[AP4303A] AP4303A USB入力対応1A Li-ionバッテリーチャージャIC 概 要 AP4303Aは、1セル・リチウムイオン電池用の充電制御 IC です。 AP4303Aで充電制御に関わる機能(定 電流・定電圧制御、各種異常停止等)を実現します。USBの規格に準拠するための入力電流制限回路を内蔵 し、高速に充電できるようスイッチング方式の電圧、電流制御を備えています。 NTCサーミスタによりリチウムイオン電池温度を監視し、温度に応じた充電電流、充電電圧の制御が可能 で、リチウムイオン電池の安全規格に対応しています。 AP4303Aは、ポータブル機器のリチウムイオン電池の充電制御に最適です。 特 長 □ 電源電圧範囲 4.25 ~ 5.75V ・絶対最大定格12V □ 使用温度範囲 -30 ~ 85C □ 定電圧充電電圧精度 ±2.0% (TA=-30 ~ 85C) □ 入力電流制限精度 ±5% □ 急速充電電流精度 ±10% □ 最大充電電流 1A □ スイッチング周波数 1.5MHz □ 1次側電源の供給能力内で充電を行うように、電源電圧を監視しながら、入力電流制限を自動調整 □ リチウムイオン電池に最適な充電動作 ・スイッチングDC / DC コンバータによる定電流充電、定電圧充電 ・3段階定電流充電、外付け抵項で充電電流を設定可能 過放電充電(トリクル充電1) 予備充電(トリクル充電2) フル定電流充電(急速充電) □ NTCサーミスタによる電池温度監視、制御機能内蔵(JEITA対応) □ 保護機能 : 入出力過電圧保護、低入力停止機能、セーフティタイマー、過熱保護、カレントリミット □ 少ない外付け部品 : 上下パワーMOSFET 内蔵で省スペースを実現 □ 小型薄型パッケージ : WLCSP24ピン(2.04mm 2.04mm) □ アプリケーション : 1セル・リチウムイオン電池搭載ポータブル機器 MS1498-J-00 -1- [AP4303A] ブロック図 USB_S USB コネクタ 及び Input Voltage Sense 接続回路例 Internal Regulator VR 1μF VUSB BT 4.7μF USB_ON 0.01μF Input Current Control Input Voltage Control 0.01μF PWM Control 2.2μH (注1) SW ILSET PGND 10kΩ ILIM_SEL0 ILIM_SEL1 μP VOUT Charging Port Detection 10μF Charge Control Battery Monitor CEB LED Control Logic 10kΩ TREF GND 10kΩ ICSET 図 1 マイクロ・プロセッサーを使用する場合の接続例 (入力電流制限、充電電流制限 1000mA 設定) MS1498-J-00 -2- Battery Pack TEMP 1μF TEST[1, 2] System Load 10kΩ [AP4303A] USB_S Input Voltage Sense Internal Regulator VR 1μF 30V耐圧用オプション USB コネクタ VUSB BT 4.7μF USB_ON 0.01μF Input Current Control Input Voltage Control 0.01μF PWM Control 2.2μH (注1) SW ILSET PGND 10kΩ ILIM_SEL0 ILIM_SEL1 VOUT Charging Port Detection 10μF Charge Control Battery Monitor CEB LED System Load Control Logic Battery Pack TEMP 10kΩ 10kΩ TREF 1μF TEST[1, 2] GND 10kΩ ICSET 図 2 入力 VUSB 30V 対応の接続例 (入力電流制限、充電電流制限 1000mA 設定) (注1)推奨型番 DFE252010C/12C 2R2(TOKO), TFM201610G 2R2(TDK), VLS252012MN 2R2(TDK) MS1498-J-00 -3- [AP4303A] ピン配置 LED TEST2 VOUT BT BT ILSET TEST1 VOUT PGND PGND ICSET ILIM_ SEL0 CEB SW SW TREF ILIM_ SEL1 VUSB VUSB TEMP GND VR USB_ON USB_S 1 2 3 4 5 E D C B A 図 3 ピン配置 (Top View) MS1498-J-00 -4- [AP4303A] 入出力端子・機能 表 1 端子機能説明 PIN位置 端子名称 タイプ I/O 端子機能説明 (注1) (注2) PWR I USB電源端子 B4,B5 VUSB A4 USB_ON A O USB電源過電圧保護ゲート出力 A5 USB_S A I USB検出端子 C3 CEB D I 充電イネーブル端子 D1 ILSET A I 入力電流制限調整端子 C1 ICSET A I 充電電流制限調整端子 C2 ILIM_SEL0 A I/O USB D+端子 B2 ILIM_SEL1 A I/O USB D-端子 備考 オプション 内部でVRの電位に プルアップ (注3) E1 LED D LED Driver 出力端子 O Nchオープンドレイン 出力 A2 GND GND - グランド端子 B1 TREF A O NTCサーミスタバイアス電圧 A1 TEMP A I 電池温度検出用接続端子 D3,E3 VOUT A I/O DC/DC出力端子 D4,D5 PGND GND - グランド端子 C4,C5 SW A O コイル接続端子 E4,E5 BT A I ブートストラップ端子 A3 VR PWR O 内部参照電源端子 D2 TEST1 - - テスト用端子 E2 TEST2 - - テスト用端子 (注1) (注2) (注3) (注4) A(アナログ端子)、D(デジタル端子)、GND(グランド端子)、PWR(パワー端子) I(入力端子)、O(出力端子)、IO(入出力端子) LED表示結果は、後述の6項を参照して下さい。 実使用時、必ずGNDに接続して下さい。 MS1498-J-00 -5- (注4) (注4) 内部でプルダウン [AP4303A] 絶対最大定格 表 2 絶対最大定格 項目 端子電圧 記号 Min Max 端子 備考 単位 S -0.3 30.0 VUSB_S - V VVUSB -0.3 12.0 VUSB - VUSB VUSB VBT BT VSW SW VR 保存温度範囲 許容損失 -0.3 5.5 VR VCEB CEB VILIM_SEL0 ILIM_SEL0 VILIM_SEL1 ILIM_SEL1 VLED LED VVOUT VOUT VTREF 接合温度 USB_ON ON -0.3 1.98 TREF VTEMP TEMP VILSET ILSET VICSET ICSET - - TJ - 150 - - C TSTG -40 150 - - C PD - 1.5(注) - - W (注) TA(IC周囲温度)=25C以上では、19mW/Cで減衰します。 パッケージ熱抵抗 : θJA=55C/W、基板 : 76.2x76.2mm t=1.6mm タです。 MS1498-J-00 -6- FR-4 4層基板に実装時のデー [AP4303A] 推奨動作条件 表 3 推奨動作条件 項目 記号 条件 Min Typ Max 単位 電源電圧 VVUSB 4.25(注) - 5.75 V 動作温度 TA -30 - 85 C (注) 起動時に必要な最低電圧値。入力電流制限値を越えない範囲で、充電中に設定通りの急速充電電 流を得るためには、定電圧充電電圧+0.55V 以上のVUSB端子電圧が必要です。 外付け部品は、ブロック図 及び 接続回路例の項に記載の接続位置と定数を推奨します。推奨しない条件 で使用したICは、動作保証対象外となります。 電気的特性 表 4 電気的特性 特に指定が無い限りTA = 25C, VVUSB = 5.0V 項目 記号 条件 Min Typ Max 80 95 100 450 475 500 900 950 1000 3.65 3.95 4.25 単位 VUSB端子機能 VUSB端子入力電流制限値 VUSB端子低電圧誤動作保護 解除電圧 VUSB端子低電圧誤動作保護 検出電圧 IILIM 100mA設定 (RILSET=100 kΩ) 500mA設定 (RILSET=100 kΩ) 1000mA設定 (RILSET=100 kΩ) VIUVLO_REL 保護状態からの解除電 圧 VIUVLO VUSB端子低下検出電圧 VILVD VUSB端子過電圧保護検出電圧 VIOVP VUSB端子過電圧保護解除電圧 VIOVP_REL 通常動作状態から保護 VIUVLO_REL VIUVLO_REL VIUVLO_REL への電圧 -0.3 -0.2 -0.1 通常動作状態から検出 への電圧 保護状態からの解除電 圧 MS1498-J-00 -7- mA V V - VIUVLO_REL +0.05 - V 5.75 6.25 6.75 V VIOVP -0.3 VIOVP -0.2 VIOVP -0.1 V [AP4303A] 項目 記号 条件 Min Typ Max 単位 - 244 551 485 970 mΩ DC/DC降圧コンバータ IILIM=1000mA設定 トップ側オン抵抗 (VUSB-SW端子間) RONT ボトム側オン抵抗 (SW-PGND端子間) RONB - - 450 mΩ スイッチング周波数 fOSC - 1.5 - MHz サイクル毎電流制限値 CILIM 1.8 1.1 2.4 1.6 3.2 2.3 A 4.150 4.175 4.200 4.091 4.175 4.259 V 充電制御 定電圧充電電圧 (VOUT端子) トリクル充電電流 1, 2 IILIM=100, 500mA設定 IILIM=1000mA 設定 IILIM=100, 500mA 設定 注:充電制御の機能は、3.1 項を参照 VCV TA=-30 85C (全数検査対象外) ITRKL1, 2 100mA設定 67 84 100 mA 急速充電電流 IFCHG 1000mA設定 800 900 1000 mA 急速充電ソフトアップ電流 ICSSW - 0.1*IFCHG - mA/ms 満充電検出電流 (IEOC=0.1*IFCHG) IEOC -10 -15 - 10 15 % 再充電開始電圧 VRECH VCV-0.3 VCV-0.2 VCV-0.1 V VCC 2.9 3.0 3.1 V トリクル充電閾値電圧 VTRKL 1.7 1.8 1.9 V VOUT過電圧検出電圧 VOOVP 充電タイマー精度 dTCHG 電池接続端子リーク電流 IBATQ 急速充電開始電圧 IEOC=100mA IEOC<100mA VCV+0.25 VCV+0.4 VCV+0.55 電源未接続 V -10 0 10 % - - 5 μA 電池接続検出 注:電池接続の機能は、3.1 項を参照 電池接続検出下限電圧 (TEMP端子電圧をモニター) VTEMP_BOT VTREFとの比率 2.5 5.0 7.5 % 電池接続検出上限電圧 (TEMP端子電圧をモニター) V TEMP_TOP VTREFとの比率 92.5 95 97.5 % MS1498-J-00 -8- [AP4303A] 項目 NTC温度モニター 記号 条件 Min Typ Max 単位 注:温度値は、B常数がB25/50=3370K,B25/85=3413Kのサーミスタ(10kΩ) 使用時 注:電池温度領域の定義は、5.5 項を参照 TREF出力電圧 VTREF 低温領域下限閾値 TLOW 1.62 1.80 1.98 V 低下時 -2 0 2 C TLOW_HYS 上昇時 - 3 - C TCOLD 低下時 10 12 14 C - 3 - C 41 43 45 C - 3 - C 上昇時 46 48 50 C 高温 1 領域上限閾値ヒステリシス THOT_HYS 低下時 - 3 - C 高温 2 領域下限閾値 上昇時 56 58 60 C - 3 - C 110 130 150 C - 20 - C 低温領域下限閾値ヒステリシス 常温領域下限閾値 常温領域下限閾値ヒステリシス 常温領域上限閾値 常温領域上限閾値ヒステリシス 高温 1 領域上限閾値 TCOLD_HYS 上昇時 TWARM 上昇時 TWARM_HYS 低下時 THOT THIGH 高温 2 領域下限閾値ヒステリシス THIGH_HYS 低下時 サーマルシャットダウン サーマルシャットダウン動作温度 サーマルシャットダウン ヒステリシス 注:サーマルシャットダウンの機能は、4.2 項を参照 TSD TSD_HYS TJの温度で判断 デジタル入出力 入力ハイレベル電圧 VIH 1.5 - - V 入力ローレベル電圧 VIL - - 0.5 V LED端子 シンク電流 IGRSNK 4 - - mA MS1498-J-00 -9- [AP4303A] 動作説明 1. 動作状態 1.1. 1 次側電源有 電源電圧が適正な状態 (VIUVLO_REL以上 かつ VIOVP以下)。 電池の状態等により、以下の2つの状態 (充電状態 / 充電停止状態) があります。 1) 充電状態 電池接続がある場合 (VTEMP_BOT < TEMP端子電圧(VTEMP) < VTEMP_TOP)、VOUT端子に接続された電 池を充電します。 電池に供給する電力は、入力側の電流制限回路で制限されます。 2) 充電停止状態 CEB端子をHIGH、充電完了、電池未接続(VTEMP_BOT ≥ VTEMP 、VTEMP_TOP ≤ VTEMP)、保護機能等によ り、充電を停止している状態です。 この状態に至った条件によって、解除条件が異なります。(詳細は保護機能の項に記載) 2. 起動 AP4303Aは、電源電圧がVIUVLO_REL以上で起動します。 2.1. 1次側電源による起動 1次側電源接続によって起動した場合の動作シーケンスを以下に示します。 1) 2) 3) 4) 5) 6) 7) VUSB 端子電源電圧検出 USB パワースイッチ(内部 FET)を ON 内部回路用電源起動 充電アダプタ識別 電池接続検出、電池温度判定。 トリクル充電開始 急速充電開始(詳細な充電フローは、充電機能の項に記載) MS1498-J-00 - 10 - [AP4303A] 3. 充電機能 3.1. 充電制御 充電制御動作の流れを以下に示します。 3.1.1. 電池接続チェック TEMP端子電圧値から、電池の接続監視を行います。TEMP端子電圧が所定の範囲内(VTEMP_BOT < VTEMP < VTEMP_TOP)にあるときに “電池接続“、範囲外にある場合を ”電池未接続“ と判定します。電池未接続と判定 されている間は充電を開始しません。 3.1.2. 電池温度チェック 電池内にあるNTCサーミスタから、電池温度を確認します。電池温度が充電禁止領域ではない場合(TLOW < 電池温度 < THIGH)は、“トリクル充電1“ に遷移し、トリクル充電を開始します。電池温度が充電禁止領域にあ ると判定された場合(TLOW ≥ 電池温度、THIGH ≤ 電池温度)は、トリクル充電1に遷移せず “電池温度チェック “ を繰り返します。 3.1.3. トリクル充電 1 電池が過放電状態の場合を想定し、電池へのダメージを抑えるために低電流で定電流充電を開始します。 同時に内部タイマーのカウントを開始します。定期的にVOUT端子電圧(電池電圧)をモニターし、トリクル充電 閾値電圧(VTRKL)以上で “トリクル充電2“ に遷移します。トリクル充電1タイムアウト時間を越えても電池電圧が VTRKL以上にならない場合は、電池異常と判定し “電池異常“ へ遷移します。 3.1.4. トリクル充電 2 電池が急速充電開始電圧(VCC)に達するまで、低電流での定電流充電を継続します。内部タイマーはリセッ トされ再度カウントを開始します。定期的に電池電圧をモニターし、VCC以上で “急速充電” に遷移します。トリ クル充電2タイムアウト時間を越えても電池電圧がVCC以上にならない場合は、電池異常と判定し “電池異常” へ遷移します。 3.1.5. 急速充電 定電流充電と定電圧充電の二つの状態で充電します。ステート遷移直後に急速充電タイマーのカウントを開 始し、定電流充電を開始します。定電流充電で電池電圧が上昇し定電圧充電電圧(VCV)に達すると、定電圧充 電に移行します。通常、定電圧充電では満充電に近づくとともに充電電流が減少します。充電電流が満充電検 出電流(IEOC)以下まで減少した時点で、電池電圧が再充電開始電圧(VRECH)以上であれば満充電と判定し、急 速充電を停止します。状態は “満充電電圧チェック“ に遷移します。充電中に急速充電タイムアウト時間が経 過した場合も充電を停止し、“満充電電圧チェック“ に遷移します。 充電中に電池電圧がVTRKL未満に低下した場合は、電池が外された可能性があると判断し、“電池異常” へ 遷移します。 3.1.6. 満充電電圧チェック 急速充電完了で充電を停止した後、1秒後に電池電圧をチェックします。これは電池異常により電池電圧が 極端に低下していないか監視するためです。電池電圧がVTRKL未満の時は、電池異常と判定し “電池異常“ に 遷移します。それ以外の場合は、”充電終了“ に遷移します。 3.1.7. 充電終了 充電終了後も電池電圧を定期的にモニターし、電池電圧がVRECH以下になった場合、“再充電“ へ遷移しま す。 3.1.8. 再充電 急速充電と同様の充電動作を繰り返します。 MS1498-J-00 - 11 - [AP4303A] 3.1.9. 電池異常 充電動作を直ちに停止します。充電停止後、常時監視動作によって電池未接続が検出された場合は、充電 停止から ”電池接続チェック” へ遷移します。それ以外の場合は、CEB端子による充電停止、または電源電圧 がVUSB端子低電圧誤動作保護検出電圧(VIUVLO)以下になるまで、この状態を保持します。 以下に代表的な充電プロファイルを示します。 起動時に電池電圧がVCC以下の場合: トリクル充電 急速充電 定電流充電 定電圧充電 VCV VOUT電圧 VCC VTRKL IFCHG 充電電流 ITRKL 1, 2 IEOC 時間 図 4 充電プロファイル MS1498-J-00 - 12 - 充電終了 [AP4303A] 電源電圧検出 充電禁止 CEB端子=HIGH 充電イネーブルチェック CEB端子=HIGH CEB端子=LOW 接続なし VOUT過電圧検出 ICSETショート検出 電池電圧>VRECHでVCV低下 充電停止保護検出 ・サーマルシャットダウン ・電池温度異常 ・電池未接続 充電停止条件解除 電池接続チェック 充電停止 接続あり TLOW ≥ 電池温度 または THIGH ≤ 電池温度 電池温度チェック TLOW < 電池温度 < THIGH トリクル充電1 トリクル充電1 タイムアウト VTRKL ≤ 電池電圧 電池未接続 トリクル充電2 トリクル充電2 タイムアウト VCC ≤ 電池電圧 充電イネーブル チェックへ 急速充電 VTRKL > 電池電圧 満充電検出 ・「VRECH ≤ 電池電圧、IEOC ≥ 充電電流」または、 「タイムアウト」で満充電電圧チェックへ。 CEB端子=HIGH 満充電電圧 チェック VTRKL > 電池電圧 電池異常 VTRKL ≤ 電池電圧 充電終了 VRECH ≥ 電池電圧 VTRKL > 電池電圧 再充電 図 5 充電フローチャート MS1498-J-00 - 13 - [AP4303A] 4. 保護機能 4.1. 常時監視 充電動作と並行して、周期的(120ms Typ)に以下の監視動作を行います。エラー状態により、“充電停止“、 “電池異常“、または “充電禁止“ のいずれかに遷移します。 充電停止: 停止となった条件が解除されれば充電を再開 電池異常: 電池の抜き差し、CEB端子による充電停止、または電源電圧がVIUVLO以下で解除 充電禁止: CEB端子による充電停止、または電源電圧がVIUVLO以下で解除 表 5 監視動作 監視項目 判定条件 エラー処理 電池接続 TEMP端子電圧がVTEMP_BOT以下または VTEMP_TOP以上を3回連続 で検出 充電停止 電池温度 8回平均の値がTLOW以下またはTHIGH以上 電池電圧 急速充電開始後に電池電圧が VTRKL 未満を2回連続で検出 VOUT電圧 VOUT端子の電圧がVOOVP以上を2回連続で検出 ICSET端子ショート ICSET端子の電圧が0.4V以下で検出 電池異常 充電禁止 4.2. サーマルシャットダウン AP4303AはIC本体の熱暴走防止のために、ICのジャンクション温度を監視します。内部温度が上昇しサー マルシャットダウン動作温度(TSD)を超えた場合に自動的に充電を停止します。充電停止後に内部温度が検出 温度のヒステリシス(TSD_HYS)を下回ると、サーマルシャットダウンが解除され充電を再開します。解除時は、トリ クル充電から充電を再開します。 4.3. 安全タイマー (トリムオプションによる設定変更範囲を“参考”の項に記載) 充電動作中に、下記の安全タイマーがタイムアウトすると、電池異常と判定し充電動作を停止します。 表 6 タイマー値 項目 記号 トリクル充電 1 安全タイマー TTRKL1 トリクル充電 2 安全タイマー TTRKL2 急速充電安全タイマー TFCHG 再充電安全タイマー TRECHG 時間 0.5時間 3時間 精度については、表4 電気的特性の項目[dTCHG]を参照して下さい。 MS1498-J-00 - 14 - [AP4303A] 5. 充電パラメータ AP4303Aは、充電に関する入力電流制限値と充電電流制限値を外部入力端子に接続する抵抗値で設定 可能です。 5.1. 入力電流制限値 (トリムオプションによる設定変更範囲を“参考”の項に記載) 入力電流制限の値を、端子入力値で以下の表のように設定可能です。 表 7 入力電流制限値の設定 入力電流制限値 (例 : IILIM=990mA設定時) ILIM_SEL1 ILIM_SEL0 Low Low Low High ILSET端子で設定した電流値 × 0.5 (495mA) High Low ILSET端子で設定した電流値 (990mA) High High ILSET端子で設定した電流値 (990mA) ILSET端子で設定した電流値 × 0.1 (99mA) 入力電流制限値を1000mAの設定にした時、VOUT電圧がVRECH以上の条件で起動すると、入力電流制限 値は500mAになります。 入力電流制限値(IILIM)は、ILSET端子に接続する外付け抵抗の値(RILSET)によって設定できます。入力電流 制限値は以下の式に従って設定できます。 IILIM = 9900 / RILSET IILIMの標準的な設定例を以下に示します。 表 8 IILIM の設定例 入力電流制限値 = IILIM (mA) 990 ILSET端子の外付け抵抗値(kΩ) 10 MS1498-J-00 - 15 - [AP4303A] 電源電圧低下時の自動入力電流制限機能 1次側電源の供給能力がILSET端子で設定された入力電流制限値を下回っていた場合、電源電圧がVUSB 端子低下検出電圧以下(VVUSB ≤ VILVD)へ低下すると、下表に示すような入力電流制限値の変更を自動で行い ます。 表 9 電源電圧低下時の入力電流制限値の自動変更 電源電圧低下検出前の値 電源電圧低下検出後の値 ILSET端子で設定された値(IILIM) IILIM * 0.5 IILIM * 0.5 IILIM * 0.1 IILIM * 0.1 充電禁止 電源電圧低下検出により自動的に適用された入力電流制限値は、CEB端子による充電停止、または電源 電圧がVIUVLO以下になるまで、この状態を保持します。 電池電圧の上昇により、1次側電源の供給能力不足となり 電源電圧低下が検出(VVUSB ≤ VILVD)され、入力電流制限値が 1000mAから500mAに切り替わる。 電流 充電電流制限値 1000mA 1次側電源の供給能力値 800mA 入力電流制限値 500mA 充電電流 時間 急速充電電流のソフトスタート 電池電圧の上昇に伴い、充電電流が低下。 (1mS毎に急速充電電流設定の 1/10のステップで上昇) 1次側電源の供給能力が800mAで、自動入力電流制限が適用された場合 図 6 自動入力電流制限 MS1498-J-00 - 16 - [AP4303A] 5.2. 定電圧充電電圧値 (トリムオプションによる設定変更範囲を“参考”の項に記載) 定電圧充電電圧値は、電池温度の領域により、以下の値となります。 表 10 定電圧充電電圧値(常温領域) 項目 記号 電圧 VCV 4.175V 定電圧充電電圧(常温領域) 表 11 定電圧充電電圧値(低温、高温領域) 項目 記号 電圧 定電圧充電電圧(低温領域) VCVL VCV 定電圧充電電圧(高温 1 領域) VCVW VCV – 0.15V 定電圧充電電圧(高温 2 領域) VCVH VCV – 0.15V 5.3. 充電電流値 (トリムオプションによる設定変更範囲を“参考”の項に記載) 充電電流制限値(IFCHG(Max))は、ICSET端子に接続する外付け抵抗の値(RICSET)によって設定できます。充 電電流制限値と電池温度が常温領域の急速充電電流値を同一とすると、充電電流制限値は以下の式に従っ て設定できます。 ICSET端子がGNDにショートした場合は、“充電禁止状態“へ遷移します。 IFCHG = 9900 / RICSET IFCHGの標準的な設定例を以下に示します。 IFCHGの使用下限値は、500mAです。(下限値以上の設定値で使用して下さい。) 表 12 IFCHG の設定例(常温領域) 充電電流制限値(急速充電電流) = IFCHG (mA) 762 990 ICSET端子の外付け抵抗値(kΩ) 13 10 表 13 急速充電電流値(低温、高温領域) 項目 記号 急速充電電流(低温領域) 急速充電電流(高温 1・2 領域) 電流 IFCHGL IFCHG*0.5 IFCHGW, IFCHGH IFCHG 表 14 トリクル充電電流値 項目 トリクル充電電流 1, 2 記号 電流 ITRKL1, 2 IFCHG*0.1 MS1498-J-00 - 17 - [AP4303A] 表 15 再充電電流値 項目 記号 電流 再充電電流(低温領域) IRECHGL IFCHGL 再充電電流(常温領域) IRECHG IFCHG 再充電電流(高温 1 領域) IRECHGW IFCHGW 再充電電流(高温 2 領域) IRECHGH IFCHGH 表 16 満充電検出電流値 項目 満充電検出電流 記号 電流 IEOC IFCHG*0.1 5.4. 満充電検出 (トリムオプションによる設定変更範囲を“参考”の項に記載) 電池電圧VRECH以上かつ充電電流がIEOC以下であれば満充電と判定し、“満充電電圧チェック“ へ遷移しま す。 または、急速充電中にタイムアウトが発生した場合も “満充電電圧チェック“ へ遷移します。 MS1498-J-00 - 18 - [AP4303A] 5.5. 電池温度領域閾値 (トリムオプションによる設定変更範囲を“参考”の項に記載) AP4303Aは外部NTCサーミスタにより電池温度をモニターし、充電動作を適切にコントロールします。電池 温度は6つの温度領域に分かれており、安全に充電を行うために電池温度に応じて急速充電モードでの充電 電流、定電圧充電電圧を自動で制御します。 各温度領域での制御を以下に示します。各温度閾値は3C相当のヒステリシスがあります。(B常数が B25/50=3370K,B25/85=3413Kで抵抗値10kΩのサーミスタを使用した場合) 表 17 充電温度領域 温度領域 下限温度 上限温度 急速充電電流 定電圧充電電圧 - TLOW 充電停止 充電停止 低温度領域 TLOW TCOLD IFCHGL VCVL 常温領域 TCOLD TWARM IFCHG VCV 高温 1 領域 TWARM THOT IFCHGW VCVW 高温 2 領域 THOT THIGH IFCHGH VCVH 高温充電禁止領域 THIGH - 充電停止 充電停止 低温充電禁止領域 以下に、急速充電電流および定電圧充電電圧の温度プロファイルを示します。 IFCHG 電流 IFCHGW IFCHGH IFCHGL VCVL VCV VCVW (注) 電池電圧が VRECH を超えた状態で、電池 温度の変化によりVCV設定が低下した場合、 “充電禁止“ へ遷移します。 充電禁止からの復帰条件は、「4.1常時監視」 の項を参照して下さい。 VCVH 電圧 TLOW TCOLD (0C) (12C) TWARM THOT THIGH (43C) (48C) (58C) 温度 図 7 急速充電電流・電圧の温度プロファイル MS1498-J-00 - 19 - [AP4303A] 6. LED 表示 AP4303Aは、LED Driverを内蔵しております。内部状態により以下のようなLED表示となります。 表 18 LED 表示 分類 LED表示 項目 急速充電(常温) 再充電(常温) トリクル充電 1・2 点灯 急速充電(低温、高温) 充電状態 再充電(低温、高温) 充電イネーブルチェック 電池接続チェック 電池温度チェック 消灯 満充電電圧チェック 充電終了 トリクル充電後 電池電圧低下異常 急速充電後 電池電圧低下異常 電池異常 再充電後 電池電圧低下異常 トリクル充電 1 タイムアウト トリクル充電 2 タイムアウト 2Hz VOUT過電圧 充電禁止 ICSETショート検出 電池電圧>VRECHでVCV 低下 サーマルシャットダウン 充電停止 電池温度異常(高温) 電池温度異常(低温) 0.5Hz 電池未接続 初期設定エラー 初期エラー MS1498-J-00 - 20 - 消灯 [AP4303A] パッケージ 外形寸法図 図 8 外形寸法図 MS1498-J-00 - 21 - [AP4303A] マーキング XXXXX (2) YWWA (1) (3) (4) (5) ( 1 ) A1 ピン表示 (2 (3 (4 (5 ) ) ) ) 製品型番 : "4303A" 製造年 (西暦年の下一桁 (例 "2012 年" ? "2") ) 製造週 管理番号 MS1498-J-00 - 22 - [AP4303A] 参考(トリムオプション) トリムオプションとして、以下へ調整可能です。 (*1) 表記の設定 : AP4303Aとしての設定 安全タイマー 表 19 タイマー設定 項目 設定 1(*1) 設定 2 設定 3 設定 4 記号 トリクル充電 1 安全タイマー TTRKL1 トリクル充電 2 安全タイマー TTRKL2 急速充電安全タイマー TFCHG 再充電安全タイマー TRECHG 1時間 0.5時間 3時間 設定 5 設定 6 2時間 設定 7 4時間 6時間 6時間 12時間 12時間 24時間 12時間 24時間 定電圧充電電圧値 表 20 定電圧充電電圧設定(常温領域) 項目 定電圧充電電圧(常温領域) 記号 設定 1 設定 2(*1) 設定 3 設定 4 設定 5 VCV 4.115V 4.175V 4.215V 4.265V 4.310V 表 21 定電圧充電電圧設定(低温、高温領域) 項目 記号 設定 8 設定1(*1) 設定 2 定電圧充電電圧(低温領域) VCVL VCV VCV – 0.15V 定電圧充電電圧(高温 1 領域) VCVW VCV – 0.15V VCV – 0.15V 定電圧充電電圧(高温 2 領域) VCVH VCV – 0.15V VCV – 0.15V MS1498-J-00 - 23 - [AP4303A] 充電電流値 表 22 急速充電電流設定(低温領域) 項目 設定 1 設定 2(*1) IFCHG IFCHG*0.5 記号 設定 1(*1) 設定 2 IFCHGW, IFCHGH IFCHG IFCHG*0.5 記号 IFCHGL 急速充電電流(低温領域) 表 23 急速充電電流設定(高温領域) 項目 急速充電電流(高温 1・2 領域) 以下に、定電圧充電電圧および急速充電電流の温度プロファイルを示します。 IFCHGL IFCHG 電流 IFCHGH IFCHGW VCVL VCV VCVW (注) 電池電圧が VRECH を超えた状態で、電池 温度の変化によりVCV設定が低下した場合、 “充電禁止“へ遷移します。 充電禁止からの復帰条件は、「4.1常時監視」 の項を参照して下さい。 VCVH 電圧 TLOW TCOLD (0C) (12C) TWARM THOT THIGH (43C) (48C) (58C) 温度 図 9 急速充電電流・電圧の温度プロファイル MS1498-J-00 - 24 - [AP4303A] 満充電検出 ・満充電検出を行う設定:(*1) 電池電圧VRECH以上かつ充電電流がIEOC以下であれば満充電と判定し、“満充電電圧チェック“ へ遷移しま す。 または、急速充電中にタイムアウトが発生した場合も “満充電電圧チェック“ へ遷移します。 ・満充電検出を行わない設定: タイムアウトが発生した時のみ “満充電電圧チェック“ へ遷移します。 トリクル充電 急速充電 定電圧充電 定電流充電 急速充電タイムアウト VCV VOUT電圧 VCC VTRKL IFCHG 充電電流 ITRKL 1, 2 時間 満充電検出しない設定の場合 図 10 充電プロファイル MS1498-J-00 - 25 - 充電終了 [AP4303A] LED 表示 表 24 LED 表示設定 分類 LED表示 項目 設定 1 急速充電(常温) 点滅 再充電(常温) 0.5Hz 点灯 トリクル充電 1・2 急速充電(低温、高温) 充電状態 設定 2(*1) 0.16Hz 再充電(低温、高温) 充電イネーブルチェック 電池接続チェック 電池温度チェック 消灯 消灯 2Hz 2Hz 2Hz 0.5Hz 消灯 消灯 満充電電圧チェック 充電終了 トリクル充電後 電池電圧低下異常 急速充電後 電池電圧低下異常 電池異常 再充電後 電池電圧低下異常 トリクル充電 1 タイムアウト トリクル充電 2 タイムアウト VOUT過電圧 充電禁止 ICSETショート検出 電池電圧>VRECHでVCV 低下 サーマルシャットダウン 充電停止 電池温度異常(高温) 電池温度異常(低温) 電池未接続 初期設定エラー 初期エラー MS1498-J-00 - 26 - [AP4303A] 重要な注意事項 ● 本書に記載された製品、および、製品の仕様につきましては、製品改善のために予告なく変更することがあります。 従いまして、ご使用を検討の際には、本書に掲載した情報が最新のものであることを弊社営業担当、あるいは弊 社特約店営業担当にご確認ください。 ● 本書に記載された周辺回路、応用回路、ソフトウェアおよびこれらに関連する情報は、半導体製品の動作例、応 用例を説明するものです。お客様の機器設計において本書に記載された周辺回路、応用回路、ソフトウェアおよ びこれらに関連する情報を使用される場合は、お客様の責任において行ってください。本書に記載された周辺回 路、応用回路、ソフトウェアおよびこれらに関連する情報の使用に起因してお客様または第三者に生じた損害に 対し、弊社はその責任を負うものではありません。また、当該使用に起因する、工業所有権その他の第三者の所 有する権利に対する侵害につきましても同様です。 ● 本書記載製品が、外国為替および、外国貿易管理法に定める戦略物資(役務を含む)に該当する場合、輸出す る際に同法に基づく輸出許可が必要です。 ● 医療機器、安全装置、航空宇宙用機器、原子力制御用機器など、その装置・機器の故障や動作不良が、直接ま たは間接を問わず、生命、身体、財産等へ重大な損害を及ぼすことが通常予想されるような極めて高い信頼性を 要求される用途に弊社製品を使用される場合は、必ず事前に弊社代表取締役の書面による同意をお取りくださ い。 ● この同意書を得ずにこうした用途に弊社製品を使用された場合、弊社は、その使用から生ずる損害等の責任を 一切負うものではありませんのでご了承ください。 ● お客様の転売等によりこの注意事項の存在を知らずに上記用途に弊社製品が使用され、その使用から損害等が 生じた場合は全てお客様にてご負担または補償して頂きますのでご了承下さい。 MS1498-J-00 - 27 -