Application Note (日本語版) - Recom International Power Gmbh

Application Note (日本語版)
最終暫定版 2005/07/17
http://www.recom-international.com
DC-DC Converter Applications
タは, 主に内部部品のドリフトなど温度に依存する他のパ
用語の解説
ラメータと関係しています.
RECOM の DC/DC コンバータをユーザーの方々の回路で
正しくご利用頂くため, ここでは, データシートで使用され Temperature above Ambient (周囲温度上昇)
最大負荷時のデバイスにおいて生じる温度上昇です. これ
ている専門用語を解説します.
は効率と関係しています.
Input Voltage Range (入力電圧範囲)
デバイスが正常に機能を維持できる入力電圧の範囲です. Switching Frequency (スイッチング周波数)
DC/DC コンバータ内部のスイッチング回路の動作周波数
Load Voltage Regulation (負荷変動)
です. この周波数は表記上での値となります. 入力端子と
出力負荷の変動に対する出力電圧の変動です. 表記出力電圧
出力端子にみられるリップルは, 大抵, スイッチング周波数
のパーセンテージで表されます. 例えば, 12V 出力のデバイ
の 2 倍です. これは, ドライバ回路のプッシュ/プル構成と
スにおいて, 出力が 1V 変化する場合, 負荷変動率は 8.3%と
全波整流によるものです.
なります. 非出力調整型のデバイス (unregulated DC/DC) で
は, 負荷変動は最大負荷の 10%から 100%の負荷範囲で定 No Load Power Consumption (無負荷時電力消費)
これは, スイッチング回路が動作するための要件の基準で
められます.
す. 無負荷の出力条件で測定され. デバイスの全体の効率
Line Voltage Regulation (入力変動)
を下げる要因となります.
入力電圧に変動を与えた時の出力電圧の変動です. パーセ
ンテージで表されます. 例えば, 12V 入力, 5V 出力のデバ Isolation Capacitance (絶縁容量)
イスにおいて, 1.2V の入力電圧の変動に対し, 出力が 0.5V 入出力間の結合容量です. トランスの一次側と二次側のワ
イアの巻線間で生じる容量的な結合です. 一般的に, 絶縁
の変動をもつとき, 入力変動率は 1%/%となります.
容量は, 基板上のフィルターコンデンサの影響を除くため,
Output Voltage Accuracy (出力電圧精度)
1MHz で測定されます.
表記出力電圧に対し, 実際の出力電圧がどれだけ近いかを
保証する値です. これは, 表記入力電圧がデバイスに与え Mean Time Between Failure (MTBF) (平均故障間隔)
られたとき, 非出力調整型の DC/DC における出力電圧の MIL-HDBK-217F のハイブリッド回路モデルを用いて, デ
許容範囲を示します. 例えば, 5V 出力のデバイスにおいて, バイスの寿命の予測値が計算できます. POWERLINE コン
−5%の出力電圧精度をもつということは, 100%の負荷時に バータは, MTBF の計算に BELLCORE TR-NWT-000332 を
使用することもできます. ハイブリッドモデルは, ハイブ
4.75V の電圧を出力する可能性があることを意味します.
リッド全体の信頼度を決める様々な因子をもち, それらの
Input and Output Ripple (入力と出力のリップル)
中には, 環境ファクター (πE ), 習熟度 (πL ), スクリーニング
スイッチング周期間の入力または出力の電圧ドロップの大
レベル (πQ ), ハイブリッドの機能 (πF ), 個々の部品の故障
きさです. 電圧リップルの値は, フィルターコンデンサの容
率 (λC ) の総和があります. このとき, ハイブリッドモデル
量が目安になります.
の故障率の計算式は, 以下で与えられます.
Input to Output Isolation (入出力間絶縁)
X
λ=
(NC λC )(1 + 0.2πE )πL πF πQ
入力と出力回路間の絶縁強度です. これは, ある一定時間,
(故障数 / 106 時間)
大抵は 1 秒間, デバイスが耐えることのできる絶縁電圧の
ことです.
MTBF の値は, この値の逆数をとります. データブックで
は, 全ての MTBF の値は, 計算機室のような管理された環
Insulation Resistance (絶縁抵抗)
入力と出力回路間の抵抗です. 通常, 500VDC の条件で測 境 (Ground Benign) (πE = 0.5) で導出されています. これ
は多くのアプリケーションにおいて最も適切であるといえ
定されます.
ます. しかし, このような環境は, デバイスにとって最適な
Efficiency at Full Load (最大負荷時の効率)
動作条件であり, もっと厳しい環境でデバイスを使用した
100%の負荷の動作条件において, デバイスへの供給電力に
いユーザーは, 以下のデータから MTBF の予測値を計算で
対するデバイスの出力電力の比です.
きます.
Temperature Drift (温度ドリフト)
MIL-HDBK-217F は, 軍用の環境でモデルが定義されて
周囲温度 1◦ C あたりの変化に対する出力電圧の変化です. いるため, 標準的な民生用の環境に適用するためには, 解
表記出力電圧のパーセンテージで表されます. このパラメー 釈の置き換えが必要となります. 表 1 は, MIL-HDBK-217F
1
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環境
略号
Ground Benign
(地上の適温)
GB
Ground Mobile
(地上の移動体)
GM
Naval Sheltered
(海上のシェルタ)
NS
Aircraft Inhabited Cargo
(空の有人輸送機)
AIC
Space Flight
(宇宙の飛行)
SG
表 1: 環境に関する解釈
MIL-HDBK-271F の記述
民生用としての解釈または例
メンテナスがしやすく, 非移動体で,
研究所の設備, 試験装置, デスクトップ
温度・湿度が管理された環境
PC, 固定電話
装輪車や無限軌道車に取り付けた設
車載使用, 移動体の無線や通信, 携帯 PC
備や手動で輸送される装置
船や潜水艦の保護された装置. また
ナビゲーションや無線装置, 甲板下の計
は, 甲板下の装置
装
乗組員を収容できるコンパートメン
飛行関連の娯楽や非安全システムアプリ
トの標準的な環境条件
ケーションでの気密室やコックピット
地球上を軌道するもので, 動力によ
軌道通信衛星や, もとの場所から操作さ
る飛行や大気圏に帰還するような移
れる装置
動体は含まない.
Missile Launch
(ミサイルの発射)
ML
ミサイル発射に関する苛酷な条件
苛酷な衝撃や非常に高い加速が加わる環
境, 衛星発射の条件
の記述から民生用として等価なものに置き換えた対応表で
表 2: 環境ファクター
す. ただし, それらは, MIL-HDBK-217F の中で示されたも
のではなく, 自社の解釈に基づいてます. また, ここでは, 環
環境
境の数を 14 から 6 に減らしています. それらの 6 つの環
境は, 民生用アプリケーションとして最も適当なものです.
記載した環境とハイブリッドモデルに関して, より理解を
深めたい場合は, MIL-HDBK-217F のコピーを入手される
ことをお勧めします.
略号
πE
値
除数
Ground Benign
GB
0.5
1.00
Ground Mobile
GM
4.0
1.64
Naval Sheltered
NS
4.0
1.64
Aircraft Inhabited Cargo
AIC
4.0
1.64
Space Flight
SF
0.5
1.00
Missile Launch
ML
12.0
3.09
MIL-HDBK-217F では, Space Flight と Ground Benign は,
同じ環境ファクターの値をもっていますが, Space Flight に
到達するまでの行為は, 厳しい環境ファクターの値 (即ち,
Missile Launch) を用いるべきです.
ハイブリッドモデルの式は, あらゆるハイブリッドに書
き直すことができます. 一定の温度では, 環境ファクターを
唯一の変数とします.
てください). ノイズは, プリント基板のレイアウト, 測定系
λ = k(1 + 0.2πE )
ングノイズがありますが, アプリケーションノートで示す
従って, 他の環境ファクターにおける MTBF の値は, デー
ように, このほとんどは小容量コンデンサかフィルター用
タブックの各温度点に示される Ground Benign の値から計
のインダクタを使用することで簡単に取り除くことができ
算できます. これにより, 他の環境における MTBF の予測
ます.
の構成, 終端抵抗などに大きく影響されます. スペクトラム
分析のプロットを用いる以外で, 精度良く, 確実にノイズを
見積もることは困難です. リップルとして現れるスイッチ
値は, 即座に計算できます. MTBF の値は一般的に小さく
Operating Temperature Range (動作温度範囲)
DC/DC の動作温度範囲は, DC/DC の内部回路で使用され
をもっているため, それらの MTBF を即座に得るための除 ている部品の仕様により規定されます. 温度ディレーティ
数を各条件について求めることができます. 従って, 必要な ングのグラフは, そのデバイスの安全な動作エリア (SOA)
計算は, 表 2 に示した除数を用いて, データシートに記載さ を表しています.
れた MTBF の値を割るだけとなります.
ある温度に達するまでは, デバイスから 100%の電力を引
き出すことができますが, その温度を越えた場合, DC/DC
Noise (ノイズ)
の全ての寿命期間における機能および仕様を保証するため,
入力伝導ノイズは, 各 DC/DC に対する電源ラインの伝導
出力電力を低くする必要があります.
性の周波数成分で示されます (詳細は EMC の項を参照し
なります. 移動体の環境のほとんどは同じ環境ファクター
2
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えますが, ファンは電力を必要とするため, DC/DC のアプ
これらの温度の値は, 自然空流に対してのみ有効です.
DC/DC が密閉せれたケースや箱詰めのプリント板の上で リケーション全体の効率に影響します.
大抵の場合, 次にワッテージの高いシリーズを採用し,
使用された場合, 空気の流れがブロックされるため, DC/DC
ディレーティングにより電力に余裕をもたせて使用する方
の周辺では高い温度が生じます.
通常よりも 8◦ C 高い温度で同じ電力が必要とされる場 が効率がよくなります.
合, 次にワッテージの大きいシリーズをお選びください. ま
熱伝導シート無しでケースに
RT Hcase−heatsink =
たは, メタルケースの DC/DC であれば, ヒートシンクの使
ヒートシンクを実装
1∼2 ◦ C/W
用も可能です.
熱伝導シートを用いてケースに
RT Hcase−heatsink =
ヒートシンクを実装
熱伝導シートと絶縁シートを用いて
ケースにヒートシンクを実装
Calculation of Heatsinks (ヒートシンクの計算)
全てのメタルケースの DC/DC は, ヒートシンクを取り付け
ることができ, それにより内部の電力消費 Pd によって生じ
た熱を放熱させることができます. ヒートシンクを含む全体
の熱系を概略的に記述するものは, 熱抵抗 RT Hcase−ambient
です. これによって電力ディレーティングの規定を満たす
さらに高い周囲温度 Tambient まで最大の出力電力を引き
出すことができます.
電力消費 Pd :
Pout
Pd = Pin − Pout = Efficiency
− Pout
Tcase −Tambient
RT Hcase−ambient =
Pd
0.5∼1 ◦ C/W
RT Hcase−heatsink =
1∼1.5 ◦ C/W
絶縁
RECOM の大部分の DC/DC では, 主な特徴の一つとして, 高
いガルバニック絶縁能力があります. これは, 単一の DC/DC
を用いて, 回路トポロジーにおけるいくつかの変形を可能
にします.
基本的な入出力間の絶縁は, 絶縁された出力電力源を提
供したり, 異なる電圧線あるいは正と負の二つの電圧線を
生成するために利用できます (図 1 を参照).
これらの構成は, 計装, データ処理, または, ノイズに繊細
な回路でよくみられます. それらでは, ローカルの電源線
に生じる負荷やノイズをシステムの主電源線から絶縁する
ことが必要になります. ローカル電源のノイズは, 大抵は,
DC/DC のコモンモードノイズとして現れ, システム側の主
電源線に悪影響を与えることはありません.
負の電源線が必要であるならば, 絶縁した正出力をグラ
ウンド線に接続することで実現できます. 出力が入力と絶
縁されているため, 出力側の基準電圧は任意に選択するこ
とができます. 例えば, 追加の単一線を主電源線上に生成し
たり, あるいは, 他の DC 値によるオフセットとして生成も
できます (図 2 を参照).
基準電圧レベルを混在することにおいては, 出力調整型
の DC/DC (regulated DC/DC) は, 非出力調整型の DC/DC
(unregulated DC/DC) より注意が必要です. 基本的には, 単
一の電源供給線は, +VO 側にレギュレータをもち, 全ての
電流のリターンが, DC/DC を通り, ダイオードや抵抗など
の外部部品を介すことがなければ, 絶縁グラウンドを基準電
圧にすることで正常に動作します. リターンパスを DC/DC
以外に与えた場合, DC/DC の調整に影響を与え, そのシステ
ムの性能は DC/DC の性能に合致しない可能性があります.
(例)
RP30-2405SEW では, ヒートシンク無しの場合, 65◦ C でディ
レーティングが始まりますが, 必要な動作が 75◦ C, 30W で
あるとき, ヒートシンクの容量を計算する必要があります.
Pout = 30W
Efficiency = 88% max.
Pout
W
− Pout = 30
Pd = Efficiency
88 % − 30 W = 4.1 W
Tcase = 100 ◦ C (許容最高表面温度)
Tambient = 75 ◦ C
◦
C−75 ◦ C
ambient
= 100 4.1
RT Hcase−ambient = Tcase −T
Pd
W
= 6.1 ◦ C/W
上記より, ケースと周囲との間の熱抵抗は最大 6.1◦ C/W で
あることを保証する必要があります.
ケースにヒートシンクを取り付けたとき, ケースとヒー
トシンク間の熱抵抗 RT Hcase−heatsink があり, 熱伝導シート
を使用すれば, これを小さくすることができますが, 完全に
無くすことはできません.
ヒートシンクを DC/DC の (電気的に浮いた) ケースに絶
縁せずに直接取り付けた場合, その熱抵抗は少なくとも以
下の値をとります.
RT Hheatsink−ambient = RT Hcase−ambient − RT Hcase−heatsink
= 6.1 ◦ C/W − 1 ◦ C/W = 5.1 ◦ C/W
この値をもとに, ヒートシンクの選択をします.
自然放熱タイプのヒートシンクが, この値を満たさない
場合, あるいは, ヒートシンクのサイズが大きく, 不都合な
場合は, ファン付きのヒートシンクの使用も選択肢となり
Isolation Voltage vs Rated Working Voltage
(絶縁電圧と定格使用電圧の関係)
データシートに記載した絶縁電圧は, 1 秒間の瞬間的な試
験に限られています. より長い時間または永久時間での絶
縁が必要な場合は, 定格使用電圧をその基準とします. 定格
3
DC-DC Converter Applications
V IN
DC
DC
GND
VCC
VO
+V O
DC
0V
0V
DC
a) Single Output (N/O, L, M, I etc.)
-V O
GND
a) Non-Isolated Dual Rails
V IN
DC
DC
GND
VCC
+V O
0V
-V O
+V O
DC
0V
DC
b) Dual Output A/B, C/D, G/H/J/K
-V O
GND
VO
0V
VO
0V
DC
V IN
DC
GND
1
1
2
2
b) Non-Isolated Negative Rail
VCC
c) Twin Isolated Output (U/T)
DC
図 1: 標準的な絶縁構成
c) Dual Isolated Outputs (U/T)
1500
230
3000
1100
6000
3050
図 2: 代替の電源供給構成
12
絶 縁 試 験 電 圧 (kV)
130
0V
GND
表 A: 標準的な故障電圧の見積り
絶縁試験電圧 (Vrms ) 定格使用電圧 (Vrms )
1000
+V O
(V O + V IN )
DC
使用電圧は, 表 A または図 A を用いて, 絶縁試験電圧から
10
8
6
4
2
0
得られます. 表 A および図 A は IEC950 からの要求を表し
0
1
ます. 自社の試験と経験に基づき, 異なる試験条件で想定し
2
3
4
5
6
定 格 使 用 電 圧 (kV)
た絶縁値の換算表を表 3 と表 4 に記載します.
図 A: 電気的強度試験としての IEC950 の試験電圧
直列による DC/DC コンバータの接続
出力のガルバニック絶縁は, 複数の DC/DC の直列接続を可
能にします. これは, 図 3 に示すように, ある DC/DC の正
表 3: DC 絶縁電圧と異なる試験条件
絶縁試験電圧 絶縁試験電圧 絶縁試験電圧
出力と別の DC/DC の負出力を接続することで簡単に実現
(1 秒)
(1 分)
(1 分)
できます. この方法では標準外の電源線を生成できますが,
500 VDC
400 VDC
250 VAC
出力電圧が最も高くなる DC/DC が出力電流の制限を越え
1000 VDC
800 VDC
500 VAC
ないように注意してください.
1500 VDC
1200 VDC
750 VAC
2000 VDC
1600 VDC
1000 VAC
2500 VDC
2000 VDC
1250 VAC
3000 VDC
2400 VDC
1500 VAC
4000 VDC
3200 VDC
2000 VAC
5000 VDC
4000 VDC
2500 VAC
6000 VDC
4800 VDC
3000 VAC
DC/DC を直列で接続する場合, 互いの DC/DC のスイッ
チング回路は同期しないため, フィルターを追加すること
を強く推奨します. リップル電圧の重なりと同様, 出力に比
較的大きなビート周波数が生じます. シリーズインダクタ
と同様に, 出力側へのコンデンサの追加が効果的です (フィ
ルタリングの項を参照).
4
7
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表 4: AC 絶縁電圧と異なる試験条件
絶縁試験電圧 絶縁試験電圧 絶縁試験電圧
(1 秒)
(1 分)
(1 分)
500 VAC
350 VAC
565 VDC
1000 VAC
700 VAC
1130 VDC
1500 VAC
1050 VAC
1695 VDC
2000 VAC
1400 VAC
2260 VDC
2500 VAC
1750 VAC
2825 VDC
3000 VAC
2100 VAC
3390 VDC
4000 VAC
2800 VAC
4520 VDC
5000 VAC
3500 VAC
5650 VDC
6000 VAC
4200 VAC
6780 VDC
VCC
DC
DC
DC
図 4: ダイオードで出力結合した DC/DC の並列接続
VCC
L IN
C IN
DC
DC
DC
0V
GND
VCC
DC
+V O
DC
DC
DC
+V O
L OUT
C OUT
+V O
0V
+V O
L IN
2V O
DC
DC
L OUT
0V
GND
0V
図 5: 十分にフィルタリングされた DC/DC の並列接続
GND
(図 4 を参照). 5V や 9V の出力電圧では, ダイオードによる
電圧降下の影響が大きく, DC/DC の並列接続のための適切
な手段とみなせません. また, この方法では, 2 つの DC/DC
のリップルの上に重なったビート周波数が生じます. これ
は, 並列化した出力に外部コンデンサを使うことで減少で
きます.
DC/DC を並列で接続する良い方法として, 図 5 に示すよ
うに, 出力にインダクタを挟みます. この構成は, ダイオー
ドによる方法よりも電圧の損失が少ないだけでなく, イン
ダクタとキャパシタを適切に選択すれば, ビート周波数を
大きく減らすことができます. 同じように, 各 DC/DC から
のリップルも減らすことができます.
図 3: DC/DC の直列接続
並列による DC/DC コンバータの接続
一つの DC/DC から得られる出力電力が, あるアプリケー
ションにおいて十分でないとき, 複数の DC/DC を並列化す
ることで, より高い出力電力を生成できます. 並列化する
際に注意すべき点として, DC/DC は常に同じタイプのもの
を並列に用いる必要があります. 例えば, 2.5W の DC/DC
が必要であるとき, 2 つの C/D シリーズ, あるいは, 3 つの
A/B シリーズを使用するようにし, 1 つの C/D シリーズと 1
つの A/B シリーズを混在させないようにします. この理由
は, C/D が A/B の 2 倍の電力供給を保証するように出力電
圧が十分に調整されず, C/D からは 1W のみの電力, A/B か
らは 1.5W の電力が引き出される状況も起こりえます. 同
じタイプの DC/DC を並列化した場合でさえ, 負荷は均一
になりません. しかしながら, 出力電圧が十分に調和された
とき, 出力負荷は, 10%の差に収まります.
DC/DC の出力を接続するとき, スイッチングが同期しな
いため, 何らかのカップリングの形態が必要となります. 一
つの手段として, ダイオードを挿入する方法があります. こ
れは, 主に, 12V や 15V のような高い出力のみに適してい
ます. この場合, ダイオードの電圧降下 (およそ, 0.6V) が,
回路の機能に影響を与える可能性がほとんどないからです
並列の DC/DC コンバータ用の推奨値
Cout に用いる静電容量の値は, 並列のチャネル毎におよそ
1µF を用いてください (2 つの並列化した単一出力 DC/DC
に対しては, コモンの正出力と 0V の間に 2µF が必要とい
うことになります).
並列化した DC/DC の入力回路側にも同じことがいえま
す. インダクタンスと入力静電容量について同じ程度の値
が用いられます.
一般的には, DC/DC を並列化する必要性があるときのみ
以外は, より高い電力をもつ DC/DC を単独で使用する方が
常に望ましいといえます. DC/DC 間の不釣合いを許容する
5
DC-DC Converter Applications
L IN
C IN
GND
出力のフィルタリングの計算
L OUT
V IN
DC
CO
CO
DC
L OUT
+Vo
フィルターの定数の計算では, 以下の式を用います.
0V
fc =
-Vo
1
√
2π LOU T CO
この周波数は, DC/DC のスイッチング周波数よりも十分に
図 6: 入力と出力のフィルタリング
低くする必要があります.
ための最大電力定格の補正ファクターが必ずあり, 出力電
例 — RC シリーズ:
圧が 1%から 2%の範囲内で釣り合うように全負荷テスト
動作周波数 = 85 kHz max.
による選択を推奨します. 一般的には, DC/DC 毎に電力の
fc = 85 kHz の 10% = 8.5 kHz
マージンを与えるため, 0.9 の因子を用いてください. (例:
fc =
並列化した 2 つの C/D シリーズの DC/DC は, 最大の 4W
√ 1
2π LOU T CO
fc = 8.5 kHz = 2π√L 1 C
OU T O
ここで, LOU T = 470 µH
の電力レベルまで使用するのではなく, 3.6W に抑えます).
全体的な性能において, 最大 3 つまでの DC/DC の並列化
1
(2πfc )2 LOU T
=
1
(2π8.5 kHz)2 470 µH
= 745 nF
であれば, 高い信頼を保つことができます. 回路が 3 つの
CO =
DC/DC の並列化よりも大きな電力を必要とする場合, 要求
を満たせる高い電力定格の DC/DC を単独で使用してくだ
さい.
出力調整型の DC/DC (regulated DC/DC) は並列でご使用
にならないでください. これは, (内部のリニアレギュレー
タの許容差の範囲で) 均一な負荷を保証するため, 出力電
圧を高精度に調節する必要があるからです. 出力調整型の
DC/DC の並列化は, そのうちの一つを過負荷にさせる危険
性があります. より高い電力の出力調整型が必要な場合は,
非出力調整型の DC/DC (unregulated DC/DC) を並列化して,
外部にリニアレギュレータを追加する方法があります.
しかしながら, ユーザーの応用回路と負荷条件により, 計算
されるフィルターの定数は変わってきます. 従って, 最終的
な応用回路での評価ならびに部品の定数の再調整が必要と
なります.
フィルター用コンデンサの容量値を決める際は, 最大容量
負荷が DC/DC の仕様範囲内であることにご注意ください.
突入電流の制限
入力側にインダクタを直列で接続すると, 電源オン時にみ
られる突入電流を制限します (図 7 参照). もし, そのよう
なインダクタを使用しない回路を考えたとき, 入力電流は,
以下の式で表されます.
フィルタリング
RECOM の全ての絶縁型 DC/DC は, 固定の固有周波数をも
ち, その周波数でデバイスが動作します. この固定周波数
は, パルススキッピング方式と比較して, フィルタリングが
容易になります. パルススキッピング方式の DC/DC では,
負荷の状況に応じてパルスの幅を調節するため, 広範囲な
周波数へのノイズ対策が面倒になる場合があります.
入力または出力のどちらかで, DC/DC からのリップルを
軽減しようとするとき, 考慮すべきいくつかの側面があり
ます. RECOM は, 入力と出力の両方に対し, LC ネットワー
クを用いたフィルタリングを推奨します.
一方, RC ネットワークが用いられると, 抵抗での電力損
失が非常に大きくなります. インダクタの自己共振周波数
は, DC/DC の固有周波数よりも十分に高くすることが重要
です (RECOM の DC/DC では, 100kHz が標準です). イン
ダクタの DC 電流定格も注意が必要です. 電源電流のおよ
そ 2 倍の電流定格をもつインダクタの使用を推奨します.
次に注意すべき点は, インダクタの DC 抵抗です. これは,
インダクタでの DC の電力損失と関係します.
i=
−t
V
exp (
)
R
RC
部品に電源が投入された瞬間 (即ち, t = 0), この式は, 以下
のようになります.
V
R
これにより, 5V の入力で, 50mΩ の配線抵抗があるならば,
突入電流が 100A に達することになります. この状況は,
DC/DC にとって問題となります. 入力側のインダクタは,
内部のスイッチング回路からのノイズをフィルタリングす
るだけなく, 電源投入時の突入電流を制限します.
i=
出力側コンデンサの最大容量
出力側のリップルを軽減する簡単な方法は, 外部に大きな
コンデンサを加えることです. これは, LC フィルターほど
の効果は期待できませんが, 低コストな対策となります. し
かしながら, 出力側コンデンサの容量があまりにも大きい
場合, 電源オン時の問題を引き起こす可能性があります.
6
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i=
絶縁容量と漏洩電流
V
R
DC/DC の絶縁部分は, 静電容量をもちます. そして, それ
が入力側回路と出力側回路の結合の一部をなします. 仮に,
これが, その回路の主要な結合源であれば, 入力側回路と
出力側回路の間の漏洩電流の推定値を算出することができ
ます.
絶縁容量 (Cis : DC/DC データシートに記載されていま
す) とノイズまたはテスト信号の周波数が分かれば, 入出力
回路間の漏洩電流の推測値は, インピーダンスから計算さ
れます. 周波数 f が与えられたとき, 一般的な絶縁のイン
ピーダンスの式は, 以下で与えられます.
-t
))
電 圧 : V IN (1 - exp (
RC
V IN
電流 : i =
V
-t
exp (
)
R
RC
時間
Zf =
図 7: 電源オン時の入力電流および電圧の関係
1
j2πCis
R05B05 / RB0505D では, 絶縁容量は 18pF です. テスト信
号の周波数を 50Hz とした場合, 絶縁インピーダンスは,
出力側に大容量のコンデンサが付加されていると, 電源
オン時にはコンデンサに電荷がチャージされてなく, 瞬間
Z50 =
的に DC/DC は出力側から大電流を強いられます. この突
1
= 177 MΩ
j2π × 50 × 18
入電流は, DC/DC の供給能力を越えるほど大きくなる場合
となります. 1kVrms の試験電圧を使用したならば, 漏洩電
もあり, その結果, DC/DC は予期せぬ動作モードに陥る可
流は,
能性があります. 最悪なケースとしては, DC/DC が, 非常に
iL =
大きなリップルを出しながら, 通常よりも低い電圧を出力
Vtest
1000 V
=
= 5.65 µA
Zf
177 MΩ
となります. この単純な数式より, 試験電圧やノイズレベル
することがあります. DC/DC は, このような状況から回復
が大きいほど, 漏洩電流が多くなることが分かります. ま
する場合もありますが, その影響を受けた外部のユーザー
た同様に, 絶縁容量が小さいほど, 漏洩電流が少なくなりま
回路が, その後も正常に機能しないことがあります.
す. 従って, 漏洩電流の少ない, ノイズイミュニティに優れ
RECOM は, チャネル毎の出力に対し, 安全な動作のため
の最大容量として, 10µF の値を推奨します. 出力側にイン
ダクタを付加する場合において, 特にリップルを極小に抑
える必要性があれば, コンデンサの容量を 47µF まで増や
すことができます.
た設計をするには, 絶縁容量の小さい高絶縁の DC/DC を
選択します.
過負荷保護
フィルターの使用は, 通常の動作条件において, 電源オン時
整定時間
の過度な電流を防止しますが, 過剰な負荷が出力回路にか
DC/DC 内部にインダクタをもたない理由は, 多くのアプリ
ケーションが, 電源の速い立上りを要求しているからです
(一般的に, コイルはサイズが大きく, 小型化した DC/DC 内
の実装制約の面もあります). 電源の電圧が, 高速なランプ
波形で与えられたとき, DC/DC の出力は, 入力が所望の電
圧に達してから 500µs 以内に応答することができます (こ
れは, 外部フィルター無しの R/B や C/D シリーズにて, 最
大負荷のもとで計測した値です). 外部フィルターや入力側
または出力側のコンデンサは, この立上り時間を遅くしま
す. 従って, 回路に影響する支配的な要素が, 速い整定時間
なのか, あるいは, ノイズに対する性能であるかの判断は,
設計者に委ねられます.
かった状態や短絡回路に対しての保護機能は一切ありませ
ん. このような状態が発生したとき, DC/DC は, 出力回路に
電源供給を試みようとするため, 多大な入力電流を費やし
ます. 過負荷状態が続いた場合, DC/DC は, オーバーヒート
を起こし破壊に至ります (非出力調整型では, 短絡回路によ
る過負荷は 1 秒間のみ保証されます).
DC/DC を破壊するような出力側の過負荷を防ぐ手段が
いくつかあります. 最も単純な方法は, ヒューズを入力回
路側に入れることです (図 8 を参照). このとき, 電源オン
時の突入電流でヒューズが断線しないように十分な電流定
格をもつヒューズを選択してください. 類似の方法として,
サーキット ブレーカーも同じように適用できます.
入力電流や出力電圧を検出するといったインテリジェン
ト機能を回路にもたせる方法もあります (図 9 を参照). 入
力回路側での過負荷保護として, 最も簡単な方法は, 内部に
7
DC-DC Converter Applications
V IN
Vcc
DC
Fuse
Regulator
DC
DC
GND
DC
図 8: 簡単な過負荷保護
GND
a) サーマルシャットダウン付リニアレギュレータ
サーマルシャットダウン機能をもつリニアレギュレータを
Vcc
介して, DC/DC に電源を供給することです. しかしながら,
RIN
DC
この方法は, レギュレータで電力の損失が生じますので, 全
体の電力効率に影響を与えます.
VOL
入力側にパワーマネジメント機能を備えるならば, 入力
DC
ラインに (インダクタの代わりに) 抵抗を挟み, その抵抗間
GND
の電圧降下の検出信号をパワーマネジメント回路に送る方
b) 入力電流監視用の抵抗
法があります. 同様な手段が出力回路側にも適用できます.
Vcc
ここでは出力電圧を測ります. このとき, パワーマネジメン
I LIMIT
DC
ト機能が入力側にあるならば, システムの絶縁を確保する
ため, 検出信号はパワーマネジメント回路から絶縁する必
R1
DC
要があります(図 10 の a を参照).
出力回路側で出力ラインに抵抗を挟み, その抵抗の電力
R2
RGND
消費による熱の発散を利用すれば, 過負荷の検出およびシ
ステムの絶縁確保ができます. サーミスタや他の熱検出セ
GND
ンサーをその抵抗の近くに配置して, 過負荷の状態を検出
RGND ×ILIMIT =0.7 [V] となるように電流 ILIMIT
および抵抗 RGND を調整してください.
します (必要な絶縁距離は保つ必要があります). この方法
を用いる場合, 個々の動作環境に応じて適切なオフセット
c) グラウンド電流の監視
を与えるため, システム内の温度を安定して測れる箇所に
図 9: 入力回路側の監視による過負荷保護
温度センサーを実装するなどして, システムの温度も知る
必要があります.
入力電圧のドロップアウト
過負荷を検出して電流を制限する手段はいくつかありま
すが, それらの適切さの判断は設計者に任されます. 重要な
入力電圧が下がるとき, あるいは, 瞬間的にゼロになるとき,
ことは, その情報をどのように使用するかです. システム
出力回路は同じような電圧ドロップの影響を受けます. 他
が, 過負荷を起こしている箇所やモジュールをコントロー
の回路が瞬間的に電流を消費したとき, あるいは, デバイス
ラに伝える必要があるならば, なんらかのインテリジェン
がオンラインで組み込まれたときや電源線から外されたと
スが要求されます.
きなどに生じる短時間の入力電圧ドロップに対しては, 入
もし, デバイスが単純に電源オフを必要とするならば,
力段にダイオードとコンデンサを配置することにより出力
ヒューズを実装するだけで十分な対策になります. RECOM
回路への影響を防ぐことができます.
の全ての DC/DC は, 内部にリニアレギュレータを含み, 過
その回路では, ダイオードを大容量コンデンサ (およそ
負荷によりサーマルシャットダウンの状態になります. こ
47µF) の前段の入力ラインに配置します. これにより, DC/DC
に短時間での電流供給が可能となり, コンデンサから電流
態がパワーマネジメント機能への情報として使われるべき が電力線を通じて他の回路に流れるのをダイオードがブ
ならば, 最もよい手段は, 出力電圧の検出です (図 10 の a). ロックします. また, インダクタと組合せれば, 非常に性能
これは, シャットダウン時に出力電圧がゼロに近づくから のよいフィルタリングが実現できます. このとき, 通常の電
です. あるいは, DC/DC のケースにサーマルプローブを置 力供給状態でのダイオードの電圧降下分を考慮した設計が
いて, シャットダウン状態を検出することも可能です.
必要です. 低電圧ドロップのショットキーダイオードの使
用を推奨します (図 11 を参照).
れにより, 過剰な過負荷からデバイスを保護します. この状
8
DC-DC Converter Applications
R10%
VCC
DC
+V O
DC
DC
DC
R10%
0V
GND
R2
RO
RD
Opto-Isolator
DC
VOL
DC
図 12: 無負荷による高電圧防止回路
a) 光絶縁による過負荷検出
( 過負荷時は +VO の電圧が低くなり, LED がオフすると,
う点で効率的ではありません. この場合, ユーザー回路に割
VOL のラインはプルアップ抵抗により HIGH になります. )
り当てられる電力は, 残りの 90%となります.
ツェナーダイオードを出力側に用いることも簡単な方法
の一つです. ツェナーダイオードで降伏現象が生じたとき
VCC
VOL
の大きなサージ電流がシステム側にノイズを誘発させる場
NTC Thermistor
ことを推奨します.
DC
合があるため, 抵抗かインダクタを出力ラインに挿入する
長距離の電力ライン
VO
RD
電源がケーブルを介して供給されるとき, なぜ, DC/DC を
使用することが良質な設計事例となるのか, いくつか理由
0V
DC
があります. ケーブルの EMC は, プリント基板の配線に例
GND
えられます. 片端で DC/DC によりケーブルを絶縁するこ
とで, ケーブルが拾ったノイズはコモンモードノイズとし
b) 温度センサによる過負荷検出
て現れ, DC/DC においてキャンセリングされます.
図 10: 出力回路側の監視による過負荷保護
もう一つの理由は, 高い電圧に変換して, ケーブル上を少
ない電流で伝送し, 終端の回路で元の電圧レベルに戻すこ
とで, ケーブルによる損失の問題を軽減できることです. こ
L IN
ZDX60
DC
47uF
DC
れにより, ノイズや EMC の感受性を下げることもできま
Output
Circuit
す. つまり, 高い電圧で送ると, 電源線に影響を与えること
のできるノイズの電圧レベルも上がるからです.
例えば, 5V の電源をもち, 接続先の回路が 5V で 500mW
図 11: 入力電圧ドロップの防止回路
を要求しているシステムを考えます. そして, 接続する
ケーブルは 100Ω の抵抗をもっているとします. ここで,
R05N05/RN0505 を使って, ケーブルのインターフェース
部で変換したとき, 100mA の電流で送れば, ケーブルにお
非出力調整型の DC/DC (unregulated DC/DC) は, 最小でも
いて 1W (I 2 R) の電力を損失することになります. この電
10%の負荷のもとで動作することを期待しています. それ
力は, R0/RN の全供給電力に相当し, 終端回路で利用可能
ゆえ, この負荷レベルを下回ると, 出力電圧が不定となりま
な電力は余っていないことになります. 従って, この場合
す. ある回路においては, これが何らかの問題を引き起こす
では, R0/RN の使用は適切ではありません. 24V の生成に
可能性もあります.
R05B12/RB0512D, 5V の再生成に R24A05/R2405D を用い
出力電圧が確実に仕様範囲内であることを保証させる最
れば, ケーブル上では 21mA の電流を供給すればよく, ケー
も簡単な方法は, 常に 10%以上の負荷を DC/DC に与える
ブルでの損失も 44mW になります.
ように, 外部に抵抗を加えることです (図 12 を参照). これ
は, 常に電力の 10%が抵抗負荷により消費されているとい
無負荷による高電圧防止
9
DC-DC Converter Applications
R05B12
V IN
GND
R24O05D
Cable
DC
DC
DC
DC
3.3Vcc
Target
Circuit
3
1
図 13: 長距離の電力伝送
DC
DC
DC
8
+5V
7
0V
GND
GND
R05024 & R0-0524S
DC
RL0305
R03L05
液晶デ ィスプレイ
-24V
1uF
(LCD)
( 42mA ま で )
3.3V
図 14: LCD ディスプレイのバイアス
LCD ディスプレイバイアス
200nF
3.3V Logic
LCD ディスプレイは, 大抵, クリスタルをバイアスする
ために, 正か負の 24V 電源を必要とします. R05024/R00524S (カスタム品) は, このアプリケーションに特別に設
計されました. 絶縁された 0V 出力をもつことで, これを
GND に接続すれば+24V 給電となり, +VO 出力を GND に
接続すれば, −24V 給電が構成されます (図 14 を参照).
+V
1
2
-V
28
3
26
4
14
27
100nF
200nF
TX1 25
5 TX1
RX1 24
6 RX1
RS232
17
LT1330
GND
図 16: 3V ロジックをもつ RS232 インターフェース
EIA-232 Interface
3V/5V ロジック回路が混在した電源供給
主要な PC では, RS232 インターフェースに電源供給する
ノート PC や PDA 用の標準電源レベルに対応した新しい
IC やロジック機能に対しては, 十分な注意を払う必要があ
リー駆動の PC や RS232 インターフェースをもったリモー ります. 3.3V 供給もまた, パーソナル通信のデファクトス
ト機器などは, RS232 インターフェースに電源供給するた タンダードとして急激に受け入れられました. しかしなが
めの電源線をもたない場合もあります. RB0512S/R05B12 ら, 現在のところ, 3.3V 電源の IC のみを利用して, 全ての
を使用すれば, 完全な EIA-232 互換のインターフェースを 回路機能を実現できるわけではありません. それゆえ, シス
シングルチップで実現できます. このデバイスは, 5V 電源 テム設計者は, これまで 2 つの選択肢をもちました. 標準
を入力とし, DC/DC と 2 つの部品で構成されます (図 15 を 的な 5V ロジックを用いるか, 必要な部品が 3.3V 版で入手
可能になるまで待つかです. どちらも満足するものではな
参照).
いですが, 後者の方は, その間に市場のシェアを失う恐れが
あります.
現在では, 電圧が異なる別々の電源で動作する混在ロジッ
ク回路という選択もあります. 3.3V 電源ラインを RECOM
+12V
の DC/DC で取り込み, 標準ロジックやインターフェース
EIA-232 Port
VCC
IC を動作させる様々な電圧レベルを出力することができ
5V
VDD
R05B12
&
RB-0512D
ます.
DCD
+VO
DSR
RECOM の DC/DC 製品は, ロジック回路向けに供給する
DC
RX
0V
単一出力 (L/M, N/O シリーズ) と同様に, アナログバイポー
RTS
-VO DC
TX
ラや増幅回路に供給するデュアル出力 (A/B シリーズ) のも
CTS
GND
のを揃えています. 典型的な例として, 3.3V 信号インター
DTR
フェースのチップを用いたラップトップ PC での RS232 イ
RI
ンターフェースがあります. そのチップは, 3.3V 電圧の信
SN75C185
号を受け, 5V の電源電圧を必要とするものです (図 16 を
参照). RECOM は, これと関連して, 2 つの 5V-to-3.3V の
図 15: 最適化した RS232 インターフェース
DB9S Connector
ためのいくつかの電源線が利用できます. しかし, バッテ
10
DC-DC Converter Applications
5V
5V Logic
Circuit
RH0505 & R05H05
DC
5V
4K7 Opto Isolators
Data
CS
DC
れが多くの EMC の電源問題に対する簡潔で的確なソリュー
Status
+5V
CLK
問題がある状況においての使用に適しています. これは, 安
Vcc
定した固定スイッチング周波数は, 出力波形の解析やフィ
1K2
CS
1K2
ションとなります. 固定周波数タイプの DC/DC は, EMC の
+5V
4K7
4K7
と共に, ローカルの電源を絶縁するために使用されれば, そ
1K2
+5V
5V
図 17 で図示したように, DC/DC が, 適切なフィルター回路
1uF
Data
1K2
EMC に関する注意点
+5V
47uH
ZN509
Status
CLK
ルタリングが容易になるからです.
Vref
次頁からの記載は, 電源回路において, 共通にみられる
470nF
AIN
EMC 関連のトラブルを避けるための提案です.
GND
4K7
1K2
SFH610
図 17: 絶縁したシリアル ADC システム
ステップダウン DC/DC (R05L03/RL-0503 と R05O03/R0-
0503) を設計しました. これらは, 5V ベースの既存システ
ムに 3.3V 電源の IC を組み込むことができるように作られ
ました. これにより, 設計者が電源を再設計する必要がなく
なります.
上記は, システムの全体的な電力消費を低減したいが,
3.3V 電源で全ての回路を構成できない場合に特に重要に
なります.
この範囲のデバイスをどのように適用するかはシステム
設計者によります. 設計者は, 電源ラインから利用できる
電圧よりも高い電圧を必要とする回路や, ローカル化した
機能を提供したいと考えます. 完全絶縁の電源を用いれば,
電源ラインから利用できる電圧よりも高い電圧を必要とす
る回路や, ローカル化した機能を提供できます. また, 特に,
インターフェース機能や, アナログとディジタルのグラウ
ンドを分離させたいシステムにおいては, 完全絶縁の電源
の使用は有効です.
絶縁型のデータ収集システム
絶縁が要求されるあらゆる稼働システムは, 絶縁回路に電
源を供給するための DC/DC が必要となります. データ収
集システムでは, 電源ラインでの低ノイズ化が求められ, そ
れゆえ, よいフィルターが必要です.
図 17 に示した回路は, G/H/J/K シリーズの DC/DC を用
いることで, 非常に高い絶縁を備えています. この回路は,
電源の絶縁と光絶縁デバイス (SFH610) による信号線の絶
縁を行なっています. 全体システムは, 2.5kV の絶縁を確保
します.
11
DC-DC Converter Applications
VCC
ロ ー カ ル
低速回 路
PSU
回 路 1
電源
入力
回 路 2
電源ユニ ッ ト
高速回 路
中速回 路
(PSU)
DC 回 路
フ ィルタ ー
GND
図 20: 電源ユニットに近い高速回路の配置
VCC
VCC
PSU
回 路 1
回 路 2
DC
DC
回 路1
DC
DC
回 路2
GND
図 18: 電源ラインのループの削除
GND
図 21: 個々のシステムの絶縁
VCC
絶縁型 DC/DC コンバータは, 電源ラインおよびグラウン
ドをシステムの電源から絶縁するため, イミュニティの向
上や伝導性エミッションの低減において, 大きな効果を発
揮します. RECOM が提供する DC/DC は, トロイダル式の
回 路 1
回 路 2
電源トランスを用い, EMI 放射を軽減します (RECOM の
EMC ガイドライン データブックに記載したようなプリン
ト基板の推奨レイアウトの提案も採り入れます).
絶縁型 DC/DC は, スイッチングデバイスであり, 固有の
GND
スイッチング周波数をもっています. このような DC/DC に
は
, あるフィルタリングが必要な場合もあります. 一方, あ
図 19: ローカル回路毎の電源ラインのデカップリング
る商用の DC/DC には, パルススキッピング方式を採用した
ものもあります. この方式は, 異なる負荷の大きさに対し
電源に関する注意点
て, 平均的な効率を実現できますが, 一定の固有周波数をも
たないため, 広範囲なノイズスペクトルが生じてしまいま
• 電源ラインのループの削除 (図 18 を参照)
す. RECOM は, 固定の周波数をもつ DC/DC に注力してお
• ローカル回路毎の電源ラインのデカップリング (Q の り, 最大負荷と温度の特性カーブの全体に渡って安定して
います. それゆえ, 一つのインダクタを直列に実装するだけ
低い RCL フィルターを使用する. 図 19 を参照)
で, 簡単にスイッチングノイズをフィルタリングできます.
• 高速な回路・モジュールは, 電源ユニット (PSU) の近
くに配置し, 最も低速な回路・モジュールが最も遠く DC/DC コンバータの EMC データの見方
なるように配置する (電源プレーンのトランジェント 電気・電子製品の EMC (電磁両立性) は, 電気的ノイズの
ノイズを低減させる. 図 20 を参照).
汚染を測るものです. 全世界において, 製品の EMC を実証
するための法定や規制の要求が増加しています. 欧州では,
• 個々のシステムは, 電源および信号ラインの両方にお
EC 指令による 89/336/EEC は, 1996 年 1 月 1 日以降に販売
いて, なるべく絶縁させる. 特に, アナログ系とディ
される全ての製品が, EMC の制約に従うことを要求してい
ジタル系は分離させる必要がある (図 21 を参照).
ます. これを怠った場合は, EEC における製品の販売が禁
12
DC-DC Converter Applications
止され, 販売者は罰則さえも与えられる可能性があります.
50 Ω
DC/DC コンバータは, 単体の部品であることから, 一般
的に EMC 規制の対象外となっています. しかしながら,
DC/DC の EMC に関する情報を提供することにより, 設計
者の方が製品に関連する EMC の要件を満たすことに貢献
できると RECOM は考えています. しかし, 主電源につな
がっている部品の中で, DC/DC だけが主要なノイズ源と
なっているわけではありません. ここに記載された情報は,
システムの最終的な EMC への影響を判断するための回路
設計者による解釈が必要です.
ここでの記載は, ノイズ測定の方式および理論的説明を
述べ, DC/DC が製品の EMC に及ぼす影響について, 設計
者に理解して頂くことを目的としています. CISPR や EN
の規格は, 部品のノイズスペクトルを測定するために用い
られてきました. しかしながら, それらの全ての規格は, 主
電源装置を参照事項とし, DC 電源デバイスの情報を必要
とします.
電源
終端
LISN
負荷
DC
DC
LISN
スペ クト ラ ム
アナ ラ イザ へ
図 22: DC/DC へのフィルタリングされた電源供給
基準電位となっているため, EMC の目的としては, 基準電
位をアースとすることは有効だといえます. その結果, 全て
の測定は, 主電源のアースをレファレンスとします.
ライン・インピーダンス安定化回路網 (LISN)
どのようなノイズ測定においても, 被試験装置 (DUT) から
のノイズが測定対象であり, 電源供給側からのノイズを混
伝導性および放射性エミッション
入させない手段が必要です. 主電源が接続された回路では,
EMC に関する EC 指令が適用するエミッションには, 放射
性と伝導性の二つのタイプがあります. 伝導性エミッショ
ンは, ケーブルからノイズが伝搬するもので, 周波数スペク
トラムの 150kHz–30MHz を測定対象にしています. 一方,
放射性エミッションは, 空気中を電磁波によってノイズが
伝搬するもので, 周波数スペクトラムの 30MHz–1GHz を測
定対象にしています. 従って, EC 指令は, 2 つの異なる伝搬
モードにおいて, 周波数スペクトラムの 150kHz–1GHz を
測定対象にしています.
RECOM の DC/DC コンバータは, 部品内部にトロイダル
式のトランスをもつことが特徴です. これらは, 放射ノイズ
をほとんど発生させないことが試験により確認されていま
す. その低放射ノイズは, 主に, コアの中に磁束を保つトロ
イダル式のトランスに基づいてます. それゆえ, 設計により
磁束は放射されません. 放射ノイズが非常に低レベルであ
るため, ここでは伝導性エミッションだけを記述すること
にします.
伝導エミッションは, 入力 DC 電源ラインで測定されま
す. しかしながら, ほとんどの規格が主電源に接続された機
器を測定対象にしているため, DC 電源用の規格は存在し
ません. これにより, DC 電源デバイスには 2 つの問題があ
ります. 一つは, DC 電源デバイスは, 主電源に直接接続さ
れていないため, 規格に記載される限度値を直接用いるこ
とができません. そして, 全ての参照データは, 基準電位と
して, アースされたグラウンドプレーンを用います. DC シ
ステムでは, 0V が基準電位です. しかしながら, 一般的に
は, 機器のシールドやケースは, アースと接続され, これが
これは重要であり, 主電源が DUT に供給される前にフィル
タリングする必要があります. 同じアプローチを, DC/DC
の試験にも用いています. 測定器に検出されるノイズが無
いように, DC/DC への DC 電源をフィルタリングします.
CISPR16 の仕様に適合したライン・インピーダンス安定
化回路網 (LISN) が正と負の両方の電源線に接続され, 主電
源のアースをレファレンスとします (図 22 を参照). LISN
は疑似電源回路網とも呼ばれます. 測定では, 測定チャネル
とのインピーダンス整合をとるために 50Ω で終端をした
負の電源線を観測基準点とし, 正の電源線から全ての観測
を行ないます.
シールディング
DUT, LISN, 測定器に接続された全てのケーブル, 負荷, 電
源ラインは, 常にシールドされます. シールドすることによ
り, DUT の近傍にある他の機器など, 外部の EMC 源からの
ノイズがケーブルや DUT に入り込むことを防ぎます. シー
ルドは, 主電源のアースをレファレンスとします (図 22 を
参照).
DC/DC コンバータの周波数成分
すべての DC/DC コンバータは, スイッチングデバイスで
あるため, ある周波数成分をもちます. 固定入力の DC/DC
は, 一定のスイッチング周波数をもち, 例えば, C/D シリー
ズの DC/DC は, 標準で 75kHz のスイッチング周波数をも
ちます. これは, 負荷の条件に関係なく, 安定した予測可能
13
なノイズ周波数成分を与えます.
伝導性エ ミ ッ シ ョ ン
(dB µV)
DC-DC Converter Applications
グ周波数にもばらつきがあります. 90kHz のスイッチング
2
100
周波数の場合, 上記の周波数成分の数に 33 個の周波数成分
4
1
80
6
3
60
5
8
10
が追加されることになります. また, 入力電圧の大きさも,
12
スイッチング周波数を変化させます (図 24 を参照). このよ
7
9
11
うなことから, 伝導性ノイズのレベルを概略的に示すため,
13
40
RECOM は, 周波数成分を調べるための 100kHz の分解能
帯域幅 (RBW) をデータシート上で用いています. この広い
RBW は, 全てのピークレベルにおける最大レベルを示しま
す. これにより, 製品のばらつきや入力電圧の違いによるス
イッチング周波数のばらつきに対して, 都合良く補正がな
され, 解析も容易になります (図 25 を参照).
伝導性エミッションは, 全てのケースにおいて, 最大負荷
で測定します. 負荷が小さくなると, エミッションのレベル
も下がるため, 最大負荷が伝導性ラインノイズ試験のため
の最悪条件です.
20
0
0
100
200
300
400
500
周 波 数 (kHz)
図 23: ノイズの周波数成分
周 波 数 (kHz)
50
40
30
20
10
0
DC/DC の温度性能
0
2
4
6
8
10
12
14
このアプリケーションノートで記述された DC/DC コンバー
入 力 電 圧 (V)
タの温度性能は, 推奨動作温度範囲と比べて, 常に高くなっ
図 24: 周波数と入力電圧の関係
ています. 推奨動作温度範囲が狭くなる主な理由は, この温
度範囲を越えた部分では, パラメータによって性能を厳密
ノイズのスペクトラムを細かく調べると (図 23 を参照),
に決めることが難しくなるからです.
いくつかの際だったピークがあります. これらは, スイッチ
DC/DC コンバータで使用されるコアの素材のキュリー
ング周波数の基本波, その高調波 (奇数でマークした周波数
温度のように, 物理的な障害が性能に影響を与えている要
成分), および, 基本波の倍となる全波整流の周波数成分 (偶
素がいくつかあります (RECOM で使用している素材で最
数でマークした周波数成分) から生じたものです. RECOM
も低いキュリー温度は 125◦ C です). セラミックコンデン
が採用している部分共振型のコンバータは, 矩形波のスイッ サは, 高い信頼性と寿命の問題がないことから, DC/DC で
◦
チング波形をもち, スイッチングの遅いデバイスよりも, リッ よく使用されています. しかしながら, 温度が 85 C を越え
プルが小さく, 効率が高いといった利点があります. しかし
て上昇すると, セラミックコンデンサの容量が小さくなり
ながら, 比較的大きな高調波の周波数成分をもつという欠
ます. その結果, リップルが大きくなります. 能動素子のス
点もあります.
イッチング部品においての電力消費も考慮する必要があり
伝導性の干渉に対する EC の規制は, 150kHz–30MHz の
ます. これらの部品は, 高い温度定格をもっていますが, 温
周波数帯を対象とします. 100kHz のスイッチング周波数
度が 100◦ C を越えるにつれ, 電流容量の定格が下がります.
をもつ DC/DC を考えると, 299 個の周波数成分が現れるこ
仕様で決められた電力のディレーティングが遵守される
とになります. 製品のばらつきにより, 実際のスイッチン
ならば, 推奨動作温度を越えた条件で, DC/DC を使用する
ことが可能です. 記載された推奨動作温度を越えて動作を
伝導性エ ミ ッ シ ョ ン
(dBµV)
している部品については, 仕様書に記載された性能を満た
す期待はできません. あるデバイスの安定性を把握したい
とき, 温度が変化したときの動作周波数の変動を用いるこ
とができます (図 26 を参照). 温度による周波数の変動の標
準的な値は, 0.5 %/◦ C であり, これは他の商用部品と比較し
て非常に低い値です. つまり, 負荷と温度の動作範囲に対
100kHz
1MHz
10MHz
周 波 数
図 25: 電界強度で表示したノイズスペクトラム
100MHz
し, 周波数が非常に安定しているため, RECOM の DC/DC
コンバータは, フィルタリングが簡単であることを示して
います.
14
ス イ ッ チ ン グ 周 波 数 (kHz)
DC-DC Converter Applications
160
方法で使用できます (標準で直径 5mm のノズルです). 標準
O/N
の SOIC 部品に比べ, ハイブリッド部品は重いため, 吸着圧
140
最大負荷 の 条件下
120
100
A/B
は高めの設定が効果的といえます (標準的な 14pin の SOIC
C/D
部品の重さは 0.1g で, SS/SD シリーズの DC/DC の重さは
1.3g になります). 吸着ノズルに関して, 不明点があれば, 実
装機メーカにお問い合わせされることを推奨します.
手半田で部品を実装する場合は, 部品ピンではなく, 本体
部分をピンセットで摘んで実装してください. 部品ピンを
摘むと, ピンが曲がり, リード間段差が生じる可能性があり
ます.
80
60
-20
0
20
40
60
80
100
温 度 ( C)
図 26: 標準的なスイッチング周波数と温度の関係
部品の配置
トランスファーモールド型の表面実装 DC/DC
コンバータ
部品は, 光学認識でもピンセットによる手付けでも配置で
きます. ピンセットで配置する場合, ピンセットが部品ピン
生産ガイドライン
ではなく, 部品本体を摘んで配置するようにしてください.
RECOM が最近導入したトランスファーモールドの熱硬化
性エポキシによりハイブリッド型 DC/DC を封止する革新
的な新方式は, SOIC 形態での部品実装を対象とした表面実
装の DC/DC に改良をもたらしました.
新しい部品では, 実装技術における新しい指示がつきも
のです. 新しい SS/SD シリーズの DC/DC では, その指示自
体は新しいものではないですが, あるアプリケーションに
おいて, 異なる生産技術を必要とする場合があります.
部品自体は, 対称的な形状のため, どちらの方法でも簡単な
部品の素材
トランスファーモールドの製品シリーズの部品本体は, 高い
熱伝導性の熱硬化性エポキシです. 熱硬化性材料の利点は,
部品本体がポストキュアの加熱サイクル, すなわち, 高温の
リフロー条件において変形しないことです. その結果, リフ
ロー時の部品本体を保護するための対策は何も必要があり
ません. 熱可塑性樹脂を使った他メーカの部品は変形しや
すく, リフロー時に熱シールドが必要な場合もあります.
リードフレームは, 銅の材質のため, 導電性が高く, DC/DC
内の配線の内部抵抗を小さくしています. 配線に成膜 (イン
キ印刷) を使ったハイブリッド型の設計は, 高い抵抗分を含
むため, DC/DC 内で損失が高くなる傾向があります. リー
ドは, 60:40 (Pb:Sn) の半田メッキで仕上げています. これは
配置ができます.
ソルダーパッドの設計
SS/SD シリーズの DC/DC コンバータは, 1.27mm (0.05”)
のピンピッチをもち, パッドの形状は, 1mm のパッド幅と
1.75mm のパッド長を推奨としています. プリント基板の
CAD システムに用意されている適当な部品のパッドを用
いて, SS/SD シリーズ用のパッドのレイアウトを構成する
ことができます. SS/SD シリーズのパッドは, 一般的な標準
SOIC のパッドサイズ (0.64mm) よりも幅が広く, SS/SD シ
リーズの部品ピンは, CAD システムの既存のパッドと合わ
ない場合が考えられます. 注意すべき点は, DC/DC は電源
のデバイスであり, 接続箇所での抵抗分による損失を最小
にするため, 広いパッドと太い部品リードを必要とします.
各部品のパッドの形状は, 関連の章に含まれています. 適
切であれば, これらに従ってください.
SS/SD の利点の一つに, 2 種類の部品が使用できる PCB
のレイアウトがあります. 例えば, デュアル出力の SD シ
リーズの DC/DC は, そのパッドのレイアウトにおいて, プ
リント基板のパターン変更を必要とせず, 単一の正電圧出
力の SS シリーズと共用ができます.
標準的なリード仕上げであり, 生産現場で使用されるほと
リフロー温度プロファイル
んど全ての半田混合物と互換があります.
RECOM の SMD 部品は, 最高 230◦ C (10 秒) のリフロー温度
部品実装
に耐えれるように設計されています. これは, CECC 00802
SS/SD シリーズは, 標準の SOIC パッケージと同じように に準拠しています. 複数のリフロープロファイルが使用さ
実装機で扱えるように設計されています. 部品は, チュー れるとき, すなわち, 部品をリフローのオーブンに数回通す
ブ (スティック) またはリールにて入手可能です. 従って, とき, CECC 00802 で定められた最高温度よりも低いプロ
実装機は, 振動式シャトル, 重力落下式フィーダー, リール ファイルを用いることを推奨します. 最高温度のランプ形
フィーダーのどのタイプを使っても実装できます.
プロファイルが 5 回を越えて部品に適用された場合, 加熱
部品吸着ノズルは, 標準の 14pin や 18pin の SOIC と同じ の繰返しにより, 材質疲労が生じる可能性があります.
15
DC-DC Converter Applications
これらの DC/DC は, プリント基板上の大部分の IC や受
接着剤の塗布
動部品のリフローの能力を越えたものであり, リフロー条
部品は, 主に, ピントランスファー, 印刷, 塗布の 3 つの接
件にはほとんど熱的に影響を受けないといえます.
着剤の塗布方法に対応できます. 接着剤の塗布方法は, 生
推奨リフロー温度プロファイル
産ラインで利用可能な工程と接着剤の使用理由に依存しま
次ページの 2 つのグラフは, SMD タイプとリード挿入タイ
プについての標準的な推奨温度プロファイルです.
す. 例えば, リード挿入タイプと表面実装タイプの部品が基
板上で混在していれば, 接着剤は, リフロー処理の前に塗布
し, 硬化させる必要があります. 基板上の部品が表面実装タ
プロファイルのピーク温度およびその最大許容時間の厳
イプのみで, 熱硬化型の接着剤を使用するならば, リフロー
密な値は, 各 DC/DC のデータシートにも記載されています.
を硬化の工程に適用することもできます. 衝撃や振動に対
鉛フリー半田に対応した製品は, 現在開発中です. 鉛フ
リー対応に関しましては, 公式な発表があるまでは, カスタ
マーサービスにお問い合わせください (鉛フリー対応の製
する強化のために接着剤を必要とするが, 基板に保護コー
ティングをする場合, 接着剤の使用を避けることが可能で
す. コーティングは, 部品本体の機械的拘束が生じます.
品は, 2005 年 1 月から開始予定です).
接着剤の塗布や印刷のパターンは, 自動生産ラインでな
接着剤の必要条件
されます. 部品配置の後, 手動で塗布する場合は, 手動注入
表面実装部品 (SMD) がフロー工程をもつ場合 (例えば, DIP
器を使用して, 紫外線硬化用のパターンが簡単に繰り返さ
品と SMD がプリント基板上に混在してるケース), あるい
れます (熱硬化型の接着剤も同様です). 手作業で塗布する
は, プリント基板上の両面に実装される場合, リフローに入
場合, ドット (接着剤のボール) の高さや大きさは特に重要
る前に, それらの部品をプリント基板に固定するため, 接着
ではありません. そして, 部品がリフローで実装された後に
剤を使用する必要があります. 接着剤を使用することで, 表
接着剤を加えてください. リフロー後に塗布するとき, アン
面実装部品がフローの半田槽で流れ落ちたり, プリント基
ダーフィル用の接着剤の使用が好ましいです. このタイプ
板での両面の処理で降り落されることを防止します.
は, 部品本体に吸着し, 塗布した一つのドットで万能な粘着
先に述べたように, 表面実装タイプの RECOM の DC/DC
力を示します. 塗布のパターンは, 部品のスタンドオフに
コンバータは, 標準的な SOIC デバイスよりも大きい重量
よる段差を考慮し, プリント基板の配線の厚みは考慮しま
をもちます. これは, 形状の大きさと内部のハイブリッド式
せん. 基板で厚い配線が使用される場合, グラウンドと接
の部品構成によるものです. 従って, これらの部品が半田
続された銅配線を部品の下に敷きます (このとき, 絶縁を確
のみで基板に取り付けられるだけであれば, 半田の接合部
保するように硬化させます). 接着剤は, 部品配置の間, パッ
やリードに通常よりも大きな負荷がかかります. 部品本体
ドに近付いた部品ピンを妨害してはいけません. 従って, 低
とプリント基板の間に接着剤を添加して固定させれば, こ
粘度の接着剤を推奨します.
の負荷を軽減することができます. 最終的な製品システム
接着剤のドットは, 基板表面と部品の間を確実に接着で
が, 衝撃試験や振動試験に影響を受け易いものであるなら
きる高さであり, 塗布を広げすぎたり, 部品でずれたり, あ
ば, それらの環境試験に確実に合格するために, 接着剤を使
るいは, パッドを汚さないように, 注意して高さを決める必
用した取り付けは一層重要になります.
要があります.
SS/SD シリーズの DC/DC は, 接着剤を付けるための隙
間を部品下に確保しており, 部品取り付けに干渉しません.
部品そのものより, 接着剤の塗布と硬化の方法, および, 環
境試験や部品交換の必要性により, どのような接着剤が適
切かが決まります. しかしながら, 部品本体が熱硬化性プラ
スチックのため, 基板と部品を付ける接着剤の物質は, 熱硬
化性エポキシ接着剤を推奨します.
リフロー工程が, 熱硬化型の接着剤を硬化するために用
いられるならば, 実装処理の間, 部品は水平に大きな加速と
減速を受ける可能性があります. 部品の精密な配置を保つ
ため, 接着剤は, 硬化前の状態でも十分に固い性質であるこ
とが必要です.
ピントランスファー方式にみられるような, 小さい直径
のドットを多くして塗布したい場合, ドットのパターンは,
簡単なガイドラインに従って, 変化させることができます.
ドットの数が二倍になるにつれ, ドットの直径を半分にし
ます. そして, 互いの中心間は, 最小でもドットの直径の 2
倍を確保します. 一方, ドットの高さは, 0.4mm のままとし
ます. 印刷されるドットは, 部品本体の最も近いエッジから
そのドットのエッジまでの距離が, 最小でもその直径分を
必ず確保した位置に配置します. 接着剤と部品が十分に接
着できれば, ドットの数は重要ではありませんが, 2 個以上
16
のドットで塗布することを推奨します.
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推奨リフロー プロファイル (表面実装タイプ)
ピ ー ク温 度
220-230 C
10s max
200 C 以 上
20-40s
250
220
温 度 ( C)
183
200
昇温
60-90s
150
リ フ ロ ー
50-70s
予熱
60-90s
冷却
最 大 2 C/s
100
最 大 2 C/s
50
50
100
150
200
250
300
350
400
時 間 (s)
(注)
1. リフロープロファイルは, 部品ピンの温度で測定します.
2. 全リフロー工程において, 部品内部の温度は, 215◦ C よりも低く保つ必要があります.
推奨フロー プロファイル (リード挿入タイプ)
10s
最大 260 C
300
250
1次
ウ ェ ー ブ
2次
ウ ェ ー ブ
200 C/s
25 C/s
温 度 ( C)
200
150
強制
冷却
100
予熱
50
0
25
50
75
100
125
150
175
200
時 間 (s)
(注)
1. フロープロファイルは, リードの温度で測定します.
2. フロー工程において, 部品内部の温度は, 183◦ C よりも低く保つ必要があります.
17
225
250
DC-DC Converter Applications
洗浄
RECOM の表面実装タイプの DC/DC コンバータで使用さ
れる材料を包んだ熱硬化性プラスチックは, 完全気密での
封止ではありません. 樹脂製品で包まれた全ての能動デ
バイスと同じように, 苛酷な環境での反応性の強い物質は,
DC/DC の材質や内部の部品を劣化させます. 従って, 常温
での不活性の雰囲気 (空気や窒素) の中で, 不活性な溶液 (ア
ルコールや水系の溶剤) で洗浄されることを推奨します.
水溶性の洗浄工程では, 脱イオン水を使用した洗浄方法
が好まれます.
DC/DC コンバータのカスタマイズ
データブックに紹介している標準タイプに加え, RECOM
は, ユーザー仕様に合わせて設計した DC/DC のカスタム
品を製造し, 提供することができます. カスタマイズの依
頼を受けた DC/DC は, CAD ツールを使って, 迅速に設計さ
れ, RECOM の標準品の入力/出力電圧の範囲内 (すなわち,
入力および出力の電圧は 48V まで) において, あらゆる入
力/出力電圧に対応できます. 試作品の DC/DC についても,
短期間で製造します. カスタム品は, ユーザー仕様を基に設
計することができます. あるいは, その部品がある標準シ
リーズに合致するところがあれば, そのシリーズの仕様を
ベースにして設計します. 全てのカスタム品は, 標準品と同
様に, 厳格な試験, 検査, 品質管理を受けます. RECOM の
カスタム品は, 多くのアプリケーションで使用されていま
す. それらは, 個々のユーザーに特有なものとなりますが,
いくつかの例を以下にあげます.
• ECL ロジックドライバー
• 複数バッテリー構成
• 船舶機器
• 車載部品
• LCD ディスプレイの電源回路
• ボードレベルの計測システム
カスタム品として, DC/DC コンバータのご要求がありまし
たら, RECOM の技術サポート, または, 現地の代理店にお
気軽にお問い合わせください.
18
DC-DC Converter Applications
パッケージとピンの寸法 (mm)
Powerline – DC/DC コンバータ
A I Case: 31.8 x 20.3 x 10.2 mm
C2 Case: 33.02 x 33.02 x 17.8 mm
4.6
23
22
3.8
2
3
33.02
17.80
5.08
14.86
17.80
底面図
16
15
14
31.80
2.5
7
9
10
11
6 5 4
33.02
24.00
1
15.20
0.25 0.50
角 型の ピ ン
20.30
φ 0.8
2 3
19.94
10.20
5.6 min
ピ ン ピ ッ チ 許容誤差 ±
0.3mm
ピ ン ピ ッ チ 許 容 誤 差 ± 0.35mm
PI Case: 50.8 x 19 x 18 mm
LI Case: 45 x 35 x 18 mm
1.88
4
12.70
19.00
5.08
3
2
1
5.08
5.08 底 面 図 5.08
2.54
5.08
5
6
18.00
側面図
1.88
7
5.6
8
2.54
2.54
45.00
39.90
18.00
側面図
0.8
5.6
45.72
50.80
ピ ン ピ ッ チ 許容誤差
2.54
35.00
0.4mm
±
50.80
10.00 15.40
68.60
20.00
4
5 6 7
8
φ 1.0
9
ピ ン ピ ッ チ 許容誤差
10.00
5.00
25.40
4.0 min
19
15
14
13
12
11
10
9
8
7
ピ ン ピ ッ チ 許 容 誤 差 ± 0.25mm
56.10
底面図
1 2 3
底面図
12.40
Q I Case: 68.6 x 50.8 x 20 mm
10 11 12 13 14 15 16 17 18
1
2
3
4
5
6
±
0.4mm
20.30
7.30
DC-DC Converter Applications
本ページ以降は, POWERLINE に固有の仕様に関する簡単な説明を述べます. また, POWERLINE 以外の製品シリーズ
のアプリケーションノートには記載されていません.
試験のセットアップ
EMC への対応
ほとんどの DC/DC の試験は, 図 1 に示したセットアップにより実施されます. 試験方法に適用する一般的な試験条件の
概略を記します.
・十分な DC 電源と表記 DC 入力電圧
・+25◦ C の周囲温度
・最大定格出力負荷
9L-TF002
L1
+Vin
Z
47uF
100V
-Vin
C1
DC/DC
Converter
47uF
100V
C2
図 1-1: RP10, RP12, RP15, RP20, RP30, RP40, RP60 シリーズ用の EMC 試験
L1 = 1102.5 µH
DCR = 0.1 Ω
C1, C2 = 47 µF
φ 0.5mm
アルミ電解コンデンサ
リップル: 180mA (105◦ C, 120Hz)
100V
9L-TF009
L1
+Vin
Z
47uF
100V
-Vin
C1
DC/DC
Converter
47uF
100V
C2
図 1-2: RP03-A, PR05-A, PR08-A シリーズ用の EMC 試験
L1 = 497 µH
DCR = 55.1 mΩ
C1, C2 = 47 µF
φ 0.3mm
リップル: 180mA (105◦ C, 120Hz)
100V
A
DC 電 源
アルミ電解コンデンサ
A
+V
DC/DC
(DUT)
V
V
(VDC ま た は
VRRS)
可 変負荷
-V
図 1-3: DC/DC コンバータの試験の一般的なセットアップ
注:
リモートセンス (remote sence) の信号ピンをもつ DC/DC の試験であれば, それらのピンは, 個々の
出力ピンに接続してください. 全ての試験は, 「ローカルセンシング」モードでなされます.
20
DC-DC Converter Applications
Input Voltage Range (入力電圧範囲)
DC/DC が動作する仕様範囲内の最小および最大の入力電圧
PI Filter (PI フィルター)
2 つのコンデンサをインダクタを挟んで並列に接続する入力フィルター. これにより, 入力側のリップル電流の反射を抑
えることができます.
L
Input
C1
C2
Output
図 2: PI フィルター
Output Voltage Accuracy (出力電圧精度)
試験のセットアップより, 表記入力電圧と定格出力負荷において, 校正された精度の良い DC 電圧測定器を用いて, 出力
電圧を測定します. 出力電圧精度は, 出力電圧の測定値と仕様の表記電圧値との差をパーセンテージで表したものです.
出力精度 (%) は, 以下の式で導出されます.
Vout − Vnom
× 100
Vnom N
Vnom は, DC/DC のデータシートに記載される表記上の電圧値です.
Voltage Balance (電圧バランス)
複数の出力をもつ DC/DC において, 正と負の 2 つの出力電圧と表記出力電圧の差をパーセンテージで表したものです.
Line Reguration (入力変動)
+25◦ C での定格出力負荷による条件において, 以下の測定を行ない記録します.
• 表記入力電圧を入力したときの出力電圧
Vout N
• 上限の入力電圧を入力したときの出力電圧
Vout H
• 下限の入力電圧を入力したときの出力電圧
Vout L
入力変動は, 入力電圧を変動させ, 出力電圧に最大の変動を与えたときの出力電圧値 Vout M を表記入力電圧を入力した
ときの出力電圧値のパーセンテージで表したものです.
Vout M − Vout N
× 100
Vout N
21
DC-DC Converter Applications
Load Regulation (負荷変動)
+25◦ C での定格出力負荷による条件において, 以下の測定を行ない記録します.
• 定格の出力負荷をもつときの出力電圧
Vout F L
• 無負荷あるいは仕様上の最小負荷をもつときの出力電圧 Vout M L
負荷変動は, 上記の 2 つの電圧差を定格の出力負荷をもつときの出力電圧値のパーセンテージで表したものです.
Vout M L − Vout F L
× 100
Vout F L
Efficiency (効率)
入力側で消費する電力に対し, 出力側の電力供給の割合をパーセンテージで表したものです. 通常, 最大負荷での出力電
力および表記入力電圧の条件で測定されます.
Switching Frequency (スイッチング周波数)
DC/DC やスイッチング電源の中で DC 電圧が切り替わる速度です.
Output Ripple and Noise (出力リップルとノイズ)
リップルの周波数は高いので, 正確な測定を行なうため, 特別な測定手法を用います. リップルのスパイクには, あらゆ
る高調波が含まれていますので, 20MHz の帯域をもったオシロスコープを用います. 観測時にノイズを拾わないように
するには, 図 3 のようにします. オシロのプローブのグラウンドリングや最短に引き出したグラウンド線を DC/DC の出
力コモン端子に直接あてます. 一方, プローブの先は, 電源出力端子に接触させます. これは, 出力端子間を最短で観測す
る手段です.
出力
グラ ウ ン ド リ ン グ
オシ ロ へ
図 3: 出力波形の観測
22
DC-DC Converter Applications
図 4 は, スイッチング電源の出力にみられるリップルの電圧波形を表しています. 波形の中には, 3 つの成分が含まれて
います. 一つは, 整流回路やフィルターで生じる 120Hz の周波数成分です. 次に, 電源のスイッチング周波数の成分があ
り, 最後に, 高い周波数のリップルにのる小さい高周波のスパイクがあります.
P-to-P
振幅
時間
図 4: 振幅
Transient Recovery Time (過渡復帰時間)
負荷電流でのステップ変化において, 電源の出力電圧が規定の定格値の範囲内に戻るまでの時間です.
過 渡復帰時間
オー バ ー シ ュー ト
アン ダ ー シ ュー ト
V out
負荷
I out
時間
図 5: 過渡復帰時間
Current Limitting (電流制限)
過負荷状態では, DC/DC のダメージを防ぐために出力電流が制限されます. 短絡回路では, 出力側の電流が過剰になら
ないように, 出力電圧を低く調整します.
Hold Back Current Limitting (フォールドバック電流制限)
過負荷の状態にある電源の損傷を防ぎ, 負荷が短絡回路に近付くように出力電流を減少させる手法です.
V out
定格 IO
I out
図 6: フォールドバック電流制限の時間
23
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Isolation (絶縁)
通常, DC/DC の入力と出力の電気的分離は, (抵抗と容量の絶縁からなり) トランスの性質と回路配置によって決まり
ます.
Break-Down Voltage (故障電圧)
DC/DC に損傷を与えずに, DC/DC の入力端子と出力端子の間に印加してもよい最大の DC 電圧です. DC/DC の標準の
故障電圧は, 500VDC です.
抵抗お よ び
容量の 絶縁
R
C
整流回 路
お よ び
レギュレー タ
入力
出力
故障電圧
図 7: 故障電圧
Temperature Coefficient (温度係数)
定格の負荷を出力にもった電源コンバータに対し, 恒温槽の試験では, 以下の測定します.
• +25◦ C の周囲温度での出力電圧
• 電源コンバータの動作周囲温度の上限に恒温槽の温度を設定し, その温度に達したら, 15 分から 30 分間, 電源コンバー
タを安定させてから, 出力電圧を測定します.
• 電源コンバータの動作周囲温度の下限に恒温槽の温度を設定し, その温度に達したら, 15 分から 30 分間, 電源コンバー
タを安定させてから, 出力電圧を測定します.
• 測定した+25◦ C の電圧測定値に対し, 測定した上限の動作周囲温度での電圧測定値の変動をパーセンテージで求め, そ
れを動作周囲温度の上限値から+25 を引いた値で割ります. 下限の動作周囲温度についても同様に計算します.
温度係数は, 上記で求めた 2 つの値の高い方を選択し, % / ◦ C を用いて表します.
Ambient Temperaturee (周囲温度)
動作中の電源の周辺における無風状態での空気温度です.
Operating Temperature Range (動作温度範囲)
電源が安全に動作し, その仕様を満たす周囲温度またはケース温度の範囲です.
Storage Temperature Range (保存温度範囲)
動作時の性能に劣化を生じさせることのない非動作時の電源の周囲温度の範囲です.
24
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Output Voltage Trimming (出力電圧トリミング)
Powerline のいくつかの DC/DC は, 外付け抵抗を使用して, 表記電圧値からある値の範囲まで, 出力電圧を可変にする機
能をもちます. シリーズ毎にトリム回路が異なるため, トリム端子に接続する外付け抵抗の値を決める一般的な計算式
はありません. 以下の表は, トリム用の抵抗を決める際の情報を示します. ユーザー回路において, 表中の電圧値が該当
しない場合, 表中の電圧値間の線形近似で求めることができます. あるいは, 可変抵抗を使用することもできます.
RP20-, RP30- XX18S
トリムアップ
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
%
Vout =
1.818
1.836
1.854
1.872
1.890
1.908
1.926
1.944
1.962
1.980
V
RU =
11.88
5.26
3.09
2.00
1.35
0.92
0.61
0.38
0.20
0.06
KΩ
トリムダウン
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
%
Vout =
1.782
1.764
1.746
1.728
1.710
1.692
1.674
1.656
1.638
1.620
V
RD =
14.38
6.50
3.84
2.51
1.71
1.17
0.79
0.50
0.27
0.10
KΩ
RP20-, RP30- XX25S
トリムアップ
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
%
Vout =
2.525
2.550
2.575
2.600
2.625
2.650
2.675
2.700
2.725
2.750
V
RU =
36.65
16.57
9.83
6.45
4.42
3.06
2.09
1.37
0.80
0.35
KΩ
トリムダウン
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
%
Vout =
2.475
2.450
2.425
2.400
2.375
2.350
2.325
2.300
2.275
2.250
V
RD =
50.20
22.62
13.49
8.94
6.21
4.39
3.09
2.12
1.36
0.76
KΩ
RP15-, RP20-, RP30-, RP40- xx33S
RP40-, RP60- xx3305T (+3.3V 用トリム)
トリムアップ
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
%
Vout =
3.333
3.366
3.399
3.432
3.465
3.498
3.531
3.564
3.597
3.630
V
RU =
57.96
26.17
15.58
10.28
7.11
4.99
3.48
2.34
1.46
0.75
KΩ
トリムダウン
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
%
Vout =
3.267
3.234
3.201
3.168
3.135
3.102
3.069
3.036
3.003
2.970
V
RD =
69.43
31.23
18.49
12.12
8.29
5.74
3.92
2.56
1.50
0.65
KΩ
3
4
5
6
7
8
9
10
%
RP15-, RP20-, RP30-, RP40-, RP60- xx05S
RP60- xx05D (+5V 用トリム)
トリムアップ
1
2
Vout =
5.05
5.10
5.15
5.20
5.25
5.30
5.35
5.40
5.45
5.50
V
RU =
43.22
18.13
10.60
6.97
4.83
3.42
2.43
1.68
1.11
0.65
KΩ
トリムダウン
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
%
Vout =
4.95
4.90
4.85
4.80
4.75
4.70
4.65
4.60
4.55
4.50
V
RD =
39.42
19.00
11.58
7.74
5.40
3.82
2.68
1.82
1.15
0.61
KΩ
25
DC-DC Converter Applications
RP15-, RP20- xx05D
トリムアップ
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
%
Vout =
10.1
10.2
10.3
10.4
10.5
10.6
10.7
10.8
10.9
11.0
V
RU =
90.50
40.65
24.06
15.76
10.79
7.47
51.0
3.33
1.95
0.84
KΩ
トリムダウン
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
%
Vout =
9.9
9.8
9.7
9.6
9.5
9.4
9.3
9.2
9.1
9.0
V
RD =
109.06
48.94
28.87
18.83
12.81
8.79
5.92
3.77
2.10
0.76
KΩ
RP15-, RP20- ,RP30-, RP40-, RP60- xx12S
トリムアップ
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
%
Vout =
12.12
12.24
12.36
12.48
12.60
12.72
12.84
12.96
13.08
13.20
V
RU =
1019.45
257.41
134.39
84.06
56.68
39.47
27.65
19.03
12.47
7.30
KΩ
トリムダウン
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
%
Vout =
11.88
11.76
11.64
11.52
11.40
11.28
11.16
11.04
10.92
10.80
V
RD =
270.20
149.63
95.76
65.24
45.59
31.88
21.77
14.01
7.86
2.87
KΩ
RP15-, RP20- ,RP30-, RP60- xx12D
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
%
Vout =
24.24
24.48
24.72
24.96
25.20
25.44
25.68
25.92
26.16
26.40
V
RU =
210.51
96.13
57.18
37.54
25.71
17.80
12.14
7.89
4.58
1.93
KΩ
トリムダウン
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
%
Vout =
23.76
23.52
23.28
23.04
22.80
22.56
22.32
22.08
21.84
21.60
V
RD =
283.54
125.47
73.95
48.40
33.14
22.99
15.76
10.34
6.13
2.76
KΩ
トリムアップ
RP15-, RP20- ,RP30-, RP40-, RP60- xx15S
トリムアップ
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
%
Vout =
15.15
15.30
15.45
15.60
15.75
15.90
16.05
16.20
16.35
16.50
V
RU =
455.67
192.89
111.48
71.85
48.40
32.90
21.90
13.68
7.31
2.23
KΩ
トリムダウン
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
%
Vout =
14.85
14.70
14.55
14.40
14.25
14.10
13.95
13.80
13.65
13.50
V
RD =
449.01
210.22
125.38
81.89
55.46
37.68
24.92
15.30
7.80
1.78
KΩ
RP15-, RP20- ,RP30-, RP60- xx15D
トリムアップ
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
%
Vout =
30.3
30.6
30.9
31.2
31.5
31.8
32.1
32.4
32.7
33.0
V
RU =
306.24
129.65
75.39
49.05
33.49
23.21
15.92
10.48
6.26
2.90
KΩ
トリムダウン
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
%
Vout =
29.7
29.4
29.1
28.8
28.5
28.2
27.9
27.6
27.3
27.0
V
RD =
300.42
142.30
85.77
56.73
39.05
27.16
18.60
12.16
7.13
3.10
KΩ
26
DC-DC Converter Applications
項目
ページ
• 用語の解説
Input voltage range (入力電圧範囲)
1
項目
• トランスファーモールド型の表面実装 DC/DC
コンバータ
1
ページ
15
Load voltage regulation (負荷変動)
1
生産ガイドライン
15
Line voltage regulation (入力変動)
1
部品の素材
15
Output voltage accuracy (出力電圧精度)
1
部品実装
15
Input and output ripple (入力と出力のリップル)
1
部品の配置
15
Input to output isolation (入出力間絶縁)
1
ソルダーパッドの設計
15
Insulation registance (絶縁抵抗)
1
リフロー温度プロファイル
15
Efficiency at full load (最大負荷時の効率)
1
推奨リフロー温度プロファイル
16
Temperature drift (温度ドリフト)
1
接着剤の必要条件
16
Temperature above ambient (周囲温度上昇)
1
接着剤の塗布
16
Switching frequency (スイッチング周波数)
1
洗浄
18
No load power consumption (無負荷時電力消費)
1
Isolation capacitance (絶縁容量)
1
Mean time between failure (MTBF) (平均故障間隔)
1
Noise (ノイズ)
2
Operating temperature range (動作温度範囲)
2
• 試験のセットアップ
20
Calculation of heatsinks (ヒートシンクの計算)
3
• 入力電圧範囲
21
• 絶縁
3
• PI フィルター
21
• 直列による DC/DC コンバータの接続
4
• 出力電圧精度
21
• 並列による DC/DC コンバータの接続
5
• 電圧バランス
21
• 並列の DC/DC コンバータ用の推奨値
5
• 入力変動
21
• フィルタリング
6
• 負荷変動
22
• 出力のフィルタリングの計算
6
• 効率
22
• 突入電流の制限
6
• スイッチング周波数
22
• 出力側コンデンサの最大容量
6
• 出力リップルとノイズ
22
• 整定時間
7
• 過渡復帰時間
23
• 絶縁容量と漏洩電流
7
• 電流制限
23
• 過負荷保護
7
• フォールドバック電流制限
23
• 入力電圧のドロップアウト
8
• 絶縁
24
• 無負荷による高電圧防止
9
• 故障電圧
24
• 長距離の電力ライン
9
• 温度係数
24
• LCD ディスプレイバイアス
10
• 周囲温度
24
• EIA-232 Interface
10
• 動作温度範囲
24
• 3V/5V ロジックが混在した電源供給
10
• 保存温度範囲
24
• 絶縁型のデータ収集システム
11
• 出力電圧トリミング
25
• 電源に関する注意点
12
• DC/DC コンバータの EMC データの見方
12
• 伝導性および放射性エミッション
13
• ライン・インピーダンス安定化回路網 (LISN)
13
• シールディング
13
• DC/DC コンバータの周波数成分
13
• DC/DC の温度性能
14
• DC/DC コンバータのカスタマイズ
18
Power – Definitions and Testing
27