AN-205 アプリケーション・ノート ビデオ・フォーマットと必要な負荷終端 著者: Bill Slattery テレビやビデオ・モニタで使用されるビデオ・レベルの規定に 関しては、多くの国際標準規格が存在します。このアプリケー ション・ノートでは、一般的な標準規格をいくつか説明し、それ らの類似性を比較します。さらに、アナログ・デバイセズ (ADI)のビデオ RAM-DAC に必要な負荷終端について詳述する とともに、負荷終端の設定を変更して複数のビデオ標準規格を 実装する方法についても説明します。 ビデオ標準規格 NTSCは北米や日本で最も多く使用されるビデオ標準規格の一つ ですが、欧州ではPALやSECAMが一般的です。図 1 にRGBビデ オ波形を示し、表Iにはビデオ標準規格ごとに互いに関連する電 流、電圧、およびIRE単位を示しています。 図 1. RGB ビデオ波形 表 I. 各種のビデオ・フォーマットに関するレベル NTSC RS-343A NTSC RS-170 PAL SECAM Video Output Levels Blank to White Blank to Black Blank Level Blank to Sync Blank to White Blank to Black Blank Level Blank to Sync Blank to White Blank to Black Blank Level Blank to Sync Blank to White Blank to Black Blank Level Blank to Sync IRE Units 100 7.5 ± 5 Volts 0.714 ± 0.1 0.054 (typ) 0 −0.286 ± 0.05 1.0 ± 0.05 0.075 (typ) 0 −0.4 (typ) 0.714 (typ) 0 0 −0.307 (typ) 0.714 (typ) 0 to 0.049 0 −0.307 (typ) 40 (typ) 100 7.5 ± 2.5 40 ± 5 100 0 43 (typ) 100 0 to 7 43 (typ) Singly Terminated Line mA (typ), 75Ω Monitor 9.52 0.714 0 −3.81 13.33 1 0 −5.33 9.52 0 0 −4.09 9.52 0 0 −4.09 Doubly Terminated Line mA (typ), 75Ω Monitor 19.04 1.43 0 −7.62 26.67 2 0 −10.67 19.04 0 0 −8.19 19.04 0 0 −8.19 注 この表では、ブランク(Blank)レベルがゼロの基準レベルであり、シンク(Sync)レベルは負の値になっています。DAC を使ってコンポジッ ト・シンク(複合同期信号)がアサートされている場合、アナログ・デバイセズのビデオ RAM-DAC ではシンク・レベルをゼロ基準レベルとして います。ブランク・レベル、黒レベル、白レベルはすべて、シンク・レベルの値をもとに正にオフセットされます。これは、白レベルを基準とし たブランク・レベルの相対的な振幅値によって決まるので、標準規格の実装に影響を及ぼすことはありません。ブランク/白間のレベル差は、 Sync が DAC でアサートされるか否かに関わりなく一定です。 アナログ・デバイセズ社は、提供する情報が正確で信頼できるものであることを期していますが、その情報の利用に関して、あるいは利用によって 生じる第三者の特許やその他の権利の侵害に関して一切の責任を負いません。また、アナログ・デバイセズ社の特許または特許の権利の使用を明示 的または暗示的に許諾するものでもありません。仕様は、予告なく変更される場合があります。本紙記載の商標および登録商標は、各社の所有に属 します。※日本語資料は REVISION が古い場合があります。最新の内容については、英語版をご参照ください。 © Analog Devices, Inc. All rights reserved. 社/〒105-6891 東京都港区海岸 1-16-1 ニューピア竹芝サウスタワービル 電話 03(5402)8200 大阪営業所/〒532-0003 大阪府大阪市淀川区宮原 3-5-36 新大阪トラストタワー 電話 06(6350)6868 本 AN-205 Application Note コンポジット・ビデオの波形は、白レベルとブランク・レベル (グレースケールまたはビデオ信号成分)間の関係および黒レベ ルとシンク・レベル間の関係を示しています。ブランク・レベ ルと白レベル間の振幅レベルは、100IRE単位と定義されていま す。これは、1Vまたは 0.714Vの電圧レベルに相当します。近年 の国際標準規格においては低い方の電圧レベルである 0.714Vが 採用されており、ブランク/白の間のレベル差は、RS-343A、 PAL、SECAMの各標準規格では 0.714V、RS-170 では 1Vと規定 されています。ブランク/黒レベル間はセットアップまたはペ デスタルとも呼ばれており、これによってリトレース中に「黒 より黒い」ビーム・レベルが生じても安定に動作します。ブラ ンク/黒レベル間の振幅は、使用するビデオ標準規格に従って、 0~約 7.5IRE単位の範囲で異なる値をとります。ビームをシン ク・レベルまで駆動ために、さらに 40~43IRE単位が必要とな ります。NTSCの 40IRE単位、PALおよびSECAMの 43IRE単位 というシンク・レベルの値は、ADIのビデオRAM-DACの設定値 である 40IREレベルの許容誤差の範囲にほぼ収まるため、ADI 製品はNTSC、PAL、およびSECAMのいずれのビデオ・フォー マットも出力することができます。表Iに、上述したビデオ・ フォーマットに関する各種振幅レベルとその許容誤差を示しま す。 コンピュータ・グラフィックで使用される 4 つのビデオ標準規 格の中で最も一般的なものは RS-343A です。この標準規格では、 3 つの RGB(赤、緑、青)信号は個別に生成され、それぞれが ビデオ、ブランキング、およびシンク情報を含みます。しかし、 多くの場合、シンク情報は緑チャンネルのみにエンコードされ ます。 できます。表Iには、ビデオ標準規格ごとに 75Ω負荷終端および 37.5Ω(二重終端で 75Ω)の負荷終端と、対応する電流値を示し ています。また、図 2 と 図 3 にはビデオRAM-DACとモニタ間 の電気的な接続方法を示しています。これらの 2 つの終端のど ちらかを使用することで、表Iに記載したいずれのビデオ標準規 格も実装することができます。ただし、一重終端負荷の場合は、 IREFを調整してIOUTを変更しなければなりません。 RS-343AおよびRS-170の実装 アナログ・デバイセズのビデオRAM-DACは、RS-343A、RS-170 のいずれのビデオ標準規格も実装できます。二重終端構成の場 合は、ソース終端抵抗ZSの値を変更してこの実装を行います。 図 4a~図 4dには、ADV478/ADV471 を使用した場合にRS-343A とRS-170 の実装に必要となる終端回路と各終端に対応するRGB ビデオ波形を示しています。Syncがアサートされていない場合、 アサートされている場合を分けて示しています。この技法を用 いて各ビデオ標準規格を実装する場合は、DACの出力電流レベ ルを変更する必要はありません。DAC出力電流、負荷終端抵抗、 およびモニタ上で発生する電圧の関係は、次式で与えられます。 VL I OUT Z S Z L ZS Z L VL=モニタ上で発生する電圧 IOUT=DAC 出力電流 ZS =ソース終端抵抗 ZL=ケーブル/モニタ・インピーダンス ビデオ標準規格は ZL で発生する電圧によって決まるので、ZS の 値を変更することで簡単にビデオ標準規格を選択することがで きます。 負荷終端 アナログ・デバイセズのビデオRAM-DACは、二重終端負荷ま たは一重終端負荷とすることで 75Ωのモニタを駆動することが 図 2. 一重終端 75Ω 負荷 図 3. 二重終端 75Ω 負荷 Page 2 of 4 Application Note AN-205 図 4a. RS-343A 負荷終端と RGB ビデオ波形(SYNC 非アサート) 図 4b. RS-170 負荷終端と RGB ビデオ波形(SYNC 非アサート) 図 4c. RS-343A 負荷終端と RGB ビデオ波形(SYNC アサート) 図 4d. RS-170 負荷終端と RGB ビデオ波形(SYNC アサート) Page 3 of 4 AN-205 Application Note 選択可能な終端 図 5aと 図 5bに、ユーザがRS-343AまたはRS-170 を選択できる、 興味深い終端技術を示します。スイッチが閉位置にあると、RS343Aが実装されます。一方、スイッチが開位置にあると、75Ω モニタ負荷上に、RS-170 に対応するブランク/白レベル間の電 圧 1Vが発生し、RS-170 が実装されます。SyncがDACによって アサートされない場合、終端は 図 5aのようになります。Syncが DACによってアサートされる場合、出力は 図 5bのように終端 する必要があります。 図 5a. RS-343A または RS-170 を選択できる終端(SYNC 非アサート) 図 5b. RS-343A または RS-170 を選択できる終端(SYNC アサート) © Analog Devices, Inc. All rights reserved. 商標および登録商標は各社の所有に属します。 Page 4 of 4