USB2.0対応小型コネクタ(DD1シリーズ)の開発

技術紹介 3 USB 2.0 対応小型コネクタ(DD1シリーズ)の開発
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技術紹介
(DD1シリーズ)の開発
3 USB 2.0 対応小型コネクタ
Development of Connector for USB 2.0
黒木 佳英
Yoshihide Kuroki
コネクタ事業部
技術二部
キーワード: コネクタ、モバイルコンピューター、USB、高速伝送
Keywords : Connector, Mobile Computer, USB, High-speed Transmission
要 旨
SUMMARY
近年、 PC とその周辺機器間を結ぶインターフェイ
Today, speeding up of interface linking PC with
its peripheral devices is advancing for supporting
large volume data such as picture or moving image.
Thus, USB2.0 that enables more high-speed data
transmission is getting attention. For responding
to the strong demand for the connector supporting
USB2.0 even in the mobile device market, JAE has
developed the DDI series, miniature connector with
multi-pins, compliant with USB2.0 standard. We
succeeded in miniaturizing the DDI series (0.5mm
pitch) while keeping the mechanical strength and
confirmed the series to meet the USB2.0 transmission
specification.
スは、 写真や動画などの大容量データに対応すべく
高速化が進んでおり、 より高速なデータ転送速度を
可能とする USB2.0 への注目が高まっております。
こうしたなかモバイル機器市場においても、 USB2.0
へ対応するコネクタの要求が高いことから、 航空電
子では USB2.0 規格に対応した多芯数小型コネクタ
DD1 シリーズを開発しました。 この DD1 シリーズは
機械的強度を確保しつつ小型化 (0.5mm ピッチ) を
実現し、 USB2.0 伝送規格に対応できることが確認さ
れました。
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1 まえがき
カメラ付携帯電話・PDA など近年のモバイル機器は多機能化が進むにつれ、 取り扱う
データ量も飛躍的に増えております。こうしたなか USB2.0 は、より大容量で高速なデー
タ転送を実現し、今やモバイル市場において USB2.0 対応は必須となっております。これ
らのモバイル機器のインターフェイス用コネクタは、多様な通信機能をサポートする為、多
芯化の傾向にあるとともに機械的強度を確保しつつ小型化、 ロープロファイル化に対する
要求条件も非常に厳しくなっています。
また USB2.0 規格にはない製品体系として、 レセプタクル及びケーブルプラグ以外にク
レイドルタイプの採用も求められております。
今回このようなニーズに応える為に、 USB2.0 対応 0.5mm ピッチ・ロープロファイル
小型コネクタ「DD1 シリーズ」の開発を行いましたので、ここに紹介します。
2 開発要求条件
本コネクタの主な開発要求条件については以下の通りです。
(1)小型化 ・ レセプタクルコネクタの実装高さは 3.0mm 以下のこと
・ 30 芯で 0.5mm ピッチシングルライン SMT タイプ
(2)活線挿抜対応(コンタクトNo .1、 2、15、16、 29、 30)
(3)機械的強度(ロック強度)の確保
(4)USB2.0 伝送規格対応
(5)グランドコンディションの強化
図 1 に本開発コネクタDD1シリーズの外観図を示します。
製品体系として、ケーブルプラグ以外に基板対基板用のクレイドルタイプを採用しており
ます。
クレイドル
レセプタクル
ケーブルプラグ
図 1 DD1シリーズ外観図
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3 製品の特徴
3.1 小型化・活線挿抜対応
ケーブルプラグを有するコネクタの場合、 人間の手により嵌合挿抜が行われる為、 斜め
に嵌合した場合の影響も考慮する必要があります。狭ピッチになればなるほど、 斜め嵌合
やこじりの際に隣接する端子と短絡または座屈といった問題を起こす可能性が高くなり、
多芯数コネクタにおいて両端に活線端子を設けた場合、 正常な活線順番が確保しづらくな
ります。そこで本コネクタでは、上記問題を解消するためガイドレール機構というものを設
けました。(図 2)このガイドレールにより、 斜め嵌合時においても傾きが矯正され、 図 3
のように最大傾き角度が小さくなります。その結果 0.5mm ピッチと小型化を実現しつつ、
多芯数ながら活線挿抜に対応することが可能となりました。
レセプタクル
ガイドレール
レセプタクル
ガイドレール
ケーブルプラグ
最大10°
最大5°
図 2 ガイドレール機構
ガイドレールなし
ガイドレールあり
図 3 最大傾き比較
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3.2 機械的強度(ロック強度)の確保
コネクタの小型化への要求が厳しくなるなか、 ロックに対する機械的強度は、 現行の携
帯電話やPDA同等以上のものが要求されております。従来のロック形状の場合、 ロック
爪部が爪のすぐ根元で折り返し形成されている為、 根元部分の強度がどうしても弱くなり
ました。(図 4) 本コネクタでは、 ロック爪部を引掛り位置から離れたところで折り返して
いるため、爪の根元部の強度アップが図れ、開発要求条件を満足することができました。
(図 5)ロック仕様と従来品と開発品のロック強度比較を図 6、表 1 に示します。
爪の根元で折り返している
爪から離れたところで折り返す
図 4 従来のロック形状
表 1 ロック強度比較
図 5 DD1のロック形状
(N)
従来品
DD1
垂直
76
98
左
35
90
右
30
85
上
42
48
下
44
46
↑右
→垂直
↓左
ケーブルプラグ
↑上
→垂直
【要求仕様】
垂直方向:50N以上
上下左右方向:30N以上
↓下
図 6 ロック強度要求仕様
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3.3 USB 2.0 伝送規格対応
高速伝送対応とするコネクタの場合、その電気的特性を左右する要因の一つとして、 特
性インピーダンスの整合が挙げられます。
より高速な信号であればあるほど、インピーダンス整合は重要となり、インピーダンスの
不整合は回路の誤作動やノイズ発生の原因にもなり得ます。
今回、 DD1 シリーズの開発では伝送シミュレーションを駆使し、 最適なコンタクト形状
を導きました。具体的には、 低インピーダンス区間の形状をシミュレーションで見直し、
高インピーダンスの補償線路区間を設けて全体のバランスを整え、 さらに伝送路をできる
限り短くしました。これにより、インピーダンスは図 7 のような結果が得られました。
USB2.0 規格では、 立ち上がり時間が 500ps となっておりますが、 DD1 コネクタで
は 200ps とより厳しい条件においてもインピーダンス規格 90 Ω± 15%を満足するこ
とが確認されました。
Rise Time:200ps
[Ω]
Rise Time:200ps
[Ω]
97.4Ω
89.2Ω
103.5Ω
103.5Ω
76.5Ω
76.5Ω
84.3Ω
80.5Ω
クレイドル
100[ps/div]
ケーブルプラグ
100[ps/div]
図 7 インピーダンス波形(規格90Ω±15%)
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3.4 グランドコンディションの強化
信号の高速化に伴い、コネクタにおいては EMI 対策の強化が必要となってきます。特に
ケーブルプラグについては、ケーブルのシールドとコネクタのグランド間の接触をいかに安
定させるかが重要であるため、 本開発品では、 図 8 のように外部スリーブと内部スリーブ
というものを設け、ケーブル側のシールドとプラグ側のシェルをスリーブで一緒にクランプ
することにより、グランドコンディションの強化を行いました。
内部スリーブ
シェル
外部スリーブ
編組
図 8 クランプ断面
4 むすび
今後モバイル機器は、多様化・ 多機能化が進むなか、小型化で堅牢はもちろんのこと高
速伝送対応が要求されてくると思われます。今回紹介しました USB2.0 対応小型コネクタ
DD1 シリーズは、 USB2.0 伝送規格を満足することが確認され、 0.5mm ピッチと小型
化を実現することができました。
今後は市場のニーズに幅広く対応できるように、 芯数展開及び製品展開を進めて行き、
USB2.0 対応製品のバリエーションを増やしていく予定です。
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