AN1078

ご注意:この日本語版ドキュメントは、参考資料としてご使用の上、最新情報に
つきましては、必ず英語版オリジナルをご参照いただきますようお願い
します。
AN1078
PMSM モーターのセンサレス FOC 制御
著者 :
Jorge Zambada
Microchip Technology Inc.
はじめに
環境意識の高まりにより、エアコンや洗濯機などの
家庭用電化製品の省エネ性能を向上させる高度な
モーター制御手法に対するニーズは今後も高まる
一方であると予想されます。これまで、高度なモー
ター制御ソリューションは独自のソースを利用す
ることでのみ実現されていました。しかし新世代の
デジタル シグナル コントローラ (DSC) の登場によ
り、高度なモーター制御アルゴリズムを低コストで
実装することが可能となりました。
例えばエアコンの場合、モーターの速度変化に対す
る応答性を高める必要があります。省エネ性能と静
音性に優れた製品を作り出すには、高度なモーター
制御アルゴリズムが必要です。こうした環境面の要
求を満たす有力な手法として、FOC (Field Oriented
Control) が注目されています。
本アプリケーション ノートでは、マイクロチップ
社の dsPIC® DSC ファミリを使用した永久磁石同期
モーター (PMSM) のためのセンサレス FOC アルゴ
リズムの実装について説明します。
FOC アルゴリズムを使用する理由
従来の BLDC モーター制御手法では、ステータを
6 ステップ プロセスで駆動するため、出力トルクに
発振が生じます。6 ステップ制御では、一対の巻線
を励磁してロータが次の位置に達すると、モーター
が次のステップに整流されます。ロータ位置はホー
ル センサで判定して、モーターを電子的に整流し
ます。より高度なセンサレス アルゴリズムでは、ス
テータ巻線に発生する逆起電力を使用してロータ
位置を判定します。
6 ステップ制御 ( 台形波制御ともいう ) の動的な応
答は、洗濯機には適しません。これは、負荷が 1 回
のウォッシュ サイクル内で動的に変化すること、お
よび負荷が負荷の種類や選択したウォッシュ サイ
クルによっても変化するためです。更に、フロント
ロード式洗濯機の場合、負荷がドラムの上側にある
ときは重力の力がモーター負荷と反対方向に働き
ます。こうした動的な負荷の変化には、FOC などの
高度なアルゴリズムでなければ対応できません。
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この制御方式は電化製品のモーター制御の低コス
ト化にもきわめて大きな効果があるため、本アプリ
ケーション ノートでは電化製品における PMSM
ベースのセンサレス FOC 制御に焦点を絞って説明
します。また、モーターを液体中で使用する場合や、
ワイヤ ハーネスの設置が困難などの理由で位置セ
ンサや速度センサを設置できないアプリケーショ
ンでも、センサレス FOC 方式ならそうした制約な
しに使用できます。PMSM は永久磁石を使用してい
るロータによって一定のロータ磁場が生じるため、
電化製品で使用するときわめて高い効率を実現で
きます。加えて、ステータの磁場は巻線の正弦波分
布によって生成されます。誘導モーターに比べ、
PMSM モーターには小型でパワフルという特長が
あります。
しかも、
ブラシを使用しないので DC モー
ターに比べ電気的ノイズが少ないのも特長です。
モーター制御にデジタル シグナル コント
ローラを使用する理由
dsPIC DSC には、次に示すようなモーター制御に理
想的な周辺モジュールが内蔵されているため、洗濯
機やエアコンのコンプレッサなどの電化製品に適
しています。
• パルス幅変調 (PWM)
• ADC (Analog-to-Digital Converter)
• 直交エンコーダ インターフェース (QEI)
コントローラ ルーチンの実行とデジタル フィルタ
の実装に dsPIC DSC を使用すると、MAC 命令と小
数演算を 1 サイクルで実行できるため、コードを最
適化できます。また、dsPIC DSC には飽和保護ハー
ドウェアが用意されているため、飽和機能が必要な
処理でオーバーフローを回避できます。
モーター制御では電流センサがきわめて重要な機
能であるため、DSC には高速で柔軟な A/D 変換機
能が求められます。dsPIC DSC の ADC は、入力サ
ンプルを 1 Msps の速度で変換でき、入力を 4 つま
で同時に処理できます。ADC には複数のトリガ オ
プションがあり、安価な電流センサ抵抗を使用して
巻線の電流を計測できます。例えば、PWM モジュー
ルで A/D 変換をトリガできる機能を利用すると、特
定のタイミングで入力を検知する ( スイッチング ト
ランジスタを使用してセンサ抵抗に電流を流す ) 電
流センサ回路を安価で実装できます。
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デジタル シグナル コントローラによる
モーター制御
dsPIC30F モーター制御ファミリは、次の種類を含
む一般的なモーターの多くを制御できるよう、専用
の設計がなされています。
•
•
•
•
AC 誘導モーター (ACIM)
DC ブラシ モーター (BDC)
ブラシレス DC モーター (BLDC)
永久磁石同期モーター (PMSM)
dsPIC30F モーター制御ファミリに基づくアプリ
ケーション ノートは、これまでにいくつか公開さ
れています (「参考文献」項参照 )。これらのアプリ
ケーション ノートは、マイクロチップ社のウェブ
サイト (www.microchip.com) で入手できます。
本アプリケーション ノートでは、dsPIC30F6010A
の特にモーター制御に適した周辺モジュール ( モー
ター制御 PWM および高速 ADC) を利用して PMSM
のセンサレス FOC を実行する方法について説明し
ます。dsPIC30F6010A の DSP エンジンは、ここで
必要となる高速算術演算をサポートしています。
DMCI (Data Monitoring and Control
Interface)
DMCI (Data Monitor and Control Interface) は、
MPLAB® IDE への迅速で動的な統合が可能です。一
定範囲内の値、オン / オフ状態、ディスクリート数
値で変数を制御してアプリケーションの動作を決
定するようなプロジェクトで使用します。必要に応
じて、アプリケーションのフィードバックはグラ
フィカルにも表現できます。例えば、モーター制御
やオーディオ処理アプリケーションなどがこれに
該当します。
アプリケーションの特長
本アプリケーション ノートの目的は、マイクロチッ
プ社のデジタル シグナル コントローラを使用して
PMSM のセンサレス FOC をソフトウェア ベースで
実装する方法を解説することにあります。
この制御ソフトウェアの特長は次のとおりです。
• PMSM のベクトル制御を実装。
• 位置および速度の推定アルゴリズムにより、位置
センサが不要。
• メイン モーターとしては定格 1.5 kW のエアコン
用コンプレッサを想定。
• 速度範囲は 500 RPM ~ 7300 RPM。
• 制御ループの周期が 50 µsec のとき、ソフトウェ
アが要求する CPU への負担は約 21 MIPS (CPU 全
体の約 2/3)。
• アプリケーションには 450 バイトのデータ メモ
リ ストレージが必要で、ユーザー インター
フェースを含めると約 6 K バイトのプログラム
メモリが必要。このメモリ要件を満たせば、
dsPIC30F デバイス ファミリで最も小型で安価な
dsPIC30F2010 ( 本稿執筆時点 ) でも十分に動作し
ます。
• オプションの診断モードを有効にすると、内部
プログラム変数をオシロスコープ上でリアルタ
イムで観測可能。この機能により、制御ループの
調整が容易です。
• 本アプリケーション ノートの内容は、dsPIC30F
および dsPIC33F ファミリのすべてのモーター制
御デバイスに適用可能。
DMCI には次の特長があります。
• 9 つの制御用スライダーと 9 つの制御用 [Boolean]
( チェックボックスのオン / オフ ) ( 図 1 参照 )
• 35 の制御用入力フィールド ( 図 2 参照 )
• 4 つのグラフ ( 図 3 参照 )
このインターフェースでは、スライダーや数値の直
接入力、または [Boolean] チェックボックスなどを
自由に組み合わせてプログラムのシンボル ( 変数 )
を動的に割り当てることで、プロジェクトに即した
ナビゲーションが可能です。そして、これらのコン
トローラをインタラクティブに操作して、MPLAB
IDE 内のプログラム変数の値を変更できます。グラ
フは、プログラムで生成されたデータを表示するよ
う動的に構成できます。
注:
DMCIツールの機能は変更されることがあ
ります。上記の DMCI ツールに関する情報
は、本稿執筆時のものです。
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図 1:
[DYNAMIC DATA CONTROL] インターフェース
図 2:
ユーザー定義データの入力フィールド
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図 3:
データのグラフ表示画面
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システム概要
インバータの左側に示した最初のトランジスタは
力率補正 (PFC) 用のもので、本アプリケーション
ノートではカバーしていません。
図 4 に示すように、モーターのシャフトには位置セ
ンサがありません。その代わりに、インバータの一
部である低インダクタンスの抵抗を使用してモー
ターの電流を計測しています。モーター巻線を駆動
するパワー段として、3 相インバータを使用してい
ます。パワー インバータに組み込まれた電流セン
サおよびフォールト生成回路が、システム全体を過
電流から保護します。
本アプリケーション ノートで基準とするハード
ウェアは dsPICDEM™ MC1 モータ コントロール開
発ボード (DM300020) であり、マイクロチップ社の
ウェブ サイト(www.microchip.com)で入手できます。
電源モジュールには、低電圧用 ( 最大 50V) と高電
圧用 ( 最大 400V) の 2 種類があります。本アプリ
ケーション ノートでは、改造された高電圧電源モ
ジュール (DM300021) を使用しています。これらの
モジュールについては、付録で詳述します。
図5に、この3相トポロジと電流センサおよびフォー
ルト生成回路の実装方法を示します。
図 4:
システム概要
3-Phase
Inverter
PWM1H
PWM1L
PWM2H
3-Phase
PMSM
Buffer
Fault Reset
PWM2L
PWM3H
PWM3L
OE
RD11
dSPIC30F6010A
RE9
AN0
AN1
FLTA
Ia
Ib
Over Current
VR2
AN7
Starting Torque Demand
VR1
AN2
RG6
RD0
RD1
RD2
RD3
RD13
RC3
RC1
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Speed Demand
Start/Stop
S4
User’s Interface
DB4
DB5
DB6
LCD
DB7
EN
RS
R/W
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図 5:
3 相トポロジ
Optional Power Factor Correction
PWM1H
PWM2H
PWM3H
PWM1L
PWM2L
PWM3L
115/230
PMSM
Motor
VAC
Fault
<
Current
Limit
Ia
Ib
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フィールド オリエンテッド制御 (FOC)
視点の問題
FOC ( いわゆるベクトル制御 ) の動作原理を理解す
る方法の 1 つは、座標参照系の変換プロセスを頭の
中でイメージすることです。AC モーターの動作を
ステータ側から見ると、ステータには正弦波電流が
入力されるように見えます。この時変信号により、
回転磁束が生じます。ロータの速度は、回転磁束ベ
クトルの関数で決定します。静止した視点で見る
と、ステータ電流と回転磁束ベクトルは AC 量のよ
うに見えます。
ここで、自分がモーターの内部に入り、回転する
ロータの横を、ステータ電流によって生じる回転磁
束ベクトルと同じ速度で回転していると考えてみ
てください。この視点で定常状態のモーターを観察
すると、ステータ電流は定数値のように見え、回転
磁束ベクトルは静止しています。
ベクトル制御のまとめ
次に、間接ベクトル制御についてまとめます。
1.
3 相ステータ電流を測定します。この計測によ
り、ia と ib の値が得られます。ia、ib、ic の間に
は次の関係が成り立つので、ic の値は計算で求
められます。
ia + ib + ic = 0
2.
3 相電流を 2 軸系に変換します。この変換によ
り、計測値 ia および ib、そして計算値 ic の 3 つ
から変数 iα と iβ が得られます。iα と iβ は、ス
テータの視点から見ると時変直交電流値です。
制御ループの最後のイテレーションで計算さ
れた変換角度を使用して、2 軸座標系をロータ
磁束に合わせて回転します。この変換により、
iα および iβ から変数 Id および Iq が得られます。
Id と Iq は、回転座標系に変換された直交電流で
す。定常状態では、Id と Iq は定数となります。
Id と Iq、およびそれぞれのリファレンス値を使
用して、偏差信号を生成します。
• Id のリファレンスがロータ磁束を制御します。
• Iq のリファレンスがモーターのトルク出力を
制御します。
• 偏差信号は PI コントローラに入力されます。
• コントローラから Vd と Vq が出力され、こ
の電圧ベクトルがモーターに送られます。
vα、vβ、iα、iβ を入力として、新しい変換角度
を推定します。この新しい角度に基づいて、
FOC アルゴリズムは次の電圧ベクトルをどこ
に配置するかを判断します。
PI コントローラから出力される Vd および Vq の
値を、新しい角度を用いて回転し、静止座標系
に戻します。この計算により、次の直交電圧値
vα と vβ が得られます。
vα と vβ の値を再び 3 相の値 va、vb、vc に変換
します。この 3 相電圧値を使用して、目的の電
圧 ベ ク ト ル を 生 成 す る た め の 新 し い PWM
デューティ サイクル値を計算します。変換、PI
イテレーション、逆変換、PWM 生成を含むす
べてのプロセスを図 6 に示します。
3.
4.
最終的に必要なのは、ステータ電流を制御して目的
のロータ電流 ( 直接には計測できない ) を得ること
です。ステータ電流は、座標参照系を変換すると、
標準的な制御ループを使用することにより DC 値の
ように制御できます。
5.
6.
7.
本アプリケーション ノートの次項以降で、これら
の各ステップを詳述します。
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図 6:
ベクトル制御のブロック図
NREF
∑
PI
IQREF
∑
Vq
PI
Vα
d,q
3-Phase
Bridge
SVM
-
IDREF
∑
Vd
α,β
PI
Inverse
Park
Transform
Θ
-
Iq
Vβ
d,q
Id
α,β
iα
iβ
Park
Transform
Position
Speed (ω)
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Position and
Speed
Estimator
Inverse
Clarke
Transform
ia
α,β
a,b,c
ib
Clarke
Transform
Vα
Motor
Vβ
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座標変換
PI 制御
一連の座標変換により、トルクと磁束の時不変値
は、典型的な PI 制御ループで間接的に決定および
制御できます。この処理は、まず 3 相モーター電流
の計測から始めます。事実上、これら 3 つの電流の
瞬間的な合計は 0 になります。つまり、3 つの電流
値のうち 2 つを計測するだけで、残りの 1 つを決定
できます。このため電流センサは 2 つで済み、ハー
ドウェア コストを削減できます。
相互に影響する 3 つの変数を個別に制御するため
に、3 つの PI ループを使用します。ロータ速度、
ロータ磁束、ロータ トルクがそれぞれ別個の PI モ
ジュールで制御されます。この実装方法は従来から
使用されているもので、図 9 に示すように
(Kc*Excess) 項を使用して、積分のワインドアップ
を制限します。Excess は、無制限出力 (U) から制限
出力 (Out) を減じて求めます。Kc 項と Excess を乗
算し、積分の累積 (Sum) を制限します。
dsPIC DSC では、3 相電流計測を 1 つのシャントで
実装することも可能です。詳細はマイクロチップ社
までお問い合わせください。
図 9:
PI 制御
InRef
クラーク変換
最初の座標変換はクラーク変換といい、ステータ
を基準にした 3 軸の 2 次元座標系を、リファレン
スを維持したまま 2 軸の座標系に移動します ( 図 7
を見るとわかるように、ia、ib、ic は独立した位相
電流です )。
図 7:
クラーク変換
a
b
(c)
β
α
Clarke
b
β
iβ
ia + ib + ic = 0
iα = ia
iβ = (ia +2ib)/√ 3
is
a,α
iα
パーク変換
ここまでの手順で、ステータ電流は軸 α-β と呼ばれ
る 2 軸の直交座標系で表現されています。次の段階
では、これをロータ磁束に合わせて回転する別の 2
軸座標系に変換します。この変換には、図 8 に示す
パーク変換を使用します。この 2 軸回転座標系を、
d-q 軸といいます。Θ は、ロータ角度を表します。
パーク変換
β
q
iα
iβ
θ
Iq
Park
Id
Id = iα cosθ + iβ sinθ
Iq = -iα sinθ + iβ cosθ
d
iβ
Iq
Id
is
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iα
Kp* Err + Ki * ∫Err * dt
Out
FB (Feedback)
Err = InRef - FB
U = Sum + Kp*Err
If (U > Outmax)
Out = Outmax
else if (U < Outmin)
Out = Outmin
else
Out = U
Excess = U - Out
Sum = Sum + (Ki*Err)-(Kc*Excess)
PID コントローラの基礎知識
PID (Proportional Integral Derivative) コントローラの
詳細については、このアプリケーション ノートの
目的からはずれるため省略します。ただし、ここで
は PID の動作の基礎について簡単に説明します。
c
図 8:
∑
θ
α
PID コントローラは閉制御ループにおける偏差信号
に応答して、被制御量を調整することで目的のシス
テム応答を達成することを意図しています。制御対
象となるパラメータは、速度、トルク、磁束などの
測定可能なシステム量です。PID コントローラの利
点は、1 つまたは複数のゲイン値を調整してシステ
ム応答の変化を観察することによって、コントロー
ラを経験論的に調整できることにあります。
デジタル PID コントローラは、周期的なサンプリン
グ間隔で実行されます。システムを適切に制御する
には、コントローラの実行頻度が十分であることが
前提条件となります。制御対象のパラメータの実際
の測定値から目標値を差し引いたものが偏差信号
となります。偏差の符号は、制御入力に必要な変化
の方向を示します。
コントローラの P ( 比例 ) 項は偏差信号を P ゲイン
で乗算したものであり、これによって偏差の大きさ
の関数としての制御応答がPIDコントローラから出
力されます。偏差信号が大きくなるにつれてコント
ローラの P 項も大きくなり、大きな補正量が出力さ
れます。
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時間とともに、P 項の効果によって全体的な偏差が
小さくなっていきます。ただし、偏差がゼロに近づ
くにつれて P 項の効果は小さくなります。多くのシ
ステムにおいて、制御対象のパラメータの偏差はゼ
ロにきわめて近くなりますが、ゼロに収束すること
はありません。この結果、わずかな定常偏差が残る
ことになります。
コントローラの I ( 積分 ) 項は、このわずかな定常
偏差を取り除くために使用します。I 項では、偏差
信号の連続した累積値を計算します。このため、わ
ずかな定常偏差が時間とともに大きな偏差へと累
積されます。この累積偏差信号を I ゲイン ファクタ
で乗算したものが、PID コントローラの I 出力項と
なります。
PID コントローラの D ( 微分 ) 項はコントローラの
速度を高めるために使用され、偏差信号の変化の
レートに応答します。D 項の入力は、直前の偏差の
値から現在の偏差の値を引いて求めます。この偏差
の差分を D ゲイン ファクタで乗算したものが、PID
コントローラの D 出力項となります。
システム偏差の変化が速いと、コントローラの D 項
から得られる制御出力も大きくなります。PID コン
トローラには、D 項を実装していないものもありま
す ( それほど多くはないのですが、I 項を実装しな
いものもあります )。例えば、本アプリケーション
ではモーター速度変化の応答時間が比較的遅いた
め、D 項は使用しません。このような場合に D 項を
使用すると、PWM デューティ サイクルが過剰に変
化してアルゴリズムの動作に影響をきたし、過電流
誤動作が生じる可能性があります。
PID ゲインの調整
PID コントローラの P ゲインは、全体的なシステム
応答を設定します。コントローラを最初に調整する
際は、I ゲインと D ゲインをゼロに設定します。次
に、過剰なオーバーシュートや発振が発生しない範
囲で目標値の変化にシステムが良く応答している
間は P ゲインを増やしていきます。P ゲインの値を
小さくするとシステムの制御が「緩やか」になり、
P ゲインの値を大きくすると「急峻な」制御となり
ます。この時点では、システムが目標値に収束する
可能性は稀です。
P ゲインを適正に選択したら、I ゲインをゆっくり
と増やしてシステム偏差がゼロになるようにしま
す。多くのシステムにおいて、I ゲインはわずかな
量で十分です。I ゲインを大きくしすぎると I ゲイ
ンの影響が P 項の作用を上回り、全体的な制御応答
が遅くなってシステムが目標値付近で発振します。
発振する場合、通常は I ゲインを減らして P ゲイン
を増やすことで問題が解決します。
本アプリケーションには、積分誤差によって出力パ
ラメータが飽和した場合に発生する積分のワイン
ドアップを制限するための項が含まれています。そ
れ以上に積分誤差が増大しても、出力には影響しま
せん。累積誤差が減少するには、出力が飽和を始め
たときの値よりも下まで減少 ( アンワインド ) する
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必要があります。この本来不要な誤差の累積を、係
数 Kc で制限します。多くの場合、この係数は Ki と
同じ値に設定できます。
3 つのコントローラのいずれにも、出力パラメータ
の最大値があります。これらの値は UserParms.h
フ ァ イ ル に 記 述 さ れ て お り、デ フ ォ ル ト で は
SVGen() ルーチンで飽和が発生しないように設定さ
れています。
制御ループの依存関係
本アプリケーションには、3 つの相互依存した PI 制
御ループがあります。外側のループがモーター速度
を制御します。内側の 2 つのループは、変換後の
モーター電流 Id と Iq を制御します。前述のとおり、
Id ループは磁束を制御し、値 Iq はモーター トルク
を制御するという役割を果たしています。
逆パーク変換
PI イテレーションの後、回転軸 d-q に 2 つの電圧成
分ベクトルが得られます。これは、相補的な逆変換
により 3 相モーター電圧に戻す必要があります。そ
のためにはまず、2 軸の回転フレーム d-q を、2 軸
の静止フレーム α-β に変換します。この変換には、
図 10 に示す逆パーク変換を使用します。
図 10: 逆パーク変換
β
q
Vd
Vq
θ
Vα
Inverse
Vβ
Park
Vβ
Vq
d
Vs
Vd
Vα = Vd * cosθ - Vq * sinθ
Vβ = Vd * sinθ + Vq * Cosθ
Vα
θ
α
逆クラーク変換
次に、2 軸の静止座標系 α-β を、ステータの 3 軸 3
相の静止参照座標系に変換します。数学的に、この
変換は図 11 に示す逆クラーク変換で実行します。
図 11: 逆クラーク変換
Vα
Vβ
Inverse
Clarke
Vr1
Vr2
Vr3
β
Vr2
Vβ
Vr1 = Vβ
Vr2 = (-Vβ + √ 3 * Vα)/2
Vr3 = (-Vβ - √ 3 * Vα)/2
Vs
Vα
Vr1,α
Vr3
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空間ベクトル変調 (SVM)
が出力され、T2/T では U60 が出力されるとすると、
この周期の平均が UOUT となります。
ベクトル制御で最後の処理となるのが、3 相モー
ター電圧信号に対するパルス幅変調 (PWM) 信号
の生成です。空間ベクトル変調 (SVM) を使用する
と、3 相のそれぞれに対してパルス幅を生成する処
理は、いくつかの簡単な等式に簡略化されます。こ
の実装方法では、逆クラーク変換が SVM ルーチン
にたたみ込まれており、更に計算が簡略化されてい
ます。
図 13: 平均空間ベクトル変調
T0 = Null Vector
T = T1 + T2 + T0 = PWM Period
UOUT = (T1/T * U0) + (T2/T * U60)
U60(011)
3 つのインバータ出力はそれぞれ、2 つの状態のい
ずれかとなります。つまり、インバータ出力は + バ
ス レールまたは − バス レールのいずれかに接続さ
れるので、出力の状態は全部で 23 = 8 通りが考えら
れます ( 表 1 参照 )。
UOUT
このなかで、3 つの出力がすべて + バスまたは − バ
スに接続された 2 つの状態については、いずれの相
でもライン間電圧が存在しないため、NULL 状態と
見なされます。このような状態は、SVM スターの
原点にプロットされます。その他の 6 つの状態は、
図 12 に示すようにそれぞれ 60 度ずつ異なる回転角
度のベクトルとして表現されます。
T2/T * U60
T1/T * U0
T0 は、有効な電圧が巻線に印加されていない、す
なわちNULLベクトルが印加されている時間を表し
ます。T1 と T2 の値は、一部修正した逆クラーク変
換を使用すれば、それ以外の計算なしで求めること
ができます。Vα と Vβ を逆にすれば、SVM スター
から 30 度シフトした座標軸が得られます。この結
果、6 つのセグメントのそれぞれにおいて 1 つの軸
がそのセグメントの正反対に位置しており、残りの
2 つの軸は対称にセグメントの境界にあります。こ
れら 2 つの境界軸に沿ったベクトル成分の値が、T1
と T2 に 等 し く な り ま す。計 算 方 法 の 詳 細 は、
CalcRef.s および SVGen.s ファイルのソース
コードを参照してください。
図 12: 空間ベクトル変調
U120(010)
U180(110)
U60(011)
U(111)
U(000)
U240(100)
U0(001)
図 14 に示すように、PWM 周期 T において、T1/T
ではベクトル T1 が出力され、T2/T ではベクトル T2
が出力されます。その他の期間は、NULL ベクトル
が出力されます。dsPIC30F はセンター アライン
PWM として設定されており、周期の中央で波形が
左右対称となります。この構成とすることで、毎周
期ごとにライン間で 2 つのパルスが得られます。実
質的なスイッチング周波数は 2 倍になり、
パワー デ
バイスのスイッチング損失を増大させずにリップ
ル電流を低減できます。
U300(101)
空間ベクトル変調処理により、合成ベクトルはすべ
て隣接する 2 つのベクトルの成分の合計として表現
できます。図 13 では、UOUT が目的の合成ベクトル
です。このベクトルは U60 と U0 の間のセクタに存
在します。ある PWM 周期 T において、T1/T では U0
表 1:
U0(001)
空間ベクトル変調のインバータの状態
Phase C
Phase B
0
0
0
0
0
1
0
1
Phase A
Vab
Vbc
0
0
0
1
VDC
0
1
0
VDC
-VDC
1
0
-VDC
VDC
1
0
-VDC
0
1
0
0
0
-VDC
1
0
1
VDC
1
1
1
0
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Vca
Vds
Vqs
Vector
0
0
0
U(000)
-VDC
2/3VDC
0
U0
VDC/3
VDC/3
U60
0
-VDC/3
VDC/3
U120
VDC
-2VDC/3
0
U180
VDC
-VDC/3
- VDC/3
U240
-VDC
0
VDC/3
- VDC/3
U300
0
0
0
0
U(111)
DS01078A_JP - ページ 11
AN1078
図 14: 周期 T における PWM
PWM1
PWM2
PWM3
T0/4
T1/2
T2/2
T0/4
T0/4
T2/2
T1/2
T0/4
T
DS01078A_JP - ページ 12
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AN1078
PMSM モーターのセンサレス FOC 制御
センサレス制御の手法による FOC アルゴリズムの
実装では、位置センサを使用せずにモーター位置を
推定します。図 15 は位置推定機能の概略ブロック
図です。
このアルゴリズムで重要な要素となるのは、FOC で
必要となる整流角度をどのようにして計算するか
という点です。以下、本アプリケーション ノート
の本項では整流角度 (θ) とモーター速度 (ω) の推定
方法について説明します。
モーターの位置と速度は、電流の計測値と電圧の計
算値に基づいて推定します。
図 15: 位置推定機能のブロック図
dsPIC® DSC
ω REF
FOC
Control
V
PWM
A/D
Vcc
PWM1H
PWM1L
PWM2H
PWM2L
PWM3H
PWM3L
Inverter
PMSM
Motor
Fault
θ
Position
and Speed
Estimation
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I
Ia
A/D
ω
Ib
DS01078A_JP - ページ 13
AN1078
モーター モデル
パラメータ F および G の計算
PMSM モーターの位置は、巻線抵抗、巻線インダ
クタンス、および逆起電力で表現される DC モー
ターのモデルを使用することで推定できます ( 図
16 参照 )。
モーター モデルには、個々のモーターに合わせて
修正が必要な 2 つのパラメータがあります。そのパ
ラメータとは F ゲインと G ゲインで、次の関係が
成り立ちます。
図 16: モーター モデル
is
L
R
es
Motor
vs
このモーター モデルから、式 1 によって入力電圧
が得られます。
式 1:
デジタル化したモーター モデル
d
v s = Ri s + L ----- i s + e s
dt
ここで :
is
vs
es
R
L
Ts
F = 1 – Ts•R
L
Ts
G=
L
= モーター電流のベクトル
= 入力電圧のベクトル
定数 R と L は、シンプルなマルチメータで計測し
ます。例えばライン間抵抗を計測した場合、F およ
び G ゲインに使用する R は計測値を 2 で割った値
となります ( 位相抵抗が必要なため )。インダクタ
ンス L の計算にも同じ手順を適用します。例えば、
このアルゴリズムを使用して 8 kHz の制御周波数で
新しいモーターを駆動し、ライン間抵抗の計測値が
5.0Ω でライン間インダクタンスが 10 mH の場合、
モーター モデルのパラメータは次のとおりとなり
ます。
F = 1 – Ts•
(5.0Ω/2)
R
= 1 – (1/8 kHz)•
= 0.9375
L
(10 mH/2)
(1/8 kHz)
T
= 0.025
G= s =
L
(10 mH/2)
= 逆起電力のベクトル
= 巻線抵抗
= 巻線インダクタンス
= 制御周期
次の式を使用して is の解を求めることでモータ電流
が得られる
d1
---i = ⎛–R
---⎞ i + --- ( v – e )
⎝ L⎠ s L s s
dt s
デジタル表現では、この式は次のようになる
is ( n + 1 ) – is ( n )
1
--------------------------------------- = ⎛⎝ – R
---⎞⎠ i s ( n ) + --- ( v s ( n ) – e s ( n ) )
L
Ts
L
is の解を求める
Ts
R
i s ( n + 1 ) = ⎛⎝ 1 – T s ⋅ ---⎞⎠ i s ( n ) + ----- ( v s ( n ) – e s ( n ) )
L
L
または
is (n + 1) = F•is(n) + G•(vs(n) - es(n))
ここで
F = 1 – Ts•R
L
Ts
G=
L
DS01078A_JP - ページ 14
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AN1078
電流オブザーバ
デジタル化モデルとは、ハードウェアをソフトウェ
アで表現したものです。ただし、電流の計測値と計
算値を一致させるために、図 17 に示す閉ループを
使用してモーターのデジタル化モデルを補正する
必要があります。
位置および速度の推定機能は、電流オブザーバが
ベースとなっています。このオブザーバは、式 1 に
示すようにモーター モデルをデジタル化したもの
です。次の変数と定数があります。
•
•
•
•
•
•
•
モーターをハードウェア表現 ( 濃色表示の部分 ) と
ソフトウェア表現の 2 通りで考え、これら両方のシ
ステムに同じ入力 (vs) を与え、電流の計測値 (is) と
モデルによる電流の推定値 (is*) を一致させると、デ
ジタル化モデルの逆起電力 (es*) とモーターの逆起
電力 (es) は同じになると仮定できます。
モーター位相電流 (is)
入力電圧 (vs)
逆起電力 (es)
巻線抵抗 (R)
巻線インダクタンス (L)
制御周期 (Ts)
出力補正係数電圧 (z)
図 17: 電流オブザーバのブロック図
Hardware
is
PMSM
Vs
Slide-Mode
Controller
is*
R
1
d
v - e* - z)
(
i*s = - i*s +
s
L
L s
dt
*Estimated variable
+K
+
Sign(is* - is)
-K
z
逆起電力の推定
デジタル化したモーター モデルの補正には、スラ
イド モード コントローラ (SMC) を使用します。
SMC は、モーターで計測した電流値とモーターの
デジタル化モデルで推定した電流値の誤差の符号
を計算する総和点で構成されます。計算で求めた誤
差の符号 (+1 または -1) を、SMC ゲイン (K) で乗算
します。この SMC コントローラの出力が補正係数
(Z) となります。このゲインをデジタル化モデルの
電圧項に加算し、この処理を電流の計測値 (is) と推
定値 (is*) の誤差が 0 になるまで ( すなわち、電流
の計測値と推定値が一致するまで )、毎制御サイク
ルごとに繰り返します。
補正後のデジタル化モデルは、入力電圧 (Vs) と電流
(is*) に関する変数値が同じであるモーター モデル
となります。デジタル化モデルの補正が完了した
ら、次は補正係数 (Z) をフィルタリングして逆起電
力 (es*) を推定します ( 図 18 参照 )。逆起電力の推
定値 (es*) をモデルに対してフィードバックして、毎
制御サイクル後に変数 es* を更新します。変数 eα お
よび eβ (es のベクトル成分 ) を使用して、θ の推定
値を計算します。
図 18: 逆起電力の推定モデル
d = - R i* 1 (v - e* - z)
i*
+
dt s L s L s s
e*s
From Slide-Mode
Controller
z
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LPF
LPF
efiltered*
s
arctan
eα
eβ
θ*
DS01078A_JP - ページ 15
AN1078
逆起電力フィルタリング
逆起電力とロータ位置の関係
フィルタリングの実現には、式 2 の 1 次デジタル
ローパス フィルタを使用します。
逆起電力を 2 回フィルタリングすると、θ を計算で
きます。es と θ の関係は、図 19 に示すグラフに基
づいて説明できます。
式 2:
1 次デジタル ローパス フィルタ
y ( n ) = y ( n – 1 ) + T2πf c ⋅ ( x ( n ) – y ( n ) )
z をフィルタリングして e* を得るには、T をサンプ
リング周波数 fpwm ( この場合、8 kHz) に置き換えて、
次の式を得る
1
e ( n ) = e ( n – 1 ) + ⎛ -----------⎞ ⋅ 2πf c ( z ( n ) – e ( n ) )
⎝ f pwm⎠
ここで :
e(n)
e(n-1)
fpwm
fc
z(n)
図 19: 逆起電力と θ の関係
1.5
1
eα
eβ
θ
0.5
0
|||||||||| |||||||||| |||||||||| |||||||||||||||||||| |||||||||||||||||||| |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
11
21
31
41
51
61
71
81
91 101
-1.5
= 次の逆起電力の推定値
= 直前の逆起電力の推定値
= デジタル フィルタが計算される PWM
周波数
= フィルタのカットオフ周波数
= フィルタリングされていない逆起電力。
この逆起電力は、スライド モード コン
トローラから出力される
カットオフ周波数の値はスライド モード コント
ローラ ゲインの選択に依存し、
実験的に設定します。
1 つ目のフィルタの出力は、2 つのブロックで使用
します。最初のブロックはモデルそれ自体であり、
次の電流推定値 (is*) と、θ の推定値 (θ*) の計算に使
用します。2 つ目の 1 次フィルタは、モーター モデ
ルの出力信号をよりスムーズにするための計算に
使用します。
DS01078A_JP - ページ 16
-1
-1.5
このグラフのプロットは、逆起電力のベクトル成分
(eα および eβ) とロータ角度 (θ) に関する三角関数を
示しています。逆起電力のベクトル成分の逆正接を
計算し、θ を求めます。式 3 に、この関数をソフト
ウェアで実装する方法を示します。
式 3:
θ の計算
θ = arctan (eα , eβ)
実 際 の 実 装 で は、CORDIC (COordinate Rotation by
DIgital Computer) という反復的数値計算アルゴリズ
ムを使用します。このアルゴリズムは高速で、しか
も浮動小数点の実装ほどメモリ容量を必要としま
せん。本アプリケーション ノートでは、CORDIC ア
ルゴリズムの説明は省略します。
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AN1078
速度の計算
θ の計算時にフィルタ機能を適用しているので、計
算で求めた角度を使用してモーター巻線を励磁す
る前に、位相を補正しておく必要があります。θ の
補正量は、θ の変化の速度、すなわちモーターの速
度によって決まります。θ の補正は、次の 2 段階で
実行します。
• まず、補正前の θ の計算値に基づいてモーター
の速度を計算する。
• 上記で計算した速度にフィルタを適用してから、
補正量の計算に使用する ( 図 20 参照 )。
図 20: 速度計算のブロック図
eα
arctan
eβ
ω=
θ*
m-1
(θ(n) - θ(n-1)) . Kspeed
i=0
Σ
速度の計算は、まず θ の値を m サンプルにわたっ
て累計し、その累計値を定数で乗算します。式 4 に、
本アプリケーション ノートで速度計算に使用する
式を示します。
式 4:
速度の計算
m
ω=
ここで :
Omega (ω)
Theta (θn)
PrevTheta (θn-1)
Kspeed
m
+
ω*
LPF
= モーターの角速度
= 現在の θ の値
= 直前の θ の値
= 目的の速度範囲とするため
の増幅係数
= 累積した差分 θ の数
速 度 計 算 の 信 号 を よ り ス ム ー ズ に す る た め に、
Omega (ω*)に1次フィルタを適用してFilteredOmega
(ω*filtered) を得ます。1 次フィルタのトポロジは、逆
起電力フィルタリングに使用したものと同じです。
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ω*filtered
位相補正
補正前の θ とフィルタリング後の速度を計算した
ら、フィルタリング処理に起因する遅延を除去する
必要があります。これは、モーター速度によって決
まる補正オフセット θ (_OffsetTheta) を、補正前の θ
に追加する形で実行します ( 次式参照 )。
θ*comp = θ* + θoffset
∑ ( θn – θn – 1 ) ⋅ Kspeed
i=0
θ*comp
+
位相補正は、個々のモーターごとに微調整すること
を推奨します。本アプリケーションでは、8 つの速
度範囲に分割して位相補正をしました。スロープの
値および位相補正成分の定数は、各速度範囲で異な
ります。表 2 に、上記の式で使用する位相補正の値
の式を示します。
表 2:
位相補正の式
Speed Range
(FilteredOmega)
Minimum – 0.09375
Phase Compensation Formula
(__OffsetTheta)
θoffset = 0
0.09375 – 0.1875
θoffset = 4ωfiltered + 0.375
0.1875 - 0.2876
θoffset = 2ωfiltered
0.2876 - 0.38095
θoffset = ωfiltered + 0.2876
0.38095 - 0.475
θoffset = ωfiltered + 0.2876
0.475 - 0.568
θoffset = 0.5ωfiltered + 0.5251
0.568 - 0.756
θoffset = 0.25ωfiltered + 0.6671
0.756 - Maximum
θoffset = 0.125ωfiltered + 0.748275
DS01078A_JP - ページ 17
AN1078
位相補正の式の変更
本アプリケーション ノートのソース コードを収録
した ZIP ファイルには、ユーザーが角度補正の式を
計算する際に役立つスプレッドシートが含まれて
います。ここでユーザーは、速度 (RPM) およびそ
の速度で補正する θ の値を入力します。例えば、500
RPM で 位 相 補 正 を 30 度 と す る 場 合 は、[Speed
(RPMs)] フ ィ ー ル ド に「500」と 入 力 し、[Angle
Compensation (Degrees)] フィールドに「30」と入力
します。すると、線のスロープおよび式の定数がス
プレッドシートによって計算されます。
同じスプレッドシートで、ユーザーは速度を RPM
から Q15 のフォーマットに変換するために、次のパ
ラメータを定義する必要があります。
Ts: PWM の周期
Kspeed: 速度定数
m: 1 回の速度計算につき累積した差分 θ の数
図 21: A/D 割り込みサブルーチン
A/D Interrupt
Use Clarke Transform
to Convert
Phase Currents
From 3-Axis to 2-Axis
Use Park Transform
to Convert
2-Axis Currents
to Rotating Coordinate System
Use Slide Mode Controller
to Estimate
Motor Position and Speed
Pole Pairs: モーターの極ペアの数
フローチャート
FOC アルゴリズムは PWM と同じレートで実行され
ます。このアルゴリズムは、PWM からのトリガに
よって、2 つの巻線に対する A/D 変換 (2 つのシャ
ント抵抗およびモーターのリファレンス速度を設
定するポテンショメータを使用 ) が実行されるよう
に構成されています。A/D 割り込みが許可され、ア
ルゴリズムが実行されます。図 21 に、A/D 割り込
みサブルーチンの全体的な実行内容を示します。
Run PI Controllers
for
Currents and Speed
Use Inverse Park Transform
to Convert
Rotating Coordinate System
to Axis Stationary System
Use Inverse Clarke Transform
to Convert
2-Axis to 3-Axis
Use Space Vector Modulation
to Update
PWM Duty Cycle
End of A/D Interrupt
図 22 に、スライド モード コントローラを使用して
モーターの位置と速度を推定する処理を示します。
DS01078A_JP - ページ 18
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AN1078
図 22: モーターの位置と速度の推定
Slide Mode Controller
Use Slide Mode Controller
and Motor Model
to Estimate
Motor Currents
Filter Output From
Slide Mode Controller
to Estimate
Back-EMF
Filter Estimated
Back-EMF
to Create
Smoother Signal
Use Arctangent to Compute
Estimated Motor Position
Based on
Estimated Back-EMF
No
Accumulated Theta count = m?
モーターの起動
逆起電力の推定値に基づくセンサレス FOC アルゴ
リズムでは、逆起電力の推定値を得られるだけの最
小速度が必要です。このため、モーター巻線を適切
な推定角度で励磁する必要があります。この問題に
対処するため、モーター スタートアップ サブルー
チン ( 図 23 参照 ) を開発しました。
モーターが静止しているときにスタート / ストップ
ボタンを押すと、dsPIC DSC が一連の正弦波電圧を
生成してモーターが回転し始めます。モーターは固
定加速度で回転し、FOC アルゴリズムは電流 Id と
Iq を制御します。角度 θ ( 整流角度 ) は、加速度に
基づいて増加します。
図に示すように、位相角度は二乗のレートで増加
し、一定のモーター加速度が得られます。θ が開
ループ ステート マシンで生成されている間も FOC
ブロックは実行され、トルク成分電流と磁束成分電
流を制御します。モーター起動に必要なトルクの目
標値に設定するには、外付けのポテンショメータを
使用します。このポテンショメータは、機械的負荷
特性に応じて経験的に設定されます。この起動サブ
ルーチンにより、モーターを起動させるための一定
のトルクが供給されます。起動処理の終了時には、
ソフトウェアは閉ループのセンサレス制御に移り、
図 6 に示した位置および速度の推定機能によって θ
を取得します。
Yes
Use
Estimated Rotor Position
to Calculate
Rotor Speed
Filter
Estimated
Speed
Compensate Theta
Based on
Speed Calculation
End of
Slide Mode Controller
Subroutine
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DS01078A_JP - ページ 19
AN1078
図 23: モーターの起動
Iq ref
(VR1)
∑
PI
Id ref
∑
Vq
vα
d, q
Vd
3-Phase
α, β
SVM
vβ
Bridge
PI
-
θ
Iq
iα
d,q
ia
α,β
ib
iβ
Id
α,β
a,b,c
Motor Start Up
Position
Motor
θ
t
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AN1078
メイン ソフトウェア ステート マシン
スタートアップ サブルーチンが終了すると、シス
テムはセンサレス FOC 制御に切り替わり、実行ス
レッドに速度コントローラが追加され、前述の方法
でスライド モード コントローラ (SMC) が θ の推定
を開始します。モーターがセンサレス FOC 制御状
態に入ると、リファレンス速度が外部のポテンショ
メータから継続的に読み出されます。また、スター
ト / ストップ ボタンを監視して、ボタンが押される
とモーターを停止します。
FOC アルゴリズムは、ソフトウェア ステート マシ
ンとして視覚化するとよく理解できます ( 図 24 参
照 )。最初の状態ではモーター巻線に電流は流れて
おらず、システムはユーザーがスタート / ストップ
ボタン ( 開発ボードの S4 スイッチ ) を押すのを待機
します。ユーザーがスタート / ストップ ボタンを押
すと、システムは初期化状態に入り、すべての変数
が初期値に設定され、割り込みが許可されます。次
に、スタートアップ サブルーチンが実行されます。
このルーチンではトルクの電流成分 (Iq) と磁束の電
流成分 (Id) が制御され、傾斜した整流角度 (θ) が生
成されてモーターが回転を始めます。
システムに何らかの障害が発生するとモーターは
停止し、再び S4 が押されるまで Motor Stopped 状態
に戻ります。このステート マシン図には、ソフト
ウェアのすべての状態およびシステムの状態遷移
を引き起こす条件が記載されています。
図 24: メイン ソフトウェア ステート マシン
Start-Up State
S4 Pressed
Initialization State
Read
Reference
Torque from
VR1
A/D Interrupt
Initialize
Variables for
Motor
Stopped
Running the
Motor
Initialize
Convert
Currents
to
Iq and Id
Measure
Winding
Currents
Variables and
Peripherals
Reset
Initialize
Enable
PI Controller
Parameters
Interrupts
S4 Pressed or FAULT
S4 Pressed or FAULT
Stop Motor
Motor
Running
Start Up
Sensorless FOC State
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Compensate
Theta
Based on
Speed
Increment
Theta
Based on
Ramp
Set New
Duty Cycles
using
SVM
End of Start Up Ramp
A/D Interrupt
Motor
Running
Sensorless
FOC
Read
Reference
Speed
from VR2
Set New
Duty Cycles
using
SVM
Execute
PI Controllers
for Speed,
Iq and Id
Execute
PI Controllers
for
Iq and Id
Measure
Winding
Currents
Calculate
Speed
Estimate
Theta
using
SMC
Convert
Currents
to
Iq and Id
DS01078A_JP - ページ 21
AN1078
DSC ベースの FOC 制御の利点
結論
モーター制御に DSC を採用することによる大きな
利点の 1 つは、共通のデザイン プラットフォーム
を多くの用途に応用できることにより、電化製品の
製造効率が向上することです。これにより、電化製
品のメーカーでは、PMSM など各種モーターにセン
サレス FOC アルゴリズム制御を使用した電化製品
を低コストで多品種展開できるようになります。
本アプリケーション ノートでは、DSC を利用して
センサレス FOC アルゴリズムなどの高度なモー
ター制御方式を電化製品のアプリケーションに実
装する方法を説明しました。dsPIC DSC のプログラ
ミングは MCU のプログラミングと同様なので、電
化製品の設計者は短期間でモーター制御アルゴリ
ズムを設計してプロトタイプをテストすることが
可能です。
このようなソフトウェア ベースのモーター制御設
計では、制御パラメータを変更するだけでカスタマ
イズが可能であり、短期間で多くの市場に対応でき
ます。
多拠点でのコラボレイティブ デザインの手法をと
る電化製品設計チームを配備することの多いメー
カーの場合、ファームウェアの知的財産 (IP) 保護も
大きな問題となります。ある電化製品の FOC を拠
点 A で実装し、ユーザー インターフェース ボード
は拠点 B から取り寄せ、システムの最終インテグ
レーションは拠点Cで実施というようなケースも珍
しくないのです。
また、PMSM、BLDC、ブラシ付き DC (BDC)、
ACIM モーターなどの多岐にわたるモーター プ
ラットフォーム間でのアルゴリズムの移植を容易
にする DMCI など、強力な IDE ベースのツールが
用意されているため、モーター制御の微調整も容
易になります。
マイクロチップ社からは、こうしたパラメータの調
整を支援するリソースが数多く提供されています。
詳細は、弊社の担当セールス エンジニアまたはア
プリケーション エンジニアまでお問い合わせくだ
さい。
このような設計手法では、各設計チームの所有する
IP の扱いが問題になることがよくあります。マイク
ロチップ社の dsPIC DSC ファミリには CodeGuard ™
セキュリティ機能があり、コラボレイティブ デザ
イン環境における IP の保護をサポートします ( 詳細
は www.microchip.com/codeguard 参照 )。
DS01078A_JP - ページ 22
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AN1078
ボードの改造 ( 図 25 参照 )
付録
手順 1:
ハードウェア リソース
大電流用ジャンパを追加し、電源とデジタル
信号のグランドを共通にする。
本センサレス FOC アプリケーションの実装に使用
するハードウェアのコンポーネントは、次のとおり
です。
手順 2:
• dsPICDEM™ MC1 モータ コントロール開発ボー
ド (DM300020)
• dsPICDEM™ MC1H 3 相高電圧電源モジュール
(DM300021)
手順 3:
• 東芝キャリア製コンプレッサ モデル HD187X1S12FD
MC1 開発ツールはマイクロチップ社のウェブ サイ
ト (www.microchip.com) で入手できます。コンプレッ
サを既にお持ちの場合は、次のモーター パラメー
タを参照してください。
実装済みの電流センサ シャント抵抗を交換
する。
電源モジュールのジャンパ設定を変更する。
手順 4:
ホール効果センサからのフォールト信号を
バイパスする。
手順 5:
選択抵抗を取り付けて、フィードバック電流
センサ回路を有効にする。
磁極数 :
4 (2 極対 )
速度範囲 :
900 RPM ~ 7200
RPM
公称出力 (P):
750 W
巻線抵抗 (R):
0.70
上記の改造後は、電流センサとしてはホール タイ
プの電流センサは使用できません。また、改造後は
ホール センサの過電流フォールトも無効になりま
す。ただし過電流フォールトのためのシャント過電
流フォールトは有効です。
巻線インダクタンス平均 (L):
7.35 mH
ボードの取り外し方
電源のカバーを開ける前に ( 図 25 参照 )、次の手順
に必ず従ってください。
公称電流 (I):
6.0 ± 0.3 A
ライン間の逆起電力定数 :
0.0228 Vrms/RPM
トルク定数 :
0.39 N m/A
ハードウェアの改造
購入直後の状態では、高電圧電源モジュールの公称
出力は 0.8 kVA です。PMSM のエアコン用コンプ
レッサを、上述のパラメータに表される負荷で駆動
するには、この電源モジュールを改造する必要があ
ります。この改造を完了するには、ボードを筐体か
ら取り外す必要があります。
ここで説明する改造は、システム設計上必要なもの
として許可されています。いうまでもなく、ユーザー
の判断でこれ以外の改造をした場合の機能性や安全
性は保証できません。なお、適任である有資格者の
みがシステムを使用するようにしてください。
注:
詳細は『dsPICDEM™ MC1H 3-Phase High
Voltage Power Module User’s Guide』
(DS70096) を参照してください。
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• システムへの電力を完全に遮断する。
• 内部放電回路により DC バス電圧が安全なレベル
まで下がるまで、3 分以上待つ。上部換気口から
見える赤の LED バス電圧インジケータが消灯す
るのを確認する。
• 次に進む前に、7 ピン出力コネクタの DC 端子の
+ と − の間の電位を電圧計で測定し、完全に放
電していることを確認する。このときの電圧は
10V 未満となる。
• これで、システムは安全に作業できる状態になる。
• システムからすべてのケーブルを取り除く。
• 筐体およびヒートシンクの上部と下部にカバー
を固定しているねじを外す。
• 電源ユニットのヒートシンクを持ちながら、カ
バーを前方にスライドさせる。
カバーを外してボードが外に出たら、図 26 ~図 30
に詳述する手順に従ってください。
DS01078A_JP - ページ 23
Step One
Establish common power and digital ground
by adding high-current jumper
(See Figure 26)
Step Two
Replace motor current sensing
shunt resistors
(see Figure 27)
Step Three
Configure Power Module jumper
settings
(see Figure 28)
Step Four
Bypass Fault signals from Hall
Effect sensors
(see Figure 29)
Step Five
Install feedback current sensing
selection resistors
(see Figure 30)
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図 25: dsPICDEM™ MC1H 3 相高電圧電源モジュールのカバーを開けた状態
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AN1078
図 26: 電源とデジタル信号のグランドを共通にする
Step One: Establish common power and digital signal ground
BEFORE
BEFORE
J5
J5
Because shunt resistors are used to
sense current from the motor,
power and digital signals must use
the same ground.
AFTER
J5
Solder a high-current jumper wire
(AWG 18 minimum) between J5
and J13.
JUMPER
J13
J13
J13
図 27: 電流センサ シャント抵抗を交換する
Step Two: Replace motor current-sensing shunt resistors
R4
R5
R3 To accommodate higher current, the
current-sensing shunt resistors must
be changed from the default value of
25 mΩ/3W to 10 mΩ/3W.
The recommended method is to cut
shunt resistors R3, R4 and R5 from
the top side of the board and solder
replacement shunt resistors on the
underside of the board.
BEFORE
R3
R4
R5
UNDERSIDE OF BOARD
AFTER
図 28: ジャンパ設定を変更する
Step Three: Configure Power Module jumper settings
The new formula for current measurement is:
V = 2.5 + I/6
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1
2
3
LK4
LK5
LK6
LK7
LK8
LK9
LK10
LK11
LK12
The illustrated jumper settings ensure a gain of 16.67, which
provides a feedback of 6A per 1V. Jumper LK4 provides an
offset of 2.5V to enable measurement of both positive and
negative currents.
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AN1078
図 29: ホール効果センサを無効にする
Step Four: Bypass Fault signals from Hall Effect sensors
The dsPICDEM™ MC1H 3-Phase High
Voltage Power Module uses three Hall AFTER
BEFORE
U3
Effect sensors. Two sensors are used
U3
with winding currents; the third is used
J11
with the IBUS current. These sensors,
WINDING CURRENT LOOPS
and their associated feedback circuitry,
LK15
THROUGH LEM SENSORS
generate Fault signals that must be SENSORS
bypassed for the air conditioning com- BYPASSED
pressor application. Follow these steps:
J15
1. To bypass Sensor U3, unsolder
U4
the wire at J11 and unloop it from
the sensor.
2. Resolder wire to the right side of
jumper LK15.
BEFORE
LEM OUTPUT
ON LK2 JUMPER
2a. Cut the jumper on LK15.
U2
U4
LK18
AFTER
2b. Cut the jumper on LK18.
3.
4.
5.
Repeat for U4, moving from J15 to
LK18.
To bypass the IBUS sensor (U2),
cut the jumper on LK2.
Solder a high-current (AWG 18)
wire from the right side of jumper
LK2 to pin 1 of the input diode
bridge
INPUT DIODE
BRIDGE
PIN 1
LK2
図 30: フィードバック電流選択抵抗を取り付ける
Step Five: Install feedback current sensing selection resistors
BEFORE
To obtain feedback current, the circuit
links must be completed.
AFTER
AFTER
To activate the current feedback for
this application, populate links LK20
and LK21 with 5.6 kΩ resistors.
LK20 & LK21 LINKS
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5.6 kΩ SHUNT RESISTORS
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AN1078
参考文献
DSC を使用したモーター制御に関するアプリケー
ション ノートとして、マイクロチップ テクノロ
ジー社が公開しているのは次のとおりです。
ACIM 制御関連 :
• AN984『An Introduction to AC Induction Motor
Control Using the dsPIC30F MCU』(DS00984)
• AN908『Using the dsPIC30F for Vector Control of an
ACIM』(DS00908)
• GS004『Driving an ACIM with the dsPIC® DSC
MCPWM Module』(DS93004)
BLDC モーター制御関連 :
• AN901『Using the dsPIC30F for Sensorless BLDC
Control』(DS00901)
• AN957『Sensored BLDC Motor Control Using
dsPIC30F2010』(DS00957)
• AN992『Sensorless BLDC Motor Control Using
dsPIC30F2010』(DS00992)
• AN1083『逆起電力フィルタリングによるセンサ
レス BLDC 制御』(DS01083)
PMSM 制御関連 :
• AN1017『dsPIC30F DSC を使用した PMSM モー
ターの正弦波制御』(DS01017)
dsPICDEM MC1 モータ コントロール開発ボードに
関する詳細
•『dsPICDEM™ MC1 Motor Control Development
Board User’s Guide』(DS70098)
•『dsPICDEM™ MC1H 3-Phase High Voltage Power
Module User’s Guide』(DS70096)
•『dsPICDEM™ MC1L 3-Phase Low Voltage Power
Module User’s Guide』(DS70097)
これらのドキュメントは、マイクロチップ社のウェ
ブ サイト (www.microchip.com) で入手できます。
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ノート :
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マイクロチップ社デバイスのコード保護機能に関する以下の点にご留意ください。
•
マイクロチップ社製品は、その該当するマイクロチップ社データシートに記載の仕様を満たしています。
•
マイクロチップ社では、通常の条件ならびに仕様どおりの方法で使用した場合、マイクロチップ社製品は現在市場に流
通している同種製品としては最もセキュリティの高い部類に入る製品であると考えております。
•
コード保護機能を解除するための不正かつ違法な方法が存在します。マイクロチップ社の確認している範囲では、この
ような方法のいずれにおいても、マイクロチップ社製品をマイクロチップ社データシートの動作仕様外の方法で使用す
る必要があります。このような行為は、知的所有権の侵害に該当する可能性が非常に高いと言えます。
•
マイクロチップ社は、コードの保全について懸念を抱いているお客様と連携し、対応策に取り組んでいきます。
•
マイクロチップ社を含むすべての半導体メーカーの中で、自社のコードのセキュリティを完全に保証できる企業はあり
ません。コード保護機能とは、マイクロチップ社が製品を「解読不能」として保証しているものではありません。
コード保護機能は常に進歩しています。マイクロチップ社では、製品のコード保護機能の改善に継続的に取り組んでいます。
マイクロチップ社のコード保護機能を解除しようとする行為は、デジタルミレニアム著作権法に抵触する可能性がありま
す。そのような行為によってソフトウェアまたはその他の著作物に不正なアクセスを受けた場合は、デジタルミレニアム著
作権法の定めるところにより損害賠償訴訟を起こす権利があります。
本書に記載されているデバイス アプリケーションなどに
関する情報は、ユーザーの便宜のためにのみ提供されて
いるものであり、更新によって無効とされることがあり
ます。アプリケーションと仕様の整合性を保証すること
は、お客様の責任において行ってください。マイクロチッ
プ社は、明示的、暗黙的、書面、口頭、法定のいずれであ
るかを問わず、本書に記載されている情報に関して、状
態、品質、性能、商品性、特定目的への適合性をはじめと
する、いかなる類の表明も保証も行いません。
マイクロ
チップ社は、本書の情報およびその使用に起因する一切の
責任を否認します。マイクロチップ社デバイスを生命維持
および / または保安のアプリケーションに使用することは
デバイス購入者の全責任において行うものとし、デバイス
購入者は、デバイスの使用に起因するすべての損害、請
求、訴訟、および出費に関してマイクロチップ社を弁護、
免責し、同社に不利益が及ばないようにすることに同意す
るものとします。暗黙的あるいは明示的を問わず、マイク
ロチップ社が知的財産権を保有しているライセンスは一
切譲渡されません。
商標
Microchip の社名とロゴ、Microchip ロゴ、Accuron、
dsPIC、KEELOQ、KEELOQ ロゴ、MPLAB、PIC、
PICmicro、PICSTART、rfPIC、SmartShunt は、米国およ
びその他の国における Microchip Technology Incorporated
の登録商標です。
FilterLab、Linear Active Thermistor、MXDEV、MXLAB、
SEEVAL、SmartSensor、The Embedded Control Solutions
Company は、米国における Microchip Technology
Incorporated の登録商標です。
Analog-for-the-Digital Age、Application Maestro、
CodeGuard、dsPICDEM、dsPICDEM.net、dsPICworks、
dsSPEAK、ECAN、ECONOMONITOR、FanSense、
In-Circuit Serial Programming、ICSP、ICEPIC、Mindi、
MiWi、MPASM、MPLAB Certified ロゴ、MPLIB、
MPLINK、mTouch、PICkit、PICDEM、PICDEM.net、
PICtail、PIC32 logo、PowerCal、PowerInfo、PowerMate、
PowerTool、Real ICE、rfLAB、Select Mode、Total
Endurance、UNI/O、WiperLock、ZENA、は米国およびそ
の他の国における Microchip Technology Incorporated の商
標です。
SQTP は米国における Microchip Technology Incorporated
のサービスマークです。
その他、本書に記載されている商標は、各社に帰属します。
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ピング デバイス、シリアル EEPROM、マイクロペリフェラル、不揮
発性メモリ、アナログ製品に採用されています。また、マイクロ
チップ社の開発システムの設計および製造に関する品質システムは、
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Fax: 66-2-694-1350
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Tel: 86-756-3210040
Fax: 86-756-3210049
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