73-8 H 1~4.qxd 08.2.5 4:16 PM ページ1 昭和 40 年 6 月 3 日 第三種郵便物認可 平成 12 年 8 月 10 日発行(毎月 1 回 10 日発行)富士時報 第 73 巻 第 8 号(通巻第 785 号) 昭和 40 年 6 月 3 日 第三種郵便物認可 平成 12 年 8 月 10 日発行(毎月 1 回 10 日発行)富士時報 第 73 巻 第 8 号(通巻第 785 号) 富 士 時 報 I C 特 集 IC特集 聞こえてきますか、技術の鼓動。 本誌は再生紙を使用しています。 定価525円(本体500円) ISSN 0367-3332 73-8 H 2~3.qxd 08.2.8 2:01 PM ページ1 マルチな要求に,マルチでお応えする 電源用パワーIC TSSO-16,SSOP-28,LQFP-48 VCC1 第1チャネル 制御 UVLO 電源 pチャネル ドライバ PNSEL OUT5 pチャネル ドライバ OUT6 OUT4 PGND3 pチャネル ドライバ 第3 チャネル デッドタイム 設定 デッドタイム 設定 第4 チャネル pチャネル/ nチャネル ドライバ 第5 第6 チャネル チャネル 三角波 発振器 RT CT 第2チャネル CS3 社 務 所 1(03)5435-7111 〒141-0032 東京都品川区大崎一丁目11番2号(ゲートシティ大崎イーストタワー) 北 東 北 中 関 中 四 九 海 道 支 北 支 陸 支 部 支 西 支 国 支 国 支 州 支 社 社 社 社 社 社 社 社 1(011)261-7231 1(022)225-5351 1(076)441-1231 1(052)204-0290 1(06)6455-3800 1(082)247-4231 1(087)851-9101 1(092)731-7111 〒060-0042 〒980-0811 〒930-0004 〒460-0003 〒553-0002 〒730-0021 〒760-0017 〒810-0001 札幌市中央区大通西四丁目1番地(道銀ビル) 仙台市青葉区一番町一丁目2番25号(仙台NSビル) 富山市桜橋通り3番1号(富山電気ビル) 名古屋市中区錦一丁目19番24号(名古屋第一ビル) 大阪市福島区鷺洲一丁目11番19号(富士電機大阪ビル) 広島市中区胡町4番21号(朝日生命広島胡町ビル) 高松市番町一丁目6番8号(高松興銀ビル) 福岡市中央区天神二丁目12番1号(天神ビル) 北 関 東 支 店 首 都 圏 北 部 支 店 首 都 圏 東 部 支 店 神 奈 川 支 店 新 潟 支 店 長 野 シ ス テ ム 支 店 長 野 支 店 東 愛 知 支 店 兵 庫 支 店 岡 山 支 店 山 口 支 店 松 山 支 店 沖 縄 支 店 1(048)526-2200 1(048)657-1231 1(043)223-0701 1(045)325-5611 1(025)284-5314 1(026)228-6731 1(0263)36-6740 1(0566)24-4031 1(078)325-8185 1(086)227-7500 1(0836)21-3177 1(089)933-9100 1(098)862-8625 〒360-0037 〒330-0802 〒260-0015 〒220-0004 〒950-0965 〒380-0836 〒390-0811 〒448-0857 〒650-0033 〒700-0826 〒755-8577 〒790-0878 〒900-0005 熊谷市筑波一丁目195番地(能見ビル) 大宮市宮町一丁目38番1号(野村不動産大宮共同ビル) 千葉市中央区富士見二丁目15番11号(日本生命千葉富士見ビル) 横浜市西区北幸二丁目8番4号(横浜西口KNビル) 新潟市新光町16番地4(荏原新潟ビル) 長野市南県町1002番地(陽光エースビル) 松本市中央四丁目5番35号(長野県鋳物会館) 刈谷市大手町二丁目15番地(センターヒルOTE21) 神戸市中央区江戸町95番地(リクルート神戸ビル) 岡山市磨屋町3番10号(住友生命岡山ニューシティビル) 宇部市相生町8番1号(宇部興産ビル) 松山市勝山町一丁目19番地3(青木第一ビル) 那覇市天久1131番地11(ダイオキビル) 道 北 釧 道 道 青 盛 秋 山 新 福 い 水 茨 金 福 山 松 岐 静 浜 和 鳥 倉 山 徳 高 小 長 熊 大 宮 南 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 1(0166)68-2166 1(0157)22-5225 1(0154)22-4295 1(0155)24-2416 1(0138)26-2366 1(0177)77-7802 1(019)654-1741 1(018)824-3401 1(023)641-2371 1(0233)23-1710 1(024)932-0879 1(0246)27-9595 1(029)231-3571 1(029)266-2945 1(076)221-9228 1(0776)21-0605 1(055)222-4421 1(0263)33-9141 1(058)251-7110 1(054)251-9532 1(053)458-0380 1(073)432-5433 1(0857)23-4219 1(0858)23-5300 1(0852)21-9666 1(088)655-3533 1(088)824-8122 1(093)521-8084 1(095)827-4657 1(096)387-7351 1(097)537-3434 1(0985)20-8178 1(099)224-8522 〒078-8801 〒090-0831 〒085-0032 〒080-0803 〒040-0061 〒030-0861 〒020-0034 〒010-0962 〒990-0057 〒996-0001 〒963-8033 〒973-8402 〒310-0805 〒311-1307 〒920-0031 〒910-0005 〒400-0858 〒390-0811 〒500-8868 〒420-0053 〒430-0945 〒640-8052 〒680-0862 〒682-0802 〒690-0007 〒770-0832 〒780-0870 〒802-0014 〒850-0037 〒862-0950 〒870-0036 〒880-0805 〒892-0846 旭川市緑が丘東一条四丁目1番19号(旭川リサーチパーク内) 北見市西富町163番地30 釧路市新栄町8番13号 帯広市東三条南十丁目15番地 函館市海岸町5番18号 青森市長島二丁目25番3号(ニッセイ青森センタービル) 盛岡市盛岡駅前通16番21号(住友生命盛岡駅前ビル) 秋田市八橋大畑一丁目5番16号 山形市宮町一丁目10番12号 新庄市五日町1324番地の6 郡山市亀田一丁目2番5号 いわき市内郷御厩町二丁目29番地 水戸市中央二丁目8番8号(櫻井第2ビル) 茨城県東茨城郡大洗町桜道304番地(茨交大洗駅前ビル) 金沢市広岡一丁目1番18号(伊藤忠金沢ビル) 福井市大手二丁目7番15号(安田生命福井ビル) 甲府市相生一丁目1番21号(清田ビル) 松本市中央四丁目5番35号(長野県鋳物会館) 岐阜市光明町三丁目1番地(太陽ビル) 静岡市弥勒二丁目5番28号(静岡荏原ビル) 浜松市池町116番地13(山崎電機ビル) 和歌山市鷺ノ森堂前丁17番地 鳥取市雲山153番地36〔鳥電商事 (株) 内〕 倉吉市東巌城町181番地(平成ビル) 松江市御手船場町549番地1号(安田火災松江ビル) 徳島市寺島本町東二丁目5番地1(元木ビル) 高知市本町四丁目1番16号(高知電気ビル別館) 北九州市小倉北区砂津二丁目1番40号(富士電機小倉ビル) 長崎市金屋町7番12号 熊本市水前寺六丁目27番20号(神水恵比須ビル) 大分市寿町5番20号 宮崎市橘通東三丁目1番47号(宮崎プレジデントビル) 鹿児島市加治屋町12番7号(日本生命鹿児島加治屋町ビル) エ ネ ル ギ ー 製 作 所 変電システム製作所 東京システム製作所 神 戸 工 場 鈴 鹿 工 場 回 転 機 工 場 松 本 工 場 山 梨 工 場 吹 上 工 場 大 田 原 工 場 三 重 工 場 1(044)333-7111 1(0436)42-8111 1(042)583-6111 1(078)991-2111 1(0593)83-8100 1(0593)83-8100 1(0263)25-7111 1(055)285-6111 1(048)548-1111 1(0287)22-7111 1(0593)30-1511 〒210-9530 〒290-8511 〒191-8502 〒651-2271 〒513-8633 〒513-8633 〒390-0821 〒400-0222 〒369-0192 〒324-8510 〒510-8631 川崎市川崎区田辺新田1番1号 市原市八幡海岸通7番地 日野市富士町1番地 神戸市西区高塚台四丁目1番地の1 鈴鹿市南玉垣町5520番地 鈴鹿市南玉垣町5520番地 松本市筑摩四丁目18番1号 山梨県中巨摩郡白根町飯野221番地の1 埼玉県北足立郡吹上町南一丁目5番45号 大田原市中田原1043番地 四日市市富士町1番27号 事 北 営 見 営 路 営 東 営 南 営 森 営 岡 営 田 営 形 営 庄 営 島 営 わ き 営 戸 営 城 営 沢 営 井 営 梨 営 本 営 阜 営 岡 営 松 営 歌 山 営 取 営 吉 営 陰 営 島 営 知 営 倉 営 崎 営 本 営 分 営 崎 営 九 州 営 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 CS2 VREG CS1 制御 電源 ソフト スタート 制御 PWM比較器 基準 電圧 CNT3 タイマ ラッチ CNT1 CREF オンオフ 制御 誤差増幅器 FA3676Fの例 CP IN6+ TLSEL FB6 IN6− IN5+ IN5− FB5 IN4+ IN4− FB4 IN3+ IN3− FB3 IN2− FB2 IN1+ FB1 IN1− バッファ 富士電機の電源用パワーIC お問合せ先:電子カンパニー IC事業部 電話(03)5435-7158 OUT3 nチャネル ドライバ DT2 pチャネル ドライバ VCC3 OUT2n DT1 nチャネル ドライバ OUT2p OUT1n VCC2 OUT1p pチャネル ドライバ 各ドライバへ ドライバ 用電源 VREF 製品例: 2チャネルFA3630V,3チャネルFA3629V, 6チャネルFA3621F,6チャネルFA3675F, 6チャネルFA3676F 用 途: TFTパネル用マルチ出力電源,ビデオカメラ・ディジ タルカメラ用マルチ出力電源など 特 長: ●同期整流対応(FA3676F2チャネル分) ●低オン抵抗DMOS出力トランジスタを内蔵可能な C/DMOSプロセスによりパワー段と制御部を 1チップ化 ●低消費電力・小型・高効率 低入力電圧に対応可能(2.5Vまで) 過電流,加熱などに対する保護機能が充実 ●小型パッケージ VDRV 低消費電力のパワーマネジメントを1チップで実現 本 (株) 富士電機総合研究所 (株) FFC 1(0468)56-1191 〒240-0194 横須賀市長坂二丁目2番1号 1(03)5351-0200 〒151-0053 東京都渋谷区代々木四丁目30番3号(新宿コヤマビル) IC 特集 目 次 高度情報通信技術と電源 IC 422( 2 ) 山沢 清人 富士電機の IC の現状と展望 423( 3 ) 古森 敏夫 軽負荷時省電力機能付 PWM 制御 IC 427( 7 ) 丸山 宏志 ・ 城山 博伸 1 チャネル CMOS DC-DC コンバータ制御 IC 432(12) 野村 一郎 同期整流対応 6 チャネル DC-DC コンバータ制御 IC 436(16) 遠藤 和弥 携帯電話機用電源 IC 佐 野 功 ・ 加茂 宏明 ・ 藪 崎 440(20) 純 高周波 DC-DC コンバータ用 IC 技術 林 善 智 ・ 片 山 靖 ・ 菅 原 443(23) 聡 表紙写真 電源用アナログ・ディジタル混載 IC 技術 神 谷 電源 IC 用高精度アナログ回路技術 中 森 446(26) 茂 ・ 佐野 友美 ・ 佐々木雅浩 昭 ・ 鈴 木 CMOS アナログ IC 設計技術 藤本 英俊 ・ 藤 澤 449(29) 健 ・ 三添 公義 452(32) 旭 アナログ C/DMOS デバイス・プロセス技術 456(36) 北村 明夫 ・ 佐々木 修 インターネットのめざましい普及拡大など IT 革命が進行しつつある。特に携帯電話に代 表されるモバイル機器の爆発的普及とともに 電源 IC 用パッケージ 460(40) 河田 尚文 バッテリーによる長時間使用が一層要求され, 機器の低消費電力化への動きは一段と激しさ を増している。 これに対応して富士電機では,CMOS ア ナログ技術により低消費電力・高精度 広角・小型オートフォーカスモジュール 泉 462(42) 晶 雄 CMOS 電源 IC を省電力化のキーパーツとし EMI 対策内蔵型圧力センサ て広く展開している。 加藤 和之 ・ 篠 田 466(46) 茂 表紙写真は,家電機器や OA 機器などの内 部で活躍している電源 IC を樹木の成長を支 技術論文社外公表一覧 435(15),455(35) える葉にたとえ,エコロジー社会に溶け込ん だ地球環境に優しい電源 IC をイメージ的に 表現したものである。 最近登録になった富士出願 469(49) 高度情報通信技術と電源 IC 山沢 清人(やまさわ きよひと) 信州大学工学部教授 工学博士 高度情報通信社会を支える技術として,システム集積化 このような小さなインダクタやトランスは開発できるで と低消費電力化を実現するデバイス技術が社会的な要請と あろうか。現在,半導体スイッチと制御回路が形成されて なっている。情報通信産業の国内生産額は1996年には 103 いるシリコンチップの上部に薄膜インダクタをモノリシッ 兆円となり,その後年々増加している。特に,パーソナル クに作製した DC-DC コンバータモジュールが開発されて コンピュータの国内出荷数は1999年において前年比 31 % いる。このモジュールの容量密度は電力用油入変圧器のそ 増と飛躍的な伸びを示している。また,集積回路を中心と れ(最大で 1 VA/cc)の 6 倍(6 W/cc)である。この時, した電子部品・デバイスの生産も 5 兆円を超えている。 薄膜 インダクタの 容量密度 は 70 W/cc で,チップの 占有 このような情報通信機器の普及率の目覚しい増加に伴い, 面積で換算すると 50 mW/mm2 となっている。したがって, 電力需要も増加している。1998年における国内民生部門の 容量面密度を 75 mW/mm2 と 1.5 倍に増やすことで,MOS 年間電力需要を見ると,冷暖房,給湯などを除いた電灯・ FET と 同一占有面積 で 0.5 V, 0.2 A( 100 mW)の 電力 を 動力用電力は 800 億 kWh である。このうち,少なめに見 扱うインダクタができることになる。この容量面密度は近 積 もって 10%程度 が 情報通信用 と 考 えると,その 電力 は い将来十分に到達可能と考えられる。 110 万 kW 出力の原子力発電所1機分の年間発電量に等し しかし,マイクロ DC-DC コンバータの出力電圧を線路 くなる。さらに,民生用電力は年間 20%程度の大幅な増加 電圧に対応させるために,スイッチング周波数は高く(現 が見込まれている。このため,情報通信用エネルギーの変 用の10倍以上)設定される。このため,高周波特性に優れ 換・制御をつかさどる電源 IC にはより一層の高性能化が る磁性材料の使用,および高周波損失を低減するコイルと 期待される状況となっている。 コアの構造の研究が必要となる。 では,高度情報通信技術に対応する電源 IC の高性能化 また,20 MHz を越える高速スイッチングとなるため, とはどのようなことであろうか。近未来の情報通信では, スイッチング損失の少ない電圧制御方式の開発,および高 超高速 ネットワークの 構築 と 共 に, PC, TV, Phone, 速スイッチングで生じるサージとノイズの抑制の検討が必 Navi などの 機能 を 有 するウェアラブル 情報端末 を 利用 す 要となる。制御方式では PWM 制御に拘らず,ソフトスイッ るモバイルネットワークが志向されることになろう。ウェ チングに適した制御方式を広く検討する必要があろうし, アラブル情報通信機器は腕時計よりも軽量で,現在の消費 ノイズの抑制はスイッチ素子とインダクタ磁性層の多層モ 電力の 1/20 以下の 低消費電力が 必要であるとされている。 ノリシック構造を最大限生かすことによって大幅な抑制効 CPU は 1 ∼ 0.5 V と低電圧駆動のシステム LSI(消費電力 果を期待できるものと考えられる。 は現用の 1/100 以下)となり,それに効率良くエネルギー もちろん,全ての電源 IC が超小型化されるのではなく, を供給する電源 IC も小型で高性能な特性が要求される。 必要な電力に応じて最適容量の電源 IC を配置することに すなわち,各 LSI に最適な駆動電圧を効率良く供給するた よって,高性能な分散型電源システムを構成することは論 めに,大電力網における高圧送電の考え方と同様に,線路 をまたない。このための設計手法の確立も急がれる。 電圧を高くして LSI 間の線路損失を小とし,LSI の入り口 高度情報通信技術に対応する高性能な電源 IC について に設けた電源 IC で降圧して最適な駆動電圧を得ることが 夢を語ることはたやすい。しかし,その実用化に際しての 考 えられる。このシステム LSI 化 された 電源 IC(マイク 高度な技術的課題を克服することには多くの困難が伴う。 ロ DC-DC コンバータ)では,構成部品であるインダクタ 夢の実現に向けたさらなる研鑚を関係各位に期待するもの やトランス,キャパシタなどはスイッチングトランジスタ である。 並に小型化されることが必要となろう。 422( 2 ) 富士時報 Vol.73 No.8 2000 富士電機の IC の現状と展望 古森 敏夫(こもり としお) まえがき る。 耐圧 30 ∼ 60 V の CMOS および C/DMOS プロセス が主力で,デザインルールは 0.6 μm までをそろえている。 富士電機の IC は,パワーとインテリジェンスとアナロ 代表的 なプロセスは 図2 に 示 すとおりである。 電源 IC グをキーワードとして,電源 IC を中心に特長ある技術を では,1 μm ルールの 30 V 級 C/DMOS を主力とし,トリ 基に製品展開を実施している。パワーに関しては,高耐圧 ミング技術や高精度プロセスにより高精度・高機能な製品 C/DMOS(Complementary/Double Diffused MOS)技術 設計を可能としている。また,従来広く使われてきたバイ や IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)混載プロセ ポーラ IC プロセスを 省電力化 に 効果 の 大 きい CMOSIC スを有し,インテリジェンスに関しては,高機能ディジタ プロセスへと急速に移行させている。高耐圧技術では,電 ル制御やセンサ内蔵 IC を可能とし,アナログに関しては, 源 IC として 700 V C/DMOS プロセスを 1 μm ルールベー 高精度基準電圧(+ −0.5 %)や高周波 PWM(Pulse Width Modulation) 制御技術 , 低消費電力技術 などを 特長 とし 図1 富士電機の IC のめざす技術 ている(図1参照)。 アプリケーション 分野 でいえば, 電源 IC は, AC アダ 高耐圧 大電流 センサ ディジタル制御 プタなどの AC-DC 電源分野から最近の発展めざましい携 帯機器,パーソナルコンピュータ(パソコン)ならびに関 パワー技術 連機器用 DC-DC 電源分野までをカバーしている。また, インテリジェンス CMOSアナログ技術 高耐圧技術を生かしたフラットパネルディスプレイドライ バ IC(プラズマディスプレイ,小型液晶)やセンサ技術 低消費電力 高精度 を生かしたカメラ用オートフォーカス IC,自動車用圧力 センサ分野などにも製品展開している。 半導体技術の進展はめざましく,超微細加工技術を用い 図2 富士電機の IC のプロセス技術 たシステム IC やディジタル ULSI の高集積化・高機能化 は目を見張るものがあるが,一方システムには必要不可欠 な電源を中心としたパワーマネジメントにおいてはアナロ グ技術の重要性もますます高まっている。 このような 背景 のもと 富士電機 では, CMOS デバイ ス・プロセス技術を基本としたアナログ技術で小型,低消 費電力,高機能化の探求を進め,電源 IC を中心に強化・ 拡充を図り,顧客のニーズに適合するユニークな IC 製品 を提供していく考えである。 1998年 1999年 2000年 バイポーラIC:8 2 mルール 20∼40V mルール 20V Bi-CMOSIC:2 mルール 20V 2001年 CMOSIC:1 mルール 5V(ロジック系), 30V(アナログ系) 0.8 mルール 5V(ロジック系) 0.6 mルール 5V(ロジック系) C/DMOSIC:1 mルール 30∼60V(アナログ系) 1 mルール 150V 1 mルール 250V(SOIプロセス) 1 m ルール 富士電機の IC の現状 700V (ワンチップ パワーIC) 0.6 m 30V (アナログ系) ルール 2.1 IC デバイス・プロセス技術 富士電機のデバイス・プロセス技術の特長は,高耐圧, バンプ:金(Au) はんだ(Pb-Sn) 鉛レス化 低消費電流と高精度アナログ・ディジタルの共存技術であ 古森 敏夫 CMOSIC のプロセス 開発 に 従事 。 現在 , 松本工場半導体開発 セン ター IC 開発部長。 423( 3 ) 富士時報 富士電機の IC の現状と展望 Vol.73 No.8 2000 スで開発中で,品質を含めて自信を持ってお勧めできるワ 図3 IC 製品例 ンチップパワー IC を近々製品化する予定である。また, 250 V 耐圧,SOI(Silicon on Insulator)基板を用いた IG BT 出力段を内蔵できるディスプレイドライバ用 C/DMOS デバイス・プロセスも実現し,小型化・高出力化に対応し ている。電源 IC 向けに特別に開発し,量産に適用中の高 耐圧アナログ C/DMOS デバイス・プロセス技術について は本特集号の別稿を参照いただきたい。 2.2 アナログ IC 設計技術 アナログ 設計 が 主 となる 電源 IC は,ディジタル IC と TSSOP-8 ピンで出力短絡保護回路内蔵,ソフトスタート は違い自動化が難しい。それは回路図から IC のレイアウ と 最大 デューティ( Dmax) 制限設定可能 など 特長 のある トパターン設計に移るとき微妙なレイアウトパターンの引 1チャネル PWM 制御 IC を開発した。また,オンボード き回しが IC 特性に影響することが多いからで,依然とし 用 としてはマルチチャネル( 6 チャネル) 同期整流対応 て技術者の経験がものをいうマニュアル設計が多く取り入 DC-DC コンバータ 制御 IC を 系列化 している。これは 2 れられているのが現状である。しかし,設計期間の短縮や チャネルの同期整流対応チャネルを持ち,各チャネルの独 設計品質の安定化のためには,CAD 技術による設計支援 立した出力オンオフおよびソフトスタート機能,タイマ・ は必要不可欠であり,富士電機でも CMOS アナログマク ラッチ方式の出力短絡保護回路内蔵などの特長を持ち,動 ロセルによるセルベース設計の適用を図るとともにバック 作周波数も1MHz まで対応し電源の小型化に寄与してい アノテーション手法を取り入れたアナログ自動配置配線設 る。さらに,パワーマネジメントの高度化に対応すべく電 計技術の実用化を強力に進めている。 源 IC へのディジタル制御回路や周辺機能の集積化も進め 2.3 IC パッケージ そのほかに,電源 IC 技術として 3 MHz 以上の高周波スイッ ており,その代表例として,携帯電話機用電源 IC がある。 図3に製品例を示す。電源 IC など主力のプラスチック チング動作を実現する DC-DC コンバータ技術,システム パッケージでは, DIP( Dual In-line Package)はもとよ 電源対応のアナログ・ディジタル混載技術,そして高精度 り,最近の表面実装,狭ピッチ,薄型の要求に対応すべく CMOS アナログ 技術 を 開発 している。これらについての TSSOP(Thin Shrink SOP)や CSP(Chip Size Package) , 詳細は,本特集号の別稿を参照いただきたい。 またノンリードタイプの QFN(Quad Flat Non-lead)な ここに述べた電源 IC の適用分野は表2に示すごとく多 どを 準備 して 顧客 の 要求 に 対応 している。さらにオート 岐にわたり,各分野で小型化,省電力化などに貢献してい フォーカス IC に適用しているクリアモールドパッケージ る。 は光センサに適した性能を有し,富士電機固有の特長のあ る技術として顧客から評価をいただいている。また小型化, 高耐圧 IC・センサ IC の現状 低価格化のためフレキシブル基板にベアチップを搭載した モジュール 実装 ( COF:Chip on Film)も 系列化 してい 富士電機では,電源 IC のほかに,もう一つの柱である 高耐圧技術やセンサ複合化に特長ある製品を展開している。 る。 その一つは,プラズマディスプレイドライバ IC で,スキャ 電源 IC の現状 ン側ドライバは 250 V 耐圧 SOI プロセスを用いている。ま た,アドレス 側 ドライバは 150 ∼ 85 V 耐圧 C/DMOS プ 表1に富士電機の汎用電源 IC の型式と主な特長,機能 を示す。従来のバイポーラ IC から近年,エコロジーの観 ロセスを用い,実装方法としてベアチップをフレキシブル フィルムへ搭載したモジュール化を実現している。 点から省資源,省エネルギーが求められる背景下,低消費 センサ複合化では,ホトセンサ内蔵に特長のあるカメラ 電力待機電源を実現できる CMOS 電源 IC に注目が集まっ 用オートフォーカス IC があり,距離データの演算処理を ているが,富士電機は,これの先導的役割を担って積極的 行うディジタル方式とホトセンサの信号を出力するアナロ に CMOS 化を推進し,系列化を図ってきた。 グ方式の 2 種類の IC を系列化し,カメラ構造,カメラ性 まず,AC-DC コンバータ用には,特に軽負荷時に動作 能 に 合 わせて 採用 いただいている。さらに, 光学系 と IC 周波数を低減することでスイッチング損失を減らして省電 を一体化して実装したオートフォーカスモジュールも提供 力化でき,かつ 8 ピンで過負荷遮断や低電圧誤動作防止な しており,小型化,調整容易化を特長にパッシブ型センサ ど各種保護機能を内蔵した PWM 制御 IC を開発した。こ の代表として多くの実績を有している。 れにより待機時や無負荷時の低入力電力を要求される高効 率,省電力型電源の実現に大いに貢献している。 DC-DC コンバータ用には各種携帯機器電源用に最適な 424( 4 ) もう一方,ピエゾセンサの応用例としては,自動車用圧 力 センサがあり, 本特集号 の 別稿 にて, EMI 対策内蔵型 圧力センサを紹介しているので参照いただきたい。 富士時報 富士電機の IC の現状と展望 Vol.73 No.8 2000 formation Technology)関連の携帯機器分野のパワーマネ 今後の展望 ジメントに注力し,高耐圧,アナログ CMOS 技術をコア 技術として,パワーとインテリジェンスを加え市場の要求 富士電機では,今後ますます発展が期待される IT(In- に対応したユニークな製品を開発していきたいと考えてい 表1 汎用電源 IC 一覧 (a)AC-DC コンバータ分野(制御専用) 項目 フライバック FA13842 96 ○ FA13844 48 FA3641/47 70 ○ 46/70 ○ FA5301B 100 ○ FA5304A 46 ○ FA5305A 46 ○ FA5310B 46 ○ FA5311B 70 FA5314 46 FA5315 70 FA5316 46 FA5317 70 FA5332 92 分類 M O S I C 適用回路 D max (%) 型 名 (FA5510/11 14/15) フォワード ○ ○ ○ (FA5501) バ イ ポ ー ラ I C 力率改善 ○ ○ ○ ○ ○ ○ MOS 直接駆動 動作モード ボルテージ 保護回路 カレント OCP OVP 外 形 ○ ○ 8ピン ○ ○ 8ピン ○ ○ ○ ○ 8ピン ○ ○ ○ ○ 8ピン ○ ○ ○ ○ ○ ○ 8ピン ○ ○ ○ ○ 8ピン ○ ○ ○ ○ 8ピン ○ ○ ○ ○ 8ピン ○ ○ ○ ○ 8ピン ○ ○ ○ ○ 8ピン ○ ○ ○ ○ 8ピン ○ ○ ○ ○ 8ピン ○ ○ 16ピン ○ ○ ○ 8ピン 16ピン (b)DC-DC コンバータ分野 電圧範囲 項目 チャネル 数 D max (%) FA3675F 6 任意設定 FA3676F 6 任意設定 FA3630V 2 任意設定 FA13843 1 96 FA13845 型 名 分類 M O S I C バ イ ポ ー ラ I C 適用回路 外 形 ○ ○ 48ピン ○ ○ 48ピン ステップ アップ イン バータ フライ バック ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 2.5∼ 5.5 V 系 10∼ 25 V 系 ○ ○ ○ ○ 16ピン ○ ○ ○ ○ ○ 8ピン ○ ○ ○ ○ ○ 8ピン ○ ○ ○ ○ 16ピン ○ ○ ○ ○ 16ピン ○ ○ ○ ○ 8ピン ○ 8ピン ○ ○ ○ 8ピン ○ ○ ○ 16ピン ○ ○ 16ピン ○ ○ ○ 16ピン ○ ○ ○ 16ピン ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 1 48 (FA3686V) 2 85 ○ (FA3687V) 2 任意設定 ○ (FA7700) 1 90 ○ (FA7701) 1 100 ○ FA7610C 1 64 ○ FA7611C 2 任意設定 ○ ○ FA7612C 1 100 ○ ○ FA7613C 1 任意設定 FA7615C 2 任意設定 FA7616C 2 任意設定 FA7617C 1 67 ○ FA7630C 2 任意設定 ○ FA3629AV 3 ○ ○ FA3635P 1 任意設定 10∼ 45 V 系 ○ ○ ○ 8ピン FA3685P 1 任意設定 ○ ○ ○ ○ 8ピン ○ ○ チャネル2=87 8ピン ○ ○ ○ ○ ○ ○ チャネル1=87 M O S I C MOS 直接駆動 ステップ ダウン 2.5∼ 18 V 系 2.5∼ 5.8 V 系 チャネル3=86 8ピン ○ 20ピン MOS 内蔵 16ピン n チャネル (1チャネルのみ) 〈注〉( )付きは開発中 425( 5 ) 富士時報 富士電機の IC の現状と展望 Vol.73 No.8 2000 る。 表2 電源 IC の適用例 項目 分類 AC-DC コンバータ 分野 DC-DC コンバータ 分野 機 種 適用製品例 FA5301 CRT モニタほか FA5304A/05A FA531X シリーズ AC アダプタ,プリンタ,CRT モニタ, ファクシミリ,ワードプロセッサ(ワー プロ)サーバ,汎用インバータ, 据置 VTR,汎用電源,充電器 ほか FA1384X シリーズ AC アダプタ,プリンタ,エアコンディ ショナ(エアコン),CRT モニタ ほか FA5332 CRT モニタ,汎用電源,エアコン,冷 蔵庫,ワークステーション,プラズマ ディスプレイパネル,プロジェクタ, 監視カメラ,AC アダプタ ほか FA3647/41 プリンタ,ファクシミリ,AC アダプタ, 普通紙複写機,ゲーム機 ほか FA76XX シリーズ パソコン,ワープロ,液晶バックライト インバータ,ディジタルカメラ,プリン タ,カーナビゲーションシステム,据置 VTR,プロジェクタ,VTR カメラ ほか FA3675/76 VTR カメラ,ディジタルカメラ ほか FA3629/30 液晶パネル,ディジタルカメラ ほか FA3635/85 プリンタ ほか あとがき 電源 IC に 重点 をおき, 富士電機 の IC の 現状 と 展望 を 述べた。今後もお客様のニーズを先取りしたご満足のいた だける特長ある製品を提供できるメーカーとして生き残り をかけ,コア技術に磨きをかけて高品質な製品を提供して いく所存である。 参考文献 (1) Sumida, H. et al.:“A high performance plasma display panel driver IC using SOI”. The 10th International Symposium on Power Semiconductor Devices and ICs. p.137- 140 (1998) (2 ) Sumida, H. et al.:“Circuit Design and a High-Voltage Device Structure for an Advanced PDP Scan Driver IC ”. The 6th International Display Workshops. p.739-742(1999) (3) 目黒謙:富士電機 の IC の 現状 と 展望 , 富士時報 , Vol.71, No.8,p.427- 429(1998) 426( 6 ) 富士時報 Vol.73 No.8 2000 軽負荷時省電力機能付 PWM 制御 IC 丸山 宏志(まるやま ひろし) 城山 博伸(しろやま ひろのぶ) まえがき 化の対象として問題視されるレベルとなり,従来のバイポー ラプロセス 製品 から, 高耐圧 CMOS( Complementary 近年,地球規模の環境問題対策として省エネルギー化が 重要視され,電気・電子機器に広く使用されるスイッチン グ電源の高効率化・低消費電力化,特にテレビ・ VTR や MOS)プロセスを 用 いた 低消費電力 タイプの 製品 への 切 換を推進中である。 その 関連製品 として, 8 ピンの CMOS 製品 である 軽負 OA 機器など常時電源を投入したまま使用される製品では, 荷時省電力機能付 PWM(Pulse Width Modulation)制御 待機時消費電力の低減がクローズアップされ,スタンバイ IC「 FA3641, FA3647」を 開発 したので,その 概要 を 紹 (低消費電力)モードを持つなどの工夫をした電源回路も 介する。 増えてきている。 製品の概要 商用交流電源 ( 100 V, 230 V など)を 直流電源 に 変換 する AC-DC 電源用制御 IC として,富士電機では,バイ ポーラプロセスを 使用 した FA531X シリーズを 中心 とし 2.1 特 長 た製品を開発してきた。しかし,最近は待機時などの最小 富士電機 ではすでに,バイポーラプロセスを 用 いた 負荷時には電源用制御 IC 自体の消費電力も,低消費電力 AC-DC 電源用制御 IC として, 表 1 の 製品 を 系列化 して 表1 AC-DC 電源用制御 IC の製品系列 動 作 電 圧 標準消費電流 最大動作周波数 最大デューティ FA5304AP/AS バイポーラ(8ピン) 10∼30 V 9 mA 600 kHz 46% ±1.5 A 2.0 V ±5% 過負荷・過電圧・ 過電流(+検出) 汎用電源 FA5305AP/AS バイポーラ(8ピン) 10∼30 V 9 mA 600 kHz 46% ±1.5 A 2.0 V ±5% 過負荷・過電圧・ 過電流(−検出) 汎用電源 FA5310BP/BS バイポーラ(8ピン) 10∼30 V 9 mA 600 kHz 46% ±1.5 A 過負荷・過電圧・ 過電流(+検出) 汎用電源 フォワード回路 FA5311BP/BS バイポーラ(8ピン) 10∼30 V 9 mA 600 kHz 70% ±1.5 A 過負荷・過電圧・ 過電流(+検出) 汎用電源 フライバック回路 FA5314P/S バイポーラ(8ピン) 10∼30 V 9 mA 600 kHz 46% ±1.5 A 過負荷・過電圧・ 過電流(−検出) 汎用電源 フォワード回路 FA5315P/S バイポーラ(8ピン) 10∼30 V 9 mA 600 kHz 70% ±1.5 A 過負荷・過電圧・ 過電流(−検出) 汎用電源 フライバック回路 FA5316P/S バイポーラ(8ピン) 10∼30 V 9 mA 600 kHz 46% ±1.0 A 過負荷・過電圧・ 過電流(+検出) 汎用電源 フォワード回路 FA5317P/S バイポーラ(8ピン) 10∼30 V 9 mA 600 kHz 70% ±1.0 A 過負荷・過電圧・ 過電流(+検出) 汎用電源 フライバック回路 FA5332P/M バイポーラ(16ピン) 10∼28 V 10 mA 150 kHz 92% ±1.5 A 1.55 V ±2% 5V ±4% 外部同期・ 過電圧・過電流 力率改善 FA13842P/N CMOS(8ピン) 10∼28 V 3 mA 500 kHz 96% −0.4 A +1.0 A 2.5 V ±4% 5V ±5% カレントモード 汎用電源 フライバック回路 FA13844P/N CMOS(8ピン) 10∼28 V 3 mA 500 kHz 48% −0.4 A +1.0 A 2.5 V ±4% 5V ±5% カレントモード 汎用電源 フォワード回路 型 式 プロセス(端子数) 出力ピーク 電流 誤差増幅器 基準 電圧 丸山 宏志 城山 博伸 スイッチング電源用制御 IC の開 スイッチング電源用制御 IC の開 発に従事。現在,松本工場半導体 開発センター IC 開発部。 発に従事。現在,松本工場半導体 開発センター IC 開発部。 機 能 用 途 427( 7 ) 富士時報 軽負荷時省電力機能付 PWM 制御 IC Vol.73 No.8 2000 いる。 今回 の 開発品 では,バイポーラプロセスの FA531X シ リーズと同じ機能に軽負荷時省電力機能を追加した PWM (6 ) 過電流 , 過負荷 , VCC 端子 の 過電圧 ,ラッチ 遮断 , ソフトスタートなど各種保護機能を内蔵している。 表2に主要特性,図2にチップ図を示す。 電源用制御 IC として CMOS プロセスを 用 いた FA3641/ 3647 を製品化した。 高耐圧 CMOS プロセスの採用で制御 IC を低消費電力化 2.2 回路構成・デバイス 今回開発した FA3641 の回路ブロック図を図3に示す。 すると同時に,軽負荷時対応として発振周波数を下げる機 能を内蔵し,スイッチングによる損失を低減することで, 軽負荷時の効率を改善し,少ない部品点数でより低消費電 表2 FA3641/3647の主要特性 (a)絶対最大定格 項 目 力対応のできる制御 IC となっている。 またピン配置は,FA531X シリーズと同様に使用できる ピン配置を採用し,同じ各種保護機能を CMOS 回路で構 特 性 10∼30 V 電源電圧 ソース電流 −0.5 A シンク電流 +1.0 A 出力ピーク電流 成 している。さらに, VCC 端子 の 過電圧保護 を 内蔵機能 30∼500 kHz として 追加 した。パッケージ 外形 は DIP( Dual In-line 発振周波数 Package)と SOP(Small Out-line Package)の 2 種類を 動作周囲温度 −30∼85℃ 用意している。 動作接合温度 125℃ 図1に外観を示す。 (b)電気的特性 IC の主な特長は以下のとおりである。 (1) 30 V 高耐圧 CMOS プロセスの採用で低消費電力を実 項 目 スタートアップ電流 特 性 12 A(標準) 現している。 スタンバイ電流(VCC 端子電圧=14 V) ラッチ時: 50 μA,動作時: 1.9 mA(無負荷) 動作時回路電流(無負荷) 1.9 mA(標準) ラッチ時回路電流 100 A(最大) (2 ) 軽負荷時を FB 端子電圧(出力デューティ)で自動的 に判定し,周波数を低減させ,スイッチング損失を改善 している。 基準電圧 電流制限しきい値電圧 (3) 発振周波数 の 低減 は FB 端子電圧 1.18 V 以下 ( 出力 2 A(最大) 5 V±5% 235 mV(FA3641) −170 mV(FA3647) デューティ 10 %以下)で動作し,切換時の異音発生を 過負荷保護しきい値電圧 3.0 V(標準) 防止するため周波数を FB 端子電圧に応じてリニアに変 VCC 端子 UVLO 回路電圧 16.5 V/9.0 V 化させる。また外付け抵抗により,FB 端子電圧に対す VCC 端子過電圧保護しきい値電圧 る発振周波数の低減率を変えることができる。 CS 端子遮断電圧 32 V±2 V 8.5 V/7.9 V CS 端子オンオフしきい値電圧 0.82 V/0.68 V 止 ( UVLO:Under Voltage Lock-Out) 回路 を 内蔵 し FB 周波数可変開始電圧 1.18 V(標準) ている。 最大デューティサイクル 70%±4% 16.5 V オン/9 V オフ 出力立上り時間( C L =1,000 pF) 50 ns(標準) 出力立下り時間( C L =1,000 pF) 40 ns(標準) (4 ) ヒステリシス特性を持つ VCC 端子の低電圧誤動作防 (5) IS 端子 による 過電流制限 は, +電圧検出 および −電 圧検出の製品を系列化している。 ™ FA3641P/N:IS +極性検出 235 mV ™ FA3647P/N:IS −極性検出 −170 mV 図1 FA3641/3647 の外観 428( 8 ) 図2 チップ図(FA3647) 富士時報 軽負荷時省電力機能付 PWM 制御 IC Vol.73 No.8 2000 VCC 端子に接続された基準電圧発生回路,UVLO 回路, りに REF 端子 を 7 ピンに 出 したため, RT 端子 に 接続 す 出力ドライブ回路,CS 端子電圧検出回路などから構成さ るタイミング抵抗(RT)の値によって通常動作時の発振 れる高耐圧部と,基準電圧発生回路に接続された発振器, 周波数を設定する。図4に発振器部の回路構成を示す。 PWM コンパレータ,過負荷検出回路,過電流検出回路, RT 制御回路 ( RT アンプ)は,プラス 入力 の 電圧 が 軽負荷時周波数可変回路などの低耐圧制御部から構成され RT 端子の電圧と等しくなるように制御する。このため, ている。 RT 端子は定電圧となり,外部接続された RT の値によっ て一定の電流が流れる。この電流は p チャネル MOS MP1 2.2.1 デバイス 使用したプロセスは,30 V 耐圧の高耐圧 MOS デバイス から 供給 され,この 電流 を 基準 にして 1/4 の 電流 が MP2 と 5 V 耐圧の MOS デバイスを使い分ける構成をとってお を 流 れる。 MP2 から MN1 に 流 れた 電流 と 同 じ 値 の 電流 り,高耐圧・低耐圧どちらでも CMOS 回路を構成するこ が MP4 から MP5 を 通 して CT に 充電電流 として 供給 さ とができる。 れ,また MN3 からは MN5 を通して放電電流として引き また,通常の CMOS プロセスで使用するソース・ドレ 抜かれる。このとき,MP5,MN5 は同じゲート信号が入 インを作る不純物濃度の高い領域と,高耐圧用に使用する 力されるので,どちらか一方がオンして他方はオフとなっ 濃度の低い領域を組み合わせることによって,npn トラン ている。これによって CT に対して定電流で充放電が行わ ジスタ,pnp トランジスタ,ツェナーダイオードのバイポー れ,発振波形が作られる。CT には 3 V と 1 V のレベルを ラデバイスを構成することができ,基準電圧発生回路は, 検出するコンパレータが接続されており,3 V を超えると この npn トランジスタを 使 ったバンドギャップ 基準電圧 放電へ,1 V より下がると充電へと RS フリップフロップ 回路を採用している。 の状態が切り換わり,MP5,MN5 のゲートを切り換える 2.2.2 発振回路 ことで 3 V ー 1 V 間で発振を継続する。 今回の開発品では,軽負荷時周波数可変機能を内蔵した 発振周波数を可変する部分は,RT アンプのプラス入力 のでこの部分の動作について説明する。発振器は,タイミ 端子を 2 系統作り,その一方は通常動作時用の 2.5 V を入 ングコンデンサ(CT)を内蔵し,従来品 CT 端子の代わ 力,他方は軽負荷時入力用(RM)として,2系統の入力 のより低い電圧の方を有効に選択する機能を持たせた。RM が 2.5 V より下がった場合,RT 端子電圧が 2.5 V から RM 図3 FA3641 の回路ブロック図 の電圧に下がることで CT の充放電電流が減少し発振周波 CS(8) VCC(6) 数を低減する。 2.2.3 軽負荷時周波数可変回路 0.82V/0.68V REF (7) 5V 5V VCC + REF ENB − 6.5 A 次に RT アンプに入力する RM 電圧と FB 端子電圧の関 0.9mA UVL0 + 係を説明する。図5にこの部分の回路構成を示す。 + − 8.5V/7.9V + − − 16.5V /9V 0.8V 軽負荷時 の 検出 は, FB 端子電圧 で 行 われる。 FB 端子 電圧= 1.18 V( 出力 デューティ 約 10 % に 相当 ) 以下 に 下 3.0V + 4V − FB (2) ENB OUTPUT OUT (5) される 電圧 ( RM)が 2.5 V 以下 になり, 軽負荷動作 に 移 − − − PWM D max 行 する。 RT 端子電圧 を 2.5 V から 低下 させていくことで + OSC 70% RM RT GND (4) R QB FF Q 235mV + S − − 発振周波数を低減していく。 FB 端子電圧=1.18 V → 1 V で 定常時 の 約 1/2 まで 発振 + 周波数 をリニアに 変化 させる。この 周波数低減状態 でも 5V Controlled block RT(1) がった場合に,演算増幅器により変換されて発振器に入力 デューティは通常の制御で FB 端子電圧に応じて可変する。 IS+(3) また 軽負荷回路 は 動作安定化 のため, FB 端子 から R・C 図4 発振回路(OSC) 2.5V REF5V + AMP + RM − 図5 軽負荷時周波数可変回路 MP2 MP3 MP4 MP1 4:1 RT compH − MP5 + compL − MN5 RT(1) CT R 3V FB (2) AMP + RSFF − Q FF QB R CT Rs2 Rf2 MN2 MN3 − − −PWM U + OSC RM RT V2 AMP + 1V − C MN1 70% R + RT D max S V1 Rs1 Rf1 RT(1) 429( 9 ) 富士時報 軽負荷時省電力機能付 PWM 制御 IC Vol.73 No.8 2000 のフィルタを通した電圧で制御を行う。このため応答に遅 からも,負荷が軽い場合には周波数がリニアに低下してい れが発生する場合があり,そのときに異常にパルス幅が広 る様子が確認できる。 くなるのを防止する目的で,別の演算増幅器にて FB 端子 なお,この IC は 軽負荷 になったことを, FB 端子 の 電 電圧 から 変換 された 電圧 を PWM コンパレータに 入力 し 圧で判定しているため,入力電圧が高いほど周波数が低下 て, FB 端子電圧 が 急上昇 した 場合 でも, 通常時 の 最大 を開始する出力電力が高くなる。今回の評価用電源の場合, デューティ 70 %で設定された最大パルス幅を超えないよ 入力 が AC100 V では, 出力 が 約 7 W で 周波数低下 してい うに制限する回路を付加している。 る。一方,入力が AC230 V では,定格出力である約 35 W また, REF 端子 と RT 端子間 に 抵抗 を 接続 することで, が周波数低下を開始する電力になっている。 軽負荷時の FB 端子電圧の変化に対する発振周波数低減比 率を大きくすることができる。 3.3 軽負荷時の効率改善 軽負荷時の効率改善効果を確認するため,同じ評価用電 電源回路への応用 源を従来型の IC で動作させた場合の効率と比較を行った。 比較に使用した従来型 IC は FA5311BP で,機能に関して は軽負荷時の周波数低減機能以外はほぼ同じである。また, 3.1 評価用電源 プロセスはバイポーラプロセスであり, CMOS プロセス 今回,よりユーザーに近い状況で特性を確認するため, この PWM 制御 IC を実際の電源回路へ組み込み,評価を 行った。 図7 発振周波数特性 この電源の主な仕様は次のとおりである。 90 ™入力:AC80 ∼ 264 V,50/60 Hz AC100V 80 ™出力:DC24 V,35 W 70 f sw(kHz) ™保護機能:過負荷ラッチ,過電圧ラッチ,過電流制限 ™発振周波数:75 kHz(定格負荷時) 15 kHz(無負荷時) また,その回路図を図6に示す。 60 50 40 AC230V 30 20 10 3.2 軽負荷時周波数低減機能 0 この IC の大きな特長である軽負荷時の発振周波数低減 0 10 20 P o(W) 30 40 機能を評価用電源で評価した結果を図7に示す。この図7 図6 評価用電源回路図(FA3641) C113 AC80 ∼264V C101 0.22 F R101 510kΩ R102 430kΩ C103 470pF D1 5D11 − − C104 L1C102 470pF 0.22 F F1 250V/3A 2,200pF T1 TH1 − + C105 + 400V/ 220 F ZD1 180V D2 ERA22-10 D3SBA60 D201 +24V 35W L201 10 H YG902C + + C201 2,200 F C202 470 F R108 100Ω R107 680Ω R110 D5 ERA91-02 R109 10Ω R104 130kΩ 4.7kΩ GND R103 130kΩ FG R207 2.4kΩ PC1 R112 0.068Ω 430(10) 100pF PC1 C108 C107 0.1 F R105 47kΩ R115 200kΩ R106 24Ω 8 2 7 3 6 4 5 + C106 10 F FA3641 C109 0.22 F R205 33kΩ IC2 IC1 1 C204 0.022 F Q1 2SK2101 C110 0.22 F R206 1kΩ C203 0.1 F R201 18kΩ R202 1kΩ R203 2.2kΩ D4 ERA91-02 富士時報 軽負荷時省電力機能付 PWM 制御 IC Vol.73 No.8 2000 図8 効率特性(入力 AC230 V) 図9 無負荷時入力電力 90 1.6 80 1.4 FA3641/3647 70 P in(W) η (%) 50 40 従来型IC (FA5311BP) 30 1.0 0.8 0.4 10 0.2 0.1 1 10 FA3641/3647 0.6 20 0 従来型IC (FA5311BP) 1.2 60 0 100 50 100 P o(W) である FA3641/3647 と比較すると消費電力が多い。 250 300 表3 損失改善の効果 電源の効率を比較した結果を図8に示す。条件は入力電 圧が AC230 V の場合である。出力電力が定格付近ではど 150 200 V in (Vac) 損 失(mW) 項 目 FA3641/3647 FA5311 効 果 (mW) ちらの IC も 同 じ 周波数 で 動作 し,また IC の 消費電力 の IC 動 作 損 失 20 100 80 違いも,出力電力に比べるとごく小さいため,効率にほと 起 動 抵 抗 損 失 100 280 180 んど違いは見られない。しかし,出力電力が小さくなると, スイッチング損失 120 600 480 FA3641/3647 は 効率改善効果 が 現 れる。 今回評価 した 電 源の場合,AC230 V において効率を最大で約 30 %改善し ている。 また AC アダプタなどの 場合 ,これを 接続 するセット ( 例 えば,ノートパソコン)を 使用 しないときも, AC ア ダプタ自体はコンセントに接続されたままになっているこ とめると表3のようになる。 今回比較 したこの 両者 の 電源 は, IC が 異 なるだけであ り,言い換えると IC を変更するだけで,一例ではあるが, ここに示したような軽負荷時の効率改善が可能になる。 とがよくある。このとき AC アダプタ内の電源は無負荷の 状態で動作をしており,このときの入力電力はすべて損失 あとがき となる。したがって,省エネルギーに関しこの無負荷時の 入力電力を削減することも大きなポイントとなる。この無 負荷時の入力電力を比較した結果を図9に示す。 軽負荷時省電力機能付 PWM 制御 IC の概要について紹 介した。バイポーラ構成の制御 IC に比べ,CMOS 構成の AC100 V の場合 0.2 W,AC230 V の場合 0.9 W の電力削 IC は, 低消費電力化 に 有利 であり,またロジック 回路 を 減になり,全入力電圧範囲で無負荷時の入力電力が 0.5 W 内蔵しやすいなどの点でも優れ高機能化が可能である。富 以下を達成している。 このように軽負荷や無負荷の状態で,損失を減らし効率 が改善できた主な要因としては,次の点を挙げることがで 士電機では,今回開発した IC 以外にもスイッチング電源 用制御 IC の CMOS 化を進め,市場要求にこたえ,ユニー クな製品を開発していく所存である。 きる。 (1) IC の低消費電流化による IC の動作損失削減 (2 ) IC の低消費電流化による起動抵抗の損失削減 (3) 軽負荷時の周波数低減機能によるスイッチング損失削 減 この効果を,AC230 V 入力無負荷の場合を例に取り,ま 参考文献 (1) 有村健一・野村一郎: スイッチング 電源制御用 IC, 富士 時報,Vol.67,No.2,p.109- 112(1994) (2 ) 丸山宏志: カレントモード 電源用 CMOSIC, 富士時報 , Vol.71,No.8,p.430- 433(1998) 431(11) 富士時報 Vol.73 No.8 2000 1 チャネル CMOS DC-DC コンバータ制御 IC 野村 一郎(のむら いちろう) まえがき 図1 FA7700V と FA7701V の外観 DC-DC コンバータはバッテリーなどの直流電源を入力 とするスイッチング電源であり,小型,軽量,高効率とい う特長から,民生機器,産業機器に広く使われている。 最近では,環境保護への配慮から国内外を問わず省エネ ルギーの 規格 を 導入 する 対象分野 が 増 え,かつ, 規格 が 年々厳しくなるため,電源の高効率化が従来にも増して重 要になってきている。 この要求にこたえ,富士電機では IC の CMOS(Complementary MOS) 化 および MOSFET( Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor) 駆動化 により 電源 の 省電力化 を 実現 した DC-DC コンバータ 用制御 IC「 FA 7700V, FA7701V」を 開発 したので,ここにその 概要 を 報告する。 (5) オンオフ機能:待機時消費電流=約 40 μA (6 ) ソフトスタート機能:起動時にデューティサイクルを 製品の概要 徐々に広げて,電源入力の突入電流と電源出力電圧のオー バシュートを抑制する。 図1に FA7700V と FA7701V の外観を示す。 (7) タイマ・ラッチ方式の短絡保護機能:短絡検出から設 定時間後に遮断動作を行う。ヒステリシス付きでノイズ に対し安定な動作が可能である。 2.1 IC 全体の特長 FA7700V,FA7701V は 1 チャネル制御 IC である。 駆動するスイッチング素子のスイッチング周期に対する オン時比率(デューティサイクルともいう)の制御により 電源出力電圧を安定化させる基本機能のほか,下記の特長 (8) 低電圧誤動作防止(UVLO:Under Voltage Lock-Out) 回路:VCC 端子電圧 が 低下 ( 約 2 V 以下 )するとすべ ての動作をリセットする(詳細は後述)。 (9) 消費電流が小さい: ™スイッチング動作時 1.2 mA(標準)〔200 kHz〕 を有する。 (1) 電源電圧範囲が広い: VCC = 2.5 ∼ 18 V (2 ) 各回路方式に適した IC を選択可能: ™FA7700V:昇圧用,フライバック用, 最大デューティ= 80 %(最小) ™ FA7701V:降圧用,最大デューティ= 100 % (3) n チャネルまたは p チャネル MOSFET を直結駆動可 ™ 短絡保護動作時 0.9 mA(標準)〔200 kHz〕 (10) 動作周波数:50 kHz ∼ 1 MHz (11) パッケージ( TSSOP-8)が 小型:外形寸法 の 最大 は 縦 6.7 ×横 3.4 ×取付け高さ 1.3(mm)である(リード ピンを含む)。 (12) 外付け部品が少ない:抵抗 4 ∼ 6 個,コンデンサ4個 能: ™ OUT 端子ハイサイドオン抵抗= 10 Ω(標準) ™ OUT 端子ローサイドオン抵抗= 5 Ω(標準) (4 ) 高精度基準電圧:0.88 V+ −2 % 野村 一郎 スイッチング電源制御,シリーズ 電源制御などのリニア IC の開発 に従事。現在,松本工場半導体開 発センター IC 開発部。 432(12) 2.0 mA(標準) 〔1 MHz〕 (電源出力電圧の帰還用抵抗 2 ∼ 3 個を含む) 。 参考 として, 図 2 に FA7700V, 図 3 に FA7701V のそ れぞれ内部ブロック図を示す。 富士時報 1 チャネル CMOS DC-DC コンバータ制御 IC Vol.73 No.8 2000 (6 ) 約 2.2 V < VCS :短絡保護動作 。 OUT 端子 のデュー ティサイクルを 0 % にしてスイッチングを 停止 する。 2.2 動作説明 (5) (6 ) FA7700V,FA7701V に共通の動作につき前節 , , (7) の三つの機能を持つ CS 端子を中心に説明する。 図4に示す CS 端子電圧 VCS VCS は「VCC 端子電圧」と「約 5.5 V」のいずれか低い 方でクランプされる。 と動作モードの関係に対応 して,動作は次のとおりである。 図4 CS 端子電圧と動作モードの関係 (1) VCS <約 0.3 V:オフモード。スイッチング停止,かつ, 消費電流 40 μA(標準)となる。 (3) 約 0.6 V < VCS <約 1 V:ソフトスタート動作。IC 内 」 部の「三角波発振器(約 0.6 V から約 1.1 V の間で発振) と「VCS」の交点でデューティサイクルを決定。 (4 ) 約 1 V < VCS <約 1.5 V:定常動作。IC 内部の「三角 波発振器」と「誤差増幅器出力電圧= FB 端子電圧 VFB」 CS端子電圧 V cs(V) 「VCC端子電圧」と「5.5V」のいずれか低い方の電圧 (2 ) 約 0.3 V < VCS <約 0.6 V:内部回路全体が動作開始。 2.2V 1.5V 1V 0.6V 0.3V の交点でデューティサイクルを決定し,電源出力電圧を 一定に制御する。VCS は約 1.5 V でクランプされる。 (5) 約 1.5 V < VCS <約 2.2 V:短絡検出 。 VFB >約 1.5 V 定常動作 オフ ソフト モード スタート になると,VCS の 1.5 V のクランプが外れ,外付け抵抗 短絡 検出 短絡保護 時 間 t を介して CS 端子外付けのコンデンサを充電する。この とき VCS, VFB >約 1.1 V( 三角波上限 )のため, 最大 デューティサイクルで動作する。 図5 FA7700V の昇圧回路例 図2 FA7700V の内部ブロック図 3.4∼11V 820 (3.0∼11V) kΩ RT 1 8 CS UVLO VREF 0.3V CS REF 2 OUT 6 GND 5 SC802-04 + OSC S.C.P 1.5V BIAS IN− 3 10 H VCC 7 8 − VREF 2.2V 0Ω 0.33 F ON/ OFF ON/ OFF 100 F 1.5V 0.88V FA7700 S.C.DET ON/OFF 1 RT 7.5kΩ 6 OUT OFF + + − ER.AMP 2SK 1467 2.2V − + − + 7 VCC − + Power Good Signal + 2 REF 3 IN− 0.1 F 100 12V F 200mA (50mA) 4 FB PWM FB 4 2.4kΩ 5 GND 30kΩ+330Ω 図6 FA7701V の降圧回路例 図3 FA7701V の内部ブロック図 4.7∼18V RT 1 8 CS UVLO VREF 0.3V ON/ OFF − REF 2 VREF 2.2V BIAS IN− 3 S.C.P 1.5V 1.5V 0.88V OUT 6 GND 5 10 H 100 3.3V F 0.8A FA7701 2.2V ON/OFF OFF 6 OUT − 1 RT 7.5kΩ + ER.AMP 8 7 VCC − FB 4 2SJ416 VCC 7 SC802 -04 − + + 0.1 F − S.C.DET + Power Good Signal + 100 F 0Ω ON/ OFF CS + OSC 820kΩ PWM 2 REF 3 IN− 0.1 F FB 4 1.2kΩ 3.3kΩ 5 GND 433(13) 富士時報 1 チャネル CMOS DC-DC コンバータ制御 IC Vol.73 No.8 2000 (7) 短絡保護 の 解除:短絡保護 の VCS しきい 値電圧 の 約 図6は 降圧回路 の 例 であり, 外付 けのトランジスタ Q1 0.2 V のヒステリシスにより, VCS <約 2 V になるとス がオンでオフモードとなり消費電流が約 40 μA に,Q1 が イッチングを再開する。 オフでスイッチング動作を開始する。 (8) VCS のリセット :VCC 端子電圧<約 2 V になると 前 上記 2 回路について,外付け MOSFET のスイッチング 述の UVLO 回路が働き,OUT 端子のデューティサイク 波形を図7,図8に示す。ゲート電圧,ドレイン電圧の波 ルを 0 %にしてスイッチングを停止するとともに,VCS 形に示すとおり,30 ∼ 50 ns 程度の高速スイッチングをし を約 0 V まで引き下げ,電源投入前の状態にリセットす ているため,これらの MOSFET のスイッチング損失(ター る。 ンオン時またはターンオフ時の電力損失)を小さくできる。 図9, 図10に 上記 2 回路 の 電力変換効率 ( =出力電力/ 応用回路例 入力電力 )データを 示 す。 図9 の 昇圧回路 では, 出力 12 V/200 mA と 12 V/50 mA の 2 種で約 83 ∼ 98 %の高効率 図 5 に FA7700V, 図 6 に FA7701V の 応用回路例 を 示 を得ている。入力電圧が高くなるにつれて MOSFET の導 す。2 回路とも実用レベルの DC-DC コンバータでは比較 通時間が短くなるため,MOSFET のオンロス(導通時の 的高い周波数である 470 kHz で動作する例であり,インダ 電力損失)が小さくなり,効率が高くなる。図10の降圧回 クタ値や入出力の電解コンデンサの容量値を小さくできる 路 では, 出力 3.3 V/0.8 A と 3.3 V/0.2 A の 2 種 で 約 70 ∼ ため,電源の小型化に有効である。 94 % の 効率 である。 入力電圧 が 高 くなるにつれてゲート 図5は昇圧回路の例である。最大デューティサイクルが の駆動電力増大(ゲート電圧の振幅増大による)と外付け 80 % ( 最小 )のため, 回路 の 電力損失 を 考慮 しても, 最 ダイオードの電力損失増大(導通時間増大による)のため 大 3 ∼ 4 倍程度までの昇圧比が得られる。 効率が低下するが,入力電圧が 6 V 以下の比較的低い領域 では 85 ∼ 94 %の高効率となっている。 図7 昇圧回路 n チャネル MOSFET のスイッチング波形 なお, 電源入力 を 図5 では 3.4 ∼ 11 V, 図6 では 4.7 ∼ (VCC = 3.4 VDC,出力 12 V/0.2 A) 図9 昇圧回路の電力変換効率データ(470 kHz スイッチング) 100 出力12V/200mA ゲート電圧 VGS(2 V/div) 95 ドレイン電圧 VDS(5 V/div) 効 率η(%) 90 85 出力12V/50mA 80 75 70 65 60 2 (500 ns/div) 4 6 8 10 12 電源入力電圧 V cc(V) 図8 降圧回路 p チャネル MOSFET のスイッチング波形 (VCC = 5 VDC,出力 3.3 V/0.8 A) 図10 降圧回路の電力変換効率データ (470 kHz スイッチング) 100 95 ゲート電圧 VGS(2 V/div) 効 率η(%) 90 ドレイン電圧 VDS(2 V/div) 出力3.3V/0.8A 85 80 75 70 出力3.3V/0.2A 65 60 (500 ns/div) 434(14) 4 6 8 10 12 14 電源入力電圧 V cc(V) 16 18 富士時報 1 チャネル CMOS DC-DC コンバータ制御 IC Vol.73 No.8 2000 18 V としたが, 出力電圧設定 , 外付 け 素子 の 特性 , 回路 実,同期整流方式の採用などで高効率化に対応し,製品系 方式などによっては各 IC とも 2.5 ∼ 18 V の範囲内で動作 列を拡大していく所存である。 が可能である。 参考文献 あとがき (1) 野村一郎・有村健一:DC- DC コンバータ制御 IC,富士時 報,Vol.68,No.7,p.403- 406(1995) 電源の高効率化のために,MOSFET 直結駆動と,待機 (2 ) 丸山宏志: カレントモード 電源用 CMOSIC, 富士時報 , 時および動作時の低消費電力化を実現した,1 チャネル出 Vol.71,No.8,p.430- 433(1998) 力タイプの DC-DC コンバータ用制御 IC(2 型式)の概要 (3) 山田谷政幸: 3 チャネル DC- DC コンバータ用 IC,富士時 を紹介した。 報,Vol.71,No.8,p.434- 437(1998) 富士電機は今後も電源の高効率化,小型化,軽量化の動 (4 ) 遠藤和弥:6 チャネル DC- DC コンバータ用 IC,富士時報, 向にマッチすべく,さらなる IC の小型化,保護機能の充 Vol.71,No.8,p.438- 441(1998) 技術論文社外公表一覧 標 題 所 属 氏 名 発 表 機 関 ポルフィリンを用いるマグネシウムの蛍光 検出ー FIA 装置の開発 富士電機総合研究所 〃 大戸時喜雄 野田 直広 Journal of Flow Injection Analysis(FIA 研究会会誌) , 17,1(2000) 究会 かざし型非接触 IC カード リーダ/ライタ 事 日本工業出版 フローインジェ クション分析研 室 近藤 史郎 情報端末,7 月号(2000) 新 事 業 推 進 室 〃 〃 〃 〃 須藤 業 花澤 真人 和田 崇徳 岡江 功弥 瀬谷 彰利 電気化学 および 工業物理化学 , 電気化学会 68,9(2000) 走査型プローブ顕微鏡による磁気ディスク 上液体潤滑剤の高分解能観察 富士電機総合研究所 熊谷 明恭 トライボロジ,7 月号(2000) 新樹社 Fiber Bragg grating temperature sensor for practical use 富士電機総合研究所 〃 平山 紀友 佐野 安一 ISA Transactions,2(2000) ISA 濁度計の粒子に対する感度とシミュレーシ ョンによる検証 富士電機総合研究所 環境システム事業部 山口 太秀 赤松 和彦 第51回水道研究発表会・日本水道協会(2000-5) 事 業 開 〃 発 室 松本 廣太 松本 悟史 日本機械学会「PC クラスタによる超並列 CAE シ ステムの開発に関する研究分科会」(2000-7) フィールドネットワークの動向と展望 事 業 開 発 室 山田 隆雄 日本能率協会「計装制御技術チュートリアルセミ ナー」(2000-7) メーカーから見たイミュニティ試験法 富士電機総合研究所 大澤 千春 第 6 回 Electromagnetic Compatibility( EMC) フォーラム(2000-7) 固体高分子電解質水電解槽の大型化技術の 開発 事 山口 幹昌 エンジニアリング振興協会成果発表会(2000-7) リン 酸型燃料電池用電極 の 特性 におよぼ す 触媒・ PTFE 粒子 の 分散・凝集状態 の 効果 T 法電磁界解析プログラムの並列化 業 業 開 開 発 発 室 435(15) 富士時報 Vol.73 No.8 2000 同期整流対応 6 チャネル DC-DC コンバータ制御 IC 遠藤 和弥(えんどう かずや) まえがき 表1 FA3676F の定格 (a)絶対最大定格 項 目 近年,携帯型電子機器の小型化・軽量化・高機能化が進 定 格 んでいる。その電源である,バッテリーからほかの直流電 電 源 電 圧 20 V 源に変換する DC-DC コンバータも,小型化,軽量化,バッ 出 力 電 流 ±0.2 A テリーによる長時間動作のための高効率化,低消費電流化 全 損 失 550 mW がますます要求されている。 動作温度範囲 −20∼+85℃ 保存温度範囲 −40∼+125℃ 特に,ディジタルカメラやビデオカメラにおいては,高 機能化に伴って,出力電圧の異なる多数系統の電源が要求 (b)電気的特性 されている。 項 目 定 格(標準値) 富士電機では,高効率で多数系統電源装置に適した,パ 電 源 電 圧 範 囲 2.5∼18 V ルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)式スイッ 発 振 周 波 数 50 kHz∼1 MHz チング電源用制御 IC「FA3676F」を開発したので,ここ タ イ ミ ン グ 容 量 22∼1,000 pF にその概要 を 紹介する。この IC は, 6 チャネル制御回路 タ イ ミ ン グ 抵 抗 6.8∼100 kΩ をワンチップに納め,そのうち 2 チャネルを高効率電源が デッドタイム設定抵抗 0∼100 kΩ 実現できる同期整流方式に対応させ,さらに CMOS(Com- 基 準 電 圧 1.0 V plementary MOS)プロセスを用いて低消費電流化を図っ 消 費 電 流 4 mA/12 A(待機時) ている。 制御 IC の概要 (a) FA3676F の 絶対最大定格 を 表1 に, 主 な 電気的特性 (6 ) タイマ・ラッチ式短絡保護機能付き 内部回路 (b) を表1 に示す。 この IC の主な特長は次のとおりである。 (1) LQFP(Low Profile Quad Flat Package)48ピンパッ ケージを採用 図1に FA3676F の内部回路ブロック図を示す。制御電 源回路,1.0 V 基準電圧回路,三角波発振回路,低電圧誤 動作防止 ( UVLO:Under Voltage Lock-Out) 回路 など (2 ) 6チャネル出力と同期整流対応 p チャネル MOS 駆動:5 チャネル(そのうち 2 チャネ ルは同期整流方式に対応) 駆動 MOS の p チャネル/n チャネル選択が可能:1 チャ の共通部分と,チャネルごとの誤差増幅器,PWM 比較器, ソフトスタート回路,出力ドライバ回路などで構成されて いる。 表2にチャネル制御仕様を示す。この表を基に制御の概 要を説明する。 ネル (3) 広い動作電源電圧範囲: 2.5 ∼ 18 V (4 ) CMOS アナログ技術による低消費電流 3.1 制御仕様 ™ 動作時: 4 mA(標準値) 6チャネルともすべて, 外部 MOSFET( Metal-Oxide- ™ 待機時: 12 μA(標準値) Semiconductor Field-Effect Transistor)を 直接 スイッチ (5) 待機機能付き 遠藤 和弥 パワーエレクトロニクス製品の開 発を経て,スイッチング電源用制 御 IC の開発に従事。現在,松本 工場半導体開発センター IC 開発 部。 436(16) ング駆動できるようプッシュプル型のドライバ出力回路と 富士時報 同期整流対応 6 チャネル DC-DC コンバータ制御 IC Vol.73 No.8 2000 なっている。各チャネルのオン抵抗は,第 3 チャネルが6 ソフトスタート制御端子のうち CS1 端子と CS3 端子は Ω で,その 他 のチャネルは 10 Ω となっており, 出力電流 定電流出力となっているが,CS2 端子は電流出力がなく, は最大+ − 0.2 A まで 流 せる。これらの 出力端子 に 電流制限 外部抵抗で端子の充電完了電圧を設定することで,外部駆 抵抗を接続することで,バイポーラトランジスタを外部ス 動 MOSFET の最大オンデューティを制限することができ イッチング素子として使用することも可能である。 る。 第 6 チャネルの 出力 は, PNSEL 端子 の Hi/Low 接続 に より, 外部駆動 MOSFET のタイプを p チャネル /n チャ 3.2 同期整流方式 ネルに切り換えることができ,製品システムに合わせて降 第 1 チャネルと第 2 チャネルは同期整流方式に対応した 圧回路または昇圧回路を選択することができる。 降圧コンバータ回路を構成することができる。 (a) 同期整流回路の構成を図2 に示す。この回路において, 各チャネルは,2本のオンオフ制御端子と 3 本のソフト スタート制御端子で表2に示すように制御される。また, p チャネル MOSFET( Q11)がオフの 期間 に,リアクト 2 本 のオンオフ 制御端子 をすべてオフ 設定 にすると, IC ル電流はダイオード(D)を流れ,ダイオードのオン電圧 は待機モードになり,内部制御電源を遮断して消費電流の とそこに流れる電流とによって損失が発生する。特にコン 大幅な低減を図っている。 バータ出力電圧が低く出力電流が大きい場合には,この損 pチャネル ドライバ PNSEL OUT5 pチャネル ドライバ OUT6 OUT4 PGND3 OUT3 nチャネル ドライバ DT2 pチャネル ドライバ VCC3 OUT2n nチャネル ドライバ OUT2p OUT1n pチャネル ドライバ DT1 OUT1p VCC2 VDRV 図1 FA3676F の内部回路ブロック図 各ドライバへ ドライバ 用電源 第1チャネル 制御 UVLO 電源 第3 チャネル デッドタイム 設定 デッドタイム 設定 VCC1 pチャネル ドライバ 第4 チャネル pチャネル/ nチャネル ドライバ 第5 第6 チャネル チャネル RT 三角波 発振器 CT 第2チャネル CS3 CS2 VREG CS1 制御 電源 ソフト スタート 制御 PWM比較器 基準 電圧 CNT3 タイマ ラッチ CNT1 CREF オンオフ 制御 誤差増幅器 CP TLSEL IN6+ IN6− FB6 IN5+ IN5− FB5 IN4+ IN4− FB4 IN3+ FB3 IN3− IN2− FB2 IN1+ IN1− FB1 VREF バッファ 表2 チャネル制御仕様 項目 チャネル 出力仕様 出力端子記号 駆動 MOS オン抵抗 同期整流 構成可能な コンバータ 第1 OUT1p/n p チャネル 10Ω 対応 降圧型 第2 OUT2p/n p チャネル 10Ω 対応 降圧型 第3 OUT3 p チャネル 6Ω 第4 OUT4 p チャネル 10Ω 降圧型 第5 OUT5 p チャネル 10Ω 降圧/反転型 OUT6 p チャネル/ n チャネル切換 10Ω 降圧/昇圧型 第6 降圧型 オンオフ 制御端子 ソフトスタート 設定端子 CNT1 CS1 CNT3 CS3 CS1 CNT1 CS2 (オンデューティ 制限設定可) 437(17) 富士時報 同期整流対応 6 チャネル DC-DC コンバータ制御 IC Vol.73 No.8 2000 失分が電源効率を下げる要因となる。そこで,ダイオード チャネル /n チャネル MOSFET が 直列 に 入 り, 両 MOS に 並列 にダイオードよりもオン 電圧 が 低 い n チャネル FET が 同時 オンすると 電源短絡 となるので,これを 避 け MOSFET( Q12)を 接続 し,ダイオードに 電流 が 流 れる (b) のゲート信号特性に示 る必要がある。そのために,図2 期間,並列 MOSFET をオンさせ,電流を MOSFET 側に すように,スイッチングの切換時に両 MOSFET が共にオ 流して損失分を低減しようとするものが同期整流方式であ フとなる期間(デッドタイム)を設ける必要がある。この る。この方式は電源効率向上の有効な手段となる。 デッドタイムは,外部 MOSFET のスイッチング特性で決 同期整流方式 では, 電源 ー GND(グラウンド) 間 に p まるので,アプリケーションごとに最適設定値が異なる。 そこで FA3676F では,DT1 端子および DT2 端子と GND 間に抵抗を接続することで,各チャネル独立して,抵抗値 図2 同期整流回路とゲート信号特性 に応じたデッドタイムが設定できるようにしてある。 VCC FA3676F 図3に外部抵抗とデッドタイム設定値との関係を示す。 S G OUT1p Q11 D L VOUT D G OUT1n Q12 S D C GND 図3 デッドタイム設定特性 DT1 R DT デッドタイム(ns) VCC(Q11オフ) 0 V(Q11オン) t VCC(Q12オン) 0 V(Q12オフ) t OUT1p信号 OUT1n信号 デッド タイム (V CC=6V, C T=100pF, R T=10kΩ) 300 (a)同期整流回路 デッド タイム 200 100 0 (b)ゲ−ト信号特性 0 20 40 60 80 外部設定抵抗 R DT(kΩ) 100 図4 FA3676F の応用回路例 VCC S G D C11 D G C1 D1 RS21 CS2 RS22 CREF2 OUT5 D3 Q41 L4 PGND1 VCC3 VCC2 RDT1 RDT2 CDRV CP CP RT RT GND CT IN6+ DT1 OUT1p DT2 FB1 VDRV OUT1n S D C42 R41 CH4 R42(降圧) G C41 OUT3 PGND3 CNT3 D4 Q51 C3 S D5 D C4 G L5 + C52 L6 C61 D G RG6 438(18) C32 R31 CH3 R32(降圧) G C51 オンオフ制御入力 CNT1 L3 D C31 OUT2p IN1− R60 C60 S OUT2n FA3676F IN1+ IN6− FB6 RG3 OUT4 IN2− CT R10 C10 CS3 C2 OUT6 C22 R21 CH2 R22(降圧) D2 Q31 CS3 PNSEL IN4− L2 Q22 S PGND2 IN4+ FB2 R20 C20 CS2 CS1 TLSEL VREF CS1 G VCC1 CREF D FB4 R40 C40 Q21 D C21 CNT1 R50 C50 S G CREF1 CREG FB5 VREG C30 R30 FB3 IN3− R52 IN3+ R51 R53 R54 IN5+ IN5− C12 R11 CH1 R12(降圧) Q12 S GND CNT3 Q11 L1 S CH5 (反転) D6 Q61 C62 R61 CH6 R62(昇圧) 富士時報 同期整流対応 6 チャネル DC-DC コンバータ制御 IC Vol.73 No.8 2000 応用回路例 図4に FA3676F あとがき の応用回路例を示す。この例では,第 多出力電源回路 に 適 した, 同期整流対応 の 6 チャネル 1チャネルから第 4 チャネルまでは降圧型コンバータを構 DC-DC コンバータ用制御 IC FA3676F の概要を紹介した。 成し,第 5 チャネルは極性反転回路,第 6 チャネルは昇圧 富士電機では,今後この A3676F をベースに,リチウム 回路を構成している。また,第 1・第 2 チャネルは同期整 イオン 電池 1 セル 駆動 に 対応 したさらなる 低電圧動作 IC 流方式となっている。 や,電池の充電制御機能を内蔵した電源 IC,6チャネル このように,6 回路 のスイッチング 電源 をワンチップ IC で 構成 することができ,また 同期整流方式 による 電源 以上の同期整流対応の多出力制御 IC などを開発し,市場 要求にこたえていく所存である。 効率向上も達成できる。なお,各チャネルのリアクトルの 代わりに,多巻線変圧器を用いることで,6回路以上の多 出力電源を構成することも可能である。 参考文献 (1) 遠藤和弥: 6 チャネル DC- DC コンバータ用 IC,富士時報, Vol.71,No.8,p.438- 441(1998) 439(19) 富士時報 Vol.73 No.8 2000 携帯電話機用電源 IC 佐野 功(さの いさお) 加茂 宏明(かも ひろあき) 藪崎 純(やぶざき じゅん) まえがき 図1 FA3678F のチップ写真 携帯電話機は,いつでも,どこでも,どこへでも,とい う携行性,利便性を特長とし,小型化・低価格化の進展, 低消費電力化による待ち受け時間や通話時間の伸びにより, 多くの消費者の支持を得た結果,現在の高い普及率となっ ている。 この小型化,低価格化,低消費電力化の実現のために, 大きな役割を果たしているのが各種 LSI である。 携帯電話機に用いられている電源 IC は,消費電力の大 きいバイポーラ品から,消費電力の小さい CMOS(Complementary MOS)品へ移行して省電力化が進んできてい る。また,複数のレギュレータ回路を一つの IC にまとめ るなどして小型化に対応している。 さらに,必要な電力を各電子デバイスに安定して供給す ることはもちろんのことであるが,未使用時の待機電力の ™ 負電圧レギュレータ回路内蔵 削減などにも対応している。 ™ 基準電圧回路内蔵 本稿 では, 携帯電話機用電源 IC として,8 個 の LDO ( Low Drop Out)レギュレータと, 送信用電力増幅器 ™ 低消費電流: 1 μA(待機時の標準値) (パワーアンプ)のゲートバイアス用負電圧レギュレータ, ™CMOS シリコンゲート 1 μm プロセス ™LQFP48 ピンパッケージ 演算増幅器 などを 内蔵 し, 48ピンのパッケージとした IC 「FA3678F」を開発,製品化したので概要を紹介する。 FA3678F のチップ写真を図1に示す。 周辺部のパッド近くに配置されている MOS トランジス 特 長 タが,レギュレータのパストランジスタとなる p チャネ ル MOS である。配線は寄生直列抵抗を減らすようできる FA3678F は携帯電話機用に開発したシステム電源 IC で, だけ太く短くし,最適レイアウトとしている。 八つの 2.8 V 出力電圧,最大 90 mA の出力電流の LDO レ ギュレータ,外部抵抗で出力電圧の設定が可能な負電圧レ 各回路要素は,図1に見られるようにセルブロックとし て準備しており,設計期間の短縮を図っている。 ギュレータ,ALC(Automatic Level Control)回路用演 仕 様 算増幅器,基準電圧出力回路などを内蔵している。 また,各 LDO レギュレータと演算増幅器はおのおの個 別にオンオフが可能で,必要に応じて電源のオンオフを行 3.1 LDO レギュレータ い,バッテリーパワーをセーブすることを可能にし携帯電 ™リプル除去率:−40 dB ™ 消費電流: 40 μA(1 回路あたりの標準値) 話機の低消費電力化に対応している。 ™ 出力電圧: 2.80 V+ −60 mV 特長を以下に簡単にまとめる。 ™LDO レギュレータ 8 回路内蔵 佐野 功 440(20) 加茂 宏明 藪崎 純 電源 IC の開発,設計に従事。現 電源 IC の開発,設計に従事。現 電源 IC の開発,設計に従事。現 在,松本工場半導体開発センター 在,松本工場半導体開発センター 在,松本工場半導体開発センター IC 開発部主任。 IC 開発部。 IC 開発部。 富士時報 携帯電話機用電源 IC Vol.73 No.8 2000 プアウト電圧が小さいため,バッテリーの消費を抑え,か つ低いバッテリー電圧での使用が可能である。 3.2 負電圧レギュレータ ™ 出力電流: 4 mA この IC に 内蔵 している LDO レギュレータは, 20 kHz ™リプル除去率:−25 dB ま で − 60 dB 以 上 の 高 リ プ ル 除 去 率 ( 図 3 ), 100 mV ™ 立上り時間: 5 ms(最大値) (Io = 20 mA)の低ドロップアウト電圧(図4,図5),1 ™チャージポンプ発振周波数:12 kHz(標準値) 回路あたり 40 μA の低消費電流といった性能に加え,1 μF の出力コンデンサでも安定動作を実現している。 また,定格電流 90 mA の LDO レギュレータには,出力 3.3 消費電流 ™ 全信号オフ時:1 μA(標準値) がグラウンドレベルへ短絡した場合などの過電流による発 熱,破壊を防止するため,過電流制限回路を内蔵している。 主要回路特性 4.2 負電圧レギュレータ FA3678F の回路ブロック図を図2に示す。 負電圧レギュレータは,チャージポンプ回路とレギュレー タにより構成され,最大 4 mA の出力電流供給が可能で, 信号送信用 GaAs パワーアンプのゲートバイアス用電源と 4.1 LDO レギュレータ FA3678F では CMOS による LDO レギュレータを 構成 している。バイポーラと比較して消費電流が小さく,ドロッ して適している。 外部コンデンサ容量値によりチャージポンプ用発振周波 ,チャージポンプによるボルテー 数の選択が可能で(図6) 図2 FA3678F の回路ブロック図 ALC IN CMP OUT SIN SOUT ALC OUT GNDA1 図4 レギュレータのドロップアウト電圧(REG7) GNDA2 GNDD VCC2 VCC3 FBST 2.9 ALC回路用演算増幅器 ALC EN IN1+ + PA CNT − VCC1 DAREF DAREF BGR VREF − IN2+ + OUT3 IN3+ IN3− + ロジック CNT1 CNT2 CNT3 CNT4 CNT5 CNT6 CNT7 − DGOUT C1P 負電圧 レギュレータ C1M VSS 出力電圧 V out(V) OUT12 REG REG REG REG REG REG REG REG 2.8V 2.8V 2.8V 2.8V 2.8V 2.8V 2.8V 2.8V 2.8 2.7 無負荷 I o= 5mA I o=10mA I o=20mA 2.6 REG OUT RDD DDCNT DDREG CT OUTC OUTP REG1 REG2 REG3 REG4 REG5 REG6 REG7 REG8 3.6 3.6 2.5 2.6 2.8 3.0 3.2 3.4 3.6 電源電圧 V in(V) 3.8 4.0 図3 レギュレータのリプル除去率(REG7) (Vcc = 4 V,I o = 20 mA,C out = 4.7 F,C vref =1.0 F) 図5 ドロップアウト電圧の温度特性(REG7) 0 200 ドロップアウト電圧(mV) −10 リプル除去率(dB) −20 −30 −40 −50 −60 150 I o=20mA 100 I o=10mA 50 I o=5mA −70 −80 10 無負荷 100 1k 10k 周波数 f(Hz) 100k 1M 0 −25 0 25 50 温 度(deg) 75 100 441(21) 富士時報 携帯電話機用電源 IC Vol.73 No.8 2000 図7 負電圧レギュレータ出力の R DD 依存性 図6 チャージポンプ回路の発振周波数 −0.5 無負荷 I o=2mA I o=4mA −1.0 出力電圧Vout(V) チャージポンプ用発振周波数 f DD(kHz) 50 10 −1.5 −2.0 −2.5 5 50 100 外部コンデンサ容量 C T(pF) −3.0 500 100 200 300 400 500 600 外付け抵抗 R DD(Ω) ジダブラにレギュレーション機能を付加し,簡単な外付け 今後 , 携帯電話機用 LSI は, 統合化 がますます 進 むと 抵抗により,出力電圧を変化させることができ,パワーア 考えられるが,より低消費電力で,より小さく,より高機 ンプの特性に応じて調整が可能である(図7)。 能なシステムが構築できる技術開発を行っていきたいと考 えている。 あとがき 参考文献 以上 , 携帯電話機用電源 IC として 開発 した FA3678F の概要について紹介した。 442(22) (1) 加茂宏明:小形 LCD コントローラ, 富士時報 , Vol.71, No.8,p.452- 455(1998) 富士時報 Vol.73 No.8 2000 高周波 DC-DC コンバータ用 IC 技術 林 善智(はやし ぜんち) 片山 靖(かたやま やすし) 菅原 聡(すがはら さとし) まえがき 動素子を小型化することが可能となる。また,スイッチン グ素子を内蔵し,同期整流方式での動作が可能であるため, 携帯電話機,携帯情報端末を代表とする携帯電子機器に ディスクリートの半導体部品の外付けが不要となり,DC- 搭載される内部電源装置には,小型・軽量化とバッテリー DC コンバータ回路全体としての小型化,薄型化を可能と による長時間動作が求められ続けている。 している。表1にこの IC の定格を示す。 また近年,携帯電子機器用バッテリーの主流となってい 内部回路 るリチウムイオン二次電池の出力が 3.6 V であるのに対し, LSI の電源電圧は加工微細化に伴い低下傾向にあり,現在 では 2 V 以下が主流となりつつある。この電圧変換比の拡 回路構成 は 図 1 のとおりである。 制御部 の 基本回路 は 大により電源回路の変換効率がクローズアップされ,この CMOS(Complementary MOS)デバイスを用いており, 点で有利なスイッチングレギュレータの果たす役割が広がっ 出力部 のスイッチング 素子 は, DMOS デバイスを 用 いて ている。しかしながら,従来の 3 端子レギュレータに比べ いる。 ると,スイッチングレギュレータは外形寸法が大きく,さ ここでは主な回路ブロックについて説明する。 らなる小型化,薄型化が必要となっている。 富士電機では,このような携帯電子機器の市場要求にこ たえる,リチウムイオン二次電池対応の超小型,薄型のス イッチング方式 3.1 内蔵 MOSFET 出力部にスイッチング素子として n チャネル DMOSFET コンバータの開発を進めている。 ( 以下 , NDMOS と 略 す)と p チャネル DMOSFET( 以 その駆動用の IC を開発したので,ここにその概要を紹介 下,PDMOS と略す)を各 1 個内蔵している。これらは, DC-DC する。 耐圧が 30 V であり,最大 1 A の電流の駆動が可能である。 オン抵抗は NDMOS が 0.4 Ω,PDMOS が 0.45 Ωである。 開発品の概要 この DC-DC コンバータ用 IC は携帯電子機器のスイッ 表1 IC の定格 チングレギュレータの駆動用に開発したもので単一出力で ある。電圧制御は PWM(Pulse Width Modulation)方式 を採用し,以下の特徴を持つ。 (1) スイッチング周波数:1 ∼ 6 MHz 項 目 絶 対 最 大 定 格 定 格(標準値) 電 源 電 圧 範 囲 2.5∼6.5 V 出 力 電 流 1.0 A 動 作 温 度 範 囲 −20∼+85℃ 保 存 温 度 範 囲 −40∼+125℃ ルの高耐圧 DMOS(Double Diffused MOS)FET 各1 発 振 周 波 数 1.0∼6.0 MHz 個を内蔵 過 電 流 検 知 電 流 1.25 A 過 熱 保 護 動 作 温 度 125℃ (2 ) スイッチング 素子 として n チャネルおよび p チャネ (3) 同期整流方式での動作対応が可能 電 気 的 特 性 (4 ) 動作入力電圧範囲:2.5 ∼ 6.5 V (5) 各種変換モードに対応(降圧型,昇圧型) 低 電 圧 検 知 電 圧 2.5 V 基 準 電 圧 1.0 V,1.2 V * 消費電流(3 MHz 動作) (6 ) 各種保護機能を内蔵 この IC は, MHz オーダーの 高 い 周波数 でスイッチン 待 機 時 消 費 電 流 グを行うため,DC-DC コンバータの回路構成に必要な受 * MOSFET ドライバの駆動電流を含む。 3.0 mA 20 A 林 善智 片山 靖 菅原 聡 半導体 IC のプロセス技術を経て, スイッチング電源の開発に従事。 現在, (株) 富士電機総合研究所デ バイス技術研究所。電気学会会員。 スイッチング電源用 IC の研究に 従事。現在, (株) 富士電機総合研 究所デバイス技術研究所。 超小型スイッチング電源の開発に 従事。現在, (株) 富士電機総合研 究所デバイス技術研究所副主任研 究員。 443(23) 富士時報 高周波 DC-DC コンバータ用 IC 技術 Vol.73 No.8 2000 一般的に MOSFET はスイッチング周波数の高周波化に 伴い,スイッチング損失が増大する傾向がある。そこで富 3.2 MOSFET 駆動回路 士電機では,このスイッチング損失を低減するため,ND 主に MOSFET ドライバ,デッドタイム調整回路および MOS および PDMOS のゲート電極配線の構造を改良し, 演 算 回 路 で 構 成 さ れ る 。 MOSFET ド ラ イ バ は , 内 蔵 ゲート抵抗の低減を図った。これにより,スイッチング時 DMOSFET の 高周波駆動 を 可能 にし,かつ 消費電流 を 抑 のドレイン電圧およびドレイン電流の立上り・下降のスピー えるために回路方式の改良と駆動能力の最適化を行った。 ドを高速化し,MHz オーダーでのスイッチングに対応可 200 pF の容量を 5 ns で充放電する能力を有する。 能な低損失のスイッチング素子を実現した(図 2に PDMOS の改良前後のターンオフ波形を示す) 。 デッドタイム調整回路は降圧型コンバータを同期整流方 式 で 動作 させる 場合 において, PDMOS と NDMOS のオ ンオフ交互切換時にターンオフ遅延により発生する貫通電 流を防止するための回路である。この IC では,変換効率 図1 IC の回路構成(回路ブロック図) を最適化するためにデッドタイム(主スイッチのオフ信号 に対する同期整流スイッチオン信号の強制遅延時間設定) VREG VCC ON/OFF VREF10 VREF12 を 10 ns に最適化している。 基準電源 内部電源 誤差増幅器 IN− IN+ − + 内部制御系 の電源へ PWM コンパレータ OP-OUT RT 3.3 基本動作部(誤差増幅器,PWM コンパレータ) MOSFET駆動回路 PDMOS ドライバ − + P 三角波発振器 ソフトスタート 回路 タイマ・ラッチ 負荷短絡 検出回路 ロ ジ ッ ク 回 路 低電圧検出 回路 デ ッ ド タ イ ム 調 整 回 路 過 電 流 保 護 回 NDMOS 路 ドライバ NDMOS スイッチング 周波数 の 高周波化 に 適 した PWM 制御 を 採用しており,出力電圧を誤差増幅器に帰還し,その出力 PDMOS を PWM コンパレータにてパルス 信号 に 変換 し,これを スイッチング素子の駆動信号としている。誤差増幅器の帯 OUT 域幅は 10 MHz 以上あり,また PWM コンパレータの出力 遅延時間は 30 ns と小さく,共に 10 MHz までの制御に対 応する能力がある。 過熱保護回路 N GND PGND MS1 MS2 3.4 三角波発振器 三角波発振器の発振周波数を基本周波数とし,温度補償 された内蔵電流源からタイミングコンデンサへの充放電を 行 うことで 動作 する。 RT 端子 に 接続 する 抵抗 により1 MHz から 6 MHz までの発振周波数の設定が可能である。 図2 PDMOS のターンオフ波形 3.5 保護回路 ドレイン電圧 (2 V/div) ドレイン電流 (0.2 A/div) 保護機能として,回路起動時の突入電流を防止するソフ トスタート回路,昇圧型回路動作においてスイッチング素 子 のオン 持続 を 防止 する 最大 デューティ 制限 , IC の 電源 電圧の低下を検出して誤動作を防止する低電圧検出回路の ほか,負荷短絡保護回路,過電流保護回路,過熱保護回路 0 を内蔵している。 (20 ns/div) 応用回路例 (a) 改良前 図3に示すように,その接続方法により,降圧型,同期 ドレイン電圧 (2 V/div) ドレイン電流 (0.2 A/div) 整流降圧型,昇圧型の DC-DC コンバータの構成が可能で ある。図4は降圧型の DC-DC コンバータ回路モジュール の実装例の写真である。構成部品は IC,入出力平滑コン デンサ( C i, Co), SBD( Schottkey Barrier Diode), IC ,およびインダ 調整用抵抗(R1)とコンデンサ(C1,C2) 0 クタ(L)であり,回路構成に必要な調整部品の削減が図 られている。また富士電機では,従来の DC-DC コンバー (20 ns/div) タ回路の構成部品中で最も占有体積の大きかったインダク (b) 改良後 タを薄膜プロセスで形成可能にし,IC チップ上に一体形 成 する 技術 を 開発 した。これらにより, 出力 1 W クラス 444(24) 富士時報 高周波 DC-DC コンバータ用 IC 技術 Vol.73 No.8 2000 図3 DC-DC コンバータの構成例 図4 DC-DC コンバータの実装例 高周波DC-DCコンバータ用IC PDMOS SBD PWM制御回路 誤差増幅器 三角波発振器 PWMコンパ レータ 保護回路 ドライバ (a) 降圧型 Ci Vo Co L SBD 負荷 NDMOS 10 mm Vi C1 PDMOS IC R1 C2 PWM制御回路 誤差増幅器 三角波発振器 PWMコンパ レータ 保護回路 ドライバ Vi 9 mm Vo 負荷 DC-DC コンバータ用 IC の開発概要を紹介した。 (b) 同期整流降圧型 NDMOS 富士電機 では,この 高周波 スイッチングでの PWM 制 御技術をベースに,今後さらなる拡大が期待される携帯機 Vo 器市場のニーズにおこたえするとともに,技術革新のお手 PDMOS 伝いをさせていただき,情報通信分野をはじめ電子機器の PWM制御回路 誤差増幅器 三角波発振器 PWMコンパ レータ 保護回路 ドライバ 負荷 発展に貢献していく所存である。 Vi 参考文献 (1) 片山靖ほか:薄膜インダクタを集積した超小型 DC- DC コ (c) 昇圧型 NDMOS ンバータ,平成12年電気学会全国大会,2- S11- 5(2000) (2 ) Sugahara,S. et al.:“Characteristics of a Monolithic DC- DC Converter utilizing a Thin-film Inductor”. IPEC-Tokyo の DC-DC コンバータモジュールで, 外形寸法 9 × 10 × 1.8( mm), 出力電力密度 6.2 W/cm ( 外付 け 部品不要 ) 3 と超小型のサイズを実現している。 2000. p.326- 330(2000) (3) Katayama,Y. et al.:“High-Power-Density MHz-Switch- ing Monolithic DC- DC Converter with Thin-Film Inductor”. PESC ’ 00. p.1485- 1490(2000) あとがき 電源回路 の 超小型化・軽量化・薄型化 を 狙 った 高周波 445(25) 富士時報 Vol.73 No.8 2000 電源用アナログ・ディジタル混載 IC 技術 神谷 茂(かみや しげる) 佐野 友美(さの ともみ) 佐々木 雅浩(ささき まさひろ) まえがき 応用例 集積回路 ( IC)の 微細加工技術 の 急速 な 進歩 により, 開発したリチウムイオン電池充電 IC は,充電シーケン IC の 集積度 が 向上 し, 今 まで 複数 のチップを 用 いてボー スや異常処理を行うディジタル部(マイコン,A-D 変換) ド上に構成していたシステムが一つのチップ上に載るよう と,電池の充電電圧,充電電流を制御するアナログ部で構 になり,アナログ部分とディジタル部分を混載する方向に 成される。以下,ディジタル部,A-D 変換,充電 IC 全体 進んでいる。 について,順を追って述べる。 富士電機 ではこれまでに,アナログ ・ ディジタル 混載 IC として,電源 IC,携帯電話機用 IC,オートフォーカス IC,液晶ディスプレイドライバ用 IC など幅広く製品を供 3.1 ディジタル部 ディジタル部の仕様は次のとおりである。 給 してきた。 今回 , 電源用 アナログ 回路 にマイクロコン (1) 8ビット CPU ピュータ(マイコン)を搭載して,電源 IC のインテリジェ (2 ) ROM:1 k バイト,RAM:128 バイト ント化を実現する技術を開発した。本稿では,その応用例 (3) 10ビット A-D 変換,3 チャネル として,高精度な充電電圧制御が可能な,アナログ充電回 図1にディジタル部のブロック図を示す。アナログ部か 路とマイコンを搭載した,リチウムイオン電池充電 IC の ら電池電圧,充電電流,電池温度を A-D 変換で取り込み, 概要を紹介する。 内蔵 ROM にプログラミングされたプログラムに従い,各 処理が行われる。 アナログ・ディジタル混載 IC 技術 3.2 10 ビット A-D コンバータ アナログ・ディジタル混載 IC では,ディジタル部の高 3.2.1 構 成 速動作により発生するノイズがアナログ部に回り込み,雑 10ビット A-D コンバータ部の拡大写真を図2に示す。 音が発生するという問題がある。これには,ディジタル部 A-D コンバータは, 10ビット 容量 アレイ,ダイナミック を,ノイズの発生を抑制する回路とすること,アナログ部 とディジタル部を分離するレイアウトとすることなどが対 図1 ディジタル部のブロック図 策として必要である。 また,それぞれの使いやすさから,通常アナログ部はバ アナログ部(充電回路) 電 電 温 流 圧 度 イポーラプロセス,ディジタル部は MOS プロセスという 異なるプロセスが用いられている。異なるプロセスのディ ジタル部とアナログ部を一つのチップとするために,例え ば,アナログ部をバイポーラ,ディジタル部を MOS とす る Bi-CMOS(Bipolar-Complementary MOS)という技術 は,性能の最適化は図れるが,プロセスが複雑なため高価 故 マルチプレクサ 障 割 込 信 クロック 号 A-D変換 リセット 信号 充 電 停 止 信 号 電 流 指 令 値 信 号 発振回路 クロック マイコンコア である。富士電機では,以前から CMOS アナログ技術に 取り組んでおり,アナログ部,ディジタル部ともに CMOS プロセスを用いた,コストパフォーマンスに優れた CMO ROM 水 晶 発 振 子 へ RAM 異 常 ス テ ー タ ス クロック 情 報 SIC を製品化してきた。 神谷 茂 パワーエレクトロニクス製品の開 発,研究企画の業務を経て,電源 IC の開発に従事。現在, (株) 富 士電機総合研究所デバイス技術研 究所。電気学会会員。 446(26) 佐野 友美 佐々木 雅浩 電子機器 の 開発 に 従事 。 現在 , CMOS ディジタル IC の開発・設 (株) 富士電機総合研究所デバイス 計に従事。現在, (株) 富士電機総 技術研究所。 合研究所デバイス技術研究所。 富士時報 電源用アナログ・ディジタル混載 IC 技術 Vol.73 No.8 2000 コンパレータおよび逐次比較レジスタで構成されている。 (1) 10ビット容量アレイ 逐次比較レジスタは,逐次比較動作を行うための10ビッ トのレジスタで,比較結果のディジタルコードへの変換お 容量アレイは,図3に示すように 2 進の重み付けされた 容量アレイと,中央接続容量(Cc)によって構成されてお り,入力電圧に比例して蓄えられる電荷を各容量の比によっ て分割保持する電荷比較型の構成をとっている。 よび容量列への充電経路であるアナログスイッチの制御を 行う。 変換動作が終了すると,システムのリセットあるいは再 度変換を行うまで変換結果をこの逐次比較レジスタが保持 重み付けされた容量を用いて10ビット分の容量アレイを 構成 する 場合 , 理論的 には MSB( Most Significant Bit) している。 3.2.2 A-D 変換動作 は LSB(Least Significant Bit)に対して 2 10 倍の値が必要 電荷比較型の A-D コンバータは図3に示すように,容 となる。しかし実用的な容量の最大値は数十 pF であり, 量アレイ自体がアナログ入力電圧に比例する電荷を保持す LSB 側 の 容量値 が 小 さくなり 過 ぎるため, 寄生容量 など る機能を持っており,特にサンプルホールド専用回路は備 の影響を受けやすく,高精度な変換が不可能となる。この えていない。 ため,5ビットの 重 み 付 けをされた 容量 アレイの 組 を Cc 変換 モード 時 ,アナログ 入力電圧 ( Vin)のサンプリン により 結合 し, LSB 容量 の 値 を 保 ちつつ, 容量 アレイの グ期間では,全容量が Vin に接続され,コンパレータ部の 総容量値を低減して,チップ面積の縮小を実現している。 スイッチのオンによりコンパレータが中間電位で停止して 各容量に接続されたスイッチは,p チャネル MOSFET と n チャネル MOSFET を用いたアナログスイッチで構成 いる。 次に変換動作に入ると Vin およびコンパレータ部のスイッ チを 遮断 し, 各 ビットの 容量 に 対 し 高 い 方 の 基準電圧 されている。 Vref_H と, 低 い 方 の 基準電圧 Vref_L を 順次切 り 換 え,その (2 ) ダイナミックコンパレータ 容量アレイに分割保持される電荷とディジタルコードに 対応した電荷の比較を行う。比較結果は逐次比較レジスタ に格納される。 組合せにより容量列のコモンノードの電位がコンパレータ の中間電位となる所を探す動作を行う。 図4に10ビット A-D 採用したチョッパ型コンパレータは,入力オフセット電 圧が低く,高精度が得られる。 コンバータの入出力特性を示す。 変換範囲を 0 ∼ 5 V (Vref_L = 0 V,Vref_H = 5 V) ,入力電 圧範囲も 0 ∼ 5 V としている。非直線性誤差が+1.01 LSB, (3) 逐次比較レジスタ −0.94 LSB であり,良好な結果を得ている。 図2 10 ビット A-D コンバータ部の拡大写真 3.3 リチウムイオン電池充電 IC 図5に 今回開発 した 充電 IC の回路ブロック図を示す。 電池への充電電流および電池電圧の検出部を持ち,充電電 流,電池電圧が設定値になるようにフィードバック制御を 行うアナログ部と充電シーケンスを制御するディジタル部 から構成されている。 充電開始時の予備的な定電流充電および電池電圧が一定 値を超えてからの定電流・定電圧充電はアナログ部で処理 し,予備的な定電流充電から定電流・定電圧充電への切換, 充電終了判定,各モードでの時間監視,充電電圧・電流の 図4 10 ビット A-D コンバータの入出力特性 図3 10 ビット A-D コンバータの構成 逐次比較レジスタ コンパレータ 32 C /31 16C 8C V 2C 1C Cc 16C 8C 4C 2C 1C 1C 800 600 400 非直線性誤差 +1.01(LSB) −0.94(LSB) 200 in V ref_H V ref_L V 4C ディジタル出力(LSB) 1,000 in 0 1 2 3 4 5 アナログ入力(V) 447(27) 富士時報 電源用アナログ・ディジタル混載 IC 技術 Vol.73 No.8 2000 図5 充電 IC の回路ブロック図 AC 100V 整流 平滑 P W M 制 御 + OFF TH Vr1 Vref Vcc VDD サ ー ミ ス タ VDD UVLO VREF UVLO UVLO VREG Vr2 BIAS リチウム イオン 電池 VBAT 電 流 検 出 温 度 検 出 OFF Vcc 図7 充電 IC のアナログ部拡大写真 電 セル数 圧 選択 検 BATST 出 SW + − A1 VREF VH − A-D変換器用 基準電源 − + B1 C + 温度モニタ マ ル 電流モニタ チ プ レ 電圧モニタ 過電流 ク サ 検知 − - A D 変 換 器 発振回路 XTAL1 + UVLO XTAL2 RST 過電圧 検知 − + OFF ERR コード 電流制御 充電電流 切換 CPU − A2 + SW RxD/ TxD Vref 充電電流 切換 電圧制御 CHG 異常時停止 RAM 128 バイト − B2 + ROM 1,024 バイト Vref Ccomp VREFST Vccmp AGND CFB VFB DGND VDD OUT セル 電圧 選択 図6 に 充電特性 , 図7 に 充電 IC のアナログ部拡大写真 を示す。回路設計においては,富士電機で開発した CMOS アナログマクロセルを用い,開発期間の短縮を図っている。 図6 充電特性 あとがき 5.6 1.2 I chg 0.8 0.4 4.4 0 4 −0.4 V bat 3.6 −0.8 3.2 2.8 1 電源 IC としてのアナログ・ディジタル混載技術につい I chg(A) V bat(V) 5.2 4.8 −1.2 10 100 −1.6 2,500 5,000 7,50010,000 て,その応用例について紹介した。 今後は,より高機能のディジタル回路,高精度のアナロ グ回路技術を開発し,電源 IC のインテリジェント化要求 にこたえていく所存である。 t(s) 参考文献 (1) 目黒謙:富士電機 の IC の 現状 と 展望 , 富士時報 , Vol.71, 異常監視や異常処理はディジタル部で処理している。 No.8,p.427- 429(1998) リチウムイオン電池はエネルギー密度が高いことが特徴 (2 ) Yee,Y. S:A Two-Stage Weighted Capacitor Network であるが,安全上その充放電の取扱いは注意すべき点が多 for D/A- A/D Conversion. IEEE J. Solid-State Circuits. い。特に充電電圧は,4.2 V+ −30 mV 以内と高精度な電圧管 Vol.SC- 14,No.4,p.778- 781(1979) 理が必要なため,0.5 %精度の基準電圧を搭載し,充電電 圧精度を 0.7 %以内に制御可能としている。 448(28) (3) 芳尾真幸・小沢昭弥編:リチウムイオン二次電池ー ーー材料 と応用ーーー,日刊工業新聞社,p.145- 151(1996) 富士時報 Vol.73 No.8 2000 電源 IC 用高精度アナログ回路技術 中森 昭(なかもり あきら) 鈴木 健(すずき たけし) 三添 公義(みぞえ きみよし) まえがき 2.2 電気的特性 基準電圧源回路の電気的特性を表1に示す。電圧精度の 近年の携帯機器の急速な普及に伴い,電源のコンパクト 化や電池での長時間動作化などの仕様要求はますます厳し 特性についての詳細は以下のとおりである。 (1) 室温時の電圧精度 くなっている。これらを実現するうえで,電源 IC として 室温時の電圧精度は樹脂封止によって影響を受ける。本 は,回路の低消費電力化ならびに精度の高い制御が必要と 回路の LQFP(Low Profile Quad Flat Package)48ピン なっている。これらの要求にこたえるため,富士電機では パッケージの樹脂封止前後の出力電圧特性を図2に示す。 高精度 の CMOS( Complementary MOS)アナログ 技術 樹脂封止前の電圧分布は 6 ビットトリミング機能により, の開発を行ってきている。 0.997 V+ −0.0015 V の範囲に制御している。樹脂封止後の電 今回,電源 IC の高精度化に特に重要となる要素回路と 圧分布は,後述する種々の最適化を行うことにより,平均 して,基準電圧源回路,演算増幅器,コンパレータの三つ が 1.000 V, σ ( 標準偏差 )が 1 mV と 小 さく 制御 できる。 のアナログ回路技術について紹介する。 製品の歩留りを 3σで評価すると,σが小さいため,室温 では樹脂封止後 99.7 %の割合で,その出力電圧は 0.997 ∼ 基準電圧源回路 表1 基準電圧源回路の電気的特性 2.1 特 長 高精度基準電圧源回路の構成を図1に示す。本回路の特 長は以下のとおりである。 (1) 回路の消費電流を低減するために,従来のバイポーラ トランジスタを応用したバンドギャップ方式とは異なり, エンハンスメント n チャネル MOSFET(NMOS)とデ 項 目 最 小 標 準 最 大 初期電圧(V) 〔室温〕 0.997 1.000 1.003 2.0 2.0 4.1 温度ドリフト(mV) 〔−10℃≦ ≦70℃〕 T 消費電流( A) ー 2.0 ー PSRR(dB) 〔DC〕 ー −73.0 ー プレション NMOS のしきい値電圧の電位差(Vref)を回 路構成で取り出す方式を採用している。 図2 基準電圧源回路の樹脂封止前後の出力電圧特性 (2 ) 6ビットの高精度トリミングを行い,室温時の出力電 100 圧(Vout)の精度向上を図っている。 樹脂封止後=1.000V±0.003V σ=1mV 80 頻 度(個) 60 図1 高精度基準電圧源回路の構成 Vcc Vref 40 60 80 1.004 1.003 1.002 1.001 1.000 樹脂封止前=0.997V±0.0015V 0.999 100 0.998 6ビット トリミング 0.997 Vout − 0.996 + エンハンスメント NMOS 0 20 0.995 デプレション NMOS 40 20 出力電圧V out(V) 中森 昭 鈴木 健 リニア IC の開発に従事。現在, 酸化物超電導体,化合物半導体の (株) 富士電機総合研究所デバイス 研究に従事。現在, (株) 富士電機 技術研究所。 総合研究所デバイス技術研究所。 三添 公義 リニア IC, 主 に, CMOS アナロ グ回路の研究・開発に従事。現在, (株) 富士電機総合研究所デバイス 技術研究所。電気学会会員。 449(29) 富士時報 電源 IC 用高精度アナログ回路技術 Vol.73 No.8 2000 1.003 V の範囲に収まり,高精度を達成している。 (2 ) 温度ドリフト 影響を考慮した設計が必要になる。 基準電圧源回路の出力電圧は樹脂封止すると室温時,図 本回路の温度ドリフトはエンハンスメント NMOS とデ プレション NMOS から構成される回路で決まり,そのゲー 2に示したように変動する。この変動は,パッケージの樹 脂モールド材やリードフレームなどによって応力が加わり, ト幅,チャネル長およびデプレション NMOS のドーズ量 図1 に 示 した 回路内 のデプレション NMOS を調整して温度ドリフトを最適化している。サンプル数25 メント NMOS のデバイス 特性 が 変動 することで, Vref の 個の出力電圧の温度ドリフト特性を図3に示す。実線は25 電圧が変化することが主因と推定される。 個の平均を示し,点線は各温度での出力電圧の最大値と最 とエンハンス 今回開発 した 基準電圧源回路 の LQFP48 ピンパッケー 小値 を 示 している。 平均 は 室温 でピーク 値 を 示 し, 温度 ジの樹脂封止前後の Vref の温度ドリフト特性を図5に示す。 −10 ∼+70 ℃ の 範囲 で 約 2 mV 以内 の 変動 という 高精度 この図から樹脂封止前後での Vref の電圧変動幅は温度に強 を達成している。 く依存し,基準電圧源回路の室温時の電圧精度に影響する だけでなく,温度ドリフト特性にも強く影響を与えること (3) PSRR(Power Supply Rejection Ratio) 基準電圧源回路は電源 IC の制御精度を高めるために, が分かる。 温度変化や電源から流入するノイズに対し,常に一定の電 この樹脂封止前後の Vref の電圧変動特性を,回路設計と 圧を発生することが必要である。電源電圧から出力電圧へ レイアウト設計にフィードバックさせ,最適化を図ること の周波数伝達特性である PSRR 特性を図4に示す。DC レ で,今回の基準電圧源回路の高精度化を達成している。 ベルの PSRR は−73 dB と,非常に大きな値で,優れた対 演算増幅器とコンパレータ 電源ノイズ特性を示している。 2.3 樹脂封止前後の基準電圧源回路の出力電圧変動 前節のように基準電圧源回路は,シリコンチップを樹脂 本章では,高性能演算増幅器と高速コンパレータ回路に ついて紹介する。これらの回路は,すべて CMOS 回路で 封止によりパッケージにすることで,その出力電圧が変動 構成している。用途として,主に DC-DC コンバータ用制 する。高精度を達成するうえでは,この樹脂封止が与える 御 IC の 誤差増幅器 や PWM( Pulse Width Modulation) コンパレータであり,スイッチング周波数で 2 MHz まで の動作に対応できる。 図3 温度ドリフト特性 最大 出力電圧V out(V) 1.002 3.1.1 特 長 平均 1.000 0.9998 1.0005 演算増幅器は低消費電力(低電圧,低消費電流)と広帯 1.0002 0.9988 0.9987 0.998 0.9983 0.9981 3.1 高性能演算増幅器 最小 0.996 域動作を実現している。特長は次のとおりである。 (1) 最低電源電圧 2 V,消費電流 65 μA の低消費電力化 (2 ) 単一利得帯域幅 4.7 MHz の広帯域化 (3) 入出力電圧は,電源ーグラウンド間の全範囲となるよ 0.994 −20 −10 0 10 20 30 40 50 60 70 80 温 度(℃) うに広ダイナミックレンジ化 図5 樹脂封止前後の Vref の温度ドリフト特性 図4 PSRR 特性 855 0 −10 電 圧 Vref(mV) PSRR(dB) −20 −30 −40 −50 −60 −70 −80 850 845 840 樹脂封止前 樹脂封止後 −73dB −90 −100 10 450(30) 100 1,000 10,000 100,000 1,000,000 10,000,000 周波数 f(Hz) 835 −50 0 50 温 度(℃) 100 150 富士時報 電源 IC 用高精度アナログ回路技術 Vol.73 No.8 2000 表2 演算増幅器の電気的特性(電源電圧 2 V 時) 項 目 最 小 標 準 最 大 消 費 電 流 59.4 62.7 64.9 最 小 −0.38 −0.38 −0.34 最 大 2.63 2.70 2.82 最 小 0.09 0.13 最 大 1.83 1.86 シンク 1.46 ソース 1.81 入力オフセット電圧 単 一 利 得 帯 域 幅 位 相 余 裕 表3 コンパレータの電気的特性(電源電圧 2 V 時) 単 位 A 項 目 最 小 標 準 最 大 単 位 消 費 電 流 36.0 37.7 39.0 A V 入力オフセット電圧 0 2.4 5.2 mV V ハイレベル出力電圧 2.0 2.0 2.0 V 0.18 V ローレベル出力電圧 0.054 0.058 0.062 1.89 V 1.51 1.57 mA 1.84 1.90 mA 1.3 5.3 14.9 4.6 4.7 5.0 33.8 35.7 37.4 1.5 1.7 1.9 同相入力電圧 mV 出 力 電 圧 出 力 電 流 ル ー レ ー ト mV MHz 度 出力 V/ s (500 mV/div) ス 図7 コンパレータの入出力動作波形(電源電圧 2 V 時) 図6 演算増幅器の入出力動作波形(電源電圧 2 V 時) 入力 入力 (500 mV/div) OV 入力 (100 ns/div) 出力 あとがき OV 紹介した基準電圧源回路,演算増幅器,コンパレータは (1.00μs/div) アナログセルライブラリ化し,富士電機の電源 IC に適用 を開始している。 今後,要求される製品の性能をタイムリーに実現できる ように,従来より一層低消費電力でかつ高精度・高性能な 3.1.2 電気的特性 CMOS アナログ要素回路の開発を進めていく所存である。 電気的特性を表2に示す。表中の単一利得帯域幅と位相 余裕は容量負荷 10 pF 時の値である。また,ボルテージフォ 参考文献 ロアにおける入出力波形を図6に示す。 (1) Allen, P. E.;Holberg, D. R.:CMOS Analog Circuit 3.2 高速コンパレータ (2 ) Blauschild,R. A. et al.:A New NMOS Temperature- Design. Holt,Rinehart and Winston,Inc. p.240-251(1987) 3.2.1 特 長 コンパレータは演算増幅器と同様に低消費電力となって おり,また,高速動作が可能である。特長は次のとおりで ある。 (1) 最低電源電圧 2 V,消費電流 39 μA の低消費電力化 (2 ) 三角波入力信号 2 MHz の高速動作が可能 高速動作を実現したポイントは,入力電圧範囲内で入力 オフセット電圧が最小となるように回路を設計したことで ある。 3.2.2 電気的特性 電気的特性を表3に示す。また,コンパレータの非反転 入力端子 V+ に 2 MHz 三角波 , 反転入力端子 V− に 基準 電圧を入力したときの出力波形を図7に示す。 Stable Voltage Reference. Vol.SC- 13 ,No.6 p.767- 774 IEEE J. Solid-State Circuits. (1978) (3) Tham, K.-M.; Nagaraj, K.: A Low Supply Voltage High PSRR Voltage Reference in CMOS Process. IEEE J. Solid-State Circuits. Vol.30,No.5,p.586- 590(1995) (4 ) Banba,H. et al.:A CMOS Bandgap Reference Circuits with Sub-1-V Operation. IEEE J. Solid-State Circuits. Vol.34,No.5,p.670- 673(1999) (5) 山田一二ほか:P 形シリコン拡散層におけるピエゾ抵抗効 果の温度特性,電気学会論文誌 A,Vol.103,No.10,p.555562(1983) (6 ) 鈴木幸治・小松茂:樹脂封止半導体デバイスの内部応力と 特性変化,応用物理,Vol.48,No.12,p.1211-1214(1979) 451(31) 富士時報 Vol.73 No.8 2000 CMOS アナログ IC 設計技術 藤本 英俊(ふじもと ひでとし) 藤澤 旭(ふじさわ あきら) まえがき 図1 アナログ IC 設計フローの概要 仕様決定 電子機器 に 搭載 される LSI は,プロセス 技術 の 進展 と 回路設計技術の進展に支えられ,高集積化,高機能化が進 んでいる。一方,電子機器の製品サイクルは短くなり,LSI 回路設計 回路図入力 の設計から市場投入までの期間の短縮が強く望まれている。 このような LSI の開発において,CAD 技術を用いた設計 は不可欠となっている。 回路検証 富士電機 では,ディジタル LSI の 開発環境 に 加 え, 当 アナログ シミュレーション コーナー シミュレーション ディジタル・アナログ 混在シミュレーション フルチップ シミュレーション 社の志向する電源 IC をはじめとする CMOS(Complementary MOS)アナログ IC を 高品質 , 短納期 で 開発 するた アナログ マクロセル ライブラリ めの設計技術,検証技術,および自動化システムを開発し ている。 マスクレイアウト設計 本稿では,CMOS アナログ IC 製品を開発するための設 マニュアルレイアウト 計環境,設計技術の概要を紹介する。 自動レイアウト マスクレイアウト検証 アナログ IC 設計フロー DRC LVS ERC 本章では,アナログ IC の設計フローの概要を述べる。 図1に,設計フローを示す。 バックアノテーション (1) 回路設計 特定領域 フルチップ 開発仕様に基づいて行われる回路設計は,回路図入力シ ステムを用いて行われる。回路図入力システムには,後で 述べる CMOS アナログマクロセルとして登録された回路 マスク描画用データ処理 ブロック,新規に回路ブロックを設計するため基板電位を EB変換 考慮した 3 端子拡散抵抗や高耐圧 MOS トランジスタ,ディ ジタル・アナログ混在回路にも対応可能な論理ゲートなど マスク作成 がシンボルとして登録されている。 (2 ) 回路検証 いる人手による設計と,アナログ IC に適した自動配線を 回路検証は,設計された回路に対して仕様で決められた 各種動作条件を満足とすることをコーナーシミュレーショ ンなどのアナログシミュレーションや,ディジタル・アナ 行える環境が構築されている。 (4 ) マスクレイアウト検証 ログ混在シミュレーションによって行われる。 マスクレイアウトデータに対して,寸法に関して規則ど おりに 設計 されていることの 検証 ( DRC:Design Rule (3) マスクレイアウト設計 回路図に基づいて,ホトマスクを作成するためのマスク レイアウト設計が行われる。ここでは,従来から行われて 452(32) ,回路図どおりに設計が行われていることの検証 Check) (LVS:Layout versus Schematic)などが行われる。 藤本 英俊 藤澤 旭 CAD 技術の開発に従事。現在, CAD 技術の開発に従事。現在, 松本工場半導体開発 センター IC 松本工場半導体開発 センター IC 開発部。 開発部。 富士時報 CMOS アナログ IC 設計技術 Vol.73 No.8 2000 (5) バックアノテーション マスクレイアウトデータから素子間の配線などによって 形成される寄生素子を抽出し,これらを反映した回路シミュ 3.2 回路シミュレーション技術 3.2.1 コーナーシミュレーション レーションを実施することにより,寄生素子による回路ブ 高品質化が要求されるアナログ IC の回路シミュレーショ ロック間相互の影響や回路ブロック内の特性変動の検証が ンでは,設計された回路においてウェーハプロセスのゆら 行われる。 ぎによる素子特性のばらつきや,IC が使用される周囲温 度を考慮した回路動作の検証が必須(ひっす)である。 アナログ IC 設計技術 富士電機では,MOS トランジスタのコーナーモデルと 受動素子のばらつき,使用周囲温度のすべての組合せを考 本章では,前章で述べた設計フローの各設計段階におい 慮した回路シミュレーションを自動的に実行することが可 て,特にアナログ IC の設計,検証を支援するために開発 能な,図3に示すコーナーシミュレーション用インタフェー された設計環境,設計技術について概要を述べる。 スを開発し,設計での品質の作り込みを実現している。 3.2.2 フルチップシミュレーション IC 全体回路 の 動作検証 における 課題 は, 回路規模 の 増 3.1 CMOS アナログマクロセル CMOS アナログマクロセルは,電源 IC などのアナログ IC 製品 を 開発 するために 必要 な 基本回路 ブロック( 13回 路 , 21ブロック)が 登録 されている。 表1 に CMOS アナ 大によるシミュレーション時間の長大化に対する問題と, 回路解析の収束性の問題を解決することである。 富士電機では,ライブラリに登録された基本回路ブロッ ログマクロセルとして登録されている回路ブロックを示す。 クはもとより,新規に設計された回路ブロックを容易にビ これらの回路ブロックは,多くの製品に使用され実績のあ ヘイビアモデルに変換し,IC 全体回路の動作を回路シミュ るものであり,これらを使用した設計により,各種回路仕 様への対応と短期間での製品開発を可能としている。 図2 セルデータシートの例 富士電機の CMOS アナログマクロセルは,当社のアナ ログ IC 用標準 プロセスである 1 μm ルール 2 層金属配線 CMOS プロセスに基づいて設計されている。 これらのセルは,設計フローの各段階で利用できるよう に設計されており,次のデータで構成されている。図2に セルデータシートの一例を示す。 (1) 回路図入力用シンボル (2 ) トランジスタレベルで記述した回路図データ (3) IC 全体 を 効率 よくシミュレーションするために 回路 特性を動作記述したビヘイビアモデル (4 ) 自動マスクレイアウトでも使用可能なマスクレイアウ トデータ(セル高さ:180 μm,380 μm) 表1 CMOS アナログマクロセル一覧 図3 コーナーシミュレーション用インタフェース 回路名 セル数 基 準 電 圧 源 回 路 1 定 電 流 源 回 路 2 発 振 回 路 1 演 算 増 幅 器 回 路 1 コンパレータ回路 1 ソフトスタート回路 2 タイマ・ラッチ回路 5 ト リ ミ ン グ 回 路 1 過 熱 保 護 回 路 1 低電圧誤動作防止回路 2 内部回路用電源回路 1 出力ドライバ電源回路 1 オンオフ制御回路 (合計) 2 プロセスコードの設定 受動素子の ばらつきの設定 シミュレーション 温度の設定 コーナーモデル(p チャネルトランジス タと,n チャネルト ランジスタの特性限 界の組み合わせ)の 設定 トランジスタのコーナーモデルの 選択,受動素子ばらつきの設定, シミュレーション温度の設定を行 うことで,すべての組合せ条件の シミュレーションを自動的に実行 可能 21 453(33) 富士時報 CMOS アナログ IC 設計技術 Vol.73 No.8 2000 図4 自動配線技術適用例 図5 バックアノテーション適用例(1) (V) 1.4 1.2 1.0 0.8 3.50 4.75 6.00 7.25 8.50 (μs) (a)回路シミュレーション結果 (V) 1.4 1.2 1.0 0.8 3.50 4.75 6.00 7.25 8.50 (μs) (200 mV/div) (b)バックアノテーション結果 レーション(フルチップシミュレーション)により検証す ることができるシステムが構築されている。 (500 ns/div) (c)実測結果 3.3 自動配線技術 IC の 設計 において, 多 くの 設計時間 を 費 やすのがマス クレイアウト設計である。このマスクレイアウト設計期間 図6 バックアノテーション適用例(2) を短縮する方法として,セルを用いた自動配置配線技術が 700 富士電機では,先に述べた CMOS アナログマクロセル を用い,人手により新規に設計されたマスクレイアウトを 含めて自動配線を行うことをアナログ分野における自動配 置配線技術の第一段階として着手した。主にディジタル分 野において適用されてきた自動配置配線技術を,アナログ 分野においても適用可能となるように,配線幅,インピー ダンスや電流密度を考慮した自動配線が可能となる技術を 確立した。図4は,自動配線技術を使用して設計したマス クレイアウトであり,マスクレイアウト設計時間を約 1/4 ディジタル出力 (コード) ある。 650 回路シミュ レーション結果 実測結果 600 バックアノ テーション結果 550 500 450 400 2.0 2.1 2.2 2.3 2.4 2.5 2.6 2.7 2.8 2.9 3.0 A-D 変換器入力 (V) に短縮することが可能である。 3.4 バックアノテーション技術 バックアノテーションは,マスクレイアウトからトラン IC 全体 にバックアノテーション 技術 を 適用 する 場合 は, ジスタなどの回路を構成する素子,および配線などに起因 前述の寄生素子抽出の最適化を行っても,時には約十数万 する寄生素子(抵抗や容量)を抽出し,シミュレーション 素子となる。そこで,マスクレイアウト全体のネットリス を行う技術である。これにより,通常の回路シミュレーショ トから寄生素子の影響を受けそうな特定ブロックのみのネッ ンでは知ることのできない寄生素子による影響を解析する トリストを再構築するプログラム,および寄生素子の影響 ことができる。 が無視できる回路ブロックをビヘイビアモデルに変換する 富士電機は,CMOS アナログ IC により低消費電力化を プログラムを開発している。これにより,シミュレーショ 志向しており,寄生素子を考慮した設計検証が今後ますま ン時間の短縮が可能で,解析の収束性が良好な,効率的な す重要となってくる。一方,寄生素子は無限に存在するた システムを構築している。 め,シミュレーションの実行時間,収束性,再現性などを さらに,このバックアノテーション技術を,今後ますま 考慮した寄生素子抽出の最適化技術を確立した。この技術 す 需要 が 高 まると 予測 されるディジタル ・ アナログ 混在 開発の過程で,既存機種を用いて検証したバックアノテー IC への適用も進めている。図6は10ビット A-D 変換器の ション結果を図5に示す。バックアノテーション結果は, 出力波形であり,バックアノテーション結果は実測結果に 実測波形をほぼ再現できている。 近い動作を示している。 454(34) 富士時報 CMOS アナログ IC 設計技術 Vol.73 No.8 2000 ジタル・アナログ混在回路設計技術や設計自動化システム あとがき の高度化,およびアナログ HDL(Hardware Description Language)による設計技術の 開発 を 行 う 計画 である。そ 以上,富士電機の電源 IC をはじめとする CMOS アナロ グ IC の設計技術の概要を述べた。 して,パワーとインテリジェンスが融合した品質の高いア ナログ IC の開発,さらなる開発期間の短縮に取り組んで 今後,電子機器に搭載される LSI に対する,高集積化, いく所存である。 高機能化,および設計期間の短縮の要求は,より一層促進 されるものと考えられる。 参考文献 富士電機では,今後,当社の特色ある回路技術,プロセ ス技術を生かした CMOS アナログマクロセルの充実,ディ (1) 鹿島雅人 ほか :CAD システム 技術 , 富士時報 , Vol.64, No.2,p.139- 141(1991) 技術論文社外公表一覧 標 題 所 属 氏 名 フィルム 基板 a-Si・a-SiGe 太陽電池 の 高 速製膜および高効率化に関する基礎検討 富士電機総合研究所 〃 〃 〃 〃 〃 〃 反田 真之 佐々木敏明 高野 章弘 田淵 勝也 藤掛 伸二 吉田 隆 市川 幸美 アモルファス太陽電池屋根一体型太陽光発 電システムの発電特性 硝化細菌を用いた毒物センサの下水道施設 への適用 Electrostatic Interactions at the Head-toDisk Interface Effect of Surface Oxidation on Laser Zone Texturing of Ni-P Coated Aluminum Magnetic Disk Rapid determination of Escherichia coli utilizing fluorescent bacteriophage infection 富士電機総合研究所 〃 〃 〃 〃 浜 敏夫 藤井 浩 大澤 正弘 市川 幸美 原嶋 孝一 エネルギーソリューション室 蟹江 範雄 富士電機総合研究所 〃 田中 良春 乾 貴誌 富士電機総合研究所 田沼 良平 発 表 機 関 第 8 回「高効率太陽電池および太陽光発電システ ム」ワークショップ(2000-7) 第37回下水道研究発表会(2000-7) 富士ストレージデバイス 中澤 真一 〃 神山 道也 富士電機総合研究所 〃 富士ストレージデバイス 田沼 良平 折笠 仁 横澤 照久 富士電機総合研究所 〃 〃 環境システム事業部 野田 直広 平岡 睦久 大戸時喜雄 多田 弘 11th Symposium on Information Storage and Processing Systems(2000-6) IWA Paris2000 Health Related Water Microbiology(2000-7) 455(35) 富士時報 Vol.73 No.8 2000 アナログ C/DMOS デバイス・プロセス技術 北村 明夫(きたむら あきお) 佐々木 修(ささき おさむ) まえがき ソナルコンピュータなどの電子機器に搭載される AC-DC コンバータ,DC-DC コンバータ,また,携帯電子機器に 富士電機のデバイス・プロセス技術は微細加工技術と高 耐圧技術の融合に特長があり,電源 IC などの分野に適用 使用されるリチウムイオン電池などのバッテリー充電を制 御するバッテリーチャージャなどがある。 されている。この分野では小型化・軽量化・低消費電力化 携帯電話機用電源 IC や大容量電源 IC は 10 V 以下の低 が望まれており,具体的には部品点数の削減のため外付け 電圧領域で使用され,DC-DC コンバータや AC-DC コン デバイスのワンチップ化や,電源電圧の低下に伴う低電圧 バータ,バッテリーチャージャでは 10 ∼ 60 V 程度の電圧 駆動化,高性能なアナログ回路技術などが要求されている。 が要求される。電流に関しても数 A オーダーの領域をカ デバイス・プロセス技術はこの要求にこたえるべく改良を バーし,かつ損失を低減するために低オン抵抗化が望まれ 重ねてきている。 ている。 ∼ (1) (4) 本稿 ではこの 電源 IC 用途 に 適 した,アナログ CMOS ( Complementary MOS)と 高耐圧横型 DMOS( Double 今回紹介するアナログ C/DMOS デバイス・プロセス技 術はこれら領域をターゲットとしている。 Diffused MOS) を 搭 載 し た ,1μm ル ー ル ア ナ ロ グ C/ 要素デバイス構造と主要特性 DMOS デバイス・プロセス技術について紹介する。 電源 IC マップ 図2に要素デバイスの断面図を示す。また,表1にデバ イスリスト,表2にプロセスフローを示す。表2のように 図1に電源 IC マップを示す。電源 IC の用途として,携 本プロセスは 1 μm プロセスをベースとしているが,LDD 帯電話機に内蔵される多チャネル携帯電話機用電源 IC や (Lightly Doped Drain)工程は削除している。この理由は, 大電流 を 供給 する 大容量電源 IC,また,プリンタやパー アナログ用途の CMOS では特性ばらつきを極力抑えなけ ればならないが,特性ばらつきはゲート長が微細になるほ ど大きくなる。そのため,LDD 工程を追加して微細トラ ンジスタ構造を得るよりも,LDD 工程を削除して工程短 図1 電源 IC マップ 縮を図った方がトータルコストダウンに寄与するからであ 10 る。また,本プロセスではプロセスオプションを選択する ことで,必要に応じたデバイスを一つのプロセスで形成す 出力電流(A) ることができる。表3にデバイス特性一覧を示す。 1 本デバイスの特長は次のとおりである。 大容量 電源IC ,高 (1) CMOS, 高耐圧 n チャネル MOSFET( NMOS) AC-DCコンバータIC 耐圧 p チャネル MOSFET(PMOS)の低しきい値電圧 DC-DCコンバータIC 0.1 化技術 バッテリーチャージャIC 携帯電話 機用電源IC (2 ) 60 V/30 V 耐圧・低オン抵抗 DMOS 技術 (3) 高抵抗ポリシリコン抵抗と低温度係数ポリシリコン抵 0.01 1 10 素子耐圧(V) 100 抗による高精度抵抗技術 (4 ) デプレション NMOS を用いた高精度基準電圧技術 (5) DMOS を用いた高周波スイッチング技術 456(36) 北村 明夫 佐々木 修 高耐圧C/DMOS デバイス・プロ セスの研究開発に従事。現在,松 本工場半導体開発センター IC 開 発部。 バイポーラ IC,Bi-CMOSIC のプ ロセスとデバイスの開発に従事。 現在 , 松本工場半導体開発 セン ター IC 開発部。 富士時報 アナログ C/DMOS デバイス・プロセス技術 Vol.73 No.8 2000 電源 IC へも低電圧駆動が要求されてきている。 そ こ で , ア ナ ロ グ 回 路 を 構 成 す る CMOS , 高 耐 圧 3.1 低しきい値電圧化技術 ディジタル LSI の 動作電圧 の 低下 や, 携帯電子機器 に NMOS, 高耐圧 PMOS の 低 しきい 値電圧化 を 図 った。 具 使用されるリチウム電池のバッテリー電圧の低下により, 体的には 1 μm ルール使用によるゲート酸化膜厚の薄膜化, 図2 要素デバイスの断面図 のデバイス特性に示すように低しきい値化を実現し,電源 チャネルイオン注入の打ち分けを行った。その結果,表3 IC として 2 V 以下の低電圧駆動が可能となった。 NMOS G S PMOS G S D n+ p+ n+ S n+ nウェル レータの方式があるが,ともに大電流・低損失を要求され p基板 る。そのデバイス的な判断基準として,出力デバイスの単 位面積 あたりのオン 抵抗 ( Ron・A)があり, 低抵抗化 に 低V th 60V PMOS G n+ G D S n+ p+ nオフセット pウェル 注力している。Ron・A はチップサイズに影響し,Ron・A D p+ が小さいほどチップ面積は小さくなる。 pオフセット pチャネル2 図3,図4に耐圧と Ron・A nウェル p基板 p基板 G n+ pチャネル p+ pチャネル pウェル より最適なオン抵抗での設計を可能としている。 pオフセット nオフセット p基板 と 30 V デバイスを同一プロセス内で形成し,使用電圧に D p+ n+ nオフセット pオフセット なると Ron・A は 上昇 する。 富士電機 では 60 V デバイス G S D nウェル 3.3 高抵抗・低温度係数ポリシリコン抵抗技術 p基板 低オン抵抗30V NDMOS G n+ D S p+ nオフセット pオフセット pチャネル 高性能なアナログ回路には高精度な抵抗が要求される。 低オン抵抗30V PDMOS n+ G pオフセット pチャネル p基板 図5に高抵抗ポリシリコン抵抗と従来の拡散抵抗の印加電 D p+ nオフセット pウェル の関係を示す。このように 耐圧と Ron・A はトレードオフの関係になり,耐圧が高く 低オン抵抗60V PDMOS 低オン抵抗60V NDMOS S 電源 IC にはシリーズレギュレータとスイッチングレギュ pウェル p基板 低V th 60V NMOS S 3.2 60 V/30 V 耐圧・低オン抵抗技術 D n+ nデプレション pウェル p基板 pチャネル G D p+ pチャネル2 pチャネル S デプレションNMOS 表2 プロセスフロー nウェル p基板 プロセスフロー 表1 デバイスリスト 能動素子 受動素子 標準プロセス n ウェル拡散 ○ p ウェル拡散 ○ オプション プロセス p オフセット拡散 ○ NMOS 高抵抗ポリシリコン抵抗 n オフセット拡散 ○ PMOS 低温度係数ポリシリコン抵抗 n ツェナー拡散 ○ デプレション NMOS 拡散抵抗 フィールド酸化膜形成 ○ 低 V th 60V NMOS ポリシリコン容量 チャネル拡散 ○ 低 V th 60V PMOS MOS 容量 デプレション拡散 ○ 低オン抵抗60V NDMOS ゲート電極形成 ○ 低オン抵抗60V PDMOS ソース・ドレイン拡散 ○ 低オン抵抗30V NDMOS 高抵抗・低温度係数ポリシリコン形成 低オン抵抗30V PDMOS コンタクト形成 ○ NPN 第1金属形成 ○ PNP 第2金属形成 ツェナーダイオード パッシベーション形成 ○ ○ ○ 表3 デバイス特性一覧 デバイス CMOS 高耐圧 MOS(60 V 耐圧) 高耐圧 DMOS(60 V 耐圧) 高耐圧 DMOS(30 V 耐圧) 項目 NMOS PMOS 低 V th NMOS 低 V th PMOS 低オン抵抗 NDMOS 低オン抵抗 PDMOS 低オン抵抗 NDMOS 低オン抵抗 PDMOS V th 0.5 V 0.5 V 0.5 V 0.5 V 1.0 V 1.0 V 1.0 V 1.0 V BVdss 11 V 11 V 90 V 75 V 87 V 75 V 43 V 47 V R on A ー ー ー ー 0.124 Ω・mm2 0.315 Ω・mm2 0.066 Ω・mm2 0.205 Ω・mm2 457(37) 富士時報 アナログ C/DMOS デバイス・プロセス技術 Vol.73 No.8 2000 図3 耐圧とオン抵抗の関係(NMOS) 図5 高抵抗ポリシリコン抵抗と拡散抵抗の印加電圧依存性 1 175 抵抗変化率(%) 単位面積あたりのオン抵抗 R on・A(Ω・mm2) :他社品 当社60V NDMOS 当社30V NDMOS 0.1 150 p型拡散抵抗 125 n型拡散抵抗 高抵抗ポリシリコン 100 シリコンリミット 0.01 10 50 75 100 0 5 10 素子耐圧(V) 図4 耐圧とオン抵抗の関係(PMOS) 20 25 30 35 図6 低温度係数ポリシリコン抵抗の温度依存性 1 120 :他社品 当社60V PDMOS 当社30V PDMOS 110 抵抗変化率 (%) 単位面積あたりのオン抵抗 R on・A(Ω・mm2) 15 印加電圧(V) 0.1 高抵抗ポリシリコン 100 低温度係数ポリシリコン 低抵抗ポリシリコン 90 シリコンリミット 80 −40 −20 0.01 10 50 100 0 20 40 60 80 100 120 140 測定温度 (℃) 素子耐圧(V) 図7 デプレション NMOS を用いた基準電圧回路構成 圧依存性を示す。このように,拡散抵抗では抵抗値の印加 電圧依存性が高く,かつ基板電圧依存性も高いため,設計 者はこの依存性を考慮して回路を検討しなければならなかっ た。これに対してポリシリコン抵抗では印加電圧,基板電 電源電圧 デプレション NMOS 圧に対してほとんど依存性がないため,回路特性の大幅な 向上が期待できる。富士電機ではこのポリシリコン抵抗の 抵抗値 をイオン 注入 により 決定 しており, 1.5 kΩ/□ と エンハンスメント NMOS 400 Ω/□ の 2 種類 を 開発 した。ここで, 400 Ω/□ は 温度 特性 を 考慮 しており, 図 6 に 示 すようにその 係数 は 100 ppm/℃以下である。この抵抗を使用することで,温度に 対しても高性能な回路を構成することが可能となる。 き+ − 0.5 %と高精度を達成している。 3.4 デプレション NMOS を用いた高精度基準電圧技術 デプレション NMOS とエンハンスメント NMOS を 用 いた基準電圧回路は温度特性が良好であり,かつ消費電力 3.5 DMOS を用いた高周波スイッチング技術 電子機器の小型・軽量化へのニーズから電源ユニット自 が少ないことが知られている。その回路構成を図7に示す。 体も同様の要求がなされている。電源ユニットの小型化に 富士電機では上記デバイスのチャネル幅・ゲート長の最 は,電源のスイッチング周波数の高周波化による負荷コイ 適化とデプレションイオン注入の最適化により,図8に示 すように温度に対する変動率を極小に抑制した。 ルの小型化が最も効果的である。 従来はスイッチングデバイスには外付けディスクリート また,初期的な出力電圧ばらつきはトリミング技術を用 デバイスを使用していたため,ゲート入力容量,帰還容量 いて 補正 を 行 い, 温度特性 を 含 めたトータル 出力 ばらつ ともに非常に大きくならざるを得ず,高速スイッチングに 458(38) 富士時報 アナログ C/DMOS デバイス・プロセス技術 Vol.73 No.8 2000 図8 基準電圧回路出力電圧の温度依存性 あとがき 1.10 1.08 電源 IC の分野では,高性能なアナログ回路技術のニー 1.06 ズが高まっており,デバイス・プロセスとしてもこの要求 出力電圧(V) 1.04 にこたえ,かつその先を見据えた開発が必要である。富士 1.02 電機は高耐圧・低オン抵抗技術をベースとし,さらに特長 1.00 あるデバイス・プロセス技術を開発し,社会に貢献してい 0.98 く所存である。 0.96 0.94 参考文献 0.92 0.90 −20 −10 (1) 北村明夫ほか: Surrounding-Body 領域を有する自己分離 0 10 20 30 40 温 度(℃) 50 60 70 80 型高性能横型 DMOSFET 構造,電子情報通信学会総合大会, C-561,p.154(1995) (2 ) Kitamura, A. et al.: “Self-Isolated and High Performance Complementary Lateral DMOSFETs with Surrounding- とって障害となっていた。しかし,このスイッチングデバ Body Regions”. Proceedings of ISPSD ’ 95. p.42-47(1995) イスを帰還容量の小さい横型低オン抵抗 DMOS としてチッ (3) 北村明夫 ほかゥ : Surrounding-Body 領域 を 有 する DMOS プ内に取り込み,かつそのサイズを仕様により最適化する FET の電気的特性,電気学会研究会,EDD-95-93,p.75-80 ことにより,極小なゲート入力容量,帰還容量の設定が可 能 となり, 例 えば 3 MHz/1 A 出力 の 高周波 スイッチング を実現している。 (1995) (4 ) 多田元・北村明夫:高耐圧 IC プロセス 技術 , 富士時報 , Vol.69,No.8,p.410-416(1996) 459(39) 富士時報 Vol.73 No.8 2000 電源 IC 用パッケージ 河田 尚文(こうだ たかふみ) (1) まえがき ジを独自開発し,1988年から製品化している。現在は,透 明樹脂のモールドパッケージ上に光学レンズ系を高精度に 近年,電子機器の小型化・軽量化・高機能化を実現する 位置決め接着したオートフォーカスモジュールが主流であ 高密度実装に伴い,パッケージング技術を含む IC 実装技 る。 図 2 に 透明樹脂 パッケージと,オートフォーカスモ 術が次々と開発されている。 ジュール製品を示す。 そのなかで,富士電機の IC パッケージ技術の概要と電 源 IC 用パッケージについて述べる。 そのほか富士電機では,実装技術として COB(Chip on Board)実装でドライバモジュールを製品化しているほか, (2) 金 バンプ,はんだバンプのプロセス も 持 っており, CCB 富士電機の IC パッケージ技術の概要 ( Controlled Collapse Bonding) 実 装 , COF( Chip on Film)実装,COG(Chip on Glass)実装に対応可能であ 富士電機 の IC パッケージは, 1981年 に DIP( Dual In- る。 line Package) 製品 を 市場 に 出 し,その 後 SOP( Small Out-line Package), QFP( Quad Flat Package), SSOP 電源 IC 用パッケージ (Shrink Small Out-line Package),TSSOP(Thin Shrink Small Out-line Package)の狭リードピッチ化,薄型化に 対応している。さらには SON(Small Out-line Non-lead) , 富士電機の電源 IC 製品は,1∼3チャネルの少出力端 子製品と,4チャネル以上の多出力端子製品に大別され, QFN( Quad Flat Non-lead)を 系列化中 であり, 顧客 の 現在量産中の電源 IC 用パッケージは,すべてプラスチッ 要求に応じて BGA(Ball Grid Alley) ,LGA(Land Grid クモールドパッケージである。 Alley)パッケージも可能である。図1に QFN48 ピンパッ ケージを示す。 少出力端子製品 では,その 用途 に 応 じて DIP, SOP, SSOP,TSSOP で,6 ピンから20ピンの各種小ピン用パッ また,オートフォーカス IC 用透明樹脂モールドパッケー 図2 透明樹脂パッケージとオートフォーカスモジュール製品 図1 QFN48 ピンパッケージ 河田 尚文 IC 組立品 の 開発 に 従事 。 現在 , 松本工場半導体開発 センター IC 開発部。 460(40) 富士時報 電源 IC 用パッケージ Vol.73 No.8 2000 表1 富士電機の主な電源 IC 用パッケージ 端子数 リードピッチ (mm) 代表的な取付け高さ (mm) 6 8 16 20 DIP 2.54 4.30 ● ● ● ● SOP 1.27 2.20 ● ● SSOP 0.65 2.00 TSSOP 0.65 1.10 ● ● SON 0.50 0.85 ▽ ▽ QFP 0.50 (64ピンは0.4ピッチ可) 1.55 QFN 0.50 1.00 LGA 0.50 1.30 外 形 ● 28 32 48 ● ● 56 64 80 ● ● ● ○ ● ▽ ○ ●:量産供給中 ○:開発中 ▽:検討中 ケージを用意している。一方,多出力端子製品では,顧客 の課題がある。 要求に応じたパッケージサイズ,端子ピッチ,端子形状で (1) 実装はんだ融点上昇によるパッケージ耐熱の確保 対応しており,現在各種 QFP を中心に量産中で,QFN, (2 ) リード端子はんだめっきの鉛フリー化 LGA も 系列化 を 推進 している。 表1 に 富士電機 の 主 な 電 源 IC 用パッケージの一覧を示す。 現在量産している富士電機の電源 IC に関しては,一部 の QFP パッケージを除きリフロー260 ℃ピーク/255 ℃ 10 最近,CSP(Chip Size Package)と呼ばれるチップサ 秒の実装条件での耐熱の確保はできていることを確認して イズに近いいろいろなパッケージング方法が実現しており, おり,その一部の QFP パッケージについても2000年9月 小型携帯機器の 使用 を 前提 とした 顧客 から CSP 化 の 要求 までに対策を完了する。量産準備中のパッケージに関して が強まっているなかで,電源 IC 用チップの高集積化,高 は,開発時から耐熱性を確保するよう設計を進めている。 効率化,高速化に伴う発熱などの矛盾した問題を解決しな リード 端子 はんだめっきに 関 しては, Ti/Pd/Au, Sn- ければならない。富士電機では電源 IC 用のパッケージと Ag,Sn-Bi,Sn-Cu のめっき材について検討をしているが, してどのような CSP の形態が採用可能であるか,さらに 鉛フリー化対応製品の量産供給を 2001 年 4 月から対応で はもっと別の実装形態があるのか,という視点で主に以下 きるよう,鋭意推進中である。 の観点から検討を進めている。 (1) 低オン抵抗製品に対する低電気抵抗端子の実現 あとがき (2 ) パッケージ,実装形態による放熱問題の解決 (3) 少ピン電源 IC 製品におけるコストメリットの創出 パッケージ自体の開発とは別に,新規に開発した実装面 以上述べたように,今まで富士電機の電源 IC は標準的 なパッケージを中心に製品を提供してきたが,今後の携帯 積が小さく電極間ピッチが小さいパッケージにおいては, 機器の伸張や新しい電子機器の出現に伴い,電源 IC 分野 一般部品として発売されている測定治具が存在していない にもさまざまなパッケージ,実装形態を提案しなければな 場合が多い。特にパッケージ電極と電気的測定試験装置を らない。 接続する測定ソケットが問題となる。そのような状況から このような市場動向,顧客要求に迅速にこたえられるよ 新規パッケージを開発する際には,製品の電気的特性試験 う,電源 IC としてどのような供給形態が適切なのか,実 測定用ソケットおよび測定方法の開発も併せて行っており, 装まで考慮した技術の開発を推進していく所存である。 パッケージ技術者,テスト技術者および機種担当者が一体 となって,安定した製品仕様の実現に努めている。 参考文献 (1) 西部隆: オートフォーカス IC, 富士時報 , Vol.64, No.2, 電源 IC 用パッケージ製品の鉛フリー化対応 p.145- 148(1991) (2 ) 広橋修ほか:パッケージ技術,富士時報,Vol.67,No.2, IC パッケージの 鉛 フリー 化 には, 大 きくは 以下 の 二 つ p.138- 141(1994) 461(41) 富士時報 Vol.73 No.8 2000 広角・小型オートフォーカスモジュール 泉 晶雄(いずみ あきお) まえがき FM6260W80 の主な特長 コンパクトカメラ業界では,ズーム機能搭載による高性 この新構造の光学系を採用した広角・小型 AF モジュー ルの特長は次のとおりである。 能化および小型軽量化が進められている。特にオートフォー カス(AF)システムの優劣がコンパクトカメラの性能を (1) 小 型 左右する大きなポイントとなっている。 アナログデータ出力タイプのセンサを用いることにより センサピッチが小さくでき,これに伴ってモジュールの小 従来 , 富士電機 では,センサデータの A-D 変換 と AF 演算回路 をワンチップ 化 した AFIC に 光学系 を 組 み 合 わ 型化を実現した。 せた AF モジュールを 1992年 から 量産 してきた。また, APS( Advanced Photo System)フィルム 用 カメラの 登 図1 FM6260W80 の外観 場による一層の小型化の要求に対して,センサピッチの縮 小が可能なアナログデータ出力タイプの AF モジュールを 1998年から量産し,好評を得ている。 今回,アナログデータ出力タイプのセンサと新しい構造 の光学系の採用により,小型で広角測距が可能な低価格の AF モジュール「 FM6260W80」をディジタルカメラや2 倍ズームクラスのコンパクトカメラ向けに開発した。 図1に FM6260W80 の外観を示し,以下にその構成,構 造 , 特長 を 紹介 する。また, 表 1 にはアナログタイプの AF モジュールの機種系列を示す。 表1 アナログタイプ AF モジュールの機種系列 機 種 項 目 適用 AFIC FM6256T36 FM6254T34 FM6255AT42 FM6260W80 FB6256T FB6254T FB6255T FB6260 24 24 16 14 端子数(ピン) 3倍以上のズーム コンパクトカメラ 適用対象 B 基線長 (mm) 7.118 f 焦点距離 (mm) センサ数 2倍以上のズームコンパクトカメラ 5.566 5.566 2倍以下のズームコンパクトカメラ, 3倍以下のディジタルカメラ 5.566 10.7 10.7 5.7 4.2 2×224 2×130 2×130 2×200 12 21 12 14 センサピッチ( m) センサ感度(V/s) 〔A 光源 5EV〕 147 220 200 880 最大視野角(度) 10.1 10.1 10.8 25.9 3.6∼6.0 4.0∼6.0 4.0∼6.0 3.0∼6.0 電源電圧(V) 泉 晶雄 光応用機器,オートフォーカスモ ジュールの研究開発に従事。現在, 松本工場半導体開発 センター IC 開発部プリンシパルエンジニア。 応用物理学会会員。 462(42) 富士時報 広角・小型オートフォーカスモジュール Vol.73 No.8 2000 図2 アナログタイプ AFIC の回路ブロック図 図3 センサデータの出力例 バイアス回路 ×n 右センサ アレイ ×n 増幅回路 サンプル ホールド + ピーク 検出回路 シフト レジスタ セ ン 電サ 圧出 (V) 力 左センサ アレイ 右センサ アレイ 左センサ ポジション 右センサ ポジション V ref (2.7V) センサリセット モード選択 レジスタ 右レンズ 左レンズ 増幅回路 サンプル ホールド + ピーク 検出回路 シフト レジスタ 感度・ピーク 検出選択 AD/ EXTEND TEST VREF/2 ほか 左センサ アレイ リセット 回路 RESET WRITE-CLK END 積分終了 電圧 READ -CLK センサデータ 積分終了回路 出力制御回路 内部 リセット END 自動積分 終了検出回路 READ/ WRITE -CLK VREF/2 センサ データ モニタ データ MON 図4 ホトダイオードの断面構造 ×2 AFDATA ポリシリコン ゲート モニタデータ 出力回路 Al ポリシリコン ゲート SiO2 ×2 SiN MDATA モニタ データ n+ソース・ドレイン (2 ) 低価格 pウェル-1 従来 , IC 単体 と 光学系 とに 分 かれていた AF モジュー ルを一体構造としたので,大幅な工数削減が可能となり低 価格を実現した。 nウェル ホトダイオード p+ソース・ドレイン pウェル-2 n 基板 (a)アナログタイプ ポリシリコン ゲート Al ポリシリコン ゲート SiO2 SiN (3) 遮 光 新構造の採用により従来必要であったクリアモールド部 分の遮光が不要となり,より少ないスペースで実装が可能 となった。 n+ソース・ドレイン pウェル (4 ) 高感度 明るいレンズを採用し,応答時間 200 ms で被写体の最 nウェル p+ソース・ドレイン ホトダイオード n 基板 (b)ディジタルタイプ も 明 るい 部分 が −1.3 EV という 暗 さでも 測距 が 可能 であ る。 て選択・出力され,そのデータは図3に示すように,被写 (5) 広画角 約26度の視野をカバーする。 体像の明るい部分が結像した画素は出力電圧が低く,暗い 部分に対応する画素は出力電圧が Vref に近い値となる。 AFIC の回路構成 ホトダイオードの構造および特性 図2にアナログタイプ AFIC の回路ブロック図を示す。 詳細な説明は省略するが,本 IC は,左右センサアレイの MOS アナログセンサでは,増幅回路の変更に伴いホト 各ホトダイオードの光電流を,MOS トランジスタからな ダイオード部の構造も変更した。図4にその断面構造をト る積分回路および増幅回路で電圧に変換,増幅し,センサ ランジスタとともに示す。従来のディジタルタイプとは異 データとしてサンプルホールドする構成になっている。 積分は基準電圧 Vref からスタートし,積分時間に応じて 出力電圧が下降していく回路構成となっている。そして, なり,ホトダイオードを基板から電気的に分離する構造と した。これにより,基板内で発生するキャリヤの影響を受 けなくなり,映像データへのノイズが低減している。 積分終了の信号を受けてそのときの電圧がサンプルホール また,このホトダイオード部の構造の変更により,分光 ドされる。各画素のセンサデータは外部クロックに同期し 感度特性も図5のように変化する。すなわち,基板の深い 463(43) 富士時報 広角・小型オートフォーカスモジュール Vol.73 No.8 2000 部分 で 発生 するキャリヤを 基板 と p ウェル -2 の 間 の 接合 シ 樹脂 で 封止 して AFIC 単体 (クリアモールド)を 最初 で吸収してしまうため,ディジタルタイプに比べ長波長側 に 製作 する。この AFIC 単体 に,レンズを 接着 した 遮光 の光の感度が低下している。 ケースを一つずつ位置決め接着して AF モジュールとして 仕上げる。 新しいモジュール構造の特長 一方 で 今回新 しく 採用 した 構造 を 持 つ FM6260W80 で は,リード端子をインサート射出成形した樹脂製のセンサ ステージに,AFIC チップをダイ付け,ワイヤリングする。 5.1 コストの低減 従来の構造を持つ AF モジュール FM6255AT42 と新構 封止をせずに絞りとレンズをセンサステージに接着した後, 造を採用した FM6260W80 の構造を比較して図6に示す。 レンズと AFIC の 間 に 透明 な 封止材 を 注入 して 硬化 させ 従来構造の FM6255AT42 では,リードフレーム上にダ る。AFIC 単体を製作するのと同程度の工数で AF モジュー イ 付 けとワイヤリングをした AFIC チップを 透明 エポキ ルを製作できるため,従来構造に比べてコストを大幅に低 減できる。 図5 分光感度特性 5.2 センサ特性の改良 1 コストだけでなく特性の面においても新しい構造によっ 0.9 て改良されている。従来のクリアモールドではモールド樹 アナログ タイプ 0.8 脂 である 透明 エポキシ 樹脂 の AFIC チップへの 応力 が 大 0.7 きいために,この応力が温度や湿度によって変動してセン 相対感度 0.6 サ特性に微妙な影響を及ぼしていた。センサピッチが広い 0.5 場合はほとんど問題がないが,センサピッチが狭くなるに 0.4 従い影響が大きくなる。 ディジタル タイプ 0.3 0.2 FM6260W80 に使用する封止材は構造を支える必要がな 0.1 いために柔軟性に富む材料を採用することができ,このた め AFIC チップには 応力 がほとんどかからず, 特性 の 変 0 400 600 800 動を生じない。今後狭ピッチ化を進めてより小型で高性能 波 長(nm) のモジュールを開発する際には,同様の構造をモジュール 図6 従来の AF モジュール構造と新構造の比較 光線 遮光ケース 5.95 7.55 片面非球面レンズ AFIC単体(クリアモールド) AFICチップ リードフレーム 12.8 6.4 8.4 (a) FM6255AT42(従来構造) 光線 絞り 6.4 8.2 両面非球面レンズ 封止剤 AFICチップ センサステージ 13.2 1番ピン識別マーク 464(44) 5.5 7.5 (b) FM6260W80(新構造) 富士時報 広角・小型オートフォーカスモジュール Vol.73 No.8 2000 図7 従来の AF モジュールと新構造の遮光の比較 体に十分対応できる低コストのセンサを目標とした。 このため,レンズの F ナンバーを従来の 3 から 1.4 と明 るさで約 4 倍にし,センサチップ自体の感度をセンサピッ チに合わせて最適化した結果,AF モジュールの感度は表 1に示したように 880 V/s まで高くすることができた。応 答時間 200 ms で被写体の最も明るい部分が−1.3 EV とい (a)FM6255AT42 (従来構造) (b)FM6260W80 (新構造) う暗さでも測距が可能である。また,低倍ズームでの中抜 け防止や被写体のコントラストをとらえやすくするために, 画角を従来の約 2 倍の26度とした。 この明るさと広角を両立させるためにレンズは両面非球 やパッケージに適用していく予定である。 面とし,封止材側の非球面でも歪曲(わいきょく)収差な どの各収差の補正をして十分な性能を引き出している。 5.3 遮光性の改良 従来,カメラに AF モジュールを搭載する際に,黒色テー あとがき プやカメラ内の構造的な仕切りによって透明なクリアモー ルド部分を完全に遮光する必要があった。FM6260W80 で は,図7に示すように従来のクリアモールドに相当する部 以上 , 富士電機 の 新 しい 構造 を 採用 した 低 コストの 広 角・小型 AF モジュールを紹介した。 分は黒色の樹脂で構成されており,すでに遮光されている 富士電機 では, 今後 ,より 高性能 , 低 コストの AF モ ので新たな遮光は必要がなく,カメラへの組込みの際の工 ジュールを開発し,顧客のニーズに対応した独創性の高い 数やスペースの削減に寄与できる。 製品を開発していく所存である。 明るい広角レンズ 参考文献 (1) 泉晶雄・西部隆:オートフォーカスモジュール,富士時報, FM6260W80 では,低照度の AF に時間がかかるディジ タルカメラや,コスト的に厳しい 2 倍ズームクラスのコン パクトカメラの用途を考え,補助光なしでも低照度の被写 Vol.68,No.7,p.415- 420(1995) (2 ) 田中誠ほか:MOS アナログセンサを適用したオートフォー カスモジュール,富士時報,Vol.71,No.8,p.445-447(1998) 465(45) 富士時報 Vol.73 No.8 2000 EMI 対策内蔵型圧力センサ 加藤 和之(かとう かずゆき) 篠田 茂(しのだ しげる) まえがき ンデンサ,インダクタなどの回路部品とその搭載,電気的 接続のための基板,さらにシールドケースが必要であった。 マイクロマシニング技術,IC プロセスを応用した半導 これら部品の費用および組立実装のための加工費用は,製 体圧力センサは,近年,自動車,医療,計測など広い分野 品のコストダウンに対する大きな阻害要因であった。EMI で用いられている。特に自動車分野においては,環境規制 対策内蔵型圧力センサでは,これらのノイズ対策用の外付 対応のための排ガスのクリーン化,直噴エンジンのような け回路部品,および組立実装工程が不要であり,低価格の 低燃費達成のための高度に電子化されたシステムでの需要 圧力センサが実現可能である。 が急増しており,高性能で低価格の圧力センサが望まれて いる。一方,エンジンルーム内の高密度化,プラスチック シャーシの採用,自動車無線・携帯電話の普及とともに, 自動車の電磁ノイズ環境はより厳しくなってきており,車 載の電子部品はより高レベルの電磁波障害(EMI:Electromagnetic Interference)の対策が要求されている。 (3) 高ノイズ耐性 100 V/m, 1 MHz から 1 GHz のノイズ 環境 でも 正常 な 動作が可能である。 (4 ) 増幅,調整機能を内蔵 チップに内蔵された増幅回路,薄膜抵抗レーザトリミン グによる調整,温度補償機能により,ユーザー要求の圧力 富士電機では,1992年にセンシング部と増幅調整回路を ワンチップ上に集積化した圧力センサを製品化した。今回, 信号を得ることができ,電気的特性に手を加えることなく システムに組み込むことが可能である。 さらにチップ上にノイズ対策用ローパスフィルタを集積化 した EMI 対策内蔵型圧力センサを開発し,車載用として 必要なノイズ耐性を有する圧力センサを低価格で実現した。 この EMI 対策内蔵型圧力センサの技術および製品につい 図1 圧力センサの外観とユーザー工程の比較 て,その概要を紹介する。 EMI対策内蔵型圧力センサ 特 長 (1) 小型,高信頼性 センシング部,増幅調整回路部,さらにノイズフィルタ とその保護素子をワンチップ上に集積化し,さらにチップ への応力緩和のためのガラススペーサ,入出力端子を有す るシンプルなパッケージで構成される。この構造でノイズ 対策のための部品を外付けすることなく,自動車のエンジ ンルーム内での使用が可能であり,従来の圧力センサと比 圧 力 セ ン サ の 外 観 ︵ ノ イ ズ 対 策 付 き ︶ センサ本体(樹脂ケース) めのワイヤボンディング部 3 か所のみであり,高い信頼性 を実現することができる。 貫通コンデンサ(3個) 部品数:1 ユ ー ザ (1)外装組立 ー (2)最終特性測定 工 程 (2 ) 低価格 従来ノイズ対策のためには,チップコンデンサ,貫通コ 加藤 和之 篠田 茂 半導体圧力センサの開発に従事。 半導体圧力センサの開発に従事。 現在,松本工場 IC 部プリンシパ 現在,松本工場 IC 部。 ルエンジニア。 466(46) センサ本体(金属ケース) シールド ケース 。 較して大幅な小型軽量化が可能である(図1) また電気的な接合箇所は,電源供給および信号出力のた 従来方式の圧力センサ (貫通コンデンサで EMI対策の場合) 部品数:5 (1)EMI対策部組立 貫通コンデンサ外周部 はんだ付け(3か所) 貫通コンデンサ中央穴 はんだ付け(3か所) シールドケース接合 (2)外装組立 (3)最終特性測定 富士時報 EMI 対策内蔵型圧力センサ Vol.73 No.8 2000 チップ・回路設計 耐ノイズ設計 EMI 対策内蔵型圧力 センサのチップ 写真 を 図2 に 示 す。 4.1 ノイズフィルタの設計 チップサイズは 3.5×3.5(mm)である。拡散型ひずみゲー ローパスフィルタのキャパシタとして採用した MOS 型 ジ,トランジスタ,ダイオードはバイポーラプロセスで構 コンデンサは理想コンデンサに近く,周波数特性がきわめ 成され,さらに薄膜抵抗形成工程,ダイアフラム加工工程 てよい。図4にその周波数特性を示す。またローパスフィ が追加されている。ノイズ除去のためのローパスフィルタ ルタの抵抗としては,寄生容量が少なく高周波特性のよい はコンデンサと薄膜抵抗で構成されるが,高品質の酸化膜 薄膜抵抗を用いた。 が必要とされるコンデンサの形成には MOS プロセスを採 用した。 ローパスフィルタのカットオフ周波数付近での特性を図 5に示す。センサの入出力に接続されるハーネスにノイズ 図3に回路図を示す。電源電圧入力端子(VCC)と GND が誘起されるのは,電磁波の波長がハーネス長と同等にな 端子間,信号電圧出力端子(VOUT)と GND 端子間にそ る 10 MHz 付近 より 上 であるので,カットオフ 周波数 を れぞれ C,R の二次フィルタが接続される。このフィルタ 10 MHz に設定するように C,R の値を決定した。またロー により,ハーネスを経由して侵入するラインノイズを除去 パスフィルタの減衰特性を急しゅんにするため,二次フィ している。 ルタとした。 ひずみゲージブリッジ RG1 ∼ RG4 の出力電圧は,演算 電源電圧入力端子部のフィルタによる電圧降下を抑える 増幅器 OP1, OP2 と 薄膜抵抗 , 拡散抵抗 からなる 回路 で ため,ひずみゲージ部,演算増幅器,補償,調整抵抗部で 増幅,調整,温度補償され出力される。 消費する電流を抑え,その結果,電源電圧 5 V で出力動作 範囲 0.2 ∼ 4.75 V を確保することができた。 ローパスフィルタのコンデンサ保護のため,静電気,サー ジ吸収用のツェナーダイオードを入出力端子に接続し,車 載用として必要な耐久性を確保した。 図2 EMI 対策内蔵型圧力センサのチップ写真 図4 MOS 型コンデンサの周波数特性 インピーダンス(Ω) 10,000 ディスクセラミック コンデンサ(500pF) 1,000 100 MOS型コンデンサ (500pF) 10 500pF理想コンデンサ 1 0.1 1.00E+00 1.00E+01 1.00E+02 周波数(MHz) 1.00E+03 図3 EMI 対策内蔵型圧力センサの回路図 図5 EMI 対策内蔵型圧力センサのローパスフィルタ減衰率の R10 C3 R11 R7 − C1 R1 OP1 + RG3 RG4 ひずみゲージ ブリッジ R5 R2 ZD1 1.2 R6 1.0 − C2 R12 R13 VOUT R8 OP2 + C5 C6 ZD2 R4 0.8 減衰率 RG2 周波数特性 C4 R3 R9 RG1 VCC 0.6 0.4 0.348 RMD RMT GND 0.2 S5 0 拡散抵抗 薄膜抵抗 1 10 100 1,000 周波数(MHz) 10,000 467(47) EMI 対策内蔵型圧力センサ Vol.73 No.8 2000 図6 EMI 対策内蔵型圧力センサの組立構造 表1 EMI 対策内蔵型圧力センサの主要な特性仕様 樹脂ケース 特 性 マニホルド圧検出用 196 kPa 保存温度 −40∼+150℃ −40∼+120℃ 使用温度 −40∼+130℃ センサ チップ ガラス スペーサ −40∼+90℃ アルミ ワイヤ シリコーン 接着剤 センサ端末 電源電圧範囲 出力特性 (電源電圧 5 V) 4.75∼5.25 V(標準 5 V) 4.75∼5.25 V(標準 5 V) 出力(V) シールド板 ゲル 3.96 1.2 12 VCC GND 大気圧検出用 450 kPa 最大許容圧力 出力(V) 富士時報 3.045 1.773 112 60 圧力(kPa.abs) 106.7 圧力(kPa.abs) VOUT 誤 差 図7 EMI 試験装置(TEM セル) 電界強度計 光ファイバ ラインフィルタ (計測器保護) 25℃ :±1.5%FS −40∼+130℃ :±2.5%FS 25℃ :±3.0%FS −40∼+90℃ :±6.0%FS 消費電流 5 mA(最大) シンク電流 1 mA(最小) ソース電流 0.1 mA(最小) 静電気耐性 ±250 V:0 Ω,200 pF ±2 kV :1.5 kΩ,100 pF 出力イン ピーダンス 23 Ω(最大) 応答性 5 ms(最大) 試験品 信号 発生器 広帯域 増幅器 TEMセル ローパス 双方向 (G-TEM) フィルタ 結合器 電源 電圧計 特性・仕様 図8 EMI 対策内蔵型圧力センサの EMI 試験結果 出力変動値(mV) EMI 対策内蔵型圧力 センサの TEM セルによる 試験装 100 置を図7に示す。1 GHz まで試験可能な G-TEM を用いて 80 おり, 全周波数域 で 100 V/m の 電界強度 を 得 るため, 電 界強度計でモニタし,発振部のパワーをコントロールして 60 +1%FS いる。 40 20 この装置で試験を実施した結果は図8のとおりであり, 0 ノイズによる出力変動は 1 % FS 以下と,実用上問題のな −20 いレベルであることが確認された。 −1%FS −40 10 13 16 21 26 34 43 55 70 89 114 145 184 235 299 382 487 621 793 1,000 その他主要な特性仕様は表1のとおりである。 周波数(MHz) あとがき 市場のグローバル化に伴った価格競争の激化,ノイズ対 4.2 構造設計 策の必要性の高まりにより,ノイズ対策をチップ上に搭載 EMI 対策内蔵型圧力センサの組立構造を図6に示す。外 した小型・低コスト圧力センサの市場,用途拡大が期待さ 来ノイズの侵入を抑えるため,チップとケースとのワイヤ れる。富士電機としても,製品の開発,系列化をさらに進 ボンディング箇所は入出力の 3 端子のみとした。また,空 め市場要求にこたえていく所存である。 間を伝搬してくるノイズを防ぐため,樹脂ケース内部に金 属製 のシールド 板 を 内蔵 している。このシールド 板 は GND 端子に接続されており,チップへのシールド効果を 持たせている。 468(48) 参考文献 (1) 加藤和之:1 チップ 集積形圧力 センサ, 富士時報 , Vol.69, No.8,p.440-443(1996) 富士時報 Vol.73 No.8 2000 最近登録になった富士出願 〔特 許〕 登録番号 名 称 発明者 登録番号 2141326 前払い式カード自動販売機のカード 残額精算装置 名 称 発明者 久野 宏仁 3063234 無停電電源装置の電源切替え回路 保坂 一喜 3057895 回転電機 藤田 紘一 3063251 直流電源装置 居石 辰義 3057941 押しボタンスイッチの誤操作防止構 造 橘内 正光 3063298 蒸気タービンの弁制御装置 根岸 徹 高周波電力用発振回路 古畑 昌一 操作スイッチの保護カバー 野口 信和 高田 勇 竹内 剛久 宮下 真 3063313 3057954 3063329 自動販売機 岩本 昌三 垣内 弘行 3057979 カテナリー制御装置 小田 孝一 3063353 自動販売機の省エネ制御装置 海野 覚 汎用インバータ 横田 幸則 磁気記録媒体及びその製造方法 松尾 壮太 皆澤 宏 宮里 真樹 柏倉 良晴 3063354 3058066 3063412 可変コンデンサ 松崎 一夫 3058074 振動型測定器 木代 雅巳 吉村 弘幸 工藤 高裕 3063413 コンバータ回路 五十嵐征輝 谷津 誠 大熊 康浩 3058094 質量流量計 鹿志村 修 矢尾 博信 3063418 蒸気タービンの蒸気ストレーナ 遠山 茂 3063419 温度検出装置 電圧非直線抵抗体 坂口 豊重 向江 和郎 津田 孝一 西尾 三男 糸賀 一徳 3063422 磁気誘導素子用コイル 松崎 一夫 3063446 自動給茶機 山田 芳正 3063497 薄膜光電変換素子の製造装置 清藤 真次 清水 均 横山 康弘 3063509 薄膜光電変換素子の製造装置 藤掛 伸二 3063665 時間測定装置 工藤 高裕 吉村 弘幸 高橋 正人 中村 公弘 3059193 3059305 伝送誤り検出方法及びこれを用いた 伝送システム 伊藤 徹 3059308 避雷器の故障検知方法および装置 志賀 悟 小池 浩継 3060547 超電導コイルの製造方法 保川 幸雄 熊谷 健夫 今野 雅行 3060659 レーザロッドの保持機構 長嶋 崇弘 新藤 義彦 3060699 ドラム缶上端面の汚れ拭取装置 柳嶋 良平 3060722 ショーケースの集中管理装置 川合 正美 3064488 超音波診断装置 安井 哲夫 3060814 磁束制御形インバータの制御回路 喜納 政宏 河合 隆文 3064648 可変速給水システムの制御方法 松本 治美 3061029 半導体装置 大月 正人 西浦 彰 3064671 電力変換装置の制御回路 蓑和 弘文 石井 新一 柳瀬 孝雄 山添 勝 3061030 半導体装置の製造方法 大月 正人 西浦 彰 3062219 燃料電池用燃料改質器の熱媒体加熱 装置 大澤 勇 3064705 自動販売機 須藤 進 情報処理システム間のデータ交信制 御装置 赤羽 正志 高谷 松彦 星野 公 3064717 自動販売機の商品搬送装置 宇野 嘉夫 3062441 3064766 5脚鉄心変圧器の騒音低減方法 石川 雄一 森田 公 武 達男 藤田 満 3064785 シート巻線 川西 敬造 浮上溶解装置 3065083 自動販売機の制御装置 中野 弘久 3062535 469(49) カンパニー別営業品目 電機システムカンパニー 水処理システム,情報・通信・制御システム,計測システム,電力システム,FA・物流システム,環境装置・システム, 電動力応用システム,産業用電源システム,車両用電機品,クリーンルーム設備,レーザ機器,ビジョン機器,UPS,ミ ニ UPS,変電システム,火力機器,水力機器,原子力機器,放射線機器,電力量計,省エネルギーシステム,新エネルギー システム 機器・制御カンパニー PLC,POD,操作表示機器,FA センサなどの FA 制御機器,開閉機器,高低圧受配電機器,電力制御機器,モールド変 圧器,ガス関連機器,インバータ,サーボシステム,回転機,回転機応用機器,上記構成の小システム 電子カンパニー MOSFET,パワートランジスタ,スマートパワーデバイス,IGBT モジュール,整流ダイオード,電源用パワー IC,高耐 圧 IC,オートフォーカス用 IC,圧力センサ,加速度センサ,ハイブリッド IC,磁気記録媒体,感光体およびその周辺装置 流通機器システムカンパニー 自動販売機,コインメカニズム,紙幣識別装置,貨幣処理システム,飲料ディスペンサ,自動給茶機,冷凍冷蔵ショーケー ス,ホテルベンダシステム,カードシステム 富 士 時 報 第 73 巻 第 8 号 平 成 平 成 12 年 7 月 30 日 12 年 8 月 10 日 印 刷 発 行 定価 525 円 (本体 500 円・送料別) 編集兼発行人 谷 発 行 所 富 社 室 〒141 -0032 東 京 都 品 川 区 大 崎 一 丁 目 1 1 番 2 号 (ゲートシティ大崎イーストタワー) 編 集 室 富士電機情報サービス株式会社内 「富士時報」編集室 〒151 -0053 東京都渋谷区代々木四丁目 30 番 3 号 (新宿コヤマビル) 電 話(03)5388 − 7826 FAX(03)5388 − 7369 印 刷 所 富士電機情報 サービス 株式会社 〒151 -0053 東京都渋谷区代々木四丁目 30 番 3 号 (新宿コヤマビル) 恭 士 電 機 技 株 術 夫 式 企 会 画 電 話(03)5388 − 8241 発 売 元 株 式 会 社 オ ー ム 社 〒101 -8460 東京都千代田区神田錦町三丁目 1 番地 電 話(03)3233 − 0641 振替口座 東京 6−20018 © 2000 Fuji Electric Co., Ltd., Printed in Japan (禁無断転載) 470(50) 富士時報論文抄録 富士電機の IC の現状と展望 軽負荷時省電力機能付 PWM 制御 IC 古森 敏夫 丸山 宏志 富士時報 Vol.73 No.8 p.423-426(2000) 富士電機では,パワーとインテリジェンスと CMOS アナログを キーワードにして IC の開発を進め,高耐圧,高精度,低消費電力 などの特長を有する電源 IC に注力している。また,カメラ用オー トフォーカス IC や自動車用圧力センサといった独自のセンサ技術 を用いた製品も展開してきた。本稿では,CMOS アナログ技術を 生 かした 電源 IC を 中心 に, 富士電機 の IC 技術 と 製品 について 概 要を述べている。 1 チャネル CMOS DC-DC コンバータ制御 IC 野村 一郎 富士時報 DC-DC コンバータは小型,軽量,高効率という特長を持つ直流 の配慮から高効率化が従来以上に求められるようになってきている。 富士電機ではこの要求にこたえ,IC の CMOS 化により動作時の低 消費電流 1.2 mA, 待機時 の 消費電流 40 μA, 低 オン 抵抗出力段 に よる MOSFET 直結駆動(ハイサイド 12Ω,ローサイド 5Ω)を実 現した。さらに電源の小型化のため,TSSOP-8 パッケージの採用 と外付け部品の低減(最少 9 個)を達成した。 近年,地球規模の環境問題に対応し省エネルギー化が重要視され, 製品別に待機時消費電力の基準が決められつつある。富士電機では, 低消費電力化対応のため,従来のバイポーラプロセス製品から高耐 圧 CMOS プロセスを用いた低消費電力製品への切換を推進中であ る。その関連製品として 8 ピンの CMOS 製品である軽負荷時省電 力機能付 PWM 制御 IC を開発したので,その概要を紹介する。 同期整流対応 6 チャネル DC-DC コンバータ制御 IC 加茂 宏明 富士時報 Vol.73 No.8 p.436-439(2000) ビデオカメラなどの携帯電子機器は小型・軽量化,バッテリーに よる長時間動作が求められている。それに伴い,これらの機器の電 源装置も小型化・軽量化・低消費電流化・高効率化が要求されてい る。富士電機では,多出力電源装置の構成に適し,電源効率向上の ための同期整流方式に一部対応した 6 チャネルスイッチング電源用 制御 IC を 開発 した。 本稿 では,この 制御 IC の 定格 , 特長 , 応用 例を紹介する。 高周波 DC-DC コンバータ用 IC 技術 携帯電話機用電源 IC 富士時報 城山 博伸 Vol.73 No.8 p.427-431(2000) 遠藤 和弥 Vol.73 No.8 p.432-435(2000) 安定化電源として広く使われている。しかし最近では,環境保護へ 佐野 功 富士時報 藪崎 純 Vol.73 No.8 p.440-442(2000) 携帯電話機は,いつでも,どこでも,どこへでも,といった利便 性を特長とし,そのうえ低価格化,低消費電力化,小型化が急速に 進んだ結果,現在の高い普及率に結びついている。富士電機では, 携帯電話機用電源 IC として,8個の LDO レギュレータと,電力増 幅器のゲートバイアス用負電圧レギュレータ,演算増幅器などを内 蔵し,48ピンのパッケージとした IC を開発,製品化したので概要 を紹介する。 林 善智 富士時報 片山 靖 菅原 聡 Vol.73 No.8 p.443-445(2000) 近年の携帯電子機器における,小型化・薄型化・軽量化のニーズ にこたえる,リチウムイオン二次電池対応の超小型・薄型のスイッ チング方式 DC-DC コンバータ駆動用の IC を開発した。10 MHz ま での 高周波 PWM 制御 が 可能 (スイッチング 周波数 は 1 ∼ 6 MHz に 設定可能 )であり, 出力部 に 30 V 耐圧高速 スイッチング MOS FET を内蔵する。単一出力の降圧型,昇圧型の回路構成が可能で, 同期整流方式での駆動も可能である。また,必要外付け部品の削減 により DC-DC コンバータ回路の小型化を可能にした。 電源用アナログ・ディジタル混載 IC 技術 電源 IC 用高精度アナログ回路技術 神谷 茂 中森 昭 富士時報 佐野 友美 佐々木 雅浩 Vol.73 No.8 p.446-448(2000) IC の集積度が向上し,一つのシステムが一つのチップ上に載る ようになり,アナログ部とディジタル部が混載されるようになった。 今回,電源用アナログ回路にマイクロコンピュータを搭載して,電 源 IC のインテリジェント化を実現する技術を開発した。本稿では, その応用例として,高精度な充電電圧制御が可能なリチウムイオン + 0.5 %精度の基準電圧源を搭載し, 電池充電 IC の概要を紹介する。− 0.7 %以内 充電電圧誤差 + と 高精度 な電圧制御を実現した。 − 富士時報 鈴木 健 三添 公義 Vol.73 No.8 p.449-451(2000) 近年の携帯電子機器の急速な普及に伴い,電源のコンパクト化や 電池での長時間動作化などの仕様に対する要求はますます厳しくなっ ている。電源 IC としては,回路の低消費電力化ならびに精度の高 い制御が必要となっている。これらの要求にこたえるため,富士電 機では高精度の CMOS アナログ技術の開発を行ってきている。本 稿では,電源 IC の高精度化に特に重要となる要素回路として,基 準電圧源,演算増幅器,コンパレータの三つのアナログ回路技術に ついて紹介する。 Abstracts (Fuji Electric Journal) PWM Control IC with Power-Saving Function for Light Load Present Status and Prospects for Fuji Electric’s IC Technology and Products Hiroshi Maruyama Toshio Komori Hironobu Shiroyama Fuji Electric Journal Vol.73 No.8 p.427-431 (2000) Fuji Electric Journal Vol.73 No.8 p.423-426 (2000) Recently, to meet the global environmental problem, energy saving has been taken seriously, and standby power consumption in each product is being standardized. To reduce power consumption, Fuji Electric is promoting replacement of former products using bipolar process with new ones using high-voltage CMOS (complementary metal-oxide semiconductor) process. From among the new products, this paper gives an outline of the newly developed PWM (pulse-width modulation) control IC (integrated circuit) with power-saving function using CMOS. Fuji Electric has developed ICs (integrated circuits), under the keywords of power semiconductor, intelligence and CMOS (complementary metal-oxide semiconductor) analog, and has mainly concentrated its efforts on ICs for power supply units characterized by high voltage, high precision and low power consumption. We have also developed products using our original sensor technology such as autofocus ICs for cameras and pressure sensors for automobiles. This paper gives an outline of Fuji Electric’s IC technology and products, focusing on ICs for power supply units using CMOS analog technology. Control IC for a 6-Channel Switching DC-DC Converter Compatible with Synchronous Rectifiers 1-Channel CMOS Control ICs for DC-DC Converters Kazuya Endo Fuji Electric Journal Vol.73 No.8 p.432-435 (2000) Ichiro Nomura Fuji Electric Journal Vol.73 No.8 p.436-439 (2000) Portable electronic appliances such as video cameras require small size, light weight and long operation with batteries. To meet these requirements, power supply systems for these appliances are required to be small and light, of low current consumption and of high efficiency. Fuji Electric has developed a control IC for 6-channel switching power supply suitable for multiple output configuration and partly compatible with synchronous rectifier systems to improve power supply efficiency. This paper describes the ratings, features and application examples of this control IC. Having the advantage of small size, light weight and high efficiency, DC-DC converters are widely used for stable DC power supply systems. Because of growing concern for the protection of environment, still higher efficiency is required. To meet the requirement, Fuji Electric has attained the following: (1) low operating current of 1.2 mA, and standby current of 40 μ A using CMOS (complementary metal-oxide semiconductor) (2) direct driving circuit with low output on-resistance (high side: 12 Ω, low side: 5 Ω) for external MOSFET (metal-oxide semiconductor field-effect transistor) (3) TSSOP-8 package and less external parts (9 min.) available for small power supply. IC Technology for High-Frequency Switching DC-DC Converters Power Supply IC for Cellular Phones Zenchi Hayashi Isao Sano Yasushi Katayama Satoshi Sugahara Hiroaki Kamo Jun Yabuzaki Fuji Electric Journal Vol.73 No.8 p.443-445 (2000) Fuji Electric Journal Vol.73 No.8 p.440-442 (2000) To meet the tendency of portable electronic equipment toward small size, thinness and light weight, Fuji Electric has developed a control IC for small and thin switching DC-DC converters for lithium ion secondary batteries. The IC can perform high-frequency PWM (pulse-width modulation) control up to 10 MHz (switching frequency can be set at 1 to 6 MHz), and includes built-in 30 V high-speed switching MOSFET (metaloxide semiconductor field-effect transistor). Constructions of single output back converter or boost converter are possible, driving in a synchronous rectifying system is also possible. Decreasing the number of external compornents necessary has reduced the size of DC-DC converter circuits. Cellular phones with the advantage of convenience at any time, at any place and to any place have attained the present high diffusion as the result of improvements in size, price and power dissipation, Fuji Electric has marketed a newly developed control IC (integrated circuit) for cellular phone power supply. This IC of a 48-pin package incorporates 8 LDO regulators, a negative voltage regulator for power amplifier gate bias and an operational amplifier. High-Precision Analog Circuit Technology for Power Supply Integrated Circuits Mixed Analog-Digital IC Technology for Power Supply Akira Nakamori Shigeru Kamiya Takeshi Suzuki Kimiyoshi Mizoe Tomomi Sano Masahiro Sasaki Fuji Electric Journal Vol.73 No.8 p.449-451 (2000) Fuji Electric Journal Vol.73 No.8 p.446-448 (2000) With the recent rapid spread of portable electronic appliances, specification requirements such as compact power supply and long operation with batteries have become severer. Power supply ICs (integrated circuits) are required to reduce power consumption in the circuit and perform high-precision control. To meet these requirements, Fuji Electric develops high-precision CMOS (complementary metal-oxide semiconductor) analog technology. This paper describes three analog circuit technologies of a voltage reference, an operational amplifier and a comparator as circuit components particularly important for the precision of power supply ICs. Improvement in IC (integrated circuit) integration has realized a system on a chip, including analog and digital functions. Fuji Electric has developed technology for an intelligent power supply IC by mounting a microcomputer on the chip of a power supply analog circuit. This paper gives an outline of a lithium ion battery charging IC capable of high-accuracy control on final battery voltage. The IC with a voltage reference of + − 0.5% accuracy attained high-accuracy final battery voltage control within a final voltage error of 0.7%. CMOS アナログ IC 設計技術 アナログ C/DMOS デバイス・プロセス技術 藤本 英俊 北村 明夫 富士時報 藤澤 旭 Vol.73 No.8 p.452-455(2000) 高集積化・高機能化が進展している LSI の分野では,短期間での 富士時報 佐々木 修 Vol.73 No.8 p.456-459(2000) で開発するための,設計技術や自動化システムを開発している。本 稿 では,CMOS アナログマクロセル,回路 シミュレーション 技術 , 自動配線技術,およびバックアノテーション技術について紹介する。 電源 IC などの 分野 に適用 される,高精度 な 1 μm ルールのアナ ログ C/DMOS デバイス・プロセス技術について説明する。電源 IC の分野では小型化・軽量化・低消費電力化・高精度化が求められて いる。これに伴い,デバイスへの要求も一層厳しくなってきている。 本稿ではこれらの要求にこたえて開発した高精度な1μm ルールの アナログ C/DMOS デバイス・プロセス技術について紹介する。 電源 IC 用パッケージ 広角・小型オートフォーカスモジュール 河田 尚文 泉 晶雄 開発のため,CAD 技術を用いた設計が不可欠となっている。富士 電機 では, 電源 IC をはじめとするアナログ IC を 高品質・短期間 富士時報 Vol.73 No.8 p.460-461(2000) 富士時報 Vol.73 No.8 p.462-465(2000) 近年,電子機器の小型化・軽量化・高機能化を実現する高密度実 コンパクトカメラは,ズーム機能の搭載により高性能化・小型軽 装に伴い,パッケージング技術を含む IC 実装技術が次々と開発さ 量化が進められている。特にオートフォーカス(AF)システムの れている。本稿では,富士電機の IC パッケージおよび実装技術の 優劣がコンパクトカメラの性能を大きく左右する。富士電機では, ディジタルカメラや 2 倍ズームクラスのコンパクトカメラ向けに, アナログデータ出力タイプのセンサと新しい構造の光学系を採用し た小型で広角測距が可能な低価格の AF モジュールを開発したので, その構成,構造,特長を紹介する。 概要とともに,電源 IC 用プラスチックパッケージについて述べる。 また,最近話題となっている,電源 IC 用パッケージ製品の鉛フリー 化の取組みにも言及している。 EMI 対策内蔵型圧力センサ 加藤 和之 富士時報 篠田 茂 Vol.73 No.8 p.466-468(2000) 半導体圧力センサは,自動車,医療,計測などの分野で広く用い られている。自動車分野では,高精度,低価格で,特に近年厳しく なってきている電磁波障害(EMI:Electromagnetic Interference) への耐性の高い圧力センサの要求が高まっている。富士電機はセン シング部,増幅調整回路,さらに従来コストアップの要因であった EMI 対策をチップに内蔵した,小型・高信頼性で低価格の圧力セ ンサを製品化した。この EMI 対策内蔵型圧力センサの特徴,設計, 特性,仕様についての概要を紹介する。 Analog C/DMOS Device-Process Technology CMOS Analog Integrated Circuit Design Technology Akio Kitamura Hidetoshi Fujimoto Osamu Sasaki Akira Fujisawa Fuji Electric Journal Vol.73 No.8 p.456-459 (2000) Fuji Electric Journal Vol.73 No.8 p.452-455 (2000) In the field of power supply ICs (integrated circuits), there are strong demands for small size, light weight, low power consumption and high precision. Accordingly, requirements to devices become severer than before. This paper describes high-precision 1 μm-rule analog C/DMOS (complementary/diffused metal-oxide semiconductor) device-process technology developed to meet these requirements. In the field of the LSI (large scale integrated circuit) in rapid progress toward high integration and advanced functions, CAD (computer-aided design) technology has become indispensable to LSI development within a short period. Fuji Electric has developed design technologies and automatic design system to develop high-quality analog ICs (integrated circuits), including power supply ICs, within a short period. This paper describes CMOS (complementary metal-oxide semiconductor) analog macro cell, circuit simulation, automatic routing, and backannotation technologies. Small, Wide-Angle Autofocus Modules IC Packages for Power Supply Systems Akio Izumi Takafumi Kouda Fuji Electric Journal Vol.73 No.8 p.462-465 (2000) Fuji Electric Journal Vol.73 No.8 p.460-461 (2000) Compact cameras are improving in performance, size and weight by introducing a zoom function. The performance of compact cameras greatly depends on the autofocus system. Fuji Electric has developed a small, low-priced autofocus module capable of wide-angle distance measurement. This module with an analog data output type sensor and a new optical system can be used for digital cameras and compact cameras with the ×2-class zoom lens. This paper describes the configuration, structure and features of the module. As high-density mounting has realized small, light, and advancedfunction electron devices recently, IC (integrated circuit) mounting technologies including packaging technology have successively been developed. This paper outlines Fuji Electric’s IC packages and mounting technology, and describes plastic package for power supply ICs. In addition, it refers to its development of lead-free IC packages for power supply systems, a current topic of conversation. EMI-Prevention Pressure Sensor Kazuyuki Katoh Shigeru Shinoda Fuji Electric Journal Vol.73 No.8 p.466-468 (2000) Semiconductor pressure sensors are widely used in automobiles, medical service and measurement. In the automobile field, there is a growing demand for high precision, low-priced pressure sensors particularly with immunity to EMI (electromagnetic interference) strictly required in recent years. Fuji Electric has marketed small, high-reliability, low-priced pressure sensors which integrate on a chip the sensing part, the amplifier and adjuster circuit, and further, the preventive measure against EMI, formerly a main cause of cost increase. This paper outlines the features, design, characteristics and specifications of this EMI-prevention pressure sensor. 73-8 H 2~3.qxd 08.2.8 2:01 PM ページ1 マルチな要求に,マルチでお応えする 電源用パワーIC TSSO-16,SSOP-28,LQFP-48 VCC1 第1チャネル 制御 UVLO 電源 pチャネル ドライバ PNSEL OUT5 pチャネル ドライバ OUT6 OUT4 PGND3 pチャネル ドライバ 第3 チャネル デッドタイム 設定 デッドタイム 設定 第4 チャネル pチャネル/ nチャネル ドライバ 第5 第6 チャネル チャネル 三角波 発振器 RT CT 第2チャネル CS3 社 務 所 1(03)5435-7111 〒141-0032 東京都品川区大崎一丁目11番2号(ゲートシティ大崎イーストタワー) 北 東 北 中 関 中 四 九 海 道 支 北 支 陸 支 部 支 西 支 国 支 国 支 州 支 社 社 社 社 社 社 社 社 1(011)261-7231 1(022)225-5351 1(076)441-1231 1(052)204-0290 1(06)6455-3800 1(082)247-4231 1(087)851-9101 1(092)731-7111 〒060-0042 〒980-0811 〒930-0004 〒460-0003 〒553-0002 〒730-0021 〒760-0017 〒810-0001 札幌市中央区大通西四丁目1番地(道銀ビル) 仙台市青葉区一番町一丁目2番25号(仙台NSビル) 富山市桜橋通り3番1号(富山電気ビル) 名古屋市中区錦一丁目19番24号(名古屋第一ビル) 大阪市福島区鷺洲一丁目11番19号(富士電機大阪ビル) 広島市中区胡町4番21号(朝日生命広島胡町ビル) 高松市番町一丁目6番8号(高松興銀ビル) 福岡市中央区天神二丁目12番1号(天神ビル) 北 関 東 支 店 首 都 圏 北 部 支 店 首 都 圏 東 部 支 店 神 奈 川 支 店 新 潟 支 店 長 野 シ ス テ ム 支 店 長 野 支 店 東 愛 知 支 店 兵 庫 支 店 岡 山 支 店 山 口 支 店 松 山 支 店 沖 縄 支 店 1(048)526-2200 1(048)657-1231 1(043)223-0701 1(045)325-5611 1(025)284-5314 1(026)228-6731 1(0263)36-6740 1(0566)24-4031 1(078)325-8185 1(086)227-7500 1(0836)21-3177 1(089)933-9100 1(098)862-8625 〒360-0037 〒330-0802 〒260-0015 〒220-0004 〒950-0965 〒380-0836 〒390-0811 〒448-0857 〒650-0033 〒700-0826 〒755-8577 〒790-0878 〒900-0005 熊谷市筑波一丁目195番地(能見ビル) 大宮市宮町一丁目38番1号(野村不動産大宮共同ビル) 千葉市中央区富士見二丁目15番11号(日本生命千葉富士見ビル) 横浜市西区北幸二丁目8番4号(横浜西口KNビル) 新潟市新光町16番地4(荏原新潟ビル) 長野市南県町1002番地(陽光エースビル) 松本市中央四丁目5番35号(長野県鋳物会館) 刈谷市大手町二丁目15番地(センターヒルOTE21) 神戸市中央区江戸町95番地(リクルート神戸ビル) 岡山市磨屋町3番10号(住友生命岡山ニューシティビル) 宇部市相生町8番1号(宇部興産ビル) 松山市勝山町一丁目19番地3(青木第一ビル) 那覇市天久1131番地11(ダイオキビル) 道 北 釧 道 道 青 盛 秋 山 新 福 い 水 茨 金 福 山 松 岐 静 浜 和 鳥 倉 山 徳 高 小 長 熊 大 宮 南 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 所 1(0166)68-2166 1(0157)22-5225 1(0154)22-4295 1(0155)24-2416 1(0138)26-2366 1(0177)77-7802 1(019)654-1741 1(018)824-3401 1(023)641-2371 1(0233)23-1710 1(024)932-0879 1(0246)27-9595 1(029)231-3571 1(029)266-2945 1(076)221-9228 1(0776)21-0605 1(055)222-4421 1(0263)33-9141 1(058)251-7110 1(054)251-9532 1(053)458-0380 1(073)432-5433 1(0857)23-4219 1(0858)23-5300 1(0852)21-9666 1(088)655-3533 1(088)824-8122 1(093)521-8084 1(095)827-4657 1(096)387-7351 1(097)537-3434 1(0985)20-8178 1(099)224-8522 〒078-8801 〒090-0831 〒085-0032 〒080-0803 〒040-0061 〒030-0861 〒020-0034 〒010-0962 〒990-0057 〒996-0001 〒963-8033 〒973-8402 〒310-0805 〒311-1307 〒920-0031 〒910-0005 〒400-0858 〒390-0811 〒500-8868 〒420-0053 〒430-0945 〒640-8052 〒680-0862 〒682-0802 〒690-0007 〒770-0832 〒780-0870 〒802-0014 〒850-0037 〒862-0950 〒870-0036 〒880-0805 〒892-0846 旭川市緑が丘東一条四丁目1番19号(旭川リサーチパーク内) 北見市西富町163番地30 釧路市新栄町8番13号 帯広市東三条南十丁目15番地 函館市海岸町5番18号 青森市長島二丁目25番3号(ニッセイ青森センタービル) 盛岡市盛岡駅前通16番21号(住友生命盛岡駅前ビル) 秋田市八橋大畑一丁目5番16号 山形市宮町一丁目10番12号 新庄市五日町1324番地の6 郡山市亀田一丁目2番5号 いわき市内郷御厩町二丁目29番地 水戸市中央二丁目8番8号(櫻井第2ビル) 茨城県東茨城郡大洗町桜道304番地(茨交大洗駅前ビル) 金沢市広岡一丁目1番18号(伊藤忠金沢ビル) 福井市大手二丁目7番15号(安田生命福井ビル) 甲府市相生一丁目1番21号(清田ビル) 松本市中央四丁目5番35号(長野県鋳物会館) 岐阜市光明町三丁目1番地(太陽ビル) 静岡市弥勒二丁目5番28号(静岡荏原ビル) 浜松市池町116番地13(山崎電機ビル) 和歌山市鷺ノ森堂前丁17番地 鳥取市雲山153番地36〔鳥電商事 (株) 内〕 倉吉市東巌城町181番地(平成ビル) 松江市御手船場町549番地1号(安田火災松江ビル) 徳島市寺島本町東二丁目5番地1(元木ビル) 高知市本町四丁目1番16号(高知電気ビル別館) 北九州市小倉北区砂津二丁目1番40号(富士電機小倉ビル) 長崎市金屋町7番12号 熊本市水前寺六丁目27番20号(神水恵比須ビル) 大分市寿町5番20号 宮崎市橘通東三丁目1番47号(宮崎プレジデントビル) 鹿児島市加治屋町12番7号(日本生命鹿児島加治屋町ビル) エ ネ ル ギ ー 製 作 所 変電システム製作所 東京システム製作所 神 戸 工 場 鈴 鹿 工 場 回 転 機 工 場 松 本 工 場 山 梨 工 場 吹 上 工 場 大 田 原 工 場 三 重 工 場 1(044)333-7111 1(0436)42-8111 1(042)583-6111 1(078)991-2111 1(0593)83-8100 1(0593)83-8100 1(0263)25-7111 1(055)285-6111 1(048)548-1111 1(0287)22-7111 1(0593)30-1511 〒210-9530 〒290-8511 〒191-8502 〒651-2271 〒513-8633 〒513-8633 〒390-0821 〒400-0222 〒369-0192 〒324-8510 〒510-8631 川崎市川崎区田辺新田1番1号 市原市八幡海岸通7番地 日野市富士町1番地 神戸市西区高塚台四丁目1番地の1 鈴鹿市南玉垣町5520番地 鈴鹿市南玉垣町5520番地 松本市筑摩四丁目18番1号 山梨県中巨摩郡白根町飯野221番地の1 埼玉県北足立郡吹上町南一丁目5番45号 大田原市中田原1043番地 四日市市富士町1番27号 事 北 営 見 営 路 営 東 営 南 営 森 営 岡 営 田 営 形 営 庄 営 島 営 わ き 営 戸 営 城 営 沢 営 井 営 梨 営 本 営 阜 営 岡 営 松 営 歌 山 営 取 営 吉 営 陰 営 島 営 知 営 倉 営 崎 営 本 営 分 営 崎 営 九 州 営 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 業 CS2 VREG CS1 制御 電源 ソフト スタート 制御 PWM比較器 基準 電圧 CNT3 タイマ ラッチ CNT1 CREF オンオフ 制御 誤差増幅器 FA3676Fの例 CP IN6+ TLSEL FB6 IN6− IN5+ IN5− FB5 IN4+ IN4− FB4 IN3+ IN3− FB3 IN2− FB2 IN1+ FB1 IN1− バッファ 富士電機の電源用パワーIC お問合せ先:電子カンパニー IC事業部 電話(03)5435-7158 OUT3 nチャネル ドライバ DT2 pチャネル ドライバ VCC3 OUT2n DT1 nチャネル ドライバ OUT2p OUT1n VCC2 OUT1p pチャネル ドライバ 各ドライバへ ドライバ 用電源 VREF 製品例: 2チャネルFA3630V,3チャネルFA3629V, 6チャネルFA3621F,6チャネルFA3675F, 6チャネルFA3676F 用 途: TFTパネル用マルチ出力電源,ビデオカメラ・ディジ タルカメラ用マルチ出力電源など 特 長: ●同期整流対応(FA3676F2チャネル分) ●低オン抵抗DMOS出力トランジスタを内蔵可能な C/DMOSプロセスによりパワー段と制御部を 1チップ化 ●低消費電力・小型・高効率 低入力電圧に対応可能(2.5Vまで) 過電流,加熱などに対する保護機能が充実 ●小型パッケージ VDRV 低消費電力のパワーマネジメントを1チップで実現 本 (株) 富士電機総合研究所 (株) FFC 1(0468)56-1191 〒240-0194 横須賀市長坂二丁目2番1号 1(03)5351-0200 〒151-0053 東京都渋谷区代々木四丁目30番3号(新宿コヤマビル) 73-8 H 1~4.qxd 08.2.5 4:16 PM ページ1 昭和 40 年 6 月 3 日 第三種郵便物認可 平成 12 年 8 月 10 日発行(毎月 1 回 10 日発行)富士時報 第 73 巻 第 8 号(通巻第 785 号) 昭和 40 年 6 月 3 日 第三種郵便物認可 平成 12 年 8 月 10 日発行(毎月 1 回 10 日発行)富士時報 第 73 巻 第 8 号(通巻第 785 号) 富 士 時 報 I C 特 集 IC特集 聞こえてきますか、技術の鼓動。 本誌は再生紙を使用しています。 定価525円(本体500円) ISSN 0367-3332