特集 感光体・太陽電池・ 磁気記録媒体 フィルム基板太陽電池の高効率化技術 High Efficiency Techniques for Film Substrate Solar Cells 松山 秀昭 MATSUYAMA Hideaki 和田 雄人 WADA Takehito 澤柳 悟 SAWAYANAGI Satoshi 富士電機では,フィルム基板太陽電池の高効率化のために微結晶シリコン(µc-Si)を利用した太陽電池を開発している。 µc-Si 太陽電池は高速で製膜する必要がある。高速製膜と変換効率との間にはトレードオフの関係があるが,製膜方法や条 件の開発により,開発当初の 4 倍の製膜速度でも同等以上の高い変換効率が得られた。また,この技術を適用した多接合太 陽電池において,現状のフィルム基板太陽電池を超える高い安定化効率 11.7 % を得た。 . まえがき 製膜速度とセルの変換効率 µc-Si の製膜速度と太陽電池特性の間にはトレードオ 薄膜 Si 系太陽電池の高効率化を目的として,微結晶シ フの関係があり,変換効率の向上には各種条件の検討が リコン(µc-Si)の適用が進んでいる。µc-Si 膜はアモル 必要である。µc-Si 膜はプラズマ CVD(Chemical Vapor ファスシリコン(a-Si)膜に比べて長波長の光を吸収でき Deposition)法で形成するが,製膜速度を速くするとイオ るため,a-Si セルと組み合わせた多接合太陽電池におい ン衝撃による損傷のため変換効率が低下することが分かっ て大きな出力が期待できる。 てきた。 〈注 1〉 本稿で述べる高効率化技術の適用によって得られた製膜 富士電機では,フィルム基板太陽電池の高効率化を目的 に示す。製膜速度 2.2 nm/s に,µc-Si の適用を検討した。µc-Si 太陽電池を高速で形 速度と変換効率との関係を図 成するための技術を開発し,ガラス基板上と同等の高速か で変換効率 9.5 % を得ている。これは,内部からガスが放 つ高効率な太陽電池を得ることができた。さらなる効率向 出されるフィルム基板上に形成した太陽電池でありながら, セルを積層した多接合太陽 ガラス基板上のセル特性(製膜速度 2.3 nm/s で変換効率 電池についても検討し,3 接合太陽電池において高い安定 9.13 %)と同等である。µc-Si 太陽電池の効率向上のため 上のために,µc-Si セルと a-Si ⑵,⑶ 化効率を得ることができた。 本稿では,フィルム基板上に µc-Si 太陽電池を高速で製 10 膜する技術,µc-Si を用いた多接合太陽電池の特性,およ びこのフィルム基板太陽電池モジュールの信頼性について 8 述べる。 変換効率(%) 太陽電池 To increase the efficiency of film substrate solar cells, Fuji Electric is developing microcrystalline silicon (µc-Si) solar cells. It is essential to increase the deposition rate of the µc-Si solar cells. Despite the trade-off relation between the deposition rate and the efficiency, we have succeeded to obtain high efficiency equal to or higher than in the initial stage of development while the deposition rate quadrupled by improving deposition methods and conditions. Applying these techniques to multi-junction solar cells, we have attained a high level stabilizing efficiency of 11.7 %, being higher than that of the present solar cells on film substrates. 微結晶シリコン太陽電池 µc-Si は a-Si 中に結晶 Si の微粒子が混合された材料で 6 熱処理 直流バイアス電圧の印加 p/i 層と ITO 層の最適化 高圧製膜 低圧製膜 4 2 あり,結晶 Si と同等に,1,100 nm までの赤外光を吸収で きる。一方,光の吸収係数が小さく,a-Si 膜の 0.2 µm と 比較して 2 µm 以上の厚い µc-Si 0 0 膜が使用される。太陽電 1 2 3 製膜速度(nm/s) 池は基板上に裏面金属電極,n 層,i 層,p 層と ITO 透明 電極を順次積層した構造であり,光吸収層である i 層が厚 図 µc-Si の製膜速度とセルの変換効率の関係 くなる。このため,µc-Si 薄膜を高速で製膜することが必 要となる。 〈注 1〉イオン衝撃:プラズマ中のイオンが電界によって加速され, 膜の成長面を打撃して薄膜の構造に影響を及ぼす効果をい う。 富士電機技報 2012 vol.85 no.4 308(44) フィルム基板太陽電池の高効率化技術 し,透明電極として ITO 膜をスパッタ法で積層して,太 に行った主な検討を次に示す。 ⒜ µc-Si 膜は,プラズマ CVD 法で形成するが,発電 陽電池(面積 1 cm2)とした。 層の製膜圧力を 0.5 〜 0.8 kPa の低圧力(電極間距離 µc-Si 膜の特性は,膜中の結晶成分の割合を示す結晶化 10 mm)から 2.1 kPa 高圧力(電極間距離 5 mm)に 率をラマン分光スペクトルにおける結晶 Si ピーク(520 することで 2 nm/s 程度の高速な製膜速度において高 cm−1)と a-Si ピーク(480 cm−1)の高さの比(Ic/Ia)で い効率が得られた。 評価した。µc-Si 膜の結晶性を X 線回折法で測定し,Si の ⒝ 発電層以外にも,励起電子の p 層への拡散防止や (2,2,0)面の回折ピーク幅からその結晶子径を算出した。 界面での再結合抑制のための p/i バッファ層の挿入, 太陽電池の特性は,開放電圧 Voc,短絡電流密度 Jsc,曲線 および ITO 透明電極のスパッタ条件最適化が変換効 因子 FF,変換効率ηを求めた。 製膜速度は,シラン流量に比例して増加した後に飽和 率の向上に寄与していた。 ⒞ 直流バイアス法によりイオン衝撃を制御することが し,放電電力を大きくすると,この飽和速度が大きくなっ た。結晶化率はシラン流量の増加とともに減少し,µc-Si 高速化・高効率化に効果があった。 ⒟ 太陽電池の熱処理で効率は向上した。 から a-Si に変化した。高周波電力を大きくすると結晶化 これらの中から高速製膜技術とイオン衝撃の制御技術に 率は増加する傾向にあった。µc-Si 太陽電池の変換効率は ついて述べる。 Ic/Ia が 2 〜 8 で高く,シラン流量に対しても極大を持った。 この近傍における製膜速度と変換効率の関係を図 高速製膜技術 に示す。 放電の電力密度を大きくすると製膜速度は速くなるが,変 シリコン薄膜を高速で製膜するためには,原料ガスと放 換効率は低くなっている。 電電力を増やす必要がある。放電電力が高いとイオン衝撃 分光感度測定から放電電力密度を大きくすると 600 nm が増加するため,太陽電池特性が低下する。これは製膜中 以上の波長領域で量子効率が低下することが分かった。こ に Si 膜がイオン衝撃により損傷を受けるためと考えられ, 放電周波数の高周波化や製膜圧力の高圧力化が行われてい 10 る。 圧力 〈注 2〉 製膜圧力の高圧力化は平均自由行程 を短くし,イオン 変換効率(%) のエネルギーを下げる効果がある。これをフィルム基板 太陽電池に対して適用し,µc-Si 太陽電池を 2 nm/s 程度 ⑴, ⑷ の高速で製膜できる条件を得た。フィルム基板太陽電池の 作製にはステッピングロール方式の製膜装置を用いた(図 ⑸ 3.2 kPa 8 ) 。 0.08 W/cm2 6 2.1 kPa 0.16 W/cm2 4 1.6 kPa 0.32 W/cm2 2 フィルム基板としてポリイミドフィルム上に Ag/ZnO 電力密度 裏面電極をスパッタ法で製膜し,この上に各製膜室で n 0 0.0 0.5∼ 0.8 kPa 0.48 W/cm2 0.8 W/cm2 0.5 1.0 層,i 層,p 層の µc-Si を積層した。その製膜方式は平行 1.5 1.3 W/cm2 2.0 2.5 3.0 製膜速度(nm/s) 平板型の高周波プラズマ CVD 法であり,i 層は 27 MHz と 41 MHz の高周波を用いた。原料ガスはシランと水素で 図 µc-Si 太陽電池の製膜速度と変換効率 あり,n 層と p 層についてはそれぞれホスフィンとジボラ ンを微量に添加した。発電層である i 層の厚さは 2 µm と 10 し,各種の放電電力と製膜圧力に対してシラン流量を変え 3.2 kPa て製膜した。圧力が 0.5 〜 0.8 kPa のときは電極間距離を 変換効率(%) 考慮して電極間距離を 5 mm とした。基板温度は 200 ℃と 巻出し n層 i層 p層 ITO 2.1 kPa 8 〈注 3〉 10 mm,圧力が 1.6 kPa 以上のときはパッシェンの法則 を 巻取り 1.6 kPa 0.5∼0.8 kPa 6 4 2 0 0 5 10 15 20 結晶子径(nm) 図 スッテッピングロール方式の製膜装置 〈注 2〉平均自由工程:気相中の粒子が他の粒子との衝突から衝突ま での間に動く距離の平均をいう。 図 µc-Si 太陽電池の Si 結晶子径と変換効率 〈注 3〉パッシェンの法則:放電開始電圧が圧力と電極間距離の積の 関数で表され,約 1(Pam)で極小となる。 富士電機技報 2012 vol.85 no.4 309(45) 太陽電池 . フィルム基板太陽電池の高効率化技術 れは発電層の深い領域で発生したキャリアが収集できない Vplasma に比例する。この電位をカソードの平均電圧 Vdc と ためであり,µc-Si 内の Si 粒子の結晶性が低下したと考え 電圧振幅 Vrf から,式⑴で表すことができる。 られる。この量子効率の低下は製膜圧力の高圧化によって /2 ……………………………………⑴ Vplasma= (Vdc+Vrf) 回復し,製膜速度 2.0 nm/s で変換効率 8.9 % を得た。 Vplasma : アノードに対するプラズマの電位 に,µc-Si 太陽電池の Si 結晶子径と変換効率の関係 Vdc: カソードの平均電圧 を示す。これらの間には正の相関があり,Si 結晶粒が大 Vrf: カソードの電圧振幅 図 きくなることでキャリアの収集が容易になったものと考え 両電極の面積は等しいので,圧力が高いときはカソード られる。製膜時の放電電力を大きくすると結晶子径は小さ 平均電位がアノードとほぼ等しくなり,プラズマ電位はカ くなり,製膜圧力を大きくすると結晶子径は大きくなる傾 ソード電位振幅の半分となる。 向がある。透過顕微鏡による断面観察からも,変換効率と 図 に,圧力が 1.1 kPa 時のカソード電圧振幅 Vrf とプ 結晶粒の関係が確認された。この結晶粒の変化は,イオン ラズマ電位 Vplasma の変化を示す。直流バイアス電圧 Vbias を 衝撃が膜成長に影響しているものと考えられる。 大きくするとカソード電圧振幅は増加するが,プラズマ電 〈注 4〉 位は単調に減少する。また,カソード側のシース が厚く . なることも観察でき,直流バイアス電圧の印加によりプラ イオン衝撃の制御技術 薄膜 Si の製膜において,プラズマからのイオン衝撃が 太陽電池特性に影響を及ぼすことが見いだされている。例 ズマ電位が制御できることが分かった。 ⑵ イオン衝撃制御と µc-Si 太陽電池特性 の効率(安定化効率)がイオン衝撃の強さとともに低下す ⑹,⑺ ることが報告されている。イオン衝撃の強さは直流バイア 図 に,直流バイアス電圧と µc-Si 膜の結晶化率(Ic/ Ia)の関係を示す。直流バイアス電圧が増加するとともに Ic/Ia も増加する。これは,イオン衝撃の減少によって Si ス電圧の印加により制御でき,電極間距離が比較的広い状 ⑻,⑼ 態でも効率の高い µc-Si 太陽電池が得られた。直流バイア ス電圧の印加はフィルム基板上への製膜にとって有用な技 300 術であることが分かった。 250 電圧(V) ⑴ イオン衝撃の制御方法 直流バイアス電圧を印加したプラズマ CVD 装置の構成 を図 に示す。アノード上に置かれるフィルム基板は,搬 送のためアース電位となっている。このため,カソード平 カソード電圧振幅V rf 200 150 100 プラズマ電位V plasma 均電圧を制御した。 カソードには高周波電力がかかっているため,高周波 50 カットフィルターを介して直流電源を接続した。カソード 0 には負で大きさ Vbias の直流バイアス電圧を印加した。 0 100 200 直流バイアス電圧V bias(V) 300 原料ガスをシランと水素とし,製膜圧力を 0.5 〜 2.1 kPa とした。電極間距離を 10 mm として 27 MHz の高周波で 図 直流バイアス電圧に対するカソード電圧振幅とプラズマ電 位の関係 放電させた。セルの作製はステッピングロール方式の平行 平板型プラズマ CVD 装置を用い,i 層のみ直流バイアス 電圧を印加した。 12 イオン衝撃の強さはアノードに対するプラズマの電位 0.53 kPa 1.1 kPa 10 2.1 kPa 結晶化率 I c / I a 太陽電池 えば,a-Si 太陽電池において光照射 300 時間を行った後 RFカット フィルタ カソード 8 6 4 2 フィルム基板 アノード 0 RF 直流 電源 図 0 100 200 直流バイアス電圧 V bias(V) 300 直流バイアス電圧と µc-Si 膜の結晶化率の関係 〈注 4〉シース:プラズマにおける電荷の遮蔽効果により,これに接 図 直流バイアス電圧を印加したプラズマ CVD 装置の構成 富士電機技報 2012 vol.85 no.4 310(46) する物体の表面に現れる電荷層をいう。 フィルム基板太陽電池の高効率化技術 10 10 0.53 kPa 電流(mA/cm2) 変換効率(%) 9 1.1 kPa 8 2.1 kPa 6 4 2 8 7 6 5 4 3 2 1 0 図 0 100 200 プラズマ電位/圧力 V plasma / P(V/kPa) 0 300 プラズマ電位/圧力と µc-Si 太陽電池の変換効率の関係 1 1.5 2 µc-Si セルを用いた3接合太陽電池の VI 特性 図 節での検討は電極間距離を 5 mm と狭くすることが 必須であったが,直流バイアス電圧の印加によって電極 間距離が広い 10 mm においても高い変換効率が得られる。 トップ i トンネル接合層 n フィルム基板はうねりが発生しやすくなるため,この手法 はフィルム基板での製膜において有用な方法であることが p c-Si セル 分かった。 ボトム i n 微結晶シリコンを用いた多接合太陽電池 フィルム基板 金属電極 ポリイミド 太陽電池を多接合構造とすることで,さらなる変換効率 金属電極 の向上が期待できる。現行製品はアモルファスシリコン 図 µc-Si セルを用いた 2 接合太陽電池の構造 (a-Si)とアモルファスシリコンゲルマニウム(a-SiGe) の セ ル を 重 ね た 2 接 合 太 陽 電 池 で あ り, 波 長 が 800 nm 以下の太陽光を利用している。ボトムセルを a-SiGe か の結晶成長が促進されたものと考えられる。直流バイアス ら µc-Si セ ル に 変 更 す る こ と で, 吸 収 で き る 波 長 領 域 電圧の印加により,シラン流量を増やしても印加しない場 が 1,100 nm の赤外光まで広げることができる。ここでは, 合と同程度の結晶化率を得ることができ,高速化に役立つ。 µc-Si セルと a-Si セルを積層した 2 接合と 3 接合の太陽電 a-Si 太陽電池の特性改善については高圧化や低プラズ 池について述べる。 マ電位が有効であり,安定化効率がプラズマ電位/圧力 ⑴ 2 接合太陽電池 Vplasma/P をパラメータとして整理できることが報告されて ⑺ いる。µc-Si 太陽電池の変換効率について同様に整理した 結果を図 に示す。製膜圧力を高くすることで変換効率が 図 に,µc-Si セルを用いた 2 接合太陽電池の構造を示 ⑴ す。フィルム基板に µc-Si セル,トンネル接合層,a-Si セ ル,ITO 透明電極が順次積層されている。その作製は図 高くなることが改めて確認できる。直流バイアス電圧を に示す製膜装置で行い,トンネル接合層は n 型の µc-Si と 大きくしてプラズマ電位を下げることで,変換効率は高く した。µc-Si セルと a-Si セルは i 層の製膜速度をそれぞれ なった。その後,変換効率は低くなるが,適当な直流バイ 2.0 nm/s と 0.37 nm/s とした。 アス電圧の印加は効率向上に有効であることが分かった。 以上のように変換効率と結晶化率が同時に変化するので, µc-Si と a-Si セ ル の i 層 厚 を そ れ ぞ れ 2.4 µm と 0.7 µm としたとき,初期の変換効率は 12.3 % であったが,光照 各直流バイアス電圧に対してシラン流量によって結晶化率 射を 300 時間行った後の安定化効率は,10.4 % と劣化が大 を変える実験を行った。結晶化率が変わったことによる効 きかった。 率への影響を考慮しても直流バイアス電圧の印加により, ⑵ 3 接合太陽電池 ⑼ 変換効率が向上していた。この実験から圧力 1.1 kPa およ 3 接 合 太 陽 電 池 と し て µc-Si/µc-Si/a-Si の 積 層 びバイアス電圧 150 V のときに,製膜速度 1.5 nm/s で変 構 造 に つ い て 検 討 し た。 各 セ ル の i 層 厚 を そ れ ぞ れ 換効率 9.1 % が得られた。また,µc-Si セルの Si 結晶子径 1.8 µm/1.3 µm/0.3 µm と し た と き, 初 期 の 変 換 効 率 は と同様であった。プラズマ電位の 12.4 % であった。図 0 に,光照射 300 時間後の電流電圧 低下によってイオン衝撃が小さくなり,Si 結晶粒の成長 特性を示す。安定化効率は 11.7 % と高い効率が得られた。 と変換効率の関係も図 が促進されたと考えられる。 富士電機技報 2012 vol.85 no.4 311(47) 太陽電池 a-Si セル 0.5 電圧(V) . 透明電極 p 0 フィルム基板太陽電池の高効率化技術 1.1 参考文献 ⑴ Tsuji, T. et. al. Large - area, light - weight flexible 1.0 規格化出力 solar cells using plastic film substrates, 25th European Photovoltaic Solar Energy Conference and Exhibition/5th 0.9 World Conference on Photovoltaic Energy Conversion, 0.8 Valencia, 2010, p.2740. ⑵ Matsui, T. et. al.: High rate microcrystalline silicon deposi- 0.7 tion for p-i-n junction solar cells, Solar Energy Mat. Solar 0.6 0 1,000 2,000 3,000 Cells, 90, 2006, p.3199. ⑶ Nakano, Y. et. al.: High-deposition-rate of microcrystal- 試験時間(h) line silicon solar cell by using VHF PECVD, Thin Solid 図 2接合太陽電池(6 試料)の高温高湿通電試験 Film, 506-507, 2006, 33. ⑷ 大瀬直之ほか. フィルム基板上への微結晶シリコン太陽電 池の高速製膜技術. 応用物理学会学. 長崎大学. 2010秋, 14p- 太陽電池のモジュール化と信頼性 ZB-11. 太陽電池 ⑸ 市川幸美, 原嶋孝一. アモルファス太陽電池の開発. 富士時 µc-Si フィルム基板太陽電池に対して信頼性試験を行っ た。 ⑴ 試料と試験内容 lized efficiency of large-area amorphous silicon solar cells 試 験 試 料 と し て, フ ィ ル ム 基 板 上 に 2 接 合 太 陽 電 池 (µc-Si/a-Si)を製膜した大面積のモジュールを作製した。 µc-Si 報. 2000, vol.73, no.4, p.249-252. ⑹ Takano, A. et al. Excitation frequency effects on stabi- セルの i 層厚は 1 µm として,これに富士電機独自の 直列接続構造である SCAF(Series-Connection through using flexible plastic film substrate, Jpn. J. Appl. Phys., 42, 2003, Pt.2, L1312. ⑺ 藤掛伸二ほか. プラズマCVDによるa-Si系薄膜製膜時のイ オン衝撃の影響. 電気学会誌論文誌A. 2004, 124, 837. ⑴,⑸ Apertures formed on Film Substrate)構造を形成し,さ らに封止材とフッ素系樹脂でラミネートした。信頼性試験 として通電状態において高温高湿環境(85 ℃,95%RH) で 3,000 時間保持し,太陽電池の出力変化を計測した。 ⑵ 試験結果 この 2 接合太陽電池は Si の膜応力のため反りが大き ⑻ 松山秀昭ほか. 直流電圧を印加した高周波プラズマCVD法. 応用物理学会学. 富山大学. 2009秋, 10a-N-1. ⑼ 松山秀昭ほか. 直流電圧を印加した高周波プラズマCVDに よる薄膜Si太陽電池の形成. 応用物理学会学. 長崎大学. 2010 秋, 14p-ZB-12. ⑽ 大瀬直之ほか. プラスチックフィルム基板上の大面積微結 かったが,直列接続構造を形成することが可能であり,モ 晶シリコン太陽電池. 応用物理学会学. 長崎大学. 2010秋, 14p- ジュール化工程で平坦(へいたん)化することができた。 ZB-10. 信頼性評価として 33 直列の太陽電池を試験し,その結果 ⑽ を図 1 に示す。3,000 時間の試験後に出力低下は 5 % 以内 であり,このモジュールが現行製品と同様に高い長期信頼 性を持つことが確認できた。 松山 秀昭 薄膜太陽電池の開発に従事。現在,富士電機株式 会社技術開発本部電子デバイス研究所次世代デバ イス開発センターマネージャー。応用物理学会会員。 あとがき 微結晶シリコンを用いた太陽電池を高速で製膜する技術 や,微結晶シリコンの多接合太陽電池への適用について述 べた。フィルム基板上の 3 接合太陽電池で 12% 近い安定 化効率が得られた。今後も,フィルム基板太陽電池の高効 和田 雄人 薄膜太陽電池の開発に従事。現在,富士電機株式 会社技術開発本部先端技術研究所基礎技術研究セ ンター材料基盤技術研究部。応用物理学会会員, 高分子学会会員。 率化に向けて,さらなる技術開発を進め,地球温暖化など 環境問題に貢献する所存である。 本研究の一部は,独立行政法人新エネルギー・産業技術 総合開発機構の共同研究および助成研究として実施したも のである。 富士電機技報 2012 vol.85 no.4 312(48) 澤柳 悟 薄膜太陽電池の開発に従事。現在,富士電機株式 会社技術開発本部電子デバイス研究所次世代デバ イス開発センター。 *本誌に記載されている会社名および製品名は,それぞれの会社が所有する 商標または登録商標である場合があります。