AN-1344: 電流ループ・トランスミッタのフロント・エンドによる高いコモンモード電圧で の信号の測定 (Rev. 0) PDF

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AN-1344
アプリケーション・ノート
電流ループ・トランスミッタのフロント・エンドによる高いコモンモード電圧で
の信号の測定
著者: Jino Loquinario、Paul Blanchard
はじめに
このアプリケーション・ノートでは、最大 ±600 V の非常に高
い入力コモンモード電圧(CMV)が存在する差動信号を正確
に測定する高精度差動アンプである AD8479 について説明しま
す(図 2 を参照)。AD8479 は電流ループ・トランスミッタの
フロント・エンドとして機能し、モーター・コントロールや高
電圧・電流検出など、CMV の非常に高いアプリケーションで
トランスミッタを動作させることができます。
ILOOP
LONG WIRES
Tx
Rx
12865-001
INPUT
SIGNAL
図 1. 電流ループの図
800
VS = ±15V
600
COMMON-MODE VOLTAGE (V)
電流ループは、センサーのデータを長距離にわたって送受信す
るための一般的なシグナリング技術です。電流ループでは、ト
ランスミッタからの情報が電流に含まれていて、非常に長いワ
イヤを通じてレシーバに中継されます(図 1 を参照)。この伝
送技術は、電気的ノイズに対する感受性が低いので、データ伝
送に最適な技術です。電圧シグナリングとは異なり、電流ルー
プはワイヤでの IR ドロップによって誘導される誤差に対して
耐性を示します。ループ内のワイヤ終端処理は最適ではありま
せんが、すべてのシグナリング電流がすべての部品に流れます。
供給電圧がループ全体の電圧降下よりも大きい限り、IR ドロッ
プはシグナリング電流に影響を与えません。
400
VS = ±5V
200
0
–200
–400
–800
–20
–15
–10
–5
0
VOUT (V)
5
10
15
20
12865-002
–600
図 2. AD8479 における入力 CMV と出力電圧の関係
アナログ・デバイセズ社は、提供する情報が正確で信頼できるものであることを期していますが、その情報の利用に関して、あるいは利用に
よって生じる第三者の特許やその他の権利の侵害に関して一切の責任を負いません。また、アナログ・デバイセズ社の特許または特許の権利
の使用を明示的または暗示的に許諾するものでもありません。仕様は、予告なく変更される場合があります。本紙記載の商標および登録商標
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Rev. 0 | 1/5
AN-1344
アプリケーション・ノート
目次
はじめに ..........................................................................................1
電流ループ・トランスミッタの精度........................................... 5
改訂履歴 ..........................................................................................2
結論.............................................................................................. 5
回路の伝達関数 ..............................................................................3
改訂履歴
10/15—Revision 0: 初版
Rev. 0 | 2/5
AN-1344
アプリケーション・ノート
回路の伝達関数
CMV が非常に高くても AD8479 は差動電圧を受け付け、固定
ゲイン 1 と式 1 の伝達関数で自らの出力を通してその電圧を渡
します。
VO = VD (G = 1) + VREF
式 2 と図 3 に示す値から、以下の結果を導くことができます。
 1 kΩ
  16.2 
 16.2 
VOUT = VO 
 × 1 +
 + VO  −

1.8 
 1 kΩ + 1 kΩ  
 1.8 
(1)
VOUT = VO (0.5) × (10) + VO (−9)
ここで
VO は図 3 に示す AD8479 の出力。
VD は図 3 に示す AD8479 差動入力電圧。
VREF は +REF ピンと –REF ピンに印加されている電圧。
VOUT = 5 VO + VO (−9)
VOUT = −4 VO
(3)
式 1 から、以下の関係が成立します。
+15V
VO = VD + VREF
+VS
ここで VREF = VOUT。
+REF
OUT
–REF
–IN
–VS
このため、以下のようになります。
VO
1kΩ
VO = VD + (−4 VO)
+VIN
+VS
R1
ADA4627-1
VCM
1.8kΩ
R2
–VIN
VOUT
IO
5 VO = VD
VO = 1/5VD
1.8kΩ
16.2kΩ
NOTES
1. R1, R2, AND R3 IS AT 1%
5 VO
–4 VO
+REF ピンと –REF ピンは接続されているため、入力に差動電
圧が存在しない場合、出力はリファレンス電圧(VREF)と等し
くなります。
AD8479 と 負 荷 の 間 の イ ン タ ー フ ェ ー ス と し て 機 能 す る
ADA4627-1 に出力が流れます。AD8479 の出力に直接接続する
代わりに、 ADA4627-1 に出力を接続することで、負荷の変化
の影響を大きく受ける出力電流の変動を回避できます。
ADA4627-1 は、AD8479 のリファレンス・ピンの電圧も強制的
に変化させるので、出力の式は以下のようになります。
 R1    R3  
 R3 
 × 1 + 
= VO 
   R2   = +VO  − R2 
R1
R
+
L 

–VIN
16.2kΩ
図 3. 電流ループ・トランスミッタ
VOUT
(4)
VO
–VS
R3
–15V
RL
1kΩ
12685-003
AD8479
VD
12685-004
+IN
図 4. 簡略化した AD8479 出力回路
分圧器の定理を使用して、以下のように計算します。


1.8 kΩ

− VIN = 5VO 

 16.2 kΩ + 1.8 kΩ 
−VIN = 5 VO (0.1)
−VIN = 0.5 VO
(5)
仮想短絡であるため、以下のように計算します。
−VIN = +VIN
(2)
+VIN = 0.5 VO
AD8479 と ADA4627-1 を組み合わせることで、電流ループ・ト
ランスミッタのフロント・エンド回路は非常に高い CMV が存
在する場合でも信号を測定できるようになります。
このため、以下のようになります。
VO – VR1 = + VIN
VR1 = VO – (+ VIN)
VR1 = VO – 0.5 VO
VR1 = 0.5 VO
1
VR1 = 0.5 VD 
5 
VR1 =
Rev. 0 | 3/5
1
VD
10
(6)
AN-1344
アプリケーション・ノート
+15V
図 5 に、情報が流れる電流経路を示します。
アンプ
(ADA4627-1)
の入力インピーダンスが高いため、電流は直接負荷を流れ、回
路全体の伝達関数は以下のようになります。
+IN
+VS
+REF
AD8479
VD
1
VD
I O = 10
R1
OUT
–REF
–IN
–VS
VO
1kΩ
+VIN
+VIN
R1
ADA4627-1
VCM
IO = VD/10R1
1.8kΩ
VD
A
IO =
10,000
–VIN
R2
Rev. 0 | 4/5
IO
16.2kΩ
NOTES
1. R1, R2, AND R3 IS AT 1%
図 5. 出力電流の経路
RL
1kΩ
–VIN
R3
–15V
VOUT
12685-005
IO = VR1/R1
AN-1344
アプリケーション・ノート
電流ループ・トランスミッタの精度
1000
重要な各抵抗が合計誤差に均等に作用すると想定して、抵抗許
容誤差による合計誤差を近似します。3 つの重要な抵抗は R1、
R2、R3 です。最悪の許容誤差が 1 %に達する抵抗を使用する
場合、
合計抵抗誤差は最大 3 % になります。
二乗和平方根(RSS)
誤差を想定した場合、合計 RSS 誤差は 1√3 = 1.732 % になりま
す。
800
OUTPUT CURRENT (µA)
600
表 1.能動部品による誤差
Error
Offset
Gain
Total
Uncompensated
Error (%FSR)
0.03%
0.02%
0.05%
これらの誤差は、最適な抵抗を選択し、それらの抵抗の許容誤
差から得られたものであると想定しています。図 6 に、アプリ
ケーション回路の実際の誤差性能を示します。
0V
48V
96V
0.2
0.1
–400
–1000
–10
–8
–6
–4
–2
0
2
4
6
DIFFERENTIAL INPUT VOLTAGE (V)
8
10
図 7. 各種入力 CMV での出力電流と入力電圧の関係
図 7 に、3 つの CMV でのトランスミッタの出力性能を示しま
す。0 V CMV では 0.0038 µA のオフセットで 45.3 ppm のゲイ
ン誤差、48 V CMV では −0.2443 μA のオフセットで 45.4 ppm の
ゲイン誤差、
96 V CMV では −0.5262 μA のオフセットで 45.4 ppm
のゲイン誤差が存在します。この性能特性は、CMV が増大し
てもトランスミッタのフロント・エンドの出力に対する影響は
ほとんどないことを示しています。この結果は、超低オフセッ
ト電圧の広帯域高精度アンプである ADA4627-1 による最大
±600 V の CMV が存在する場合に差動信号を正確に測定するこ
とが可能な AD8479 によるものです。
また、このアプリケーション回路のコモンモード比(CMR)
は、0 V と 48 V の CMV および 48 V と 96 V の CMV という両
方の組み合わせで測定した結果、
94 dB という優れた値でした。
0
–0.1
–0.2
結論
–0.3
–0.4
–8
–6
–4
–2
0
2
4
6
DIFFERENTIAL INPUT VOLTAGE (V)
8
10
12865-006
TOTAL UNCOMPENSTAED ERROR (%FSR)
0.5
–0.5
–10
0
–200
–800
フル・スケール誤差 = 3 % + 0.05 % = 3.05 %
0.3
200
–600
能動部品のオフセットによる最悪誤差に最悪の抵抗許容誤差
3 % を加算すると、以下のようになります。
0.4
400
12865-007
Error Component
AD8479
AD8479
Maximum Full-Scale Error
Error
Value
3 mV
0.02%
CMV = 0V, IO = 99.547 × VIN + 0.0038
CMV = 48V, IO = 99.546 × VIN – 0.2443
CMV = 96V, IO = 99.546 × VIN – 0.5262
図 6. 各種入力 CMV での入力電圧と
合計未補償誤差(%FSR)の関係
最大未補償誤差 0.47 % FSR で、システムは精度に関して非常
に信頼性の高い性能を示します。抵抗と AD8479 による誤差に
もかかわらず、システムはさまざまな CMV 値で優れた精度を
維持できます。この性能により、AD8479 を電流ループ・トラ
ンスミッタのフロント・エンドとして使用することで、最大 96
V の高い精度で計測できます(最大 ±600 V CMV での動作を確
保)。誤差の大半は能動部品に依存するので、非常に許容誤差
の狭い高精度の抵抗を使用することでシステム性能をさらに向
上できます。
長距離にわたって信号を伝送する場合、電流ループ・シグナリ
ングは電圧シグナリングよりも高い信頼性を示します。信号は
長距離にわたって伝送されるループ電流に含まれ、電圧シグナ
リングの主な問題であるワイヤでの電圧降下の影響が排除され
ます。信号を電圧として伝送する場合、電源電流によりワイヤ
で電圧降下が発生します。通常、この値は信号測定で誤差とし
て現れます。さらに、電流ループ・シグナリングのほうが電圧
シグナリングよりも耐ノイズ性に優れています。
このアプリケー
ション・ノートでは、AD8479 を使用して電流ループ・トラン
スミッタのフロント・エンドを実装しました。これにより、非
常に高い CMV 信号が存在する場合でも高精度な計測が可能に
なります。この回路は、産業用アプリケーションやモーター・
アプリケーションなど、産業用プロセス監視アプリケーション
の高精度測定のニーズに対応できます。テストで検証されたと
おり、このアプリケーション回路により、幅広い入力電圧およ
び CMV 範囲での実証済みの精度で最大 96 V の CMV(最大 600
V の CMV で動作)で高精度な計測を実行できます。このアプ
リケーション・ノートで使用したアナログ・デバイセズ製のア
ンプ・デバイスは、堅牢かつ高精度なアプリケーションのニー
ズに応えることができる、高い信頼性を備えています。
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