ルーフプリズムレンズアレイ (RPLA)

ルーフプリズムレンズアレイ(RPLA)
Roof Prism Lens Array(RPLA)
藤田 和弘*
井上 浩之*
三澤 成嘉*
前田 育夫*
桜井 彰*
Kazuhiro FUJITA
Hiroyuki INOUE
Shigeyoshi MISAWA
Ikuo MAEDA
Akira SAKURAI
要 旨
プラスチックで一体成形したプリズムアレイと二列の球面レンズアレイ,およびアパーチャー
アレイの単純な構造で機能する独自の等倍結像素子,ルールプリズムレンズアレイ(RPLA)を開発
した.本素子は従来のルーフミラーレンズアレイ(RMLA)と同等の機能を有しつつ,大幅な低コ
スト化を達成した.また本素子をカラー密着イメージセンサへ適用し,A4フルカラー原稿を約9
秒で走査できる高速読取りを実現した.
ABSTRACT
A new imaging device of unity magnification with simple structure is developed. It is named as roof
prism lens array(RPLA) and is consists of lens array with two spherical surfaces and roof prism, and
aperture array made by plastics. It realized the same optical performance of common imaging device
with low cost compared with roof mirror lens array (RMLA), and it achieves the scan ability at high
speed of about 9 sec. per A4 size with full color by applying RPLA to color contact image sensor.
*
研究開発本部 応用電子研究所
General Electronics R&D Center Research and Development Group
Ricoh Technical Report No.25
116
NOVEMBER, 1999
Z
1.背景と目的
Y
X
ファクシミリ,イメージスキャナなどの画像機器の小型
化,低コスト化を進めるために,入力部として密着イメージ
Object
センサ(CIS)の採用が拡大している.我々はこれまで,CISに
適用可能な等倍結像素子,ルーフミラーレンズアレイ
Image
(RMLA) を 開 発 し , 現 在 , 普 通 紙 フ ァ ク シ ミ リ RIFAX
BL100(写太郎)/BL110(写太郎2),デジタル印刷機PRIPORT
VT2250,imagio MV1 Fioに搭載している.1)今後は,さらに
需要が拡大されるカラー対応の画像機器に対応するため,よ
り低コストでカラー読取りが可能なCISの開発が求められて
Aperture
array
RPLA
いる.
Fig.1
今回RMLAの光学系を発展させ,部品点数を減らして低コ
Overall structure of RPLA.
スト化を図り,カラーCISに適用可能な新等倍結像素子,
2-2
ルーフプリズムレンズアレイ(RPLA)を開発したので報告す
RPLA光学系の特徴
RPLAはその構造上,プリズム内部の全反射を利用し2回
る.
反射させ,光利用効率が非常に高い結像素子を実現している.
この特徴により,RMLAでは必要であったルーフプリズム部
2.技術
への金属膜反射コートが不必要となった.また,再帰反射型
機能を有し,かつ,物点と結像点を完全に分離できる結像光
2-1
RPLA光学系の構成と結像原理
学系を採用しているためにフレア光の発生が少なく,レンズ
Fig.1とFig.2に構成図,および結像原理を示す.
アレイ表面の反射防止コートも不必要となった.一方,部品
互いに光軸が直交配置した2列の球面レンズアレイと45゜
点数に関しては,RMLAは5部品で機能するのに対し,RPLA
方向に傾斜したルーフプリズムアレイとが一体的に構成され
はアパーチャアレイを付加した2部品で同等の機能を達成で
る.このレンズアレイとプリズムアレイとが同一ピッチで配
き,製造コストの大幅な引き下げを可能とした.
列されている.また,隣接するレンズ間でのクロストーク光
さらに今回,設計上の特徴としてプリズムアレイと球面
の防止と光量分布の均一化を図るために,各レンズアレイ前
レンズアレイに低分散材料を採用することでカラー読取り対
方に長穴開口形状のアパーチャアレイが付加される.結像原
応とした.
Object
理としては,物点からの光線は球面R1によりほぼ平行光と
なり,入射光線に対して45゜傾いたルーフ面で90゜折り曲
R1
げられた後,球面R1と同一のパワーを有する球面R2により
Aperture
array
集光され結像する.ここで得られる像は,ルーフプリズムの
Image
再帰反射機能により正立像となる.単一のルーフプリズムレ
ンズ系の有効読取り幅は隣接するレンズ中央部近傍までしか
カバーしないが,個々のレンズ系で形成された像が互いに重
RPLA
R2
複して必要な有効読取り幅を確保している.
Dx
Dy
Fig.2
Ricoh Technical Report No.25
117
Optical path of RPLA.
NOVEMBER, 1999
2-3
RPLAの諸元
MTF(%)
従来のRMLAと同等の解像力,明るさを実現すべく,各諸
元の最適化を図った.Table 1にRPLA諸元設定結果,Table 2
に,RPLAの主要特性を示す.
バックフォーカス,配列ピッチを従来のRMLAより小さく
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
Y(array)direction
X-direction
0
2
4
6
8
Spatial frequency (lp/㎜)
Fig.3
MTF versus Spatial frequency.
し,さらなる小型化を図った.また,アパーチャアレイの開
口形状をRMLAと同様に長円形状とし,光量分布を均一化し
10
12
た.配列ピッチは1.8mmという非常に微小なピッチで配列し
100
ている.A4幅をカバーする配列数は120である.
80
Table 1 Optimum setting of RPLA.
60
Back Focus (㎜)
Shape of Lens
X(㎜)
Y(㎜)
Array Pitch(㎜)
Aperture Size
Dx(㎜)×Dy(㎜)
Thickness of Aperture array(㎜)
Semi-Field Angle(deg)
8.3
4.0
1.8
1.8
2.5×0.9
RMLA
11.4
4.0
3.0
3.0
3.6×2.1
2.0
12.9
1.5
14.7
MTF(%)
RPLA
2 lp/㎜
4
6
40
8
20
0
-0.6
Fig.4
-0.4
-0.2
0
defocus(㎜)
0.2
0.4
0.6
Defocus characteristics of MTF in Array direction.
80
Table 2 Characteristics of RPLA.
RPLA
MTF(%)
(Y direction:8 lp/㎜ )
Focus depth
(Y direction:8 lp/㎜ MTF>20%)
F/N o.(Ave.)
Irradiance unevenness(%)
2-4
60~ 70
RMLA
68
± 0.3㎜
± 0.3㎜
MTF(%)
60
40
8 lp/㎜
20
0
0
F/2.4
10
F/2.5
5
Fig.5
1 2
3
4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14
Y position(㎜)
MTF characteristics in Y direction.
試作結果
2-3項のRPLA設計結果に基づき,射出成形法によりRPLA
を試作した.Fig.3に空間周波数とMTFの関係,Fig.4にデ
フォーカスと配列方向のMTFの関係,Fig.5に配列方向の
MTFの分布を示す.MTFは8 lp/㎜で70%程度あり,配列方向
のMTFの焦点深度も±0.3㎜以上(8 lp/㎜20%以上)と大きな値
である.また,レンズ配列周期でのMTFのばらつきもほと
んどなく,均一な特性となっている.Fig.6に試作した成形
品の写真を示す.
Fig.6
Ricoh Technical Report No.25
118
Photograph of RPLA.
NOVEMBER, 1999
3.成果
カラーCISユニットへの適用
2-5
Fig.7にRPLAをカラーCISユニットへ適用した構成例を示
従来のRMLAの構成より大幅な部品点数の削減,製造工程
す.Fig.8には,本ユニットで読取ったカラー画像のサンプ
の削減が可能になり,より低コストな等倍結像素子(RPLA)
ルを示す.この画像はシェーディング補正のみを施したサン
を開発した.また本素子をカラー密着イメージセンサユニッ
プルである.ユニットの構成としては300dpi 3ラインカ
トへ適用し,A4フルカラー原稿を約9秒で走査できる高速読
ラーイメージセンサ,冷陰極管(白色光)を用いた.また,駆
取りを実現した.
動条件としては,駆動周波数1.5MHz,読取りライン周期は
2.0msとした.これは,A4フルカラー原稿を約9秒で走査で
4.今後の展開
きる読取りスピードを実現する条件である.
読取り用の等倍結像素子として,高密度対応,明るさ向
Aperture
array
Frame
上と,さらにコストダウンを図っていくが,書込用途への展
開も検討していく.
Image
sensor
Lamp
RPLA
謝辞
本素子を開発するにあたり,ご協力,ご指導頂きました
Fig.7
リコー光学(株),生産事業本部,ならびに,生産技術研究所
Cross sectional structure of color contact image
sensor using RPLA.
の関係各位に厚く御礼申し上げます.
参考文献
1)
藤田,他:ルーフミラーレンズアレイ(RMLA)密着イメージセン
サ, Ricoh Technical Report, 23, (1997), pp.78-81.
Fig.8
Ricoh Technical Report No.25
Sample Image.
119
NOVEMBER, 1999