フジクラ半導体圧力センサ テクニカルノート 半導体圧力センサの使い方 1.定電流駆動回路 弊社の圧力センサには定電流駆動をおすすめ致します。図 1 は基本的な定電流駆動回路です。定電圧ダ イオードなどの定電圧素子でつくられた 基準電圧(Vref)は、OP アンプ(A1)の非反転端子に印加されます。こ こで定電圧素子の代 わりに分割抵抗により基準電圧をつくる安価な方法もありますが、その場合電源電圧 (Vcc)の変動が定電流特性に影響しますので高精度を要求される場合にはおすすめでき ません。OP アンプ の反転端子電圧は基準電圧と等しいと考えられますので、定電流(I) とそのときの OP アンプの出力電圧(VA) は I= Vref R2 ….. [1] VA1 = Vref + I × Rb = I × ( R 2 + Rb) ….. [2] ここで Rb はブリッジ抵抗 電源電圧(Vcc)は VA1 よりも十分高いことが要求されます。センサチップが圧力 による歪を受けないとき、 各出力端子電圧(V1,V2)は次式で表されます。 V 1 = V 2 = Vref + I × Rb Rb = I × (R2 + ) 2 2 ….. [3] 図 2 は FPM タイプを使用した基本的な回路です。LM385-1.2 の基準電圧は, 1.235V で温度ドリフトは 150ppm/℃です。したがって R2 両端の電圧も 1.235V となり、FPM の駆動電流を流す為に R2 は R2 = 1.235V = 820Ω 1.5mA FPM のブリッジ抵抗は 4000 から 6000Ωですので VA1 の最大値は VA1 max = 1.5 × (820 + 6000) = 10.23 そこで電源電圧(Vcc)は 12V とします。LM385-1.2 の動作電流を 1mA 程度にするため R1 は R1 = 12V − 1.235V = 10kΩ 1mA 株式会社フジクラ センサ部 〒135-8512 東京都江東区木場 1-5-1 電話 03-5606-1072 Fax 03-5606-2418 E-mail : [email protected] フジクラ半導体圧力センサ テクニカルノート ゼロバランストリマーが接続出来るように FPM はブリッジ回路の一端がオープンになっています。ゼロ調整を この点で行わずに後段の増幅回路で行うときは、図 1 のように接続して使用することも可能です。 Vcc 12VDC R1 10k Vref + ZD 1.235V I A1 - LM385 -1.2 VA1 + I=1.5mA A1 - Zero balance trimmer V1 SENSOR SENSOR V1 1.235V Vref V2 V2 R2 820 Fig.1 Constant current source Fig. 2 Basic circuit for type FPM 2.定電圧駆動回路 先にも述べた通り、弊社の圧力センサには定電流駆動をおすすめしますが、一方定電圧駆動をお望みの場 合もあるかもしれません。一例として基本的な定電圧駆動回路を図 3 に示します。この場合ご注意して頂きた いのは後述する温度特性が、定電流駆動に比べて悪くなるということです。詳しくは4-2をご参照ください。 12VDC VR 5k *** Example for FPM sensor *** I SENSOR V' Vcc: Bridge resistance: I: R1: V': VR: V1 V2 12VDC 4,000 ~ 6,000 ohm 1.5mA 100 ohm 150mV 1,900 ~ 2,500 ohm or Vcc: VR: Bridge resistance: R1: I: 7.5VDC 0 ohm 4,000 ~ 6,000 ohm 0 ohm 1.9 ~ 1.3mA R1 Fig. 3 Basic circuit of constant voltage source 株式会社フジクラ センサ部 〒135-8512 東京都江東区木場 1-5-1 電話 03-5606-1072 Fax 03-5606-2418 E-mail : [email protected] フジクラ半導体圧力センサ テクニカルノート 3.増幅回路 センサの出力電圧は微少でしかも差動出力型式ですので、差動増幅器を用いて信号の増幅とシングル出 力への変換を行います。簡単な差動増幅回路を図 4 に示しま す。ここで出力電圧(Vout)は次式で表されま す。 Vout = R5 × (V 1 − V 2) ….. [4] R3 R5 SENSOR V1 R3 + Vout A2 - V2 R4 R3 = R4, R5 = R6 R6 Fig. 4 Simple differential amplifier 図 4 で示された差動増幅回路は入力インピーダンスが十分に高いとはいえないためにセンサ特性に多少なり とも影響を与えてしまいます。そこで精度を求める場合 は図 6 に示すような高入力インピーダンスのインスツ ルメンテーションアンプを使用します。この図で各出力電圧 VA2,VA3,Vout は次のように表されます。 VA2 = V 1 + R5 × (V 1 − V 2) …..[5] VR1 VA3 = V 2 − R5 × (V 1 − V 2) VR1 Vout = …..[6] 2 × R3 R7 R7 × (VA2 − VA3) = × (1 + ) × (V 1 − V 2) R5 R5 VR1 …..[7] もしも+方向へのレベルシフトが必要なときは、A4の非反転端子にシフト電圧(Vshift)を加えて下さい。そのと きの出力電圧は Vout = R7 2 × R3 × (1 + ) × (V 1 − V 2) + Vshift R5 VR1 …..[8] 株式会社フジクラ センサ部 〒135-8512 東京都江東区木場 1-5-1 電話 03-5606-1072 Fax 03-5606-2418 E-mail : [email protected] フジクラ半導体圧力センサ SENSOR V1 テクニカルノート Vcc + R5 A2 - R7 Vshift R3 + A4 R4 V2 A3 + R6 R8 R3 = R4, R5 = R6, R7 = R8 Fig. 5 Instrumentation amplifier FPM-07PG(R)を用いたときの回路定数は次のようになります。 ◆FPM-07PG(R)の電気特性 圧力レンジ-0.492~+0.492Kg/cm2(ゲージ圧) センサ出力-100~+100mV(代表値 I=1.5mA) ◆増幅器の仕様 電源電圧 12VDC 出力電圧 1~9V 利得=(1~9V)/(-100~100mV)=8V/200mV=40倍 R3=R4=R5=R6=R7=R8=10K VR1=2k (出力電圧が 1~9Vになるように調整) Vref=1.235V (図 2 参照) VR2=10k (Vsift が 5V になるように調整) ・全ての抵抗は 1/4W で 1%精度のものをおすすめします。 ・温度補償回路については、次以降を参照下さい。 株式会社フジクラ センサ部 〒135-8512 東京都江東区木場 1-5-1 電話 03-5606-1072 Fax 03-5606-2418 E-mail : [email protected] Vout フジクラ半導体圧力センサ テクニカルノート 出力特性を示します。 Output characteristic Vout (V) V1-V2 (mV) 9 +100 7 5 +/-0 3 -100 1 -0.492 +/-0 +0.492 Gauge pressure (kg/cm2) 4.温度補償 ピエゾ抵抗式圧力センサは、それ自身温度特性を持っていますので高精度の計測が必要な場合は温度補 償を行って下さい。温度特性には、オフセット電圧温度特性(Temperature Characteristic of Offset 略して TSO)、感度温度特性(Temperature Coefficient of Span output 略して TCS)があります。以下それぞれの温度 特性の補償方法について述べます。 4-1 オフセット電圧温度特性(TSO) TSO はセンサが圧力を受けない状態、すなわちチップが無歪の状態におけるブリッジ不平衡電圧の温度特 性で、次の事柄がその原因となっています。 1. (a)センサを構成する材料間の熱膨張係数の違い。例えば、シリコンチップと台座ガラス、シリコンチップ とパッケージなど。 2. (b)シリコンチップ表面におけるシリコン、シリコン酸化膜、アルミ配線の熱膨張係数の違い。 3. (c)ブリッジを構成する4つのピエゾ抵抗素子の温度係数のばらつき。 4. (d)ピエゾ抵抗素子の抵抗値のばらつき。 株式会社フジクラ センサ部 〒135-8512 東京都江東区木場 1-5-1 電話 03-5606-1072 Fax 03-5606-2418 E-mail : [email protected] フジクラ半導体圧力センサ テクニカルノート TSO の補償のため、ピエゾ抵抗素子に金属皮膜抵抗器のような温度係数の小さい抵抗器を並列に接続しま す。図 6 の接続で抵抗値を決定するための手順を以下に述べます。 CC SENSOR Rp1 Rp2 Vout Rp1, Rp2: Low temperature drift resistor (Metal film type or similar type is recommended) Fig. 6 Connection for TSO compensation ・ (p,t)は、圧力が p で、温度が t のときのセンサ出力電圧を表します。 ・ p0 は、圧力がない状態を表します。例としてV(P0)はオフセット電圧を表します。 ・ tc は、動作温度範囲の下限を表します。同様に th は、上限を表します。 (1) 次の 10 点におけるセンサ出力電圧を測定します。 Output Rp1 Rp2 V1=V(p0,tc) open open V2=V(p0,tc) 500k open V3=V(p0,tc) 1M open V4=V(p0,tc) open 500k V5=V(p0,tc) open 1M V6=V(p0,th) open open V7=V(p0,th) 500k open V8=V(p0,th) 1M open V9=V(p0,th) open 500k V10=V(p0,th) open 1M 株式会社フジクラ センサ部 〒135-8512 東京都江東区木場 1-5-1 電話 03-5606-1072 Fax 03-5606-2418 E-mail : [email protected] フジクラ半導体圧力センサ テクニカルノート (2) それぞれの補償抵抗の条件における温度ドリフトを計算します。 TCV1=V6-V1 TCV2=V7-V2 TCV3=V8-V3 TCV4=V9-V4 TCV5=V10-V5 (3) TCV の点をプロットし、図 7 のようなグラフを作成します。 TCV+ Rp1=500k Rp2=open 1M open open open open 1M TCV5 TCV4 open 500k TCV3 TCV2 TCV1 cross point Fig. 7 Rp1, Rp2 vs. TCV (4) 求める抵抗値はX軸との交点にあります。図 7 では、Rp1 はオープン、Rp2 は約 750KΩと推定されます。 4-2 感度温度特性(TCS) TSC はセンサの動作温度と出力スパン電圧との関係です。これは次に挙げる事柄に影響されます。 (a)ピエゾ抵抗素子の表面不純物濃度 (b)ピエゾ抵抗素子の方位 (c)負荷抵抗の値 ここでは、(a)と(c)の詳細について述べます。 株式会社フジクラ センサ部 〒135-8512 東京都江東区木場 1-5-1 電話 03-5606-1072 Fax 03-5606-2418 E-mail : [email protected] フジクラ半導体圧力センサ テクニカルノート 4-2-1 ピエゾ抵抗素子の表面不純物濃度の影響について TCS はピエゾ抵抗素子の表面不純物濃度に大きく依存します。定電流駆動における TCS と表面不純物濃度 の関係は図 8 のようになります。図からわかるように 表面不純物濃度を制御することで TCS を最適化するこ とが可能です。 -3 TSC x 10 (/degC) 1.0 0.5 0 -0.5 -1.0 -1.5 -2.0 18 19 10 10 20 10 21 10 atom/ cm3 Fig. 8 Relation between temperature coefficient of the pressure sensitivity and impurity surface concentration 図 9 は表 面不純物濃度が 2 × 10 atoms / cm のときの温度ドリフトを示しています。定電流駆動における温 20 3 度ドリフトは、定電圧駆動の場合よりも小さいことがわかり ます。よりいっそうの温度補償を要求される場合 は次ページに述べる外部負荷抵抗を用いる方法をおすすめします。定電圧駆動における温度ドリフトは、図 9 に示されるように直線的でしかも定電流駆動に比べて大きなものです。そのため、温度補償にはマイクロプロ セッサなどの能動素子が用いられます。 株式会社フジクラ センサ部 〒135-8512 東京都江東区木場 1-5-1 電話 03-5606-1072 Fax 03-5606-2418 E-mail : [email protected] フジクラ半導体圧力センサ テクニカルノート Constant current (CC) % Constant voltage (CV) % 0.4 4 CV CC 2 0.2 0 0 -2 -0.2 -4 -0.4 -10 0 10 20 30 40 50 Fig. 9 Temperature drift of pressure sensitivity for voltage and current drive 4-2-2 外部負荷抵抗の影響について 負荷抵抗を接続した回路を図 10(a)に示します。増幅器のような外部回路 がある場合、その入力インピーダ ンスが負荷抵抗としてセンサの出力端子に接続されていると考えられます。 CC SENSOR Rb RL SV' RL SV' SV Fig. 10(a) Circuit with load resistor RL Fig. 10(b) Equivalent circuit TCS は図 11 が示すように負荷抵抗によって変化し、そして TCS を補償する最適な負荷抵抗を求めることが出 来ます。ここで注意していただきたいのは、負荷抵抗のない状態での TCS が温度に対して負の特性であると き、負荷抵抗による温度補償が出来ないことです。 株式会社フジクラ センサ部 〒135-8512 東京都江東区木場 1-5-1 電話 03-5606-1072 Fax 03-5606-2418 E-mail : [email protected] フジクラ半導体圧力センサ テクニカルノート TCS (%FS) 0.6 RL=open 0.4 RL=50k 0.2 0 -0.2 RL=20k -0.4 RL=10k -0.6 -10 0 20 10 30 40 50 Fig. 11 Example of the relation between RL and TCS 図 10(b)は、(a)の等価回路です。これをもとに負荷抵抗の値は次式で求められます。 RL = SVc × Rbh − SVh × Rbc SVh − SVc …..[9] ここで Svc:動作温度範囲下限の時の出力スパン電圧 Svh:〃上限〃 Rbc:動作温度範囲下限の時のブリッジ抵抗 Rbh:〃上限〃 負荷抵抗を接続して温度補償を行うとき、出力スパン電圧はセンサ単体のときに比べて減少しますので、ご 注意下さい。 SV ' = RL × SV Rb + RL …..[10] 株式会社フジクラ センサ部 〒135-8512 東京都江東区木場 1-5-1 電話 03-5606-1072 Fax 03-5606-2418 E-mail : [email protected] フジクラ半導体圧力センサ テクニカルノート - 使用例 1 - [ マノメータ(アナログ出力) ] 12VDC 10k Vref 1.235V I=1.5mA + A1 LM385 -1.2 2 - 3 V1 12VDC + SENSOR FPM-**PG(R) 10k A2 6 10k Vshift 10k - 200 10k 1 + 2k 5 A4 - 820 10k V2 A3 10k 10k + [ 圧力スイッチ出力例 ] NPN open collector Output input 1 - 5V + A5 10k - 12VDC 10k [ 電流出力例 ] 12VDC input 1 ~ 5V + A5 - 10k Iout = input/250 = 4 ~ 20mA RLmax = 200 250 株式会社フジクラ センサ部 〒135-8512 東京都江東区木場 1-5-1 電話 03-5606-1072 Fax 03-5606-2418 E-mail : [email protected] Output 1 ~ 5V フジクラ半導体圧力センサ テクニカルノート - 使用例 2 - [ 気圧計(アナログ出力) ] 12VDC 10k Vref LM385 -1.2 1.235V + I=1.5mA A1 - 5 6 1 V1 SENSOR FPM-15PA(R) 12VDC + 10k A2 4 - 10k Vshift 10k 10k + A4 2k 2 - 820 10k - 10k A3 V2 + Vout (V) 8 7 6 5 4 -680 0 +680 1,033g/cm2.abs 株式会社フジクラ センサ部 〒135-8512 東京都江東区木場 1-5-1 電話 03-5606-1072 Fax 03-5606-2418 E-mail : [email protected] 10k Output 4 ~ 8V フジクラ半導体圧力センサ テクニカルノート - 使用例 3 - [ 真空計 ] 6 5 4 1 2 3 Pressure Sensor XFPM-100KPGV Q3 Q2 Q1 PIC16C711-04/P RA2 4.7k 5V RA1 RA3 RA0 RA4 OSC1 MCLR OSC2 Vss Vdd RB0 RB7 RB1 RB6 RB2 RB5 RB3 RB4 15pF 680pF 0.01uF XT 4MHz 15pF 5V 0.1uF 5V 4.7uF 300 a b c d e f g -99~0kPa.gauge LED1~LED3 7 segment display Common cathode Q1~Q3 Small signal NPN transistor 4.7k RA1 4.7k RA2 4.7k RA3 株式会社フジクラ センサ部 〒135-8512 東京都江東区木場 1-5-1 電話 03-5606-1072 Fax 03-5606-2418 E-mail : [email protected] フジクラ半導体圧力センサ テクニカルノート - 使用例 4 - [ 気圧計(デジタル表示) ] 5V PIC16F84-10/P 5V 22pF RA2 0.1uF RA1 RA3 RA0 RA4 OSC1 MCLR OSC2 4.7k XT 4MHz MAX-187 4.7uF Vss Vdd RB0 RB7 5V 22pF Vdd SCLK Vin CS RB7 RB1 RB6 SHDN Dout RB2 RB5 REF GND RB3 RB4 CS 0.1uF 4.7uF 4.7uF 30 0 5V a 680pF Pressure Sensor XFPM-115KPA 150 ~ 1150hPa : 0.2 ~ 4.7V b c d e f g 0.01uF 6 5 4 LED1~LED4 7 segment Display Common cathode 1 2 3 hPa Q1~Q3 Small signal NPN transistor 4.7k RA0 4.7k RA1 4.7k RA2 4.7k RA3 フジクラ半導体圧力センサ テクニカルノート - 2011.10.1 - 株式会社フジクラ センサ部 〒135-8512 東京都江東区木場 1-5-1 電話 03-5606-1072 Fax 03-5606-2418 E-mail : [email protected]