− 第 2 章 − 用語と特性 目次 ページ 1 用語説明 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2-2 2 車載用 IGBT モジュールの冷却性能 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2-4 本章では、車載用 IGBT モジュールに関する用語および特性について説明します。 2-1 第2章 1 用語と特性 用語説明 以下に、仕様書中等に使用されている様々な用語について説明します。 表2-1 最大定格(Maximum Ratings) 用語 コレクタ−エミッタ間電圧 (Collector-Emitter voltage) ゲート−エミッタ間電圧 (Gate-Emitter voltage) コレクタ電流 (Collector current) 最大損失 (Collector Power Dissipation) 接合部温度 (Junction temperature) 連続動作時接合部温度 (Operating Junction temperature) 冷却水温度 (Water temperature) 保存温度 (Storage temperature) FWD−電流二乗時間積 (FWD−I2T) FWD−尖頭サージ順電流 (FWD−IFSM) 絶縁耐圧 (Isolation voltage) 締付けトルク (Screw Torque) 定義 及び、説明 (条件は各製品の仕様書を参照ください。) 記号 V CES V GES ゲート−エミッタ間を短絡した状態でコレクタ−エミッタ間に印加できる最大 電圧 コレクタ−エミッタ間を短絡した状態でゲート−エミッタ間に印加できる最大 電圧(通常 ±20V max.) Ic コレクタ電極に許容される最大直流電流 Ic pulse コレクタ電極に許容される最大パルス電流 −Ic 内蔵ダイオードに許容される最大直流順電流 −Ic pulse 内蔵ダイオードに許容される最大パルス順電流 Pc 1素子当りのIGBTに許容される最大電力損失 Tj 素子に異常を引き起こさず動作できる最大チップ温度 (装置での最悪状態において、この値を超えない設計が必要) Tj(op) 素子を連続的に動作させることが可能な接合部の温度 Twin 冷却する為の冷媒の温度(冷媒流路の入り口側の冷媒温度、詳し くは第3章を参照ください) T stg 電極に電気的負荷をかけずに保存、又は輸送できる温度範囲 I2 t 素子破壊しない範囲で許容される過電流のジュール積分値。過電流 は商用正弦半波(50,60Hz),1サイクルで規定 素子破壊しない範囲で許容される1サイクル以上の商用正弦半波 (50,60Hz)電流のピーク値 電極を全て短絡した状態で、電極と冷却体取付面間に許容され る正弦波電圧の最大実効値 IFSM V iso Mounting 所定のネジで素子と冷却体(ヒートシンク)を締付ける際の最大トルク値 Terminal 所定のネジで端子と外部配線を締付ける際の最大トルク値 注:最大定格として記載されている値は、いかなる場合もこれを超えてはなりません。 2-2 第2章 用語と特性 表2-2 電気特性(Electrical characteristics) 動特性 (詳細は図2-5を参照ください) 静特性 用語 記号 コレクタ−エミッタ間遮断電流 (Zero gate voltage Collector current) ICES ゲート−エミッタ間漏れ電流 (Gate-Emitter leakage current) IGES ゲート−エミッタ間しきい値電圧 (Gate-Emitter threshold voltage) VGE(th) コレクタ−エミッタ間飽和電圧 (Collector-Emitter saturation voltage) VCE(sat) 入力容量 (Input capacitance) 出力容量 (Output capacitance) 帰還容量 (Reverse transfer capacitance) ダイオード順電圧 (Forward on voltage) ターンオン時間 (Turn-on time) Cies ゲート(以下G)-エミッタ(以下E)間を短絡した状態で、コレクタ(以下C)-E間 に指定の電圧を印加したときのC-E間の漏れ電流 C-E間を短絡した状態で、G-E間に指定の電圧を印加したときの G-E間の漏れ電流 指定C-E間電流(以下、コレクタ電流)とC-E間電圧(以下、VCE)におけ るG-E間電圧(以下、VGE)(C-E間に微小電流が流れ始めるVGE 値、IGBTがオンし始めるVGEの尺度として用いられます) Coes Cres E接地で、G-E間に指定の電圧を印加した時のC-G間容量 VF 内蔵ダイオードに指定の順方向電流(通常定格電流)を流したときの 順方向電圧(VCE(sat)と同じく損失を計算する際に重要な値) IGBTのターンオン時にVGEが0Vに上昇してから、VCEが最大値の 10%に下降するまでの時間 IGBTのターンオン時にコレクタ電流が最大値の10%に上昇した時点から、 VCEが最大値の10%に下降するまでの時間 IGBTのターンオン時にコレクタ電流が最大値の10%に上昇した時点から、 90%に到達するまでの時間 IGBTのターンオフ時にVGEが最大値の90%に下降した時点から、コレク タ電流が下降する電流の接線上で10%に下降するまでの時間 IGBTのターンオフ時にコレクタ電流が最大値の90%から、下降する電流の 接線上で10%に下降するまでの時間 ton tr(i) ターンオフ時間 (Turn-off time) 立下り時間 (Fall time) 逆回復時間 (Reverse recovery time) 逆回復電流 (Reverse recovery current) 逆バイアス安全動作領域 (Reverse Bias Safe Operation Area) ゲート抵抗 (Gate-resistance) ゲート充電電荷量 (Gate charge capacity) 指定のVGEにおいて定格のコレクタ電流を流した時のVCE値(通常、 VGE =15V,損失を計算する際に重要な値) C-E間を交流的に短絡した状態で、G-E間及びC-E間に指定の電 圧を印加した時のG-E間容量 G-E間を交流的に短絡した状態で、G-E間及びC-E間に指定の電 圧を印加した時のC-E間容量 tr 立上り時間 (Raise time) 定義 及び、説明 (条件は各製品の仕様書を参照ください。) toff tf trr 内蔵ダイオードの逆回復電流が消滅するまでに要する時間 Irr (Irp) 内蔵ダイオードの順方向電流遮断時に逆方向に流れる電流のピーク値 RBSOA ターンオフ時に指定の条件にてIGBTを遮断できる電流と電圧の領域 (この領域を越えて使用すると素子が破壊する可能性が有ります) Rg ゲート直列抵抗値(標準値はスイッチング時間の測定条件に記載) Qg IGBTをターン・オンさせるためにG-E間に充電される電荷量 表2-3 熱特性(Thermal resistance characteristics) 用語 熱抵抗 (Thermal resistance) 記号 定義 及び、説明 (条件は各製品の仕様書を参照ください。) Rth(j-f) IGBTあるいは内蔵ダイオードのチップ・フィンベース間の熱抵抗 Rth(f-win) ウォータージャケットに冷却水を流した状態でのフィンベース−冷却水間の熱 抵抗 表2-4 サーミスタ特性(Thermistor characteristics) 用語 サーミスタ抵抗 (Resistance) B値 (B value) 記号 定義 及び、説明 (条件は各製品の仕様書を参照ください。) Resistance 指定温度でのサーミスタ端子間の電気抵抗値 B 抵抗−温度特性において任意の2温度間での抵抗変化の大きさ を表す定数 2-3 第2章 2 用語と特性 車載用 IGBT モジュールの冷却性能 2.1 冷却器(ウォータージャケット) 車載用 IGBT モジュールは銅ベースと冷却フィンを一体化して従来のサーマルグリス層を無くすことで 冷却効率を高めた直接水冷構造を採用しています。この直接水冷構造は同ベースと一体化した冷却フィン に直接冷却水を当てることで冷却効率を高めており、冷媒の流路を有する冷却器(ウォータージャケット) が必要です。ウォータージャケットに設けられる流路や冷却フィンとウォータージャケット間のクリアラ ンス等により冷却性能を低下させる恐れがある為、ウォータージャケットの設計はとても重要です。 ウォータージャケットの設計に関する詳細は第 3 章放熱設計方法をご参照下さい。 Transient Thermal Resistance (max.) 過渡熱抵抗特性 1 温度上昇の計算及びウォータージャケットの選 定に用いる過渡熱抵抗特性を図 2-1 に示します(こ の特性は IGBT,FWD 共に 1 素子当りの特性です)。 この熱抵抗とは熱解析等でよく使われる特性で、 電気抵抗のオームの法則に酷似した公式で定義さ れます。 温度差⊿ T [ ℃ ] = 熱抵抗 Rth [ ℃ / W ] × エネルギー ( 損失 )[W ] Thermal resistance: Rth(j-win) [oC/W] 2.2 FWD IGBT 0.1 0.01 0.001 車載用 IGBT モジュールでは熱抵抗は IGBT, 0.01 0.1 1 10 Time [sec] FWD の Tj を計算する際に使用します。 図 2-1 過渡熱抵抗特性 (詳細は第3章 放熱設計方法をご参照ください。) Rth(j-win) vs Twin 12 0.400 冷却水温度による冷却性能 Flow rate : 10L/min 車載用 IGBT モジュールの冷却に用いる冷却水の温 くなると圧力損失は低下しますが、接合部温度は高く なりますので、設計の際には注意が必要です。代表例 として、冷媒に LLC(ロングライフクーラント)50%水 Rth(j-win)[℃/W] 度は熱抵抗には影響しません。一方、冷却水温度が高 11 0.350 9 0.250 7 0.150 6 Pressure loss 0.100 20 30 40 50 60 70 Twin[℃] 図 2-2 冷媒温度依存性 2-4 8 IGBT_Rth 0.200 溶液を使用した場合の熱抵抗に対する冷媒温度依存 性を図 2-2 に示しますのでご参考下さい。 10 FWD_Rth 0.300 80 5 90 Pressure loss[KPa] 2.3 第2章 冷却水流量による冷却性能と圧力損失 冷却水温度と同様、冷却水流量も冷却性能に影響 Rth(j-win) , Pressure loss vs Flow rate します。流量が多くなることにより冷却性能は向上 0.400 Twin : 60℃ しますが、一方で流路の出入口間の圧力損失が大き 内のチップ温度のバラつきが大きくなりますので、 システム内のポンプ性能や流路設計を最適化する必 要があります。 16 14 0.300 12 FWD_Rth 0.250 10 8 0.200 代表例として、熱抵抗に対する冷却水流量依存性 0.150 とその時の圧力損失を図 2-3 に示します。設計の際 0.100 にはご参考下さい。 18 0.350 Rth(j-win)[℃/W] くなります。圧力損失が大きくなると、モジュール 20 Pressure loss 6 IGBT_Rth 4 2 0 0 5 10 Flow rate[L/min] 15 20 図 2-3 熱抵抗と圧力損失の流量依存性 2-5 Plessure loss[KPa] 2.4 用語と特性