ハーフステップの技法

ハーフステップの技法
この章では、ステッピングモータドライバICを使用してハーフステップに必要な信号を生成するための回路、プ
ログラミング、および理論的背景について説明します。
回転磁界
ステッピングモータが駆動する基本原理は、回転子が位置合わせするよう回転磁界を発生させることです。回転
磁界は、2つの相巻線の電流によって、固定子内で発生します(図1参照)。図2で磁界の方向と大きさをベクト
ル図で説明します。2次元のベクトルを作成するには、X座標軸とY座標軸の少なくとも2つの座標を制御する必
要があります。以下では、X軸とY軸を固定子軸とも呼びます。図1の2つの巻線は、2つの固定子軸と一直線に
並んだ磁束を発生します。2つの巻線間の電流比率によって、全磁界ベクトルが得られます。このベクトルの長さ
は、加算された磁束振幅を表しています。これらのベクトルを図1と図2で示します。軸(座標軸)でのトルク
は、磁界に比例します。
図1より、A相とB相が励磁されると、回転子は位置1から位置3、5、7の方向にステップ移動します。この
方向は、2つの巻線内の電流の方向によって制御される磁束の方向に依存します。このドライブは2相励磁ドライ
ブと呼ばれます。一度に1つの固定子巻線のみ励磁される場合は、回転子は位置2から位置4、6、8の方向にス
テップ移動します。このモードは1相励磁ドライブと呼ばれます。この2つのモードでフルステップによる移動が
実現できますが、そのステップ位置は1/2ステップずれています。
ハーフステップ
2つのドライブモードが組み合わされ、巻線に正しいシーケンスが入力されると、回転子を1、2、3、4など
すべての位置で位置合わせすることができます。これは「ハーフステップモード」と呼ばれます。図3に電流のタ
イムチャートを示しますが、ここには磁束の方向と同様に、入力信号と電流方向が含まれています。最初の部分
は、モータが位置1から3、5、7にステップする2相励磁ドライブを示しています。図の二番目の部分では、
ハーフステップのシーケンスが巻線に入力されています。
Y
N
ΦA
8
7
1
8
S
Phase A
IA
S6
Rotor
2
“Two phase on” at
100% current level
N
“One phase
on” at 100%
current level
1
7
N
5
3
4
2
6
S
X
Stator A
ΦB
Stator B
5
IB
4
Phase B
図1 二相ステッピングモータ
3
“One phase on” at
140% current level
図2 磁界の方向と振幅
Phase 1
Dis
Phase 2
Dis
I MA1
I MA 2
Pos
1
3
5
7
Φ1
Φ2
Full step mode
1
3
4 5 6 7 8 1 2 3 4 5 6 7 8
0
0
0
0
0
0
0
Half step mode
(Two phase on drive )
図3 図1の様々な回転子位置での入力信号、出力電流、および磁界方向
ハーフステップドライブは、フルステップドライブと比較して、いくつかの長所があります。
・分解能が高い。すなわちステップ数の多い高価なモータを使用する必要がない。
・共振現象の問題が少ない。共振は1か所以上の速度域での急激なトルク低下として発生します。
ハーフステップでは通常、これらの共振問題が打開できます。
ハーフステップの短所は、トルク変動が大きいことです。この理由は、1相励磁位置でのトルクが2相励磁位置
のトルクの約70%になるからです。この変動によって、振動や機械的ノイズが発生することがありますが、これ
はフルステップドライブモードの場合よりも少なくなります。
修正ハーフステップ(一定トルクモード)
このトルク変動の問題の対処として、1相励磁位置でトルクを増大させ、すべての位置でトルクを一定にする方
法があります。この方法では、電流レベルをハーフステップ位置(図1と2の位置2、4、6、8)で標準的な2
相励磁電流の約140%まで増大させます。
これは、RsおよびVrefの値を変更することで行えます。2相励磁位置での電流は、Vrefを変化させる
ことで低減します。NJM3717とNJM3770Aには、I0、I1ロジック入力によって、IC内部で電流
レベルを設定する機能があります。この入力で、出力電流を最大値の100%、60%、20%、および0%に設
定できます。140%の電流レベルは、理論的数値であることに注意してください。アプリケーションで非常に正
確なトルクと円滑なドライブが両方とも必要となる場合は、使用するモータのタイプとステップレートによって、
フルステップ位置とハーフステップ位置との相対的な電流レベルを調節する必要がある場合があります。
ハーフステップごとに電流が増加すると、トルクだけでなく全消費電力は、フルステップノードの100%電流
と同じレベルの一定値に保たれます。駆動回路の最大電流やPDを増加させないと、電流を140%に増加させる
ことがいつも可能とは限りません。
しかしながら、NJM3775など、当社のデュアルチャンネルドライバを使用すれば、この問題はありませ
ん。ドライバの性能はパッケージの許容消費電力対周囲温度特性によって制限されています。両方のチャンネルが
オンのとき、一定の電力が消費されます。また、チャンネルの一方がオフになると、消費電力は50%低減しま
す。したがって、もう一方のチャンネルは、より多くの電力を消費できるようになるため、より多くの電流を駆動
できます。
シングルドライバは、1相励磁位置で必要な最高電流レベル、すなわち140%電流レベルに合わせて選択でき
ます。これは、パッケージの許容損失が同じでないためです。
電流減衰
1相励磁位置に入るときの電流の動きを考慮することは非常に重要です。特にハーフステップドライブを使用す
るときに当てはまります。回転子を強制的に1相励磁位置にするには、励磁されていない巻線を通る電流を、でき
るだけ迅速にゼロにする必要があります。多くの場合、高速電流減衰によって、振動と共振が減少します。しか
し、得られる性能は用途に大きく依存します(機械的減衰、回転子位置と磁界との遅れなど)。高速電流減衰は、
入力相信号に対する磁界制御の追従性を改善します。
ここで言う電流減衰とは、定電流スイッチング期間での電流減衰ではなく、相の切替後に巻線が完全に消磁に至
る時に起こる電流の変化を指します。一般に電流減衰時間は、巻線が蓄積された磁気エネルギーを放出する電圧に
依存します。残りの電流を強制的に電源(その用途で最も高い電圧)に流すことで、最も高速な電流減衰が得られ
ます。
Slow current decay
Fast current decay
I MA1
t
I MA2
t
Increasing step rate
図4 モータ電流対増加ステップ率の対する高速および低速電流減衰の影響
図3にモータ電流の理想化された図を示します。より現実的な図を図4で示します。高いパルスレートで電流減
衰が低速な場合は、モータ電流が1相励磁位置でゼロに到達しないことがわかります。その代わりモータ電流は平
滑化され、正弦波に近づきます。ただしそのため、高速ではトルクの損失が大きくなります。
Hブリッジ装置では、電流減衰は適切なシーケンスでトランジスタをオンまたはオフにすることで制御できま
す。図5では、巻線に電流を流すとき、経路1がオンになります。トランジスタQ1とQ4は導通し、Q2とQ3
はオフになっています。2つの方法で出力をオフにできますが、その結果は異なります。
Q4のみをオフにすると、電流は強制的に経路2を流れます。電流はダイオード1個の順方向電圧にクランプさ
れるため、低速電流減衰となります。蓄積された磁気エネルギーの大部分は、モータ巻線の抵抗で消費されます。
この切り替え方法は、定電流切り替えで通常使用されます。(これは2象限ドライブと呼ばれます。)
もう1つの方法として、Q1とQ4の両方をオフにすることもできます。すなわち、4つすべてのトランジスタ
がオフになります。このとき、電流が電源電圧に逆らって強制的に2個のダイオードを通じてモータ電源に流れる
ことになります(図5の経路3)。この場合は高速電流減衰になります。電流が経路3を回生するとき、トランジ
スタQ2とQ3をオンにしても、回生電流にはほとんど影響しません。しかし電流をゼロにすると、電流は反対の
方向に流れ始めます。したがって、完全なフェーズ推移が発生します(これは4象限ドライブとも呼ばれます)。
注意:
修正ハーフステップモードでは、高速電流減衰は70%レベルからゼロ電流への電流減衰にのみ適用します。1
00%レベルから70%レベルの電流減衰は常に低速です。なぜなら、この電流レベルを変更する唯一の方法はV
refの低下であり、これは電流減衰に影響を与えないためです。
1
3
2
1
+
2
Q1
V MM
-
Q2
3
Q4
Q3
RS
IM
2
1
Phase
3
Phase shift here
gives fast current decay
NJM3717
I0, I1
Phase shift here
gives slow current decay
図5 出力部とターンオン、ターンオフ、およびフェーズ推移時の電流路。
異なる電流路での電流の動き
STEP
Direction
Step mode
Control
logic
Phase1
Phase2
Step
generator
Disable
(optional)
Reset
(optional)
Driver
circuit
Disable or
Vref
I0, I1
Controlling
Vref
circuit
Stepper
motor
図6 必要な入力および出力制御信号の定義
Phase1
I0 1
I1 1
NJM
3717
µcontroller
Phase2
I0 2
I1 2
NJM
3717
Stepper
motor
Phase1
STEP
Direction
Step mode
Phase2
NJM
3517
Disable
Vref
Driver
circuit
Dis 1
Dis2
Stepper
motor
Phase 1
STEP
Direction
Stepmode
Phase2
TTLgenerator
Vref
Driver
circuit
Disable
Dis1
Reset
Stepper
motor
Dis 2
Phase1
Logic
input
Phase2
ASIC
Vref
Dis1
Driver
circuit
Dis2
Stepper
motor
図7 ステッピングモータドライバ/発生器構成の例
高速電流減衰を得る方法は、ICによって入力信号が異なります。
・NJM3717:I0とI1をHレベルにすることで電流がゼロになり、2つの下側トランジスタQ3とQ4が
オフになります。高速電流減衰は、フェーズ入力部を同時にシフトし、直前に導通していた上側トランジスタ
Q1またはQ2をオフにすることで可能です(図5参照)。
・NJM3770A:I0=I1=Hのとき、4つすべてのトランジスタをオフにします。
・NJM3771:VRピンがLにされるとき、出力トランジスタをオフにします。
・NJM3772:適切な相推移によって電流減衰を制御します。NJM3717を参照してください。
・NJM3773/74/75:出力の4つすべてのトランジスタをオフにする、独立したDis入力ピンがあり
ます。
ハーフステップシーケンスの生成
ステップシーケンスは、様々な方法で構成されたステップ信号発生器によって生成されます。いくつかのステッ
プ信号発生器の例を示します。この項の目的はシーケンス生成の考え方を示すことであり、完全なリストを示すわ
けではありません。
図6は、ステップ信号発生器の入力および出力ピンを定義するブロック図を示します。ステップ信号発生器への
入力信号には、次のものがあります。
・STEP:ステップクロック信号。
・Direction:モータのステップ方向(回転)を制御するロジック入力部。
・Step Mode:フルステップ、ハーフステップ、および修正ハーフステップドライブモードのどれかを
選択するロジック入力。
ステップ信号発生器からの出力信号は、選択されたドライバ回路によって設定されます。Phase1とPh
ase2は常に必要ですが、残りの信号は使用するドライバとドライブモードによります。
・Vref:基準電圧入力。ドライバ内の電流調整回路と共に、モータ巻線内の電流量をこの端子電圧で設定しま
す。Vrefを変化させて修正ハーフステップモードを構成する場合には、制御回路が別に必要です。
NJM3717やNJM3770Aなどのドライバには内部設定の電流レベルがあり、ハーフステップや修正
ハーフステップモードで使用できます。このレベルは、ロジック入力I0とI1で制御されます。
ドライバおよび信号発生器の構成例を図7に示します。詳細は後述します。
PhaseA
I0 A
NJM
3717
I1 A
IC2
Phas
D D Q
1
_
> Cl
Q
R
µcontroller
IC2
Phase
B
STEP
I0 B
NJM
3717
I1 B
Stepper
motor
Phase A
1 1 1 1 0 0 0 0 X 1 1 1 X 0 0 0 X 1 1 1 X 0 0 0
Phase B
1 1 0 0 0 0 1 1 11 X 0 0 0 X 1 1 1 X 0 0 0 X 1
I 0A
0 0 0 0 0 0 0 0 10 0 0 1 0 0 0 1 1 0 1 1 1 0 1
I 1A
0 0 0 0 0 0 0 0 10 0 0 1 0 0 0 1 0 0 0 1 0 0 0
I 0B
0 0 0 0 0 0 0 0 0 01 0 0 0 1 0 0 1 1 1 0 1 1 1
I 1B
0 0 0 0 0 0 0 0 0 01 0 0 0 1 0 0 0 1 0 0 0 1 0
Full step mode
D D Q
_
> Cl Q
R
Modified
half step mode
direction (for example CW)
direction (for example CCW)
Half step mode
X=1 when the bit map is used in
X=0 when the bit map is used in
図8 マイクロプロセッサと出力ビットマップによって制御される2つの
NJM3717。方向が変化するときのデジタルシーケンスの変化に注意してく
ださい。図のX値は、高速電流減衰を生成します。低速電流減衰を得るに
は、Xの極性を反転してください。
Reset
Phas
2
IC2=7 4HC175
図9 一方向TTLフルステップ
発生器
IC2
=1
IC1
=1
DIR
STEP
Reset
IC1
Phase 1
D D Q
_
> Cl
Q
R
IC2
D D Q
_
> Cl Q
R
Phase 2
IC1=74 HC04
IC2=74HC175
図10 二方向TTLフルステップ
発生器
&
IC1
=1
IC2
&
&
&
Phase 1
D
IC3
IC3
&
&
Q
D
_
> Cl Q
R
IC2
IC1
=1
IC5
IC2
IC5
Q
D
Phase 2
D
_
> Cl Q
R
IC3
IC1
=1
IC1
=1
STEP
IC6
IC3
&
&
IC4
DIR
D
Dis1
___
Dis1
Q
D
_
> Cl Q
R
HSM
IC6
&
IC4
Reset
IC1=7 4HC86
IC2=IC3=7 4HC00
Dis 2
___
Dis 2
D
Q
D
> Cl _
Q
R
IC4=7 4HC21
IC5=IC6=7 4HC175
図11 二方向TTLフル/ハーフ/修正ハーフステップ発生器
V CC
16
POR
RC
12
Mono
F-F
V SS
15
NJM
3517
13 LA
14 LB
STEP
DIR
HSM
7
6
10
11
INH 9
ØA
8
ØB
P
PhaseA
Logic
PB
1
P
2 PB2
B1
5
PA2
4
PA1
3
図12 NJM3517のブロック図
GND
・マイクロコントローラ内のソフトウェアステップシーケンス発生器。
・標準部品で設計されたTTLステップシーケンス発生器。
・NJM3517ユニポーラドライバを使用したステップシーケンス発生器
・ASICを利用したステップシーケンス発生器。省スペースが必要なアプリケーションで専用回路が作成可能
です。
ハーフステップや修正ハーフステップシーケンス発生器を作成する方法は、経済性、スペース、および既存の
ロジック機能を考慮して選択する必要があります。
マイクロコントローラをハーフステップ発生器として使用する
マイクロコントローラを使用すると、ハーフステップ制御シーケンスを簡単に生成できます。小規模のマイクロ
コントローラの値段は手頃であるため、多くの場合経済的です。ソフトウェアを使用して、簡単に制御信号を変更
できます。
マイクロコントローラを使用するには次のような方法があります。1つは、ドライバ入力部をコントローラの出
力部に接続して(図8参照)、図のようなデジタルシーケンスをコントローラへ送り、データベース経由でドライ
バにアクセスする方法です。もう1つは、ラッチを使用するものです。
D/Aコンバータを内蔵したマイクロコントローラもあります。このコントローラなら、他の入力と共に、VR
電圧入力を発生および制御することができます。このため、ハーフステップシーケンスでより正確なトルクを実現
することができます。
Vcc
Vcc
Vref
Vcc
V cc
Vref
Vref
Vref
2.7V
3.9V
Vcc
C
B
A
D
Vref
Dis 1
Dis 2
Vref
_1
>
Dis 1
Dis 2
Vcc
F
E
Vcc
Vcc
+
Vref
-
Dis 1
Dis 1
_1
>
Dis 2
Dis 2
G
図13 さまざまな電圧基準回路の例
_ 1
>
H
Vref
フルステップTTL発生器
フルステップTTL発生器は簡単に実現できます。図9に基本的な回路を示します。2つのDフリップフロップ
と1つのインバータだけで構成されています。この回路では、ステップ方向を変更できません。実際の回転方向
は、ステッピングモータの1つのコイルへのフェーズ出力部を切り換えることで簡単に変更することができます。
発生器を制御するためにはステップ信号のみが必要であり、モータはSTEP端子入力信号の各パルスに対してス
テップを行います。
ロジック信号によって回転方向を変更する機能が必要な場合は、図10の回路を使用します。ここでは、2つの
TTLが必要です。ロジック方向信号の状態によって、モータはいずれかの方向に反転します。
リセット信号はロジック出力部をLに設定します。
注意:実際のモータ軸位置は、特定の位置にリセットされません。また、巻線は100%励磁されます。
ハーフステップTTL発生器
図11に、フルステップ、ハーフステップ、および修正ハーフステップに制御信号を生成できる拡張したTTL
発生器を示します。ステップモードやドライバによっては、修正ハーフステップモードを使用するとき、電圧制御
回路などいくつかの追加回路の必要があることがあります。この場合、入力部はSTEP、DIRおよびHSMに
なります。
リセットは、フルステップTTL発生器の場合と同様に、ロジック出力を特定の状態に設定するだけです。電流
を無効化機能は別のロジック回路が必要です。
NJM3517をハーフステップ発生器として使用する場合
NJM3517ユニポーラステッピングモータドライバは、ハーフステップ発生器として使用できます(図12
参照)。利用できるドライバは、NJM3770A、3773、3774、および3775です。NJM3717
の制御には、1相励磁位置に入るとき高速電流減衰しないため、適していません。
NJM3770Aには、I0/I1入力部に高速電流減衰機能を装備しています。NJM3773/74/75
では、Disピンで出力トランジスタを全オフにすることによって、高速電流減衰が発生します。
ASIC
アプリケーションによってASIC(PAL、PLD、セミカスタムなど)が使用されている場合、そこにス
テップ発生器を含めるとよいでしょう。これは非常に経済的な方法です。ステップ発生器は、ASIC上のわずか
なスペースで実現できます。
電圧基準制御回路
すでに説明したように、修正ハーフステップ動作では、電流レベルの変更が必要になります。
1相励磁位置では、電流は2相励磁位置よりも約40%多くする必要があります。言い方を換えると、全電流レ
ベルを140%まで上昇させ、2相励磁位置では100%まで低下させることになります。以下ではこの方法につ
いて説明します。
全電流レベルを増大するには、それに適合するよう電流検出抵抗値を低下させる必要があります。標準基準電圧
2.5Vのドライバを使用するときは、Vrefを上げてモータ電流を増大させることができます。または、Rs
を下げ、Vrefを上げる組合せも使用できます。このとき、ドライバの最大許容電流を越えないようにしてくだ
さい。基準電圧源としてVcc(5V)の使用を仮定すると、制御可能な基準電圧の範囲はVccよりずっと下に
なります。
入力基準電圧の範囲は、ドライバICによって異なります。
NJM3717、3770A、3775の入力基準電圧の範囲は0∼5Vです。しかし、この範囲でVccを基
準電圧源として使用するのは不可能です。電圧範囲の減少を補償するには、電流検出抵抗をさらに低下させ、電流
レベルを維持する必要があります。
NJM3717と3770Aを使用するときは、内蔵の60%電流レベルを使用して、2相励磁位置での電流レ
ベルを下げることができます。この場合、Vccを直接使用でき、外部の基準電圧回路は必要ありません。
NJM3771、3772、および3774では、標準Vrefは2.5Vです。これによって、Vccから適
切なVrefを生成することが容易になっています。これらの回路にはI0/I1入力部がないため、修正ハーフ
ステップモードを使用するときは、Vref入力によってフルステップ位置での電流を低減する必要があります。
別の種類のVref制御回路を図13に示します。
NJM3773のコンパレータ入力部(VRとC)は、高インピーダンスかつ低電流です(通常−0.2μA)
これによって、適切な分圧器ネットワークの選択で高い柔軟性が得られます。
マイクロコントローラを使用してステップシーケンスを生成するとき、DACを使用してVrefを設定するの
が妥当な方法です。この方法なら、ソフトウェアでVrefを簡単に変更できるため、最高の対策といえるでしょ
う。
図13に使用されるドライブモードとドライバ回路に使用できる電圧基準回路を示します。AとBは、2種類の
基準電圧回路です。
A.一般的な抵抗分圧回路。部品は少ないですが、Vccの精度と安定性に依存します。3773を除くデュアル
チャンネルドライバICのVR入力抵抗の誤差は、周囲温度TA=25℃時で約20%であり、温度に依存しま
す。
B.ツェナーダイオードを使用して電圧基準を設定するものです。Aと比較すると、ツェナーダイオードによって
IC内部の抵抗値変動の影響が低減されます。しかし、ツェナーダイオードは5V未満の微妙な値の選定が難しく
なります。またツェナーダイオードにはこの電圧範囲で充分なバイアス電流を流して内部抵抗を低減する必要があ
ります。
図C∼Hは、修正ハーフステップドライブ用のいくつかの電圧基準制御回路を示しています。このドライブモー
ドでは、Vref電圧は2つの異なるレベルにシフトする必要があります。
C.この回路は、MOSFETを使用して分圧器と並列の抵抗を切り換えて基準電圧を変化させます。出力部のコ
ンデンサによって、ノイズ除去性能を向上させます。
D.抵抗の代わりにツェナーダイオードを使用することで、内部抵抗の影響を低減させることができます。Bと同
様、ツェナーダイオードに注意してください。
E.TTLコントローラまたはNJM3517を使用する場合は、この基準回路を使用して電圧を変化させること
ができます。入力抵抗の影響を低減するには、分圧器を流れる電流を大きくする必要があります。ゲート出力は必
要な電流をシンクできるようにします。必要なら、2つ以上のゲートを並列に接続して、電流シンク能力を向上さ
せます。ゲート出力はオープンドレインまたはオープンコレクタの必要があります。
F.この回路では、3つのFETを使用して、OR機能を形成しています。電圧設定回路は簡単な分圧器です。出
力部のコンデンサによって、ノイズ除去性能が向上しています。
G.これは、推奨の基準電圧制御回路です。この回路は下側抵抗と並列に抵抗を追加することで2つのレベル間で
切り替えが可能な分圧器です。出力部にバッファが追加されているため、必要な電流は非常に小さくなっていま
す。つまり、切り替えデバイスとしてTTLまたはCMOSゲート(オープンコレクタまたはオープンドレイン)
を使用できます。このバッファはオープンエミッタのNPNトランジスタです。このトランジスタのベース−エ
ミッタ間電圧の温度依存性を補償するため、分圧器にダイオードが追加されています。
H.この基準制御回路は、バッファとして演算増幅器を使用しています。電圧設定回路は、切り替え可能な分圧器
です。切り替え用にNORゲートと共にMOSトランジスタが使用されています。その他の電圧設定回路でも、演
算増幅器をバッファとして使用できます。
TTL発生器とNJM3717/3770Aを使用した修正ハーフステップ
このアプリケーション(図15)では、すでに説明したTTL発生器(図11参照)を使用して、必要な相信号
を生成しています。2相励磁位置と1相励磁位置との間に相対的な電流レベルを設定するため、内部電流制限機能
が使用されています。この機能は、ドライバのI0およびI1入力で制御されます。
内部電流制御機能によって、100%、60%、20%、およびオフ(0)の4つのレベルで出力を制御できま
す。この回路では、100%と60%の電流レベルを使用しています。理想的には、2相励磁位置での電流は1相
励磁位置の電流の約70%である必要があるため、このレベルは最適ではありませんが、60%でもたいていの場
合は問題ありません。
リセット信号はフリップフロップを定義された状態に設定します。この状態ではモータ電流はオフになりませ
ん。電流をオフにできるようにするため、TTL発生器に図14の回路を追加できます。これは図15の点線内に
設置してください。
基準電圧は、Vcc(5V)が使用されます。NJM3770Aで電流検出抵抗Rs=0.5Ωの場合、モータ
電流は約800mAに設定されます。NJM3717はRs=1Ωを使用します。この場合、モータ電流はだいた
い415mAになります。もちろん、これらの電流レベルは、電力制限内であればアプリケーションに応じて変更
できます。
TTL発生器とNJM3774を使用したハーフ/修正ハーフステップ
すでに示したTTLコントローラ(図11参照)は、NJM3774の制御にも使用できます。
NJM3774のディセーブル入力(Dis)を使用することで、ハーフステップ機能を簡単に構成できます
(図17参照)。基準電圧の設定のため、2.7V のツェナーダイオードを使用しています。また電流検出用に
0.68Ωの抵抗を使用しています。この抵抗と基準電圧によって、ピーク電流0.71Aが得られます。
修正ハーフステップとするには、基準電圧切り替え回路を追加する必要があります。
基準電圧回路は、入力としてVcc(5V)を使用します。2つの電圧レベルを得るため、基準電圧回路の項で
説明した分圧器Gが使用されています(図16参照)。この回路は、分圧器R1とR2を使用して基準電圧を生成
しています。R2と並列に抵抗R3を追加することで、電圧を切り替えています。バッファとして使用されたトラ
ンジスタは、入力インピーダンスの影響を低減しています。また消費電流を低減するため、比較的高い値の抵抗
(R1、R2、R3)を選択できます。これによって、スイッチとしてオープンドレインまたはオープンコレクタ
NANDゲートを使用できます。ダイオードはトランジスタのベース−エミッタ接合部の温度依存性を低減させて
います。モータ電流は検出抵抗の値を変更することで簡単に設定できます。
Disable
Dis 1
≥1
Dis 2
≥1
Dis 1
Dis 2
図14 モータ電流無効化回路。
図15に追加してください。
+
+5 V
4.7 µF
6
3, 14
11
1
V
V
VCC MM
8
MB
Phase R
9
NJM3717
I0
15
7
NJM3770A
MA
I1
T GND
Cl
Ph 1
DIR
Ph 2
2
56kΩ
TTLcontroller
Dis 1
___
Dis 1
16
1kΩ
RS
820
pF
6
3, 14
11
1
VR VCC V MM
8
Phase
MB
9
I0
NJM3717
7
15
I1
MA
NJM3770A
Dis 2
___
Dis 2
T GND
2
56
kΩ
820 pF
4, 5
12,
13
+VMM
E
10
820
pF
HSM
Reset
4, 5
12,
13
C
STEPPER
MOTOR
C
E
10
16
1kΩ
820 pF
RS
図15 TTLコントローラ、および2つのNJM3717または2つのNJM3770Aを使用した応用回路例
+
47 µF
コントローラのリセット入力は内部フリップフロップのみをリセットし、モータ電流はオフになりません。モー
タ電流をオフにできるようにするには、図17で示す簡単な回路を図18に追加する必要があります。この回路
は、2つのORゲートから構成されています。ディセーブル入力がHレベルになると、ドライバの両方のDis入
力部がHレベルになり、両方の巻線電流がオフになります。
NJM3770Aをドライバ、NJM3517をコントローラとして使用したハーフステップ
この構成によって、ハーフステップを簡単に達成できます。ドライバIC、NJM3517は、コントローラと
して使用できます。ドライバICには3517と一緒に機能するのに適していないものもあります(「NJM35
17をハーフステップ発生器として使用する場合」項を参照)。
図20にNJM3517 が2つのNJM3770Aのステップシーケンス制御とパルス生成を行うアプリケー
ションを示します。3517には、フルステップおよびハーフステップシーケンス発生器の両方が含まれていま
す。この2つの選択は、3517のロジック入力ピン/HSMで容易に行えます。Dir入力は、モータ軸の回転
方向を制御します。Step入力は速度(ステップレート)を制御します。
NJM3517のΦAおよびΦB出力は、3770AのI0およびI1ピン用の電流制御信号として使用されて
います(図20参照)。3770AのPhase入力は、3517 のPA1およびPB1出力によって直接制御
されます。3517の出力はオープンコレクタのため、プルアップ抵抗が必要になります。
電流検出抵抗(Rs)に0.5Ωを使用すると、モータ電流800mAが得られます。
Vcc
Disable
R1
Vref
R3
Dis 1
≥1
Dis 2
Dis 1
≥1
Dis 2
≥1
R2
図16 図18の用途で修正ハーフステッ
プを達成するための電圧基準回路
Dis 2
図17 モータ電流無効化回路。
図18に追加してください。
+
4. 7
0.1 µF
µF
1.8 kΩ
S te p
Phase 1
D IR
Phase 2
14
22
19
4
V CC
P ha s e 1
P ha s e 2
V
R1
V
3
R2
V
TTLcontroller
MM1
Dis 2
1
5, 6,
17, 18
+
µF
22 µ F
D1
V
MM2 M
M
21
12
8
A2
M B2 1 1
E1
13
C2
C 2V 7
820
3300 pF
G ND (V
CC
pF
10
2
D3
1 kΩ
RS 1 kΩ
0. 68 Ω
)
D1-D4 are UF 4001 or
BYV 27, trr ≤ 100ns.
Package pin numbers
refer to DIP package.
図18 TTLコントローラとNJM3774を使用した応用回路例
STEPPER
MOTOR
E2
B Z X 55 /
15 kΩ
D2
15
B1
M
V MM
A1
NJM3774
16 D is 1
7 D is 2
RC G ND C1
Dis 1
0.1
9
20
HSM
Re se t
Dis 1
820pF
RS
D4
V MM
0.68 Ω
G N D ( V MM )
修正ハーフステップを得るには、基準電圧を2つのレベル間でシフトする必要があります。高いレベルは1相励
磁レベル、低いレベルは2相励磁にします。
電圧基準回路は、入力としてVcc(5V)を使用します。2つの電圧レベルを得るため、基準電圧回路の章で
説明した分圧器Gを使用しています(図21参照)。この回路は、分圧器R1とR2を使用して、基準電圧を生成
しています。R2と並列に抵抗R3を追加することで、電圧を変化できるようにしています。バッファとして使用
されたトランジスタは、入力インピーダンスの影響を低減しています。また消費電流を抑制するため、比較的高い
値の抵抗(R1、R2、R3)を選択できます。このことで、スイッチとしてオープンドレインまたはオープンコ
レクタNANDゲートを使用できます。ダイオードはトランジスタのベース−エミッタ接合の温度依存性を低減さ
せています。
モータ電流は、検出抵抗の値を変更することで簡単に設定できます。
モータ電流をオフにできるようにするには、図22で示す簡単な回路を図23に追加する必要があります。この
回路は、2つのORゲートから構成されています。ディセーブル入力部がHレベルになると、ドライバの両方のD
is入力がHレベルになり、両方の巻線の電流がオフになります。
Vcc
Disable
R1
Vref
R3
Dis 1
≥1
Dis 2
≥1
R2
≥1
Dis 2
Dis 1
Dis 1
図21 図23の用途で修正ハーフステッ
プを達成するための電圧基準回路
Dis 2
図22 モータ電流無効化回路。
図23に追加してください。
V
V CC (+5 V)
+
4.7 µF
0.1 µF
1.8
kΩ
16
Direction
STEP
Half/Full Step
V
6
DIR
7
P
A1
STEP
10
11
CC
HSM
9
P
B1
ØB
ØA
4
22
19
16
NJM
3517
INH
8
20
4
2
7
3
GND
Phase 1
V
V CC
MM1
V
22 µF
0.1
µF
9
14
MM2 MA1
Dis 1
D1
NJM3774
Phase 2
D2
15
M B1
V R1
12
M A2 8
Dis 2
M
V R2
RC GND
3
1
15 kΩ
BZX55/
C2V7
GND (VCC )
MM
+
4x
10 kΩ
3300 pF
5, 6
17,
18
C1
21
1 kΩ
820
pF
0.68 Ω
E1
13
C2
2
B2
E2
11
STEPPER
MOTOR
10
D3
RS 1 kΩ
820
pF
D4
RS
0.68 Ω
D1 - D4 are UF 4001 or BYV 27, t rr ≤ 100 ns.
Package pin numbers refer to DIP package.
図23 NJM3774をドライバ回路、NJM3517をコントローラ回路として使用した応用回路例
V
MM
GND (VMM )