Application Note AN:024 アダプティブ・フィードバック・ループを使用した

Application Note AN:024
アダプティブ・フィードバック・ループを使用した負荷点での
電圧レギュレーション
By Maurizio Salato Principal Engineer, V•I Chip Applications Engineering
目次
page
はじめに
1
アダプティブ・ループに
よるレギュレーションの
コンセプト
1
ダイナミックに変動する電気的な負荷に対しては、負荷点における電圧制御が欠かせません。
ここで紹介する「アダプティブ・ループ」は、PRMとVTMをベースにした絶縁型の電源シス
テムにおいて、効率的なフィードフォワード補償によって負荷点電圧の制御を行います。ここ
では、PRMとVTMの最適な負荷点電圧補償のための設定について説明しています。1つの
PRMと2つの同じVTMの組合せ[a]についての検討も含みます。なお、ここで扱う計算を行な
うためのExcelファイルが以下のサイトから利用可能です。
http://cdn.vicorpower.com/documents/calculators/dcaldesign.xls.
PRM-AL
ブロックダイアグラム
2
DC設定点の計算
4
考察
8
アダプティブ・ループによるレギュレーションのコンセプト
PRMの出力電圧を定電圧化する負帰還に加えて、アダプティブ・ループは、負荷電流の増減に
応じて生じる電圧降下を補償するために必要とされる出力電圧増加分を正帰還します。Fig.1
は概念的なブロックダイアグラムを示します。
Half-Chip VTMによる
アダプティブ・ループ
はじめに
9
V•I Chip 評価ボードに
よる設計例
13
おわりに
17
Isolation
barrier
PRM
output voltage
Voltage
loop
Input power line
K
VTM
PRM
Figure 1
アダプティブ・ループの
概念的なブロックダイアグラム
LOAD
Output
power line
Factorized bus
PRM
output
current
Adaptive
loop
Voltage drop
model
VTM temperature
PRM出力においてローカルな電圧フィードバックループがレギュレーションを維持する一方、
アダプティブ・ループ(AL)はPRM出力から実際の負荷までの間で発生する電圧降下を補償
します。前述のように、ALは、VTMの温度とファクトライズ・バスの電流を入力として必要
とするモデルをベースにしています。VTM及びパワーライン(ファクトライズ・バスと出力ラ
イン)の抵抗値を使用してそれらの電圧降下を正確に把握することができます。
[a] このアプリケーションノートでの計算は、24V、36V、48V入力のPRMに適用されます。28 V入力のMIL-COTS PRMにも同じ方法が適用されますが、 正確な値を適用するために注意が必要です。その場合、アプリケーションエンジニアにご相談ください。
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アダプティブ・ループの主な利点は:
・VTMの出力側から絶縁された入力側へ信号を送る必要がない
・簡単で少ない部品点数
レギュレーションの精度は、このモデルの精度によって影響されます。このアプリケーション
ノートでは与えられたシステムに対してどのようにしてこのモデルを最適化するか、そして、
どのようにして得られる精度を推定するかについて説明しています。
標準的なレギュレーションのテクニックでは、負荷点の電圧を直接モニターし、基準電圧と比
較された負荷電圧の誤差分がゼロになるように動作させます。アダプティブ・ループでは負荷
端までの電圧、配電系すべてを盛り込んで誤差ゼロに近づけます。
PRM-AL ブロックダイアグラム
Fig.2は、フルチップ PRM-AL (例: P045F048T32AL)の機能を説明するブロックダイ
アグラムです。OS、および、SC端子はローカルな電圧フィードバックループを提供し、VC
およびCD端子は後段に接続されるVTMの電圧降下分の補償を行います。
Figure 2
PRM-AL ブロックダイアグラム
+OUT
+IN
5 µF
M1
D1
M2
M3
5 µF
R16
93.1 kΩ
OS
G1=0.961
+
PC
Soft start and reference
10 kΩ
R18
Enable
Type 2 compensation
VREF
1.24 V
G2=0.0386
Modulator
Error
amplifier
+
IL
PR
100 µA
SC
C18
0.22 µF
100 kΩ
+
9 V, 5 mA max
Inst. curr. protection
Average
current
protection
∫
CD
Q62
14 V
10 ms
-IN
-
IAL = V-OUT / RCD
VH
VC start
pulse
generator
SG
VC
RS
10 mΩ
-OUT
Adaptive loop
まとめ:
・ローカルな電圧フィードバックループ
- R18を経由してVREFはSC端子に基準電圧を供給します。さらに増幅段G1を経由してエ
ラーアンプの非反転入力に接続されます。
- ファクトライズ・バス電圧(+OUT)は、R16を介してエラーアンプの反転入力にフィー
ドバックされます。
- SC、および、OS端子に外部から抵抗を接続することにより、それぞれの端子電圧が分圧
されます。
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・アダプティブ・ループ回路
- 電圧制御型の電流源は、CD端子とSG端子間に接続される抵抗によって制御される可変型の
ゲインを持っています。
- 検出抵抗RSの両端電圧に直接比例します。
- 以下の関係に従って、CD端子とSG端子間に接続された抵抗に反比例します:
I AL =
式1
V-OUT
R I
= S F
RCD
RCD
IFはファクトライズ・バス(PRM出力)の電流、V-OUTはRS両端の電圧降下です。- VC端子電
圧は増幅段G2を経由して基準電圧端子SCに加算されます。
PRMとVTMを組合せたときは、Fig.3に示されるブロックダイアグラムのように考えられます。
このシステムのプリント基板は、PRM出力から負荷までに更に電圧降下をもたらします: ファ
クトライズ・バスの抵抗RF、出力ライン抵抗RO、ここではプラス側とマイナス側が等しい抵抗
値と仮定しています。実際にそれらの抵抗値を知るために、これらの抵抗値を推定もしくは測定
する必要があります。
RF /2
+OUT
+IN
5 µF
5 µF
R16
OS
Modulator
+
Error
amplifier
VTM
ROS1
RO /2
+OUT
+IN
IOUT
ROS2
PRM
Type 2
compensation
IF
93.1 kΩ
G1=0.961
+
G2=0.0386
R18 10 kΩ
1.24 V
SC
RSC
PNL / VF
ROUT
0.22 µF
C18
Vref
K
RCD
LOAD
Figure 3
Full-Chip VTMの
アダプティブ・ループ制御
ブロックダイアグラム
CD
IAL = IF * RS / RCD
SG
IAL
VC
-IN
RS
10 mΩ
-OUT
VC
RPTC
RVC
RF /2
-IN
-OUT
RO /2
IF + IAL
各電圧降下を把握するために、RF,ROUT,ROを正確に知る事が重要です。これらの補償モデルは抵
抗性であり、温度に依存します。
以下により、このモデル化は容易です:
・抵抗RPTCがVTMの中に実装されており、VTMの温度によってその値は変化します。
・抵抗RVCは、RPTCをVTMのROUTの温度特性に一致させます。
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抵抗RVCとRPTCの並列、抵抗RF/2とRSの直列接続は電圧降下モデルを構成します。アダプテ
ィブ・ループ回路はVCラインにPRM出力電流を縮小した電流信号(IAL)が流れるようにし、
リターンラインではファクトライズ・バス電流IFと合流します。(Fig.4参照)
Figure 4
電圧降下モデル
Scaled
PRM
output
current
Modeled
voltage
drop
VTM
temperature
IAL = IF • RS / RCD
VC
RS
10 mΩ
-OUT
VC
RVC
RF /2
-IN
R PTC
IF
IF + IAL
いくつかの係数によってVC端子に得られる電圧は、システム全体のトータルの電圧降下のモ
デルになります。
DC設定点の計算
必要とされる数値がTable 1に示されます。
Table 1
アダプティブ・ループの計算に
必要な数値
標準的な Full-Chip VTM の特性
• ROUT_25: 出力抵抗(25ºC)
• ROUT_100: 出力抵抗(100ºC)
• K: 入出力電圧変換比
• RPTC_25: PTC 抵抗(25ºC)
• RPTC_100: PTC 抵抗(100ºC)
• PNL: 公称入力電圧での無負荷時電力損失
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検討する電源システムの特性
• VF_NOM: 無負荷での公称ファクトライズ
・バス電圧
• IOUT: システム(VTM)の最大出力電流
• RF: ファクトライズ・バス(PRM から
VTMまで)トータルの抵抗値
• RO: 出力バス(VTM から負荷点まで)
トータルの抵抗値
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Table 2 は、標準的なFull-Chip VTMについてのデータをまとめたものです。PRMにおけ
る内部抵抗の許容誤差が 1% であることに注意してください。
Table 2
標準的な Full-chip VTM の
データ(typical)
出力抵抗
VTM Part Number
温度センサー
ROUT_25
ROUT_100
許容誤差
RPTC_25
温度係数
許容誤差
[%/°C]
[%]
0.39
5
[mΩ]
[mΩ]
[%]
[Ω]
V048F015T100
0.99
1.17
11
3000
V048F020T080
1.31
1.56
10
2000
V048F030T070
1.61
1.97
10
V048F040T050
2.76
3.29
8
V048F060T040
5.76
6.73
5
V048F080T030
7.54
8.76
8
V048F096T025
V048F120T025
9.84
10.85
11.97
13.39
10
6
V048F160T015
29.76
32.80
7
V048F240T012
48.11
57.17
4
V048F320T009
79.48
96.10
6
V048F480T006
177.44
215.63
5
1000
560
510
Fig.3に関して:
A. VTM出力抵抗ROUTによる最大電圧降下(25℃および100℃での)を計算する。
式2
ΔVROUT _ 25 = ROUT _ 25 ⋅ IOUT
式3
ΔVROUT _ 100 = ROUT _ 100 ⋅ I OUT
B. ファクトライズ・バスに流れる最大電流を計算する。
I F = K ⋅ I OUT +
式4
PNL
VF _ NOM
VTMによって必要とされる無負荷時の電力損失(PNL)は入力電圧に依存しますが、その変
化はアダプティブ・ループ補償に関してわずかな影響しかありませんので、以下のステップ
では無視しています。
C. 電圧降下全てを補償するために上昇するPRMの出力電圧を計算する。
(ファクトライズ・バス抵抗、VTM出力抵抗、および、出力バス抵抗)
式5
ΔVF _ 25 =
式6
ΔVF _ 100 =
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ΔVROUT _ 25 + RO I OUT
K
+ ( RF + RS ) ⋅ I F
ΔVROUT _ 100 + RO I OUT
K
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+ ( RF + RS ) ⋅ I F
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D. 電源システム全体の温度係数を計算し、必要とされる抵抗RVCをそれに一致させる。
抵抗RPTCおよびVTM ROUTは同じ温度にさらされますが、それらはFig.5に示すように異なる
変化率を持っています。
Figure 5
ROUT および RPTC vs. VTM
内部温度
RPTC
ROUT
RPTC_100
ROUT_100
ROUT_25
RPTC_25
25
100
TVTM [ºC]
そのモデルの温度での電圧降下に正確に一致させるためには、その勾配がシステムの勾配に一
致しなければなりません。RPTCと並列になる抵抗RVCはこの条件に合うように計算します。
RVC ⋅ RPTC _ 100
ΔRTOT =
ΔVF _ 100
ΔVF _ 25
=
RVC + RPTC _ 100
RVC ⋅ RPTC _ 25
RVC + RPTC _ 25
式7
RVC = (1 − ΔRTOT )
RPTC _ 25 ⋅ RPTC _ 100
ΔRTOT ⋅ RPTC _ 25 − RPTC _ 100
システムの温度
係数に合うように直列抵抗ではなく並列抵抗を選択する重要な理由があります。起動時におい
て、VTMを同期して起動するために、PRMはVCラインに 14V 10msec のパルスを出力し
ます。直列抵抗はこの信号に無視できない振幅の変化を引き起こします。並列抵抗の配置では
これは回避されます。しかしRvcの値が200Ω以下になる場合はこれを避けてください。
(14V 10msec のパルスが過負荷になります)
E. 与えられたシステムについての最大VC端子電圧を25℃で計算する。(RVCの効果により、
温度依存性が補正され、100℃でも同じ値になるでしょう。[7]):
VC _ MAX _ 25 = I AL ⋅
RPTC _ 25 ⋅ RVC
RPTC _ 25 + RVC
⎛R
⎞
+ ( I F + I AL ) ⋅ ⎜ F + RS ⎟ =
⎝ 2
⎠
式8
= RS
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IF
⋅
RPTC _ 25 ⋅ RVC
RCD _ MIN RPTC _ 25 + RVC
+ ( I F + RS
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⎛R
⎞
) ⋅ ⎜ F + RS ⎟
RCD _ MIN ⎝ 2
⎠
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IF
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現在の製品について許容されるRCDの最小値は20Ωです。
F. ワーストケース(VC_MAX_25 および ΔVF_100)での充分なアダプティブ・ループ範囲を可
能にするように、必要に応じ、トリム電圧VSCを計算する。
増幅段G2を介してのVC上の電圧は、電圧降下ΔVFを補償するために、基準電圧SCに加算さ
れます。VC電圧のダイナミック範囲が設定されるので、アダプティブ・ループ補償とファク
トライズ・バスの関連する変化に一致するように、VSCは減少されるかもしれません。
ΔVF _ 100
式9
VF _ NOM
≤
G2 ⋅ VC _ MAX _ 25
G1 ⋅ VSC
VSC ≤
G2 ⋅ VC _ MAX _ 25
ΔV
G1 F _ 100
VF _ NOM
増幅段G1 および G2 のゲインはそれぞれ 0.961 および 0.0386 です。
VSC < Vref = 1.24 Vの場合、SCに接続される外付け抵抗は以下のように容易に計算できま
す:
RSC = R18
式10
VSC
Vref − VSC
内部のエラーアンプの特性のために、VSCについての絶対最小値は0.25 Vです。従って、
RSCについての最小抵抗値は、2550 Ωです。
G. 公称出力電圧を設定するのに必要とされる電圧フィードバックの分圧抵抗を計算します。
VF _ NOM = G1 ⋅ VSC
式11
R16 + ROS
ROS
ROS = G1 ⋅ R16
VSC
VF _ NOM − G1 ⋅ VSC
選択された基準電圧VSCに適応するように、ROSは電圧フィードバックのゲインを定めます。
RSCとして標準的な抵抗値によって得られた電圧VSCを使用して計算することを推奨します。
さらに、もしも計算されたROSの値に一致する(0.2%以内)ための標準的な値の抵抗がない
場合、複数の抵抗を並列構成にして使用することを強く勧めます。
H. アダプティブ・ループが電圧降下を補償するのに最適な抵抗RCDを計算します。(25℃も
100℃も抵抗RVCのために同じ結果が得られるでしょう。)
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最初に、最大電流IFでのVCライン電圧を代入(室温):
VC _ 25 =
式12
⎞ ⎛R
RS ⋅ I F RPTC _ 25 ⋅ RVC ⎛ RS ⋅ I F
⎞
⋅
+ ⎜⎜
+ I F ⎟⎟ ⋅ ⎜ F + RS ⎟
RCD RPTC _ 25 + RVC ⎝ RCD
⎠
⎠ ⎝ 2
関連するファクトライズ・バスの増加分についての式に代入します:
ΔVF _ 25 = G2 ⋅ VC _ 25
= G2 ⋅
R16 + ROS
=
ROS
⎞ ⎛R
RS ⋅ I F RPTC _ 25 ⋅ RVC ⎛ RS ⋅ I F
⎞ R + ROS
⋅
+ ⎜⎜
+ I F ⎟⎟ ⋅ ⎜ F + RS ⎟ 16
RCD RPTC _ 25 + RVC ⎝ RCD
⎠ ROS
⎠ ⎝ 2
そして抵抗RCDを求めます:
G2
式13
RCD =
⎛ R
⎞
⋅R
R16 + ROS
R
RS I F ⎜ PTC _ 25 VC + F + RS ⎟
⎜R
⎟
2
ROS
⎝ PTC _ 25 + RVC
⎠
ΔVF _ 25 − G2
R16 + ROS
ROS
⎞
⎛ RF
+ RS ⎟ I F
⎜
⎝ 2
⎠
考察
レギュレーション精度を改善するために、以下のガイドラインを守る必要があります:
- モデルとシステムとの間の相違は直接レギュレーション精度に影響します。設計段階にお
いて、システムの特性についての考察は強く推奨されます。(特にファクトライズ・バス抵抗
(RF)と出力ライン抵抗(RO))
- 部品の値(誤差)の統計的な分布は配電精度に関して主要な役割を果たします。そのため
に、‘モンテカルロ解析(もしくは類似したもの)’および最適化は強く奨励されます。レギ
ュレーションに直接影響するすべての要素(すなわち、設定する抵抗、抵抗のモデル、部品の
特性)が含まれるべきです。システムで追加されるあらゆる部品(すなわち、設定するフィル
タのインダクタ、コネクタ、等々)についても、その変化によって影響を受けるならば、同様
にすべて含まれるべきます。
- VC電圧におけるRSとRFの影響は幾つかのケースでは無視できますが、通常は配電精度に
影響します。それを評価するために、双方の抵抗はこの解析に含めるべきです。
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Half-Chip VTMによるアダプティブ・ループ
Full-chip VTM と Half-chip VTM との主な相違点は、温度フィードバックの有無です。
Full-chip VTMはPTC抵抗を使用し、Half-chip VTMはFig.6に示されるようにシンプルな
精密抵抗を使用しています。
Figure 6
温度フィードバックなしの
アダプティブ・ループ
レギュレーションのコンセプト
Isolation
barrier
PRM
output voltage
Voltage
loop
Input power line
LOAD
Output
power line
Factorized bus
K
VTM
PRM
PRM
output
current
Adaptive
loop
Voltage drop
model
VTM resistor ID
温度フィードバックがないとレギュレーション精度はわずかに劣ります。しかしながら、
Half-Chipは、更に厳格なパラメータ分布を持っており、減少したモデルの精度を部分的に補
います。この場合の制御構造はFig.7に示されます。
Figure 7
Half-Chip VTMの
アダプティブ・ループ制御
RF /2
+OUT
+IN
5 µF
R16
93.1 kΩ
OS
PRM
Type 2
compensation
Modulator
+
Error
amplifier
G1=0.961
+
G 2=0.0386
R18
SC
10 kΩ
1.24 V
IF
+OUT
+IN
ROS2
HalfChip
VTM
RSC
PNL / VF
ROS1
RO /2
IOUT
ROUT
0.22 µF
C18
Vref
K
CD
LOAD
5 µF
RCD
IAL = IF * RS / RCD
SG
IAL
VC
VC
-IN
RS
10 mΩ
-OUT
RVC
RF /2
-IN
-OUT
RO /2
IF + IAL
電圧降下モデルは同様にFull-chip VTM(Fig.3)についてのものと異なり、Fig.8に示され
るように、より簡単なものになります。
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Figure 8
Half-chip VTMを使用した
システムにおける電圧降下モデル
Scaled
PRM
output
current
Modeled
voltage
drop
IAL = IF • RS / RCD
VC
RS
-OUT
10 mΩ
VC
RVC
RF /2
IF
-IN
IF + IAL
相違点について説明したように、ここでこの特定のケースについての設計手順を訂正すること
が可能になります。Table 3 は必要とされる値を示します。
Table 3
Half-chip VTMのための
アダプティブ・ループ
計算に必要な値
Half-Chip VTM の特性
電源システムの特性
• ROUT_25: 出力抵抗(25ºC )
• ROUT_100: 出力抵抗(100ºC )
• K: 入出力電圧変換比
• VF_NOM: 公称ファクトライズ・バス電圧
(無負荷条件)
• IOUT: 最大システム(VTM)出力電圧
• RF: ファクトライズ・バスの合計抵抗
(PRMからVTMまで)
• RVC: VTM VC 端子の内部抵抗
• PNL: 無負荷時電力損失
(公称入力電圧条件)
• RO: 出力バスの合計抵抗
(VTMから負荷点まで)
Table 4は Half-chip VTMのためのデータの要約です。
Table 4
Half-chip VTM データ
(typical)
VTM Part Number
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出力抵抗
ID抵抗
ROUT_25
ROUT_100
許容誤差
RVC
許容誤差
[mΩ]
[mΩ]
[%]
[Ω]
[%]
VIV0102THJ
2.72
3.22
8
1430
VIV0103THJ
3.03
3.78
11
9310
VIV0104THJ
6.86
8.07
8
8870
VIV0105THJ
13.80
16.24
7
4640
VIV0101THJ
44.32
57.65
6
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理解し易いように、既に説明したFull-chip VTMの手順とは異なるステップだけを列挙します。
ステップ:
A., B., C.: は同じです。
D. 推定されるVTMの動作温度における電力回路のトータルの温度係数を計算します。
VTM ROUT抵抗はFig.9に示されるように温度に依存します。
ROUT
Figure 9
Half-chip VTM ROUT vs.
製品内部温度
ROUT_100
ROUT_25
25
TVTM [ºC]
100
モデルをシステムの電圧降下によりよく一致させるために、VTMの動作温度を推測します。
温度が不明の場合、慎重なアプローチとしてその温度範囲の中間(例えば75℃)で動作する
とみなします:
ΔVF _ 75 = ΔVF _ 25 +
ΔVF _ 100 − ΔVF _ 25
式14
75
⋅ 50
ROUTの温度依存性は線形なので、[14]において使用された線形補間はこのケースにも適用で
きます。
E. 与えられたシステムについてのVC端子の最大電圧を計算します。
⎛R
⎞
VC _ MAX = I AL ⋅ RVC + ( I F + I AL ) ⋅ ⎜ F + RS ⎟ =
⎝ 2
⎠
式15
= RS
IF
RCD _ MIN
⋅ RVC + ( I F + RS
IF
⎛R
⎞
) ⋅ ⎜ F + RS ⎟
RCD _ MIN ⎝ 2
⎠
F., G.: は同じです。
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H. 電圧降下を補償するために適切なアダプティブ・ループを行なうための抵抗RCDを計算
します。
最初に、最大電流IFでのVCライン電圧を代入(雰囲気温度):
式16
VC =
⎛R ⋅I
⎞ ⎛R
RS ⋅ I F
⎞
⋅ RVC + ⎜⎜ S F + I F ⎟⎟ ⋅ ⎜ F + RS ⎟
RCD
⎠
⎝ RCD
⎠ ⎝ 2
関連するファクトライズ・バスの増加分についての式に代入します:
ΔVF _ 75 = G2 ⋅ VC
= G2 ⋅
R16 + ROS
=
ROS
⎞ ⎛R
⎛ R ⋅I
RS ⋅ I F
⎞ R + ROS
⋅ RVC + ⎜⎜ S F + I F ⎟⎟ ⋅ ⎜ F + RS ⎟ 16
RCD
⎠ ROS
⎠ ⎝ 2
⎝ RCD
そして、RCDを求めます:
式17
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RCD
R16 + ROS
R
⎞
⎛
RS I F ⎜ RVC + F + RS ⎟
ROS
2
⎠
⎝
=
R16 + ROS ⎛ RF
⎞
ΔVF _ 75 − G2
+ RS ⎟ I F
⎜
ROS ⎝ 2
⎠
G2
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Application Note AN:024
V•I Chip 評価ボードによる設計例
システム要件:
Input: 36-75 V
Output: 5 V, 36 A, 180 W
V•I Chip 選定:
PRM: P048F048T24AL (ワイドレンジ入力、電力レベルより選定).
VTM: V048F060T040 (出力電圧、電流により選定).
一致する評価ボードはP048F048T24AL-CBおよびV048F060T040-CBです。ファク
トライズ・バスラインおよびVCラインの接続経路はUser Guide UG:003にて説明されてい
ます。Fig.10に2つの評価ボードを接続した図を示します。
Figure 10
PRM and VTM評価ボード
はじめに、VTMのデータシートとTable 2から下記の数値を抜き出します。
• ROUT_25: 5.76 mΩ
• ROUT_100: 6.73 mΩ
• K: 1/8
• RPTC_25: 1000 Ω
• RPTC_100: 1000·(1+0.0039·75) = 1293 Ω
• PNL: 2.7 W
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次に以下の数値を計算および測定します。
• VF_NOM: VOUT/K = 40 V
• IOUT: 36 A
• RF 及び RO: これらの抵抗値は基板配線パターンおよび負荷へ接続するケーブルにより決定
されます。これらの値を得る有効な方法はFig.11に示すように電流経路を確認することです。
Figure 11
ファクトライズ・バスの電流経路
(赤波線)
および出力電流経路
(青波線)
次に端子-端子間の単純な直流インピーダンス測定でRFとRO の値を得ます。特に今回の例の
ケースでは:
→ RF= 10 mΩ
→ RO= 80 uΩ
これで計算が可能になります。
A. VTM出力抵抗ROUTによる最大電圧降下(25℃および100℃での)を計算する。
ΔVROUT _ 25 = ROUT _ 25 ⋅ I OUT = 0.00576 ⋅ 36 = 0.207 V
ΔVROUT _ 100 = ROUT _ 100 ⋅ I OUT = 0.00673 ⋅ 36 = 0.242 V
B. ファクトライズ・バスに流れる最大電流を計算する。
I F = K ⋅ I OUT +
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PNL
VF _ NOM
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1
2. 7
= ⋅ 36 +
= 4.568 A
8
40
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C. 電圧降下全てを補償するために上昇するPRMの出力電圧を計算する。
(ファクトライズ・バス抵抗、VTM出力抵抗、および、出力バス抵抗)
ΔVF _ 25 =
ΔVF _ 100 =
ΔVROUT _ 25 + RO I OUT
K
ΔVROUT _ 100 + RO I OUT
K
+ ( RF + RS ) ⋅ I F =
0.207 + 80 μ ⋅ 36
+ (10 m + 10 m) ⋅ 4.568 = 1.77 V
18
+ ( RF + RS ) ⋅ I F =
0.242 + 80 μ ⋅ 36
+ (10 m + 10 m) ⋅ 4.568 = 2.05 V
18
D. 電源システム全体の温度係数を計算し、必要とされる抵抗RVCをそれに一致させる。
ΔRTOT =
RVC = (1 − ΔRTOT )
ΔVF _ 100
ΔVF _ 25
=
2.05
= 1.158
1.77
RPTC _ 25 ⋅ RPTC _ 100
ΔRTOT ⋅ RPTC _ 25 − RPTC _ 100
= (1 − 1.158)
1000 ⋅ 1293
= 1513 Ω
1.158 ⋅ 1000 − 1293
RVC は200Ω以上であるので有効である。最も抵抗値の近い実際の1%精度の抵抗を選びます。
RVC は 1500 Ωを選びます。
E. システム温度25℃での最大VC端子電圧を計算する。
PRM-ALのデータシートより RCD_MIN = 20 Ω:
VC _ MAX _ 25 = RS
IF
⋅
RPTC _ 25 ⋅ RVC
RCD _ MIN RPTC _ 25 + RVC
= 10 m
+ ( I F + RS
IF
⎛R
⎞
) ⋅ ⎜ F + RS ⎟ =
RCD _ MIN ⎝ 2
⎠
4.568 1000 ⋅ 1500
4.568 ⎛ 10 m
⎞
⋅
+ (4.568 + 10 m
+ 10 m ⎟ = 1.44 V
)⋅⎜
20 1000 + 1500
20
2
⎝
⎠
F. ワーストケース(VC_MAX_25 および ΔVF_100)での充分なアダプティブ・ループ範囲を可
能にするように、必要に応じ、トリム電圧VSCを計算する。
VSC ≤
G2 ⋅ VC _ MAX _ 25 0.0386 ⋅ 1.44
=
= 1.12 V
ΔVF _ 100
2.05
0.961
G1
40
VF _ NOM
VSC < Vref = 1.24 Vであるので, RSC は以下のように計算されます。
RSC = R18
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VSC
1.12
= 10 k
= 93.3 kΩ
Vref − VSC
1.24 − 1.12
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RSC は2550 Ω以上であるため使用することができます。最も抵抗値の近い実際の1%精度の
抵抗を選びます。RSC = 93.1 kΩを選びます。RSC = 93.1 kΩより得られるVSC はVSC =
1.12 V となります。
G. 公称出力電圧を設定するのに必要とされる電圧フィードバックの分圧抵抗を計算します。
ROS = G1 ⋅ R16
VSC
1.12
= 0.961 ⋅ 93.1 k
= 2574 Ω
VF _ NOM − G1 ⋅ VSC
40 − 0.961 ⋅ 1.12
実際の最も近い標準的な抵抗は2550Ωとなるでしょう、これはターゲットからほぼ1%の抵
抗値です。より精度を増すためには、標準的な抵抗2610Ωを選び、さらに並列に抵抗を使い
必要とされる値へと近づけます。
ROS1 = 2610 Ω 、 ROS2 = 187 kΩ
H. アダプティブ・ループが電圧降下を補償するのに最適な抵抗RCDを計算します。
G2
RCD =
⎛ RPTC _ 25 ⋅ RVC
⎞
R16 + ROS
R
RS I F ⎜
+ F + RS ⎟
⎜R
⎟
ROS
2
⎝ PTC _ 25 + RVC
⎠
ΔVF _ 25
R + ROS ⎛ RF
⎞
− G2 16
+ RS ⎟ I F
⎜
ROS ⎝ 2
⎠
=
93.1 k + 2574
⎞
⎛ 1 k ⋅ 1.5 k 10 m
10 m ⋅ 4.568⎜
+
+ 10 m ⎟
2574
2
⎝ 1 k + 1. 5 k
⎠ = 23.5 Ω
93.1 k + 2574 ⎛ 10 m
⎞
1.77 − 0.0386
+ 10 m ⎟ ⋅ 4.568
⎜
2574
⎝ 2
⎠
0.0386
=
最も抵抗値の近い標準的な抵抗, RCD = 23.7 Ωを選びます。
以上より抵抗値の設計計算は完了しました。
RSC = 93.1 kΩ, ROS1 = 2610 Ω, ROS2 = 187 kΩ, RVC = 1500 Ω , RCD = 23.7 Ω
これらの抵抗値で2枚の評価ボードにて電圧レギュレーション精度を検証することができるで
しょう。
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おわりに
ここではシンプルな PRM/VTM 構成においてより良い電圧レギュレーションを達成するため
に適用できるアダプティブ・ループの設計手法を紹介しています。
モンテカルロ解析によって、入力変動、負荷変動、及び、温度変化に関して 1%のレギュレー
ション精度が統計上82% (もしくは更に大きく) 達成されたことが確認されます。Fig.12 は
過去の設計例の精度分布を示します。
Figure 12
設計例での入力、負荷、温度変動による
精度分布
100%
100%
確 80%
率
分
布 60%
80% 累
積
分
60% 布
40%
40%
20%
20%
0%
-4%
0%
-3%
-2%
-1%
0%
1%
2%
3%
4%
適切なモデルを適用すれば、同様の設計コンセプトはV・I Chips Arrayにも適用することがで
きます。2個以上のPRMおよび3個以上のVTMの構成をされる際は、弊社アプリケーションエ
ンジニアへお問合せ下さい。以下のサイトから自動表計算の使用が可能です。
.www.vicorpower.com/dcaldesign.
Information furnished by Vicor is believed to be accurate and reliable. However, no responsibility
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