® PSoC Creator™ コンポーネントデータシート 熱電対計算機 1.0 特長 B、E、J、K、N、R、S、T 型の熱電対に対応 熱起電力と温度の変換関数を提供します 計算誤差対 温度のグラフを表示 概要 熱電対温度計測では、熱電対温度は計測された熱起電力電圧を基に計算されます。電圧から温度への変 換は、NIST(アメリカ合衆国、国立標準技術研究所、National Institute of Standards and Technology) が研究し、熱起電力を温度に変換する多項式および表を提供しています。NIST 表と多項式は以下のリンクか ら参照できます。 http://srdata.nist.gov/its90/download/download.html 熱電対温度計測では、熱電対基準接点温度の計測と、電圧への変換が行われます。熱電対計算機コンポ ーネントは、上記すべての種類の熱電対について熱起電力と温度を変換するための API を提供することにより 熱電対温度計測を簡易化します。コンパイル時に多項式が生成されます。熱電対コンポーネントは計算時間 を短縮する効率的な方法で多項式を評価します。 熱電対計算機の用途 このコンポーネントの用途は 1 つのみです。コンポーネントに付属する API を使用して熱起電力と温度を変換し ます。 入出力の接続 このコンポーネントはソフトウェアコンポーネントであり入出力の接続はありません。 Document number: 001-84911 Rev. ** Page 1 of 11 熱電対計算機 ® PSoC Creator™ コンポーネントデータシート パラメータおよび設定 熱電対計算機コンポーネントを回路図の上にドラッグし、ダブルクリックして Configure ダイアログを開きます。 このダイアログには、熱電対計算機コンポーネントを設定できるタブがあります。 General タブ General タブには次のパラメータがあります。 Thermocouple Type このフィールドから熱電対の型を選択します。 Calculation error budget 多項式計算による許容誤差を選択できます。これは-200℃以上の温度範囲にのみ適用される誤差です。 温度誤差-温度グラフ このグラフは、熱電対の型と多項式に応じた温度誤差対温度を示します。 Page 2 of 11 Document number: 001-84911 Rev. ** ® PSoC Creator™ コンポーネントデータシート 熱電対計算機 Polynomial GetTemperature()API の計算に使用される多項式の次数を表示します。 以下 3 種類の多項式があります: NIST 多項式 7th order (NIST 多項式の 7 次近似) 5th order (NIST 多項式の 5 次近似) 多項式は選択された許容誤差を基に選択されます。許容誤差を超えない最も低い次数の多項式が選択され ます。 CPU cycles 選択された多項式の計算に必要な CPU サイクルの見積りが表示されます。 最大誤差 この表には、選択された熱電対の型と多項式に対応し、特定の温度範囲における温度誤差の最大値が記載 されています。 アプリケーションプログラミングインタフェース アプリケーションプログラミングインターフェース (API) ルーチンにより、ソフトウェアを使用してコンポーネントを設定で きます。次の表は、各関数へのインターフェースとその説明を示しています。続くセクションでは、各関数について 詳しく説明します。 初期設定では、PSoC Creator は、ユーザの回路図に最初に配置されたコンポーネントのインスタンス名として" Thermocouple_1 "を割り当てます。インスタンスの名称は、識別子の文法ルールに従って固有の名前に変更 できます。インスタンス名は、すべてのグローバル関数名、変数名、定数名の接頭辞になります。便宜上、次の 表では"Thermocouple"というインスタンス名を使用します。 関数 機能 int32 Thermocouple_GetTemperature(int32 voltage) 熱起電力から温度を計算します(μV単位) int32 Thermocouple_GetVoltage(int32 temperature) 摂氏100分の1℃単位で与えられた温度に対応する電圧 を計算します。冷接点の温度を基に冷接点の補正電圧 の計算に使用されます。 Document number: 001-84911 Rev. ** Page 3 of 11 ® PSoC Creator™ コンポーネントデータシート 熱電対計算機 int32 Thermocouple_GetTemperature(int32 voltage) 機能: 熱起電力から温度を計算します(μV) パラメータ: 電圧(μV) 返り値: 温度(摂氏、0.01℃単位) 注意事項: なし int32 Thermocouple_GetVoltage(int32 temperature) 機能: 摂氏100分の1℃単位で与えられた温度に対応する電圧を計算します。冷接点の温度を基に冷接 点の補正電圧の計算に使用されます。 パラメータ: 温度(摂氏、0.01℃単位) 返り値: 熱起電力電圧(μV) 注意事項: なし 機能の詳細 1821 年に、エストニア系ドイツ人の物理学者である トーマス・ゼーベックは、二つの異なる金属を図 1(a)のよう に接続し、片方の接点を熱すると連続して電流が流れることを発見しました。回路を切断し電圧を観測すると (図 1(b)参照)、電圧は、二つの接点間の温度差に直接相関があります。二つの金属導体の接点を加熱する ことで電圧が発生するこの現象は、ゼーベック効果または熱電効果と呼ばれます。加熱される接点は温接点ま たは測定接点と呼ばれます。もう一つの接点は冷接点または基準接点と呼ばれ、発生する電圧は熱起電力と 呼ばれます。 図 1(a). 熱電対 – ゼーベック効果 Metal 1 Junction 1 (Hot) Junction 2 Metal 2 Metal 2 図 1(b). 熱電対 – ゼーベック効果 Metal1 Junction 1 (Hot) Junction 2 Metal2 Metal2 Page 4 of 11 V + - Document number: 001-84911 Rev. ** ® PSoC Creator™ コンポーネントデータシート 熱電対計算機 熱起電力は以下の条件によって異なります: 接点に使用される金属 温接点と冷接点の間の温度差 冷接点温度の絶対値。たとえば、100℃の温接点と 0℃ の冷接点で発生した熱起電力は、800℃の温接 点と 700℃の冷接点で発生した熱起電力とは、両方の温度差が 100℃であっても、異なります。 使用される金属の種類によって、熱電対は分類されます。熱電対の種類は、動作温度範囲と感度によって異 なります (単位温度当りの電圧変化、V/℃)。IEC EN 60584-2 と ASTM E230 の主要な二つの標準が熱電 対の許容誤差を規定します。許容誤差は熱電対の型について最大誤差を規定します。 表 1 には、一般的な熱電対の型と、金属の組み合わせ、ASTM に従ったその温度範囲、感度、許容誤差が 記載されています。表 1 に記載されている通り、 ASTM では、標準と特別の二つの熱電対許容誤差を規定し ています。許容誤差は使用温度範囲全域で定義されているわけではありません。 NIST は、0℃の冷接点でのすべての熱電対の型のための熱起電力対温接点温度を提供しています。0℃での 熱起電力は 0V のため、冷接点温度 0℃が基準として選択されています。通常は氷浴 0℃の基準温度を提供 します。NIST は、熱起電力と温度を変換するための表と多項式係数を提供しています。図 2 は、一方の接点 を熱し、一方の接点を 0℃に保った場合の K 型の熱電対を示します。 図 3(次ページ)は、0℃の冷接点の K 型の熱電対のための熱起電力対温接点を示します。K 型熱電対の感度は NIST 表から特定でき、-100℃を 超える温度でおよそ 40 μV/℃です。 図 2. 0℃の冷接点の K 型熱電対 Chromel Junction 1 (Hot) + - V1 V2 = 0 + Alumel Junction 2 (0°C) Alumel + V =V1 Document number: 001-84911 Rev. ** Page 5 of 11 ® PSoC Creator™ コンポーネントデータシート 熱電対計算機 図 3. K 型熱電対の熱起電力対温度(0℃の冷接点) 冷接点補正 ADC を使用して熱起電力を測定することで、温度を簡単に判定できます。ただし、NIST 表を使用するには、 冷接点を 0℃に維持する必要があるという制限があります。氷浴を用意することは現実的でなく、多くの場合冷 接点は常温になります。冷接点が 0℃でない場合、図 4 の V2 のように冷接点でも熱起電力が発生し、測定 電圧 V が減少します。温接点の温度を正確に測定するには、冷接点電圧 V2 を最終電圧 V に加算する必 要があります。 図 4. 0℃以外の冷接点 Chromel Junction 1 (Hot) + - V1 V2 + Alumel Junction 2 (ambient temperature) Alumel + V =V1 - V2 冷接点温度が特定できたら、NIST 表から電圧 V2 を計算できます。冷接点が 0℃でない場合、冷接点温度 を測定し、その温度に対応する熱起電力を熱電対電圧に加算する必要があります。この手順は冷接点補正と 呼ばれます。 サーミスタ、測温抵抗体、ダイオードまたは IC ベースのセンサーを使用して冷接点の温度を測定できます。(これ らの冷接点温度測定センサーは、非常に高温の測定や、腐食性または厳しい条件の環境では使用できないた め、熱電対の代用としては使用できないことに注意してください。) 熱起電力の測定 熱起電力は、図 5 のように ADC の入力配線を熱電対に接続することにより ADC を使って測定できます。 Page 6 of 11 Document number: 001-84911 Rev. ** ® PSoC Creator™ コンポーネントデータシート 熱電対計算機 図 5. 熱起電力の測定 Chromel Junction 1 (Hot) + - V1 V2 + Alumel Alumel Junction 3 +V3 - V4 + Junction 4 Copper Junction 2 (ambient temperature) + V =V1 - V2 + V3 - V4 - Copper ADC の入力は銅線でありここでさらに銅とアルメルからなる二つの熱電対を形成します。二つの電圧 V3 と V4 が 数式に追加されます。V3 および V4 は反対方向にあり、両方の熱電対が同じ温度に保たれている間は同じ大 きさになります。このため、両方の銅アルメル熱電対が同じ温度に保たれ、熱起電力が変化しないことを確認す る必要があります。 表 1. 熱電対の型 型 +極の金属組成 -極の金属組成 温度範囲 (℃) 許容誤差(ASTM) 25℃での感度 (µV/℃) 温度範囲 (℃) B 70.4% プラチナ(Pt) 標準 特別 0~1820 0 800~1700 0.5% 29.6% ロジウム(Rh) 93.9% Pt、6.1% Rh 90% ニッケル(Ni) 55% 銅(Cu) -270~1000 61 -200~0 1.7℃または 1% 10% クロム(Cr) 45% Ni 0 - 900 1.7℃または 0.5% 1℃または 0.4% J 99.5%鉄(Fe) 55% Cu、45% Ni -210~1200 52 0~750 2.2℃または 0.75% 1.1℃または 0.4% K 90% Ni 95% Ni -270~1372 41 -200~0 2.2℃または 2% 10% Cr 5% さまざまな元素 0~1250 2.2℃または 0.75% 84.4% Ni、14.2% Cr 95.5% Ni、 4.4% Si -270~1300 -270~0 2.2℃または 2% 1.4% シリコン 0~1300 2.2℃または 0.75% 1.1℃または 0.4% R 87% Pt、13% Rh 100% Pt -50~1768 6 0 - 1450 1.5℃または 0.25% 0.6℃または 0.1% S 90% Pt、10% Rh 100% Pt -50~1768 6 0~1450 1.5℃または 0.25% 0.6℃または 0.1% T 100% Cu 55% Cu、45% Ni -270~400 41 -200~0 1℃または 1.5% 0~350 1℃または 0.75% E N 26 1.1℃または 0.4% 0.5℃または 0.4% リソース コンポーネントはファームウェアで完全に実装されています。他の PSoC リソースは消費しません。 Document number: 001-84911 Rev. ** Page 7 of 11 ® PSoC Creator™ コンポーネントデータシート 熱電対計算機 API のメモリ使用量 コンポーネントのメモリ使用量は、コンピュータ、デバイス、使用されている API の数やコンポーネントの構成によっ て大きく異なります。以下の表は、特定のコンポーネント構成で使用できるすべての API についてのメモリ使用量 を示しています。 最適化をサイズ優先、リリースモードに設定したコンパイラを使って測定されました。特定の設計については、コン パイラによって生成されたマップファイルを分析してメモリ使用量を特定できます。 PSoC 3 (Keil_PK51) 構成 PSoC 5 (GCC) フラッシュ SRAM フラッシュ SRAM バイト バイト バイト バイト B型熱電対 710 0 336 0 E型熱電対 730 0 344 0 J型熱電対 702 0 324 0 K型熱電対 730 0 340 0 N型熱電対 899 0 436 0 R型熱電対 911 0 464 0 S型熱電対 895 0 444 0 T型熱電対 706 0 324 0 性能 コンポーネントの性能は、カスタマイザで選択された実装方法によって異なります。以下の値は、CPU 速度 24MHz、コンパイラをリリースモードに設定した状態で測定されました。これらの数値は、必要なトレードオフを特 定するための近似値として使用してください。 GetTemperature API NIST 多項式 熱電対の型 電圧範囲 (mV) 温度範囲 (℃) 多項式の 次数 CPUサイクル数 (PSoC 3) CPUサイクル数 (PSoC 5) B 0.033~0.291 100~250 7 7900 270 0.291~2.431 250 ~700 8 8500 270 2.431~13.820 700~1820 8 8500 270 Page 8 of 11 Document number: 001-84911 Rev. ** ® PSoC Creator™ コンポーネントデータシート 熱電対計算機 熱電対の型 電圧範囲 (mV) 温度範囲 (℃) 多項式の 次数 CPUサイクル数 (PSoC 3) CPUサイクル数 (PSoC 5) E -9.718~-8.825 -250~-200 9 9100 310 -8.825~0 -200~0 8 8500 310 0~76.373 0~1000 8 8500 310 -8.095~0 -210~0 8 8500 270 0~42.919 0~760 7 7900 270 42.919~69.553 760~1200 5 6700 270 -5.891~0 -200~0 8 8500 310 0~20.644 0~500 9 9100 310 20.644~54.886 500~1372 6 7300 310 -4.313~-3.990 -250~-200 9 9100 310 -3.990~0 -200~0 9 9100 310 0~20.613 0~600 7 7900 310 20.613~47.513 600~1300 5 6700 310 -0.226~1.923 -50~250 10 9700 340 1.923~13.228 250~1200 9 9100 340 13.228~19.739 1200~1664.5 5 6700 340 19.739~21.103 1664.5~1768.1 4 6100 340 -0.235~1.874 -50~250 9 9100 310 1.874~11.950 250~1200 9 9100 310 11.950~17.536 1200~1664.5 5 6700 310 17.536~18.693 1664.5~1768.1 5 6700 310 -6.180~-5.603 -250~-200 7 7900 240 -5.603~0 -200~0 7 7900 240 0~20.872 0~400 6 7300 240 J K N R S T Document number: 001-84911 Rev. ** Page 9 of 11 ® PSoC Creator™ コンポーネントデータシート 熱電対計算機 7 次および 5 次多項式 多項式の次数 CPUサイクル数 (PSoC 3) CPUサイクル数 (PSoC 5) 7 7900 240 5 6700 170 GetVoltage API 熱電対の型 温度範囲(℃) 多項式の次数 CPUサイクル数 (PSoC 3) CPUサイクル数 (PSoC 5) B 0~100 6 7300 200 E -20~100 8 8500 270 J -20~100 7 7900 240 K -20~100 8 8500 270 N -20~100 8 8500 270 R -20~100 7 7900 240 S -20~100 7 7900 240 T -20~100 8 8500 270 変更履歴 ここでは、過去のバージョンからコンポーネントに加えられた主な変更を示します。 バー ジョン 1.0 変更の説明 変更の理由 / 影響 熱電対計算機コンポーネントの最初のリリースはバージョン1.0 です。 Copyright © 2005-2012 Cypress Semiconductor Corporation 本文書に記載される情報は、予告なく変更される場合があります。Cypress Semiconductor Corporationは、サイプレス製品に組み込まれた回路 以外のいかなる回路を使用することに対しても一切の責任を負いません。特許又はその他の権限下で、ライセンスを譲渡又は暗示することもありません。サイプレス製品は、サイプレスとの書面による合意に基づくものでない限 り、医療、生命維持、救命、重要な管理、又は安全の用途のために使用することを保証するものではなく、また使用することを意図したものでもありません。さらにサイプレスは、誤動作や故障によって使用者に重大な傷害を もたらすことを合理的に予想される、生命維持システムの重要なコンポーネンツとしてサイプレス製品を使用することを許可していません。生命維持システムの用途にサイプレス製品を提供することは、製造者がそのような使用 におけるあらゆるリスクを負うことを意味し、その結果サイプレスはあらゆる責任を免除されることを意味します。 PSoC Designer™及びProgrammable System-on-Chip™は、Cypress Semiconductor Corp.の商標、PSoC®は同社の登録商標です。本文書で言及するその他全ての商標又は登録商標は各社の所有物です。 全てのソースコード(ソフトウェア及び/又はファームウェア)はCypress Semiconductor Corporation (以下「サイプレス」)が所有し、全世界(米国及びその他の国)の特許権保護、米国の著作権法並びに国際協定の条項に より保護され、かつそれらに従います。サイプレスが本書面によるライセンシーに付与するライセンスは、個人的、非独占的かつ譲渡不能のライセンスであって、適用される契約で指定されたサイプレスの集積回路と併用される ライセンシーの製品のみをサポートするカスタムソフトウェア及び/又はカスタムファームウェアを作成する目的に限って、サイプレスのソースコードの派生著作物を複製、使用、変更、そして作成するためのライセンス、並びにサイプ レスのソースコード及び派生著作物をコンパイルするためのライセンスです。上記で指定された場合を除き、サイプレスの書面による明示的な許可なくして本ソースコードを複製、変更、変換、コンパイル、又は表示することは 全て禁止されます。 Page 10 of 11 Document number: 001-84911 Rev. ** ® PSoC Creator™ コンポーネントデータシート 熱電対計算機 免責条項:サイプレスは、明示的又は黙示的を問わず、本資料に関するいかなる種類の保証も行いません。これには、商品性又は特定目的への適合性の黙示的な保証が含まれますが、これに限定されません。サイプレス は、本文書に記載される資料に対して今後予告なく変更を加える権利を留保します。サイプレスは、本文書に記載されるいかなる製品又は回路を適用又は使用したことによって生ずるいかなる責任も負いません。サイプレス は、誤動作や故障によって使用者に重大な傷害をもたらすことが合理的に予想される生命維持システムの重要なコンポーネンツとしてサイプレス製品を使用することを許可していません。生命維持システムの用途にサイプレス 製品を提供することは、製造者がそのような使用におけるあらゆるリスクを負うことを意味し、その結果サイプレスはあらゆる責任を免除されることを意味します。 ソフトウェアの使用は、適用されるサイプレスソフトウェアライセンス契約によって制限され、かつ制約される場合があります。 Document number: 001-84911 Rev. ** Page 11 of 11