AN124 - 低ノイズ電圧リファレンスの775ナノボルト

アプリケーションノート124
2009年7月
低ノイズ電圧リファレンスの775ナノボルトのノイズの測定
静穏を測る
Jim Williams
はじめに
多くの場合、測定システムの測定限界は、電圧リファレンスの
安定性とノイズによって決まります。特に、リファレンスのノイ
ズにより、多くの場合安定した分解能の限界が設定されます。
システムの電源電圧が低下の一途を辿るのに伴ってリファレ
ンス電圧が低下してきており、リファレンスのノイズがますま
す重要になっています。信号処理範囲が圧縮されると、分解
能を維持するにはリファレンスのノイズの相応の削減が不可
欠になります。ノイズは最終的にはA/Dコンバータの量子化
の不確定性に変換され、秤、慣性航法システム、赤外線サー
モグラフィー、DVM、医療用画像処理装置などのアプリケー
ションにジッタを生じます。新しい低電圧リファレンスである
LTC6655の2.5VOUT でのノイズはわずか 0.3ppm(775nV)で
す。際立った仕様を表形式で図 1に示します。精度と温度係
数は高グレードの低電圧リファレンスに特有のものです。特に
注目に値する0.1Hz ∼ 10Hzノイズはどんな低電圧エレクトロ
ニック・リファレンスも比肩できません。
ノイズ測定
LTC6655の極めて低いノイズを検証するには特殊な技法が
必要です。図 2の方法は単純素朴に見えますが、実際に実装
するのは難度の高い測定方法です。0.1Hz ∼ 10Hzノイズのこ
のテスト方式には、低ノイズのプリアンプ、フィルタ、およびピー
ク・トゥ・ピーク・ノイズ検出器が含まれます。精確な測定を可
能にするプリアンプの160nVのノイズフロアは、設計とレイア
ウトの特殊な手法を必要とします。106 の順方向利得により、
従来の測定器による読み取りが可能です。
図 3の詳細回路図は、160nVのノイズフロアを達成するのに
必要ないくつかの検討事項を明らかにしています。リファレン
スのDC 電位は1300μFと1.2k 抵抗の組み合わせにより除去
され、AC 成分が Q1に与えられます。非常に低ノイズのJ-FET
であるQ1-Q2は、A1によってDC 性能が安定し、A2 がシン
グルエンドの出力を与えます。A2 からの抵抗性帰還により、
10,000の利得構成が安定します。A2の出力は、100の利得で
0.1Hz ∼ 10Hzの応答を与えるアンプ・フィルタA3-A4に配線
されています。A5-A8は、1ボルト/マイクロボルトのスケール
係数でDVMによって読み出されるピーク・トゥ・ピーク・ノイズ
検出器で構成されています。ピーク・トゥ・ピーク・ノイズ検出
器は高精度測定を行い、オシロスコープのディスプレイの面
倒な解釈を不要にします。瞬時ノイズ値は示されている出力
から、モニタしているオシロスコープに与えられます。オシロス
コープの掃引ゲートによってトリガされる74C221ワンショット
は、
各オシロスコープの10秒掃引の各終点でピーク・トゥ・ピー
ク・ノイズ検出器をリセットします。
L、LT、LTC、LTM、Linear Technologyおよび Linearのロゴはリニアテクノロジー社の登録商
標です。他の全ての商標はそれぞれの所有者に所有権があります。
LTC6655リファレンスの仕様表
規定値
出力電圧
リミット
1.250, 2.048, 2.500, 3.000, 3.300, 4.096, 5.000
初期精度
0.025%, 0.05%
温度係数
2ppm/°C, 5ppm/°C
0.1Hz ~ 10Hzノイズ
VOUT = 2.500Vで0.775µV、10 秒の測定時間で、1000 回のうち90%でピーク・トゥ・ピーク・ノイズがこの数値に入る
その他の特性
ライン・レギュレーション:5ppm/V、損失電圧:500mV、シャットダウン・ピン、ISUPPLY = 5mA、VIN = VO + 0.5V ~ 13.2VMAX、
IOUT(SINK/SOURCE) = ±5mA、ISHORT Circuit = 15mA。
図 1.LTC6655 の精度と温度係数は高グレードの低電圧リファレンスに特有である。
特に注目に値する0.1Hz ∼ 10Hzノイズはどんな低電圧エレクトロニック・リファレンスも比肩できない
an124f
AN124-A
アプリケーションノート124
A = 106
LTC6655
2.5V REFERENCE
LOW NOISE
AC PRE-AMP
EN, 0.1Hz TO 10Hz = 160nV
A = 10,000
≈700nV
NOISE
0.1Hz TO 10Hz
0.1Hz TO 10Hz FILTER AND
PEAK TO PEAK NOISE DETECTOR
0µV TO 1µV = 0V TO 1V, A = 100
RESET
OUTPUT
DC OUT
0V TO 1V = 0µVP-P TO
1µVP-P AT INPUT
OSCILLOSCOPE
SWEEP
GATE OUT
VERTICAL
INPUT
AN124 F02
図 2.0.1Hz ∼ 10Hzノイズの概念的なテスト方式には、低ノイズのプリアンプ、フィルタ、およびピーク・トゥ・ピーク・ノイズ検出器
が含まれる。精確な測定を可能にする、プリアンプの 160nV のノイズフロアは、特殊な設計とレイアウトの技法を必要とする。
多数の詳かな条件が回路の性能に影響します。高度に特殊
ピーク・トラッピング・ダイオードとして使われるJ-FET が含ま
な1300µFコンデンサが、付録 Bに与えられている手順に従っ
れます。FETゲートのダイオードは逆電圧をクランプし、リー
2
て、リーク特性に基づいて選択されています。さらに、それと、 クをさらに小さくします。
ピーク保存コンデンサの充放電プロ
それに関連した低ノイズの1.2k 抵抗が、ピックアップ・ノイズ
ファイルは非常に非対称なので、規定された低誘電吸収のポ
に対して十分シールドされています。FETのQ1とQ2は差動
リプロピレン・コンデンサが必要になります。3 電気的に絶縁さ
でA2に信号を与え、簡単な低ノイズ・オペアンプを形成しま
れたリンクを介して接続されたオシロスコープにより、グラン
す。100k-10Ωのペアによって与えられる帰還により、閉ループ
ド・ループに起因する信号破壊が防がれます。オシロスコープ
利得が 10,000に設定されます。Q1とQ2の特性は極めて低ノ
の入力信号は絶縁されたプローブによって与えられます。掃引
イズですが、それらのオフセットとドリフトは制御されません。 ゲートの出力は絶縁パルストランスによってインタフェースさ
A1はQ3を介してQ1のチャネル電流を調整し、Q1-Q2の入力
れます。詳細は付録 Cに示されています。
差を最小にすることにより、これらの欠点を補正します。Q1の
ノイズ測定回路の性能
スキューをもたせたドレイン値により、A1は確実にオフセット
を捕捉することができます。A1とQ3は必要などんな電流でも
LTC6655のノイズ測定の前に、回路性能の特性評価を行う
Q1のチャネルに供給して、オフセットを約 30μV 以内に強制し
必要があります。プリアンプ段は、1μVのステップをその入力
ます。FETのVGS は4:1の範囲で変化することができます。こ (リファレンスは切断)
に加えてA2の出力をモニタすることに
のため、それらは10%のVGS 整合に基づいて選択する必要が
より、10Hzを超える帯域幅で検証します。図 4の10msの立ち
あります。この整合により、A1は大きなノイズを持ち込むことな
上がり時間は35Hzの応答を示しており、0.1Hz ∼ 10Hzのノイ
くオフセットを捕捉することができます。Q1とQ2はエポキシ樹
ズ・スペクトル全体が後続のフィルタ段に確実に与えられるよ
脂内部で熱的に結合されて熱の影響を受けにくくなっており、 うにします。
A1のDC 安定化ループのロールオフより時定数がはるかに大
Note 1:プリアンプの構造は注意深く作成する必要があります。プリアンプの構築の詳細につ
きいので、オフセットの不安定性やハンチングを防ぎます。A1いては、付録Aの
「メカニカルな部分およびレイアウトに関する検討事項」
を参照してください。
Note 2:ダイオード接続したJ-FETの優れたリーク特性は、それらの極めて小さな面積のゲー
Q1-Q2-A2の全体のアセンブリおよびテスト対象のリファレン
ト-チャネル接合から得られます。一般に、J-FETのリークは数ピコアンペア
(25°C)
であり、普
1
通の信号用ダイオード
(たとえば、1N4148)
は約 1,000 倍悪い値です
(25°Cでナノアンペアの単
スは、シールドされた缶内部に完全に収納されます。
リファレ
位)。
ンスは9Vのバッテリから給電され、ノイズを最小に抑え、グラ
Note 3:テフロンやポリスチレン誘電体はさらに良いが、現実にはそうもいきません。テフロン
は高価であり、1μFで過度に大きくなります。アナログタイプは、ポリスチレンフィルムの唯一
ンド・ループの制約を受けません。
ピーク・トゥ・ピーク検出器の設計の検討事項には、普通の
ダイオードによって可能なよりも低いリーク電流を得るため、
のメーカーが製造を止めたので、ポリスチレン時代の終焉を間近に迎えています。
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AN124-A
10k
10k
1µF
1µF
P
P
1µF
F
S
1300µF
100k
100k
**1.2k
T
0.005µF
+
–15V
4.7k
4.7k
A1
LT1012
100k
–
+
0.005µF
A6
1/4 LT1058
–
+
A5
1/4 LT1058
–
SHIELD
100k
LOW NOISE
PRE-AMP
A = 104
1µF
– PEAK
+ PEAK
0.1µF
–
A8
1/4 LT1058
+
–
A7
1/4 LT1058
+
Q1
–15V
Q2
+
–
1k
–
DVM
+
1k
5
A2
LT1097
0.022µF
電力、
シールディング、
および接地の
方式については、
付録 C を参照
= 1/4 LTC202
= 2N4393
= 1N4148
1µF
2k
RST = Q2
+
10k*
1M*
RC2
10k
B2
BAT-85
BAT-85
= POLYPROPELENE
+15
10k
330µF
16V
330µF
16V
+
AN124 F03
A4 330µF OUTPUT CAPACITORS = <200nA LEAKAGE
AT 1VDC AT 25°C
P
絶縁パルス・
トランスを介して
オシロスコープの
掃引ゲート出力から
+V
+15
RESET PULSE
GENERATOR
= TANTALUM,WET SLUG
ILEAK < 5nA
SEE TEXT/APPENDIX B
10k
+
A4
LT1012
–
二乗和平方根の補正
本文を参照
T
A2
0.1µF
124k*
0.1µF
100Ω*
OUT
124k*
74C221
C2
CLR2
+15
0.22µF
330µF
16V
330µF
16V
IN
330Ω*
+15
–
A3
LT1012
+
A = 100 AND
0.1Hz TO 10Hz FILTER
Q1、Q2 = 熱的に結合された
2SK369(VGS の整合 10%)
または LSK389 デュアル
熱の影響を緩和
本文を参照
絶縁されたプローブを介して
オシロコープ入力へ、
1V/DIV = 1µV/DIV(入力換算)、
掃引 = 1s/DIV
10Ω*
100k*
* = 1% METAL FILM
** = 1% WIREWOUND, ULTRONIX105A
O TO 1V =
O TO 1µV
SHIELDED CAN
– INPUT
900Ω*
15V
200Ω*
750Ω*
450Ω*
1k*
PEAK TO PEAK
NOISE DETECTOR
AC LINE GROUND
1µF
–15V
Q3
2N2907
10k
0.1µF
図 3.詳細なノイズテスト回路。熱的に影響を受けにくくしたQ1-Q2 の低ノイズ J-FET ペアは、A1-Q3 によってDC 性能が安定します。A2 は A = 10,000 のプリアンプ出力を
供給します。A3 ∼ A4 は、0.1Hz ∼ 10Hz、A = 100 のバンドパス・フィルタを形成します。プリアンプの入力を基準にした総利得は 106 です。ピーク・トゥ・ピーク・ノイズ検出
器は
(オシロスコープの掃引ゲートのモニタによってリセットされ)、DVM 出力を供給します。
15
RST
–15
RST
LTC6655
2.5V
REFERENCE
UNDER TEST
SD
IN
9V
+
1N4697
10V
+
0.15µF
+
15V
アプリケーションノート124
an124f
AN124-A
アプリケーションノート124
ピーク・トゥ・ピーク・ノイズ検出器の動作を図 5に示します。波
形に含まれているのは、A3の入力ノイズ信号(トレースA)、A7
(トレースB)
の正ピーク検出器出力/A8(トレースC)
の負ピー
ク検出器出力、および DVMの差動入力
(トレースD)
です。ト
レースEのオシロスコープが供給するリセット・パルスは写真
を分かりやすくするため長く伸ばしてあります。
回路のノイズフロアはLTC6655を3Vのバッテリ・スタックで
置き換えて測定します。大きな入力コンデンサは、誘電吸収
効果のため、測定前に24 時間のセトリング時間を必要としま
す。回路のオシロスコープ出力で撮られた図 6は、10 秒のサ
ンプリング・ウィンドウの160nVの0.1Hz ∼ 10Hzノイズを示し
ています。ノイズは二乗和平方根として増加するので、これは
LTC6655の775nVの予想ノイズフィギュアの約 2%の誤差を
2mV/DIV
10ms/DIV
AN124 F04
図 4.プリアンプの立ち上がり時間の測定値は10ms。示されている
35Hz の帯域幅により、0.1Hz ∼ 10Hzノイズ・スペクトル全体が後続
のフィルタ段に確実に与えられる
A = 5mV/DIV
B = 0.5V/DIV
C = 0.5V/DIV
D = 1V/DIV
E = 20V/DIV
1s/DIV
AN124 F05
図 5.ピーク・トゥ・ピーク・ノイズ検出器の波形に含まれているの
は、A3 の入力ノイズ信号(トレースA)、A7(トレースB)
の正ピーク
検出器出力 /A8(トレースC)
の負ピーク検出器出力、および DVM の
差動入力
(トレースD)。トレースE のオシロスコープが供給する
リセット・パルスは写真を分かりやすくするため長く伸ばしてある
100nV/DIV
1s/DIV
AN124 F06
図 6.低ノイズ回路 /レイアウト手法により、160nV の 0.1Hz ∼ 10Hz
ノイズフロアとなり、精確な測定が保証される。3V のバッテリで
LTC6655リファレンスを置き換えて、図 3 のオシロスコープの出力
で撮った写真。二乗和平方根のノイズ追加特性により、ノイズフロ
アは約 2% の誤差をLTC6655 の予測されるノイズフィギュアに追加
する。図 3 の A3で補正される
表します。この項は、リファレンスのテストの間、図 3の
「二乗
和平方根の補正」
スイッチを適切な場所に置くことによって計
算に入れられます。その結果得られる2%の1 次利得減衰によ
り、回路の160nVのノイズフロアの影響に対してLTC6655の
出力ノイズの読み取り値が補正されます。図 7の6 分間のピー
ク・トゥ・ピーク・ノイズ検出器の出力のストリップチャートによ
る記録は、テスト回路の160nVのノイズより小さいことを示し
ています。4 10 秒ごとにリセットが生じます。3Vのバッテリが入
力コンデンサをバイアスし、このテストのLTC6655を置き換え
ます。
図 8は、示されている24 時 間の誘 電 吸 収 時 間 経 過 後の
LTC6655のノイズです。この10 秒のサンプリング・ウィンドウ
のノイズは、二乗和平方根の補正をイネーブルした状態で
775nVピーク・トゥ・ピーク以内です。回路のノイズフロアが非
常に低いことが検証されたことから、このデータが有効であ
る可能性が非常に高くなります。まとめると、どの与えられた
ノイズレベルに対しても二乗和平方根の誤差補正係数をそ
の都度確定する必要がありますが、採用された手法はどんな
0.1Hz ∼ 10Hzノイズ源の測定にも適用できると言うことがで
きます。
Note 4:そのとおりです。ストリップチャートによる記録です。この地方に住む頑固な変わった
連中は、今の時代の代替品を無視して、このような古めかしい装置を使い続けています。深く
根を張った慣習的偏向が現れている可能性があるとはいえ、この選択には技術的な利点があ
ることがあります。
an124f
AN124-A
AMPLITUDE
アプリケーションノート124
100nV
500nV/DIV
0V
1 MIN
TIME
AN124 F07
図 7.6 分間にわたって観察されたピーク・トゥ・ピーク・ノイズ
検出器の出力は 160nV 未満のテスト回路ノイズを示す。10 秒ごと
にリセットが生じる。3Vのバッテリが入力コンデンサをバイアスし、
このテストの LTC6655 に置き換わる
参考文献
1. Morrison, Ralph, Grounding and Shielding Techniques in
Instrumentation, Wiley-Interscience, 1986.
2. Ott, Henry W., Noise Reduction Techniques in Electronic
Systems, Wiley-Interscience, 1976.
3. LSK-389 Data Sheet, Linear Integrated Systems.
4. 2SK-369 Data Sheet, Toshiba.
5. LTC6655 Data Sheet, Linear Technology Corporation.
6. LT1533 Data Sheet, Linear Technology Corporation.
7. Williams, Jim, Practical Circuitry for Measurement
and Control Problems, Linear Technology Corporation,
Application Note 61, August 1994.
8. Williams, Jim, A Monolithic Switching Regulator with
100µV Output Noise, Linear Technology Corporation,
Application Note 70, October 1997.
9. Williams, Jim and Owen, Todd, Performance Verification
of Low Noise, Low Dropout Regulators, Linear
Technology Corporation, Application Note 83, March
2000.
1s/DIV
AN124 F08
図 8.LTC6655 の 0.1Hz ∼ 10Hzノイズの測定値は 10 秒の
サンプル時間で 775nV
10. Williams, Jim, Low Noise Varactor Biasing with
Switching Regulators, Linear Technology Corporation,
Application Note 85, August 2000, pages 4-6.
11. Williams, Jim, Minimizing Switching Regulator Residue
in Linear Regulator Outputs, Linear Technology
Corporation, Application Note 101, July 2005.
12. Williams, Jim, Power Conversion, Measurement
and Pulse Circuits, Linear Technology Corporation,
Application Note 113, August 2007.
13. Williams, Jim, High Voltage, Low Noise, DC-DC
Converters, Linear Technology Corporation, Application
Note 118, March 2008.
14. Tektronix, Inc., Type 1A7 Plug-In Unit Operating and
Service Manual, Tektronix, Inc., 1965.
15. Tektronix, Inc., Type 1A7A Differential Amplifier
Operating and Service Manual, Tektronix, Inc. 1968.
16. Tektronix, Inc. Type 7A22 Differential Amplifier
Operating and Service Manual, Tektronix, Inc., 1969.
17. Tektronix, Inc., AM502 Differential Amplifier Operating
and Service Manual, Tektronix, Inc., 1973.
an124f
AN124-A
アプリケーションノート124
付録 A
メカニカルな部分およびレイアウトに関する検討事項
ノイズ測定に不可欠な低ノイズのX10,000プリアンプは、非
常に注意して準備する必要があります。ボードのレイアウトを
図 A1に示します。ボードは、
(A1Aに示されている)
シールド
された缶に収められています。追加のシールドが入力のコン
デンサと抵抗(A1Aの左方)に与えられています。抵抗の巻
線構造は低ノイズですが、漏れフィールドに特に影響を受け
やすい性質があります。A1Aは、ソケットに収めたテスト対象
のLTC6655リファレンス
(大きな入力コンデンサのシールドの
下)
およびJFET入力アンプに関連した部品も示しています。熱
源の1つであるQ3(A1Aの右上)
はJFETのプリント回路のラ
ンドから離して置かれており、対流によりノイズが持ち込まれ
図 A1A.
るのを防ぎます。
さらに、
JFETはエポキシを充填したプラスチッ
クのカップ内に収められており
(図 A1Bの中央)、熱結合を
1
強め、熱の影響を弱めます。
このFETの熱管理により、オフ
セットの不安定性および A1の安定化ループのハンチングが
低周波ノイズであるかの如く振る舞うのが防がれます。 15V
電源はバナナジャックを介して筐体内に入ります。リファレン
スは9Vのバッテリから給電されます
(両方ともA1A 内に見え
ます)。A = 100のフィルタとピーク・トゥ・ピーク検出器回路は、
シールドされた缶の外側の個別のボードに配置されていま
す。
この箇所に関して特に言及すべきことはありませんが、
ボー
ドからピーク検出コンデンサへのリーク電流は、ガードリング
またはフライングリード/テフロンのスタンドオフ構造体を使っ
て最小に抑えます。
Note 1:Martinelli and Company
(飲料メーカー)
によって供給されるプラスチックのカップには、
無償で、10オンスのアップルジュースも含まれています。
図 A1B.
図 A1.プリアンプ・ボードの上面図(図 A1A)
と底面図(A1B)。ボードの上面にはシールドされた入力コンデンサ
(左上)
と入力抵抗(上中央
の左)
が含まれる。安定化されたJFET 入力アンプがボードの上中央の右を占める。出力段は BNCコネクタに隣接している。テスト対象の
リファレンスは入力コンデンサの下のソケットに装着されている。 15 電源は、バナナジャック
(最右端)
を介して、シールドされた筐体内に
入る。9V バッテリ
(下方)
がテスト対象のリファレンスに給電する。ボード底部のエポキシを充填したプラスチックのカップ
(AIB の中央)
に
は JFET が入れられており、熱的結合を与え、熱の影響を弱める
an124f
AN124-A
アプリケーションノート124
付録 B
サは誘電吸収があるので、意味ある測定を保証するためには
24 時間の充電時間を必要とします。コンデンサのリーク電流
は、図に示されている5ステップの手順に従うことによって求
められます。必要とされる5ナノアンペアのリーク電流の歩留
1
まりは90%を超えます。
入力コンデンサの選択手順
入力コンデンサは高度に特殊化したタイプで、リーク電流に
基づいて選択する必要があります。そうしないと、その結果生
じる誤差により、入力のプリアンプが飽和するか、またはノイ
ズが入り込む可能性があります。最高級の200 C定格のウェッ
トスラグ・タンタル・コンデンサが利用されています。コンデン
サはその定格電圧の小部分で、室温で動作するので、その仕
様が示すよりもはるかに低いリーク電流になります。コンデン
Note 1:指定されているコンデンサは並外れて高価なので
(ほとんど400ドル)、この高い歩留
りは大歓迎です。もっと手頃な代替品があるかもしれません。選択された商用グレードのアル
ミ電解コンデンサは必要なDCリーク電流に近いものがありますが、それらの非周期的ノイズ
バースト
(メカニズムは不明。読者のコメントを歓迎します)
が懸念されます。
HP-419A MICROVOLT METER
VISHAY
XTV138M030P0A
WET SLUG TANTALUM
hp
+
+ 1300µF/30V –
–
1k
1.5V
3V
AA
CELLS
1.5V
AN124 FB01
テストの順序
1. マイクロボルトメータをオフする
2. 3V バッテリスタックを接続する
3. 24 時間待つ
4. マイクロボルトメータをオンする
5. コンデンサのリーク電流を読み取る、1nA = 1µV
図 B1.DC 誤差およびコンデンサに起因するノイズを最小に抑えるため、5nA 未満のリークに基づいて選択された
プリアンプの入力コンデンサ。コンデンサは、誘電吸収があるため、意味ある測定を保証するには 24 時間の充電
時間が必要。このテストに合格するには、最高グレードのウェットスラグ・タンタル・コンデンサが必要
an124f
AN124-A
アプリケーションノート124
付録 C
電源、グランド、およびシールディングに関する検討事項
図 3の回路が、述べられている結果を達成するには、配電、グ
ランド接続、およびシールディングに細心の注意を払う必要が
あります。適切な方法を図 C1に示します。低シャント容量のラ
イン絶縁トランスが、計測器グレードの 15V 電源に給電し、
クリーンで低ノイズの電力を供給します。プリアンプのシール
ドされた缶は110VのACグランド端子に接続され、ピックアッ
プ・ノイズをアース端子に向けます。フィルタ/ピーク・トゥ・ピー
ク検出器のオシロスコープへの接続は、絶縁されたプローブ
とパルス絶縁トランスを介して行い、誤差を生じるグランド・
ループを排除します。1 回路のコモン端子とアース端子の間に
電流が流れないことを検証するため含めてある、示されている
ループは電流プローブでモニタされます。図 C2と図 C3はバッ
テリ駆動の電源で
(両方ともオプション)、ライン絶縁トランス
および計測器グレードの電源を置き換えます。C2はリニア・レ
ギュレータを使って低ノイズの 15Vを供給します。バッテリは
フロートしているので、正電圧レギュレータが正負両方の電源
レールに対応できます。C3では、1 個のバッテリ・スタックが非
常に低ノイズのDC/DCコンバータに給電し、低ノイズのディス
クリート・リニア・レギュレータを介して正負の電源レールに給
電します。2 バッテリ駆動のこれら両方の手法は、AC 電源ライ
ンから給電する場合に比べて経済的ですが、バッテリの保守
が必要です。
図 C1のブロックに示されている市販品は、要件を満たすこと
が分かった、応用可能な代表的ユニットを表しています。他の
タイプを採用することができますが、必要な性能があるか検
証する必要があります。
Note 1:絶縁プローブの代替として使える方法は、接地された1k 抵抗に流れる図 3のA4の出
力電流を、DC 性能を安定化した電流プローブ
(たとえば、TektronixのP6042、AM503)
を使っ
てモニタすることです。その結果得られる絶縁された1V/µVのオシロスコープの表示には、電
流プローブ自体のノイズのため、10Hzのローパス・フィルタ
(付録 Dを参照)
が必要です。
Note 2:参考文献の6と8は、使用される特殊なDC/DCコンバータについて詳説しています。
OSCILLOSCOPE
VERTICAL
INPUT
TEKTRONIX A6909,
TEKTRONIX A6902B,
SIGNAL ACQUISITION
TECHNOLOGIES SL-10
SWEEP RESET
PULSE ISOLATION
TRANSFORMER/
COAXIAL CAPACITOR
ISOLATED
PROBE
DEERFIELD LAB 185,
HEWLETT PACKARD
10240B
PEAK TO PEAK
RESET
9V
BATTERY
REFERENCE
UNDER TEST
A = 100
FILTER AND
PEAK TO PEAK
DETECTOR
A = 10,000
PRE-AMP
+
DVM
–
SHIELDED CAN
RF
FEEDTHROUGHS
HEWLETT PACKARD,
6111A,
PHILBRICK RESEARCHES
6033, PR-300
+15
–15
INSTRUMENT
GRADE ±15V
POWER SUPPLY
CIRCUIT
COMMON
TOPAZ, 0111T35S
LOW SHUNT
CAPACITANCE ISOLATION
TRANSFORMER
(LOCATE ≥3 FEET
FROM SHIELDED CAN)
110VAC
LINE INPUT
= AC LINE GROUND
= CIRCUIT COMMON
CURRENT
MONITOR
LOOP
AN124 FC1
図 C1.低ノイズ測定のための電源 /グランド/シールディング方法により、ACラインに起因する干渉と、回路の
リターンとACラインのグランド電流の混流を最小化。電流モニタ・ループに電流が流入してはならない
an124f
AN124-A
アプリケーションノート124
+18
+
SD
IN
B
LT1761
FB
10µF
0.1µF
OUT
13.7k*
+15
+
10µF
1.21k*
12 Size D
ALKALINE
1.5V CELLS
EACH PACK
SD
IN
+
B
LT1761
0.1µF
OUT
FB
13.7k*
10µF
1.21k*
+
* = 1% 金属皮膜抵抗
–15
10µF
AN124 FC2
図 C2.LT1761レギュレータは 15V の低ノイズ電源を形成する。絶縁されたバッテリ・
パックにより、正電圧レギュレータが負出力に給電して、AC 電源ラインを基準にする
グランド・ループの可能性を取り除くことができる
an124f
AN124-A
アプリケーションノート124
4.99k*
–
6V
6V BATTERY
4x 1.5V
ALKALINE
D CELL
10k*
+
4.7µF
14
15k
RVSL
1µF
15k
13
VIN
12
3
CT
5
8
3300pF
+
RT
PGND COL B
6
16
18k
L1
10k
43k
6V
2
3
4
4.7µF
5
T1
12
+
7
10V
100µF
47µF
19V UNREGULATED
100µF
15
+
L1
25µH
LT1021
OUT
0.1µF
–19V UNREGULATED
15VOUT
OUT
COMMON
10k*
10k*
–
4
1/2 LT1013
L2
25µH
LT1010
–15VOUT
47µF
+
* = 1% METAL FILM
8
IN
10
9
5V
L1: 22nH INDUCTOR. COILCRAFT B-07T TYPICAL,
PC TRACE, OR FERRITE BEAD
L2, L3: PULSE ENGINEERING. PE92100
T1: COILTRONICS CTX-02-13664-X1
: 1N4148
LT1010
+
9
5k
2
RCSL DUTY COL A
LT1533
GND FB
1/2 LT1013
+
+
AN124 FC3
0.1µF
図 C3.低ノイズ、バイポーラ、フローティング出力のコンバータ。LT1533 の DUTY ピンを接地し、FBをバイアスすると、レギュレータは
50% のデューティ・サイクル・モードになる。LT1533 の制御された遷移時間により、100µV 未満の広帯域幅の出力ノイズが可能。ディスク
リートのリニア・レギュレータが低ノイズを維持し、レギュレーションを行う
an124f
AN124-A
アプリケーションノート124
付録 D
トのフィルタはシングル・ポール・タイプなので、帯域幅のカッ
トオフがいくらか控えめになります。さらに、示されているアン
プには10Hzのローパス・フィルタが含まれていませんが、簡
単に改造してこの機能を持たせることができます。必要な改造
情報とともに4つのアンプを図 D2に示します。1
高感度で低ノイズのアンプ
本文の回路のセットアップとトラブルシューティングに使えるい
くつかの低レベル・アンプを図 D1に示します。オシロスコープ
のプラグイン・アンプとスタンドアロン・タイプの両方を表に示
します。2つの主な制約事項が適用されます。これらのユニッ
計測器の型
Note 1:参考文献の14 ~ 17を参照。
メーカー
モデル番号
–3dB 帯域幅
最大感度 / 利得
Tektronix
1A7/1A7A
1MHz
10µV/DIV
中古市場
500シリーズのメインフレーム、
設定可能なバンドストップが必要
差動アンプ
Tektronix
7A22
1MHz
10µV/DIV
中古市場
7000シリーズのメインフレーム、
設定可能なバンドストップが必要
差動アンプ
Tektronix
5A22
1MHz
10µV/DIV
中古市場
5000シリーズのメインフレーム、
設定可能なバンドストップが必要
差動アンプ
Tektronix
ADA-400A
1MHz
10µV/DIV
製造中
オプションの電源付きスタンドアロン、
設定可能なバンドストップ
差動アンプ
Preamble
1822
10MHz
Gain = 1000
製造中
スタンドアロン、
設定可能なバンドストップ
差動アンプ
Stanford Research
Systems
SR-560
1MHz
Gain = 50000
製造中
スタンドアロン、
設定可能なバンドストップ、
バッテリまたはAC電源ラインで動作
差動アンプ
Tektronix
AM-502
1MHz
Gain = 100000
中古市場
TM-500シリーズの電源が必要、
設定可能なバンドストップ
差動アンプ
入手可能性
注釈
図 D1.いくつかの有用な高感度、低ノイズアンプ。トレードオフには、帯域幅、感度、および入手可能性が含まれる
メーカー
モデル番号
改造
Tektronix
1A7
Parallel C370A with 1µF
Tektronix
1A7A
Parallel C445A with 1µF
Tektronix
7A22
Parallel C426H with 3µF
Tektronix
AM502
Parallel C449 with 3µF
図 D2.Tektronix の多種の低レベルのオシロスコープのプラグイン
およびアンプの改造情報により、100Hz のパネルスイッチの位置
で 10Hz の高周波数フィルタ動作が可能になる。全てのケースで、
100Vマイラコンデンサを使用
an124f
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AN124-A
アプリケーションノート124
500nV/DIV
1s/DIV
AN124 QT
an124f
AN124-A
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