日本語参考資料 最新英語アプリケーション・ノートはこちら AN-1304 アプリケーション・ノート ADE7912/ADE7913 の DC 測定性能 by Nathan Benamati and Petre Minciunescu はじめに 推奨される DC 測定手順 ADE7912/ADE7913 は、シャント電流センサーを使った多相の 電力メータ・アプリケーションのための、絶縁型、3 チャンネ ル Σ-Δ ADC です。しかし、このデバイスは DC 信号を検出する ために使用することができるため、このアプリケーション・ノ ートは DC 測定性能について説明します。 電力メータ・アプリ ケーションにおいては、シャント電流センサーの電圧を検出す るためには電流チャンネルが、また抵抗分圧器の電圧を測定す るためには電圧チャンネルがそれぞれ用いられます。DC 測定 という視点から見ると、どのチャンネルも DC 信号を検出する ために用いることができるため、この区別は意味がありません。 ADE7912/ADE7913 データシートは、IP 及び IM チャンネルの ADC オフセット誤差の標準値を-2mV、及び V1P、VM または V2P、VM チャンネルの ADC オフセット誤差の標準値を-35mV と宣言しています。このオフセットは DC 測定の精度に影響す るため、除去する必要があります。各チャンネルの DC オフセ ットの評価は、以下の手順で行います: 1. ADE7912/ADE7913 の IP ピンと IM ピン間、V1P ピンと VM ピン間、及び V2P ピンと VM ピン間に 0 V を加えます。 2. ADC の出力レジスタ、IWV、V1WV、及び V2WV の値を、 1 秒間に少なくとも 50 回読み取ります。読み出しの間隔は 重要ではありませんが、効率的なプログラミングを行うた めには、読み出しは周期的であることが望ましいとされて います。 3. DC オフセットを求めるために読み出した値の平均を計算し ます。 ADE7912/ADE7913 ADC は、IP ピンと IM ピン間の信号に対し て±31.25 mV、V1P ピンと VM ピン間、及び V2P ピンと VM ピ ン間の信号に対して±500 mV の入力範囲を持っています。 このアプリケーション・ノートでは、3 つの Σ-Δ ADC の入力に DC 信号が加えられたときの ADE7912/ADE7913 の性能について 説明します。 DC 測定の安定性を保証するために、以下の手順を実行してく ださい: 1. ADC の出力レジスタ、IWV、V1WV、及び V2WV の値を、1 秒間に少なくとも 50 回読み取ります。 2. 読み出した値の平均を計算します。 3. DC 測定値を求めるために、DC オフセット値を差し引きま す。 アナログ・デバイセズ社は、提供する情報が正確で信頼できるものであることを期していますが、その情報の利用に関して、あるいは利用によって 生じる第三者の特許やその他の権利の侵害に関して一切の責任を負いません。また、アナログ・デバイセズ社の特許または特許の権利の使用を明示 的または暗示的に許諾するものでもありません。仕様は、予告なく変更される場合があります。本紙記載の商標および登録商標は、それぞれの所有 者の財産です。※日本語版資料は REVISION が古い場合があります。最新の内容については、英語版をご参照ください。 ©2010 Analog Devices, Inc. All rights reserved. 本 社/〒105-6891東京都港区海岸 1-16-1 ニューピア竹芝サウスタワービル 電話 03(5402)8200 大阪営業所/〒532-0003大阪府大阪市淀川区宮原 3-5-36 新大阪トラストタワー 電話 06(6350)6868 Rev. 0 | Page 1 of 7 AN-1304 アプリケーション・ノート 目次 はじめに ............................................................................................. 1 DC 測定の性能評価 ............................................................................ 3 推奨される DC 測定手順 .................................................................. 1 結論 ...................................................................................................... 5 改訂履歴 ............................................................................................. 2 改訂履歴 4/14—Revision 0: Initial Version Rev. 0 | Page 2 of 7 アプリケーション・ノート AN-1304 2.5 DC 測定の性能評価 1.5 1.0 0.5 0 –0.5 –1.0 –1.5 IP ピンと IM ピン間、V1P ピンと VM ピン間、及び V2P ピンと VM ピン間に、National Instruments NI_PXI-4461 カードから大き さが可変の DC 信号を加えました。ADE7912/ADE7913 のデータ シートは、IM 及び VM の電圧のグラウンドに対する最大値を ±25 mV に規定しているため、IM ピンと VM ピンはグラウンド に接続しました。各信号レベルに対して測定を 1,000 回行い、 測定結果の標準偏差を計算しました。1 つの測定値は、1 秒間に 平均 50 回読み出した値の平均値であることに注意してください。 –2.0 –2.5 0.1 1 10 100 PERCENTAGE OF FULL SCALE (%) 12258-001 このキットは 4 つの ADE7933 デバイスを含んでいるため、各電 流及び電圧チャンネルの性能を評価するために 4 つの測定値を 用いました。ADE7978 の電流及び電圧データ・パス内のハイパ スフィルタをオフにしました。 BIRMS, +σ NIRMS, +σ BIRMS, –σ NIRMS, –σ AIRMS, +σ CIRMS, +σ AIRMS, –σ CIRMS, –σ 2.0 STANDARD DEVIATION (%) 簡単のために、ADE7978/ADE7933 評価キット上で性能を評価 しました。そのため、ADE7978 の rms 値の測定値を、 ADE7912/ADE7913 の DC 測定値に対する代替値として用いまし た。 図 1. チャンネル IP、チャンネル IM の DC 測定の再現性 2.5 図 1、図 2、及び図 3 は ADE7978 の各 A、B、C、及び N デー タ・パス上で求められた標準偏差の値を示します。 AVRMS, +σ CVRMS, +σ AVRMS, –σ CVRMS, –σ 2.0 STANDARD DEVIATION (%) 1.5 BVRMS, +σ NVRMS, +σ BVRMS, –σ NVRMS, –σ 1.0 0.5 0 –0.5 –1.0 –1.5 –2.5 0.1 1 10 100 PERCENTAGE OF FULL SCALE (%) 12258-002 –2.0 図 2. チャンネル V1P、チャンネル VM の DC 測定の再現性 2.5 AVRMS, +σ CVRMS, +σ AVRMS, –σ CVRMS, –σ 2.0 STANDARD DEVIATION (%) 1.5 BVRMS, +σ NVRMS, +σ BVRMS, –σ NVRMS, –σ 1.0 0.5 0 –0.5 –1.0 –1.5 –2.5 0.1 1 10 PERCENTAGE OF FULL SCALE (%) 100 12258-003 –2.0 図 3. チャンネル V2P、チャンネル VM の DC 測定の再現性 Rev. 0 | Page 3 of 7 AN-1304 アプリケーション・ノート 40 表 1 に DC 信号がフルスケールに対してあるレベルを持ってい るときの標準偏差が示されています。DC 測定値の標準偏差が 電流及び V1 チャンネルに対して 0.21%付近まで、V2 チャンネ ルではそれより少し良い 0.15%付近まで達したときに、誤差が フルスケールの約 1%まで許容可能なレベルを維持します。 14.8 10 V1RMS MAX V1RMS MIN 6.4 3.4 1.6 0.7 0.4 0.2 0.1 0.1 –1.5 –0.6 –0.4 –0.2 –0.2 –0.2 0 –3.0 –10 –6.2 –16.6 –20 –30 –31.5 –40 0.1 1 10 100 PERCENTAGE OF FULL SCALE (%) 12258-005 Standard Deviation (%) I Channel V1 Channel V2 Channel 0.008 0.003 0.003 0.02 0.02 0.02 0.22 0.21 0.15 0.40 0.42 0.37 0.94 1.06 0.83 1.83 2.2 1.7 Dynamic Range 1 to 1 10 to 1 100 to 1 200 to 1 500 to 1 1000 to 1 20 ERROR (%) 表 1. 周囲温度 TA = 25℃での DC 測定の標準偏差 33.3 30 図 5. 温度に対する V1P 及び VM チャンネルのドリフト これらの結果に基づいて規定された、周囲温度 TA=25℃での DC 測定の仕様が表 2 に示されています。 60 53.1 50 表 2. ADE7912/ADE7913 の DC 測定誤差の仕様 40 ADE7933 を、温度が+85 ℃、及び VDD が 2.97 V、3.3 V、及び 3.63 V にセットし、さまざまな振幅で DC 信号を測定しました。 次に、ADE7933 は-40 ℃にセットされ、VDD に対する測定が繰 り返されました。 図 4、図 5、及び図 6 は、これらの測定で得られた最悪誤差を示 しています。 100 88.7 80 60 42.2 IRMS MAX IRMS MIN 8.9 4.9 2.3 1.4 1.0 0.7 0.7 –1.7 –0.9 –0.5 –0.3 –0.2 0 –4.3 –9.5 –20 –19.5 –40 –48.3 –60 –80 –100 –97.1 0.1 1 10 100 PERCENTAGE OF FULL SCALE (%) 12258-004 ERROR (%) 17.4 20 V2RMS MAX V2RMS MIN 20 図 4. 温度に対する IP 及び IM チャンネルのドリフト Rev. 0 | Page 4 of 7 10.4 10 5.2 2.6 1.1 0.5 0.3 0.1 0.1 –2.8 –1.2 –0.5 –0.3 –0.2 –0.1 0 –10 –5.6 –11.7 –20 –30 –27.8 –40 –50 –55.2 –60 0.1 1 10 100 PERCENTAGE OF FULL SCALE (%) 図 6. 温度に対する V2P 及び VM チャンネルのドリフト 12258-006 ADC のオフセットは温度と電源によって変化し、DC 測定精度 に影響します。ADE7933 の温度測定値を温度 25 ℃、VDD 電源 電圧 3.3 V の公称値でオフセット補正します。ADE7933 の温度 範囲は-40 ℃から+85 ℃まで、VDD ピンでの電源電圧範囲は 2.97 V から 3.63 V までです。 40 25.6 30 ERROR (%) Measurement Error (%) I Channel V1 Channel V2 Channel 0.02 0.02 0.02 0.25 0.25 0.2 0.5 0.5 0.5 1.2 1.2 1.0 2.0 2.5 2.0 Dynamic Range 10 to 1 100 to 1 200 to 1 500 to 1 1000 to 1 アプリケーション・ノート AN-1304 表 3. 温度に対する V1 チャンネルの DC 測定仕様 Dynamic Range 10 to 1 100 to 1 200 to 1 500 to 1 1000 to 1 V1 Channel Measurement Error (%) 0.4 3.5 6.5 17 34 3. 4. Temperature Coefficient (ppm/°C) 62 540 1000 2615 5230 5. Offset = Offsetr + (t − tr) × Temperature Coeff Result = Register value – Offset 表 3 に示されている仕様及び温度係数を有する V1 チャンネル は 3 つのチャンネルのうちで最も良い性能を持っています。 温度係数はダイナミックレンジ 100:1 の場合、次の式で定義さ れます: 3.5 × 10−2 TempCoeffV 1 = = 538.5µ ≅ 540 ppm / C 25 − (− 40 ) 温度に対する誤差は主に DC オフセットの変動によって生じて いると考えられます。ADE7912/ADE7913 に組み込まれている 温度センサーはこの温度変動を抑えるのに有効です。メーター の全温度範囲にわたる温度係数の変動は以下の方法で見積もら れ、DC オフセットを補正するために使用されます: 1. 2. これら 2 つの温度での DC オフセットを決定します。 t1 と tr の間、及び tr と t2 の間でオフセットの温度係数を計算 します。第一の係数は室温以下で一定となるように、また 第二の係数は室温以上で一定となるように考慮します。 温度センサーの読みと以下の式を用いて DC 測定値を調整 します。 「推奨される DC 測定手順」のセクションに示されている 手順に従って、室温(tr)での DC オフセット(Offsetr)を求めま す。 ADE7912/ADE7913 を室温からできるだけ離れた 2 つの温 度 t1 または t2 のいずれかにセットします。ここで t1 < tr 及 び t2 > tr です。 DC 測定のために Σ-Δ ADC を用いると、小さな非線形性が現れ ることがあることに注意してください。これらの非線形性は通 常、実効的な DC 信号(入力 + 固有のオフセット)がゼロに近 い場合に現れます。この効果は、上記の精度がある場合、測定 の品質にはほとんど影響しません。 結論 ADE7912/ADE7913 で DC 測定を行う場合、ADE7912/ADE7913 の V1 チャンネルを使用することが推奨されます。DC 信号の範 囲は-500 mV から+500 mV までが適切です。オフセットの校正 は室温で行います。100:1 のダイナミックレンジの場合、室温で の測定誤差は 0.25 %以下、全温度範囲にわたる測定誤差は 3.5% 以下です。 全温度範囲にわたって精度を高めるためには、 ADE7912/ADE7913 を含む測定器を 2 つの温度に設定し、温度係 数を計算して、その結果を用いて DC 測定値を調整します。 Rev. 0 | Page 5 of 7 AN-1304 アプリケーション・ノート メモ Rev. 0 | Page 6 of 7 アプリケーション・ノート AN-1304 メモ I2C は Phillips Semiconductors(現在は NXP Semiconductors)社によって開発された通信プロトコルです。 Rev. 0 | Page 7 of 7