si-80xxyseries an jp

SI-8000Y
アプリケーション ノート
フルモールドタイプ チョッパ型スイッチングレギュレータIC
SI-8000Y シリーズ
第 3 版 2013 年 11 月
サンケン電気株式会社
SI-8000Y
---
目次
---
1.概要
1-1 特長
----------
3
1-2 主な用途
----------
3
1-3 種別
----------
3
2-1 外形図
----------
4
2-2 定格
----------
5,6
2-3 回路図
----------
7,8
----------
9
4-1 動作説明
----------
10,11
4-2 過電流・過熱保護
----------
12
5-1 外付部品選定上の注意
----------
13~20
5-2 パターン設計上の注意
----------
21
5-3 出力電圧設定について
----------
22,23
5-4 動作波形の確認
----------
24
5-5 熱設計
----------
25~28
6-1 ソフトスタート
----------
29,30
5-2 出力 ON・OFF 制御
----------
30
5-3 スパイクノイズの低減
----------
31
5-4 逆バイアス保護
----------
31
7.代表特性例
----------
32,33
8.用語解説
----------
34
2.製品仕様
3.各端子の説明
4.SI-8000Y シリーズの動作説明
5.使用に際しての注意事項
6.応用
2
SI-8000Y
1.概要
SI-8000Y は、電流制御方式の降圧スイッチングレギュレータ IC です。
スイッチングトランジスタには低オン抵抗の Nch MOSFET を内蔵していますので、高効率の
DC/DC コンバータが実現できます。
また、電流制御方式を採用し、LC フィルターの小型化にも寄与します。
ソフトスタート機能も有しており外付けに、コンデンサを接続し、ソフトスタート時間を設定
し、起動時のラッシュ電流緩和に寄与します。
●1-1
特長
・小型大出力電流8A
TO220F クラスの外形で、出力電流が最大8Aです。
・高効率86%(Vo=5v 設定、VIN=30V/IO=3A)
高効率の為、発熱が小さく、放熱器も小型にする事が出来ます。
・過電流、過熱保護内蔵
垂下型過電流保護及び過熱保護回路を内蔵しています。(自動復帰型)
・ソフトスタート機能(出力 ON/OFF 可能)
外付コンデンサの定数設定で、起動時に出力電圧立ち上がり速度を遅らせる事
が出来ます。起動時のラッシュ電流緩和ができます。
又、オープンコレクタトランジスタを接続し出力の ON/OFF 制御も可能です。
・絶縁板不要
フルモールド型ですので放熱器への取り付けに際し絶縁板が不要です。
●1-2
主な用途
・アミューズメント用電源
・OA機器用電源
・レギュレータ2次側出力電圧安定化
・オンボードローカル電源
●1-3
種別
・種別:半導体集積回路(モノリシックIC)
・構造:樹脂封止型(トランスファーモールド)
3
SI-8000Y
DWG No:TG3A-2116
2.製品仕様
● 2-1
SI-8000Y 外形図
単位:㎜
Unit:㎜
(リードフォーミング No : LF2016F)
c
a
8010Y
b
b
a:品名標示
1 2 3 4 5 6 7
端子配列
1.BS
2.SW
3.IN
4.GND
5.COMP
6.FB
7.EN/SS
b:ロット番号
第 1 文字
第 2 文字
第 3,4 文字
c:社漂
Type
No
Lot Number
西暦年号下一桁
月
1~9 月:アラビア数字
10 月:O
11 月:N
12 月:D
製造日
01~31:アラビア数字
ロゴマーク
*1:ゲートバリは含まない
*2:リード先端部の寸法を示す。
製品重量:約 2.3g
外部端子処理:Sn-3Ag-0.5Cu ディップ
4
SI-8000Y
●2-2
定格
絶対最大定格
<表1>
項目
記号
規格
単位
入力電圧 VIN *1
VIN
45
V
ハイサイドパワーMOSドレインソース間電圧
BVDSS
55
V
無限大放熱時許容損失
Pd1
20.8
W
放熱板未使用時許容損失
Pd2
1.8
W
接合温度
Tj
-30~150
℃
保存温度
Tstg
-40~150
℃
熱抵抗(接合-ケース)間)
θj-c
6
℃/W
熱抵抗(接合-周囲間)
θj-a
66.7
℃/W
*1:VIN サージを含んだ最大印加電圧になります。
推奨動作条件
<表2>
項目
O
記号
規格
MIN
MAX
43
単位
条件
入力電圧範囲
VIN
*2
出力電流範囲
Iout
0
8.0
A
動作時接合温度範囲
Tjop
-30
135
℃
動作温度範囲
Top
-30
85
℃
*3
出力電圧範囲
Vo
1
15
V
SI-8010Y のみ
*4
V
*3
*2 VIN=8v もしくは VIN=Vout×1.3 のどちらか高い値とする
*3 熱減定格以内で使用する必要があります。
*4 Vin>40v になる場合は IN-SW、SW-GND 間にスナバ回路を入れてください。
5
SI-8000Y
電気的特性
<表3>
*5
項目
基準電圧(出力電圧)
基準電圧(出力電圧)温度係数
効率 *6
動作周波数
ラインレギュレーション
ロードレギュレーション
過電流保護開始電流
静止時回路電流1
静止時回路電流2
EN/SS端子
*7
Low時流出電
流
Lowレベル電
圧
R1=8kΩ,R2=2kΩ)
規格値 Ratings
記号
VREF (Vout)
(Ta=25℃、Vo=5V 設定時
SI-8010Y *5
MIN
0.98
単位
SI-8050Y
TYP
MAX
1
1.02
VIN=30V, Io=0.1A
MIN
4.9
TYP
MAX
5
5.1
VIN=30V, Io=0.1A
±0.1
±0.5
VREF/⊿T
(⊿Vo/⊿T) VIN=30V,Io=0.1ATa=0℃ to +100℃ VIN=30V,Io=0.1ATa=0℃ to +100℃
86
86
η
VIN=30V, Io=3A
VIN=30V, Io=3A
130
130
fo
VIN=30V, Io=3A
VIN=30V, Io=3A
30
90
30
90
VLine
VIN=10~43V, Io=3A
VIN=10~43V, Io=3A
30
90
30
90
VLoad
VIN=30V, Io=0.1~8A
VIN=30V, Io=0.1~8A
8.1
8.1
IS
VIN=20V
VIN=20V
8
8
Iq
VIN= 30V, Io=0A, VEN/SS=
VIN= 30V, Io=0A, VEN/SS=
250
500
250
500
Iq(off)
VIN= 30V, VEN/SS= 0V
VIN= 30V, VEN/SS= 0V
10
30
10
30
ISSL
VIN= 30V ,VEN/SS=0V
VIN= 30V ,VEN/SS=0V
⊿
VC/EL
0.5
VIN=30V
0.5
VIN=30V
V
mV/℃
%
kHz
mV
mV
A
mA
uA
μA
V
VO・IO
η(%)= VIN・IIN ×100
*6 効率は次式により算出されます。
*7 7 番端子は、EN/SS 端子で、コンデンサを接続することによりソフトスタートさせ
ることが出来ます。また、EN/SS 端子電圧を VSSL 以下にすることで出力は停止しま
す。EN/SS 端子の電位切り替えは、
トランジスタのオープンコレクタ駆動等
で行うことが出来ます。尚、ソフトスタートと、ON/OFF を併用した場合、ON/OFF
用トランジスタにはC6のディスチャージ電流が流れるため、C6の容量が大きい
場合は、電流制限等の保護を行って下さい。また、EN/SS 端子は IC 内部電源にプ
ルアップ(4.4vTYP)されていますので、外部からの電圧印加は出来ません。未使用
の場合は、オープンとして下さい。
6
SI-8000Y
● 2-3
ブロック図
SI-8010Y
VIN
SI-8010Y
3
IN
Pre
REG
OSC
C2
C1
5
Current
Sense
Amp
Σ3
Boot
5vREG
6
1
BS
C5
7
3
EN/
SS
3
C6
PWM
LOGIC
UVLO
TSD
OCP
EN/SS
DRIVE
4
L1
2
VO
SW
C3
D1
R1
5 COMP
8
1.0V
7
C4
6
FB
Amp
R2
C7
R3
GND
1
4
SI-8050Y
VIN
C2
3
C1
IN
Pre
REG
OSC
Σ
Current
Sense
Amp
Boot
5vREG
1
BS
C5
7
C6
EN/
SS
UVLO
TSD
OCP
EN/SS
DRIVE
PWM
LOGIC
L1
2
SW
D1
VO
C3
6
5 COMP
1.0V
C4
Amp
FB
C7
R3
GND
4
7
SI-8000Y
2-3-②
標準接続図
SI-8010Y
*1
Csn1
C1:2200μF/50V
C2:4.7μF/50V
Rsn1
Vin
(RPER11H475K5 (村田製作所製))
3
C1
IN
7
C2
C5
L1
2
BS
Vo
SW
SI-8010Y
EN/SS
C6
R4
1
COMP
GND
5
4
FB
C3
Csn2
R2
D1
C4
C7
R1
6
*1
Rsn2
R3
GND
GND
C3:470μF/25V
C4:1200pF(Vo=5V 設定時)
C5:0.22μF/50V
C6 :0.1~1uF
C7:680pF(Vo=5V 設定時)
L1:47μH
D1:FMB-26L (サンケン製)
R1:8kΩ
(Vo=5V 設定時)
R2:2kΩ
R3:39kΩ(Vo=5V 設定時)
R4:0~22Ω程度
Csn1,2=2200pF(Vin>40v 時) *1
Rsn1,2=10Ω(Vin>40v 時)*1
*1:Vin>40v になる場合は IN-SW、SW-GND 間にスナバ回路を入れてください。
SI-8050Y
*1
Csn1
Rsn1
C1:2200μF/50V
C2:4.7μF/50V
Vin
1
3
C1
C2
IN
7
EN/SS
C6
C7
GND
BS
R4
C5
2
(RPER11H475K5 (村田製作所製))
Vo
L1
SW
SI-8050Y
COMP
GND
5
4
FB
6
C3
C4
D1
Csn2
R3
Rsn2
*1
GND
C3:470μF/25V
C4:1200pF
C5:0.22μF/50V
C6 :0.1~1uF
C7:680pF
L1:56μH
D1:FMB-26L (サンケン製)
R3:39kΩ
R4:0~22Ω程度
Csn1,2=2200pF(Vin>40v 時)*1
Rsn1,2=10Ω(Vin>40v 時)*1
8
SI-8000Y
3.各端子の説明
●3-1
端子記号、名称
<表5>
端子番号
記号
BS
SW
VIN
GND
COMP
FB
EN/SS
1
2
3
4
5
6
7
●3-2
SI-8010Y/8050Y
名称
ハイサイド MOS 用ブースド端子
スイッチング出力端子
入力端子
グランド端子
位相補正用端子
フィードバック検出端子
ソフトスタート兼 ON/OFF 制御端子
端子機能説明
・BS (端子番号 1):
ハイサイドスイッチ Nch-MOS のゲート駆動用の内部電源です。SW 端子と BS 端子間に推奨 0.22uF のコ
ンデンサを接続し、ハイサイド Nch-MOS を駆動させます。
・ SW (端子番号2):
出力にパワーを供給するスイッチング出力端子です。
・VIN (端子番号3):
IC の入力電圧です。
・GND (端子番号4):
グランド端子です。
・COMP(端子番号5):
ループを安定に制御するための位相補正用端子です。
・FB (端子番号6):
出力電圧検出用の端子です。SI-8010Y では R1、R2を接続し出力電圧を設定します。
・EN/SS(端子番号7):
端子にコンデンサを接続し出力電圧のソフトスタート設定を行います。IC を ON/OFF させる場合、オ
ープンコレクタトランジスタを接続し、Low にすることでオフとなります。
9
SI-8000Y
4.SI-8000Y の動作説明
4-1.動作説明
SI-8000Y では出力電圧の抵抗分割値を基準電圧 1V で比較するエラーアンプで構成されてい
ます。電流制御帰還ではインダクタ電流を PWM 制御に帰還するループであり、センス MOS を
使用して分流されたインダクタ電流をカレントセンスアンプで検出を行っています。また、
スロープ補正では電流制御方式の特性上,サブハーモニック発振を回避するため電流制御ス
ロープに対してスロープ補正を行っています。図5に示すように,SI-8000Y では,電圧制
御帰還,電流制御帰還,スロープ補正の信号を演算することで,電流制御方式による PWM 制
御を行っています。
VIN
SI-8010Y
C2
3
C1
IN
Pre
REG
OSC
Σ
Current
Sense
Amp
Boot
5vREG
1
BS
R4
7
C6
EN/
SS
UVLO
TSD
OCP
EN/SS
C5
DRIVE
PWM
LOGIC
2
L1
SW
V
C3
D1
R1
5
6
COMP
1.0V
C4
Amp
FB
R2
C7
R3
GND
4
図5
電流制御PWM制御チョッパ型レギュレータ基本構成
SI-8000Y は電流制御のレギュレータのため、COMP 端子の電圧はインダクター電流のピーク
値に比例します。UVLO が解除された時や、EN/SS 端子が閾値(約 1.5v)を超えた時に、スイ
ッチング動作をします。最初は、MIN_ON デューティーもしくは MAX_ON デューティーでスイッチング動
作しハイサイドスイッチ(M1、以下 M1と示す。) と BS コンデンサチャージ用スイッチ (M
2、以下 M2と示す。)が常に ON/OFF を交互に繰り返します。 M1は出力にパワーを供給
するスイッチング MOS で、M2 は M1 を駆動させるためのブースト用コンデンサ C5 をチャージします。M
1:ON/M2:OFF 時において、SW 端子とインダクターに電圧が印加されることにより、イ
ンダクター電流が増加し、それを検出する電流検出アンプの出力も上昇します。この電流検
出アンプの出力と Ramp 補正信号とが加算された信号と、誤差増幅器の出力が、電流比較器
(CUR_COMP)で比較されます。加算された信号が、誤差増幅器の出力(COMP 端子電圧)を超
えた時に、電流コンパレータの出力が“H”となり、RS フリップフロップがリセットされま
す。そして、M1が OFF し、M2が ON します。それにより、回生電流が外付け SBD(D1)を
通って流れます。
10
SI-8000Y
SI-8000Y では毎周期にセット信号が発生し、RS フリップフロップがセットされます。また、
加算された信号が COMP 端子電圧を超えなかった場合、10%OFF Duty 回路の信号により、RS フ
リップフロップが必ずリセットされます。
11
SI-8000Y
●4-2
過電流・過熱保護
過電流時出力電圧特性
Vo の低下と共に発振周波数が低下
します。
SI-8000Y シリーズは、垂下型過電流保護回路を内蔵しています。過電流保護回路はス
イッチング MOSFET のピーク電流を検出し、ピーク電流が設定値を超えると強制的にト
ランジスタのON時間を短縮させて出力電圧を低下させ電流を制限しています。更に出
力電圧が低下しますとスイッチング周波数を約 25KHz までリニアに落とす事で低出力電
圧時の電流増加を防止しています。過電流状態を解除すると出力電圧は自動的に復帰し
ます。
過熱保護時出力電圧特性
出力電圧
復帰設定温度
保護設定温度
接合温度
過熱保護回路は、ICの半導体接合温度を検出し、接合温度が設定値(約 160℃)を超
えると出力トランジスタを停止させ、出力をOFFとします。接合温度が過熱保護設定
値より 25℃程度低下しますと自動的に復帰します。
※(過熱保護特性)注意事項
瞬時短絡等の発熱に対しICを保護する回路であり、長時間短絡等、発熱が継続する
状態での信頼性を含めた動作を保証するものではありません。
12
SI-8000Y
5.使用に際しての注意事項
●5-1
外付部品選定上の注意
5-1-①
チョークコイルL1
チョークコイルL1は、チョッパ型スイッチングレギュレータの中心的役割を果たしてい
ます。レギュレータの安定動作維持のため、飽和状態での動作や、自己発熱による高温動作
等の危険な状態は回避しなくてはなりません。チョークコイル選定のポイントとしては以下
の事項が挙げられます
a)スイッチングレギュレータ用である事
ノイズフィルタ用のコイルは、損失が大きく発熱が大となりますのでご使用を
避けて下さい。
b)サブハーモニック発振の回避
ピーク検出電流制御ではインダクタ電流がスイッチング動作周波数の整数倍の周期で変
動することがあります。このような現象をサブハーモニック発振と呼び、ピーク検出電
流制御モードでは原理的に発生する問題です。その為、安定な動作をさせる為に IC 内部
でインダクタ電流に補正を行っており、出力電圧に対応した適切なインダクタ値を選定
することが必要です。
図8はサブハーモニック発振を回避するためのインダクタンス L 値選定範囲を示した図です。
VIN(V)
43
42
41
40
39
38
37
36
35
34
33
32
31
30
29
28
27
26
25
24
23
22
21
20
19
18
17
16
15
14
13
12
11
10
9
8
120
L=100uH
SI-8010Y は外部抵抗で Vout 設定を
行う為、設定条件によりインダクタ
ン ス 値 を 最 適 化 する必要がありま
L=82uH
す。
SI-8050Y も外部抵抗を追加し、Vout
L=68uH
上昇可変をした場合インダクタンス
値の合わせ込みが必要です。
L=56uH
Vo 変 更 し た 場 合 も イ 相 補 性 定 数
(C4,C7,R3) の 再 設 定 が 必 要 で す 。
(P.18参照)
L=47uH
L=33uH
1
2
3
4
5
6
7
8
9
Vout
10
11
12
13
14
15
13
SI-8000Y
チョークコイル電流の脈流部ΔIL およびピーク電流 ILp は、次式にて表されます。
IL 
(Vin  Vout )  Vout
L  Vin  f
---(A)
ILp 
IL
 Iout
2
---(B)
この式よりチョークコイルのインダクタンス L が小さいほど、ΔIL,ILp ともに増大する
ことが分かります。よってインダクタンスが過小であるとチョークコイル電流の変動が
大きくなるためレギュレータの動作が不安定になるおそれがあります。過負荷・負荷短
絡時の磁気飽和によるチョークコイルのインダクタンスの減尐に注意願います。
図9
c)定格電流を満足する事
チョークコイルの定格電流は、使用する最大負荷電流より大きくなくてはなりません。
負荷電流がコイルの定格電流を越えると、インダクタンスが激減し、ついには飽和状態
となります。この状態では、高周波インピーダンスが低下し、過大な電流が流れますの
でご注意下さい。
d)ノイズが尐ない事
ドラム型のような開磁路型コアは、磁束がコイルの外側を通過するため周辺回路へノ
イズによる障害を与える事があります。なるべくトロイダル型や EI 型、EE 型のような
閉磁路型コアのコイルをご使用下さい。
5-1-②
入力コンデンサC1、C2
入力コンデンサは、入力回路のバイパスコンデンサとして動作し、スイッチング時の
急峻な電流をレギュレータに供給しており、入力側の電圧降下を補償しています。従っ
て極力レギュレータICの近くに取り付ける必要があります。特にC2は周波数特性の
良いセラミックコンデンサもしくはフイルムコンデンサを使用し、製品のIN-GND
14
SI-8000Y
端子に近い位置にレイアウトする必要があります。
また、AC 整流回路の平滑コンデンサが入力回路にある場合でも、SI-8000Y の近くにレ
イアウトされていなければ入力コンデンサは平滑コンデンサと兼用とする事が出来ま
せん。
C1選定のポイントとして次の事が挙げられます。
a)耐圧を満足する事
b)許容リップル電流値を満足する事
C1 の電流の流れ
IIN
C1電流波形
VIN
1.VIN
リップル電流
0
Iv
Ip
C1
Ton
D
T
Ton
T
入力コンデンサのリップル電流は負荷電流の
増加に伴って増大する。
これら耐圧や許容リップル電流値を、オーバーしたりディレーティング無しで使用し
た場合、コンデンサ自身の寿命が低下(パンク、容量の減尐、等価インピーダンス増大、
等)するばかりでなく、レギュレータの異常発振を誘発する危険があります。従って、
十分なマージンをとった選択が必要です。尚、入力コンデンサに流れるリップル電流実
効値 Irms は下記の(2)式で求められます。
Irms  1.2 
例えば
Vo
 Io
Vin
--(2)
VIN=20V,Io=3A,Vo=5V とすると、
I r m 1s.2 
5
 3  0.9 A
20
となりますので、許容リップル電流が、0.9A より大きいコンデンサを選ぶ必要がありま
す。
5-1-③
出力コンデンサC3
出力コンデンサC3は、チョークコイルL1と共にLCローパスフィルターを構成し、
スイッチング出力の平滑コンデンサとして機能しています。出力コンデンサにはチョー
15
SI-8000Y
クコイル電流の脈流部ΔIL と等しい電流が充放電されています。従って入力コンデンサ
と同様に、耐圧及び許容リップル電流値を十分なマージンを取った上で満足する必要が
あります。
IL C2の電流の流れ
Vout
L1
Io
リップル電流
ESR
RL
C2電流波形
0
⊿IL
出力コンデンサのリップル電流はチョークコイルのリップル
C2
電流と等しく、負荷電流が増減しても変化
しない。
出力コンデンサのリップル電流実効値は、下記の(3)式で求められます。
Irms 
IL
2 3
---(3)
例えばΔIL を 0.5A としますと、
Irms 
0.5
≒ 014
. A
2 3
となり、許容リップル電流が 0.14A 以上のコンデンサが必要になります。
又、レギュレータの出力リップル電圧 Vrip は、チョークコイル電流の脈流部ΔIL(=
C2充放電電流)と出力コンデンサC2の等価直列抵抗 ESR の積によって定まります。
Vrip  IL  C2ESR
---(4)
従って出力リップル電圧を小さくするには、等価直列抵抗 ESR の低いコンデンサを選
ぶ必要があります。一般的に電解コンデンサにおいては同一シリーズの製品ならば、同
一耐圧で容量が大きい程、又は同一容量で耐圧が高い程(≒外形が大きくなる程)ESR
は低くなります。
ここでΔIL=0.5A
Vrip=40mV
としますと、
C2esr  40  0.5  80m
となり、ESR が 80mΩ以下のコンデンサを選べば良い事になります。また ESR は温度
によって変化し一般に低温になると増加しますので、使用温度における ESR を確認する
必要があります。尚 ESR 値はコンデンサ固有のものですのでコンデンサメーカにご問い
合わせ下さい。
しかし出力コンデンサの ESR が極端に小さいもの(30mΩ以下)を使用される場合、
Comp 端子の位相補性定数を見直す事で使用可能です。P.18 参照
16
SI-8000Y
5-1-④
フライホイールダイオード・D1
フライホイールダイオードD1は、スイッチングオフ時にチョークコイルに貯えられ
たエネルギーを放出させる為の物です。フライホイールダイオードには必ずショットキ
ーバリアダイオードを使用して下さい。一般の整流用ダイオードやファーストリカバリ
ダイオード等を使用した場合、リカバリ及びオン電圧による逆電圧印可によりICを破
壊する恐れがあります。
又 SI-8000Y シリーズの SW 端子(2 番端子)から出力された電圧は入力電圧とほぼ同等
である為、フライホイールダイオードの逆方向耐圧が入力電圧以上あるものをご使用下
さい。
ノイズ対策としてフライホイール Di にフェライトビーズは入れると過大な負電位が発
生する為、絶対にいれないでください。
5-1-⑤
位相補正素子 C4、C7、R3
ループの安定性と応答性は、COMP 端子を通して、制御されます。COMP 端子は、
内部のトランスコンダクタンスアンプの出力です。
直列なコンデンサと抵抗との組み合わせが、制御システムの特性を決めるポールと
ゼロの組み合わせをセットします。電圧帰還ループの DC 利得は、次の式によって計算
できます。
Adc  Rl  Gcs  AEA 
VFB
Vout
ここで、VFB はフィードバック電圧(1.0V)です。AEA は誤差増幅器の電圧ゲイン、
Gcs は電流検出のトランスコンダクタンスで、そして Rl は負荷抵抗値です。
2 つの重要なポールがあります。一つは、位相補正コンデンサ(C4)と誤差増幅器の
出力抵抗とによって生じます。
もう一つは、出力コンデンサ(C3)と負荷抵抗によって生じます。これらのポールは、
下記の周波数に現れます。
fp1 
GEA
2  C 4  AEA
fp2 
1
2  C 3  Rl
ここで、GEA は誤差増幅器のトランスコンダクタンスです。このシステムは、一つのゼロが重要です。
それは、位相補正コンデンサ C3 と位相補正抵抗 R3 によって生じます。
そのゼロは、下記の周波数に現れます。
fz1 
1
2  C 4  R3
17
SI-8000Y
もし、出力コンデンサが大きいかつ・あるいは電解コンデンサなどの様に ESR が大き
い場合は、このシステムは、重要な別のゼロを持つ場合があります。このゼロは、出力
コンデンサ C3 の ESR と容量によって生じます。
そして、下記の周波数に存在します。
fESR 
1
2  C 3  RESR
この場合、位相補正コンデンサ(C7)と位相補正抵抗(R3)とでセットされる3番目の
ポールが、ループゲイン上の ESR ゼロの効果を補正するために使われます。
このポールは下記の周波数で存在します。
fp3 
1
2  C 7  R3
位相補正の設計の目標は、望んだループゲインを得るためのコンバータ伝達関数を
形作ることであります。帰還ループが単一ゲインを持つところのシステムクロスオーバ周波数が、
重要です。より低いクロスオーバ周波数は、より遅いラインとロードトランジェントを生じます。一
方、より高いクロスオーバ周波数、システムの不安定性を生じることがあります。良い標準は、ス
イッチング周波数の 1/10 以下のクロスオーバ周波数にセットすることです。最適な位相補正素
子の選定を、下記に示します。
<表6>
項目
エラーアンプ電圧ゲイン
エラーアンプトランスコンダクタンス
カレントセンスアンプインピーダンス
記号
値
単位
AEA
GEA
1/GCS
300
V/V
uA/V
V/A
800
0.16
1.位相補正抵抗(R3)を希望するクロスオーバ周波数にセットするために選択します。
R3 の計算は下記の式で行います。
R3 
2  C 3  fc Vout 2  C 3  0.1  fs Vout



GEA  GCS VFB
GEA  GCS
VFB
ここで、fc は希望するクロスオーバ周波数です。
それは、通常スイッチング周波数 (fs)の 1/10 以下にします。
2.希望する位相余裕を達成するために位相補正コンデンサ(C4)を選択します。
代表的なインダクタンス値をもつアプリケーションに対して、クロスオーバ周波数の
1/4 以下の補正ゼロをセットすることは、充分な位相余裕を供給します。
C4 は次の式で計算できます。
18
SI-8000Y
C3 
4
2  R3  fc
R3 は、位相補正抵抗です。
3.セカンド補正コンデンサ C7が必要かどうかの決定は、必要です。
もし出力コンデンサの ESR ゼロがスイッチング周波数の半分より小さいところに存在
した場合は、必要となります。つまり、下記の式がなりたった場合です。
1
fs

2  C 3  RESR 2
{C3:出力コンデンサ容量}
もしこの場合は、セカンド補正コンデンサ C7 を追加し、ESR ゼロの周波数 fp3 をセットしま
す。C7 は次の式から求めます。
C7 
C 3  RESR
R3
● C4,C7,R3 の計算例
・R3 の算出
<表6>より
GEA:800×10-6
fc:13×103
GCS:6.25
(1/GCS=0.16 の逆数)
(発振周波数の 1/10)
C3:出力コンデンサの容量
Vout:設定 Vo
VFB:1v
Vo=5v の場合で Co=560uF とすると
R3={(2×3.14×560×10-6×13×103)/(800×10-6 ×6.25)}×(5/1)
=45.718kΩ・・・近似値としてはこれより低い値で 43kΩとします。
・C4 の算出
C4=4/(2×3.14×43×103×13×103)=1139×10-12・・・・1139pF
近似値としてはこれより大きな値とします 1200pF など
・C7 の算出
RESR:C3(Cout)の ESR です
C3=560uF として計算すると
19
SI-8000Y
RESR=50mΩ(0.05Ω)と過程すると
C7=(560×10-6×0.05)/43×103=651×10-12・・・・651pF
似値としてはこれより大きな値とします 680pF など
出力コンデンサにアルミ電解コンデンサを使用した場合の各出力設定電圧に対する定数を
以下の表に示します。
参考 Comp 端子位相補正定数(C4,C7,R3)
Co=470uF 時
Vo(V)
3.3
5
9
12
R3(kΩ )
C4(pF)
C7(pF)
27
2000
1000
39
1200
620
68
680
340
91
580
255
3.3
5
9
12
R3(kΩ )
C4(pF)
C7(pF)
54
1000
1000
82
620
620
150
330
360
200
270
270
Co=1000uF 時
Vo(V)
20
SI-8000Y
●5-2
パターン設計上の注意
5-2-①
大電流ライン
接続図中の太線部分には大電流が流れますので、出来る限り太く短いパターンとして
下さい。
Vin
C1
C2
IN
7
EN/SS
C6
C7
C5
1
3
BS
Vo
L1
2
SW
SI-8050Y
COMP
GND
5
4
FB
6
C3
D1
C4
R3
GND
5-2-②
GND
入出力コンデンサ
入力コンデンサC1,C2と、出力コンデンサC3は、出来る限りICに近づけて下さい。入
力側に AC 整流回路の平滑コンデンサがある場合には、入力コンデンサと兼用にする事が可能で
すが、距離が離れている場合には、平滑用とは別に入力コンデンサを接続する事が必要です。ま
た入出力コンデンサのリード線には、大電流が高速で充放電されるので、リード線の長さは最短
として下さい。コンデンサ部分のパターン引き回しにも同様の配慮が必要です。
C1,C2
悪いパターン例
C1,C2
良いパターン例
21
SI-8000Y
●5-3.出力電圧設定について
5-3-①
SI-8010Y の出力電圧設定について
FB端子は出力電圧を制御する為のフィードバック検出端子です。出来る限り出力コ
ンデンサC3に近い所に接続して下さい。遠い場合、レギュレーションの低下、スイッ
チングリップルの増大により異常発振の原因となる事がありますのでご注意下さい。
SI-8010Y は可変タイプであり R1 及び R2 を接続する事で出力電圧の設定が必要です。
Isense が約 0.5mAになるように設定ください。
(Isense は下限 0.4mA で考え、上限は特に制限はありま
せんが、消費電流が増える方向なので効率低下に
なりますので注意ください。
R1、R2、出力電圧は次式で求められます。
Isense=VFB/R2
R1=(Vo-VFB)/Isense
*VFB=1.0v±2%
R2=VFB/Isense
Vout=R1×(VFB/R2)+VFB
Isense
・出力電圧はオン Duty が 200ns 以上になる様に Vout 設定
する事を推奨します。
● FB 端子及び R1,R2 の配線はフライホイール Di と並走する配線にレイアウトしない
でください。スイッチングノイズが検出電圧に干渉し異常発振する場合があります。
特に FB 端子から R1 及び R2 の配線は短く設計する事を推奨します。
● 実装基板パタン例
推奨パターン
裏面GND面
*C2,D1 を製品の近傍にレイアウトすることがパタン設計上、極めて重要です。
BacksideGNDplane
Recommended
*最適な動作条件とするためには、GND
ラインは4番端子を中心にした 1 点 GND 配線
pattern
とし、各部品を最短で配置することが必要です。
22
SI-8000Y
● 5-3②
SI-8050Y の出力電圧可変について
出力電圧固定品の SI-8050Y も 6 番・FB 端子に抵抗を追加することにより出力電圧を上昇させる
事が出来ます。 (降下は不可)
出力電圧調整抵抗 Rex1、2 は、次式により求まります。
SW
8050Y
FB 6
G4
4
Ivos
IVFB
Vout'VFB
S  IVFB
VFB
Re x2 
(S  1)  IVFB
Re x1 
FB
---(3)
---(4)
S :安定係数
安定係数 S は、FB 端子流入電流 Ivos に対する IRex2 の比を示しており S を大きくす
る程、温度特性と出力電圧バラツキは改善されます。(通常 5~10 位)
SI-8050Y の Ivos は 1mA±20%で考えて下さい。
以下に Rex1、Rex2、Ivos、VFB のバラツキを考慮した、出力電圧バラツキ範囲を示します。
ⅰ最大出力電圧(Vout’MAX)
Vout' MAX =VFBMAX +Rex1MAX(
VFB MAX
+IvosMAX )
Rex2MIN
VFBMAX :設定出力電圧の最大値。仕様書の電気的特性に示す、設定出力電圧の MAX
値を入れてください。
Rex1MAX:Rex1 の最大値。抵抗の許容差より求めてください。
Rex2MIN:Rex2 の最小値。抵抗の許容差より求めてください。
IvosMAX :FB 端子の最大流入電流。1.2mA
ⅱ最小出力電圧(Vout’MIN)
Vout' MIN=VFBMIN +Rex1MIN(
VFBMIN
VFBMIN
+IvosMIN )
Rex2MAX
:設定出力電圧の最小値。仕様書の電気的特性に示す、設定出力電圧の MIN
値を入れてください。
Rex1MIN:Rex1 の最小値。抵抗の許容差より求めてください。
Rex2MAX :Rex2 の最大値。抵抗の許容差より求めてください。
IvosMIN :FB 端子の最小流入電流。0.8mA
Vo=12v 設定時は上記計算では Rex2=1250Ω、Rex1=1400Ωで 12v 設定になります。
23
SI-8000Y
●5-4
動作波形の確認
スイッチング動作が正常であるかどうかは SI-8000Y の2-4端子間波形(SW-GND 間波
形)にて確認できます。以下に正常動作時及び異常発振時における波形例を示します。
C3
連続領域は、チョークコイルを流れる電流に、三角波に直流成分が重畳している領域
であり、不連続領域はチョークコイル電流が尐ない為、チョークコイルを流れる電流が
断続的になる(ゼロになる期間が発生する)領域です。従って負荷電流が多い場合は連
続領域に、尐ない場合は不連続領域になります。連続領域ではスイッチング波形は通常
の方形波の形状となり(波形1)、不連続領域ではスイッチング波形に減衰振動が発生
しますが(波形2)、これは正常な動作であり問題はありません。
ところがICと C1,C2 及び C3 が離れていると、上の波形(3,4)にみられるよう
に、スイッチングの ON・OFF 時間が乱れるジッタが発生します。前述の通り、C1,C2,C3
はICの近くに接続する事が必要です。
24
SI-8000Y
●5-5
熱設計
5-5-①
放熱の計算
レギュレータの損失Pdと、接合部温度Tj、ケース温度Tc、放熱器温度Tfin、
周囲温度Taは、以下の関係にあります。
Pd(損失)
Tj ジャンクション 温度
チップ
θ jc(接合-ケース 間熱抵抗)
6℃ /W
ケース
Pd 
Tj  Tc
---(6)
jc
Pd 
Tj  Tfin
---(7)
jc  i
Pd 
Tj  Ta
---(8)
jc  i  fin
Tc ケース 温度(製品裏面温度)
放熱器
θ fin(放熱器熱抵抗)
Ta 周囲温度
TjMAXは製品固有の値であり、厳守する必要があります。この為には、PdMA
X,TaMAXに応じた放熱器設計(θfinの決定)が必要になります。これらを分
かりやすくグラフ化した物が熱減定格であります。放熱器設計は以下の手順で行います。
1)セット内最大周囲温度TaMAXを求める。
2)入出力条件を変化させ最大損失PdMAXを求める
 100 
 VOUT 
Pd  VOUT  Io
 1  Vf  Io1 

VIN 

 x

※
---(9)
ηx=効率(%),Vf=ダイオード順方向電圧
3)熱減定格上の交点より放熱器の大きさを決定する。
又、計算にて必要な放熱器の熱抵抗を求める事も出来ます。必要な放熱器の熱抵抗は、
fin 
Tj  Ta
 jc
Pd
---(10)
で求められます。例として、以下に SI-8010Y を VIN=20V,Vo=5v,Io=6A,Ta=60℃で使用す
る場合の熱計算例を示します。代表特性例より効率η=87.5%、Vf=0.55V として、
Tjmax=125 度で算出すると
5 
 100 

Pd  5  6  
 1  0.55  6  1   ≒1.81W
 87.5 
 20 
125  60
fin 
 6 ≒ 30゚C / W
1.81
よって熱抵抗が 30 ゚ C/W 以下の放熱器が必要になります。
以上により放熱器が決定された事になりますが、一般的には 10~20%以上のディレーテ
ィングで使用します。又、実際には、実装上の違いにより放熱効果が大きく変化します。
従って、実装状態での放熱器温度あるいはケース温度の確認が必要となります。
25
SI-8000Y
SI-8000Y 減定格曲線
シリコーングリースはG746を使用(信越化学)
Silicone Grease G746(Shin-Etsu
無限大放熱板
Infinity heat sink
22
Kagaku)
放熱板:アルミニウム
Heat sink:Al
20
許容損失 Pd (W)
Power Dissipation
18
16
200㎜×200㎜×2㎜(2.3℃/W)
14
12
100㎜×200㎜×2㎜(5.2℃/W)
10
8
75㎜×75㎜×2㎜(7.6℃/W)
6
4
No-FIN
2
0
-30
-20
-10
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
周囲温度 Ta ℃
26
100
SI-8000Y
SI-8010Y
Io-消費電力 Pd
(効率データより製品消費電力を算出した値です)
製品 Pd W
SI-8010Y Vo=3.3v
Io-製品Pd
4.5
4
3.5
3
2.5
2
1.5
1
0.5
0
Vin=8v
Vin=10v
Vin=15v
Vin=24v
Vin=30v
Vin=35v
Vin=43v
0
2
4
6
8
Iout A
SI-8010Y Vo=5v
Io-製品Pd
製品 Pd W
6
5
Vin=8v
4
Vin=10v
Vin=15v
3
Vin=20v
2
Vin=24v
1
Vin=30v
0
Vin=35v
0
2
4
6
8
Vin=43v
Iout A
製品Pd W
SI-8010Y Vo=12v
Io-製品 Pd
8
7
6
5
4
3
2
1
0
Vin=15v
Vin=20v
Vin=30v
Vin=35v
Vin=43v
0
2
4
6
8
Iout A
27
SI-8000Y
5-5-②
放熱器への取り付け
シリコングリスの選択
SI-8000Y を放熱器に取り付ける際には、ICと放熱器の間に必ずシリコングリスを薄
く均一に塗布して下さい。塗布を省略すると、IC裏面と放熱器表面のミクロ的な凹凸
による接触不完全により、熱抵抗が大きく増加してICの発熱が高くなり、寿命を悪化
させる要因となります。
又、使用するシリコングリスの種類によっては、オイル分が分離しIC内部に浸透し
て、パッケージの変形や内蔵素子へ悪影響を及ぼす事があります。変性シリコンオイル
を基油したシリコングリス以外は使用しないで下さい。以下に弊社が推奨致しますシリ
コングリスを示します。
弊社推奨シリコングリス
G746
信越化学工業(株)
SC102
トーレシリコーン(株)
YG6260
モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社
取り付けネジの締め付けトルク
ICのパッケージを損傷することなくICと放熱器間の熱抵抗を低く押さえるには、
適切なネジ締め付けトルクの管理が必要です。シリコングリスを塗布しても締め付けト
ルクが不足しますと、熱抵抗が上昇してしまいます。
SI-8000Y については 58.8~68.6N・cm(6.0~7.0kg・cm)を推奨します。
熱抵抗変化率(%)
110
105
100
95
90
0
20
40
60
締め付けトルク(N・cm)
80
※1
58.8N・cm(6kg・cm)を 100%とした時の熱抵抗変化率を示す。
※2
シリコングリスは G746 を使用
100
28
SI-8000Y
6.応用
●6-1
ソフトスタート
7番端子(EN/SS)にコンデンサを接続する事で入力電圧投入時又は EN/SS 開放時に
ソフトスタートがかかります。ソフトスタートを掛けないと起動時に過大なラッシュ電
流がながれますので必ずソフトスタートを設定する事を推奨します。
ソフトスタート時 Vout は Css の充電電圧に相関し立ち上がります。よって Css 充電の
時定数計算で起動時間が概略求まります。
コンデンサCss はPWM制御の OFF 期間をコントロールして立ち上がり時間を制御する
為のもので、立ち上がり時間tssは以下の式で概略求まります。
又は、EN/SS 開放
4.4v
T2
3v
1.5v
EN /SS端子
T1
V out
EN/SS 端子は IC 内部電源にプルアップ(4.4vTYP)されていますので、外部からの電圧印加は出来
ません。
SI-8000Y は SS 端子が約 1.5v になると Vout が上昇し始め、SS 端子が約 3v で Vout が立ち上がり
きります。
Css を大きくしますと VinOFF 後のCss ディスチャージも時間がかかるようになります。Css の
放電は Q1 オン時、もしくは Vin が 0v に低下した時に行われます。
Css は 10uF 以下の値で使用される事をお奨めします。
IssL:Css の充電電流(実力 10uA 程度)
VssA:Css が上昇し Vout が安定する Css の電圧(3.0v 程度)
VssB:Css が上昇し Vout が上昇し始める Css の電圧(1.5v 程
度)
Css:SS 端子に接続するコンデンサ容量
T1=(Css×VssB)/IssL (sec)・・・・・SS 端子開放から Vout が上昇し始める時間
T2=(Css×VssA)/IssL
Css による起動時間
(sec)・・・・・SS 端子開放から Vout の起動時間
実測値の参考データ次ページに示します。
29
SI-8000Y
SI-8000Y Css vs起動時間
Vo=5v設定 Co:1000uF
10000
起動時間 ms
1000
t2
100
t1
10
1
0.001
0.01
0.1
Css uF
1
10
オンオフ制御用トラレンジスタ Q1 を接続されない場合、Css の放電は Vin が低下した時
に IN 端子より放電されます。よって Vin が低下し Vo の降下後、Vin が完全に低下しき
る前に再起動(Vin 上昇)する様な場合、Css の放電が行われずソフトスタートが掛か
らない場合があります。
この様な状況が有る場合、下図の様な放電回路を接続する事で解消可能です。
●6-2
出力の ON・OFF 制御
7番・EN/SS 端子を用いて、出力 ON・OFF 制御が可能です。オープンコレクタ等のス
イッチにより、5番端子を VssL(0.5v)以下にすると出力は停止します。EN/SS 端子はI
C内部でプルアップ(4.4vTYP)済みですので外部からは電圧を印加しないで下さい。
30
SI-8000Y
●6-3
スパイクノイズの低減
スパイクノイズを低減させるには、SI-8000Y の出力波形及び、ダイオードのリカバリ
ータイムを、コンデンサで補正する方法がありますが、共に効率が弱冠低下しますので
注意して下さい。
3.
4.
※オシロスコープにてスパイクノイズを観測される際には、プローブの GND リード線
が長い為、リード線がアンテナの作用をしてスパイクノイズが異常に大きく観測されて
しまいます。スパイクノイズの観測に当たってはプローブのリード線を外し針金などを
からめ出力コンデンサの根元に半田付けして測定する事が必要です。
●6-4
逆バイアス保護
バッテリーチャージ等、入力端子より出力の電圧が高くなるような場合には、入出力
間に逆バイアス保護用のダイオードが必要となります。
SI-8000Y
SI-8000S,SS
31
SI-8000Y
7.代表特性例
(1)効率
Eff η (%)
SI-8010Y 効率 Eff Vo=3.3V Ta=RT
100
95
90
85
Vin=8v,12v,20v,30v,40v
80
75
70
65
60
0
1
2
3
4
Iout(A)
5
6
7
8
6
7
8
Eff η (%)
SI-8010Y ES3 S5 Eff Vo=5V Ta=RT
100
95
90
85
Vin=8v,12v,20v,30v,40v
80
75
70
65
60
0
1
2
3
4
Iout(A)
5
SI-8010Y ES3 S5 Eff Vo=12V Ta=RT
SI-8001FFE
100
Eff η (%)
95
90
Vin=15v,20v,30v,40v
85
80
75
70
0
1
2
3
4
Iout(A)
5
6
7
8
32
SI-8000Y
(特記無き場合 Ta=25℃,R2=2kΩ)Vo=5v 設定時
33
SI-8000Y
8.用語解説
・ジッタ
異常スイッチング動作の一種で、入出力条件が一定にも関わらずスイッチングパルス
幅が変動する現象であります。ジッタが発生すると、出力のリップル電圧ピーク幅が
増加します。
・推奨動作条件
正常な回路機能を維持するために必要とされる動作条件を示すもので、実使用におい
ては当条件内とする必要があります。
・絶対最大定格
破壊限界を示す定格であり、瞬時動作及び定常動作において、一項目かつ一瞬たりと
も規格値を超えないように配慮する必要があります。
・電気的特性
各項目に示している条件で動作させた場合の特性値規格であります。動作条件が異な
る場合には、規格値から外れる可能性があります。
・PWM (Pulse width modulation)
パルス変調方式の一種で、変調信号波(チョッパ型スイッチングレギュレータの場合、
出力電圧)の変化に応じて、パルスの幅を変えて変調する方式であります。
・ESR (Equivalent series resistance)
コンデンサの等価直列抵抗値を示します。コンデンサに直列に接続された抵抗と同等
の作用を示します。
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SI-8000Y
!注意
●本書に記載されている内容は、改良などにより予告なく変更する事があります。ご使用の
際には、最新の情報である事をご確認下さい。
●本書に記載されている動作例及び回路例は、使用上の参考として示したもので、これらに
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て当社はいっさい責任を負いません。
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いて使用者の責任において検討・判断を行って下さい。
●当社は品質、信頼性の向上に努めていますが、半導体製品では、ある確率での欠陥、故障
の発生は避けられません。部品の故障により結果として、人身事故、火災事故、社会的な
損害等を発生させないよう、使用者の責任において、装置やシステム上で十分な安全設計
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●本書に記載されている製品は、一般電子機器(家電製品、事務機器、通信端末機器、計測
機器等)に使用される事を意図しております。ご使用の場合は、納入仕様書の締結をお願
いします。高い信頼性が要求される装置(輸送機器とその制御装置、交通信号制御装置、
火災・防犯装置、各種安全装置など)への使用をご検討の際には、必ず当社販売窓口へご
相談及び納入仕様書の締結をお願いします。極めて高い信頼性が要求される装置(航空宇
宙機器、原子力制御、生命維持の為の医療機器など)には、当社の文書による合意がない
限り使用しないで下さい。
●本書に記載された製品は耐放射線設計をしておりません。
●本書に記載された内容を文書による当社の承諾無しに転記複製を禁じます。
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