
の別のバージョンを選ぶことにより、他の出力
回路 DC1565A-G を図 5 に示すように変更しま
ファおよび分配器はこの役割を果たしながらも、
形 式を採 用 することもできます。LTC6957-2
した。
分配クロックに加わるジッタを最小限に抑えな
は LVDS 出 力 を 備 えて おり、LTC6957-3 と
ければなりません。LTC6957-1 は、付加ジッタ
LTC6957-4 は CMOS 出力を備えています。
図 5.315.5MHz の入力テスト・トーンと
100MHz のリファレンス・クロックを使用す
0.01µF
315.5MHz
る 2 つのリニアテクノロジー・デモボードを
T1
5.1Ω
BPF
用いた IF サンプリング・システムの回路図
LTC2153-14
5.1Ω
AIN+
DA13
54Ω
6dB PAD
0.01µF
•
•
•
100Ω
5.1Ω
54Ω
5.1Ω
50Ω
T1: MABA-007159-000000
0.01µF
0.1µF
AIN–
•
•
•
DA0
VCM
ENC+
2.2µF
ENC–
100Ω
MODIFIED DC1565A-G DEMO BOARD
ADDITIVE JITTER = 145fS(RMS)
3.3V
0.1µF
0.01µF
LTC6957-1
FILTA
100MHz
0.01µF
10dBm
SINEWAVE
3dB PAD
50Ω
0.01µF
50Ω
DC1765A-A DEMO BOARD
28 | 2013年7月: LT Journal of Analog Innovation
SD1
+
OUT1+
IN+
OUT1–
IN–
OUT2–
GND
OUT2+
V
FILTB
0.01µF
SD2
±PECL1OUT, 100MHz IF SAMPLING CLOCK
±PECL2OUT, 100MHz PLL REF
130Ω
130Ω
130Ω
130Ω
14-BIT OUTPUT
TO PC & PScope
設計上のアイデア
LTC6957-1 付加ジッタの計算
サンプリング・システムでは、ジッタは通常、2 段階の手順で測定されます。第 1 段階では、ジッタがノイズの大
LTC6957-1 を搭載したデモ回路 DC1765A-A
きな発生要因ではない –1dBFS で比較的低周波のアナログ入力トーンを入力して基準線の SNR 測定を行いま
を使用して、 100MHz OCXO の正弦波出力
す。この測定を SNR_BASE と呼びます。2 回目の測定は、1 回目の測定と同じサンプリング・クロック信号源を
を バッファ処 理します。DC1765A-A の 差 動
LVPECL 出力の一方を DC1565A-G の差動エ
使用しますが、周波数の高いアナログ入力トーンを入力します(引き続き -1dBFS)。ジッタによる SNR の低下
の影響が無視できなくなるほど高い入力周波数を選んだ場合には、 2 回目の測定で SNR が低下します。この 2
回目の測定を SNR_DEGRADED と呼びます。2 回目の測定では、サンプリング・クロック、A/D コンバータのア
ンコード・クロック入力に接続します。もう一方
パーチャ・ジッタ、アナログ入力信号など、ジッタの発生源が複数考えられることに注意してください。2 回の測
は、図 1 に示した PLL を発生する LO のリファレ
定の RMS 値の差をとることにより、 A/D コンバータのアナログ入力における量子化ノイズと熱ノイズの影響を
ンス入力として使用できます。
A/D コンバータが 100MHz のクロックで動作す
るとした場合、折り返しエラーが発生しないよう
にした上で理論上実現可能な最大の帯域幅は
50MHz です。図 3 に示したように、第 7 ナイキ
スト・ゾーンを選択しているので、この 50MHz
の理 想 帯 域 幅は 300MHz∼350MHz の周 波
数範囲をカバーすることになります。このために
除いた、高い入力周波数でのジッタによる SNR の低下が得られます。この計算値を SNR_JTTR と呼びます。こ
れら 3 つの用語は次のように関連しています。
 − 1 SNR _ DEGRADED)
− 1 SNR _ BASE) 

SNR _ JTTR = − 10 log 10 10 ( 10
− 10 ( 10
アナログ入力トーンが周波数 fIN の場合、 A/D コンバータのエンコード入力での全ジッタの tJ の大きさに起因す
る SNR (SNR_JTTR) の値は次のとおりです。
SNR _ JTTR = − 20 log 10 (2 π fIN t J )
これら 2 つの式を組み合わせて tJ について解くと、前述した 2 回の測定結果からシステムのジッタを直接計算す
る式が得られます。
は、 300MHz∼350MHz の範囲に存在する IF
情報だけを通過させ、その一方で、折り返しを
発生して目的の帯域に干渉するすべての信号を
tJ =
1log
10 2


10 10
(
)
(
)
− 1 SNR _ DEGRADED
− 1 SNR _ BASE 
10

−10 10
2πfIN
LTC6957-1 のジッタへの影響は、前に概説した手順に従って測定します。図 5 に示す回路図に基づいて 2 回の
除去できる、中心周波数が 325MHz で通過帯
測定を行います。1 回目はもともとあるシステム・ジッタを測定します。これには、A/D コンバータのアパーチャ・
域が 50MHz の理想的なバンドパス・フィルタ
ジッタや 100MHz と 315.5MHz の信号源のジッタが含まれていますが、LTC6957-1 のジッタは含まれていま
が必要です。
せん。2 回目の結果には、 LTC6957-1 のノイズへの影響が含まれています。2 回の測定間での RMS 値の差を
とることにより、LTC6957-1 が付加したジッタが得られます。
実際のフィルタではフィルタの通過帯域と遮断
領域の間に移行帯があり、更に中心周波数の許
LTC6957-1 の影響を除いた、もともとのシステム・ジッタは、トランスを使用して、100MHz、13dBm の信号
源を A/D コンバータのエンコード入力に直接接続し、クロック入力を差動で駆動することによって求めます。
帯域幅を選択すると、たとえば中心が 325MHz
2 回の SNR 測定を、高調波成分を除いて行います。1 回目は、A/D コンバータのアナログ入力に 10MHz、–1
dBFS の正弦波を入力し、67.8dB という結果でした。A/D コンバータのアナログ入力に 315.5MHz、–1 dBFS
のトーンを入力して 2 回目の SNR 測定を行った結果、 SNR は 65.3 dB となりました。前の説明で得られている
付 近 にあり帯 域 幅 が 30MHz の 表 面 弾 性 波
式により、もともとのシステム・ジッタを計算します。
容範囲が加わるので、この場合さらに適正な IF
(SAW)フィルタになります。この周波数範囲内
での SAW フィルタは、簡単に手に入るようにな
りつつあります。
TOTAL INTRINSIC SYSTEM JITTER =


10 10
( )
( )
− 65 .3
− 67 .8 
10 −10 10 
2 π • 315 . 5M
= 181fS (RMS )
図 5 に示すように、 LTC6957-1 をシステムに加えた後のシステム・ジッタを求めるには、同様な 2 組の測定を
別途行います。前の段落で説明したように、まず 10MHz のアナログ入力で測定し、次に 315.5MHz のアナログ
性能のまとめ
入力で測定します。SNR の 2 つの数値は、それぞれ 67.8 dB および 64.24 dB です。前と同じジッタの式を使用
315.5MHz のテスト・トーンを、IF 選択フィル
すると、全システム・ジッタは次のようになります。
タに似た BPFとアッテネータを介して変更後の
DC1565A-G のアナログ入力に接続し、 A/D
コンバータ側から見た振幅を –1dBFS に調整
します。
TOTAL SYSTEM JITTER =
1log
10 2


10 10
(
)
( )
− 64 .24
− 67 .8 
10 −10 1 0 
2 π • 315 . 5M
= 232 fS (RMS )
もともとのシステム・ジッタと全システム・ジッタの RMS 値の差をとると、LTC6957-1 の付加ジッタへの影響が
分かります。
DC1565A-G は USB を介して PC に接続されま
す。PC では、PScope
1log
10 2
LTC6957 – 1 ADDITIVE JITTER = 232 2 − 1812 = 145 fS (RMS )
1 データ収集制御ソフトウェ
アを使用して、レシーバの品質に影響する 2 つ
2013年7月: LT Journal of Analog Innovation | 29
低ジッタのクロック・バッファおよび分配器(LTC6957-1)を採用して 100MHz のシステム・リファレンス・
クロックを LVPECL 形式で分配し、A/D コンバータのサンプリング・クロックおよび PLL リファレンスとして
使用します。IF サンプリング・システムの性能は、SNR と SFDR の数値を調べることによって評価します。測
定の結果、64dB という優れた SNR と、80dB という抜群の SFDR が実現されることが示され、高い IF サン
プリング周波数を用いることによる RF イメージ除去フィルタの要件緩和が可能であることが示されました。
の非常に重要なパラメータを調べます。それは
LTC6957-1 の 入 力 は 100MHz の 正 弦 波で、
ム・リファレンス・クロックを LVPECL 形式で分
SNR および SFDR です。動作中の PScope™ を
50Ω 終端での電力が +10dBm なので、その内
配し、A/D コンバータのサンプリング・クロック
図 6 に示します。131072 ポイントの FFT(フー
部帯域幅制限フィルタ(FILTA および FILTB)
および PLL リファレンスとして使用します。IF サ
リエ変換)解析に加えていくつかの解析結果が
は、LTC6957 データシートの推奨に従って、両
ンプリング・システムの性能は、SNR と SFDR
表示されています。ここでは、 A/D コンバータの
方ともオフにしています。これらのフィルタは、入
の数値を調べることによって評価します。測定の
アナログ入力として 315.5MHz、–1dBFS のトー
力振幅が小さいか入力周波数が低い、あるいは
結果、64dBという優れた SNRと、80dBという
ン、および A/D コンバータのエンコード・クロッ
その両方が低い場合、付加ジッタの量を減らす
抜群の SFDR が実現されることが示され、高い
クとして LTC6957-1 によってバッファ処理され
のに役立ちます。
た 100MHz の LVPECL 信 号 を 使 用していま
す。図 6 から分かるように、達成された SNR は
まとめ
64dB を超えており、SFDR は 80dB を超えてい
RF レ シ ー バ の 一 部 として、325MHz IF サ
ます。これらは 325MHz IF サンプリング・シス
ンプリング・システムを 構 築し、 評 価しまし
テムとして非常に優れた値です。
た。低ジッタのクロック・バッファおよび分配器
(LTC6957-1)を採 用して 100MHz のシステ
図 6.図 5 に示すシステムの FFT と
達成された信号品位パラメータを示す
PScope のスクリーンショット
30 | 2013年7月: LT Journal of Analog Innovation
IF サンプリング周波数を用いることによる RF イ
メージ除去フィルタの要件緩和が可能であるこ
とが示されました。n
注記
1 PScope は、A/D コンバータからデータを収集して、時間領
域と周波数領域の両方で分析し、関連パラメータを表示しま
す(www.linear-tech.co.jp でダウンロード可能)。
設計上のアイデア
画像入力用のほぼノイズのない
A/D コンバータ・ドライバ
Derek Redmayne
CCD(電荷結合デバイス)やその他のセンサは、サンプリング・レートと信号対ノイズ比の両方の観点から
デジタイザに厳しい要求を突き付けています。センサの出力は、通常はグランドを基準にした一連のアナロ
グ・レベル(画素)であり、画素の境界でトランジェントが発生する可能性があります。画素数が増えると、画
像を取り込むために必要な A/D コンバータのサンプリング・レートも同様に高くなるので、ダイナミックレン
ジの広い大半のアプリケーションでは 20Msps のパイプライン A/D コンバータで十分です。サンプリングし
た信号の SNR を確保するためには、A/D コンバータのドライバ回路が低インピーダンス、高速セトリングを
実現した上で、広帯域ノイズを発生させず、またセンサに対して高い入力インピーダンスを持つようにする
必要があります。
この記事では、SNR 性能を損なわない、センサ
そこには次のようなジレンマがあります。A/D コ
があるか、あるいは利得が 1 より小さい(ノイズ
と高性能 A/D コンバータの間のインタフェース
ンバータの SNR を損なうことなくシングルエン
の利得が 2 より小さい)場合の安定度が低く、リ
回路について説明します。16 ビットのパイプラ
ドから差動への変換を実行できる差動アンプ
ンギングを発生しがちであるなどの問題を抱え
イン A/D コンバータ・ファミリである LTC2270
は、必然的に入力インピーダンスが低くなり、素
ています。多くのアンプ は、 1.8V の A/D コン
は、ハイエンドの画像入力アプリケーションを対
早く16 ビット精度までセトリングする必要がある
バータとコモンモードの互換性がないか、 二
象としています。このファミリの 84.1dB の SNR
ので、A/D コンバータ自体の消費電力の約 4 倍
重終端フィルタまたはアンプの後段でのレベル
は画 像 入 力 用として魅 力 的ですが、SFDR も
の電力を消費すると考えられます。差動アンプ
シフトに対応する余裕がありません。それでは
非常に優れています(100dB 超)。入力範囲は
LTC6409 は良好な結果をもたらす一例ですが、
LTC6404 について見てみましょう。このデバイ
2.1VP–Pと、大半の画像入力デバイスの出力よ
260mW を消費し、レベルシフトを行うためだけ
スはユニティゲインで安定しており、他のアン
り非常に狭いので、減衰とレベルシフト処理が
に周辺の回路網の電力損失が約 40mW 必要で
プがリンギングする場合もリンギングが発生せ
必要です。
す。さらに、低ノイズを実現し、位相余裕を維持
ず、アンプの後段に減衰器を接続して使用でき
するために必要な比較的値の小さな抵抗でも信
る可能性があります。それでいて入力換算ノイ
号の電力を損失します。
ズは 1.5nV です。これは LTC6409 の 1.1nV に
これらの A/D コンバータの入力は、十分にバラ
ンスのとれた差動信号で駆動する必要がありま
す。通常センサから得られるシングルエンドの出
結果として、これらの差動アンプは低入力イン
力を直接取り込むことは、内部の仮想グランドに
ピーダンスになります。CCDに対して高インピー
同相入力電流が流れることを意味しており、性
ダンスを持つことが必要なバッファにもジレンマ
能の低下につながります。これらの A/Dコンバー
があります。それには、低ノイズ、 25nsec 未満
タは、80mW/ チャネルと非常に低消費電力でも
でのセトリング能力、トランジェント時に閉ルー
あります。シングルエンド駆動では A/D コンバー
プ動作を維持するために十分な dV/dt 性能の
タ内に安定した内部リファレンス点を維持する
スルーイング能力が必要です。さらに、差動アン
ための余分な電力が必要なので、低消費電力動
プの低い入力インピーダンスを駆動できること
作のためには差動駆動が必須です。これらのデ
も必要です。にもかかわらず、アプリケーション
バイスは 1.8V 電源で動作し、それに近い入力
は低消費電力を要求しています。アンプが単電
電圧範囲を取るので、デジタル信号線からは遠
源レールで動作することを要求されている場合、
ざけてください。内部保護ダイオードの電圧可
このジレンマはさらに大きくなります。
変容量による差動位相誤差の発生を防ぐために
は、デジタル信号線からなるべく遠ざけることが
重要です。
匹敵します。LTC6404 のノイズ密度のピークは
100MHz より相当高い周波数に位置し、消費
電力は 175mW であり、 LTC2270 が要求する
900mV のコモンモード電圧には適合しません。
LTC6404 の後段にフィルタとレベルシフト回路
を置いた場合には、インピーダンスは低くする
必要があり、分割抵抗で約 80mW を消費するこ
とになります。場合によってはアンプを +3.3V お
よび –2V で動作させ、アンプの後段にレベルシ
フト回路を置かずに同相互換性の問題を解決し
て大振幅の信号を発生させることができます。し
かし、負電源が設計者にとって好ましいことはあ
まりありません。
大半の差動アンプは、アンプの後段での帯域
制限をセトリングに影響する程度まで行う必要
2013年7月: LT Journal of Analog Innovation | 31
16 ビットのパイプライン A/D コンバータ・ファミリである LTC2270 は、ハイエンドの画像入
力アプリケーションを対象としています。このファミリの 84.1dB の SNR は画像入力用として
魅力的ですが、SFDR も非常に優れています(100dB 超)。入力範囲は 2.1VP–P と、大半の
画像入力デバイスの出力より非常に狭いので、減衰とレベルシフト処理が必要です。
R16
100Ω
R23
120Ω
R3
BUFF+ 402Ω
–
CCD
R1
75Ω
R21
50Ω
+
L7
220nH
+
U2
LT1395
R24
1.5k
–
R19
604Ω
BUFF–
C6
22pF
L3
22nH
R14
8.2Ω
L4
22nH
L1
47nH
L5
27nH
C4
3.3pF
R13
22Ω
C9
3.3pF
L2
47nH
L6
27nH
C3
3.3pF
R18
8.2Ω
C8
3.3pF
R22
22Ω
R26
100Ω
BUFF+
PROVIDED BY
IMAGING
SUPPLY BOARD
CMA+
V5
0.9V–1.1V
R27
100Ω
R11
50Ω
R7
820Ω
R4
453Ω
R17
332Ω
R6
820Ω
R5
453Ω
R15
332Ω
+
+
–
+
U1
LT1395
–
CFAOUT
LTC2270
AIN+
R9
25Ω
C1
17pF
C5
1.8pF
C2
1.8pF
R10
25Ω
AIN–
R12
50Ω
CMA+
–
T1
tD = 300ps
Z0 = 50Ω
C7
17pF
C10
1.8pF
T2
tD = 300ps
Z0 = 50Ω
COMMON MODE SERVO
CMA–
R25
1.5k
+
–
V2
8V
+
–
V4
5V
+
–
V1
2V
+
–
V3
5V
BUFF–
R20
604Ω
R2
100Ω
+
–
V6
LTC6655
2.25V
CMA–
図 1.CCD と高性能 A/D コンバータのインタフェースを行う、ほぼノイズのない回路
アンプがクロック・サイクル全体をセトリング時
ると、フィルタによるセトリングのための時間は
150MHz に広げて、外乱に対するアンプのセト
間として利用できるとは限りません。信号源がこ
十分には残りません。
リング時間をある程度見込む必要があることを
れに影響する場合がありますが、クロックの反対
側のエッジには A/D コンバータによって外乱が
生じるので、アンプがその他の点では乱されて
いない場合でも、セトリングのためにフィルタに
与えられるのはクロック・サイクルのわずか半分
にすぎません。この状況によってアンプが乱され
32 | 2013年7月: LT Journal of Analog Innovation
単純な RC フィルタでは、16 ビット精度までセト
リングするまでに時定数の 14 倍の時間が必要
であり、 20Msps の場合、これは約 90MHz の
帯域幅になります。いずれにせよアンプはサンプ
リングによってある程度乱されるので、このこと
は単純な後置フィルタの帯域幅を 130MHz∼
意味しています。残念ながら、これではアンプの
ノイズがピークを示す帯域がフィルタを通過して
しまいます。高次のフィルタを使えば低域のナイ
キスト・ゾーンからのノイズの影響を除去できる
かもしれませんが、必ずしも高速にセトリングす
るわけではありません。
設計上のアイデア
画像入力アプリケーションで SNR の高い A/D コンバータが必要な場合は、
CCD からの信号を A/D コンバータに送るためにシングルエンド / 差動変換が
必要です。この変換では、信号の振幅を減衰させて、大きなノイズを加える
ことなく、非常に安定した同相出力レベルを実現する必要があります。
図 2.画像入力基板の試作品
図 3.0.5 平方インチの 4 出力電源の
試作品
ここで説明した方法では、 84.1dB の SNR およ
一見エミッタからのように見えますが、実際の電
れより狭い場合、これは不要である可能性があ
び 17pF のサンプル・コンデンサをもつ 25Msps
力は出力から供給されます。
ります。
の LTC2270 ファミリを駆動できます。20Msps
以下のサンプリング・レートでは、インピーダン
スを高くして消費電力を減少させることができま
す。30Msps より高いサンプリング・レートでは、
高速バッファの後段に LTC6409 のような差動
アンプを置いた、より従来型の回路構成が必要
です。その場合には、代わりに LTC6404-1 を
使用できます。
ほぼノイズのない推奨回路
図 1 の 回 路 は、LTC2270 ファミリを 使 用し、
SNR の損 失 がほとんどないにもか か わらず、
25Msps で 1 画素以内に 16 ビット精度までセト
リングできる推奨の駆動方式を示しています。ノ
イズが(すべて込みで)–84.0dB ということは、
必ずしも 1 フレームでは 16 ビットの解像度は得
られないが、複数のフレームを平均化すること
により 16 ビットの精度が得られることを意味し
ています。
バッファ・アンプ(U2)は、基本的にエミッタ・フォ
ロワとして使用される電流帰還アンプです。出力
電流のほとんどは R16 を経由して取り出され、
反転入力でのインピーダンスは帰還回路網と比
R24 は万一の場合の備えであり、将来は U2 を
べて低いので、出力ノイズは反転入力で減衰さ
出力から電力を取り出せる別のアンプに交換す
れ、その結果、反転入力のノイズ電流はあまり
る可能性を想定しています。必要なスルーイン
影響を及ぼしません。このアンプの電圧ノイズ
グ能力に応じて、いくつかの代替手段が考えら
規格は 4.5nV/ √Hz ですが、単位利得バッファと
れます。低ノイズでセトリングが高速の FET アン
して使用した場合は、反転入力のノイズ電流が
プを単電源で使用できるかもしれません。レー
最小値の帰還抵抗に流れると 10.1nV/ √Hz のノ
ル・トゥ・レール・アンプでは、正のレールを 6V
イズが発生します。ただし、このエミッタ・フォロ
にして 2 つの入力段間の遷移領域(歪みを生じ
ワのような動作モードでは、1.5nV/ √Hz∼2nV/
る領域)を通過しないようにする必要がありそう
√Hz 程度になると考えられます。
です。LT1395 を使用する場合で、 0V∼5V の
アンプの周囲には帰還ループがあり、このアン
プでは帰還抵抗を 400Ω 以上に設定する必要
信号を受け取る予定の場合は、VCC を 7.5V∼
8V にして VSS を –2V にする必要があります。
があります。ただし、周波数が低いとき帰還イン
画素間のフルスケール・ステップを通じてセトリ
ピーダンスは 400Ωと R23 の並列になるので、
ングする必要がない場合は、 LT6252 などの低
出力で必要な電圧変位は減少します。しかし周
消費電力アンプを使用できます。ただし、不良
波数が高いときは、 400Ω 以上の帰還抵抗にな
画素は後続の画素をにじませると考えられます。
ります。
クロックの回り込みが存在する場合や実際に使
出力で発生する必要な電圧変位を下げるためだ
けに、 R24 を経由して出力から取り出される少
えるセトリング時間によっては、これらの選択が
制限される可能性があります。
量の出力電力があります。しかし、多くの場合、
たとえばビデオ信号の範囲が 0V∼4V またはそ
2013年7月: LT Journal of Analog Innovation | 33
図 4.70kHz での –7.022dBfs
正弦波による 2トーン・テスト、
ナイキスト・ゾーンでは –7.01dB
の同期方形波
2番目のアンプもLT1395ですが、アプリケーショ
下のテストは R1 を 75Ω にして、50Ω の信号源
この回路構成が実用的なのは、A/D コンバータ
ンがグランド電位を中心にした信号を必要とし
で行いました。
この回路は、CCDの出力インピー
の入力電圧範囲が約 2VP–P で、CCD の信号が
ていない限り、これをデュアルの LTC1396 に置
ダンスが 50Ω∼200Ω の範囲にあるか、保持コ
0V∼4V または 0V∼5V 程度である場合だけで
き換えることはできません。この 2 段目は 5V お
ンデンサへの電荷移動によって数百 Ω の実効イ
す。この回路構成では、同相電圧を制御するこ
よび –5V で動作させる必要があります。それは、
ンピーダンスが発生する場所に適しています。
とによってバラン動作を実現するために必要な
シンク電流を流し、約 2.5V の同相電圧から0.9V
高速 FET バッファを使用することにより、非常に
減衰をうまく利用しています。これは伝送線路バ
の同相電圧へのレベルシフトを実行するためだ
高い信号源インピーダンスを受け入れられる可
ラン・トランスに似ています。伝送線路バラン・
けでなく、同相電圧の制御によって差動での駆
能性があります。
トランスは、AC グランドに対称的に終端した場
動を実現するためです。このアンプのノイズと歪
みが影響するのはその同相成分だけなので、ア
ンプ周辺の回路網が完全に対称になっていると
仮定すると、ノイズと歪み影響の大部分は A/D
コンバータの CMRR によって除去されます。
CCD か ら の ト ラ ン ジ ェ ン ト 時 の dV/dt が
LTC1395 のスルーレートを超える場合や RFI
が存在する場合には、22pF のコンデンサ C6 が
合、入力ポートと出力ポートの間の同相インピー
ダンスが高いために、結果として平衡駆動にな
ります。
必要です。CCD はこれ位の大きさの容量性負
図に示すようにフィルタはガウス分布のような応
荷には耐えられるように思われます。LTC1395
答を示し、約 40MHz で 3dB 低下します。U1 の
弊 社では、 5V 単 電 源 入 力 から必 要 な 4 種 類
の出力段に保持能力がない場合は、入力保護ダ
誤差の影響を同相として維持する対称な回路網
の電圧をすべて供給する電源基板を開発しま
イオードの導通によって入力インピーダンスは
を実現するため、フィルタは別個に 2 回折り返さ
した。この電 源 回 路は 4 チャネルの電 力を供
大幅に低下します。この導通は、ほとんどすべて
れます。
給できるにもか か わらず、 LT3471 が 使 用 す
の帰還アンプで起こります。そして電荷移動構造
る 1.2MHz のスイッチング・レ ートの 影 響 が
がこの入力電流にさらされた場合は、CCD 内部
–125dBFS 以下に抑えられています。
でバッファされていたとしても、誤差が発生しま
既に示したように、このドライバは A/D コンバー
タとの組み合わせにより、電源基板による影響
を含めて 84.0dB の SNR 性能を発揮します。以
34 | 2013年7月: LT Journal of Analog Innovation
す。R21 は、 C6とアンプの間の距離が長くなっ
た場合、信号源の終端として望ましい可能性が
あります。
R7、R4、R17 とこれらの対になる抵抗が U1
の安定性の要件を満たし、0V∼5V の信号を
±1V に減衰してレベルシフトも実現します。こ
れらの素子は、実際には A/D コンバータの後段
に置いて終端として動作させることができます。
こうすると、セトリング時間は多少短くなります。
設計上のアイデア
図 5.70kHz での同一の印加
電力レベル、ただしナイキスト・
ゾーンでは電力を除去
CCD と A/D コンバータとの距離が離れている
および 5MHz)と、重畳された –20dB の正弦波
場合は、シミュレーション結果によると、 1 対の
(200kHz)であり、 1 対の「白黒画素」での大
50Ω 抵抗間の伝送経路を長くして R16 を置き換
きな同期電圧変位に起因する歪みは正弦波に
えてもかまいません。距離が 30cm から最大で
現れていません。
約60cmの場合、
ケーブルは75Ωにしてください。
その場合は信号源の終端抵抗を 75Ω にして、
反対側を 25Ω にします。可能な場合は、 PCBト
レースを 75Ωより高くしてください。
たとえば LTC2185 へ の 駆 動を目 的としてい
る場 合 は、350psec の 伝 送 経 路 が 可 能です。
LTC2270 ファミリを 使 用 する場 合 は、17pF
のサンプル・コンデンサにより、この伝送線路
(図 1 の T1 および T2)を 40psec(約 1cm)に
することが要求されます。
この条件を満たすために実行するテストでは、
CCD 信号のほかに小オフセット周波数のデジ
タル化信号を使用します。信号レベルは ¼FS
および ½FS で、サンプリング周波数は 20Msps
および 25Msps で す。信 号 の 詳 細 は 300kHz
–1dBFS の正弦波(–92dB の SFDR、2 次およ
び 3 次高調波)、CCD 信号の dV/dt の代表値、
ならびにフルスケールに近い方形波(10MHz
図 4 の時間領域プロットでの 2 つの波形の外観
は、方形波の 2 つのレベル間でサンプリング 1
回おきに切り替わることが原因なので注意してく
ださい。
まとめ
画像入力アプリケーションで SNR の高い A/D
コンバータが必要な場合は、CCD からの信号
を A/D コンバータに送るためにシングルエンド
/ 差動変換が必要です。この変換では、信号の
振幅を減衰させて、大きなノイズを加えること
なく、非常に安定した同相出力レベルを実現す
る必要があります。ここに示した回路はまさにそ
れを実行できます。データシートの SNR 規格が
逆 FFT ウィンドウは時間軸方向に拡大されてお
84.1dB の低消費電力 A/D コンバータと連携さ
り、ナイキスト・ゾーンのトーンだけを示してい
せると、この回路は 84.0dB を実現しました。こ
ます。これは 70kHz 領域での電力を選択的にマ
れは、変換にほぼノイズがなかったことを意味し
スキングすることで実現しています。
ています。n
図 5 では、低周波のトーンには明らかな電力の
変化はなく、依然 –7.022dBFS を維持しており、
歪み成分の変化は比較的小さいことを示してい
ます。これは、大振幅の方形波を加えてもピー
クで圧縮が生じていないことを示しています。
½FS の方形波に重畳された 70kHz のトーンは、
画素の端付近でサンプリングされた CCD 信号
波形の代表的な dV/dt およびセトリングを模擬
していると考えられます。
2013年7月: LT Journal of Analog Innovation | 35
18 ビット A/D コンバータ用の低消費電力、
DC 高精度ドライバ
Guy Hoover
18 ビットの SAR A/D コンバータを駆動する唯一の方法は、大電力、高速、低ノイズのオペアンプまたは差
動ドライバを使用することで、その DC 性能は要望から大きく離れていることが多いというのは、よくある誤
解です。入力が DC 信号か帯域幅の狭い AC 信号で、オペアンプの出力が安定化するのに十分な時間が与
えられている場合には、低消費電力で DC 精度の高いオペアンプを使用して 18 ビットの SAR A/D コンバー
タを駆動することができます。図 1 のシングルエンド / 差動変換ドライバを使用して、 4 つの異なる低消費電
力デュアル・オペアンプをテストし、低消費電力ドライバを使用する場合の妥協点を示しました。
この回路では、オフセット電圧、 DC 信号と AC
2.5V
信号の最大サンプリング・レート、ノイズ、およ
3.3V
5.9V
び消費電力のテストが可能です。使用した A/D
10µF
0.1µF
0.1µF
コンバータは 1.6Msps の 18 ビット SAR A/D コ
LTC6081
ンバータ、 LTC2379-18 であり、オフセットは
±9LSB、INL は ±2LSB、ピーク・トゥ・ピーク・
VIN
0V TO 5V
ノイズは 5LSB です。
VCM
2.5V
使用した 4 つのアンプは、 高精度オペアンプ
+
–
4.99k
340Ω
10k
10k
–
+
660pF
NP0
660pF
NP0
340Ω
660pF
NP0
VDD
OVDD
IN+
LTC2379-18
IN–
REF
GND
REF
CHAIN
RDL/SDI
SDO
SCK
BUSY
CNV
REF/DGC
10µF
(LT1013、LTC6078、LTC6081)とゼロドリ
SAMPLE CLOCK
VREF
5V
47µF
フトのデュアル・オペアンプ(LTC2051HV)で
図 1.低消費電力で DC 精度の高い、LTC2379-18 用の
す。これらのオペアンプの主な仕様を表 1 に示し
シングルエンド / 差動変換ドライバ
ます。この回路の電源電圧は、オペアンプの V+
端子と V– 端子間に印加されている電圧です。こ
の電圧によってアンプの電力損失と最大信号振
大 ±150µV までさまざまです。この低レベルの
オフセット電圧
幅が決まります。この電圧は、アンプの最大定格
LTC2379-18 のオフセット電圧は、最大でわず
を超えないことと、電力損失が不必要に大きくな
か ±340µV です。表 1 に示すように、これら 4
らないようにして、無歪みの信号振幅を最大限
つのオペアンプのオフセット電圧はさらに低く、
に大きくするよう選択されています。
LTC2051HV の最大 ±3µV から LT1013 の最
オフセット電圧を維持するには、回路設計とレイ
アウトを入念に行うことが必要です。この例とし
ては、反転アンプの正入力に 4.99kΩ の抵抗を
使用して、入力バイアス電流によって生じる電圧
降下のバランスをとり、A/D コンバータの正入
力と負入力の周囲のレイアウトを対称的にして、
表 1.オペアンプの比較
寄生素子の影響を最小限に抑えることが挙げら
れます。
デバイス
ISY(µA)の標準値 / アンプ
VOS(µV)の最大値
回路の電源電圧
LT1013A
350
±150
8、-3
DC 信号の最大サンプリング・レート
LTC2051HV
1000
±3
8、-3
入力電圧が DC の場合でも、ある程度のセトリン
LTC6078
55
±30
5.9、0
グ時間が必要です。A/D コンバータがホールド・
LTC6081
340
±70
5.9、0
36 | 2013年7月: LT Journal of Analog Innovation
モードからサンプル・モードに移ると、サンプル・
コンデンサは A/D コンバータのアナログ入力ピ
設計上のアイデア
LTC2379-18 のワーストケースのオフセット電圧は、わずか ±340µV です。
4 つのオペアンプのオフセット電圧はさらに低く、LTC2051HV の最大 ±3µV
から LT1013 の最大 ±150µV までさまざまです。この低レベルのオフセット
電圧を維持するには、回路設計とレイアウトを入念に行うことが必要です。
図 2.ショットキ・ダイ
1N5711
ルスの立ち下がりエッ
ジを平坦化
1N5817
図 3.データ収集の装置構成
OP AMP
INPUT
オードによって入力パ
50Ω
STROBE OUT
OF 81110A
–9V
GND
+9V
TRIGGER
CLK
OP AMP
DRIVER
BOARD
ンに接続され、短時間のトランジェントが発生し
ます。サンプル・コンデンサはその後、その最終
値に至るまでオペアンプによって充電されます。
+
DEMONSTRATION
CIRCUIT
DC1783A-E
DEMONSTRATION
CIRCUIT
DC718
−
CH1 OF
81110A
USB TO PC
DC 入力電圧の最大サンプリング周波数を決定
するには、サンプルした波形からリップルがなく
なるまでサンプリング周波数を低下させます。正
と負のフルスケール近くのアナログ入力でこの
測定を行います。こうすると、通常は最大のトラ
ンジェントがアナログ入力で発生するので、そ
の結果最大のセトリング時間が必要になります。
4 つのオペアンプの最大サンプリング・レートは
63ksps から 230ksps まで変動します。4 つのオ
オペアンプ入力の浮遊容量をできるだけ小さく
が得られるだけです。PScope のプリミティブ波
して、この回路のセトリング時間を最小限に抑え
機能を使用し、入力信号の複数の通過点がさま
ることが重要です。図 1 のシングルエンド / 差動
ざまなタイム・スライスでサンプリングされるよ
ドライバ回路の出力を交換することにより、立ち
うにサンプリング周波数、入力周波数、およびサ
下がりエッジと立ち上がりエッジの両方のセトリ
ンプル・サイズを選択すると、サンプルを再構築
ング時間を測定できます。
して入力信号の高解像度のイメージを作成する
ことができます。
ペアンプの最大サンプリング・レートは表 2 に示
平坦な入力エッジを使用することにより、A/D コ
します。
ンバータの出力を測定して、シングルエンド / 差
入力周波数とサンプル周波数の比を求めるため
動ドライバの出力が安定化するまでの所要時間
に使用する式は次のとおりです。
AC 信号の最大サンプリング・レート
を調べることができます。PScope データ収集ソ
速度の遅いアナログ信号を扱うアプリケーショ
フトウェアを使用して、サンプリング・レートと入
ンやドライバ入力にマルチプレクサがあるアプリ
力周波数を慎重に選択するというのが 1 つの方
ケーションでは、最大サンプリング・レートを決
法です。50kHz のサンプリング・レートを使用
定するのがより複雑です。ある測定から次の測
して、入力信号が一定になったら 4 つのオペア
定までに入力がフルスケールに振れる可能性が
ンプ全部が完全に安定状態になるようにしても、
ある場合は、ドライバ回路の出力にある RC フィ
通常はセトリング時間の測定で 20µs の分解能
ルタのセトリング時間と、オペアンプ自体が 18
ここで、 N はサンプル・サイズです。N は 2i に
する 必 要 が ありま す。ここで PScope で は、i
は 10 から 17 まで の 任 意 の 整 数で す。M は 1
から N/2 までの 任 意 の 奇 数です。fS はサンプ
ル 周 波 数で、fIN は 入 力 周 波 数です。サンプ
ル・サイズを 131072 にして分 解 能を最 大に
ビット・レベルになるまでのセトリング時間を考
慮することが必要です。18 ビット・レベルまでの
M
• fS = fIN
N
表 2.DC 入力の最大サンプリング・レート
セトリングが規定されていることはほとんどない
し、入力周波数を 250Hz、M = 653 にして約
50ksps のサンプリング・レートを選ぶと、fS は
ので、実験的に決定する必要があります。
デバイス
DC 入力の最大サンプリング・
レート(ksps)
図 4 に示すように平坦な立ち下がりエッジでオ
LT1013A
185
プリミティブ波は、サンプリング・レートと入力周
ペアンプを駆動し、これによってオペアンプのセ
LTC2051HV
230
波数の関係に厳密な一貫性を要求するので、前
LTC6078
63
号発生器は同期させる必要があります。テスト
LTC6081
165
装置構成を図 3 に示します。ストローブ信号に
トリング時間を測定します。緩やかな変化の DC
入力では測定しません。エッジ整形回路の回路
図を図 2 に示します。
50.18070444ksps になります。
述の最大分解能が必要です。クロックと入力信
2013年7月: LT Journal of Analog Innovation | 37
図 4.立ち下がりエッジでの LT1013 のセトリ
ング時間を 30.5ns/ サンプルの分解能で示す
PScope のプリミティブ波
–125140
RAW
AVG16
AVG64
–125145
CODE
–125150
–125155
–125160
–125165
0
100
200
TIME (µs)
300
400
図 5.LT1013 のセトリング
より、PScope が一連のサンプルごとに同じ点で
Excel または MATLAB にエクスポートして、プ
は表 4 に示す THD の数値が得られます。優れ
取り込みを開始することが確認され、
「Tools」メ
リミティブ波を再構築し、得られるデータを平均
た THD の数値は、回路の直線性の表れです。
ニューの「Start on Trigger」がイネーブルされ
化します。4 つのオペアンプの生の結果ならびに
ていることが要求されます。必要なクロック周波
16 回の読み取り値および 64 回の読み取り値の
ノイズ
数を計算するには、DC1783A-E を使用する場
平均を図 5∼8 に示します。セトリング時間およ
表 3 のまとめに示したように、シングルエンド / 差
合は目的のサンプル周波数に 62 を掛けます。こ
びピーク・トゥ・ピーク・ノイズを表 3 に示します。
動変換ドライバと LTC2379-18 を組み合わせる
の結果、入力周波数は 3.111203675MHz にな
DC 信号のサンプリング・レートが最も高かった
と、ピーク・トゥ・ピーク・ノイズは A/D コンバー
ります。
LTC2051HV が、フルスケールの入力振幅で
タ単体による値よりも 1.5∼3 倍高くなります。比
LT1013 の PScope 出力を図 4 に示します。サン
プル・サイズ 131072 で入力波形の周期 4ms を
割ると、30.5ns/ ポイントという分解能が得られ
ます。プリミティブ波形の開始点と停止点を拡
は最も長いセトリング時間になっていることに注
較的控え目な平均化を行った場合、ピーク・トゥ・
意してください。これは、同相入力電圧の変化に
ピークで 1LSB に近いノイズ・レベルを得ること
よって生じたオフセット電圧の差を自動的にゼ
ができます。ノイズがガウス分布に従い、クロッ
ロにするために必要な時間の結果です。
クの回り込みやその他の同期信号源によって発
大すると、おおよそのセトリング時間を計算する
ショットキ・ダイオードを取り外し、シングルエン
ことができます。これはピーク・トゥ・ピーク・ノ
ド / 差動変換入力である VIN に 20Hz の正弦波
イズによって制限されます。この測定の精度を
を入力して駆動すると、サンプリング周波数がお
高めるには、PScope から生データを取り出し、
よそ 1/(セトリング時間)の場合、図 1 の回路で
表 3.セトリング時間およびピーク・トゥ・ピーク・ノイズ
化は実質的なサンプリング・レートを低下させる
ので、繰り返しのない AC 信号には実用的では
ない場合があります。
表 4.THD
デバイス
ピーク・トゥ・ 16 サンプルのピーク・
セトリング
ピーク・ノイズ トゥ・ピーク・ノイズの平均
時間(µs) (LSB)
(LSB)
LT1013
80
10
2.2
1.1
LTC2051HV
3000
14
2.9
1.2
LTC6078
140
12
3.3
1.7
LTC6081
130
8
1.8
0.9
38 | 2013年7月: LT Journal of Analog Innovation
生したものでない限り、ノイズは平均化によって
サンプル数の平方根の分だけ減少します。平均
64 サンプルのピーク・
トゥ・ピーク・ノイズの平均
(LSB)
デバイス
fS (kHz)
THD (dB)、
AIN = –1dBfs
LT1013
12.0
-105
LTC2051HV
0.3
-104
LTC6078
7.0
-98
LTC6081
7.0
-105
設計上のアイデア
–130365
–130625
RAW
AVG16
AVG64
–130370
–130725
RAW
AVG16
AVG64
–130630
RAW
AVG16
AVG64
–130730
–130735
–130385
CODE
–130635
–130380
CODE
CODE
–130375
–130640
–130740
–130645
–130745
–130390
–130395
–130400
0
2
1
–130650
3
50
100
150
TIME (ms)
図 6.LTC2051HV のセトリング
200 250
TIME (µs)
300
350
–130750
400
図 7.LTC6078 のセトリング
50
100
150
200 250
TIME (µs)
300
350
400
図 8.LTC6081 のセトリング
消費電力
す。AC 入力信号または多重化入力信号の場合
オペアンプはノイズが高いので、何らかの平均
図 1 のシングルエンド / 差動変換データ収集回
に必要な低めのサンプリング・レートでは、この
化を行ったノイズを低減することが必要な可能
路の DC および AC 信号の最大サンプリング周
波数でのオペアンプと LTC2379-18 の電力損
失を表 5 に示します。オペアンプの電力損失は
アンプ 1 回路当たりの数値であり、オペアンプ
は常時動作しているのでサンプリング周波数に
よって変化しません。LTC2379-18 の電力損失
は、変換後の自動シャットダウン機能により、サ
ンプリング周波数に比例します。表 5 の 4 列目
と 6 列目に示す組み合わせ回路の電力損失は、
組み合わせ回路内で使用されている 2 つのオペ
アンプと LTC2379-18 の電力損失の合計を示
しています。DC 入力信号の場合に考えられる
高めのサンプリング・レートでは、 LTC2379-
18 の電力損失が全体に占める割合が高くなりま
回路の電力のほとんどすべてをオペアンプが消
性がありますが、その代わり実質的なサンプリン
費します。
グ・レートは低くなります。ドライバ回路はセトリ
まとめ
り、低いサンプリング・レートではオペアンプの
オペアンプの出力が安定化するのに十分な時間
ドライバ回路による電力損失が支配的となりま
が与えられている場合には、低消費電力で DC
す。一方、A/D コンバータは短い変換時間の後
ングのために常に通電状態を維持する必要があ
精度の高いオペアンプを使用して 18 ビットの
は省電力モードに移行します。回路全体の要件
SAR A/Dコンバータを駆動することができます。
の中からオフセット、サンプリング・レート、ノイ
セトリング時間は回路の最大サンプリング・レー
ズ、直線性、消費電力の要件にうまく合致する
トを決定する場合の制限要因であり、オペアン
オペアンプを選ぶことが重要です。n
プの選択と、信号源の種類(DC か AC か)に
よって大きく変わってきます。A/D コンバータの
オフセットおよび直線性は、低消費電力のオペ
アンプを使用して維持できます。低消費電力の
表 5.AC および DC 入力信号の最大サンプリング周波数での電力損失
デバイス
回路の電源電圧での
オペアンプの PD(mW)
DC 入力信号の最大 fS での
LTC2379-18 の PD(mW)
DC 入力信号の最大 fS での
組み合わせ回路のPD(mW)
AC 入力信号の最大 fS での
LTC2379-18 の PD(mW)
AC 入力信号の最大 fS での
組み合わせ回路のPD(mW)
LT1013
3.85
2.08
9.78
0.135
7.835
LTC2051HV
11.00
2.59
24.59
0.003
22.003
LTC6078
0.32
0.71
1.35
0.080
0.720
LTC6081
2.01
1.86
5.88
0.080
4.100
2013年7月: LT Journal of Analog Innovation | 39
circuits.linear-tech.co.jp からのハイライト
70V
7
同相範囲の広い利得 10 の計装用アンプ
3
+IN
LTC6090 は、高電圧の高精度オペアンプです。低ノイズ、
低バイアス電流の入力段は、利得の高い構成に最適です。
2
LTC6090 は、入力オフセット電圧が低く、レール・トゥ・レー
ルの出力段があり、140V 単電源または ±70V 両電源で動
+
5
8
LTC6090
–
4
9
6
22pF
10k*
1
100k
22pF
1
作できます。
LT5400-2
100k
2
circuits.linear-tech.co.jp/619
7
8
3
7
100k
–70V
205k
70V
7
3
–IN
70V
2
+
4
3
100k
5
9
22pF
8
6
2
6
5
4
LTC6090
–
24.9k
100k
5
8
LTC6090
–
4
100k
9
49.9Ω
6
OUT
–3dB at 45kHz
1
22pF
9
10k*
+
1
–70V
–70V
RWIRE
0.5Ω
IN
VIN
RIN
200Ω
LT3080
ISET
電流リファレンスを使用した LDO を用いたケーブル・ドロップ・コンペンセーション
この回路は、電流をリファレンスにするレギュレータ LT3080 を使用するケーブル・ドロップ・
コンペンセータです。高精度の 10μA 設定電流 ISET が 2 本の直列接続抵抗に流れ、離れ
+IN V+
RS
ている負荷の出力電圧を設定します。負荷に接続しているケーブルの電圧降下を補償する
–IN
には、この抵抗対に流す電流を増やして出力電圧を高くすることが必要です。LT6110 は、
LOAD
20mΩ
+
–
VLOAD
3V
1A
負荷に流れる電流にも正比例するソース電流を IMON ピンから供給します。この電流は通
VREG
IOUT
LT6110
+ –
常の IOUT 電流の 3 倍です。
circuits.linear-tech.co.jp/637
SET
RSET1
301k
RSET2
1.69k
IMON
IMON
V–
IMON = 3 IIN+
0.5V∼5V のデュアル・スーパーキャパシタ・バックアップ電源
LTC3122 は、真の出力切断機能と突入電流制限機能を備えた同期整流式の昇圧
DC/DC コンバータです。2.5A の電流制限機能の他に最大 15V の出力電圧を設定す
る機能を備えているので、 LTC3122 は要求の厳しいさまざまなアプリケーションに最
適です。いったん起動すると、入力電圧が 500mV まで低下しても動作を継続できるの
L1
3.3µH
VIN
0.5V TO 5V
CIN
4.7µF
で、多くのバッテリ・アプリケーションでの動作時間を延長できます。
OFF ON
SC2
50F
SW
SD
LTC3122
PWM/SYNC
SC1
50F
circuits.linear-tech.co.jp/638
VIN
C1
100nF
COUT
100µF
FB
VCC
VC
SGND
CVCC
4.7µF
R1
383k
CAP
RT
RT
57.6k
VOUT
5V
VOUT
PGND
RC
43.2k
CC
1nF
R2
121k
CF
68pF
CIN, CVCC: 4.7µF, 6.3V, X7R, 1206
C1: 100nF, 6.3V, X7R, 1206
COUT: 100µF, 6.3V, X7R, 1812
L1: TDK SPM6530T-3R3M
SC1, SC2: MAXWELL BCAP0050-P270
L、LT、LTC、LTM、Linear Technology、リニアのロゴ、Burst Mode、LTspice、TimerBlox および µModule はリニアテクノロジー社の登録商標です。Hot Swap、PowerPath、PScope および UltraFast はリニアテクノロジー社の商標です。
その他すべての商標の所有権は、それぞれの所有者に帰属します。
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