Nd-Fe-B 焼結磁石の雰囲気熱処理による防錆技術

新製品紹介
Nd-Fe-B 焼結磁石の雰囲気熱処理による防錆技術
Anti-Corrosion Surface Treatment by Controlled Atmosphere Heat Treatment on Sintered Nd-Fe-B Magnets
Atmosphere heat-treated magnet : M-1
省エネや環境問題への技術対応の
る。したがって,磁石の耐食性はこ
質層は約 2 μ m であり,3 層構造を
一環として,HEV(Hybrid Electric
のような封止環境下で使用される用
有している。その最表面に約 100 nm
Vehicle),EV(Electric Vehicle)の
途への最適化が求められる。
の Hematite(α-Fe 2 O 3 )層が生成し
駆動系やエアコンのコンプレッサー用
日立金属はこの用途に対し,制御
ており,この安定な鉄酸化物層が酸
のモーターを中心に小型化・高効率
した雰囲気中で熱処理を行うことで
化に対するバリア層となり耐食性が
化が進み,基幹材料である Nd-Fe-B
磁石の極表面のみを改質し,耐食性
向上している。
系焼結磁石も高性能化と低価格化へ
を向上させる雰囲気熱処理技術を開
さらに,当処理は表面改質処理で
の対応をさらに進めている。上記の
発した。図 2 に 60 ℃,90 %RH の
あることから,電気 Ni めっきをは
モーターは小型高出力が必要なため
恒温恒湿試験における磁石質量の変
じめとした従来の膜付け表面処理と
高 効 率 IPM(Interior Permanent
化すなわち酸化の度合いを示す。未
は異なり,エッジ面取り工程を必要
Magnet)モーターが採用される。
処理品に対し,雰囲気熱処理品は質
としないため,工程短縮によるコス
図 1 に IPM ローターの外観を示
量増加が少なく,酸化による腐食を
ト低減にも貢献できる技術である。
す。このモーターは名前が示すとお
抑制していることがわかる。図 3 に
図 4 に製品外観を示す。
りローター内に磁石が挿入される構
雰囲気熱処理によって生成した改質
造であり,磁石は接着剤で固定され
層の最表層の断面観察像を示す。改
(NEOMAX カンパニー)
0.8
Grow in mass
(×10-3 kg/m2)
0.7
0.6
Coating-less
0.5
0.4
0.3
0.2
Surface treatment
0.1
0
0
100
200
300
Exposure time(h)
Magnet
50 mm
図 1 IPM ローター外観
Fig. 1 IPM rotor
図 2 60 ℃,
90 %RH における Nd-Fe-B 系焼結磁石の質量変化
Fig. 2 Grow in mass of Nd-Fe-B magnet at 60 ℃,90 %RH
W deposition layer
1st layer
(Hematite)
2nd layer
3rd layer
100 nm
図 3 改質層最表面の透過電子顕微鏡断面観察像
Fig. 3 Cross section TEM image of the top modified layer
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日立金属技報 Vol. 27(2011)
10 mm
図 4 製品外観
Fig. 4 Overview of the products