si-8001fdl an jp

SI-8000FDL
アプリケーション ノート
チョッパ型スイッチングレギュレータIC
SI-8000FDL シリーズ
第 2 版 2013 年 11 月
サンケン電気株式会社
SI-8000FDL
---
目次
---
1.概要
1-1 特長
----------
3
1-2 主な用途
----------
3
1-3 種別
----------
3
2-1 外形図
----------
4
2-2 定格
----------
5
2-3 回路図
----------
6
3-1 PWM 出力電圧制御
----------
7
3-2 過電流・過熱保護
----------
8
4-1 外付部品選定上の注意
----------
9~13
4-2 パターン設計上の注意
----------
14~15
4-3 動作波形の確認
----------
16
4-4
----------
17~20
4-5 熱設計
----------
21
5-1 出力 ON・OFF 制御
----------
21
5-3 スパイクノイズの低減
----------
22
5-4 逆バイアス保護
----------
22
6.代表特性例
----------
23~25
7.用語解説
----------
26
2.製品仕様
3.SI-8000FDL シリーズの動作説明
4.使用に際しての注意事項
電源の安定性
5.応用
2
SI-8000FDL
1.概要
SI-8001FDL は、降圧スイッチングレギュレータに必要な各種の機能と保護機能を備えた
チョッパー型スイッチングレギュレータICです。6 点の外付け部品で高効率のスイッチング
レギュレータを構成することが出来ます。
●1-1
特長
・小型大出力電流3.5A
TO263-5 クラスの外形で、出力電流が最大 3.5Aです。
・高効率83%(VIN=15V/IO=2A)
高効率の為発熱が小さく、放熱器も小型にする事が出来ます。
・外付部品6点
入出力コンデンサ、ダイオード、コイル、Vout 設定用の抵抗のみでレギュレー
タを構成出来ます。
・出力電圧、位相補正内部調整済
面倒な外付部品による出力電圧、位相補正の調整は不要です。
・タイミングコンデンサ内蔵型基準発振
発振周波数設定用の外付コンデンサは不要です。
・過電流、過熱保護内蔵
垂下型過電流保護及び過熱保護回路を内蔵しています。(自動復帰型)
・オンオフ機能(出力 ON/OFF 可能)
外部より電圧入力を行い出力の ON/OFF 制御が可能です。
Low 時オンの ActiveLow(Open 時はオン)
・絶縁板不要
フルモールド型ですので放熱器への取り付けに際し絶縁板が不要です。
●1-2
主な用途
・オンボードローカル電源
・OA機器用電源
・レギュレータ2次側出力電圧安定化
・テレコム用電源
●1-3
種別
・種別:半導体集積回路(モノリシックIC)
・構造:樹脂封止型(トランスファーモールド)
3
5-0.80±0.10
φ 1.50 Dp : ±0.20
4-[1.70±0.25]
9.20±0.20
4.90±0.20
(15°)
15.30±0.30
(0.50)
(R0.30)
3-(R0.30)
4.50±0.20
PIN assignments
1. IN
2. SW
3. GND
4. ADJ
5. SS
端子配列
(3°)
(3°)
2.00±0.10
0~6°
2.54
±0.30
(R0.30)
2.40±0.20
(3°)
+0.15
-0.10
+0.10
-0.05
0.10
1.30
15.30±0.30
(4.60)
(0.40)
4-[1.70±0.25]
(6.80)
注記
1) 寸法はモールドバリを含まない。
2) ( )内は参考寸法を示す。
3) [ ]内はリードフォーミング後寸法
4) 裏面段差:0.8mmMAX
5) 単位:mm
5-0.80±0.10
2x(R0.45)
(4.40)
(8.00)
●2-1
(0.75)
9.90±0.20
(1.75)
10.00±0.20
SI-8000FDL
2.製品仕様
単位:㎜
SI-8001FDL(面実装:TO263-5)外形図
製品質量:約 1.48g
Products Weight:Approx.1.48g
4
4.90±0.20
9.20±0.20
SI-8000FDL
●2-2
定格
絶対最大定格
項目
記号
定格値
単位
入力電圧
VIN
43
V
許容損失
Pd
3
接合部温度
Tjmax
150
保存温度
Tstg
-40~+150
*1
W
*2
*1
℃
℃
*1
過熱保護を搭載しており Tj>130℃で動作する場合があります。
*2
ガラエポ片面基板 40×40 ㎜(銅箔エリア 100%時)
推奨動作条件
項目
記号
SI-8001FDL
単位
直流入力電圧
VIN
Vo+3v~40*3
V
出力電流
IO
動作時接合温度
Tjop
0~3.5
-30~+125
*3
VIN=4.5v もしくは Vout+3v のどちらか高い値とする
*4
但し、Tjmax を超えない範囲で使用する必要があります。
電気的特性
電気的特性
A
*4
℃
(Ta=25℃、Vo=5V 設定時
R1=4.2kΩ,R2=0.8kΩ)
5
SI-8000FDL
●2-3
回路図
2-3-①
内部等価回路図
2-3-②
標準接続図
C1:470μF
C2:680μF
L1:47μH
Di:SPB-G56S(サンケン製)
6
SI-8000FDL
3.SI-8001FDL の動作説明
●3-1
PWM出力電圧制御
SI-8000FDL シリーズは、PWM方式にて出力電圧を制御しており、PWMコンパレー
タ、発振器、誤差増幅器、基準電圧、出力トランジスタドライブ回路、等を内蔵してお
ります。
PWMコンパレータの入力には発振器からの三角波出力(≒300KHz)と誤差
増幅器の出力が与えられます。PWMコンパレータは発振器出力と誤差増幅器出力を比
較し、発振器出力に対し誤差増幅器出力が上回った時間にスイッチングトランジスタが
オンになるよう制御しています。
PWM制御チョッパ型レギュレータ基本構成
VOUT
スイッチングトランジスタ
VIN
PWMコンパレータ
D1
誤差増幅器出力と発振器出力を
C2
PWMコンパレータで比較し、
ドライブ回路
方形波のドライブ信号をさせて
誤差増幅器
スイッチングトランジスタを
発振器
ドライブする。
基準電圧
仮に出力電圧が上昇しようとした場合、誤差増幅器は反転型のため誤差増幅器の出力
は低下します。誤差増幅器出力が低下しますと発振器の三角波レベルを下回る時間が増
加しスイッチングトランジスタのON時間を短縮させる事により出力電圧を一定に保
ちます。このようにスイッチングの周波数は固定したままで、スイッチングトランジス
タのオン時間を変化させる事により出力電圧を制御しています。
(Vin が高い程スイッチングトランジスタのON時間は短くなります。)
PWMコンパレータ動作図
発振器出力
誤差増幅器出力
ON
OFF
スイッチングトランジスタ出力
スイッチングトランジスタの方形波出力は、チョークコイルとコンデンサによるLCロ
ーパスフィルターにより平滑され、安定化された直流電圧として負荷へ供給される事に
なります。
7
SI-8000FDL
●3-2
過電流・過熱保護
過電流時出力電圧特性
Vo の低下と共に発振周波数が低下
します。
SI-8000FDL シリーズは、垂下型過電流保護回路を内蔵しています。過電流保護回路は
スイッチングトランジスタのピーク電流を検出し、ピーク電流が設定値を超えると強制
的にトランジスタのON時間を短縮させて出力電圧を低下させ電流を制限しています。
更に出力電圧が低下しますとスイッチング周波数を約 25KHz までリニアに落とす事で低
出力電圧時の電流増加を防止しています。過電流状態を解除すると出力電圧は自動的に
復帰します。
過熱保護時出力電圧特性
出力電圧
復帰設定温度
保護設定温度
接合温度
過熱保護回路は、ICの半導体接合温度を検出し、接合温度が設定値(約 150℃)を超
えると出力トランジスタを停止させ、出力をOFFとします。接合温度が過熱保護設定
値より 15℃程度低下しますと自動的に復帰します。
※(過熱保護特性)注意事項
瞬時短絡等の発熱に対しICを保護する回路であり、長時間短絡等、発熱が継続する
状態での信頼性を含めた動作を保証するものではありません。
8
SI-8000FDL
4.使用に際しての注意事項
●4-1
外付部品選定上の注意
4-1-①
チョークコイルL1
チョークコイルL1は、チョッパ型スイッチングレギュレータの中心的役割を果たし
ています。レギュレータの安定動作維持のため、飽和状態での動作や、自己発熱による
高温動作等の危険な状態は回避しなくてはなりません。チョークコイル選定のポイント
としては以下の事項が挙げられます
a)スイッチングレギュレータ用である事
ノイズフィルタ用のコイルは、損失が大きく発熱が大となりますのでご使用を避けて
下さい。
b)インダクタンス値が適正である事
チョークコイルのインダクタンスは、大きい程コイルを流れるリップル電流が減尐し
出力リップル電圧が小さくなりますが、コイルの外形は大形になります。逆に小さなイ
ンダクタンスとすると、スイッチングトランジスタやダイオードを流れるピーク電流が
増大して損失が増加し、リップル電圧も大きくなり安定動作確保の上で好ましくありま
せん。出力電圧のリップル電圧が大きくなりすぎますと安定動作しなくなり波形飛びや、
ジッターが発生する場合があります。
出力電圧のリップル電圧は設定出力電圧に対し目安として 1%以下になる事を推奨して
います。
出力電圧のリップル電圧はΔIL と出力コンデンサの ESR(等価直列抵抗)の積で決まり
ますので出力コンデンサの ESR が大きすぎても問題が発生しますので、出力コンデンサ
の選定とあわせて考慮する必要があります。
Vout リップル=ΔIL×出力コンデンサの ESR
インダクタンス大
リップル電圧・電流小
C2
インダクタンス小
リップル電圧・電流大
C2
インダクタンスが大きい程、リップル電流・電圧は小さく
インダクタンスが小さい程、リップル電流・電圧は大きく
なる。但し、コイルの外形は大きくなる。
なる。但し、コイルの外形は小さくなるが、不安定
動作になりやすい。
仕様書に示すインダクタンス値は、安定動作に適した目安の値でありますが、(1)
式によって適当なインダクタンス値を求めることもできます。但し Vout リップルの値も
あわせて満足する値にする必要がありますので注意ください。
9
SI-8000FDL
ここで、ΔIL はチョークコイルのリップル電流値を示し、大略下記の目安に従ってイン
ダクタンス下限を設定します。
・使用出力電流が SI-8000FDL の最大定格(3.5A)に近い場合:出力電流×0.1 倍程度
・使用出力電流が大略 2A 以下の場合:出力電流×0.3~0.4 倍
L1 
例えば
(VIN  VOUT )  VOUT
IL  VIN  f
VIN=25V.
L1 
VOUT=5V.
ΔIL=0.5A.
---(1)
周波数=300KHz
とすると、
(25  5)  5
≒ 26.7uH
0.5  25  300  103
となりますので、インダクタンスが約 27uH のコイルを選択すればよい事になります。
但し、算出されたインダクタンス値によってはスイッチングトランジスタのピーク電流
が増大します。その結果、過電流検出にピーク電流検出方式を採用している為、過電流
検出ポイントが低下する場合がありますので、ご注意ください。
c)定格電流を満足する事
チョークコイルの定格電流は、使用する最大負荷電流より大きくなくてはなりません。
負荷電流がコイルの定格電流を越えると、インダクタンスが激減し、ついには飽和状態
となります。この状態では、高周波インピーダンスが低下し、過大な電流が流れますの
でご注意下さい。
d)ノイズが尐ない事
ドラム型のような開磁路型コアは、磁束がコイルの外側を通過するため周辺回路へ
ノイズによる障害を与える事があります。なるべくトロイダル型や EI 型、EE 型のよう
な閉磁路型コアのコイルをご使用下さい。
10
SI-8000FDL
4-1-②
入力コンデンサC1
入力コンデンサは、入力回路のバイパスコンデンサとして動作し、スイッチング時の
急峻な電流をレギュレータに供給しており、入力側の電圧降下を補償しています。
従って極力レギュレータICの近くに取り付ける必要があります。また、AC 整流回路の
平滑コンデンサが入力回路にある場合でも、SI-8000FDL の近くにレイアウトされていな
ければ入力コンデンサは平滑コンデンサと兼用とする事が出来ません。
C1選定のポイントとして次の事が挙げられます。
a)耐圧を満足する事
b)許容リップル電流値を満足する事
C1 の電流の流れ
IIN
C1電流波形
VIN
1.VIN
リップル電流
0
Iv
Ip
C1
Ton
D
T
Ton
T
入力コンデンサのリップル電流は負荷電流の
増加に伴って増大する。
これら耐圧や許容リップル電流値を、オーバーしたりディレーティング無しで使用し
た場合、コンデンサ自身の寿命が低下(パンク、容量の減尐、等価インピーダンス増大、
等)するばかりでなく、レギュレータの異常発振を誘発する危険があります。従って、
十分なマージンをとった選択が必要です。尚、入力コンデンサに流れるリップル電流
実効値 Irms は下記の(2)式で求められます。
Irms  1.2 
例えば
Vo
 Io
Vin
--(2)
VIN=20V,Io=3A,Vo=5V とすると、
I r m 1s.2 
5
 3  0.9 A
20
となりますので、許容リップル電流が、0.9A より大きいコンデンサを選ぶ必要が
あります。
11
SI-8000FDL
4-1-③
出力コンデンサC2
出力コンデンサC2は、チョークコイルL1と共にLCローパスフィルターを構成し、
スイッチング出力の平滑コンデンサとして機能しています。出力コンデンサには
チョークコイル電流の脈流部ΔIL と等しい電流が充放電されています。
従って入力コンデンサと同様に、耐圧及び許容リップル電流値を十分なマージンを
取った上で満足する必要があります。
C2の電流の流れ
IL
Vout
L1
C2電流波形
Io
リップル電流
ESR
RL
0
⊿IL
出力コンデンサのリップル電流はチョークコイルのリップル
C2
電流と等しく、負荷電流が増減しても変化
しない。
出力コンデンサのリップル電流実効値は、下記の(3)式で求められます。
Irms 
IL
2 3
---(3)
例えばΔIL を 0.5A としますと、
Irms 
0.5
≒ 014
. A
2 3
となり、許容リップル電流が 0.14A 以上のコンデンサが必要になります。
又、レギュレータの出力リップル電圧 Vrip は、チョークコイル電流の脈流部ΔIL(=
C2充放電電流)と出力コンデンサC2の等価直列抵抗 ESR の積によって定まります。
Vrip  IL  C2ESR
---(4)
従って出力リップル電圧を小さくするには、等価直列抵抗 ESR の低いコンデンサを
選ぶ必要があります。一般的に電解コンデンサにおいては同一シリーズの製品ならば、
同一耐圧で容量が大きい程、又は同一容量で耐圧が高い程(≒外形が大きくなる程)
ESR は低くなります。
ここでΔIL=0.5A
Vrip=40mV
としますと、
C2esr  40  0.5  80m
となり、ESR が 80mΩ以下のコンデンサを選べば良い事になります。また ESR は温度
によって変化し一般に低温になると増加しますので、使用温度における ESR を確認する
必要があります。尚 ESR 値はコンデンサ固有のものですのでコンデンサメーカに
ご問い合わせ下さい。
12
SI-8000FDL
しかし出力コンデンサの ESR が極端に小さくなりますと(約 10~30mΩ以下)、
レギュレータの帰還ループ内の位相余裕が不足し、動作が不安定になる恐れがあります。
この為、出力コンデンサにタンタルコンデンサや積層セラミックコンデンサを単体で用
いる事は適当ではありません。但し、低温(<0 ゚ C)で使用される場合には、
電解コンデンサと並列にタンタルコンデンサや積層セラミックコンデンサを接続する
と出力リップル電圧の低減に有効です。
4-1-④
フライホイールダイオード・D1
フライホイールダイオードD1は、スイッチングオフ時にチョークコイルに貯えられ
たエネルギーを放出させる為の物です。フライホイールダイオードには必ず
ショットキーバリアダイオードを使用して下さい。一般の整流用ダイオードや
ファーストリカバリダイオード等を使用した場合、リカバリ及びオン電圧による
逆電圧印可によりICを破壊する恐れがあります。
又 SI-8000FD シリーズの SW 端子(2 番端子)から出力された電圧は入力電圧とほぼ同等
である為、フライホイールダイオードの逆方向耐圧が入力電圧以上あるものを
ご使用下さい。フライホイール Di にはフェライトビーズは入れないでください。
13
SI-8000FDL
●4-2
パターン設計上の注意
4-2-①
大電流ライン
接続図中の太線部分には大電流が流れますので、出来る限り太く短いパターンとして下さい。
L1
1,IN
VIN
2.SW
VOUT
SI-8001FDL
R1
4.ADJ
C1
5.Vc
3.GND
C2
D1
R2
GND
4-2-②
GND
入出力コンデンサ
入力コンデンサC1と、出力コンデンサC2は、出来る限りICに近づけて下さい。入力側に
AC 整流回路の平滑コンデンサがある場合には、入力コンデンサと兼用にする事が可能ですが、
距離が離れている場合には、平滑用とは別に入力コンデンサを接続する事が必要です。
また入出力コンデンサのリード線には、大電流が高速で充放電されるので、リード線の長さは
最短として下さい。コンデンサ部分のパターン引き回しにも同様の配慮が必要です。
C1,C2
C1,C2
悪いパターン例
4-2-③
良いパターン例
ADJ 端子(出力電圧設定について)
ADJ 端子は出力電圧を制御する為のフィードバック検出端子です。出来る限り出力コ
ンデンサC2に近い所に接続して下さい。遠い場合、レギュレーションの低下、スイッ
チングリップルの増大により異常発振の原因となる事がありますのでご注意下さい。
R1 及び R2 を接続する事で出力電圧の設定が可能です。
IADJ が約1mAになるように設定ください。
(IADJ は下限 0.8mA で考え、上限は特に制限はありま
せんが、消費電流が増える方向なので効率低下に
なりますので注意ください。
R1、R2、出力電圧は次式で求められます。
IADJ=VADJ/R2
R1=(Vo-VADJ)/IADJ
*VADJ=0.8v±2%
R2=VADJ/IADJ
Vout=R1×(VADJ/R2)+VADJ
IADJ
安定動作する為にスイッチングノイズの影響を受けない様、電圧検出
ラインはコンパクトにまとめたレイアウト設計が重要です。
14
SI-8000FDL
・Vo=0.8V に設定する際も、安定動作の為 R2 は接続くだ
さい。
・出力電圧は入力電圧に対して8%以上になる様に設定す
る事を推奨します。
● 出力電圧設定抵抗 R1,R2 を既存の 1%及び 0.5%精度の抵抗定数にて出力電圧設定した
場合の定数、バラツキ範囲を以下の表に示します。
SI-8001FFE R1,R2Vo設定定数表
目標Vout(V)
1.2
1.8
2.5
3.3
5
9
12
24
1%精度抵抗定数での構成
0.5%精度抵抗定数での構成
R1(Ω ) R2(Ω ) 計算精度(%) R1(Ω ) R2(Ω ) 計算精度(%)
+2.61
+2.26
402
806
402
806
-2.73
-2.41
+2.72
+2.72
1000
806
1010
806
-3.48
-2.41
+4.15
+2.64
1690
787
1690
796
-2.64
-2.73
+2.67
+2.86
2490
806
2490
796
-4.31
-2.67
+3.50
+2.68
4220
806
4170
796
-3.85
-3.00
+3.75
+2.95
8250
806
8160
796
-3.89
-2.88
+3.77
+2.58
11000
787
11100
796
-3.96
-3.27
+3.25
+3.11
23200
806
23400
806
-4.57
-2.84
● ADJ 端子及び R1,R2 の配線はフライホイール Di と並走する配線はしないでください。
スイッチングノイズが検出電圧に干渉し異常発振する場合があります。
特に ADJ 端子から R2 の配線は短く設計する事を推奨します。
● 実装基板パタ-ン例
面実装タイプ(SI-8001FDL)
15
SI-8000FDL
●4-3
動作波形の確認
スイッチング動作が正常であるかどうかは SI-8000FDL の2-3端子間波形(SW-GND 間波形)に
て確認できます。以下に正常動作時及び異常発振時における波形例を示します。
連続領域は、チョークコイルを流れる電流に、三角波に直流成分が重畳している領
域であり、不連続領域はチョークコイル電流が尐ない為、チョークコイルを流れる電流
が断続的になる(ゼロになる期間が発生する)領域です。従って負荷電流が多い場合は
連続領域に、尐ない場合は不連続領域になります。連続領域ではスイッチング波形は通
常の方形波の形状となり(波形1)、不連続領域ではスイッチング波形に減衰振動が発
生しますが(波形2)、これは正常な動作であり問題はありません。
ところがICと C1,C2 が離れていると、上の波形(3,4)にみられるように、スイ
ッチングの ON・OFF 時間が乱れるジッタが発生します。前述の通り、C1,C2 はICの近く
に接続する事が必要です。
16
SI-8000FDL
●4-4
電源の安定性
4-4-①
位相余裕
PWM制御チョッパ型レギュレータの回路ブロック図を下図に示します。
これよりPWM制御チョッパ型レギュレータは、あらかじめ設定された基準電圧と、
出力電圧を常時比較して出力電圧を制御する負帰還増幅器である事が解ります。
従って出力電圧の変動を誤差増幅器で検出して出力を制御する為の負帰還ループを有
しています。
基
準
電
圧
L1
制御部
基
準
電
圧
ESR
-180deg
負帰還ループ
負荷
C2
0deg
負帰還ループ内の位相は、出力電圧の変動を打ち消す為 180deg ずれていますが、
さらに増幅度(ゲイン)が1以上の状態において位相が 180deg 遅れると、位相のずれ
は合計で 360deg に達し、安定動作領域を外れて異常発振を起こします。これをバルク
ハウゼンの発振条件といいます。従って実際の安定化電源ではこの発振条件が成立しな
いようにしなくてはなりません。
バルクハウゼンの発振条件が成り立つかどうかは、負帰還ループの周波数-ゲイン・
位相特性により判定する事が可能です。この周波数-ゲイン・位相特性をボード線図と
呼びます。
一段差動アンプ
IN
OUT
ボード線図例
20dB
0dB
9k
1k
-0deg
-45deg
-90deg
ゲイン
0.1fp
周波数
位相
fp
10fp
ここでボード線図上において
ゲインが1(0dB)になる周波数 :ゲイン交点
帰還ループの位相が-180deg になる周波数 :位相交点
と呼びます。ゲイン交点の周波数において位相が-180deg に達していなければ発振条件
は成立しない事になります。そこで、
17
SI-8000FDL
ゲイン交点における位相-(-180deg)=ゲイン交点における位相+180deg
を位相が-180deg までどれだけ余裕があるかを示す値として用い、これを位相余裕と
呼びます。位相余裕が大きい程、入出力条件や温度等の周囲環境が変化しても異常発振
を起こしにくくなります。従って安定動作を保つ為には十分な位相余裕を見込んでおく
必要があります。
ボード線図における安定判別
ゲイン特性
ゲイン特性
ゲイン交点
0dB
位相特性
ゲイン交点
0dB
周波数
周波数
位相特性
-180deg
位相余裕
(>0)
位相交点
安定な場合
4-4-②
-180deg
位相交点
不安定な場合
位相余裕
(<0)
レギュレータIC内部の位相特性
チョッパ型レギュレータの位相特性は、レギュレータIC内部の位相特性とLC
フィルタの位相特性の合成になります。レギュレータIC内部の位相特性は、一般的に
は制御部の遅れ時間と出力誤差増幅器の位相特性で定まります。この内、制御部の遅れ
時間による位相遅れは、実使用上はほとんど問題になる事はありません。従って出力
誤差増幅器の位相特性が重要になります。出力誤差増幅器の位相特性の補正については、
レギュレータICの種類により、これをIC内部で調整済みとしているものと、IC
外部に抵抗やコンデンサの外付け部品を接続して位相補正を行うものとがあります。
前者の場合は後述しますLCフィルタの選択のみに留意すれば特に問題は
ありませんが、後者の場合は製品毎のアプリケーションに従って正しく位相補正を施す
事が必要です。
4-4-③
LCフィルタの位相特性
チョッパ型レギュレータの位相余裕は、出力平滑用LCフィルタの位相特性に、
大きく左右されます。LCフィルタの位相特性は、理論上は二次遅れ要素の特性を
示します。
18
SI-8000FDL
これはコイルのインダクタンスL1とコンデンサの容量C2の組み合わせにより
特定の周波数で共振を起こし、共振点より高い周波数では、位相が最大 180deg 遅れ
る事になります。
共振周波数fLC は
fLC 
1
2 LC
---(5)
位相特性は
共振周波数fLC より低い周波数の位相特性は:0deg
共振周波数fLC より高い周波数の位相特性は:-180deg
となります。
従って出力平滑用LCフィルタが理論通りの位相特性を示すとなると、この
フィルタの部分だけで位相遅れは-180deg に達し、レギュレータとしての位相余裕は
0deg になってしまいます。
しかし現実のLCフィルタにおいてはコンデンサの等価直列抵抗(ESR)の影響により、
LCフィルタの位相遅れは 180deg より尐なくなります。よって、この等価直列抵抗の
位相補正効果により、レギュレータとしての位相余裕を確保する事が出来ます。
LCフィルタ位相特性
L1
0deg
ESR
VIN
位相遅れ
VOUT
C2
ESR 大
ESR 小
-180deg
ESR 0
fLC
周波数
一般的に、出力LCフィルタにタンタル・コンデンサや積層セラミック・コンデンサ
のような ESR の非常に小さいコンデンサを用いますと、フィルタ部分の位相遅れが大き
くなります。よって位相余裕確保の面からは、出力フィルタには電解コンデンサの使用
が適当です。
4-4-④
IC内部とLCフィルタの位相特性の関連
チョッパ型レギュレータの位相特性は前述のとおり、誤差増幅器と、LCフィルタ
の位相特性でほとんど決まってしまいます。そこで両者の特性の関連が重要になりま
す。
誤差増幅器のゲイン低下開始周波数すなわち第1ポール周波数 fp と、LCフィルタ
の共振周波数fLC が接近していると、両者の位相遅れが集中するためレギュレータの位
19
SI-8000FDL
相余裕が尐なくなってしまいます。そこで fp とfLC の適切な分布が重要になります。
通常、誤差増幅器の位相遅れは、第1ポール周波数 fp の 0.1 倍の周波数から始まりま
す。そこで位相遅れの集中を避ける為には、LCフィルタの共振周波数fLC を誤差増幅
器第1ポール周波数 fp の 0.1 倍未満としておかなくてはなりません。
位相
fpとfLCが近い場合の位相特性
位相
fpとfLCが離れている場合の位相特性
fp
fp
増幅部
増幅部
LCフィルタ
LCフィルタ
fLC
fLC
-180deg
-180deg
合成特性
位相遅れ大
位相遅れ小
合成特性
-180deg
周波数
-180deg
周波数
一般的にチョッパ型レギュレータICの fp 周波数は、数~十数 KHz 以上に設定されています。
そこで各レギュレータICのアプリケーションに記載されているLCフィルタの定数において、
コイルのインダクタンスやコンデンサの容量を、推奨値より小さくしますと、LCフィルタの共
振周波数fLC が上昇して位相余裕が減尐する危険があるので注意が必要です。周囲部品の定数は、
各レギュレータICのアプリケーションに従い正しくお選びください。
60
630
50
540
40
450
ゲイン
30
360
20
270
10
180
0
90
-10
-20
0
位相
-90
-30
-40
100
位相(゜)
ゲイン(dB)
チョッパーReg ゲイン、位相特性例
-180
1000
周波数 (Hz)
-270
10000
20
SI-8000FDL
●4-5
熱設計(面実装部品 SI-8001FDL)
4-5-①
放熱の計算
面実装タイプの SI-8001FDL の場合、実装基板に残された銅箔へ放熱する事になりますので、
銅箔面積や基板の素材、銅箔層数などに大きく左右されます。
SI-8001FDL の裏面ステム部分は 3 番ピン(GND)とインナーフレームでつながっており、裏面
ステム部分に直接つながっている GND パタンを大きく取る事で放熱性が向上します。
ジャンクション温度を確認する場合は、図に示すステム部分の温度を測定し以下の式で算出する
事で確認ができます。
Tj=Tc+Pd×3℃/W
*Tc:実測ステム温度
温度測定箇所
ジャンクションとの熱抵抗は
3℃/W です
参考データ(片面銅箔基板での銅箔面積 vs 熱抵抗データ)
5.応用
●5-1
出力の ON・OFF 制御
5番・Vc 端子に直接電圧印加を行い、出力 ON・OFF 制御が可能です。Vc 端子
オープン時はオンになります
21
SI-8000FDL
●5-3
スパイクノイズの低減
スパイクノイズを低減させるには、SI-8000FD の出力波形及び、ダイオードの
リカバリータイムを、コンデンサで補正する方法がありますが、共に効率が弱冠低下し
ますので注意して下さい。
10Ω 程度
1000pF程度
2.SW
1.VIN
SI-8000FF
10Ω 程度
3.GND
1000pF程度
※オシロスコープにてスパイクノイズを観測される際には、プローブの GND リード線
が長いとリード線がアンテナの作用をしてスパイクノイズが異常に大きく観測される
ことがあります。スパイクノイズの観測に当たってはプローブのリード線を最短にして
出力コンデンサの根本に接続して下さい。
●5-4
逆バイアス保護
バッテリーチャージ等、入力端子より出力の電圧が高くなるような場合には、入出力
間に逆バイアス保護用のダイオードが必要となります。
SI-8001FD
SI-8000S,SS
22
SI-8000FDL
6.代表特性例
(1)効率
SI-8001F
Vo=3.3v
SI-8001FDL
SI-8001FFE 効率
SI-8001FDL
Vo=1.5v
90
65
60
85
Vin=5v
Vin=8v
Vin=12v
Vin=15v
55
50
45
40
0
効率 %
効率 %
70
80
75
70
Vin=8v
15v
20v
30v
40v
65
1
2
Iout A
3
60
4
0
0.5
1
3
3.5
2.5
3
3.5
SI-8001F
Vo=5v
90
85
80
効率 %
Vin=5v
Vin=8v
Vin=12v
Vin=15v
75
Vin=8v
15v
20v
30v
40v
70
65
60
1
2
Iout A
3
0
4
0.5
1
1.5
2
Iout A
SI-8001F
Vo=12v
SI-8001FDL
SI-8001FFE 効率
SI-8001FDL
Vo=2.5v
80
100
75
95
70
90
Vin=5v
Vin=8v
Vin=12v
Vin=15v
65
60
55
効率 %
効率 %
2.5
SI-8001FDL
Vo=1.8v
0
効率 %
2
Iout A
SI-8001FFE 効率
SI-8001FDL
75
70
65
60
55
50
45
40
1.5
85
Vin=15v
20v
30v
40v
80
75
70
50
0
1
2
Iout A
3
4
0
0.5
1
1.5
2
2.5
3
3.5
Iout A
23
4
SI-8000FDL
(2)立ち上がり特性
Low voltage behavior
SI-8001FFE
SI-8001FDL
入力電圧 vs 出力電圧
Vo=18v設定
94
6.00
92
5.00
Vin=21v
Vin=25v
Vin=30v
Vin=35v
Vin=40v
88
86
84
出力電圧Vo [V]
効率 %
90
82
4.00
3.00
Io=0A
0.5A
1A
2A
3.5A
2.00
1.00
80
0
1
2
3
0.00
4
0
1
2
Iout A
3
4
5
入力電圧VIN [V]
6
7
(3)ロードレギュレーション
SI-8001FDL
効
SI-8001FFE 効率
Load regulation
ロードレギュレーション
96
95
94
93
92
91
90
89
88
87
86
5.1
率
5.08
5.06
出力電圧 Vout [V]
効率 %
Vo=24v
Vin=27v
30v
35v
40v
5.04
Vin=40v
5.02
Vin=30v
5
Vin=15v
4.98
Vin=10v
4.96
4.94
Vin=8v
4.92
0
1
2
Iout A
3
4
4.9
0
1
2
出力電流 Iout [A]
3
(4)回路消費電流
Quiescent current
24
8
SI-8000FDL
(5)オフ時回路消費電流
Quiescent current
at off
(6)過電流保護特性
6 Over Current Protection
出力電圧 VO (V)
Output Voltage
5
VIN=8V
4
VIN=15V
3
VIN=30V
VIN=40V
2
1
0
1
2
3
4
5
出力電流 Io (A)
(7)過熱保護特性
Output Current
Thermal Protection過熱保護特性
6.00
出力電圧Vo [V]
5.00
4.00
VIN=15V, Io=10mA
3.00
2.00
1.00
0.00
0
20
40
60 80 100 120 140 160 180
接合部温度Tj [℃]
25
SI-8000FDL
7.用語解説
・ジッタ
異常スイッチング動作の一種で、入出力条件が一定にも関わらずスイッチングパルス
幅が変動する現象であります。ジッタが発生すると、出力のリップル電圧ピーク幅が
増加します。
・推奨動作条件
正常な回路機能を維持するために必要とされる動作条件を示すもので、実使用におい
ては当条件内とする必要があります。
・絶対最大定格
破壊限界を示す定格であり、瞬時動作及び定常動作において、一項目かつ一瞬たりと
も規格値を超えないように配慮する必要があります。
・電気的特性
各項目に示している条件で動作させた場合の特性値規格であります。動作条件が異な
る場合には、規格値から外れる可能性があります。
・PWM (Pulse width modulation)
パルス変調方式の一種で、変調信号波(チョッパ型スイッチングレギュレータの場合、
出力電圧)の変化に応じて、パルスの幅を変えて変調する方式であります。
・ESR (Equivalent series resistance)
コンデンサの等価直列抵抗値を示します。コンデンサに直列に接続された抵抗と同等
の作用を示します。
26
SI-8000FDL
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際には、最新の情報である事をご確認下さい。
●本書に記載されている動作例及び回路例は、使用上の参考として示したもので、これらに
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及び確認を行って下さい。
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機器等)に使用される事を意図しております。ご使用の場合は、納入仕様書の締結をお願
いします。高い信頼性が要求される装置(輸送機器とその制御装置、交通信号制御装置、
火災・防犯装置、各種安全装置など)への使用をご検討の際には、必ず当社販売窓口へご
相談及び納入仕様書の締結をお願いします。極めて高い信頼性が要求される装置(航空宇
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限り使用しないで下さい。
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