AN-268: 測定を容易にするRMS/DCコンバータ PDF

正誤表
英文アプリケーション・ノート AN-268 に間違いがありましたので、お詫びして訂正いた
します。
この正誤表は、2010 年 3 月 12 日現在、アナログ・デバイセズ株式会社で確認した誤りを
記したものです。
なお、英語のデータシート改版時に、これらの誤りが訂正される場合があります。
正誤表作成年月日: 2010 年 3 月 12 日
アプリケーション・ノート:AN-268
訂正箇所:
P.10
英文アプリケーション・ノートの AD736 Single-Supply circuit with Output Scaling の
部分で、less than 1 of reading error と記述があります。このうち“1”と“of”の間 に“%”
が抜けています。正しくは less than 1% of reading error となります。
本件は明らかな間違いですので、日本語アプリケーション・ノートの当該部分(P.10)「出
力スケーリング機能のある AD736 単電源回路」では、不要な混乱を生じさせないためにも
「1%以下の読取り誤差」と修正しております。
P. 11
英文アプリケーション・ノートの AD736 Single-Supply circuit with Output Scaling の
部分で、divider at Pin 4 of the AD694 using R5 and R9 と記述があります。このうち“R9”
はタイプミスにより混入してしまっているもので、正しくは divider at Pin 4 of the AD694
using R5 and R8 となります。
本件は明らかな間違いですので、日本語アプリケーション・ノートの当該部分(P.10)「出
力スケーリング機能のある AD736 単電源回路」では、不要な混乱を生じさせないためにも
「それは R5 と R8 を用いて、AD694 の 4 番ピンに」と修正しております。
本
社/〒105-6891 東京都港区海岸 1-16-1
ニューピア竹芝サウスタワービル
電話 03(5402)8200
大阪営業所/〒532-0003 大阪府大阪市淀川区宮原 3-5-36
新大阪トラストタワー
電話 06(6350)6868
AN-268
アプリケーション・ノート
測定を容易にする RMS/DC コンバータ
RMS/DC コンバータは、どんな波形の信号でも真の RMS 値を出力します。
またさまざまな測定回路で積木のように使用できます。
著者:Bob Clarke、Mark Fazio、Dave Scott
はじめに
RMS/DC コンバータは、AC 入力あるいは変動する DC 入力の RMS
値に等しい DC 信号を出力します。アナログ・デバイセズには
AD536A、AD636、AD637、AD736、AD737 の 5 つの RMS/DC コン
バータがあります。AD536A、AD636、AD637 の原理とアプリケー
シ ョ ン に つ い て は 、 『 RMS-to-DC Conversion Application Guide,
Second Edition』に詳しい説明があります。
新しい RMS/DC コンバータである AD736 と AD737 は、上記のガ
イドに記載されていません。このアプリケーション・ノートでは、
上記のアプリケーション・ガイドを補完し、AD736 と AD737 の原
理とアプリケーションを説明します。また、AD637 の精度を高め、
セトリング時間を短縮する方法についてもご紹介します。
このアプリケーション・ノートは、「RMS/DC コンバータの動作
原理」「
、RMS/DC コンバータを選択する方法」
「
、AD736 と AD737 の
原理」、「AD736 と AD737 のアプリケーション」、「AD637 のア
プリケーション」の 5 つの大きなセクションで構成されています。
そ の 他 の RMS/DC コ ン バ ー タ に 関 す る 参 考 文 献 と し て は 、
『 RMS-to-DC Conversion Application Guide, Second Edition 』 、
『Nonlinear Circuits Handbook, Second Edition』、AD536A、AD636、
AD637、AD736、AD737 の各データシートなどがあります。いず
れもアナログ・デバイセズから入手できます。
RMS/DCコンバータを使用する理由
初期のマルチメータは、簡単な整流器と平均化回路を使用して AC
測定を行いました。その後、RMS 値を読み取ることができるよう
に修正されたものの、常にサイン波という 1 種類の波形のみを対象
とするものでした。それら平均化回路と違い、真の RMS/DC コン
バータはどんな形の波形でも入力信号の RMS 値を測定します。
それぞれの波形はクレスト・ファクタが違います。クレスト・ファ
クタは、
ピーク信号振幅と RMS 振幅の比として定義されています。
つまり、クレスト・ファクタ = VPEAK/VRMS です。サイン波や三角
波など、一般的な波形の多くでは、クレスト・ファクタは比較的
小さい値です( 2)。それに対し低デューティーサイクルのパ
ルス列や SCR 波形などでは、クレスト・ファクタが高くなります。
平均化回路を用いて正確な結果を得るには、前もって波形の情報
を取得し、補正係数で補正する必要があります。RMS/DCコンバー
タは、さまざまなクレスト・ファクタをもつ波形の信号に対して
高精度の出力が得られます。AD637 は、クレスト・ファクタ 10 と
い う 大 き な 値 の 波 形 の 信 号 を 誤 差 増 1% 以 下 で 処 理 し ま す 。
AD736 とAD737 は、クレスト・ファクタ 5 まで対応します。表Iは、
各種波形について真のRMS値と平均値回路で生じる測定誤差を比
較したものです。
RMS/DCコンバータの動作原理
ここでご紹介する RMS/DC コンバータは、電圧の RMS 値について
陰方程式を解いています。以下では、RMS 電圧の定義から陰方程
式までの変換の過程を説明します。続いて、この陰方程式をどの
ようにモノリシック RMS/DC コンバータに実現したかについて解
説します。
電圧の RMS 値は、次のように定義されます。
1
T
V RMS 

T
0
[V( t ) 2 ] dt
ここで、VRMS は RMS 値、T は測定時間です。V(t)は瞬時電圧であ
り、時間の関数ですが、必ずしも周期的ではありません。
この式の両辺を 2 乗すると、次の式が得られます。
2
VRMA 
1 T
[V( t ) 2 ] dt
T 0
(2)
積分は、移動平均として近似できます。
Avg [V (t )]2 
1 T
[V( t ) 2 ] dt
T 0
(3)
したがって、式 2 を次のように簡単にすることができます。
2
VRMS  Avg [V (t ) 2 ]
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本
(1)
(4)
AN-268
表 I. 一般的な波形の測定時に平均値応答型回路によって発生する誤差
真の RMS 値
サイン波の RMS 読取り値
で調整された
平均値回路の
読取り電圧
平均値回路の読取
り誤差%*
0.707 V
0.707 V
0%
1.00 V
1.11 V
+11.0%
0.577 V
0.555 V
−4%
3
0.333
0.266
−20.2%
ユニポーラ
パルス列の一例
2
10
0.5 V
0.1 V
0.25 V
0.01 V
−50%
−90%
SCR 波形
50%デューティサイクル
25%デューティサイクル
2
4.7
0.495 V
0.212 V
0.354 V
0.150 V
−28%
−30%
クレスト・
ファクタ
(VPEAK/VRMS)
波形タイプ、1V のピーク
振幅
1.414
( 2)
歪みのないサイン波
1.00
(完全一致)
振幅対称型の矩形波
1.732
( 3)
三角波
ガウス・ノイズ
(ピークの 98%<1V)
読取り誤差% =
平均値  真のRMS値
 100%
真の RMS値
両辺を VRMS で割ると、次の式が得られます。
VRMS 
2
Avg [V (t ) ]
VRMS
(5)
この式が VRMS の陰解法のもとになっており、アナログ・デバイセ
ズのモノリシック RMS/DC コンバータ製品群はこの技術を使用し
ています。
なお、式 4 の両辺の平方根をとると、次式が得られます。
VRMS 
Avg [V (t ) 2 ]
(6)
これは、関数の RMS(実効)値を表すもうひとつの方法になりま
す。
RMS 計算という陰解法は、優れたダイナミック・レンジが得られ
るという実用的な理由から陽解法(入力信号を順に 2 乗、平均、平
方根の計算を行う)よりも優れています。陽解法を使用すると、2 乗
回路の出力は 100:1(0.1~10V)の入力信号に対して、10,000:1 の
ダイナミック・レンジ(1mV~10V)で変動します。陽解法で使用
される入力の 2 乗回路の誤差は 1mV を超えるため、この誤差は信
号の大きさに大きく依存することになり、結果として全体のダイ
ナミック・レンジは 100:1 以下になります。
図 1 は、RMS/DC変換の陰解法を示しています。この回路は、基本
的に式 5 を解くアナログ・コンピュータです。アナログ・デバイセ
ズのAD536A、AD636、AD637、AD736、AD737 は、いずれもこの
方式をもとに応用した回路です。
入力段はユニティゲイン・バッファで、AD536A、AD636、AD637 で
は汎用、AD736 と AD737 では専用となっています。ここで「汎用」
というのは、入力側と出力側のどちらにでも接続可能であること
を意味しています;このバッファをコンバータの高インピーダン
ス入力として使用したり、RMS/DC コンバータ内蔵の平均化フィ
ルタの後段のアクティブ・フィルタを形成するのに使用したり、
単に未接続にしておくことができます。
入力バッファの後は、絶対値回路(つまり、高精度の全波整流器)
が続きます。絶対値回路の出力は 2 乗/除算回路を駆動します。
2 乗/除算回路は、入力信号を 2 乗し、それを出力信号で割算する
ので、結果は 2 乗回路の平均化された出力になります。割算回路の
周りを閉ループにすることにより、式 5 を連続的に解きます。
図 1. AD536A、AD636、AD637、AD736、AD737 で使用されている RMS/DC 変換の陰解法
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AN-268
RMS/DCコンバータを選択する方法
RMS/DC コンバータを選ぶということは、アプリケーションの条
件に最も適した特性を持った製品を選ぶわけです。残念ながら 1 個
のコンバータですべてを満足でできないため、精度、帯域幅、消
費電力、入力信号振幅、クレスト・ファクタ、セトリング時間の
中で重要なパラメータに応じてデバイスを選択する必要がありま
す。AD637 は、7Vrms という高い電圧の入力が可能で、さらにア
ナログ・デバイセズの最も高精度で広帯域幅の RMS/DC コンバー
タです。−3dB 帯域幅は、1Vrms 入力で 8MHz です。また 60dB の
範囲で入力信号の対数に比例する dB 出力もあり、また静止電流を
3mA から 450μA に低減するパワーダウン機能を備えています。
AD736 とAD737 は、ポータブル計測器用に最適化されておりま
す;消費する静止電流は 200μA以下で、入力信号範囲は 0~
200mVrmsです。後述するように、外付け減衰器を追加することで、
もっと広い信号範囲に対応することもできます。AD737 にはパ
ワーダウン入力があり、携帯型アプリケーションでは静止電流を
160μAから 40μAに低減することができます。表IIは、AD637、AD736、
AD737 のこれらの仕様をまとめたものです。AD637 は、精度、ダ
イナミック・レンジ、クレスト・ファクタ、セトリング時間など
が優れてるオールラウンドの製品です。表IIIに示すように、帯域
幅も最も広くなっています。
信号レベルが急激に大きく変動するのに、高精度で迅速に応答し
なければならないようなアプリケーションの場合は、AD637 を選
択するべきです。AD637 のセトリング時間は信号レベルと無関係
ですが、AD736 と AD737 では、ある決まった値の平均化コンデン
サに対してセトリング時間は信号振幅レベルに依存し、小振幅の
信号では長くなり、大振幅の信号では短くなります。
AD736 と AD737 は、帯域幅は狭いが、小振幅の信号(<10mV)で
は AD637 よりも高性能であり、消費電力も少なくなります。(外
付けプリアンプを用いれば、小振幅(<20mV)の信号に対しても
AD637 の性能を改善することができますが、その方法については、
このアプリケーション・ノートで後述します。またこれらの製品
は平均化コンバータや高精度整流器として、オペアンプ回路に代
わる、汎用デバイスとしても使用できます。
AD737 と AD637 には、
パワーダウン機能もあります。
表 II. RMS/DC コンバータ・セレクション・ガイド
モデル
変換精度、
±mV±%読取り値
最大消費電力
誤差増 1%まで
のクレスト・
連続入力(VRMS) ファクタ
AD637J
±1 mV ± 0.5%
3 mA @ ±15 V
7 @ VS = ±15
AD637K
±0.5 mV ± 0.2%
3 mA @ ±15 V
7 @ VS = ±15
AD736A/J
±0.5 mV ± 0.5%
0.2 mA @ ±5 V
1 @ VS = ±5
AD736B/K
±0.3 mV ± 0.3%
0.2 mA @ ±5 V
1 @ VS = ±5
AD737A/J
±0.4 mV ± 0.5%
0.16 mA @ ±5 V
1 @ VS = ±5
AD737B/K
±0.2 mV ± 0.3%
0.16 mA @ ±5 V
1 @ VS = ±5
セトリング
時間の比較
備考
10

10
高速
最高の精度
3

3
低速
3

3
低速
最高の帯域幅
高精度アプリケーション
低価格
低消費電力
出力バッファ
低価格
最小の消費電力
出力バッファなし
表 III. RMS/DC コンバータの帯域幅 対 精度
下記入力信号に対する
誤差増 1%までの
帯域幅(kHz)
AD637
AD736
AD737
1 番ピン
2 番ピン
1 番ピン
2 番ピン
1 kHz
VIN = 1 mV
NA
1 kHz
1 kHz
1 kHz
VIN = 10 mV
NA
6 kHz
6 kHz
6 kHz
6 kHz
VIN = 20 mV
11 kHz
NA
NA
NA
NA
VIN = 200 mV
66 kHz
90 kHz
33 kHz
90 kHz
33 kHz
下記入力信号に対する
3 dB 帯域幅(kHz)
VIN = 1 mV
NA
5 kHz
5 kHz
5 kHz
5 kHz
VIN = 10 mV
NA
55 kHz
55 kHz
55 kHz
55 kHz
VIN = 20 mV
150 kHz
NA
NA
NA
NA
VIN = 200 mV
1000 kHz
460 kHz
190 kHz
460 kHz
190 kHz
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AN-268
AD736とAD737の原理
AD736 の動作をもっとよく理解するために、簡略ブロック図を考
えてみます。まず 図 2 はAD736 のデータシートに載っているブロッ
ク図です。そして次に、図 3 は信号の流れをわかりやすくするため
に書き直したものです。また 図 3 で平均化コンデンサ(CAV)とフィ
ルタ・コンデンサ(CF)も追加しました。
AD736 と AD737 への入力は、ユニティゲイン・バッファとして接
続された FET 入力オペアンプからです。このアンプには高イン
ピーダンスのバッファ入力(2 番ピン)と広いダイナミック・レン
ジをとることのできる低インピーダンス入力(1 番ピン)がありま
す。この高インピーダンス入力は、入力バイアス電流が低いため、
高インピーダンス入力減衰器とともに使用するのに最適です。
バッファ出力は全波整流器/絶対値回路を駆動し、その全波整
器/絶対値回路は 2 乗/割算回路を駆動します。2 乗/割算回路の
出力は、I/V コンバータとして接続された反転オペアンプの加算点
を駆動します。3 番ピンを使い 8kΩ の帰還抵抗と並列にフィルタ用
コンデンサを接続して、1 極ローパス・フィルタを形成できます。
出力電圧は、この抵抗に電流が流れることによって発生します。
AD736 と AD737 の外付け平均化コンデンサ(CAV)は、4 番ピン
(−VS)と 5 番ピン(CAV)の間に接続されますが、これによって
RMS コア内のトランジスタのベースエミッタ接合部両端に接続さ
れることになります。つまり、平均化コンデンサと並列な抵抗は
ダイオードの抵抗であり、信号の大きさに影響します。結果とし
て得られる時定数は、RMS 値に反比例します。
外付け平均化コンデンサ(CAV)は、RMS を計算する間、整流され
た入力信号を「保持」するため、その値が測定精度に直接影響し
ます。特に低周波数では影響が大きくなります。(CAV の値が大き
いほど、誤差は低くなります。)また、平均化コンデンサは、信
号の大きさによって抵抗が変化する 2 乗/割算回路内のベースエ
ミッタ接合部の両端に接続されてるため、平均化時定数は入力信
号が減少するにつれて直線的に増加します。
AD737(図 4 と 図 5)は、設計と機能の面ではAD736 と似ていま
すが、消費電力を低減するために出力バッファがなく、さらに消
費電力を低くするためのパワーダウン機能があります。AD737 の
出力段は、8kΩ負荷抵抗が接続された簡単なオープン・コレクタ
NPNトランジスタです。
その結果、入力信号が小さくなるにつれて理想的な平均化からの
ずれに起因する誤差は減少しますが、回路が新しい RMS 値にセト
リングするまでの時間は増加します。したがって、入力信号が小
さくなると回路の特性は改善されますが(平均化処理時間が増加
するため)、コンデンサの放電に時間がかかるため、測定と測定
の間の待ち時間が長くなります。したがって、計算精度とセトリ
ング時間との間のトレードオフになります。この問題は、
『RMS-to-DC Conversion Application Guide, Second Edition』で詳しく
論じられています。
図 2. AD736 の簡略化したブロック図
図 4. AD737 の簡略化したブロック図
図 5. 書き直した AD737 の簡略化したブロック図
図 3. 書き直した AD736 の簡略化したブロック図
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AN-268
均化誤差」と呼ばれ、出力リップルのピーク値と DC 誤差の和に等
しくなります。
DC誤差、出力リップル、平均化誤差
図 6 はサイン波信号を入力したときのAD736 とAD737 の代表的な
出力波形です。VOUT = rms (VIN)という理想的な出力が得られること
はなく、出力には必ずDC誤差とACリップル成分が含まれます。
入力周波数が高くなると、DC誤差成分とAC誤差成分は急速に減少
します;入力周波数が 2 倍になると、DC誤差は元の値の 1/2 に、
リップルは 1/4 に減少するため、たちまち小さな値になります。表
IVに、いくつかの一般的なアプリケーションについてCAVとCFの実
用的な値を示します。図 7 は、さまざまなCAV値におけるAD736 と
AD737 のクレスト・ファクタと誤差増の関係を示します。
図 6. サイン波入力電圧に対する AD736 と AD737 の出力波形
DC 誤差は、出力信号の平均(出力のリップルをフィルタ処理で除
去したもの)と理想的な DC 出力との差です。したがって、DC 誤
差成分は、使用する平均化コンデンサの値によってのみ決まり、
いくら後段でフィルタをかけても(つまり、非常に大きい CF を使
用しても)この誤差は小さくなりません。ただし、大きい値の CF
を用いればリップルは除去できるかもしれません。
図 7. さまざまな CAV 値における AD736 と AD737 の
誤差増とクレスト・ファクタの関係
多くの場合、CAV コンデンサと CF コンデンサの値を選択する際に
は、DC 誤差成分と AC 誤差成分を総合した値を考慮する必要があ
ります。この総合誤差は測定の最大不確定性を表しており、「平
表 IV.
アプリケーション
RMS 入力
電圧
汎用 RMS 計算
0 V-1 V
0-200 mV
汎用平均値回路
0 V-1 V
0 mV-200 mV
SCR 波形測定
0 mV-200 mV
0 mV-100 mV
AD736 と AD737 のための現実的な CAV と CF の値
低周波
カットオフ
(−3dB)
1%までの
セトリング
時間*
最大
クレスト・
ファクタ
CAV
CF
20 Hz
5
150 μF
10 μF
360 ms
200 Hz
5
15 μF
1 μF
36 ms
20 Hz
5
33 μF
10 μF
360 ms
200 Hz
5
3.3 μF
1 μF
36 ms
20 Hz
なし
33 μF
1.2 sec
200 Hz
なし
3.3 μF
120 ms
20 Hz
なし
33 μF
1.2 sec
200 Hz
なし
3.3 μF
120 ms
50 Hz
5
100 μF
33 μF
1.2 sec
60 Hz
5
82 μF
27 μF
1.0 sec
50 Hz
5
50 μF
33 μF
1.2 sec
60 Hz
5
47 μF
27 μF
1.0 sec
オーディオ・
アプリケーション
スピーチ
音楽
0 mV-200 mV
300 Hz
3
1.5 μF
0.5 μF
18 ms
0 mV-100 mV
20 Hz
10
100 μF
68 μF
2.4 sec
* セトリング時間は入力信号がゼロから増加して上述した RMS 入力電圧になるものとして規定されています。
小さい値の入力信号ほどセトリング時間が長くなります。
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AN-268
AD737 のセトリング時間の計算
AD736 またはAD737 の入力信号振幅が小さくなったときに出力が
安定するまでの時間を近似的に求めるのに 図 8 のグラフが使える
でしょう。RMSコンバータの出力が安定するまでの合計時間は、
グラフから求められる 2 つのセトリング時間の時間差(初期セトリ
ング時間から最終セトリング時間を引いた値)になります。
高精度整流器について、ひとつ注意することがあります:入力波
形がゼロを通るとき、オペアンプが即座に一方のダイオードをオ
ンに、他方のダイオードをオフにスイッチする必要があります。
一例として、平均化コンデンサ = 33μF、初期RMS入力信号振幅 =
100mV、最終(減少後)入力信号振幅 = 1mVの条件を考えてみま
しょう。図 8 から、初期セトリング時間(100mVの直線と 33μFの
直線の交点)として約 80msが得られます。新しい、つまり最終的
な入力信号振幅である 1mVに対応するセトリング時間は、約 8 秒
になります。したがって、回路が新しい値に安定するために要す
る正味の時間は、主に最終セトリング時間になります。
図 10.
AD736 高精度整流器の性能:1kHz(上の写真)と
19kHz(下の写真)
このため、高精度整流器の帯域幅は、オペアンプのゲイン帯域幅
積、オープンループ・ゲイン、スルーレートをもとに予想した値
に比べて常にはるかに小さい値になります。RMS/DCコンバータの
中のモノリシック高精度整流器は、図 10 に示す高精度整流器とし
てのAD736 の性能からわかるように、モノリシックであるという
点でディスクリートの高精度整流器に比べてはるかに優れた特性
を示します。
図 8. いくつかの CAV 値における AD736 と AD737 の
セトリング時間対 RMS 入力信号振幅の関係
AD736とAD737のアプリケーション
高精度整流器としてのAD736
高精度整流器を作成するには、2 個のオペアンプ、2 個のダイオー
ド、そしていくつかのマッチング抵抗が必要です。RMS/DCコン
バータを使用すれば、これらの部品がすべていらなくなり、基板
面積が小さくなります。RMS/DCコンバータを使って高精度整流器
を作成するには単に平均化コンデンサを無くし、帰還を切れば実
現できます;この場合コンバータ内部の高精度整流器(図 9)のみ
を使用することになりますが、整流器はモノリシックなので、本
質的にマッチングしています。
AD736 とAD737 のフルスケール入力範囲の拡張
AD736 とAD737 は高インピーダンス入力(2 番ピン)なので、簡
単な抵抗減衰器(図 11)を接続することにより入力範囲を拡張で
きます。ちなみにAD736 とAD737 は、入力に減衰器を接続しなく
てもクレスト・ファクタが 1~3 で 200mVrmsという大きな入力信
号を正確に測定できます。
外付け減衰器により簡単に、フルスケール入力信号を AD736 また
は AD737 に入力する時点で 200mVrms の入力範囲になるように狭
めることができます。たとえば最大 7Vrms の入力(10V ピーク)
信号の場合、減衰器は 35:1(7/0.2)の分圧器になります。RMS/DC
コンバータの読取り値は、使用する外付け減衰器の分圧率に応じ
て倍率を変える必要があります。図 13 に示すように、外付け減衰
器はコンバータの低インピーダンス入力(1 番ピン)とともに使用
することもできます。
図 9. 高精度整流器として接続した AD736
- 6/12 -
AN-268
単電源オペアンプ(U2)は、ユニティゲインの差動アンプとして
接続されています。4.5V 点の負荷をできるだけ軽くするために、
大きな値の入力抵抗(R2~R5)を使用します。U2 は、4.5V の局所
的なグラウンドと AD736 の出力(0Vrms 入力でこれもやはり 4.5V
です)の間の差を増幅します。AD736 への RMS 入力が 0mV から
200mV に増加するにつれて、AD736 の出力は 4.5V から 4.7V に増
加します。U2 の出力は、AD736 の出力と 4.5V の差、つまり 0mV~
200mV DC になります。
回路の他の部分は、次のように機能します。AD736 の入力は AC
結合されます。R1 が、BiFET オペアンプの入力バイアス電流(一
般に 1pA)を流す経路になります。バイアス電流が R1 の 22MΩ 抵
抗を流れることによって、オフセット電圧は無視できる値になり
ます。U1(AD736)の 1 番ピンと 8 番ピンの間に接続された
C3(10μF)により、カットオフ周波数は 2Hz の低周波に設定され
ます。次式を使用すれば、ほかのカットオフ値を選択できます。
注:
C1 と抵抗分圧器は 1.6Hz
(−3dB)のハイパス・フィル
タを形成します。
図 11.
外付け入力減衰器を用いて AD736 と AD737 の測定範囲を拡張
できます。図では AD736 を使用していますが、この方法は
AD737 にも有効です。
AD736 の単電源動作
両電源動作では、AD736 の出力(6 番ピン)は上下電源電圧の中間
になる 0Vになります。
単電源動作では、
出力は 1/2VCCになります。
しかし、AD736 の出力に差動アンプとして単電源オペアンプを追
加接続することで、出力をグラウンド基準にすることができ真の
「0V入力、0V出力」単電源回路を作成できます(図 12)。この回
路では、
VIN = 0 のときVRMS = 0、VIN = 200mVrmsのときVRMS = 200mV
DCです。
この回路では、AD736 は+9V 単電源で駆動します。抵抗 R7 と R8 に
よって形成される分圧器で 9V 電源電圧が 2 当分され、1/2VCC(つ
まり 4.5V)で局所的な「グラウンド」点を確立します。AD736 の
COMMON ピン、その 22MΩ の入力バイアス抵抗、および後段オペ
アンプ U2 の(R4 と R5 を介した)反転入力をすべてこの局所的な
グランドに接続します。AD736 の無入力時出力電圧は、COMMON
ピンを基準としており 4.5V です。
f 
1
2 RC
(7)
ここで、f は Hz 単位の−3dB 周波数、C の単位はファラッド、πは
3.1416、R は AD736 によって 8kΩ ±20%に固定されています。
平均化コンデンサ(CAV)は 33μF であり、U1 の 4 番ピンと 5 番ピ
ンの間に接続されています。出力バッファの両端に 8kΩ 帰還抵抗
と並列に接続されたオプションの 10μF フィルタ・コンデンサ(CF)
で、カットオフ周波数 2Hz の 1 極ローパス・フィルタを形成して
ます。
CF の値は次式で計算できます。
f 
1
2 RC F
(8)
ここで、f は Hz 単位の−3dB 周波数、CF の単位はファラッド、πは
3.1416、R は AD736 によって 8kΩ ±20%に固定されています。ある
いは、R が固定されているため、次式が得られます。
f 
20 Hz
C F (F )
すべての固定抵抗は
1%、RN55C
図 12. 単電源オペアンプを用いて AD736 の出力をレベル・シフトすれば、0V 入力で 0V 出力の真の単電源回路を作成できます。
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(9)
AN-268
AD737 の単電源動作
AD737 を使って、0V 入力で 0V 出力の「真の」単電源回路を作成
することもできます。図 13 の回路には 3 つの設計技法が示されて
ます:AD737 を単電源で動作させる方法、AD737 の低インピーダ
ンス入力と直列に抵抗減衰器を使用する方法、単電源オペアンプ
を使って AD737 の出力電流を電圧に変換する方法。
入力減衰器(R1 と R2)と出力オペアンプ(U2)を組み合わせる
ことで、この回路は、0Vrms から 2VRMS のフルスケール入力に対し
て 0V DC から 2V DC の出力が可能です。この抵抗減衰器は
AD736 でも使用できます。この回路の消費電流は、9V 電源で
10mVrms 入力電圧の場合わずか 192μA で、2Vrms 入力電圧では
240μA です。
回路の入力の 1 番ピンと直列に接続されてる追加の抵抗(ここでは
R1 と R2 の合計によって形成)が減衰器として機能します。この
抵抗の値を計算するには、次式を使用します。
R IN 
8 k  V FS
 8 k
0 .2 V
(10)
ここで、RIN は直列入力抵抗の値であり、VFS は所望のフルスケー
ル入力電圧です。この回路で使用している 2V のフルスケール入力
電圧の場合、次式が成立します。
R IN 
8 k  2 V
 8 k
0.2 V
(11)
これにより、RIN = 72kΩ が得られます。10V のフルスケール入力電
圧の場合、RIN は 392kΩ になります。AD737(と AD736)の製造プ
ロセスでは薄膜抵抗を使用しており、これによって RIN の許容誤差
が 20%になります。したがって、内部抵抗の許容誤差を補償する
には、外部抵抗(R1 プラス R2)を 72kΩ ±20%にする必要がありま
す。
れ、9V 電源電圧が 2 本の 100kΩ 抵抗(R7 と R8)で形成される分
圧器で 2 等分され 1/2VCC(つまり 4.5V)で局所的な「グラウンド」
点を確立します。単電源オペアンプ(U2)は、2V のフルスケール
出力を生成する I/V コンバータとして機能します。
AD737 の出力はオープン・コレクタ NPN トランジスタで、通常、
COMMON ピンから接続された 8kΩ 抵抗を通じて電流をグラウン
ドに流します。この回路では、COMMON ピンは未接続のままで、
AD737 は U2 の反転入力点から電流を吸い込みます。ここでオペア
ンプ U2 はその反転入力点と非反転入力点の電位が同じになるよう
に作動し、出力電圧(VRMS)を増加させるので、これによって帰
還抵抗 R6 を流れる電流が増加します。R6 から流れる電流が
AD737 によって吸い込まれる電流と等しくなると、回路が均衡し
ます。
出力段のゲインを増やすには、単に帰還抵抗(R6)の値を大きく
するだけで可能です。C4 と R6 の組み合わせが回路の後段フィル
タを形成しますが、R6 の値は AD736 と AD737 の 8kΩ 内部抵抗よ
り 1 桁大きいため、同じカットオフ周波数のフィルタリングを形成
する場合は C4 の値を 10 分の 1 にできます(つまり、T = C4R6 = CF
 8kΩ)。
差動電流または差動電圧測定用の
3 チップ・デジタル・パネル・メータ
差動アンプ AD22050、RMS/DC コンバータ AD737、ワンチップ
DMM ICL7136 を用いて、交流電流(または電圧)の RMS 値を測
定する完全な 3 チップ・デジタル・パネル・メータを作成できます。
この回路の消費電力はごくわずかであり、AD22050 の消費する静
止電流は 300μA 以下、AD737 は 160μA 以下です。
この回路を図 14 に示します。200mV のフルスケール読取り値に対
する回路の伝達関数は次のとおりです。
AD736 の単電源回路の場合と同じく、AD737 も 9V 単電源で駆動さ
20  I IN R SENSE  200 mV
すべての固定抵抗は
1%、RN55C
図 13.
AD737 を使用しても真の単電源回路を作成できます。なお、この回路は AD737 の低インピーダンス入力
で入力減衰器を使用する方法も示しています。
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図 14.
AD737 RMS/DC コンバータ、AD22050 ディファレンス・アンプ、ICL7136 シングルチップ DMM を用いて、
真の RMS 低消費電力デジタル・パネル・メータを作成できます。
ここで、20 は U1 のゲイン、IIN はアンペア単位の入力電流、RSENSE
は Ω 単位の検出抵抗の値、200mV は ICL7136 のフルスケール読取
り値です。RSENSE 両端の 10mV に対して 100mV のフルスケール読
取りに変更したい場合は、下記の式を使うと便利です。
RSENSE 
5 mV
I IN
(13)
たとえば、100mV のフルスケール読取り値で 100mArms のフルス
ケール電流を測定する場合は、次のようになります。
RSENSE 
5 mV
 50 m
100 mA
求されます。いずれの場合も外部抵抗を 1 本追加することで、簡単
に対応することができます。これは入力バッファの出力抵抗(A1 ピ
ン)が、注意深く 100kΩ ±1%に調整されているためです。ゲイン
を上げるには、図 15 に示すように、バッファ・アンプの出力(5 番
ピン)からその非反転入力(4 番ピン)までを抵抗で接続します。
これでゲインはR/(R−100)倍になります。ここで、RはkΩ単位です。
たとえば、R = 200kΩでゲインは 2 倍になります。こうすれば、全
ゲイン 160 まで簡単に得られます。ただし、高ゲインほど、抵抗値
の精度に大きく左右されるようになるので注意が必要です。
(14)
次に回路の機能を示します。入力電流は RSENSE によって電圧に変
換されます。入力アンプ U1(AD22050)は、入力信号を 20 倍に増
幅する単電源差動アンプです。AD22050 のゲインを変更するには、
次のページに示すように外部抵抗を追加します。AD22050 の−3dB
帯域幅は 100kHz、スルーレートは 0.1V/μs です。なお、C1 と C2 の
間にミスマッチがあると、この回路の CMRR が悪化します。
AD22050 の 7 番ピンを+電源に接続すると、5 番ピン出力の電圧が
ゼロから+9V 電源の半分(つまり 4.5V)に上がります。抵抗 R7 と
R8 は、AD737 の電源電圧を分割します。AD737 の 6 番ピンと 8 番
ピンの間の差動出力は 3 1/2 桁の DMM IC(ICL7136)の COMMON
入力と LO 入力に供給されます。
(わかりやすくするために 3 1/2 桁
のディスプレイとその接続は省略しています)R2 と C7 は簡単な
RC フィルタを構成します。U3 は高入力インピーダンスなので、
C7 を小さい値にすることができます。U4(AD589)は、U3 を調整
するために使われる 1.23V 外部基準電圧です。この回路の調整を行
うためには、R5 を調整して、ICL7136 の REF HI 入力と REF LO 入
力の間に 100mV の基準電圧を得ます。
AD22050 の入力ゲインの変更
AD22050 は、入力プリアンプと出力バッファとの 2 段で構成され
ています。AD22050 プリアンプのゲインは、入力 1 番ピンと 8 番
ピンからその出力の 3 番ピンまでの間が  10 であり、出力バッファ
のゲインが  2 であるので、全ゲインが  20 になります。多くの
アプリケーションでは、 ゲインは 20 より大きいか小さい値が要
図 15. 20 を超えるゲイン用に設定された AD22050
AD22050 プリアンプの出力には 100kΩ(±1%)の出力抵抗が接続
されてるので、4 番ピンからグラウンドの間に外部抵抗を接続する
ことにより(図 16)、ゲインをR/(100+R)の比率で下げることがで
きます。(この場合もRはkΩ単位)ただしAD22050 を低ゲインに
設定するときは、プリアンプの出力ドライブ能力を超えないよう
に注意してください。なぜならば、 上記のように 4 番ピンーグラ
ウンド間に抵抗を接続し 10 倍ゲインにした場合、プリアンプは、
AD22050 のバッファ出力段が飽和するより前に飽和する可能性が
あるためです。
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図 16. 20 以下のゲインに設定された AD22050
出力スケーリング機能のあるAD736 単電源回路
0V 入力、0V 出力の回路は、差動アンプ AD22050 を AD736 ととも
に使っても、実現できます。この回路を図 17 に示します。AD22050
は、COMMON と VOUT の差を 20 の固定ゲインで増幅し、
0~200mV
の入力範囲を 0~4V に変換します。AD22050 の出力はグラウンド
から約 20mV の範囲まで可能であるため、1%の読取り精度でのこ
の回路の有効範囲は、100mV~4V の DC 出力に対して 10mV~
200mV の AC RMS 入力です。1%以下の読取り誤差でのこの回路の
帯域幅は、10mVrms 入力で 40Hz~6kHz であり、200mVrms 入力で
36kHz になります。
出力ローパス・フィルタを追加するには、AD22050 の 3 番ピンと
4 番ピンの接合部からグラウンド間にコンデンサを接続します。こ
のフィルタの−3dB カットオフ周波数は次式で表すことができます。
f 
1
2 C  100 k
(15)
ここで、
C の単位はファラッドです。
あるいは、1μF につき f = 1.59Hz
になります。
4~20mAトランスミッタを使った
電流測定値の送信
交流電流を測定し、その結果を 4~20mA の電流出力で送信するこ
ともできます。図 18 は、プロセス制御回路で使用する 0~10mV AC
RMS 入力、4~20mA 出力の電流測定サブシステムを構成する
すべての固定抵抗は 1%、RN55C
図 17.
AD736 と AD22050 を使用して、20 のゲインとオプション
のフィルタリング機能を備えた単電源回路を作成できます。
AD22050、AD736、AD694(4~20mA トランスミッタ)です。
この回路は、これまでの回路で紹介した技術をもとにしています。
たとえば、AD22050 は、差動入力、シングルエンド出力の電流セ
ンサーになります。ここで AD22050 は、これまでのように20 の
ゲインで動作し、AD736 の低インピーダンス入力(8kΩ、1 番ピン)
を駆動します。
AD22050 と AD736 は低消費電力であるため、AD694 の 7 番ピン(リ
ファレンス出力)
から供給される 10V を電源として使用できます。
AD694 は+24V 単電源で動作します。この回路は単電源で動作する
ため、AD694 の 10V 出力の半分
(つまり 5V)で AD736 の COMMON
(8 番ピン)入力をバイアスする必要があります。それは R5 と
(AD694 の内部 10kΩ 抵抗と並列に接続される)R8 を用いて、
AD694 の 4 番ピンに分圧器を作ることにより可能です。
AD694 のバッファ・アンプは、AD736 の 6 番ピンの出力とこの
注:
すべての固定抵抗は 1%、RN55C
VIN = 10mV で 60Hz において 5.000V に
フルスケール調整
図 18.
AD694(4~20mA 電流ループ・インターフェース IC)を含む 3 個の IC だけで真の RMS 電流または電圧
を測定する完全な遠隔監視システムを作成できます。回路全体が+24V 単電源で動作します。
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COMMON 電圧 5V との差を増幅します。この差は、0~10mVrms
入力に対して 0~200mV DC の範囲に及び、AD694 から 4~20mA
の電流出力を生成します。
R2 はゲイン調整に使用します。R5 と R7 は、AD694 のアンプ A1 の
ゲインを10 に設定します。A1 の入力バイアス電流によるオフ
セットを防止するため、R7 が R5 とマッチングします。この回路
の精度は、20~40Hz で 1.2%の読取り誤差、40Hz~1kHz で 1%にな
ります。−3dB 帯域幅は 33kHz です。
AD637 用の 3 極リップル・フィルタ
RMS回路の設計で通常トレードオフの関係になるのは、セトリン
グ時間に対する精度および最小出力リップルです。セトリング時
間を短くするひとつの方法は、可能な限り小さい値のCAVを使用す
るとともに、多極出力フィルタを使って残留リップルを低減する
ことです。図 20 は、AD637 内蔵のバッファを使用して位相が一定
の 5Hzの 3 極ベッセル・フィルタを作成する方法を示しています。
図 21 と 図 22 には、
フィルタのシミュレーション結果を示します。
AD637のアプリケーション
このアプリケーション・ノートの最後に、AD637 RMS/DC コンバー
タを使用して低振幅信号(<100mVRMS)の測定の精度を改善し、セ
トリング時間を短縮する方法を紹介しましょう。
低振幅信号の測定における精度の向上
一般的に RMS/DC コンバータを使用するにあたり問題になるのは、
非常に小さい振幅の信号の測定です。この問題は、バイポーラ入
力信号からユニポーラ信号への変換に使われる内蔵の高精度整流
器(あるいは絶対値回路)のスルーレートの制限により起こりま
す。
注:
*C1 と C2 は、並列に配置された許容誤差 10%の 0.33μF と
0.68μF のコンデンサで構成されています。
すべての固定抵抗は 1%、RN55C。
図 20.
AD637 内蔵バッファを使用して 3 極ベッセル・フィルタを構
成することができます。
図 21.
これらのシミュレーション結果は、AD637 後段リップル・フィ
ルタの振幅、位相、遅延を示します。
この制限を回避するひとつの方法は、固定ゲイン段で入力信号を
増幅して入力信号のダイナミック・レンジをシフトすることです。
図 19 の回路は、AD744 BiFETオペアンプを使った、固定ゲイン 10
倍アンプです。AD744 を選択したのは、低価格、13MHzのゲイン
帯域幅積(G = 2)、75V/μsのスルーレートであるからです。AD744 は
スルーレートが 75V/μsあるので、周波数が 1.2MHzで、振幅が 10V
ピークまたは 7Vrmsの信号をスルーレートの制限なしに増幅する
ことができます。
このアンプはゲイン 10 倍です。1MΩ の入力抵抗によって最大
100pA の入力バイアス電流が得られます。ゲインが 10 倍あり、出
力が AD637 に DC 結合されるので、外付けオフセット調整を使用
します。ゲイン誤差を最小にするために、R4 と R5 の値を選び、
U1 のゲインを G = 1+(R4+R5)/R6 = 10 に設定しました。
すべての固定抵抗は 1%、RN55C
R4+R5 = 9kΩ
図 19.
外部プリアンプを追加すると、低振幅入力信号での AD637 回
路の精度が向上します。ここでは、AD744 BiFET オペアンプ
をゲイン 10 のアンプとして使用しています。
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低振幅信号(<100mVrms)測定のための高精度
AD637 回路
図 23 は、AD637 の精度を高めるために、プリアンプ、後段の 3 極
リップル除去フィルタをどのように使うかを示しています。プリ
アンプを利用しオフセットを 1kHz、VIN = 10mVでゼロに調整する
と、40Hz~20kHzの周波数および 5~500mVrmsの入力に対して、
回路の誤差は読取りの 0.5%以下になります。AD744 プリアンプ自
信の 1%帯域幅は(Fluke 931B RMS差動電圧計を使用して測定)、
10mV入力信号に対して 81kHzです。
参考文献
図 22.
使用部品の値を変えて測定した
AD637 後段リップル・フィルタ結果
Charles Kitchin、Lew Counts、『RMS-to-DC Conversion Application
Guide, Second Edition』、Analog Devices, Inc.、Norwood、MA、1986
Daniel H. Sheingold、Editor、『Nonlinear Circuits Handbook, Second
Edition』、Analog Devices, Inc.、Norwood、MA、1976
C4 と R1 が 1.6Hz ハイパス・
フィルタを形成します。
注:
*C1 と C2 コンデンサは、それぞれ許容誤差 10%の 0.33μF と
0.68μF を並列に接続しています。
特に指定のない限り、すべての固定抵抗は 1%、RN55C です。
図 23.
プリアンプと後段 3 極フィルタを組み合わせることで、低レベルの信号を高精度で測定し、ステップ入力に対して短時間で安定する
AD637 回路を作成できます。
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