MH2501SCアプリケーションノート

MH2501SC/MH2511SC APPLICATION NOTE
JUL.2012 Ver.1.0
®
多段対応
Easy Multi インターリーブPFC
制御 IC
MH2501SC/MH2511SC
アプリケーションノート ver. 1.0
SHINDENGEN
ELECTRIC MFG.CO.,LTD
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MH2501SC/MH2511SC
使用上の注意
このたびは、弊社製品をご使用いただき誠にありがとうございます。
当 IC をご使用の際は、お客様の安全を確保するため下記の警告ならびに注意を必ず守ってご使用下さい。
警
告
注
意
警
告
注
意
!
誤った取り扱いをしたときに死亡や重大な人身事故および大きな物的損害に結びつく危険性のあるもの。
!
誤った取り扱いをしたときに軽傷に結びつく恐れ、または軽微な物損事故に結びつく恐れのあるもの。
!
当 IC は、一般電子機器(事務機器・通信機器・計測機器・家電製品等)に使用されることを意図しております。誤動作や事
故が直接人体や生命を脅かす恐れのある医療器、航空宇宙機、列車、輸送機器(車載、船舶等)、原子力等の制御機器
には使用しないで下さい。一般電子機器以外にご使用になる場合は弊社までご相談下さい。
!
修理や改造は、重大な事故につながりますので、絶対にやめて下さい。
《感電、破壊、火災、誤動作等の危険があります。》
!
異常時は出力端子に過大電圧が発生したり、電圧低下となる場合があります。 異常時の、負荷の誤動作や破壊等を想定
した保護対策(過電圧保護、過電流保護等の保護対策)を最終機器に組み込んで下さい。
!
入力端子、出力端子の極性を確認し誤接続の無いことを確認してから通電して下さい。
《保護素子が切れたり、発煙・発火の原因になります。》
!
決められた入力電圧を必ず守っていただくとともに、入力ラインに必ず保護素子を挿入して下さい。
《異常時には発煙・発火の危険があります。》
!
使用中に故障または、異常が発生した時は、すぐに入力を遮断して電源を停止させて下さい。また、直ちに弊社にご相談
下さい。
●本資料に記載されている内容は、製品改良などのためお断りなしに変更することがありますのでご了承下さい。
●御使用頂く際には、仕様書の取り交わしをして頂けます様お願いします。
●ここに記載されたすべての資料は正確かつ信頼し得るものでありますが、これらの資料の使用によって起因する損害または特許
権その他権利の侵害に関しては、当社は一切その責任を負いません。
●本資料によって第三者または当社の特許権その他権利の実施に対する保証または実施権の許諾を行うものではありません。
●本資料の一部または全部を当社に無断で転載または複製することを堅くお断りいたします。
! 当社は、品質と信頼性の向上に絶えず努めていますが、半導体製品はある確率で故障が発生したり、誤動作する場合がありま
す。必要に応じ、安全性を考慮した冗長設計、延焼防止設計、誤動作防止設計等の手段により結果として人身事故、火災事故、社
会的な損害等が防止できるようご検討下さい。
! 本資料に記載されている当社半導体製品は、特別に高い品質・信頼性が要求され、その故障や誤動作が直接人命を脅かしたり、
人体に危害を及ぼす恐れのある機器あるいはシステムに用いられることを目的として設計、製造されたものではありません。下記の
特別用途、特定用途の機器、装置にご使用の場合には必ず当社へご連絡の上、確認を得て下さい。
特別用途
輸送機器(車載、船舶等)、基幹用通信機器、交通信号機器、防災/防犯機器、各種安全機器、医療機器 等
特定用途
原子力制御システム、航空機器、航空宇宙機器、海底中継器、生命維持のための装置 等
! なお、IC 製品に関しては、特別用途・特定用途に限らず、連続運転を前提として長期製品寿命を期待される機器、装置にご使用
される場合に関しては当社へお問い合わせ下さい。
当社は IC 製品を安全に使っていただくために回路支援をしております。弊社担当営業または商品企画に
お問い合わせ下さい。
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Index
1 : 概要
1.1: 特長
1.2: ブロック図
5
1.3: 端子配置図
6
1.4: 端子機能一覧
6
5
2 : 基本動作の説明
対象 IC
2.1:電流臨界型オン幅制御方式 PFC の動作原理
7
2.2: ゼロ電流検出
マスタ
8
2.3: インターリーブ動作
マスタ
スレーブ
9-10
2.4: 起動・切断シーケンス
マスタ
スレーブ
11
2.5: 出力電圧制御
マスタ
12
2.6: 位相補償
マスタ
13
2.7: ゲートドライバ
マスタ
スレーブ
13
2.8.1: 過電流保護
マスタ
スレーブ
14
2.8.2: 出力過電圧保護(OVP)
マスタ
スレーブ
14-15
2.8: 保護機能
2.8.3: 低入力電圧保護、FB 端子オープン/ショート保護
マスタ
15
2.8.4: 出力ダイオードショート保護
マスタ
16
2.8.5: VCC 端子低電圧保護(UVLO)
マスタ
2.8.6: サーマルシャットダウン
スレーブ
マスタ
2.9:応用回路
2.9.1: スレーブ停止保護
16
16
17-18
2.9.2: リモート ON/OFF
18
2.9.3: インターリーブ段数の切り替え
19
2.10: 動作波形例
20
3 : 回路例
3.1: 代表回路図
21
4 : 周辺回路定数の決定
4.1:チョークコイルの選定
22
4.2:MOSFET の選定
23
4.3:出力ダイオードの選定
23
4.4:バイパスダイオードの選定
23
4.5:Z/C 端子周辺定数の調整
24
4.6:位相補償の調整
25
4.7:出力電圧の調整
25
4.8:過電流保護ポイントの調整
26
4.9:出力コンデンサの調整
26
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-3-
5 : 保護機能に関する注意点
27
6 : パターンレイアウトの注意点
6.1:主電流経路の配線
28
6.2:GND の配線
29
6.3:MODFET 周辺部品の配線
30
6.4:IC 周辺部品の配線
30
6.5:参考パターンレイアウト
6.5.1: A 面
31
6.5.2: B 面
32
注意事項
記載されている数値は暫定値になっております。規格値については仕様書をご確認ください。
【対象 IC の表記について】
マスタ
マスタ
スレーブ
マスタ IC のみの機能
マスタ IC およびスレーブ IC 共通の機能
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1 概 要
MH2501SC(以降、マスタ IC とする)、MH2511SC(以降、スレーブ IC とする)は、電流臨界型インター
リーブ PFC 回路用 IC です。マスタ IC、スレーブ IC を用いてインターリーブ動作させる事で臨界型 PFC
の特徴である低ノイズ、高効率を大電力領域でも実現できます(マスタ IC のみで1段 PFC として構成可)。
1.1 特長
1.
2.
3.
4.
5.
マスタ/スレーブ電流臨界インターリーブ動作による高効率・低ノイズ化を実現
スレーブ IC を複数並列接続することにより 2 段以上のインターリーブ動作が可能
マスタ IC のみで1段 PFC として構成可能
VCC 耐圧 26V 保証により幅広い入力電圧に対応
充実した保護機能搭載
(過電圧保護、過電流保護、フィードバックオープン/ショート保護、出力ダイオードショート保護)
1.2 ブロック図
図 1 . マスタ IC(MH2501SC) ブロック図
図 2 . スレーブ IC(MH2511SC) ブロック図
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1.3 端子配置図
package : SOP8
図 3 . MH2501SC, MH2511SC 端子配置図
1.4 端子機能一覧
<<マスタ IC MH2501SC>>
端子番号
記号
1
2
FB
COMP
3
IL_OUT
4
5
6
7
8
OCL
Z/C
GND
OUT
VCC
機能
フィードバックエラーアンプの入力端子
フィードバックエラーアンプの出力端子
インターリーブ動作用信号出力端子
スレーブ IC の IL_IN 端子と接続
過電流検出用入力端子
マスタ IC のゼロ電流検出端子
GND 端子
マスタ IC の MOSFET 駆動用出力端子
電源電圧入力端子
<<スレーブ IC MH2511SC>>
端子番号
記号
1
IL_IN
2
IL_OUT
3
LATCH
4
OCL
5
TIMER
6
7
8
GND
OUT
VCC
機能
インターリーブ動作信号の入力端子
マスタ IC もしくは前段スレーブ IC の IL_OUT 端子と接続
インターリーブ動作信号の出力端子
次段スレーブ IC の IL_IN 端子と接続
ラッチ用出力端子。
スレーブ異常時にマスタ IC を動作停止させる
過電流検出用入力端子
1段動作時検出用タイマコンデンサ接続端子
スレーブ IC の動作有無を検出する
GND 端子
スレーブ IC の MOSFET 駆動用出力端子
電源電圧入力端子
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2 基本動作の説明
2.1 電流臨界型オン幅制御方式 PFC の動作原理
図 4 . 臨界動作
図 5 . スイッチング 1 サイクル波形
本 IC は、電流臨界型を採用しており、図 4 のようにチョーク電流 IL はゼロスタート・ゼロエンドの繰
り返し三角波となります。また、オン幅制御方式であるため、オン幅 Ton は負荷に応じて決定され一定
値となります。なお、オフ幅 Toff は入力電圧 Vin に応じてスイッチング毎に変化しますので、スイッチン
グ周期は変動します。
各電流値は以下の式により算出されます。
Ton および L 値は一定であるため、IL のピークである IL(peak)は Vin に比例します。Vin は正弦波
状であるため、IL(peak)も正弦波状となります。(式 1)
IL( peak ) 
Vin  Ton
L
[ A]
・・・(1)
ただし、スイッチング周波数は AC 商用周波数より十分高く、スイッチング 1 周期では Vin 一定とみ
なします。(図 5)
入力電流 Iin は、コンデンサ Cin により IL から高周波成分が除去され平均化された電流 IL(ave)と
等しくなります。また、IL は三角波のため、IL(ave)は IL(peak)の 1/2 となります。(式 2)
I in  IL( ave) 
IL( peak )
2
[ A]
・・・(2)
式(2)に式(1)を代入し、
I in  IL( ave) 
IL ( peak ) Vin  Ton

2
2L
[A]
・・・(3)
式(3)のように、本 IC のオン幅制御により、Iin と Vin は比例関係となるため、力率改善が可能となり
ます。回路上での波形例を図 6 に示します。
図 6 . 回路上の波形例
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2.2 ゼロ電流検出
マスタ
本 IC は、コントロール巻線電圧を検出しスイッチング素子のオンを行っています。このオンタイミング
は Z/C 端子により決まります。
図 7 のように Z/C 端子電圧がゼロ検出電圧(0.5V 点)を下回ったタイミングで、主スイッチをオンさ
せております。その結果、スイッチングサイクル毎にチョークコイルのエネルギが確実に放出完了したタ
イミングで主スイッチがオンするため、電流臨界動作となります。
また、このゼロ検出電圧に対して、+1V のヒステリシスをもたせることにより耐ノイズ性を高めていま
す。Z/C 端子電圧に+1.5V を超える電圧が印加されない場合はリスタート周期(150μs)で動作します。
さらに、本 IC にはゲートオフ時のリンギング電圧によってオントリガを検出してしまい電流臨界点よ
りもはやくオンしてしまう誤動作を防止するため、ゲートオフ信号が出てからオントリガを禁止するオン
デッドタイム (Tondead)を設けています。これにより、ゲートオフ時のリンギングによる誤動作を防止し
ます。
Z/C 端子周辺部品の定数設定については、4.5 項 を参照してください。
ヒステリシス
1V
Tondead
ゼロ検出電圧
0.5V
Z/C端子電圧
0V
主スイッチID
0A
ダイオード電流
0A
主スイッチVDS
0V
図 7 . オンタイミング(Z/C 端子)
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2.3 インターリーブ動作
マスタ
スレーブ
マスタ IC と複数個のスレーブ IC を接続することで、多段の臨界型インターリーブ PFC を実現する
ことが可能です。
※ マスタ IC の端子名には(M)、スレーブ IC の端子名には(S)およびスレーブ識別番号を語尾に付加して区別しております。
マスタ IC の IL_OUT(M)端子は、スレーブ IC にインターリーブ動作をさせるための信号出力端子です。
IL_OUT(M)端子とスレーブ IC の IL_IN(S1)端子を接続することにより、インターリーブ動作を行います。
また、図 8 のように IL_OUT(S1)端子と次段のスレーブ IC の IL_IN 端子(S2)を接続することにより、
3 段以上の多段インターリーブを行うことができます。
ノイズ対策として図 8 のように IL_IN 端子の直近に抵抗とコンデンサを挿入してください。目安として、
抵抗は 1kΩ、コンデンサは 47pF を推奨します。
~
+
~
ー
IL_OUT
(M)
IL_IN
(S1)
IL_OUT
(S1)
IL_IN
(S2)
マスタ
IC
スレーブ
IC (1)
スレーブ
IC (2)
図 8 . インターリーブ接続例
ここでは、インターリーブ動作時におけるオンタイミングとオン幅の伝達について説明します。動作シ
ーケンスを図 9 に示します。図 9 では、オン幅の伝達順序を矢印で示します。文章内の波形と矢印の
番号は、図 9 を参照ください。
1)
マスタ IC の OUT(M)オンは、Z/C 端子のネガティブエッジを検出して信号を出力します(波
形 A,B)。
2)
マスタ IC の IL_OUT(M)信号は、OUT(M) に同期した信号で出力されます。
(波形 C、矢印①)
3)
マスタ IC の IL_OUT(M)信号は、図 8 のように CR を介してスレーブ IC の IL_IN(S1)端子
に入力されます(波形 C,D、矢印②)。
スレーブ IC(1)内部では、カウンタ回路により IL_IN(S1)の Hi 時間を記憶しています。
4)
スレーブ IC(1)の OUT(S1)は、マスタ IC のターンオフのタイミングでオンし、記憶したオン
幅を出力します。オン幅は OUT(M)と同じとなります(波形 E、矢印③)。
5)
スレーブ IC(1)の IL_OUT(S1)信号は、OUT(S1)に同期した信号で出力されます。
(波形 F、矢印④)
6)
多段化は、IL_OUT(S1)端子と次段スレーブ IC(2)の IL_IN(S2)端子を接続することで実現
できます。(波形 F、矢印⑤)
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IC
SW
D-S
0V
0A
Z/C
0V
A
OUT(M)
B
Vcc
IL_OUT(M)
C
5V
0V
0V
IC(1)
5V
IL_IN(S1)
D
0V
Vcc
OUT(S1)
E
0V
(1) SW
D-S
0V
0A
5V
IL_OUT(S1)
F
0V
IC(2)
IL_IN(S2)
図 9 . インターリーブ動作シーケンス
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2.4 起動・切断シーケンス
マスタ
スレーブ
インターリーブ動作させた時の起動・切断シーケンスを図 10 に示します。VCC は、マスタ IC とス
レーブ IC は共通とします。
図 10. 起動・切断シーケンス
(a) 発振開始シーケンス
① VCC 端子に電圧が印加されると、COMP が 1.2V まで充電されます。
② VCC 電圧が VCC(start)S まで到達すると、スレーブ IC は起動状態になりますが、マスタ
IC が動作していないため、ゲートは出力されません。
③ VCC 電圧が VCC(start)M まで到達すると、マスタ IC も起動状態になりゲート出力を開始
し、スレーブ IC のゲート出力も開始します。
④ 起動直後は、OVP 動作によりゲート出力が停止するため、出力電圧の上昇を抑えます。
(b) 発振停止シーケンス
① VCC 電圧が VCC(stop)M まで低下すると、マスタ IC は動作停止状態になりゲート出力を
停止し、スレーブ IC のゲート出力も停止します。COMP 電圧は 1.2V でクランプされます。
② VCC 電圧が VCC(stop)S まで低下すると、スレーブ IC は動作停止状態になります。
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2.5 出力電圧制御
マスタ
本 IC は出力電圧を検出し主スイッチのオン幅を変化させることで、出力電圧を制御しております。
図 11 に示すように出力電圧から抵抗分圧(R191~R195, R196) して FB 端子に接続することにより、
出力電圧は FB 端子電圧が 2.5V になる値で安定になります。
また、フィードバックエラーアンプの出力である COMP 端子電圧と主スイッチのオン幅は比例関係で
あり、1.2V 以上でオン開始、4.0V で最大オン時間になります(図 12)。フィードバックが掛かることによ
り、COMP 端子電圧が制御され、出力電圧が安定します。
FB-GND 端子直近にノイズ対策としてコンデンサ(C191)を接続してください。なお、コンデンサ容量
が大きすぎると応答にも影響してきますので、1000pF-2200pF 程度を推奨します。
PFC OUT
COMP
R191
~
R195
2
2.5V= FB_ref
FB
1
R196
C191
GND
6
図 11. FB 端子内部ブロック図
V COMP vs ON Time
30
25
20
15
10
5
0
0.0
1.0
2.0
3.0
4.0
V COMP [V]
図 12 . COMP 端子電圧とオン幅の関係
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5.0
2.6 位相補償
マスタ
PFC コンバータは、商用 AC 入力の周波数に対して応答しないように調整する必要があります。
マスタ IC の COMP 端子‐GND 間にコンデンサ(C113,C114)および抵抗(R117)を接続する事でア
ンプの位相補償を行い、商用 AC 入力の周波数でのフィードバックループゲインを落とします。回路例
を図 13 に示します。目安として、C114 は 2.2uF 程度、C113 は 0.22uF 程度、R117 は 1kΩ程度を
推奨します。COMP 端子の調整方法は、4.6 項 をご覧下さい。
図 13 . COMP 端子接続例
2.7 ゲートドライバ
マスタ
スレーブ
OUT 端子から出力される信号により各スイッチの ON/OFF タイミングを決定します。OUT 端子は、
電源電圧 VCC から供給され、ゲートドライバ駆動能力は、0.5A(Source)/1.2A(Sink)です。
一般的に用いられる駆動回路の例を図 14 に示します。
A)、B)の様に電荷引き抜き用ダイオード(D112)を用いる場合には小容量ショットキーダイオードなど
を用い、スナッピー(ハード)リカバリーダイオードは使わないように注意して下さい。
弊社推奨ダイオード:D1NS4(アキシャル)、M1FM3(面実装)
また、Qg の大きい MOSFET(Q111)を接続して引き抜きが十分でない場合、図 14 C)のように引き
抜き側に PNP トランジスタ(Q112)を使用して下さい。
図 14 . ゲート駆動回路
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2.8 保護機能
2.8.1 過電流保護
マスタ
スレーブ
過電流保護は、図 15 のように MOSFET のソース-GND 間に接続された過電流検出抵抗(R111)に
より決定される電圧を OCL 端子で監視することで行います。
OCL 端子電圧が 0.5V 以上で主スイッチをオフします。通常動作時の最大ドレイン電流以上、かつチ
ョーク飽和電流以下で過電流検出ポイントを設定して下さい。
なお、本 IC にはゲートオン直後のノイズによる過電流保護の誤動作防止の為、ゲートオン信号が入
ってから一定期間、過電流検出を受け付けないリーディングエッジブランク時間 (TLEB) を設けていま
す。(図 16)
スイッチングノイズによる誤動作防止のため、図 15 のようにコンデンサ(C116)を挿入してください。
コンデンサは OCL-GND 間直近に接続してください。コンデンサ容量は 1000pF 程度を推奨します。ま
た、R118 を追加することによりさらにノイズによる誤動作を抑制できます。抵抗値は 100~1kΩ程度
を推奨します。OCL 端子の設計方法は 4.8 項 をご参照下さい。
図 15 . OCL 端子接続例
2.8.2 出力過電圧保護(OVP)
図 16 . 過電流保護 動作シーケンス
マスタ
スレーブ
出力過電圧保護(OVP)は、図 17 のように FB 端子電圧が 2.7V (FB_ref×1.08) 以上になると、マ
スタ IC およびスレーブ IC のゲート出力を停止して出力電圧の上昇を抑えます。これにより、電解コ
ンデンサ等へのストレスを低減できます。
PFC は一般的に商用周波数に反応しないように応答を遅く設計しますので、起動時や負荷急変
時などの過渡的な状態で出力電圧が一時的に上昇することがありますが、この保護機能は有効な
対策となります。
図 18 に OVP 動作時のシーケンスを示します。OVP 動作時、マスタ IC の IL_OUT からは強制
的に 80us の固定時間パルスが出力されます。スレーブ IC の IL_IN端子は、50us を越えるパル
スが入力された場合、OUT 信号は出力されませんので、スレーブは安全に停止します。
保護機能
出力過電圧保護
(OVP)
FB 端子
閾 値
2.7V 以上
(FB_ref×1.08V)
ゲート
出力
停止
その他の状態
出力電圧設定値×1.08 以上
マスタ IC はスレーブ停止信号を出力
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PFC OUT
COMP
2
2.5V= FB_ref
ON Time Controller
PFC Gate OFF
2.7V= FB_ref x 1.08
Slave stop TIMER
0.4V
FB
COMP Voltage 1.2V
1
図 17 . FB 端子内部ブロック図
図 18 . OVP 動作シーケンス
2.8.3 低入力電圧保護、FB 端子オープン/ショート保護
マスタ
低入力電圧保護は、入力電圧が低下し FB 端子電圧が 0.4V 以下になると、ゲート出力を停止し
ます。これにより、MOSFET やその他部品へのストレスを低減できます。
また、FB 端子がオープンもしくは GND ショートでも、FB 端子電圧が 0.4V 以下になりますので、
本保護機能によりゲート出力が停止します。
保護機能
低入力電圧保護
FB 端子オープン/ショート保護
FB 端子
閾 値
ゲート
出力
0.4V 以下
停止
その他の状態
COMP 端子電圧 = 1.2V
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2.8.4 出力ダイオードショート保護
マスタ
出力ダイオードが短絡状態になると、過電流を検出しマスタ IC の内部カウンタをカウントアップし
ます。512 回までカウントされた場合にラッチ停止します。この機能により、ダイオードショート状態で
動き続けるのを防ぐことが出来ます。ラッチを解除するには、VCC 電圧を放電後に再投入する必要
があります。
また、上記カウンタは Z/C 端子が4V 以上に達すると、内部カウンタをリセットするため、起動時お
よび過負荷時はこの機能が働くことはありません。
マスタ出力ダイオードショート保護のシーケンスを図 19 に示します。スレーブ出力ダイオードショ
ート時も、同様のシーケンスでラッチ停止します。
図 19 . 出力ダイオードショート保護 動作シーケンス
2.8.5 VCC 端子低電圧保護(UVLO)
マスタ
スレーブ
安全な VCC ON/OFF が出来るようにマスタ IC とスレーブ IC は発振開始・停止電圧を変えておりま
す。VCC ON 時は先にスレーブ IC が立ち上がるようにしておくことで、マスタ IC が動き出した時にスレ
ーブが確実に安定動作することが出来ます。VCC OFF 時は先にマスタ IC が停止することで、単独動
作することなく安全に停止することが出来ます。
VCC 端子の絶対最大定格、発振開始電圧、発振停止は以下の通りです
VCC - GND
端子間電圧
絶対最大定格
発振開始電圧
発振停止電圧
2.8.6 サーマルシャットダウン
マスタ IC
スレーブ IC
MH2501SC
MH2511SC
26V (マスタ・スレーブ共通)
11V
9.5V (先に起動)
7.5V
9V (先に停止)
マスタ
何らかの原因でマスタ IC が異常発熱した場合、IC ジャンクション温度が動作停止温度(TSD)
130℃以上になると発振停止します。その後、IC ジャンクション温度が 70℃程度まで下がると自動
復帰します。
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2.9 応用回路
2.9.1 スレーブ停止保護
マスタ
スレーブ
スレーブ IC の TIMER 端子と LATCH 端子およびマスタ IC の COMP 端子を利用することで、スレ
ーブが異常により動作していない時にマスタ単独動作を禁止することが出来ます。例えば、インターリ
ーブ信号が断線するケースなどがあります。
図 20 に3段接続時の回路例、図 21 にその動作シーケンスを示します。
図 20 のように、各チョークコイルの制御巻線とスレーブ IC の TIMER 端子と LATCH 端子およびマ
スタ IC の COMP 端子を接続します。各チョークコイルの構造や極性は、図 20 を参照ください。
通常動作中の TIMER 端子電圧は、各制御巻線による充放電より 0V 付近に維持されています。
LATCH 端子はローインピーダンス状態(GND レベル)になっています。
スレーブが異常により動作不能状態になった場合、TIMER 端子が上昇し 2.5V に達すると、LATCH
端子はハイインピーダンス状態(オープンコレクタ)になり維持されます。その結果、マスタ IC の
COMP-GND 端子間に接続したトランジスタがオンして、マスタ IC の発振を停止させます。
LATCH 端子は、VCC を 7.5V 以下にすることでラッチ状態を解除することが出来ます。本機能を使
用しない場合は TIMER 端子を GND にショートしてください。
起動時などの出力過電圧保護(OVP)動作時は、マスタ IC のみが動作しスレーブ IC が停止する期
間がありますが、スレーブ IC 内部のスイッチで TIMER 端子を 0V に放電します。
なお、OVP が解除されればスレーブ IC は速やかに TIMER 端子放電を解除します。出力過電圧保
護(OVP)については、2.8.2 項 を参照ください。
図 20 . スレーブ異常時保護のための回路構成例
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IC
IC(S1)
IC(S2)
図 21 . スレーブ異常時保護回路の動作シーケンス (インターリーブ信号断線の場合)
2.9.2 リモート ON/OFF
マスタ
マスタ IC は、①②どちらかの方法でリモート OFF することが可能です。
なお、①②の状態を解除すれば復帰します。
① COMP-GND 間をショートする
② VCC を UVLO 以下にする
また、インターリーブ動作時においても、上記の方法でマスタ IC を停止させる事でスレーブ IC
も自動的に停止します。
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2.9.3 インターリーブ段数の切り替え
インターリーブ動作時、スレーブ IC のみを停止させたい場合は、図 22 のようにスレーブ IC
の IL_IN 端子をトランジスタ等で GND にショートします。インターリーブ信号を遮断することで、
それ以降のスレーブ IC を停止させることができ、外部信号より任意の段数に切り替えることが
できます。R127、R137 は、IL_OUT 端子の電流制限抵抗です。
なお、2.9.1 項 のスレーブ停止保護を併用する場合は、インターリーブ信号を遮断して停止さ
せるスレーブ IC の TIMER 端子を GND ショートしてからインターリーブ信号を遮断するように
してください。例えば、スレーブ IC(1)以降を停止させる場合は、C125 をショートしてから Q123
をオンしてください(図 22 矢印①参照)。スレーブ IC(2)以降を停止させる場合も同様となりま
す(図 22 矢印②参照)。
IC
IL_OUT
3
R127
1
IL_IN
IC(1)
1
Q123 C123
①
GND
IL_OUT
TIMER
6
2
5
C125
①
R137
1
IL_IN
IC(2)
2
Q133 C133
②
GND
IL_OUT
TIMER
6
2
5
C135
図 22 . インターリーブ段数の切り替え
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②
2.10 動作波形例
3.1 代表回路図 (入力:AC180V~264V 出力電圧:390V 出力容量:4kW 3 段インターリーブ構成)
での動作波形
入力電圧: AC200V
共振期間
CH1
Vds(M)
100V/div
CH2
Id(M)
1A/div
CH3
V COMP
2V/div
CH4
V Z/C
5V/div
CH1
CH3
CH4
CH2
TIME
波形 1:ゼロ電流 による臨界動作波形
400ns/div
出力電力: 500W (Vo=320V)
入力電圧: AC200V
出力電力: 4kW (Vo=320V)
CH1
CH2
CH3
CH1
Vds(M)
100V/div
CH2
Id(M)
2A/div
CH3
Id(S1)
2A/div
CH4
Id(S2)
2A/div
CH4
TIME
波形 2:主スイッチ電流波形(3 段インターリーブ)
10us/div
入力電圧: AC200V
出力電力: 4kW (Vo=320V)
CH1
CH2
CH1
Vin(ac)
250V/div
CH2
Iin(ac)
20A/div
TIME
波形 3:入力電圧・電流波形
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10ms/div
3 回路例
3.1 代表回路図 (入力:AC180V~264V 出力電圧:390V 出力容量:4kW 3 段インターリーブ構成)
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4 周辺回路定数の決定
PFC 回路の特性は IC 以外の周辺部品にも大きく左右されます。最適な設計をしていただくために、
必要とする電源の仕様を明らかにしたうえで、以下の手順に従い部品選定を行ってください。
4.1 チョークコイル(L111、L121、L131・・・)の選定
チョークコイルは PFC 回路の性能を左右する重要な部品です。PFC 回路仕様により最適な定数を
以下の計算式を利用し算出し、コイルメーカに問い合わせください。
最終的には実機にてコアおよび巻線の温度上昇をご確認いただいたうえで、巻線およびコアサイズ
を決定してください。
<コアサイズの選定>
コアサイズの選定には、コアギャップlgが 2mm 以下を目安に選定してください。
コアギャップlgの算出式は以下の式(1)~(5)になります。
lg  4 
Ae  Np 2
 10-7
Lp
Lp  Ton 
Idp 
Vin( AC ) min  2
 103
Idp
Ps  2  2
  Vin(AC)min
Ton  Don  T max 
Don 
[mm ] ・・・(1)
[ mH ] ・・・(2)
[ A ] ・・・(3)
Don
f min
Vo  Vin( AC ) min 2
Vo
[s ] ・・・(4)
・・・(5)
なお、Ae はコアの実効断面積[mm2]、Ps は垂下点での出力電力[W](Po(max)の 1.2~1.5 倍)、
fmin は最小発振周波数[Hz](W/W 入力:40k~60kHz,100V/200V 系:50k~70kHz)です。
( )内の数値については目安となります。
<Np 巻線のターン数>
チョークコイル Np 巻線のターン数は、式(6)にて算出される値の小数点以下切り上げた整数で決定
します。
Np  Ton 
Vin( AC )min  2
109
ΔB  Ae
[Turn] ・・・(6)
なお、ΔB はコアの磁束密度変化[mT]です。ΔB はコア材により大きく異なりますので、コイルメーカ
に問い合わせください。
<Nc 巻線のターン数>
Nc 巻線ターン数は最大入力電圧時に 1.5V 以上の電圧が制御巻線に発生する必要がありますの
で、式(7)を目安に最小の整数で決定してください。
Nc  1. 5 
Np
Vo  { 2  Vin( AC ) max}
[Turn ]
・・・(7)
W/W 入力で Vin(AC)max を 264V、PFC 出力電圧 Vo を 390V とした場合、Np と Nc の巻数は大
体 10:1 が目安になります。
例) W/W 想定で Np が 50 ターンの場合
Vin(AC)max=264V、Vo=390V とすると Nc>4.5 となり、Nc は 5 ターンとなります。
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<巻線の選定>
Np 巻線の断面積は、チョークコイルの実効電流値 IL(rms) [A]と巻線の電流密度[A/mm2]から選定
します。電流密度は使用する銅線の種類(単線もしくはリッツ線)、より本数などによって変わります。
図 23 に AC85V 入力時の IL(rms)を示します。こちらを参考にしてコイルメーカに問い合わせください。
IL(rms) v.s. Po
AC85V
6
5
IL(rms)[A]
4
3
2
1
0
50
100
150
200
250
300
350
400
Po[W]
図 23 AC85V 入力時の IL(rms)
4.2 MOSFET(Q111、Q121、Q131・・・)の選定
MOSFET の選定は、最大ドレイン電流 Idp にマージンをかけた値以上の定格電流の製品を選定してく
ださい。
なお、最終的には実機にてジャンクション温度を確認のうえで、MOSFET およびヒートシンクを決定して
ください。
製品定格電流および製品耐圧マージンについて、考え方の目安を以下に示します。
製品耐圧>Vo  1.25 [ V ] ・・・(8)
製品定格電流>Idp  1.25 [ A] ・・・(9)
Vo は出力設定電圧です。
4.3 出力ダイオード(D111、D121、D131・・・)の選定
出力ダイオードの選定は、目安として最大負荷電流 Io_max の 6~8 倍の定格電流値のダイオードを
使用してください。インターリーブ時は、Io_max を段数で割ることで 1 段あたりの電流に置き換えて選定
してください。なお、最終的には実機にてジャンクション温度を確認のうえで、ダイオードおよびヒートシン
クを決定してください。
4.4 バイパスダイオード(D141)の選定
バイパスダイオード(D141)の選定は、最大突入電流値に対してせん頭サージ順電流 IFSM が大きい
ダイオードを使用してください。最大突入電流値はパターンインピーダンスや入力電圧によって異なりま
すので、シミュレーションにて確認いただくか実機にて測定してください。
推奨部品例: D4F60(新電元工業)
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4.5 Z/C 端子周辺定数の調整
抵抗 R110 および Z/C-GND 間にコンデンサ C115 を追加することでオンタイミングを調整すること
が可能です(図 24)。共振期間(2.10 項 波形 1 参照)でのドレイン-ソース間電圧(Vds)が下限に達し
たタイミングでオンするように調整することでスイッチング損失を抑えることが出来ます。
C115 については 15pF 程度を目安に、R110 については以下の式(10)、(11)を参考に実機にて最
大入力電圧時の Vds を観測しながら調整ください。
オンタイミングを決める Z/C 端子の最大流入・流出電流は±5mA となっております。Z/C 端子へ流
れる電流を最大電流の 80%以下に抑えるため抵抗 R110 で調整する必要があります。
具体的には式(10)、(11)より算出された抵抗値 RZC より大きい抵抗値を選択してください。
◆ 制御巻線プラス側
L111
Np
Nc
R110
 Nc 
Vo  
  6.5
Np 

RZC  
4  10 3
・・・(10)
[Ω]
※6.5V は、ZC 端子内部ツェナー電圧
Z/C
5
◆制御巻線マイナス側
C115
図 24 . Z/C 端子周辺回路
RZC  
Nc 
 Vin( AC ) max 2   Np



 4  10 3
設計例として、Vo=400[V]、Vin(AC)max=276[V]、Np=50[Turn]、Nc=5[Turn]の時、
◆ 制御巻線プラス側 :
 5 
400     6.5
 50 
RZC  
 8.4[ kΩ]
4  103
◆ 制御巻線マイナス側 : RZC  
 276  2   505 

 4  103
  9.8[kΩ]
よって、ZC 制限抵抗 R110 は 9.8kΩ以上に設定します。
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- 24 -
[Ω] ・・・(11)
4.6 位相補償の調整 (R117、C113、C114)
マスタ IC のエラーアンプにはトランスコンダクタンス
アンプ(gm アンプ)を使用しています。位相補償調整
については、図 25 を参考にコンデンサと抵抗を接続
ください。
C114 は、計算式(12)より求めることができます。
カットオフ周波数 fc は 20Hz 程度を目安に設定してく
ださい。C113 は C114 の 10 分の1程度の容量を目
安に調整してください。
C114≒
140
2  fc
[ F ] ・・・(12)
図 25 . COMP 端子周辺回路
※アンプのトランスコンダクタンス値 140 [μA / V]
R117 は、抵抗値を大きくするとカットオフ周波数fc
以上の高い周波数領域でのゲインを調整する事が出来ます。ただし、抵抗値を大きくしすぎると波形
歪みの原因になりますので、1kΩ~10kΩを目安に調整してください 。
※推奨定数例: R117=1kΩ、C113=0.22μF、C114=2.2μF
また位相補償の調整につきましては、その他部品定数によって変わる可能性があります。上記算出
方法を目安に最終的には実機より動作波形および力率等を確認して調整してください。
4.7 出力電圧の調整 (R191~R196)
出力電圧は、外付けに接続する分圧抵抗により任意の電圧に設定することができます。電圧設定
の際には、外部に分圧抵抗(R191~R196)が必要になります。(図 26 参照)
エラーアンプ入力しきい値は 2.5V になっておりますので、式(13)より分圧抵抗値を決定してください。
なお、損失低減のため、上側分圧(R191~R195)抵抗値は 2MΩ程度を推奨いたします。(PFC 出力
電圧を約 400V とした場合。)
また、ノイズによる誤動作防止の為、FB-GND 間にはコンデンサ C191 を挿入してください。このコ
ンデンサはフィードバックの応答に影響しますので、1000pF~2200pF 程度にすることを推奨いたしま
す。
Vo
+
1
図 26 . FB 端子周辺回路
( R191  R192  R193  R194  R195 ) 
R196  (Vo  2.5)
2.5
[] ・・・(13)
なお、各抵抗の精度は出力電圧の精度に直結いたします。高精度抵抗品の選定を推奨いたします。
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- 25 -
4.8 過電流保護ポイントの調整 (R111、R121、R131・・・)
過電流保護ポイント Ps は過電流検出抵抗 R111(および R121、R131)により調整いたします。
R111(および R121、R131)の抵抗値は式(14)により決定してください。
Ps は、最大負荷電力 Pomax の 1.2~1.5 倍を目安としてください。過電流保護ポイントを大きくする
場合はチョークコイルの磁気飽和を十分考慮して設計してください。
R111( R121, R131)  VOCL 
η Vin(AC) min
 n [Ω] ・・・ (14)
2  2  Ps
VOCL は過電流保護電圧 0.5[V]、n はインターリーブ段数になります。
4.9 出力コンデンサ(C109)の選定
過電圧検出電圧(2.8.2 項 )は出力電圧の 1.08 倍で設定されます。出力コンデンサ(C109)の耐圧
は、この過電圧検出電圧+マージンを考慮してご選定ください。
Vo (OVP )  Vo  1. 08
[V ]
・・・(15)
C109 の容量は、出力容量と保持時間に応じて調整してください。
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- 26 -
5 保護機能に関する注意点
マスタ IC およびスレーブ IC に内蔵された各種保護機能は、アブノーマル等に起因する異常により IC
の機能が損なわれた状態では動作しません。IC の故障時には発煙・発火を防止するために、外部保護素
子・回路による保護が必要になります。保護機能に関する注意点を以下の項目に示します。
<過熱保護について>
マスタ IC は過熱保護機能を内蔵しておりますが、何らかのアブノーマルな状態による急峻な温度変
化に対しては、過渡熱抵抗により温度に追従できず過熱保護機能が動作しない場合があります。
また、熱の検出は IC 温度のみ検出しております。外付けのパワーデバイス(MOSFET やダイオー
ド等)の温度が上昇しても保護することができません。より安全にご使用いただくためには、別途、
パワーデバイスに温度検出および保護が必要となります。
スレーブ IC は、過熱保護機能を内蔵しておりません。アブノーマル時にスレーブ IC のみが異常発
熱する場合は、必要に応じて VCC 供給ラインに過電流保護素子を挿入してください。
<過電圧保護について>
マスタ IC は過電圧保護機能を内蔵しておりますが、何らかのアブノーマルな状態による電圧上昇に
対しては、過電圧保護機能が動作しない場合があります。より安全にご使用いただくためには、FB ラ
インとは別系統で出力電圧を検出しマスタ IC を停止させる外部回路による保護が必要になります。
なお、マスタ IC を停止させる手段としては、『2.9.2 項 リモート ON/OFF』をご参照ください。
外部過電圧保護回路例を図 27 に示します。
図 27 . 外部過電圧保護回路
<ダイオードショート保護について>
マスタ IC にはダイオードショート保護機能が内蔵しております。この機能は、何らかの異常時に出力
ダイオードがショートした場合にマスタ IC を停止させ、IC や MOSFET を 2 次破壊から守る保護機能
です。OCL の設定や外付け MOSFET の許容損失によっては、本保護機能が働く前に破損してしまう
可能性があります。その様なリスクを少なくする為に OCL の再設定や MOSFET の再選定をして頂く
か、万一破損してもヒューズ等の素子で安全に停止するようにしてください。
<スレーブ停止保護について>
IL_IN 端子と他の端子がショートした場合など何らかの異常時において、IL_IN 端子へのチャタリン
グノイズなどの影響でスレーブ停止保護が働かない場合があります。
異常時に IL_IN 端子へノイズが入らないようフィルタ定数を大きくするか、より安全にご使用いただく
ため、別途、パワーデバイスに温度検出等の保護を追加してください。
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- 27 -
6 パターンレイアウトの注意点
基板のパターン設計は電源特性を大きく左右します。MH2501SC/MH2511SC は大きな電圧・電流を
スイッチングさせます。そのためパターンの引き回しには十分な注意が必要になります。パターンのイン
ダクタンス成分によるノイズの発生などを最小限にするため、主回路のパターン設計は極力太く短くする
ことが重要になります。また、制御系のパターンは電界や磁界の影響を受けないように配線してください。
主要な項目ごとに注意点をまとめましたのでご参考にしてください。パターン設計後は必ず正常動作をし
ているか確認を行ってください。
6.1 主電流経路の配線
入力コンデンサプラス側からメインチョークと主スイッチを経由して、入力コンデンサの GND 側に戻
るライン(図 28 の紫→赤→紫と繋がるライン)、および MOSFET のドレインからダイオードを経由して
出力コンデンサを通り入力コンデンサの GND に戻るライン(図 28 の青→紫)は大電流スイッチングラ
インである為、ノイズが発生しやすいパターンになっております。この 2 点のパターンはできるだけ太く
短く配線するよう心掛けてください。
回路図
C109-1
C107-1
C111
6
R111
C121
6
C107-2
R121
C109-2
Di
L111
C107-1
D111
R111-1
R111-2
C111
Q111
C109-1
R111-1
R111-2
L121
D121
C121
C107-2
C109-2
Q121
R121-1
R121-2
R121-1
R121-2
C109-3
図 28 . 主電流経路の理想配線図
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- 28 -
6.2 GND の配線
GND の配線は電源動作の安定に大きく影響を与えます。大きな電流がスイッチングする際に GND
が影響を受けてしまうと IC の制御も影響を受けてしまいます。そこで 6.1 項 でご説明した大電流スイ
ッチングラインと IC の GND ラインは分離する様に心掛けてください。
具体的な GND 配線の要点としては以下になります。
(1) 各 IC 電流検出抵抗から入力コンデンサへの GND ラインは共通化せず各々個別に接続する
(2) 各 IC の GND は各電流検出抵抗の GND 側に一点接続する
(3) 各 IC の GND 同士は大電流スイッチング GND ライン(下図の赤ラインおよび青ライン)を介
さずにできるだけ短く接続する
(4) 共振コンデンサの GND 側と電流検出抵抗の GND 側は最短で接続する
※ 図 29 (1)~(4) 参照ください。
以上の点を意識して GND 配線を行ってください。
次頁に要点をふまえた GND 配線イメージを示します。パターンレイアウトの際の参考にしてください。
R111-2
C107-1
C111
L111
C109-1
8
C122
1
IC111
L121
C109-2
C107-2
C121
薄色:A 面
濃色:B 面
R121-1
R121-2
C109-3
8
C122
・・・(1)
・・・(2)
・・・(3)
・・・(4)
・・・その他
の GND
IC121
1
図 29 . GND パターンの設計例
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- 29 -
6.3 MOSFET 周辺部品の配線
MOSFET ゲートループの配線を長く引き伸ばしたりノイズの発生源に近づけすぎると寄生発振の原
因になります。ゲートループの配線を行うときは以下の要点を遵守するよう心掛けてください。
・マスタ IC およびスレーブ IC の OUT 端子から各 MOSFET のゲートまでの配線はできるだけ短く
する
・OUT 端子からゲートまでの配線は磁気部品(チョークコイルなど)から遠ざける
・MOSFET と共振コンデンサはなるべく近づけて配線し、共振コンデンサの GND は電流検出抵抗
の GND に接続する
・検出抵抗についてはインダクタンス成分の少ない抵抗を使用する
D
S
Di
G
Di
8
1
図 30 . MOSFET 周辺パターンの設計例
6.4 IC 周辺部品の配線
IC 周辺部品はできるだけ IC 端子直近に配置してください。制御を安定させるための部品としては、
Vcc 端子に接続するバックアップコンデンサ、COMP 端子に接続する位相補償用部品、FB 端子に接
続する出力電圧検出部品があります。またそれぞれの部品は、IC の GND 端子に出来る限り一点に
設置してください。(ピンク色の配線を参照願います)
8
Vcc
バックアップコンデンサ
出力電圧検出部品
1
IC の GND パターン
は 6 番ピン最短接続
位相補償用部品
図 31 . IC 周辺パターンの設計例
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6.5 参考パターンレイアウト
6.5.1 A 面
L111
D111
C107-1
C111
Q111
C109-1
R111-1
R111-2
C112
L121
D121
C121
C107-2
C109-2
Q121
R121-1
R121-2
C107-3
L131
C109-3
C122
D131
C131
Q131
C109-4
R131-1
R131-2
C132
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6.5.2 B 面
Di
8
1
8
1
8
1
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MH2501SC/MH2511SC
アプリケーションノート Ver.1.0
制作:電子デバイス事業部 第二開発部
作成日:2012 年 7 月 25 日
新電元工業株式会社
SHINDENGEN ELECTRIC MFG. CO. , LTD
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