CQ 3302

センシング事業部
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神保町三井ビルディング 〒101-8101
2015 年 2 月 17 日
CQ-3 系アプリケーションノート
0. 概要
本資料は、旭化成エレクトロニクス株式会社製の電流センサーCQ-3 系(CQ-330x)を、主にインバー
ター用途にて適切にご使用いただくためのアプリケーションノートです。
本資料は下記の 4 章で構成されます。
1. 一次導体側のレイアウト
2. 信号ラインのレイアウト
3. 放熱フィンのレイアウト
4. その他
1. 一次導体
CQ-3xxx
3. 放熱フィン
2. 信号ライン
Figure 1. 本資料中の CQ-3 系の基板レイアウト名称
CQ-3 系アプリケーションノート (rev.2)
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1. 一次導体側のレイアウト
1.1. 一次導体パターンの幅と長さについて
CQ-3 系に電流を流す一次導体のパターンは、電流印加による過熱を防ぐためになるべくパターン
幅を広く、パターン長さを短くして抵抗値を低くして下さい。具体的には一次導体のパターン厚が
0.070mm の場合、最大電流 1Arms あたり 0.5mm 以上のパターン幅を確保することを推奨します。こ
の推奨パターン幅は一次導体のパターン厚、および層数に反比例して狭くすることができます。
一次導体側のランドパターンは Figure 2 を参考にしてください。
Figure 2. CQ-3 系の推奨ランドパターン
なお上記で示したレイアウトは、一次導体パターンの寄生インダクタンスや寄生キャパシタンスの影
響を低減する効果も期待できます。
1.2. 一次導体パターンの引き方について
一次導体のパターンは、Figure 3a に示すように左右に直線状に伸ばすことを推奨します。もし基板
レイアウトの制約で左右にパターンを伸ばすことができない場合は、Figure 3b に示すように信号側と
は反対側にパターンを伸ばしてください。なお、この 2 通りの一次導体のパターンでは、最大で約 1%
の電流感度の差が存在します。電流感度の精度を必要とされる場合は、上記の差を考慮して電流感
度の評価を行った上でご使用下さい。
なお、仮に Figure 3c のように信号側にパターンを伸ばした場合は、電流感度はデータシートの値と
最大で約 8%の差異を生じます。このパターンの引き方は後述する信号ライン側との絶縁耐圧の観点
からも推奨しません。
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CQ-3xxx
CQ-3xxx
CQ-3xxx
(a) 直線状(推奨)
(b) 信号ピンの逆側
(c) 信号ピン側(非推奨)
Figure 3. CQ-3 系の一次導体パターンの引き方
1.3. 一次電流の方向
適切な出力を得るためには、一次導体パターンに流す電流の向きを考慮する必要があります。
通常の製品ラインナップにおいては、Figure 4 のような配置において電流が左から右に流れる場合に
CQ-3 系の出力は増加し、電流が右から左に流れる場合に CQ-3 系の出力は減少します。
CQ-3xxx
(Top view)
CQ-3xxx
(Top view)
(a) VOUT > Vof
(b) VOUT < Vof
Figure 4. CQ-3 系の一次電流方向と出力との関係
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2. 信号ライン側のレイアウト
CQ-3 系の信号ライン側の名称は下記の通りです。
Table 1. 信号ライン側ピン説明
No.
1
2
3
4
5
6
7
8
名称
TAB1
TEST1
VDD
TEST2
VSS
VOUT
TEST3
TAB2
I/O
PWR
GND
O
-
説明
放熱用端子(GND 接続)
テスト端子(GND 接続)
電源端子 (5V)
テスト端子(VDD 接続)
GND 端子 (0V)
アナログ出力ピン
テスト端子(GND 接続)
放熱用端子(GND 接続)
CQ-3xxx
1
2 3 4 5 6 7
8
Figure 5. 信号ライン側ピン配置
2.1. 信号ラインの幅と長さについて
電気的な外乱ノイズの影響を防ぐため、VDD、VOUT ピンの信号ラインの幅は広く、長さ短くするこ
とを推奨します。
2.2. GND パターンについて
電気的な外乱ノイズの影響を防ぐため、VDD、VOUT ピンの信号ラインの周りはベタ GND で囲む
ようなレイアウトとすることを推奨します。
2.3. ノイズフィルタについて
電源ラインに重畳するノイズを低減するため、VDD-VSS ピン間には 0.1µF のバイパスコンデンサを
できるだけ VDD、VSS ピンの近くに挿入することを推奨します。また、さらに容量の大きい電解コンデ
ンサを並行に挿入することで、瞬時の電源電圧降下への対策となります。
出力ラインに大きなノイズが重畳される場合は、VOUT ピンの信号ライン上にローパスフィルタを挿
入することで改善する可能性があります。ローパスフィルタを使用される場合は、ご所望の応答速度を
満たすことができるように時定数を考慮してローパスフィルタを選定下さい。
2.4. GND への接続について
通常のインバーター基板においては、ノイズ等による MCU の誤動作を防ぐためにパワー系と信号
系の GND は電気的に分離されています。CQ-3 系の VSS は信号系の GND に接続してください。
予期せぬ動作を防止するため、テスト端子(TEST1、TEST3)も同様に信号系の GND パターンに
直接接続してください。
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TEST1, TEST3ピンはVSS( GNDベタ)と直接接続する
OUT, VDDピンの信号パターンはなるべく広く、短く
またGNDベタで周囲を囲む
CQ-3xxx
TEST3
OUT
OUT
CF
N
RF
0.1u
TEST2
P
100u/10V
VSS
GND
+
+5V
VDD
TEST1
VSSはMCU側のGNDベタに
接続する
バイパスコンデンサはCQ-3系の
近くに配置する
出力のフィルタはMCUの
近くに配置する
Figure 6. CQ-3 系の回路構成例
2.5. 絶縁設計について
CQ-3 系のパッケージは、安全規格 IEC/UL60950-1(強化絶縁)および UL508 において 240V 以上
の動作電圧を確保できるように、一次導体と信号ピンとの間に 5mm 以上の十分な沿面距離・空間距
離を有する設計となっています。
CQ-3 系の絶縁耐圧特性を生かすためには、基板上の一次導体パターンと、信号ラインのパターン
との間にも十分な距離を有するようにレイアウトしてください。設計するシステムに対して個別に規格
が定められている場合は、規格の要求に従って沿面距離・空間距離を設けてください。
3. 放熱フィンのレイアウト
CQ-3 系電流センサーは放熱用に 2 つの TAB ピンを有します。この TAB ピンを用いることにより、一
次電流の通電などによる IC 内部の温度上昇を抑えます。TAB ピンはなるべく広い GND ベタに直接接
続してください。
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4. その他
4.1. 他の電流ラインからの影響について
CQ-3 系は一次導体に流れる電流によって発生する磁束密度を検出することで、電流検出を行うセ
ンサーです。そのため、外部磁界の影響を大きく受けます。外乱磁場の影響についてボードレイアウト
上で特に気を付けなければならないのは、他の電流ラインからの影響です。なお、他の電流ラインと
は、CQ-3 系そのものに流れる一次電流のパターン以外の電流パターンを指します。
他の電流ラインからの影響は、基本的には CQ-3 系と電流ラインとの距離の 2 乗に反比例します。
ただし、この関係は電流ラインの方向により変化します。Figure 7 は電流ラインの方向と距離を定義し
ており、距離 A は電流ラインが紙面左右方向に伸びている時の電流ラインとリードフレーム端との距
離を、距離 B は電流ラインが紙面上下方向に伸びている時の電流ラインとモールド端との距離で定義
します。
この時、距離 A および距離 B と出力の誤差との関係は Figure 8 のようになります。グラフ中の凡例
は他の電流ラインに流れる電流値を示しています。
例えば、他の電流ラインに 20A の電流が流れており、それによる誤差を 400mA 以内に抑えたい場
合、距離 A で 6mm 以上、距離 B で 5mm 以上の距離だけ離す必要があります。
距離 A
距離 B
距離 A ... リードフレーム端との距離
距離 B ... モールド端との距離
Figure 7. 他の電流ラインとの距離の定義
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他の電流ラインに流れる電流値
800
20A
700
15A
出力誤差(mA)
600
10A
500
5A
400
300
200
100
0
0
10
20
30
40
距離A(mm)
(a) 距離 A の場合
他の電流ラインに流れる電流値
800
20A
700
15A
出力誤差(mA)
600
10A
500
5A
400
300
200
100
0
0
10
20
30
距離B(mm)
(b) 距離 B の場合
Figure 8. 他の電流ラインからの距離と出力誤差との関係
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4.2. 電源電圧について
CQ-3 系はレシオメトリック出力を有します。レシオメトリック出力とは、センサー出力が電源電圧に
比例して変動する特性の事です。CQ-3 系の出力を A/D コンバーターを用いてデジタル変換するよう
なシステム構成の場合に、A/D コンバーターのリファレンス電圧の変動によって発生するリファレンス
誤差を低減することが可能です。
CQ-3 系の電源電圧が 5V で、A/D コンバーターのリファレンス電圧も 5V の場合の推奨回路を
Figure 9a に示します。CQ-3 系の電源電圧と A/D コンバーターのリファレンス電圧を同じ 5V 電源か
ら直接接続します。このような回路構成を取ることにより、電源が変動しても、CQ-3 系の出力と A/D コ
ンバーターのリファレンス電圧が同じ比率で変動するため、A/D 変換後の出力自体は変動しません。
CQ-3 系の電源電圧が 5V で、A/D コンバーターのリファレンス電圧が 5V 以下の場合は Figure 9b
のような回路構成となり、リファレンス電圧と CQ-3 系の出力を抵抗分割により同じ割合で電圧降下さ
せる必要があります。例えば、A/D コンバーターのリファレンス電圧が 3.3V の場合は、R1、R2 の値は
それぞれ 4.7kΩ、9.1kΩ となります(CQ-3 系の出力電流の定格を超えないようにご注意ください)。
回路寄生成分による信号遅延などの影響を防ぐために、赤線で示した CQ-3 系の電源ピンと A/D コ
ンバーターのリファレンス電圧ピンとの間の配線はなるべく短くして下さい。。
5.0V
5.0V
R1
as short as possible
VREF
VDD
CQ-3xxx
VOUT AIN
VSS
VDD
A/D
CQ-3xxx
VOUT
as short as possible
(a) VDD=VREF
AIN
R2
VSS
VSS
VREF
R2
R1
A/D
VSS
(b) VDD>VREF
Figure 9. A/D コンバーターを使用する際の推奨回路
4.3. 他の磁性部品からの影響について
CQ-3 系はメカニカルリレー、トランスなど、他の磁性部品が近くに存在する場合には影響を受ける
可能性があります。レイアウトの都合上磁性部品を近くに置かざるを得ない場合は、電流感度など特
性に影響をない事をご確認の上、ご使用ください。
4.4. 発熱の影響について
CQ-3 系は Figure 10 に示すディレーティングカーブ内の条件で使用する必要があります。IPM や
IGBT など、発熱の大きい素子を CQ-3 系の近くに置く必要がある場合は、発熱の影響により CQ-3
系の周囲温度がディレーティング条件を超えないように確認を行って下さい。
なお、Figure 10 のディレーティングカーブは弊社提供の評価基板を用いて測定した結果です。基板
サイズや放熱フィンのレイアウト、冷却などによりディレーティングカーブを改善することは可能です。
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Figure 10. CQ-3 系のディレーティングカーブ
4.5. FAQ に関して
弊社ウエブサイトに FAQ を掲載しております。
FAQ の URL はこちら(http://www.akm.com/akm/jp/product/add/magnetic_sensors/0073/)
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免責事項
本資料は参考のために作成されたものであり、本資料に掲載された情報は何らの保証をするもので
はありません。本資料の使用による損害・損失について、旭化成エレクトロニクス株式会社は何らの責
任も負いません。
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