富士時報 Vol.73 No.8 2000 軽負荷時省電力機能付 PWM 制御 IC 丸山 宏志(まるやま ひろし) 城山 博伸(しろやま ひろのぶ) まえがき 化の対象として問題視されるレベルとなり,従来のバイポー ラプロセス 製品 から, 高耐圧 CMOS( Complementary 近年,地球規模の環境問題対策として省エネルギー化が 重要視され,電気・電子機器に広く使用されるスイッチン グ電源の高効率化・低消費電力化,特にテレビ・ VTR や MOS)プロセスを 用 いた 低消費電力 タイプの 製品 への 切 換を推進中である。 その 関連製品 として, 8 ピンの CMOS 製品 である 軽負 OA 機器など常時電源を投入したまま使用される製品では, 荷時省電力機能付 PWM(Pulse Width Modulation)制御 待機時消費電力の低減がクローズアップされ,スタンバイ IC「 FA3641, FA3647」を 開発 したので,その 概要 を 紹 (低消費電力)モードを持つなどの工夫をした電源回路も 介する。 増えてきている。 製品の概要 商用交流電源 ( 100 V, 230 V など)を 直流電源 に 変換 する AC-DC 電源用制御 IC として,富士電機では,バイ ポーラプロセスを 使用 した FA531X シリーズを 中心 とし 2.1 特 長 た製品を開発してきた。しかし,最近は待機時などの最小 富士電機 ではすでに,バイポーラプロセスを 用 いた 負荷時には電源用制御 IC 自体の消費電力も,低消費電力 AC-DC 電源用制御 IC として, 表 1 の 製品 を 系列化 して 表1 AC-DC 電源用制御 IC の製品系列 動 作 電 圧 標準消費電流 最大動作周波数 最大デューティ FA5304AP/AS バイポーラ(8ピン) 10∼30 V 9 mA 600 kHz 46% ±1.5 A 2.0 V ±5% 過負荷・過電圧・ 過電流(+検出) 汎用電源 FA5305AP/AS バイポーラ(8ピン) 10∼30 V 9 mA 600 kHz 46% ±1.5 A 2.0 V ±5% 過負荷・過電圧・ 過電流(−検出) 汎用電源 FA5310BP/BS バイポーラ(8ピン) 10∼30 V 9 mA 600 kHz 46% ±1.5 A 過負荷・過電圧・ 過電流(+検出) 汎用電源 フォワード回路 FA5311BP/BS バイポーラ(8ピン) 10∼30 V 9 mA 600 kHz 70% ±1.5 A 過負荷・過電圧・ 過電流(+検出) 汎用電源 フライバック回路 FA5314P/S バイポーラ(8ピン) 10∼30 V 9 mA 600 kHz 46% ±1.5 A 過負荷・過電圧・ 過電流(−検出) 汎用電源 フォワード回路 FA5315P/S バイポーラ(8ピン) 10∼30 V 9 mA 600 kHz 70% ±1.5 A 過負荷・過電圧・ 過電流(−検出) 汎用電源 フライバック回路 FA5316P/S バイポーラ(8ピン) 10∼30 V 9 mA 600 kHz 46% ±1.0 A 過負荷・過電圧・ 過電流(+検出) 汎用電源 フォワード回路 FA5317P/S バイポーラ(8ピン) 10∼30 V 9 mA 600 kHz 70% ±1.0 A 過負荷・過電圧・ 過電流(+検出) 汎用電源 フライバック回路 FA5332P/M バイポーラ(16ピン) 10∼28 V 10 mA 150 kHz 92% ±1.5 A 1.55 V ±2% 5V ±4% 外部同期・ 過電圧・過電流 力率改善 FA13842P/N CMOS(8ピン) 10∼28 V 3 mA 500 kHz 96% −0.4 A +1.0 A 2.5 V ±4% 5V ±5% カレントモード 汎用電源 フライバック回路 FA13844P/N CMOS(8ピン) 10∼28 V 3 mA 500 kHz 48% −0.4 A +1.0 A 2.5 V ±4% 5V ±5% カレントモード 汎用電源 フォワード回路 型 式 プロセス(端子数) 出力ピーク 電流 誤差増幅器 基準 電圧 丸山 宏志 城山 博伸 スイッチング電源用制御 IC の開 スイッチング電源用制御 IC の開 発に従事。現在,松本工場半導体 開発センター IC 開発部。 発に従事。現在,松本工場半導体 開発センター IC 開発部。 機 能 用 途 427( 7 ) 富士時報 軽負荷時省電力機能付 PWM 制御 IC Vol.73 No.8 2000 いる。 今回 の 開発品 では,バイポーラプロセスの FA531X シ リーズと同じ機能に軽負荷時省電力機能を追加した PWM (6 ) 過電流 , 過負荷 , VCC 端子 の 過電圧 ,ラッチ 遮断 , ソフトスタートなど各種保護機能を内蔵している。 表2に主要特性,図2にチップ図を示す。 電源用制御 IC として CMOS プロセスを 用 いた FA3641/ 3647 を製品化した。 高耐圧 CMOS プロセスの採用で制御 IC を低消費電力化 2.2 回路構成・デバイス 今回開発した FA3641 の回路ブロック図を図3に示す。 すると同時に,軽負荷時対応として発振周波数を下げる機 能を内蔵し,スイッチングによる損失を低減することで, 軽負荷時の効率を改善し,少ない部品点数でより低消費電 表2 FA3641/3647の主要特性 (a)絶対最大定格 項 目 力対応のできる制御 IC となっている。 またピン配置は,FA531X シリーズと同様に使用できる ピン配置を採用し,同じ各種保護機能を CMOS 回路で構 特 性 10∼30 V 電源電圧 ソース電流 −0.5 A シンク電流 +1.0 A 出力ピーク電流 成 している。さらに, VCC 端子 の 過電圧保護 を 内蔵機能 30∼500 kHz として 追加 した。パッケージ 外形 は DIP( Dual In-line 発振周波数 Package)と SOP(Small Out-line Package)の 2 種類を 動作周囲温度 −30∼85℃ 用意している。 動作接合温度 125℃ 図1に外観を示す。 (b)電気的特性 IC の主な特長は以下のとおりである。 (1) 30 V 高耐圧 CMOS プロセスの採用で低消費電力を実 項 目 スタートアップ電流 特 性 12 A(標準) 現している。 スタンバイ電流(VCC 端子電圧=14 V) ラッチ時: 50 μA,動作時: 1.9 mA(無負荷) 動作時回路電流(無負荷) 1.9 mA(標準) ラッチ時回路電流 100 A(最大) (2 ) 軽負荷時を FB 端子電圧(出力デューティ)で自動的 に判定し,周波数を低減させ,スイッチング損失を改善 している。 基準電圧 電流制限しきい値電圧 (3) 発振周波数 の 低減 は FB 端子電圧 1.18 V 以下 ( 出力 2 A(最大) 5 V±5% 235 mV(FA3641) −170 mV(FA3647) デューティ 10 %以下)で動作し,切換時の異音発生を 過負荷保護しきい値電圧 3.0 V(標準) 防止するため周波数を FB 端子電圧に応じてリニアに変 VCC 端子 UVLO 回路電圧 16.5 V/9.0 V 化させる。また外付け抵抗により,FB 端子電圧に対す VCC 端子過電圧保護しきい値電圧 る発振周波数の低減率を変えることができる。 CS 端子遮断電圧 32 V±2 V 8.5 V/7.9 V CS 端子オンオフしきい値電圧 0.82 V/0.68 V 止 ( UVLO:Under Voltage Lock-Out) 回路 を 内蔵 し FB 周波数可変開始電圧 1.18 V(標準) ている。 最大デューティサイクル 70%±4% 16.5 V オン/9 V オフ 出力立上り時間( C L =1,000 pF) 50 ns(標準) 出力立下り時間( C L =1,000 pF) 40 ns(標準) (4 ) ヒステリシス特性を持つ VCC 端子の低電圧誤動作防 (5) IS 端子 による 過電流制限 は, +電圧検出 および −電 圧検出の製品を系列化している。 ™ FA3641P/N:IS +極性検出 235 mV ™ FA3647P/N:IS −極性検出 −170 mV 図1 FA3641/3647 の外観 428( 8 ) 図2 チップ図(FA3647) 富士時報 軽負荷時省電力機能付 PWM 制御 IC Vol.73 No.8 2000 VCC 端子に接続された基準電圧発生回路,UVLO 回路, りに REF 端子 を 7 ピンに 出 したため, RT 端子 に 接続 す 出力ドライブ回路,CS 端子電圧検出回路などから構成さ るタイミング抵抗(RT)の値によって通常動作時の発振 れる高耐圧部と,基準電圧発生回路に接続された発振器, 周波数を設定する。図4に発振器部の回路構成を示す。 PWM コンパレータ,過負荷検出回路,過電流検出回路, RT 制御回路 ( RT アンプ)は,プラス 入力 の 電圧 が 軽負荷時周波数可変回路などの低耐圧制御部から構成され RT 端子の電圧と等しくなるように制御する。このため, ている。 RT 端子は定電圧となり,外部接続された RT の値によっ て一定の電流が流れる。この電流は p チャネル MOS MP1 2.2.1 デバイス 使用したプロセスは,30 V 耐圧の高耐圧 MOS デバイス から 供給 され,この 電流 を 基準 にして 1/4 の 電流 が MP2 と 5 V 耐圧の MOS デバイスを使い分ける構成をとってお を 流 れる。 MP2 から MN1 に 流 れた 電流 と 同 じ 値 の 電流 り,高耐圧・低耐圧どちらでも CMOS 回路を構成するこ が MP4 から MP5 を 通 して CT に 充電電流 として 供給 さ とができる。 れ,また MN3 からは MN5 を通して放電電流として引き また,通常の CMOS プロセスで使用するソース・ドレ 抜かれる。このとき,MP5,MN5 は同じゲート信号が入 インを作る不純物濃度の高い領域と,高耐圧用に使用する 力されるので,どちらか一方がオンして他方はオフとなっ 濃度の低い領域を組み合わせることによって,npn トラン ている。これによって CT に対して定電流で充放電が行わ ジスタ,pnp トランジスタ,ツェナーダイオードのバイポー れ,発振波形が作られる。CT には 3 V と 1 V のレベルを ラデバイスを構成することができ,基準電圧発生回路は, 検出するコンパレータが接続されており,3 V を超えると この npn トランジスタを 使 ったバンドギャップ 基準電圧 放電へ,1 V より下がると充電へと RS フリップフロップ 回路を採用している。 の状態が切り換わり,MP5,MN5 のゲートを切り換える 2.2.2 発振回路 ことで 3 V ー 1 V 間で発振を継続する。 今回の開発品では,軽負荷時周波数可変機能を内蔵した 発振周波数を可変する部分は,RT アンプのプラス入力 のでこの部分の動作について説明する。発振器は,タイミ 端子を 2 系統作り,その一方は通常動作時用の 2.5 V を入 ングコンデンサ(CT)を内蔵し,従来品 CT 端子の代わ 力,他方は軽負荷時入力用(RM)として,2系統の入力 のより低い電圧の方を有効に選択する機能を持たせた。RM が 2.5 V より下がった場合,RT 端子電圧が 2.5 V から RM 図3 FA3641 の回路ブロック図 の電圧に下がることで CT の充放電電流が減少し発振周波 CS(8) VCC(6) 数を低減する。 2.2.3 軽負荷時周波数可変回路 0.82V/0.68V REF (7) 5V 5V VCC + REF ENB − 6.5 A 次に RT アンプに入力する RM 電圧と FB 端子電圧の関 0.9mA UVL0 + 係を説明する。図5にこの部分の回路構成を示す。 + − 8.5V/7.9V + − − 16.5V /9V 0.8V 軽負荷時 の 検出 は, FB 端子電圧 で 行 われる。 FB 端子 電圧= 1.18 V( 出力 デューティ 約 10 % に 相当 ) 以下 に 下 3.0V + 4V − FB (2) ENB OUTPUT OUT (5) される 電圧 ( RM)が 2.5 V 以下 になり, 軽負荷動作 に 移 − − − PWM D max 行 する。 RT 端子電圧 を 2.5 V から 低下 させていくことで + OSC 70% RM RT GND (4) R QB FF Q 235mV + S − − 発振周波数を低減していく。 FB 端子電圧=1.18 V → 1 V で 定常時 の 約 1/2 まで 発振 + 周波数 をリニアに 変化 させる。この 周波数低減状態 でも 5V Controlled block RT(1) がった場合に,演算増幅器により変換されて発振器に入力 デューティは通常の制御で FB 端子電圧に応じて可変する。 IS+(3) また 軽負荷回路 は 動作安定化 のため, FB 端子 から R・C 図4 発振回路(OSC) 2.5V REF5V + AMP + RM − 図5 軽負荷時周波数可変回路 MP2 MP3 MP4 MP1 4:1 RT compH − MP5 + compL − MN5 RT(1) CT R 3V FB (2) AMP + RSFF − Q FF QB R CT Rs2 Rf2 MN2 MN3 − − −PWM U + OSC RM RT V2 AMP + 1V − C MN1 70% R + RT D max S V1 Rs1 Rf1 RT(1) 429( 9 ) 富士時報 軽負荷時省電力機能付 PWM 制御 IC Vol.73 No.8 2000 のフィルタを通した電圧で制御を行う。このため応答に遅 からも,負荷が軽い場合には周波数がリニアに低下してい れが発生する場合があり,そのときに異常にパルス幅が広 る様子が確認できる。 くなるのを防止する目的で,別の演算増幅器にて FB 端子 なお,この IC は 軽負荷 になったことを, FB 端子 の 電 電圧 から 変換 された 電圧 を PWM コンパレータに 入力 し 圧で判定しているため,入力電圧が高いほど周波数が低下 て, FB 端子電圧 が 急上昇 した 場合 でも, 通常時 の 最大 を開始する出力電力が高くなる。今回の評価用電源の場合, デューティ 70 %で設定された最大パルス幅を超えないよ 入力 が AC100 V では, 出力 が 約 7 W で 周波数低下 してい うに制限する回路を付加している。 る。一方,入力が AC230 V では,定格出力である約 35 W また, REF 端子 と RT 端子間 に 抵抗 を 接続 することで, が周波数低下を開始する電力になっている。 軽負荷時の FB 端子電圧の変化に対する発振周波数低減比 率を大きくすることができる。 3.3 軽負荷時の効率改善 軽負荷時の効率改善効果を確認するため,同じ評価用電 電源回路への応用 源を従来型の IC で動作させた場合の効率と比較を行った。 比較に使用した従来型 IC は FA5311BP で,機能に関して は軽負荷時の周波数低減機能以外はほぼ同じである。また, 3.1 評価用電源 プロセスはバイポーラプロセスであり, CMOS プロセス 今回,よりユーザーに近い状況で特性を確認するため, この PWM 制御 IC を実際の電源回路へ組み込み,評価を 行った。 図7 発振周波数特性 この電源の主な仕様は次のとおりである。 90 ™入力:AC80 ∼ 264 V,50/60 Hz AC100V 80 ™出力:DC24 V,35 W 70 f sw(kHz) ™保護機能:過負荷ラッチ,過電圧ラッチ,過電流制限 ™発振周波数:75 kHz(定格負荷時) 15 kHz(無負荷時) また,その回路図を図6に示す。 60 50 40 AC230V 30 20 10 3.2 軽負荷時周波数低減機能 0 この IC の大きな特長である軽負荷時の発振周波数低減 0 10 20 P o(W) 30 40 機能を評価用電源で評価した結果を図7に示す。この図7 図6 評価用電源回路図(FA3641) C113 AC80 ∼264V C101 0.22 F R101 510kΩ R102 430kΩ C103 470pF D1 5D11 − − C104 L1C102 470pF 0.22 F F1 250V/3A 2,200pF T1 TH1 − + C105 + 400V/ 220 F ZD1 180V D2 ERA22-10 D3SBA60 D201 +24V 35W L201 10 H YG902C + + C201 2,200 F C202 470 F R108 100Ω R107 680Ω R110 D5 ERA91-02 R109 10Ω R104 130kΩ 4.7kΩ GND R103 130kΩ FG R207 2.4kΩ PC1 R112 0.068Ω 430(10) 100pF PC1 C108 C107 0.1 F R105 47kΩ R115 200kΩ R106 24Ω 8 2 7 3 6 4 5 + C106 10 F FA3641 C109 0.22 F R205 33kΩ IC2 IC1 1 C204 0.022 F Q1 2SK2101 C110 0.22 F R206 1kΩ C203 0.1 F R201 18kΩ R202 1kΩ R203 2.2kΩ D4 ERA91-02 富士時報 軽負荷時省電力機能付 PWM 制御 IC Vol.73 No.8 2000 図8 効率特性(入力 AC230 V) 図9 無負荷時入力電力 90 1.6 80 1.4 FA3641/3647 70 P in(W) η (%) 50 40 従来型IC (FA5311BP) 30 1.0 0.8 0.4 10 0.2 0.1 1 10 FA3641/3647 0.6 20 0 従来型IC (FA5311BP) 1.2 60 0 100 50 100 P o(W) である FA3641/3647 と比較すると消費電力が多い。 250 300 表3 損失改善の効果 電源の効率を比較した結果を図8に示す。条件は入力電 圧が AC230 V の場合である。出力電力が定格付近ではど 150 200 V in (Vac) 損 失(mW) 項 目 FA3641/3647 FA5311 効 果 (mW) ちらの IC も 同 じ 周波数 で 動作 し,また IC の 消費電力 の IC 動 作 損 失 20 100 80 違いも,出力電力に比べるとごく小さいため,効率にほと 起 動 抵 抗 損 失 100 280 180 んど違いは見られない。しかし,出力電力が小さくなると, スイッチング損失 120 600 480 FA3641/3647 は 効率改善効果 が 現 れる。 今回評価 した 電 源の場合,AC230 V において効率を最大で約 30 %改善し ている。 また AC アダプタなどの 場合 ,これを 接続 するセット ( 例 えば,ノートパソコン)を 使用 しないときも, AC ア ダプタ自体はコンセントに接続されたままになっているこ とめると表3のようになる。 今回比較 したこの 両者 の 電源 は, IC が 異 なるだけであ り,言い換えると IC を変更するだけで,一例ではあるが, ここに示したような軽負荷時の効率改善が可能になる。 とがよくある。このとき AC アダプタ内の電源は無負荷の 状態で動作をしており,このときの入力電力はすべて損失 あとがき となる。したがって,省エネルギーに関しこの無負荷時の 入力電力を削減することも大きなポイントとなる。この無 負荷時の入力電力を比較した結果を図9に示す。 軽負荷時省電力機能付 PWM 制御 IC の概要について紹 介した。バイポーラ構成の制御 IC に比べ,CMOS 構成の AC100 V の場合 0.2 W,AC230 V の場合 0.9 W の電力削 IC は, 低消費電力化 に 有利 であり,またロジック 回路 を 減になり,全入力電圧範囲で無負荷時の入力電力が 0.5 W 内蔵しやすいなどの点でも優れ高機能化が可能である。富 以下を達成している。 このように軽負荷や無負荷の状態で,損失を減らし効率 が改善できた主な要因としては,次の点を挙げることがで 士電機では,今回開発した IC 以外にもスイッチング電源 用制御 IC の CMOS 化を進め,市場要求にこたえ,ユニー クな製品を開発していく所存である。 きる。 (1) IC の低消費電流化による IC の動作損失削減 (2 ) IC の低消費電流化による起動抵抗の損失削減 (3) 軽負荷時の周波数低減機能によるスイッチング損失削 減 この効果を,AC230 V 入力無負荷の場合を例に取り,ま 参考文献 (1) 有村健一・野村一郎: スイッチング 電源制御用 IC, 富士 時報,Vol.67,No.2,p.109- 112(1994) (2 ) 丸山宏志: カレントモード 電源用 CMOSIC, 富士時報 , Vol.71,No.8,p.430- 433(1998) 431(11) *本誌に記載されている会社名および製品名は,それぞれの会社が所有する 商標または登録商標である場合があります。